25 / 31
友情
しおりを挟む
「あなたは自分が被った不幸を、他人に押し付けるつもりなんですか?」
「ええ。その認識で間違いないです」
守屋はそこでようやく、眼鏡をかけた。
日の本にいる以上、隠さねばならない。
異国の者と同じように扱われる――その境遇こそ彼が最も憎むところだった。
「日の本の民もエゲレスの者も、不幸になればいい。私の行為で成せればいい。ただそれだけなのですよ」
「それを聞いた手前が――シャーロックに話すことを考えなかったのですか? そうすれば彼は死んでも言うことは聞きません。旗を手に入れられなくなります」
重三郎は言いながらも疑問に思っていた。
それを思いつかないほど、守屋は愚かではない。復讐に囚われているが、このような計画を考えられる時点で常人よりも賢いのだろう。
「いいえ。シャーロック、そしてあなたは従ってくれますよ。それは火を見るより明らかです」
「何を根拠にそんなこと言えるんですか? 現に今、手前はシャーロックがやろうとしても止めるつもりです」
たとえシャーロックが祖国のために日の本に来たと分かっていても、重三郎は必死に説得する腹づもりだ。それにシャーロックも騙されていた。守屋の計画を知ればきっと三井八郎右衛門の絵比べには参加しない――
「シャーロックが参加しようがしまいが、旗は手に入れられる算段なんですよ」
「……どういう意味、なんですか?」
「言葉どおりです。ま、その方法は教えられませんがね。けれど、協力してくれればあなたとお雪さんの身の保証はできます」
守屋は口元を歪めた。
そして悪魔の誘惑を重三郎に持ちかけた。
「戦となればいくら豪商とはいえ、無事では済まないでしょう。いっそのこと、エゲレスに行けば安全です。奴隷にもならずに済む。あなたも、お雪さんも。シャーロックの世話にはなりますが、彼が務めを果たせば薔薇十字団から報酬が出る。それも莫大な大金です。十分暮らすことができる」
「手前を、脅しているのですね……」
「そう捉えても構いません……あなたはやるしかないんですよ。私の計画を知ってもなお、やらざるを得ない」
どこか勝ち誇った声で、守屋は重三郎に宣言する。
己の計画の完璧さを自慢するようだった。
「やらないとあなたの大切なものは全て無くなりますよ。シャーロックとお雪さんはとても大切なのでしょう? だから……やるしかないんです」
言い切った後、守屋は立ち上がった。
話は済んだと言わんばかりの態度だった。
「そうそう。シャーロックにこの話を聞かせなかったのは――余計な茶々を入れたくなかっただけです。好きに話してけっこうです」
「シャーロックを騙していた……そのことに対しては、言い訳はないんですか?」
「何故、言い訳をしなければいけないんですか? だって――」
去り際にふすまに手をかけながら、守屋は当たり前のように言う。
「シャーロックもまた、私が憎むエゲレスの者なのですから。悩んで苦しめばいい」
守屋は部屋から出て行った。
途端に弛緩した空気になる――いや、何の解決にもなっていない。
まさか日の本を揺るがす企みに加担していたとは夢にも思わなかった。早急に対処するべきことだが、どうすればいいのか見当もつかない。
「……シャーロック。いるのだろう?」
重三郎が奥の間のふすまに声をかける。
ゆっくりと開いた――シャーロックの顔が白を通り越して青になっている。
「ジューザブロー。ワタシ、トンデモナイコトニ……」
「ああ、そうだな。わしとて同じ気持ちだよ」
ため息をついて、これからの方策を考える重三郎。
守屋の計画を阻止せねばならない。
そのためには――シャーロックを絵比べに参加させないことだ。
しかし守屋には他にも旗を手に入れる策があるようだ。
それの詳細は分からない。だから事前に阻止はできない。
かといって、素直に参加するのも困りものだ。
「ワタシ、ソコクノタメニ、ヒノモト、キタツモリダッタ」
シャーロックが悲しげに話す。
自分の使命が薄汚い陰謀だと知って衝撃を受けているようだ。
重三郎は「絵比べ、どうする?」と喫緊の問題を言う。
「参加するのか、しないのか……お前が決めていい」
「デモ……ジューザブロー、オユキサンハ?」
「わしはお前の選択を尊重するよ。エゲレスがどんな国か分からぬが……お雪とお前となら楽しく暮らせると思う」
重三郎は日の本を捨てる覚悟を決めていた。
そしてシャーロックが決めたことにも口を出さない。
