姉妹チート:RE

和希

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1stSEASON

光の中の誓い

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(1)

「2人とも起きなさい~遅刻するわよ」

りえちゃんに言われて起きると2人で着替えてランドセル持ってダイニングに向かう。
朝ごはんを食べると準備をする。

「お~い、純也達いくぞ~」

天音達が迎えに来ると僕達は家を出て学校に行く。
茜は天音や水奈と話をしている。
空は翼と並んで歩いているだけ。
女子の会話に混ざるのもなんか気まずい。
後をついて歩いていく。
天音達は声がデカい。
だから少々離れていても話が聞こえる。

「茜は好きな男子とかいるのか?」
「いるよ、転校してきてすぐ告白された」
「お前すげーな!人気者なのか?」
「そんな事無いよ」

ここまでは普通の女子トーク。

「で、どこまでいったんだ?」
「それがさ、メッセージや電話のやりとりくらいでデートすら誘ってくれないんだよね」
「なるほど、大地と同じ腰抜けってことか!?」
「まだ子供だからそんなに魅力ないのかな~」
「だったら茜から無理矢理唇奪うくらいしないと!女子だって度胸が必要なんだぞ!」

毎日が退屈だとぼやいてる天音達にはいい話題の種なんだろう。
SHの名前を出すだけでちょっかいを出してくる輩はいない。
FGの方が規模的にはでかいのだけど。
兄と姉。片桐翼と空そして天音の存在がデカすぎる。
冷酷非情な一面を持つ翼は怒らせると年上だろう年下だろうと容赦しない。
相手が泣きわめこうが罰を与えていく。下級生からは恐れられている。
二度と自分に歯向かう気を起こさないように心理的恐怖を植え付けていく。
常日頃から過激な天音は怒らせると手に負えない。
教師が束になっても相手が気絶するまで……いや、息の根を止めるまで構わず攻撃を続ける。
「殺してミンチにして池にばらまいてやる」だのは誰も止めなければ本気でやるだろう。
そして今も「またFGが問題起こしたら喜一は投身自殺だ!」の一言に怯えてFGはSHに手が出せない。
この学校でSHを怒らせたら、片桐姉弟に手を出したら生き残ることはできない。
今ではそんな噂が流れてる。
それは俺達が姓を「橘」から「片桐」に変わってから実感した。
何も言ってないのに皆道を譲る。
ただでさえ転校生だというのに片桐の姓を名乗ってさらに浮いた存在になった。
そのことは3年生の中でも秘密にしてある。
SHにそんな噂が流れた途端に僕達の教室で刑が執行されるだろう。

「おい、純也聞いてるのか?」

天音が言ってきた。

「ごめん、聞いてなかった」
「だからお前は好きな人とかいないのか?」

妹の前だぞ言えるか!

「そういうのはいない」

多分これから先もそう言うのはないだろう。
そう思っていた。
学校に着くと昇降口で別れる。
教室に着くと机に荷物を置く。
自然とSHの皆の所に人が集まる
僕もSH以外に知り合いがいなかったので自然と輪の中に入っていた。
話をしていると担任が入ってくる。
皆席に戻る。
そして気づく、見知らない子が後について来ていることに。
担任は名前を書く。
田口緑というそうだ。

「今日から皆さんの新しいお友達の田口さんです。みんな仲良くしてあげてね」

担任がそう言った。

「田口緑です。よろしくお願いします」

何故か顔を俯いていた。

「席はそうね……片桐君の後ろが空いてるわね。あそこに行って」

先生がそう言うと静かに歩いてくる。
皆それをじっと見ている。
そしてすれ違った奴が皆気づく。
俺もきづいた。

「こいつ目の色おかしいぜ!」

そいつが言うと皆田口さんの目を見る。
田口さんの目の色は青色だった。
外人さんやお人形さんでしか見ないような目。
驚くのも無理はない

「静かに!田口さんは生まれつきなの。皆揶揄ったりしたら駄目だよ」

担任が言う。
だけどそんなのまだ小学校3年生に言っても無理だ。
事件は中休みに起こる。

「おい、お前顔みせろよ!」

黒頭巾をしなくてもそれがFGの連中だって事くらいみんな知ってた。
田口さんはFGの連中に取り囲まれる。

「お前本当は外人だろう?」

仮に田口さんが外人だったとしてそれがそいつらに何か関係があるのかと言いたいけど、そんな理不尽な言いがかりをつけて囲まれていた。
最初は田口さんもじっと耐えてた。
多分前の学校でも揶揄われていたんだろう。
だがそれがヒートアップすると彼女がキレた。
田口さんが立ち上がるとFGの連中に掴みかかり殴り飛ばす。
殴られたやつは派手に吹き飛んだ。まるで漫画みたいに。
俺は気づいた。目の色が赤くなっていることに。

「目の色がどうしたっちゅうんか!?そんなに珍しいんか!?だったらよく見らんか!」

止めようとする他のFGのメンバーも殴り飛ばされる。
ちょっとした騒ぎになる。
このままじゃまずい。
FGを助けるという不本意な行動に俺は出る。
後から抱き着いて無理矢理引き離す。

「お前も私を馬鹿にするんか!?」
「別に目の色くらい大したことない。肌の色が違う奴だって見てきた。気にならないよ。それより落ち着け。このまま先生来たらお前も転校早々問題児の仲間入りだぞ?」

そう言って説得する。田口さんは落ち着いたようだ。

「離して、もう大丈夫。落ち着いた。それより今の状態の方が恥ずかしい」
「あ、ごめん」

田口さんを離す。
それ以降田口さんを揶揄うものはクラスにはいなくなった。
しかし田口さんの噂はクラスを飛びこえて広まり、一目見ようと教室の外に人だかりができる。
そして田口さんと目が合うと騒いで逃げ出す。
クラスの中では一人浮いた存在になった。
僕は一度助けると気にしてしまう性分らしい。
給食の時間田口さんに声をかける。

「一人で食ってないでこっちに来いよ」

田口さんがやってくる。
SHの皆が話しかける。
何処から来たの?どこに住んでるの?趣味は?
質問攻めに戸惑いながらも答えていく田口さん。

「スマホ持ってる?」
「うん」
「連絡先交換しない?」
「え?」
「こういう時のこつってさ。とりあえず適当な群れの中に入っておくといいみたいだから。転校生を上手くやる方法」

同じ転校生だった僕が言うんだから間違いない。
田口さんと連絡先を交換するとSHに招待する。

「困ったことがあったらここにいる誰かに相談しなよ。大抵の事は解決するから」
「ありがとう」

田口さんが言う。
田口さんがSHに入った。
その事実が周知された途端に田口さんの虐めはとまった。
SHに手出しは許されない。
それはこの学校での暗黙のルールだった。
学校が終ると、僕は茜と家に帰る。
家に帰るとまず宿題をする。
それから遊ぶ。
茜はノートPCで何かしてる。
茜の学習能力は凄い。
ノートPCを買い与えられてからすぐに色んな情報を仕入れてくる。
真っ黒な情報も。
そして知らない会社の会員専用サイトを除いたり。
ネット販売の会社から顧客のクレカの情報を取ったりして遊んでる。
もちろん悪用したりしない。
それを匿名のメールでその会社に送りつけたりする程度だ。

「み~つけた」って一言残して。

いつしか茜は自分の事を「スカーレット」と名乗るようになった。
しかしそんな遊びも退屈になった。
それから彼女はハッカーやクラッカーに対抗する「ホワイトハッカー」として過ごしている。
そんな仲間たちとチャットをしたりして遊んでる。

「ねえ?お兄ちゃん」

ノートPCを操作しながら茜が言う。

「どうした?」
「どうして緑ちゃんを助けたの?」
「わかんない」
「お兄ちゃん緑ちゃんの事好きなの?」

妹ながらに心配になったみたいだ。
お兄ちゃんをとられちゃったんじゃないかって。

「それはないよ」
「そっか……」

俺はゲーム、茜はインターネット。
それぞれの趣味で時間を過ごして夕食を食べて風呂に入るとリビングでテレビを見る。
21時になると部屋に戻り2人で寝る。
俺が誰かを好きになるなんてことはない。
俺を誰かが好きになるなんてことはありえない。
そう思っていたのにまさか翌日に否定されるとは思ってもみなかった。

(2)

桜子が教室に入ろうとするとサランラップで妨害された。
本当にすぐそう言う罠にはまるな桜子は。
昼休みに3年生が1人SHに入ったようだ。
転校生らしい。
転校生の多い学校だな。
そんな事を考えながら大地と次のデートの約束をしながら給食を食べてた。
昨夜の番組見た?
昨日火災があったんだって。
ニュース見た?
そんなありふれた話題を耳にしながら私は退屈と言う時間を過ごしていた。
去年の今頃はなにしてたっけ?
そんな事も考えていた。
なずなや花と一緒に買い物サイトを見ては服を探している。
そして授業を受ける。
誰も騒ぎ出す奴はいなかった。
騒ぎだしたらそいつはSHの標的になる。
正義感を持ってやっているわけじゃない。
単に弄る相手が欲しいだけ。
学校が終ると家に帰る。
帰ると宿題を済ませて大地とメッセージのやり取りをする。
もちろんSHのチャットも見ている。
夕食を食べると風呂に入って部屋で暇をつぶす。
22時になると翼が戻ってくる。
空の部屋から戻ってくる翼はいつも機嫌がいい。
喧嘩とかしないのか聞いていた。

「しないよ」

即答だった。

「天音だって大地と喧嘩しないでしょ?」

まあ、そうだな。

「空って私の気持ち必死に読み取ろうとしてくれるから嬉しいんだよね」

翼はそう言う。

「でもいいのか?翼は……」
「……あと一押しだから。私のやれることはやったつもり」
「それならいいんだけど」

でも、やっぱり翼も躊躇ってるんじゃないのか?
翼の空に対する態度を見てるとそうとしか思えない。

「じゃ、私寝るね。おやすみ」
「おやすみ」

私も寝るか。
ベッドに入る。
そんな日常生活をすごした。

(3)

あれ?
下駄箱に何か入ってる?

「放課後教室で待ってます。石原梨々香」

これって噂のあれか?

「どうしたのお兄ちゃん?」

茜が言うと無意識にそれを隠していた。

「何でもない」
「そう?」

茜はそれ以上追及してこなかった。
教室に入ると石原さんの姿を探す。

「おはよう純也君」

石原さんの方が俺を先に見つけたようだ。

「お、おはよう」

石原さんの機嫌は良さそうだ。
手紙の事聞いてみるか。

「あのさ……下駄箱の」
「今日も運動会の練習あるらしいよ!運動着持ってきた?」
「持ってきたけど」

触れられたくない話題なのか?

「放課後にちゃんと話すからそれまで待って」

石原さんは僕の耳元で囁く。

「わかった」

そう言うと石原さんは他のSHの女子たちと話を始めた。
授業をぼんやりと聞きながら石原さんの手紙について考えていた。
そして無意識に石原さんをみると石原さんと目が合う。
慌てて黒板を見る。
そんなのを繰り返していた。
給食の時もそうだった。
そして放課後になる。

「茜。先に帰ってて」
「どうしたの?」
「ちょっと用事があるんだ」
「……ひょっとして朝隠したのラブレター?」

こういう時の女子の勘って異常に鋭いって聞いた。

「まあね」

別に妹だし隠す事でもないだろう。

「お兄ちゃんもモテるんだね。じゃあ、昇降口で待ってる」

兄の彼女が気になるんだろう。

「わかった。そんなに時間はかからないと思うから」
「またあとで詳しく話聞かせてね」

そう言って茜は教室を出た。
皆が出るのを待って机に突っ伏して待っていた。
やがて教室は俺と石原さんの2人きりになった。
だけど石原さんは何も言わない。
僕から言った方がいいのか?

