姉妹チート:RE

和希

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1stSEASON

とっておきの言葉

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(1)

「おはよう、空。朝だよ」
「おはよう、翼」

ゆっくり起き上がると部屋を出ていく翼を呼び止める。

「ちょっと待って翼」
「どうしたの?」

僕は机の引き出しを開けると買ってきたプレゼントを翼に渡す。
いつもは母さんと選んで買ってたけど初めて自分で選んで買ってきたプレゼント。

「ありがとう、開けてもいい?」

僕がうなずくと翼は袋を開ける。

「ハンカチだ。しかもこのマスコット好きなの覚えててくれたんだ。ありがとうね」
「気に入ってもらえてよかった」

翼とは接続できるとはいえやはり初めては不安だった。

「じゃ、朝ごはん出来てるから早く着替えなよ」

そう言って部屋を出ていく翼。
心から喜んでくれてる事くらい共鳴しなくても分る。
僕は着替えるとダイニングに降りる。
ここからが問題だ。
ダイニングにむかうと天音が手を出す。

「空君。今年は何をくれるのかな?」

にこりと笑ってそう言う天音。
翼は多分天音に言ったのだろう。

「今年は翼にしか買ってないんだ」
「あら?そうなの?」

母さんが言う。

「ふざけるな!こっちはどれだけ時間かけてチョコ作ったと思ってるんだ!?」

天音は案の定怒り出す。

「空は今年は本命しか渡さないって言ってたってさっき言ったでしょ?」

もらった翼は機嫌がいい。

「天音も大地からもらえば十分じゃない」
「パパはちゃんとくれたぞ!?」
「何もらったんだ?」
「クッキー」
「あら?冬夜さん。私は何も受け取ってないですよ」

母さんが父さんに言う。

「あ、愛莉にも買ってきておいたよ。ほら」

父さんが母さんに渡したのはブランド物のハンドクリーム。

「ありがとうございます」
「愛莉も水仕事大変だろうと思って」
「お気持ちだけでも嬉しいです」

と、なると天音が僕を睨む。

「パパはお返しあって空は無いっておかしくないか?」
「天音、家族チョコや義理チョコは日頃の感謝を込めて渡す物なのですよ?ねだるものじゃありません」
「そんなの!屁理屈だ!じゃあ、空は私に感謝してないというのか!」
「ありがとうって言ってくれただけいいじゃないですか。空だって彼女がいるんだからしょうがないでしょ」
「うぬぬ……」

天音は納得いかないようだ。
この分だと水奈からも言われそうだな。
……やっぱり天音の分買っておいた方が良かったかな?

「放っておきなよ。どうせ残った材料で作った余りものなんだから」

翼がそう伝えてきた。
そうだったのか。
取りあえず朝食を食べると支度をして翼たちを待つ。

「心配しないでいいよ。大地君からお返しもらったら機嫌も直るよ」

父さんが言う。

「父さんは義理返ししてたの?」
「してないよ」
「そっか……」
「冬夜さんは私にしかプレゼントしない人でしたから」

母さんが笑って言う。
翼たちが部屋から出る頃水奈が来た。

「おっす」
「おはよう」

玄関に向かうと靴を履いて家を出る。

「行ってきます!」

天音の声が響き渡る。

「聞いてくれ水奈!空のやつお返し用意してないぞ」
「そうなのか」
「女だけ損したなんておかしくないか?」

天音は未だに根に持ってるようだ。

「いいんだって。『チョコをあげました』って行為自体が投資なんだよ」

水奈が言う。

「どういう意味だ?」
「毎年チョコを配っていれば今年もくれるかもって男が勝手に期待して優しくなるだろ?その時間を買ってるんだよ」
「なるほど」
「それに家族ならなおの事だろ。それで家庭な明るくなるなら儲けものだ」