信用とも信頼とも違う、言うならば絆でシャーロックに任せようとしたのだ。
「ジューザブロー、ホシイモノ、アル」
「欲しいもの? それは絵比べに必要なのか?」
シャーロックの眼には光が宿っていた。
守屋と同じ碧眼だが、こちらは希望が含まれている。
その眼を――重三郎は信じた。
「分かった。言ってみろ。わしが力を尽くして用意してやる」
返事を聞いたシャーロックは――笑った。
これもまた、守屋と違って自然な笑顔だった。
◆◇◆◇
絵比べが行なわれる日の十日前。
シャーロックは神社に来ていた。
それもお雪を伴わずに一人だけで。
頭巾と口に布は添えている。お雪がいないのは、シャーロックがそう頼んだからだ。もちろん、お雪は渋ったが、絶対に正体が分からないようにすると約束したので、仕方なく許した。
その日は肌寒いくもり空だった。それを見てシャーロックは故郷を思い出した。霧深い街を懐かしむように彼は眼を細めた。
神社の境内を進み、本堂へ行くと覚えのある顔がお祈りしているのが見えた。
勝川春朗である。いつの日か、必死になって祈願していたときを思い出させるような、険しい顔だった。
「オー、シュンローサン! オヒサシブリデスネ!」
知り合いだったので思わず声をかけてしまったシャーロック。
すると春朗は驚いたように振り返った。そして嬉しそうに「写楽さん! 久しぶりだなあ!」と返した。
「秋ごろに会って以来だから……随分とご無沙汰だったな」
二人は勝川春好が示唆を与えた出来事以降も、時々は会っていた。
けれども、春朗が言ったように秋ごろから会っていなかった。
「サビシカッタデス。デモ、オアイデキテ、ヨカッタ」
「まあな。俺も引っ越ししたりしてここには来れなかった」
「マタ、ヒッコシシタノ? ナンカイメ?」
「十から先は覚えてねえよ。それよりさ、また腕上げたろ? 時々、蔦屋さんの店行っているんだぜ」
そこからシャーロックの最近の絵について話し始めた二人。
一方的に春朗が喋っていて、シャーロックは相槌を打つだけだが、それが心地よいと互いに思っていた。
「ソウイエバ、イノッテタノ、ドウシテ?」
シャーロックが疑問に思って訊ねると、春朗は顔を曇らせた。
訊いては不味いことだったとシャーロックが「ゴメン」と謝る。
「いや、別にいいさ。だけど人に話すことじゃねえ。悪いな」
「ウン。アリガト」
「だけどよ。それに関した話、していいか?」
春朗は空を見上げた。
口の端を上げて「おかしな話だ」と珍しく小さな声で言う。
「俺は絵を描くのが好きだ。描く以外のことはなるべくしたくはねえ。どうしてかって言うと、絵を描くのが楽しくて仕方がねえからだ。それ以外の快楽を知らねえってくらいに」
「……ワカルヨ」
「あはは。あんたなら分かってくれると思ってたぜ……それが駄目になるとは思わなかった」
春朗はふいに俯いた。
地面を這うミミズがそこにいて、春朗は足で払った。
「絵以外、大切なもんはねえと思っていた。ガキの頃から大人になっても、そう信じていた。でもさ――あったんだよ。こんな俺にも絵の他に大切にしたいもんがな」
「ソレモ、ワカル」
シャーロックが思い浮かべたのは、重三郎とお雪だった。
「情けない話だ。これだから絵で大成できねえんだろうな」
「ソンナコト、ナイ」
シャーロックは春朗が何に悩んでいるのか分からない。
それでも否定するのは――自分の経験からだった。
「タイセツナモノ、ソノタメニ、カケル」
「写楽さん……」
「モット、スゴイモノ、シュンロ―サン、カケル」
それは絵を描く者同士しか分からない、絆と呼べるものがあった。
重三郎との間のものとも異なる、絵師への尊敬の念だ。
あるいは友情とも言える。
「ありがとうな、写楽さん。俺、もう迷わないよ」
春朗は背伸びして「じゃあ俺、帰るわ」と告げる。
「写楽さんに会えて良かった。またな」
「ウン、マタアイマショ」
「ええ。その認識で間違いないです」
守屋はそこでようやく、眼鏡をかけた。
日の本にいる以上、隠さねばならない。
異国の者と同じように扱われる――その境遇こそ彼が最も憎むところだった。
「日の本の民もエゲレスの者も、不幸になればいい。私の行為で成せればいい。ただそれだけなのですよ」
「それを聞いた手前が――シャーロックに話すことを考えなかったのですか? そうすれば彼は死んでも言うことは聞きません。旗を手に入れられなくなります」
