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1stSEASON
以心伝心
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(1)
「空、おはよう。急がないとラジオ体操間に合わない」
「おはよう翼」
僕は起き上がる翼は部屋を出る。。
今の翼に出来る精一杯の好意なんだそうだ。
着替えるとラジオ体操のやってる公園まで歩く。
父さんと母さんにとっての思い出の場所だと聞いた。
何もないあるのはブランコと砂場くらいのこの公園でなにがあったのだろう?
天音と水奈はそのブランコで遊んでいる。
あの二人は端から体操なんて真似をする気が無いらしい。
体操が終るとしっかり列に並んでハンコをもらう。
特段注意されることは無い。
朝の散歩という二人だけの朝を過ごすために夏休みだというのに態々早起きしてる。
もっとも水奈は自分ちの印鑑を勝手に押してバレて怒られたという実績を持つ。
僕達はそんな真似は許されない。
雨でも降らない限り、やむを得ない事情が無い限り母さんが無理にでも連れて行く。
家に帰ると朝食を食べる。
7月の間はずっと勉強詰めだ。
天音は純也達と遠坂家でしている。
そこまで気を使わなくてもいいのに。
天音の厚意を無にしないようにしよう。
今日も翼と一緒に勉強をしている。
夕方になると、天音が帰ってくる。
黄色のサマードレスを着た天音は大地を待つ。
大地の送迎が来るとそれに乗ってパーティ会場に向かう。
地元の名だたる人たちが集まるパーティ。
大地君の希望で天音を招待したそうだ。
美希さんも酒井君と行くって聞いた。
僕はリビングで父さんとテレビを見ている。
翼は自分の部屋で浴衣に着替えている。
浴衣姿の翼が2階から降りてくると一目見てそっと伝える。
「綺麗だよ」
翼は喜んでいた。
「じゃ、そろそろ行こうか」
父さんが言うと僕達は出かける。
街に着くと夕食を食べる。
駅ビルのフードコートで思いっきり食べる。
軽く腹が満たされるとゲーセンで遊ぶ。
ゲームは父さんが得意だ。
父さんが苦手なゲームジャンルはない。
何でもこなしてしまう。
天音のゲームの才能は父さんに似たのだろう。
そんな中翼の希望を叶えてやる。
2人のプリクラが欲しいらしい。
翼に付き合ってやる。
写真を撮ると二人で分ける。
翼は写真をスマホカバーに張っていた。
「そろそろ会場に向かおう」
父さんが言うと僕達は会場に向かう。
途中商店街にある短冊を見ながら
「空なら何てお願いする」
翼が聞いてきた。
躊躇うことなく答える。
「ずっと翼と一緒にいられますようにかな?」
「……そうなるといいね」
そう言う翼の笑顔はどことなく寂し気だった。。
商店街を抜け、市役所を通り抜け消防署の前を過ぎると会場に着く。
すでに人で一杯だった。
離れないように翼の手をしっかりと握りしめる。
父さんが場所取りしてくれるから僕達が出店で食べ物を買う。
そして父さんの所に戻り腰を下ろして食べ物を食べながら花火の打ち上げを待つ。
君がいた夏は遠い夢の中へ。
想い出は空に消えていく打ち上げ花火のように。
色んな思い出はいずれは打ち上げ花火のように空に消えていく。
そんな歌を思い浮かべながら花火を見ている。
だけど別にいいんじゃないか?と思った。
だって想い出はまた作ればいい。
いくらでも作り出せる。
打上花火は空に消えていく。
だけどまた来年花火はあるんだ。
何度でも何度でも繰り返していけばいい。
だからみんな口をそろえて言うんだろ?