「あのさ、石原さん……」
「手紙の件だよね?」

先に言われた。

「うん、何の用?」
「純也君が転校してきたときからずっと純也君の事見てた」
「うん」
「笑わないで聞いてね。……私純也君の事好きみたい」

笑いはしなかった。だけど疑問があった。

「僕のどこを好きになったの?」
「そうだな、最初はまたすごいひねくれた子が来たなって思った。でも純也君がSHに入って純也君が変わっていくのが分かった。少しずつだけど皆に打ち解けていく純也君をずっと見ていた」
「それが理由?」
「うん、でも本当は理由なんてないのかもしれない。初めて会った時から純也君を見てたわけだし」

一目惚れか……。

「ありがとうね、待っててくれて」
「え?」
「言えてすっきりした。もう悔いはない」

石原さんの顔を見るとうっすら涙を浮かべていた。

「田口さんを助けている純也君を見てやばい!と思った。きっと田口さんも純也君を好きになる。田口さんに取られるんじゃないかと思った」

同じ取られるなら玉砕してしまえ!
それが石原さんの真意だった。

「おかしな話だよね。色っぽさも女らしさの欠片もない私が一人前に恋をするなんておこがましいよね」

涙を流しながら笑ってる。
そんなものを兼ね添えている小学3年生がいるなら見てみたい。

「もう、いいよ。私ちょっと立て直してから帰るから。あんまりみっともない姿見られたくない」

1人で納得して1人で完結して……随分自分勝手な話だ。

「それってさ、卑怯じゃない?勇気ある行動だと思ったけどやってることはただの逃げじゃん」
「純也君はこれ以上惨めな私を見たいわけ?」
「決めつけるなよ、僕はまだちゃんと返事をしたわけじゃない」
「え?」
「天音が言ってた、ここが僕の流れ着いた場所だからゆっくり休んで行けって。その休む場所を石原さんが提供してくれないか?未だにしっくりこないんだ」
「……私なんかでいいの?」
「自分で女らしくないって言ってるけど。今の石原さん……しっかり女の子をしているよ」

今の姿はただの恋する乙女じゃないか。

「……お願いが二つあるんだけど聞いてもらえるかな?」

石原さんが言った。

「ああ、いいよ」
「まず一つ。私の事梨々香って呼んで」
「わかった。もう一つは?」

梨々香は僕に抱き着いた。

「ちょっとだけこのままいさせて」

梨々香の鼓動が伝わってくる。
僕の鼓動が伝わっているのだろうか。
梨々香が震えてる。
顔を見ないようにしてやった。
きっと見られたくないだろうから。
梨々香の震えが止まる頃に僕は言った。

「そろそろ帰らないか?妹待たせてるんだ」
「あ、ごめん」

そう言うと梨々香は僕から離れる。
そんな梨々香の手を取った。

「ひ、人に見られるよ!」
「この小学校じゃ当たり前らしい、少なくともSHの中では普通だ」
「……そっか」

梨々香は笑っていた。
梨々香と手をつないで昇降口に向かう。
昇降口には茜が待っていた。
茜は僕の手をみて笑った。

「梨々香ちゃんだったんだ」
「茜、ごめん……」
「しょうがないよ。そういうもんだし」
「……帰り道途中まで一緒だろ?一緒に帰ろう?」

俺が提案すると梨々香はうなずいた。
そして3人で帰る。
途中で梨々香と別れる。
茜と家に帰る。
いつもと同じように宿題を済ませる。
茜はチャットをしている。
僕は梨々香とメッセージのやり取りをしていた。
流れ着いた場所での休息は終わった。
また新しい風に流されていく。
2人で光の舟に乗る。
風の始まりの音を奏でた。

(4)

「空、今日暇か?」

水奈からの個別メッセージだった。
今日は翼はレッスンに出かけていて家にいない。
天音も大地とデートに行ってる。

「暇だけど?」
「ボウリングでもしてスカっとしないか?」

それってデートなんじゃないのか?