重三郎は言いながらも疑問に思っていた。
それを思いつかないほど、守屋は愚かではない。復讐に囚われているが、このような計画を考えられる時点で常人よりも賢いのだろう。
「いいえ。シャーロック、そしてあなたは従ってくれますよ。それは火を見るより明らかです」
「何を根拠にそんなこと言えるんですか? 現に今、手前はシャーロックがやろうとしても止めるつもりです」
たとえシャーロックが祖国のために日の本に来たと分かっていても、重三郎は必死に説得する腹づもりだ。それにシャーロックも騙されていた。守屋の計画を知ればきっと三井八郎右衛門の絵比べには参加しない――
「シャーロックが参加しようがしまいが、旗は手に入れられる算段なんですよ」
「……どういう意味、なんですか?」
「言葉どおりです。ま、その方法は教えられませんがね。けれど、協力してくれればあなたとお雪さんの身の保証はできます」
守屋は口元を歪めた。
そして悪魔の誘惑を重三郎に持ちかけた。
「戦となればいくら豪商とはいえ、無事では済まないでしょう。いっそのこと、エゲレスに行けば安全です。奴隷にもならずに済む。あなたも、お雪さんも。シャーロックの世話にはなりますが、彼が務めを果たせば薔薇十字団から報酬が出る。それも莫大な大金です。十分暮らすことができる」
「手前を、脅しているのですね……」
「そう捉えても構いません……あなたはやるしかないんですよ。私の計画を知ってもなお、やらざるを得ない」
どこか勝ち誇った声で、守屋は重三郎に宣言する。
己の計画の完璧さを自慢するようだった。
「やらないとあなたの大切なものは全て無くなりますよ。シャーロックとお雪さんはとても大切なのでしょう? だから……やるしかないんです」
言い切った後、守屋は立ち上がった。
話は済んだと言わんばかりの態度だった。
「そうそう。シャーロックにこの話を聞かせなかったのは――余計な茶々を入れたくなかっただけです。好きに話してけっこうです」
「シャーロックを騙していた……そのことに対しては、言い訳はないんですか?」
「何故、言い訳をしなければいけないんですか? だって――」
去り際にふすまに手をかけながら、守屋は当たり前のように言う。
「シャーロックもまた、私が憎むエゲレスの者なのですから。悩んで苦しめばいい」
守屋は部屋から出て行った。
途端に弛緩した空気になる――いや、何の解決にもなっていない。
まさか日の本を揺るがす企みに加担していたとは夢にも思わなかった。早急に対処するべきことだが、どうすればいいのか見当もつかない。
「……シャーロック。いるのだろう?」
重三郎が奥の間のふすまに声をかける。
ゆっくりと開いた――シャーロックの顔が白を通り越して青になっている。
「ジューザブロー。ワタシ、トンデモナイコトニ……」
「ああ、そうだな。わしとて同じ気持ちだよ」
ため息をついて、これからの方策を考える重三郎。
守屋の計画を阻止せねばならない。
そのためには――シャーロックを絵比べに参加させないことだ。
しかし守屋には他にも旗を手に入れる策があるようだ。
それの詳細は分からない。だから事前に阻止はできない。
かといって、素直に参加するのも困りものだ。
「ワタシ、ソコクノタメニ、ヒノモト、キタツモリダッタ」
シャーロックが悲しげに話す。
自分の使命が薄汚い陰謀だと知って衝撃を受けているようだ。
重三郎は「絵比べ、どうする?」と喫緊の問題を言う。
「参加するのか、しないのか……お前が決めていい」
「デモ……ジューザブロー、オユキサンハ?」
「わしはお前の選択を尊重するよ。エゲレスがどんな国か分からぬが……お雪とお前となら楽しく暮らせると思う」
重三郎は日の本を捨てる覚悟を決めていた。
そしてシャーロックが決めたことにも口を出さない。
信用とも信頼とも違う、言うならば絆でシャーロックに任せようとしたのだ。
「ジューザブロー、ホシイモノ、アル」
「欲しいもの? それは絵比べに必要なのか?」
シャーロックの眼には光が宿っていた。
守屋と同じ碧眼だが、こちらは希望が含まれている。
その眼を――重三郎は信じた。
「分かった。言ってみろ。わしが力を尽くして用意してやる」
返事を聞いたシャーロックは――笑った。
これもまた、守屋と違って自然な笑顔だった。
◆◇◆◇
絵比べが行なわれる日の十日前。
シャーロックは神社に来ていた。