だから義理なんてまとめ買いや本命チョコの残りでちょこっと作ればいいんだよ。水奈はそう言う。

「うちの母さんが言ってた。天音の父さんに本命あげてもクッキーをめんどくさそうに持ってきただけだって」

水奈が言う。

「それに天音には今年大地って期待株があるじゃないか」
「そ、そうだな。これで大地までないとか言ったら絞め殺してやる」

天音が言う。

学校に着くと昇降口で天音と水奈と別れて教室に向かう。
教室にはSH組が固まっていた。
美希も麗華も機嫌は良さそうだ。恐らくホワイトデーのお返しを受け取ったんだろう。
今日も卒業式の練習があった。
立ち続けることが多く、美希が途中で貧血で倒れて保健室に行った。
もうすぐ卒業式。
卒業式が終れば、もう今年度は終わる。
来年は僕達の卒業式か。
まあ、この皆で中学に上がるんだろうけど。
どうせ大人の都合でクラスも一緒なのだろう。
6月には修学旅行がある。
卒業式の練習が終わると授業がある。
授業も半ば自習の様な時間が増える。
教科書の内容はほぼやりつくしてる。
FGの連中は僕達のクラスに限っては大人しい。
天音達の興味は水島先生からFGに移ったらしい。
日々彼等に嫌がらせをしている。
それは結果的には水島先生を助けているのだそうだ。
例えば授業中に1人の男子が暴れ出せばそいつの足を引っかけて転んだところを平然と周りの皆で蹴りつける。
先生が止めるまで暴行は止らない。
そんな事を続けている。
昼休みになれば悪ふざけで男子一人を全裸にして教室の後ろに正座させたりしたらしい。
FGを抜ける制裁を受けるよりもFGにいて天音たちの攻撃対象にいる方が恐ろしい。
そんな空気が天音たちのクラスにはあるらしい。
次第にFGは何もできなくなり、大人しくなっていた。
それが天音たちの不満らしい。

「なんかやれよ!退屈なんだよ!」

天音達がやっていた黒板消し落としすら。

「粉がかかったじゃねーか!てめーら何してくれてんだ!」

ともはやどっちが暴徒なのかわからないくらいの言いがかりをつけてFGを攻撃しているらしい。
それでもまだFGの規模は大きいそうだ。
SHのメンバーがいないクラスでは学級崩壊が起きてるらしい。
SHのメンバーはFGのそれに比べたらはるかに少ない。
その少ないグループに手が出せないのはやはりSHのメンバーの力があるのだろう。
「やられたらやり返す」から「やるのを待って報復する」に切り替わっていた。
授業が終わると皆帰る。
天音の手首には腕時計があった。

「それ、大地のプレゼント?」

翼が聞くと天音は嬉しそうに頷いた。
ピンク色の腕時計。
ブランド物らしい。
家に帰ると部屋に戻る。
宿題をしていると、翼が来る。

「どうせだから一緒に勉強しよう?」

翼が言う。
テーブルで向かい合って勉強する。
勉強が終ると一緒にテレビを見る。
夕飯の時間になるとダイニングに向かう。
夕食を食べる3人で風呂に入る。
風呂から上がると天音は一人で自分の部屋に戻る。

「変なことするんじゃねーぞ!」

そう言って部屋に戻る天音。
夜は父さんとおじさんが飲むため僕達は自室にいることが多い。
自室でテレビをつけて漫画を読んだりスマホを弄ったり2人で話をしたり。
僕ももうすぐ小学校6年生。
姉とはいえ彼女と同室にいるとそれなりに意識するようになった。
今までそんな気にならないのがおかしかったのだろうか?
そしてそんな感情は翼には筒抜けで。

「だめだよ、小学校卒業するまで我慢なんだから」

そう翼から返ってくる。
僕と翼が一緒にいられるのは22時まで。
母さんからそう決められていた。

「小学生の間は我慢しなさい」

母さんはそう言った。
時間前になるとお休みの挨拶を交わす。
翼が部屋を出る。
僕も寝ることにした。
僕は翼と心を通わせる。
この人生であと何万回翼に好きだと囁くのだろう?
どうしてたった一度触れ合うだけで気持ちってこんなに伝わるんだろう?

(2)

SHのぼっち組から沢山の義理返しを受け取った。
それよりも天音が大地から受け取った物が宝物のように思えた。
なずなや花もそれぞれの恋人から受け取っていた。
最近は退屈な授業時間。
FGの連中も腑抜けになっちまった。
私のクラスだけかもしれないけど。
桜子にいたずらしようと席を立って桜子に忍び寄るやつの足を引っかける。
転んだらすました顔でそいつを周りの仲間と一緒に袋叩きにする。

「どうしたの?」
「わかりません。一人で派手に転んでました」

誰も反論しない。
クスクス笑ってる。
そんな事をするのもすぐに飽きた。
退屈なのは私や天音だけじゃない。
祈や遊や粋も同じように考えていたようだ。
次の時間、粋はとうとう教室を抜け出した。

「栗林君はどこにいったの?」
「自分探しの旅に出ました」
「……皆自習してなさい!」

桜子が粋を捜しに行く。
桜子が粋を引っ張ってくる間暇になる。
暇だからスマホを弄ってる。
天音がついに暴れた。
FGの連中から黒頭巾を奪うと教卓の上に立ち頭巾に火をつけ燃やす。
完全な挑発行為だ。
だけど誰一人乗らない。
FGの連中は天音にビビッてた。
今日は3月14日。
彼氏のいる女子にとっては楽しみな日。
私にはいないから関係ないか。
いつか私にも彼氏ができるのだろうか?
相手が翼じゃ勝ち目無いな。
1人で家に帰ると、ゲームをして時間を潰して、夕食を食べて風呂に入る。

「水奈。待ちなさい」

父さんに呼ばれた。

「これ、父さんからお返し」

父さんはブランド物のチョコレートをくれた。

「ありがとう」

来年はちゃんと手作りのチョコレートを作ってやろう。
なんとなく娘の父親ってのを理解した気になった。
街行く恋人が羨ましく思う事が増えた。
いつから一人が怖くなったんだろう?
するとスマホに個別メッセージが入ってきた。
翼からだ。

「話がある。水奈だけで……に来て欲しい」

突然どうしたんだろう?

(3)

「鈴」

川島君に呼ばれた。

「何?」
「放課後時間あるかな?」
「いいけど、何か用?」
「うん、出来れば一緒に来て欲しい」
「……分かった」

あまり二人で一緒にいると、川島君が粛正を受ける。
必要な言葉だけ交わして私達は離れる。
彼はFGのメンバー。私はSHのメンバー。
決して相いれない存在。
そんな私達を一緒にしようとしたのが片桐天音。
彼女にとってそんな事はどうでもいいらしい。
放課後になると教室の出口で川島君は待っていた。

「じゃ、行こうか」
「いいけどどこに行くの?」
「職員室」

川島君の顔を見る。
少し緊張しているようだった。
川島君が何をしようとしているのかすぐにわかった。
川島君の頬を抓る。
川島君が私の顔を見る。
私は作り笑いをして言った。

「リラックスしないと」
「……ありがとう」

職員室につく。

「失礼します」

そう言って職員室に入ると水島先生のところへ行く。

「どうしたの?」

水島先生が聞く。
川島君は鞄から手紙を取り出す。

「また?もうその手にはのらないよ?」

水島先生がそう言って笑う。
だけど川島君は真剣な表情で言った。

「今度は本物です。ちゃんと書いてきました」

先生はそれを受け取りその場で読んだ。
静かに目を通していた。
読み終えると、先生は川島君を見て言った。

「ありがとう。でも前も言ったけど先生が川島君の想いを受け止めることはこの先もありません」
「……はい。ありがとうございます。失礼しました」

そう言って職員室を出ていく川島君の後を追う。
昇降口で川島君は立ち止まる。
どう声をかけていいか分からなかかった。
先に口を開いたのは川島君だった。

「付き合ってもらってありがとな。ちゃんと言えてすっきりした」
「何もしてないよ。ただ見てただけ」
「……ずっと考えてたんだ。あんな手紙を最初に渡した時から胸につかえてたんだ。今それが取れた気分」
「うん」
「ダサいだろ?カッコ悪いだろ?二度も玉砕なんて。しかも無謀な恋に」

川島君は、うつむいたまま震えている。

「鈴も俺に幻滅したんじゃないか?素の俺はただの臆病者で弱虫だ」

川島君は勇気をだしてくれました。だから神様、今度は私に勇気を下さい。
私は川島君を背後から抱きしめる。

「川島君は川島君のままだよ。カッコ悪くなんかない」
「……今俺が鈴の告白に答えたらもっとカッコ悪くないか?」
「誰かが言ってた『恋の終わりは。次の恋が始まる時』って」
「……お前優しいんだな」

川島君は私の腕を解いて私に向かい合う。

「鈴、一つお願いしていいかな?」
「何?」

川島君は私に抱き着いて私の胸に顔をうずめる。
そんなに大きくないけど。

「ちょっとの間だけ胸貸してくれない?」
「貸すほど胸ないよ」

そう言って私は笑ってみせた。
人が行き来する昇降口で少し恥ずかしかったけど。
私は川島君の顔を見ないようにしてた。
男の子にだって見せたくない顔があると思ったから。

「ダサい奴は本当に何させてもダサいよな」

私が振り返ると山本喜一を先頭に黒頭巾の男子が群れていた。

「何やってんのお前?振られた挙句に振った女に泣きつくって情けないと思わないの?」

川島君が私から離れると涙を拭って山本君に言った。

「お前には関係ない」
「いや、あるね。従兄として恥ずかしいよお前。それに忘れたの?お前FGのメンバーだぞ」
「関係ない。FGは抜ける。もういたずらは卒業だ。これ以上やっても惨めなだけだ」
「お前、なんでも自分には関係ないっていうけどお前がやってきたことはみんな忘れないぞ。誰も許してくれない。俺達とやっていくしかねーんだよ」
「そんな事無い!」

私は叫んでいた。

「たとえ世界中が川島君をゆるさなかったとしても私は川島君の味方だよ!」
「……足洗おうって言うならそれ相応の罰を受けてもらわないと、こっちとしても他のメンバーに示しがつかないんだよね」

私達を黒頭巾の集団が囲む。

「……わかった。でも鈴には手を出すな」
「お前が俺に命令するな」
「……ごめん、鈴。巻き込んでしまった」
「気にしないで。2人なら怖くない」

私達は互いに背中を預けて構える。
守られるだけが女子だと思わないで!
だが取り囲んでいた黒頭巾の集団の一人が派手に吹き飛ぶ。
顔面から着地して鼻を床にぶつけて鼻血を流す。

「面白いことしてくれてるじゃん。私達もまぜろよ」

そう言ったのは酒井祈だった。
その背後にはSH4年組が全員いた。

「お前らには関係のない事だ。引っ込んでろ!」

山本君が言う。

「ああ、関係ない事だな。でも私達がいつお前らに喧嘩売ろうかも関係ない事だ。もう忘れたのか?SHの次の標的はお前らだってこと」

祈が言う。

「学校だけじゃなくて人生も卒業したいなら手を貸しますよ?」
「言っときますけどこっちはやる気できてるんです。下手な脅しを聞く耳はもってません」

繭と石原大地が言う。

「別にいいんじゃね?この事を天音が知ったらどうせこいつ人生終了だろ?」

桐谷遊が言う。

「ちっ……。引き上げるぞ」

山本君は集団をまとめて撤退した。
繭に事情を説明する。

「そうか、FGは抜けるんですね」
「はい……」
「じゃあ、スマホ出して」

繭が言うと川島君はスマホを出す。
繭はそのスマホをみて考えていた。
そして繭は言った。

「やっぱり鈴が連絡先交換して招待するのが筋じゃないですか?」

繭が言うと私は川島君と連絡先を交換してSHに招待する。

「よろしくね。蓮太」
「ああ。よろしく、鈴」

私と蓮太は握手した。

(4)

放課後体育館裏で待ってる。
翼の言伝通り体育館裏に一人で向かった。
翼一人で私を待っていたようだ。

「あ、一人で来た?誰もあとつけてない?」
「なんか他の連中は取り込み中みたいだ」

天音も先に帰ったと言った。

「だけど空といないなんて珍しいな」
「さすがに空にはまだ早いから」

言ってる意味が分からない。

「いい?この事は誰にも秘密。私がいいって言うまで空にも言ったらだめ」

空にも?
何を企んでるんだ?
そんな私の疑問は翼の話を聞いていっぺんに吹き飛んだ。

「ふざけるな!私との勝負逃げるってのか!?」
「どう受け取ってもらっても構わない。私は今言った通りの行動に出る」
「翼に譲られて私が喜ぶとでも思ったのか!?」
「受け取らないならそれでもいい。代わりの人を探す……だけど」

だけど?

「水奈は隠してたつもりだろうけど、私に隠し事は通用しない」

バレてたのか?
それじゃ、なおさら私が惨めなだけじゃないか!

「翼は空の事が好きじゃなくなったのか!?」

私は翼にはかなわないと思っていたのに。
こんな屈辱的な仕打ちは初めてだ。

「水奈の気持ちまで考える余裕がなかった。ただ、空にとって最善の策を選んだつもり。1年間水奈の気持ちに気付いて、私は水奈をずっと見てきた」

その結論がこの案か。

「勘違いしないで。私はただ提案しただけ。水奈が断れば終るし、何より空が拒めばこの取引は成立しない」
「……どうして私なんだ?」
「言ったでしょ?私はずっと水奈を監視してた」

遊との事も全て翼はお見通しだった。
だけど……納得いかない。

「空と翼なら離れていても通じ合えるんだろ?こんな策通用するわけがない。空だって翼を選ぶに決まってる!翼だって……」
「ええ、今でも空の事は好き。好きだから不安なの」

翼がいない時、空は誰を頼ってこの先、生きていく?
何より翼自身空に構ってやれる余裕なんてなくなる。
夢と恋、将来と可能性。
いろいろな物を考えて出した結論だという。

「一つだけ私から聞いても良い?」

翼が言った。

「なんだ?」
「空の事好き?」
「そんなの翼は知ってるから……」
「水奈自身の言葉を聞きたい。水奈が思ってる事を直に聞きたい」

気づいたら翼の目じりから一筋の涙がこぼれていた。
そして気づいた。
翼も辛いんだ。
好きすぎて辛いんだ。
だから自分がいなくなった後の空の事を必死に考えたんだろう。
その結果私を選んだ。

「……大好きだ。誰にも渡したくない」

その言葉を待ち望んでいたかのように翼の口角が上がった。

「空は私がいないと何もできない普通の男の子……どうか見守ってほしい」
「……わかった」
「じゃあ、約束。指切りしよ?」

翼がそういうと私は翼の小指と私の小指を結ぶ。

「私が絶対に支えてみせるから」

私がそう言うと翼が震えている。
そして私を抱きしめた。

「私はパパの能力があるから分かる。……水奈ならきっと空を幸せにできるから」

翼が泣いてる。

「誓うよ……、必ず空と幸せになる」
「ありがとう」

その翌日翼は相変わらずの様子で空に接しているように見えた。
だけど私にはわかる。
少しずつ空を突き放して独り立ちさせようとしていることが。
突き放された空を受け取るのは私の役目だ。
翼が私に託した宝物。
絶対誰にも譲らないと誓った。
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