「また来年も来ようね」って。
花火を見終わったら僕達は帰りに着く。
駐車場まで戻って車に乗ると家に帰る。
家に帰って風呂に入るともう時間は22時。
「また明日ね」
そう言って翼は部屋に戻る。
暫くして天音も帰ってきたようだ。
天音も風呂に入るとすぐに自分の部屋に戻る。
朝が終わり夜が訪れる。
夜が終り朝が訪れるまで僕達は眠りにつく。
また新しい物語を綴る為に。
(2)
大地の送迎が来ると私は靴を履いて外に出る。
立派な黒塗りの高級車。
ここから先は日常とはかけ離れた世界に入る。
知らない間に私は変わっていた。
変わることを望んでいたので問題はない。
いつもと違う少し窮屈な靴も我慢できた。
あの日自分の夢を知ったその日からそれは覚悟に変わった。
会場は街外れのホテルのパーティ会場。
美希を始め、知ってる顔も何人かいた。
祈や繭もそれぞれパートナーを連れて来ていた。
祈と陸、繭と天の周りは大人に囲まれていた。
それもそうだ。
2人とも、もしも将来を約束していたのなら地元の経済界では大事になる。
地元の経済を左右すると言ったら、大地も他人事じゃない。
大地にも有名な政治家や芸能人、そして会社の重鎮が挨拶に来る。
私はその度に食べるのを我慢して大地の隣にいき挨拶する。
それが大地には意外だったようだ。
「天音は食べてて良いよ。僕が対応するから。折角だから楽しんでよ」
「大地は私が隣にいると邪魔か?」
「そんなことはないけど……ちょっと話があるんだけどいい?」
「ああ、いいよ」
私達は壁際にある椅子に腰かける。
大地は私に言う。
「天音夏ごろからなんか様子が変なんだけど僕またミスした?」
「別に」
「じゃあ、何があったの?僕じゃ解決できないかもしれないけど力になりたい」
「そうだな……変わったと言われたら変わったかもな」
「どうしたの?」
「私が6月に大地の将来を聞いた事覚えてるか?」
「うん」
「その時パパと話して一人で考えてやっと見つけた月の導きってやつを信じようと思ってな」
夏が始まる前に見つけた将来の夢、大きな希望。
それが遠い未来にまた出会えると信じている。
「将来の夢、決まったんだ?」
大地が聞くと私がうなずいた。
「聞いてもいい?」
「ああ、大地にも関係あるしな……私も母さんの子らしい」
一度決めたら揺るがない。
「それはなに?」
「大地はあの時私に言ってくれた。『もし今の関係が続いていたらちゃんと伝えるから』って。だから私も覚悟を決めた。……私の夢は大地のお嫁さんだ」
大地は何も言わなかった。だから私が言う。
「将来の夢を決めたとき。一筋の光が夜の海を照らすように一筋の明りが見えた。その道を信じて歩くだけだ将来は決まってるから。だから……」
「だから?」
「結論から言う、私は大地と別の高校に行こうと思う。進学校には行かない」
また出会えると信じているから。
「大地のお嫁さんになる事は大きな希望、その日が来るまで私は自分がやりたい事をすることにした」
ちゃんと進路も調べた。その結論が大地と違う高校だ。
「それと天音の今日の異変と何の関係が?」
大地が聞く。
「言ったろ。とりあえず私の目標は『大地のお嫁さん』だって。だったら今のうちにこういう場での立ち振る舞い方も慣れておいた方がいい。そう思ってな」
「……僕が天音の負担になってる?」
「そんな事無い。ただ言ったろ?『私は母さんの子』だって何年かかっても自分の気持ちに正直に生きる」
見せかけの強さより、名ばかりの絆より、同じ時を生き抜いていく覚悟して。
私をこのまま攫って迫って。奪って、縛って。
「ありがとう、僕も自分の道を行くよ。別々の道かもしれないけどゴールが一緒なら大丈夫だよね」
大地はそう言った。
「どう?天音ちゃんは楽しめてる?また大地が何かしでかした?」
大地のお母さんがきた。
「いえ、私の我儘を聞いてもらっただけです」
「わがまま?」
「私がどこまでもついて行くからちゃんと攫って欲しいって」
「そうなの?それで大地はなんて答えたの?」
「ゴールが一緒なら大丈夫だよねって」
「……大地にしては上出来な答えね」
大地のお母さんの顔は明るい。
「困ったことがあったら私になんでも相談してちょうだい。望もちゃんと聞いてあげるのよ!跡取り息子の大事なお嫁さん候補なんだから」
大地のお父さんはただ笑っている。
「恵美、そろそろ時間だ。天音さんをお送りしないと」
大地の父さんが言う。
時間は22時になろうとしていた。
「そうね、大地ちゃんとしっかりお送りするのよ」
「うん」
大地のお母さんが言うと大地が返事する。
そして私達は会場を後にした。
帰りの間中大地は何か考え事をしていた。
そして車は私の家に着く。
「じゃ、またな。ちゃんとデートに誘えよ」
そう言って車を降りると大地は私と一緒に車を降りた。
どうしたんだ?
「おじさん達まだ起きてるよね?」
「多分起きてると思うけど、どうかした?」
「天音にだけ覚悟を決めさせて僕が決めないなんてズルいと思うから」
何をする気だろう?
玄関に一緒に入ると愛莉が来る。
「ここまで見送りに来てくれたの?ありがとね」
愛莉が言うと、大地が言った。
「今おじさんと大事なお話がしたいんですけど大丈夫ですか?」
「大丈夫だと思うけど……そういうことなら上がってゆっくりどうぞ」
愛莉は何か感づいたらしい。
大地とリビングのソファに座る。
愛莉がジュースを出してくれるが大地は手をつけなかった。
その代わり私の手を握ってた。
私は翼のような能力は持ってない。
だけど今だけは大地の気持ちが分かる。
だから少し恥ずかしかった。
パパが座る。
「話ってなんだい?」
パパが言った。
頑張れ、大地。
「大学卒業したらまたここに来ます。そしてその時に結婚の報告をします」
パパは何も言わない。
「天音さんは僕との結婚を決意してくれました。そして僕の母さんに伝えました。だから僕も自分の覚悟を伝えなきゃと思いお邪魔しました」
「……てことは恵美はこの話を知ってるの?」
愛莉が聞くと大地はうなずいた。
パパは黙ったままだった。
暫く静かな時間が流れる。
お爺さんもお婆さんも聞いてる。
「冬夜さんが何か言わないと終わりませんよ」
「……そうだね。大地君。愛莉が父親に僕のお嫁さんになるって言ったのは小6の時らしいよ」
まだ早いって言う事だろうか?
「結婚の報告まで来ないなんて寂しい事は言わずにいつでもおいで」
「冬夜さんそれじゃあ……」
「天音も愛莉の血を引いてるんだね。大地君これから大変だと思うけど頑張って」
「ありがとうございます」
「じゃ、今日はもう遅い。気を付けて帰ってね」
「はい、お邪魔しました」
「天音、玄関までお送りして」
「はい」
大地を玄関まで送る。
「じゃ、また連絡する」
「ああ、またな」
そう言って大地を乗せた車が見えなくなるまで見送った。
リビングに行くとパパに聞いてみた。
「パパ、本当にいいのか?」
「どうして?」
「こういう時普通は父親ッて怒るものじゃないのか?」
「娘の慶事だ。笑って見送ってやれって愛莉のお父さんは言われたらしいから」
まさかもうそんな話になるとは思ってもみなかったけどね。
父さんはそう言って笑う。
「天音ももう遅い。早く風呂に入って寝なさい」
「はい」
「冬夜、今夜付き合ってやる。麻耶。ビール用意してくれ」
「遅いんだからあまり飲み過ぎないでくださいよ」
そんな声を聞きながら部屋に入った。
本を読んでいた翼に話をする。
「よかったじゃん」
「ああ」
それから風呂に入って部屋に戻る。
翼はもう寝ていた。
私達はようやくスタートラインに立てた。
これから始まるのは約束されたゴールまでの長い恋の物語。
(3)
「あ、繭。いたいた」
祈の声がしたので振り返る。
祈とその交際相手江口陸がいた。
2人とも大分お疲れのようだった。
無理もない。
江口家と酒井家の交際というのは私達と同じ酒井家と如月家の交際くらい地元経済に影響をもたらす。
その証拠に森重市長までもが挨拶に来た。
まだ小学5年生だというのに。
気が早いってレベルじゃない気がするんだけど。
「祈もお疲れのようですね」
「繭と一緒だよ。色んな大人の相手して。こういうの苦手だから来たくないんだけどな」
交際相手がいるからご子息の相手はしなくて済むかと思ったらそれどころじゃなかったらしい。
その話を聞いたという事はひょっとして……。
「ひょっとしてお姉様も?」
私が言うとお姉様は少し照れていた。
「まさか小5で婚約するとは思ってみなかったよ」
「おめでとうございます」
「まだ早いよ」
そういうお姉様は少し嬉しそうだったけど相手の江口陸はそうでもないらしい。
まあ、小5の男子に女子一人の期待を背負うのは重荷なのかもしれない。
私は天の顔を見る。
そして考える。
「祈。お母様はどちらに?」
「ああ、向こうでまだ兄貴たちと話してるよ」
「天、行こう」
天の腕を掴んで歩き出す私。
そしてお母様の所に連れて行く。
「お母様。挨拶に来ました」
「そっちの子が繭の交際相手?」
「はい、如月天です」
「なるほどね……」
お母様は天を品定めするようにじっとみる。
「天君は繭の事どう思ってるの?」
「も、もちろん好きです」
「どのくらい好きなの?」
「え、えーと……世界で一番好きです」
「そう。じゃあ問題ないわね。繭は天君の事どう思ってるの?」
「ずっと支えて行けたらと思っています」
「そう。じゃあ問題ないわね。恵美。今日は良い日になったわ。私の子供達は皆将来の相手を見つける事が出来たみたい」
「よかった、これで安心できるわね。晶」
石原恵美さんとお母様がそう言って笑っている。
天は状況が良く分かっていないらしい。
「あ、石原先輩に酒井先輩」
天の両親。如月翔太さんと如月伊織さんがいた。
「伊織、朗報よ。天君とうちの繭の縁談がまとまったわ」
「え!?」
伊織さんは驚いている。
「う、うちの子はまだ小学校5年生……」
「伊織はうちの娘は不満だというの?」
「そ、そんな事無いですけど……いいんですか?」
「問題ないわ。今日はめでたい日だわ」
母さんは笑っている。
恵美さんも笑っている。
他の皆も笑うしかないといった様子だった。
1人考え込んでるのは天だけ。
私と天は両親を残して家に帰る。
車の中で天は言った。
「あのさ、本当に僕でいいの?」
「私自分を信じてますから」
「え?」
「あなたに一目惚れした時からこの日を待っていましたので。言ったでしょ?私は母様の血をちゃんと継いでるって」
「なるほどね」
その意味を理解したようだ。
「繭、あのさ……」
「指輪まだまだ待ちますよ」
「え?」
「まだまだ育ち盛りだしサイズだって変わるから」
「そうか……」
車は家の前で泊まる。
「じゃあ、また」
「はい、連絡待ってます」
車は走り出す。
暗闇の中をヘッドライトが照らして走り続ける。
一寸先は闇。
だけどその先には確かな光が見えていた。
あなたと私の距離は離れてる気がしない。
目をつぶってもあなたの声で分かる表情。
あなたに逢えないから俯いてる。
でも前向きに事を考えてる。
そんな時も同じ空の下ですごしてるから。
すぐにまた会える。
だったて私達は繋がっているから。
いつだって以心伝心二人の距離繋ぐテレパシー。
恋なんて七転び八起き。優しい風がほら笑顔に変える。
離れていても以心伝心。黙ってたってわかる気持ち。
想いよ届け君の元に未来繋いでく信号は愛のメッセージ。
この想い夜風に乗せ膝を抱くあなたに届け。
「空、おはよう。急がないとラジオ体操間に合わない」
「おはよう翼」
僕は起き上がる翼は部屋を出る。。
今の翼に出来る精一杯の好意なんだそうだ。
着替えるとラジオ体操のやってる公園まで歩く。
父さんと母さんにとっての思い出の場所だと聞いた。
何もないあるのはブランコと砂場くらいのこの公園でなにがあったのだろう?
天音と水奈はそのブランコで遊んでいる。
あの二人は端から体操なんて真似をする気が無いらしい。
体操が終るとしっかり列に並んでハンコをもらう。
特段注意されることは無い。
朝の散歩という二人だけの朝を過ごすために夏休みだというのに態々早起きしてる。
もっとも水奈は自分ちの印鑑を勝手に押してバレて怒られたという実績を持つ。
僕達はそんな真似は許されない。
雨でも降らない限り、やむを得ない事情が無い限り母さんが無理にでも連れて行く。
家に帰ると朝食を食べる。
7月の間はずっと勉強詰めだ。
天音は純也達と遠坂家でしている。
そこまで気を使わなくてもいいのに。
天音の厚意を無にしないようにしよう。
今日も翼と一緒に勉強をしている。
夕方になると、天音が帰ってくる。
黄色のサマードレスを着た天音は大地を待つ。
大地の送迎が来るとそれに乗ってパーティ会場に向かう。
地元の名だたる人たちが集まるパーティ。
大地君の希望で天音を招待したそうだ。
美希さんも酒井君と行くって聞いた。
僕はリビングで父さんとテレビを見ている。
翼は自分の部屋で浴衣に着替えている。
浴衣姿の翼が2階から降りてくると一目見てそっと伝える。
「綺麗だよ」
翼は喜んでいた。
「じゃ、そろそろ行こうか」
父さんが言うと僕達は出かける。
街に着くと夕食を食べる。
駅ビルのフードコートで思いっきり食べる。
軽く腹が満たされるとゲーセンで遊ぶ。
ゲームは父さんが得意だ。
父さんが苦手なゲームジャンルはない。
何でもこなしてしまう。
天音のゲームの才能は父さんに似たのだろう。
そんな中翼の希望を叶えてやる。
2人のプリクラが欲しいらしい。
翼に付き合ってやる。
写真を撮ると二人で分ける。
翼は写真をスマホカバーに張っていた。
「そろそろ会場に向かおう」
父さんが言うと僕達は会場に向かう。
途中商店街にある短冊を見ながら
「空なら何てお願いする」
翼が聞いてきた。
躊躇うことなく答える。
「ずっと翼と一緒にいられますようにかな?」
「……そうなるといいね」
そう言う翼の笑顔はどことなく寂し気だった。。
商店街を抜け、市役所を通り抜け消防署の前を過ぎると会場に着く。
すでに人で一杯だった。
離れないように翼の手をしっかりと握りしめる。
父さんが場所取りしてくれるから僕達が出店で食べ物を買う。
そして父さんの所に戻り腰を下ろして食べ物を食べながら花火の打ち上げを待つ。
君がいた夏は遠い夢の中へ。
想い出は空に消えていく打ち上げ花火のように。
色んな思い出はいずれは打ち上げ花火のように空に消えていく。
そんな歌を思い浮かべながら花火を見ている。
だけど別にいいんじゃないか?と思った。
だって想い出はまた作ればいい。
いくらでも作り出せる。
打上花火は空に消えていく。
だけどまた来年花火はあるんだ。
何度でも何度でも繰り返していけばいい。
だからみんな口をそろえて言うんだろ?
「また来年も来ようね」って。
花火を見終わったら僕達は帰りに着く。
駐車場まで戻って車に乗ると家に帰る。
家に帰って風呂に入るともう時間は22時。
「また明日ね」
そう言って翼は部屋に戻る。
暫くして天音も帰ってきたようだ。
天音も風呂に入るとすぐに自分の部屋に戻る。
朝が終わり夜が訪れる。
夜が終り朝が訪れるまで僕達は眠りにつく。
また新しい物語を綴る為に。
(2)
大地の送迎が来ると私は靴を履いて外に出る。
立派な黒塗りの高級車。
ここから先は日常とはかけ離れた世界に入る。
知らない間に私は変わっていた。
変わることを望んでいたので問題はない。
いつもと違う少し窮屈な靴も我慢できた。
あの日自分の夢を知ったその日からそれは覚悟に変わった。
会場は街外れのホテルのパーティ会場。
美希を始め、知ってる顔も何人かいた。
祈や繭もそれぞれパートナーを連れて来ていた。
祈と陸、繭と天の周りは大人に囲まれていた。
それもそうだ。
2人とも、もしも将来を約束していたのなら地元の経済界では大事になる。
地元の経済を左右すると言ったら、大地も他人事じゃない。
大地にも有名な政治家や芸能人、そして会社の重鎮が挨拶に来る。
私はその度に食べるのを我慢して大地の隣にいき挨拶する。
それが大地には意外だったようだ。
「天音は食べてて良いよ。僕が対応するから。折角だから楽しんでよ」
「大地は私が隣にいると邪魔か?」
「そんなことはないけど……ちょっと話があるんだけどいい?」
「ああ、いいよ」
私達は壁際にある椅子に腰かける。
大地は私に言う。
「天音夏ごろからなんか様子が変なんだけど僕またミスした?」
「別に」
「じゃあ、何があったの?僕じゃ解決できないかもしれないけど力になりたい」
「そうだな……変わったと言われたら変わったかもな」
「どうしたの?」
「私が6月に大地の将来を聞いた事覚えてるか?」
「うん」
「その時パパと話して一人で考えてやっと見つけた月の導きってやつを信じようと思ってな」
夏が始まる前に見つけた将来の夢、大きな希望。
それが遠い未来にまた出会えると信じている。
「将来の夢、決まったんだ?」
大地が聞くと私がうなずいた。
「聞いてもいい?」
「ああ、大地にも関係あるしな……私も母さんの子らしい」
一度決めたら揺るがない。
「それはなに?」
「大地はあの時私に言ってくれた。『もし今の関係が続いていたらちゃんと伝えるから』って。だから私も覚悟を決めた。……私の夢は大地のお嫁さんだ」
大地は何も言わなかった。だから私が言う。
「将来の夢を決めたとき。一筋の光が夜の海を照らすように一筋の明りが見えた。その道を信じて歩くだけだ将来は決まってるから。だから……」
「だから?」
「結論から言う、私は大地と別の高校に行こうと思う。進学校には行かない」
また出会えると信じているから。
「大地のお嫁さんになる事は大きな希望、その日が来るまで私は自分がやりたい事をすることにした」
ちゃんと進路も調べた。その結論が大地と違う高校だ。
「それと天音の今日の異変と何の関係が?」
大地が聞く。
「言ったろ。とりあえず私の目標は『大地のお嫁さん』だって。だったら今のうちにこういう場での立ち振る舞い方も慣れておいた方がいい。そう思ってな」
「……僕が天音の負担になってる?」
「そんな事無い。ただ言ったろ?『私は母さんの子』だって何年かかっても自分の気持ちに正直に生きる」
見せかけの強さより、名ばかりの絆より、同じ時を生き抜いていく覚悟して。
私をこのまま攫って迫って。奪って、縛って。
「ありがとう、僕も自分の道を行くよ。別々の道かもしれないけどゴールが一緒なら大丈夫だよね」
大地はそう言った。
「どう?天音ちゃんは楽しめてる?また大地が何かしでかした?」
大地のお母さんがきた。
「いえ、私の我儘を聞いてもらっただけです」
「わがまま?」
「私がどこまでもついて行くからちゃんと攫って欲しいって」
「そうなの?それで大地はなんて答えたの?」
「ゴールが一緒なら大丈夫だよねって」
「……大地にしては上出来な答えね」
大地のお母さんの顔は明るい。
「困ったことがあったら私になんでも相談してちょうだい。望もちゃんと聞いてあげるのよ!跡取り息子の大事なお嫁さん候補なんだから」
大地のお父さんはただ笑っている。
「恵美、そろそろ時間だ。天音さんをお送りしないと」
大地の父さんが言う。
時間は22時になろうとしていた。
「そうね、大地ちゃんとしっかりお送りするのよ」
「うん」
大地のお母さんが言うと大地が返事する。
そして私達は会場を後にした。
帰りの間中大地は何か考え事をしていた。
そして車は私の家に着く。
「じゃ、またな。ちゃんとデートに誘えよ」
そう言って車を降りると大地は私と一緒に車を降りた。
どうしたんだ?
「おじさん達まだ起きてるよね?」
「多分起きてると思うけど、どうかした?」
「天音にだけ覚悟を決めさせて僕が決めないなんてズルいと思うから」
何をする気だろう?
玄関に一緒に入ると愛莉が来る。
「ここまで見送りに来てくれたの?ありがとね」
愛莉が言うと、大地が言った。
「今おじさんと大事なお話がしたいんですけど大丈夫ですか?」
「大丈夫だと思うけど……そういうことなら上がってゆっくりどうぞ」
愛莉は何か感づいたらしい。
大地とリビングのソファに座る。
愛莉がジュースを出してくれるが大地は手をつけなかった。
その代わり私の手を握ってた。
私は翼のような能力は持ってない。
だけど今だけは大地の気持ちが分かる。
だから少し恥ずかしかった。
パパが座る。
「話ってなんだい?」
パパが言った。
頑張れ、大地。
「大学卒業したらまたここに来ます。そしてその時に結婚の報告をします」
パパは何も言わない。
「天音さんは僕との結婚を決意してくれました。そして僕の母さんに伝えました。だから僕も自分の覚悟を伝えなきゃと思いお邪魔しました」
「……てことは恵美はこの話を知ってるの?」
愛莉が聞くと大地はうなずいた。
パパは黙ったままだった。
暫く静かな時間が流れる。
お爺さんもお婆さんも聞いてる。
「冬夜さんが何か言わないと終わりませんよ」
「……そうだね。大地君。愛莉が父親に僕のお嫁さんになるって言ったのは小6の時らしいよ」
まだ早いって言う事だろうか?
「結婚の報告まで来ないなんて寂しい事は言わずにいつでもおいで」
「冬夜さんそれじゃあ……」
「天音も愛莉の血を引いてるんだね。大地君これから大変だと思うけど頑張って」
「ありがとうございます」
「じゃ、今日はもう遅い。気を付けて帰ってね」
「はい、お邪魔しました」
「天音、玄関までお送りして」
「はい」
大地を玄関まで送る。
「じゃ、また連絡する」
「ああ、またな」
そう言って大地を乗せた車が見えなくなるまで見送った。
リビングに行くとパパに聞いてみた。
「パパ、本当にいいのか?」
「どうして?」
「こういう時普通は父親ッて怒るものじゃないのか?」
「娘の慶事だ。笑って見送ってやれって愛莉のお父さんは言われたらしいから」
まさかもうそんな話になるとは思ってもみなかったけどね。
父さんはそう言って笑う。
「天音ももう遅い。早く風呂に入って寝なさい」
「はい」
「冬夜、今夜付き合ってやる。麻耶。ビール用意してくれ」
「遅いんだからあまり飲み過ぎないでくださいよ」
そんな声を聞きながら部屋に入った。
本を読んでいた翼に話をする。
「よかったじゃん」
「ああ」
それから風呂に入って部屋に戻る。
翼はもう寝ていた。
私達はようやくスタートラインに立てた。
これから始まるのは約束されたゴールまでの長い恋の物語。
(3)
「あ、繭。いたいた」
祈の声がしたので振り返る。
祈とその交際相手江口陸がいた。
2人とも大分お疲れのようだった。
無理もない。
江口家と酒井家の交際というのは私達と同じ酒井家と如月家の交際くらい地元経済に影響をもたらす。
その証拠に森重市長までもが挨拶に来た。
まだ小学5年生だというのに。
気が早いってレベルじゃない気がするんだけど。
「祈もお疲れのようですね」
「繭と一緒だよ。色んな大人の相手して。こういうの苦手だから来たくないんだけどな」
交際相手がいるからご子息の相手はしなくて済むかと思ったらそれどころじゃなかったらしい。
その話を聞いたという事はひょっとして……。
「ひょっとしてお姉様も?」
私が言うとお姉様は少し照れていた。
「まさか小5で婚約するとは思ってみなかったよ」
「おめでとうございます」
「まだ早いよ」
そういうお姉様は少し嬉しそうだったけど相手の江口陸はそうでもないらしい。
まあ、小5の男子に女子一人の期待を背負うのは重荷なのかもしれない。
私は天の顔を見る。
そして考える。
「祈。お母様はどちらに?」
「ああ、向こうでまだ兄貴たちと話してるよ」
「天、行こう」
天の腕を掴んで歩き出す私。
そしてお母様の所に連れて行く。
「お母様。挨拶に来ました」
「そっちの子が繭の交際相手?」
「はい、如月天です」
「なるほどね……」
お母様は天を品定めするようにじっとみる。
「天君は繭の事どう思ってるの?」
「も、もちろん好きです」
「どのくらい好きなの?」
「え、えーと……世界で一番好きです」
「そう。じゃあ問題ないわね。繭は天君の事どう思ってるの?」
「ずっと支えて行けたらと思っています」
「そう。じゃあ問題ないわね。恵美。今日は良い日になったわ。私の子供達は皆将来の相手を見つける事が出来たみたい」
「よかった、これで安心できるわね。晶」
石原恵美さんとお母様がそう言って笑っている。
天は状況が良く分かっていないらしい。
「あ、石原先輩に酒井先輩」
天の両親。如月翔太さんと如月伊織さんがいた。
「伊織、朗報よ。天君とうちの繭の縁談がまとまったわ」
「え!?」
伊織さんは驚いている。
「う、うちの子はまだ小学校5年生……」
「伊織はうちの娘は不満だというの?」
「そ、そんな事無いですけど……いいんですか?」
「問題ないわ。今日はめでたい日だわ」
母さんは笑っている。
恵美さんも笑っている。
他の皆も笑うしかないといった様子だった。
1人考え込んでるのは天だけ。
私と天は両親を残して家に帰る。
車の中で天は言った。
「あのさ、本当に僕でいいの?」
「私自分を信じてますから」
「え?」
「あなたに一目惚れした時からこの日を待っていましたので。言ったでしょ?私は母様の血をちゃんと継いでるって」
「なるほどね」
その意味を理解したようだ。
「繭、あのさ……」
「指輪まだまだ待ちますよ」
「え?」
「まだまだ育ち盛りだしサイズだって変わるから」
「そうか……」
車は家の前で泊まる。
「じゃあ、また」
「はい、連絡待ってます」
車は走り出す。
暗闇の中をヘッドライトが照らして走り続ける。
一寸先は闇。
だけどその先には確かな光が見えていた。
あなたと私の距離は離れてる気がしない。
目をつぶってもあなたの声で分かる表情。
あなたに逢えないから俯いてる。
でも前向きに事を考えてる。
そんな時も同じ空の下ですごしてるから。
すぐにまた会える。
だったて私達は繋がっているから。
いつだって以心伝心二人の距離繋ぐテレパシー。
恋なんて七転び八起き。優しい風がほら笑顔に変える。
離れていても以心伝心。黙ってたってわかる気持ち。
想いよ届け君の元に未来繋いでく信号は愛のメッセージ。
この想い夜風に乗せ膝を抱くあなたに届け。
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