それもお雪を伴わずに一人だけで。
頭巾と口に布は添えている。お雪がいないのは、シャーロックがそう頼んだからだ。もちろん、お雪は渋ったが、絶対に正体が分からないようにすると約束したので、仕方なく許した。
その日は肌寒いくもり空だった。それを見てシャーロックは故郷を思い出した。霧深い街を懐かしむように彼は眼を細めた。
神社の境内を進み、本堂へ行くと覚えのある顔がお祈りしているのが見えた。
勝川春朗である。いつの日か、必死になって祈願していたときを思い出させるような、険しい顔だった。
「オー、シュンローサン! オヒサシブリデスネ!」
知り合いだったので思わず声をかけてしまったシャーロック。
すると春朗は驚いたように振り返った。そして嬉しそうに「写楽さん! 久しぶりだなあ!」と返した。
「秋ごろに会って以来だから……随分とご無沙汰だったな」
二人は勝川春好が示唆を与えた出来事以降も、時々は会っていた。
けれども、春朗が言ったように秋ごろから会っていなかった。
「サビシカッタデス。デモ、オアイデキテ、ヨカッタ」
「まあな。俺も引っ越ししたりしてここには来れなかった」
「マタ、ヒッコシシタノ? ナンカイメ?」
「十から先は覚えてねえよ。それよりさ、また腕上げたろ? 時々、蔦屋さんの店行っているんだぜ」
そこからシャーロックの最近の絵について話し始めた二人。
一方的に春朗が喋っていて、シャーロックは相槌を打つだけだが、それが心地よいと互いに思っていた。
「ソウイエバ、イノッテタノ、ドウシテ?」
シャーロックが疑問に思って訊ねると、春朗は顔を曇らせた。
訊いては不味いことだったとシャーロックが「ゴメン」と謝る。
「いや、別にいいさ。だけど人に話すことじゃねえ。悪いな」
「ウン。アリガト」
「だけどよ。それに関した話、していいか?」
春朗は空を見上げた。
口の端を上げて「おかしな話だ」と珍しく小さな声で言う。
「俺は絵を描くのが好きだ。描く以外のことはなるべくしたくはねえ。どうしてかって言うと、絵を描くのが楽しくて仕方がねえからだ。それ以外の快楽を知らねえってくらいに」
「……ワカルヨ」
「あはは。あんたなら分かってくれると思ってたぜ……それが駄目になるとは思わなかった」
春朗はふいに俯いた。
地面を這うミミズがそこにいて、春朗は足で払った。
「絵以外、大切なもんはねえと思っていた。ガキの頃から大人になっても、そう信じていた。でもさ――あったんだよ。こんな俺にも絵の他に大切にしたいもんがな」
「ソレモ、ワカル」
シャーロックが思い浮かべたのは、重三郎とお雪だった。
「情けない話だ。これだから絵で大成できねえんだろうな」
「ソンナコト、ナイ」
シャーロックは春朗が何に悩んでいるのか分からない。
それでも否定するのは――自分の経験からだった。
「タイセツナモノ、ソノタメニ、カケル」
「写楽さん……」
「モット、スゴイモノ、シュンロ―サン、カケル」
それは絵を描く者同士しか分からない、絆と呼べるものがあった。
重三郎との間のものとも異なる、絵師への尊敬の念だ。
あるいは友情とも言える。
「ありがとうな、写楽さん。俺、もう迷わないよ」
春朗は背伸びして「じゃあ俺、帰るわ」と告げる。
「写楽さんに会えて良かった。またな」
「ウン、マタアイマショ」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】ふたつ星、輝いて 〜あやし兄弟と町娘の江戸捕物抄〜
上杉
歴史・時代
■歴史小説大賞奨励賞受賞しました!■
おりんは江戸のとある武家屋敷で下女として働く14歳の少女。ある日、突然屋敷で母の急死を告げられ、自分が花街へ売られることを知った彼女はその場から逃げだした。
母は殺されたのかもしれない――そんな絶望のどん底にいたおりんに声をかけたのは、奉行所で同心として働く有島惣次郎だった。
今も刺客の手が迫る彼女を守るため、彼の屋敷で住み込みで働くことが決まる。そこで彼の兄――有島清之進とともに生活を始めるのだが、病弱という噂とはかけ離れた腕っぷしのよさに、おりんは驚きを隠せない。
そうしてともに生活しながら少しづつ心を開いていった――その矢先のことだった。
母の命を奪った犯人が発覚すると同時に、何故か兄清之進に凶刃が迫り――。
とある秘密を抱えた兄弟と町娘おりんの紡ぐ江戸捕物抄です!お楽しみください!