「ただ友達と遊ぶだけだよ。気にするな」
「……わかった」

水奈に返事を送ると出かける準備をして、自転車に乗ると出発する。
ボウリング場はショッピングモールのそばのパチ屋の上にある。
水奈は入り口で待っていた。
いたって普通の恰好だった。

「お、きたきた。じゃ、早速行こうぜ」

水奈について言って靴を借りてボールを選ぶ。
水奈はボウリングが上手い。
それに引き換え僕は翼とリンクしていないと球技が苦手になる。
溝掃除をしていた。

「空ってボウリング苦手だったか?前に来た時は……」
「あの時は翼がいたから」

水奈に説明すると水奈は沈んでしまった。
が、次の手を考えていたみたいだ。

「このゲーム終わったらカラオケ行こうぜ!それなら大丈夫だろ?」
「……カラオケはいつも翼に合わせてデュエットしてるだけだったから」
「うーん……じゃあゲーセン行こう!」

水奈はそう言って僕をショッピングモール内のゲーセンに連れてきた。
天音と違ってゲームもそこまで得意なわけじゃない。
中でも音ゲーは特別苦手だった。
上級者向けの曲を軽々とこなす水奈に引き換え僕は初級をクリアするのがやっとだった。
僕が楽しくないと水奈も感じたんだろう?
ベンチに座ると水奈にジュースを奢ってもらう。

「あれから翼とはどうなんだ?」
「普通だよ、ただ……」
「ただ、どうした?」
「必要以上に甘えて来なくなった」
「そうか……」

そう言って水奈は何かを考えている。
そして思いついたようだ。

「ちょっと来い」

水奈はそう言ってプリ機のコーナーに連れてきた。
適当な機種を選んでプリを撮るとその画像をスマホに送信する。

「それホーム画面にしとけ。たまにチェックするから」
「無理だよ……」

そんなの翼に見られたら……。
そんな僕の意思など水奈には関係ないらしい。

「そろそろ帰るか」

そう言って二人で帰る。
途中の小さな公園によるとブランコに座る。
そして水奈が話し始めた。

「これは私の勝手な推測だ。違うと思ったらそれでもいい」
「うん」
「翼は今悩んでいる。空を一人残して旅立つのをためらっている」

そんな気はしてた。

「その原因は空だ。空は翼がいないと何もできないダメな奴。翼がいない時誰が空を見てやれる?そんな迷いが翼の中にあるんだと思う」

だから思いっきり飛び出せない。
僕が翼の足かせになっている。
きっと水奈の言う通りだろう。

「空はこのままでいいと思ってるのか?翼は空を気にして飛び立てないんだ。空はこのまま翼の足を引っ張るつもりか?」

本当に好きな人が何かをしようと思いきってるならその背中を押してやるのが愛情だと母さんも言ってた。

「水奈は僕はどうすればいいと思う?」
「そんなの考えるまでもないだろ?」

翼がなくても空を飛べる。そう言って安心させてやればいい。

「……どうしたらそう翼に伝えることができる?」
「だから今日プリを撮ったんだよ」
「え?」
「仮でもいい。空には他の彼女がいる。それだけで翼を安心させることができる」

僕は翼以外に頼れる人がいる。1人なんかじゃない。大丈夫だよって言い聞かせればいい。

「はっきり言う。今の空は翼が優しいからって甘えてるだけだ。そろそろ自分の翼を広げる時じゃないのか?」
「……そうだね」

水奈の言葉で何かが吹っ切れた気がする。
僕はスマホを取り出すと水奈と撮った写真をホーム画面に設定した。
水奈もそれを見て満足したようだ。

「じゃ、帰ろうぜ」

その後水奈を家に送って僕も帰った。
家に帰ると先に翼が帰っていたようだ。

「どこに行ってたの?」

翼が聞いてきたのでちゃんと答えた。

「水奈と遊んでた」
「水奈と?」

翼が聞き返して来たのでスマホの画面を見せた。

「そっか……」

翼は少し寂しそうだったけどにこりと笑ってくれた。
これでよかったのかどうかは分からない。
さらに翼が遠くに感じるようになった。
でも翼はいつまでも僕の側にいる事は出来ない。
きっと今翼が飛び出す瞬間なんだろう。
足手まといになるべきじゃない。

「今だよ」

そう言って翼の背中を押してやるのが僕が翼に出来る最後の事。

頑張れ。

僕も頑張る。
それが僕と翼の光の中での誓い、
だけどその時僕は忘れていた。
翼の事ばかりに気をとられて気づけなかった。
水奈の気持ちなど微塵も考えていなかった。
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