※フィクションです。
※周辺の歴史事件などは、史実を踏んでいます。
皆さまご評価頂きありがとうございました。大変嬉しいです!
今後も精進してまいります!
花嫁
一ノ瀬亮太郎
歴史・時代
征之進は小さい頃から市松人形が欲しかった。しかし大身旗本の嫡男が女の子のように人形遊びをするなど許されるはずもない。他人からも自分からもそんな気持を隠すように征之進は武芸に励み、今では道場の師範代を務めるまでになっていた。そんな征之進に結婚話が持ち込まれる。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
無用庵隠居清左衛門
蔵屋
歴史・時代
前老中田沼意次から引き継いで老中となった松平定信は、厳しい倹約令として|寛政の改革《かんせいのかいかく》を実施した。
第8代将軍徳川吉宗によって実施された|享保の改革《きょうほうのかいかく》、|天保の改革《てんぽうのかいかく》と合わせて幕政改革の三大改革という。
松平定信は厳しい倹約令を実施したのだった。江戸幕府は町人たちを中心とした貨幣経済の発達に伴い|逼迫《ひっぱく》した幕府の財政で苦しんでいた。
幕府の財政再建を目的とした改革を実施する事は江戸幕府にとって緊急の課題であった。
この時期、各地方の諸藩に於いても藩政改革が行われていたのであった。
そんな中、徳川家直参旗本であった緒方清左衛門は、己の出世の事しか考えない同僚に嫌気がさしていた。
清左衛門は無欲の徳川家直参旗本であった。
俸禄も入らず、出世欲もなく、ただひたすら、女房の千歳と娘の弥生と、三人仲睦まじく暮らす平穏な日々であればよかったのである。
清左衛門は『あらゆる欲を捨て去り、何もこだわらぬ無の境地になって千歳と弥生の幸せだけを願い、最後は無欲で死にたい』と思っていたのだ。
ある日、清左衛門に理不尽な言いがかりが同僚立花右近からあったのだ。
清左衛門は右近の言いがかりを相手にせず、
無視したのであった。
そして、松平定信に対して、隠居願いを提出したのであった。
「おぬし、本当にそれで良いのだな」
「拙者、一向に構いません」
「分かった。好きにするがよい」
こうして、清左衛門は隠居生活に入ったのである。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
対米戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。
そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。
3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。
小説家になろうで、先行配信中!
【読者賞】江戸の飯屋『やわらぎ亭』〜元武家娘が一膳でほぐす人と心〜
旅する書斎(☆ほしい)
歴史・時代
【第11回歴史・時代小説大賞 読者賞(読者投票1位)受賞】
文化文政の江戸・深川。
人知れず佇む一軒の飯屋――『やわらぎ亭』。
暖簾を掲げるのは、元武家の娘・おし乃。
家も家族も失い、父の形見の包丁一つで町に飛び込んだ彼女は、
「旨い飯で人の心をほどく」を信条に、今日も竈に火を入れる。
常連は、職人、火消し、子どもたち、そして──町奉行・遠山金四郎!?
変装してまで通い詰めるその理由は、一膳に込められた想いと味。
鯛茶漬け、芋がらの煮物、あんこう鍋……
その料理の奥に、江戸の暮らしと誇りが宿る。
涙も笑いも、湯気とともに立ち上る。
これは、舌と心を温める、江戸人情グルメ劇。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる