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1stSEASON
白い光
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(1)
「行ってきま~す!」
天音の元気な声が響く。
冬だというのに本当に元気だ。
雪は降らないけどやっぱり寒い。
そんな思いも今日までだ。
今日は終業式。
明日から冬休みに入る。
冬休みに入ればクリスマスがある。
冬吾と冬莉の誕生日だ。
冬吾達は最近喋るようになった。
「パパ」と初めて言った時パパは感激してた。
もちろん「ママ」も言えるようになってる。
日々成長していく2人を見守りながら我が家は今年は平和に過ごせた。
天音はこの1年で変わった。
翼が言うには天音にも目標と夢ができたらしい。
夢は大地のお嫁さん。
天音の口からそんな言葉が出るとは思わなかった。
目標はまだ秘密なんだそうだ。
ただ、進路が決まったと張り切ってる。
夢を叶える為の準備をしているらしい。
これまでも何度か大地にパーティによばれたらしいが、母さんに礼儀作法を学んでいた。
「大地に恥をかかせたくない」と言う理由なんだそうだ。
人間夢や目標が決まると変われる強さを持てるらしい。
それからSHの5年生組は変わった。
天音が変わったのだから仕方ない。
皆で集まっているが悪戯等は一切しなくなった。
「ガキ臭くてやってらんない」
そう意識するようになったんだそうだ。
FGにおもちゃを取られたというのもあるんだろうが。
純也と茜も学校に馴染んだようだ。
純也は彼女ができて変わった。
茜にも彼氏がいるようだ。
その前から変化は会ったけど益々変わった。
茜も前は大人しかったけど、最近茜の悪戯が学校で問題になった。
チャットで水奈のお父さんと会話しているらしい。
変な会話じゃない。
普通の会話だった。
ある意味普通じゃないけど。
茜のチャットん友達は皆大人なんだそうだ。
そこで本で得たプログラミング等の知識をさらに深めているらしい。
プログラミングとネットワークの知識だけなら大学生並みの知識を有しているのだとか。
ハッカーのクラスで言うと「グル」と呼ばれるレベルの技術を身につけているのだとか。
分かりやすく言うととあるOSの開発者が同じ様に「グル」と呼ばれている。
普通にしていれば明るい純真無垢な少女なのに。
純真無垢だからこそ何でも吸い取っていくのだろう。
末恐ろしい子だ。
学校に着くと昇降口で皆別れる。
そして教室に入ると今日も皆が集まっている。
「おはよう」
「あ、空おはよう」
光太が返事した。
高槻先生が教室に入ってくると皆席についた。
朝礼が終ると体育館で終業式がある。
終わると教室に戻って終礼をして帰った
(2)
12月24日。
日本中の恋人達が盛り上がる夜。
僕は翼と家でゲームをしていた。
と、いっても僕がゲームをしてるのを翼が隣で見てるだけだけど。
翼はゲームが苦手らしい。
でも見てる分には楽しいらしい。
それはきっと僕と同調しているから。
僕達双子は「共鳴」という能力を持つ。
ありとあらゆる能力を「共有」し気持ちを「同調」することができる。
僕が「楽しい」と感じればその気持ちを翼も感じることができる。
ある出来事がきっかけでそれは強くなった。
お互いがお互いを好きだと思う気持ちを確かめ合う事ができる。
その代償に翼の気持ちが僕から離れていくのも分かってしまう。
翼は必死に隠そうとしてるけど。
それが悲しかった。
でも水奈に言われて気づかされた。
僕は誰よりも翼を応援してやらないといけないんだ。
翼の背中を押してやれるのは僕だけ。
だから僕も変わろうと必死になってる。
そんな僕を翼は優しく見守ってくれている。
妹の天音は冬吾と遊ぶことが多くなった。
天音の中でも何か心境の変化が起きているのだと母さんは言ってた。
天音は自覚してないらしいけど。
天音は今までが反抗期みたいなものだったので性格が逆転したのかもしれない。
22時になると翼は部屋に戻る。
僕もゲームを止める。
ベッドに入りスマホを弄る。
翼とメッセージでやり取りをしていた。
天音はもう寝たらしい。
翼の反応も無くなった。
寝たんだろう。
そうして僕達は聖夜を迎えた。
(3)
12月25日。
クリスマス。
神様が生まれた日。
そして冬吾と冬莉の誕生日。
朝起きると枕元には欲しかったゲームソフトがおいてあった。
天音は江口家のクリスマスパーティに招待されている。
朝からそわそわしていた。
母さんも冬吾と冬莉の世話をしながらクリスマス料理をお婆さんと一緒に作っている。
翼はその間の冬吾達の世話をしていた。
僕は父さんと一緒に部屋の飾りつけをしている。
夕方頃になると大地が迎えに来た。
天音はパーティドレスを着て髪形も母さんにセットしてもらって出かける。
凄く大人しくなっていた。
「あの子も大人になっていくんだな」
「そうですよ。女の子は成長がはやいんですから」
両親がそう言っている。
父さんはちょっと寂しげだった。
夜になると遠坂家のお爺さん達と純也と茜が来る。
父さん達はシャンパンを、僕達はシャンメリーを取り乾杯する。
主役は冬吾と冬莉。
自分の事を祝ってくれてると分かっているのだろうか?
冬吾達は、はしゃいでいる。
テレビはクリスマス特番の歌番組が流れている。
料理を食べてる僕達には関係なかったけど。
料理を食べ終わると翼は片づけを手伝っていた。
僕達はテレビを見ている。
片づけが終ると翼と風呂に入る。
風呂を上がる頃には遠坂家の人達は帰っていた。
僕達は部屋に戻ってゲームをしていた。
23時頃天音が帰ってくる。
「天音、寝るならお風呂入ってからにしなさい」
母さんの声が聞こえる。
天音が僕の部屋に入らなくなったかわりに僕も天音たちの部屋に入らなくなっていた。
日が変わる前に僕は眠っていた。
(4)
12月25日。
今日は江口家でパーティがある。
江口家までは大地の世話係の新條さんが送ってくれる。
夕方ごろ呼び鈴がなった。
「天音、お迎えが来ましたよ」
何度も鏡を見てチェックする。
そして部屋を出て家を出る。
送迎の車に乗ると大地が隣に座っていた。
大地は私の異変に気が付いたらしい。
「今からそんなに緊張しなくてもいいよ。いつもどおりでいいから」
そう言って大地は私の手を握る。
大地の手が大きく感じた。
今日の大地はいつもよりも一際頼もしく思える。
今日だけは大地に頼ろう。
そう思った。
江口家は大きい。
大地の母親、石原恵美の実家らしい。
江口グループの元締めの家。
鷲見のどこにこんな広大な土地があったんだと思うくらいの広さだった。
玄関を通るとパーティホールに通される。
沢山のご馳走がある。
だけど今日は我慢。
挨拶をして回る大地について行く。
「綺麗なお嬢様ですね。どちらのかたですか?」
「片桐と申します」
「片桐?聞いたこと無いわね」
首をかしげる客人に大地のお父さんが言う。
「片桐さんは家が経営してる会社の税理士でいつもお世話になってるんです」
「あら、そうでしたの。失礼しました。可愛らしいお嬢様ね」
「ありがとうございます」
そんなやりとりを何十回も繰り返している。
想像がつかなかった。
私なんてただの庶民の家。
大地がいなかったら絶対に足を踏み入れる事のない世界。
今まで、どんな年上の大人が相手でも怖いと思ったことは今まで一度もなかった。
だけど、今日は朝から緊張していた。
私が何かをすれば大地の顔に泥を塗ることになる。
この世界が怖かった。
世界に怯えていたんだ。
「天音、ちょっとこっちに」
大地にエスコートされテーブル席に座る。
「少し待ってて」
そう言って大地はどこかへ行く。
その間この部屋を見回していた。
みんな華やかなドレスを着ている。
私はどんな目で見られているんだろう?
みすぼらしい娘だと笑われているのだろうか?
1人でいることが恐ろしかった。
「あれ?天音じゃん。大地はどうした?」
陸と祈がきた。
「ちょっといま席を外してる」
「大丈夫か天音、顔色悪いぞ?」
「大丈夫……」
「天音ちゃん?大地は何してるの?」
大地のお母さんが来た。
「何か用があるらしくて」
「あの子は全く……」
「あ、私は大丈夫ですから」
大地が料理を取って戻ってきた。
「はい、これでも食べて少し落ち着いた方がいいよ」
「大地あなた何やってるの!」
大地のお母さんが怒ってる。
「天音具合悪そうだから少し休んでもらって、料理でもたべてもらおうと」
「『ちょっと料理取ってくる』の一言くらい言えないの!?天音ちゃんに心細い思いさせるなんて!」
「ご、ごめん!」
「ちゃんと天音ちゃんの面倒見てなさい!」
そう言って大地のお母さんは去っていった。
「大地、ごめん」
私のせいだよな。
「僕の方こそごめん、まだ気配りが上手くできないみたいだ」
「大地の言う通りだ。天音らしくないぜ。もっと堂々としてろよ。お前の不始末くらい大地がちゃんとするよ」
祈が言う。
「それじゃ、ダメだろ。私が大地の足引っ張ってる」
「天音?」
祈が私の異変に気付いた。
こんな思い生まれて初めてだ。
恥ずかしいとか悔しいとか申し訳ないとかいろんな気持ちが入り交ざって涙に変わって流れていた。
大地も突然泣き出した私に慌てふためいている。
落ち着け、私。
こんな姿大地の母さんに見られたらまた大地が怒られる。
だけど焦れば焦るほど止まらない。
見るに見かねた祈が私の手を取る。
「大地、ちょっと天音借りるぞ。陸と適当に誤魔化しておいてくれ」
「わかった」
私は祈とテラスに出る。
さすがに何も羽織って無いから寒い。
「今日は一段と冷えるな。雪でもふるんじゃないか」
祈が言う。
「そんなに力むことはねーよ。まだ私達11歳だぜ」
「でも大地だって同じだろ……」
大地と同じ道を歩むと決めたならしっかりしないと。
「天音は基本は変わってないんだな。自分で道を切り開こうとする。そして大地はそれに懸命に追いつこうとしてる」
「祈は違うのか?」
「私は天音と違う。別に何かを背負うわけじゃないからな」
「私だって背負ってるわけじゃない」
「嘘ついてる事くらい私にも分かるぞ。天音は大地と一緒の道を選ぶ。石原家って看板を大地と背負いこもうとしてるだろ?」
それがいけないことなのか?
あいつに負担をかけたくないって思う事が悪い事なのか?
「あいつはお前にこれ以上負担をかけたくないと思って言わないんだろうけど、私は言わせてもらう。大地はお前と一緒に看板を背負うなんてことを望んでないよ」
え?
私じゃやっぱり力不足なのか?
急に不安になった。
大地は何を考えている?
「祈には大地が何を考えているのか分かるのか?」
「はっきりわかるね」
「なんだよそれ?」
「あいつはお前の前に立っていたいんだ。今はお前に必死に追いつこうとしてるけど、いつかお前の前に立ちたいと思ってる」
「どういう意味だ?」
「天音は女だ。大地もああみえて立派な男なんだよ。大好きな人を守りたい。男なら当然の感情だろ?」
大地は私を守りたい。
考えたことも無かった。
でもよく考えたら初めての時からそうだった。
私を守るために力を手に入れようとしていた。
がむしゃらに進む私のそばには常に大地がいてくれた。
「天音は強いよ。でも天音にも弱点はある。例えば今日のパーティみたいな時だ。でもそれが悪いってわけじゃない。弱くていいんだよ。甘えて良いんだ」
「私はどうしたらいい?」
「そろそろ大地を頼ってもいいんじゃないのか?」
祈はそう言った。
「天音だって女の子なんだ。大地を好きでいるって決めたなら。信頼して背中を預けていいんじゃないのか?」
「……私も女の子か」
当たり前だけど、ちょっと悔しいけど。
隣り合わせた人を思い遣る魂よ。
私の涙は止まっていた。
私の中にある熱い何かが沸き上がる。
私にはまだ覚悟がたりなかった。
私は一人で立っているんじゃない。
振り返れば大地がいる。
私に必要な覚悟。
それは、大地に身を委ねる覚悟。
そう決めた時祈は言った。
「……そろそろ行こうか?」
「ああ、行こう」
私達は2人の元に戻る。
「天音、大丈夫?」
大地が聞いてきた。
「もう大丈夫」
そう言って大地が持ってきた料理を食べる。
「まだ足りないよね?取ってくるから待ってて」
そういう大地の服を掴む。
ちょっと恥ずかしいけどでも勇気を出して言ってみた。
「一人にしないで」
「……わかった」
繰り返し何度も過ちを犯して私達は進んでいく。
今までもこれからも。
違うのは、私がミスしても大地がフォローしてくれる。
大地をもっと信頼しよう。
そう思った時大地が少しだけ大きく見えた。
パーティが終ると私は大地と家に帰る。
「今日はお疲れ様」
「こっちこそありがとう。……なあ大地」
「どうしたの?」
「一つだけお願いしてもいいか?」
「いいけど」
私は大地の肩に寄り添う様に身を預ける。
「家に着くまでの間でいいからこうしていさせてくれ」
「……わかった」
交わす言葉もなくただ身を預ける。
少しだけ楽になる。
家に着くと車を降りる。
「じゃあ、また」
「ああ、今度は年越しパーティだっけ?」
「そうだけど、天音無理してない?」
「どういう意味だ?」
「こういうパーティ苦手なら断ってくれても」
「私を誘わないで誰を誘う気だ?もう浮気か?」
「そ、そういうつもり言ったんじゃなくて……」
「……私は大地を信頼するって決めた。だから大地も私を信頼してくれ。私だって成長してるつもりだぞ?」
「じゃあ、また連絡する」
「ああ、またな」
そう言うと家に帰る。
疲れがどっと出た。
部屋には翼が戻ってる。
もうそういう時間か。
ベッドに倒れ込む。
「天音、寝るならお風呂に入ってからにしなさい。それとドレスが皴になるから脱ぎなさい」
「は~い」
愛莉はそう言って下に降りて行った。
「どうだった?美味しい料理食べれた?」
翼が聞く。
そういやほとんど食べてないな。
「緊張してそれどころじゃなかったよ。まだ私には難しい世界らしい」
「なるほどね」
でもいつか必ず乗り越えてやる。あいつが胸を張って自慢できる淑女になってやる。
でもとりあえず腹減った。
「愛莉~腹減った。何か食うものない?」
「天音ご馳走食べて来たんじゃなかったの?」
「ほとんど食う暇なかったんだって」
「その癖も直さないとそのうちその体型維持できなくなっても知りませんよ」
「それは翼もいっしょだろ!」
「今からラーメン作ってあげるからお風呂入ってきなさいな」
「は~い」
私の成長はまだ続く
(5)
12月25日。
今日は江口家のパーティに呼ばれていた。
もう俺は江口家の親戚になっているらしい。
俺は今石原美希と付き合っているから。
で、石原美希の母親、石原恵美が江口家の一人娘。
だから僕は親戚の仲間入りってわけ。
地元の政経界のお偉いさんが挨拶にさっきから切れ目なく来てその対応に追われてる。
それだけじゃない。繭が天君と手を組んだ事で地元産業のほとんどを独占してしまっている。
そのカギを握るのが美希の母さん石原恵美の機嫌一つなんだからそりゃもうみんなご機嫌取りに来るわけだ。
そんな大ごとになってることに気付かないでのこのこと迷い込んだ憐れな子がまたいる。
ご愁傷様。
話はこれだけじゃ終わらない。
江口家の親戚に市長の秘書がいる。
今の情勢だったら間違いなく次は県知事選に当選するだろう。
そうすると市長選には県議会議員の如月祐貴が出馬することが噂されてる。
噂という言い方は生易しい。
出馬するからよろしくねと言う意味だ。
もっというと投票しなかったらどうなるか分かってるだろうな?という脅しだ。
僕達は政界にも進出するみたいだよ。
噂では白鳥グループも進出してきてるらしい
地元を支配する気でいるらしい。
だから僕みたいな若造に現職の県知事が挨拶に来てる。
俺に出来る事なんて何もないのに。
パーティも終盤を迎え一息ついたところで隣で一緒に対応していた美希が服を引っ張った。
「ちょっといいかな?」
「いいけどどうかしたのかい?」
「うん、ちょっと外の空気吸いたくて」
気持ちは分かるけどその格好じゃ寒いんじゃないのかい?
ライトグリーンのワンピースドレスを着ている。
そんな事関係なしに俺達はテラスに出る。
案の定彼女が寒そうにしている。
見るに見かねて上着を脱いで美希の肩にかけてやる。
「ありがとう、でも学が寒いんじゃ」
「このくらいなんてことないよ」
僕はにこりと笑って返した。
それより彼女が「外の空気を吸いたい」なんて理由だけで二人きりと言う状況を作り出したなんて僕でも信じない。
「で、何か悩み事」
美希は少し考えて話を始めた。
「私と交際したこと後悔してる?」
美希なりに不安になることもあるのだろう。
こんな大きな家のご令嬢ともなれば相手にも相応のプレッシャーを与える。
「その質問は無意味じゃないか?」
「どうして?」
「その質問に答えたところで事実は変わらない」
「私は、不安です。学を幸せにできるかどうか自信がない」
「お互い様だよ。俺も美希を幸せにできる自信なんて持ってない」
「じゃあ……」
「だからだよ、理由はどうあれ俺達は一緒に歩む道を選んだ。これから必要なのはそれを悔いる事じゃない。生まれてくる朝を笑って迎える事だよ」
僕達は朝と夜の狭間で必死にもがいて生きている。
生まれていく希望も、失う絶望も両手にかけて。
僕達は生まれていく朝を旅立つ。
それは冬の天秤のように傾くことは無いだろう。
「私と共に歩いてくれますか?」
「その覚悟は決めたつもりだ」
その時白い光がちらついていた。
ホワイトクリスマス。
白い光がちらついてる。
「そろそろ中に戻ろうか?本当に風を引いてしまう」
「はい!」
ホールに戻ると既に終演を迎えていた。
俺達は送迎の車に乗って美希の家に行く。
「ねえ、まだ先の話だけどお願いを聞いてくれますか?」
美希が言う。
「いいよ、どうしたんだい?」
「翼たちは中学生に入学したら許されるらしいよ」
何のことだ?
「翼は小学校を卒業したらその気になってるらしい」
色々突っ込みどころがあるんだけど取りあえず話を聞いてた。
「だから来年のパーティは2人っきりで過ごしたい。この意味、わかりますか?」
分かりたくないけど分かってしまった。
遂にその時が来たのか。
ここで、無理なんて言えるはずがない。
「来年もし同じ気持ちでいられたら受け入れるよ」
「……ありがとう。楽しみにしてる」
車は美希の家の前に着いた。
「じゃ、今日はありがとう。次は年越しパーティだね」
「そうだね。楽しみにしてるよ」
「うんまたね」
美希が家に入るのを見ると車を出してもらった。
遊と恋はケーキを食べてテレビを見ていたみたいだ。
父さんはいない。
クリスマスだと言うのに……。
「なんだ学、今夜は帰ってこないと思ってたぞ」
遊は小学生に何を求めているのだろうか?
「学お風呂沸いてるよ」
恋に言われると風呂に入って部屋に戻る。
そしていつも通り美希に挨拶を送る。
外は白い雪が降っていた。
誰かが言う。
白い雪の街の中のカップルを白い恋人たちと表現していた。
夜に向かって雪が降り積もると寂しさがそっと胸にこみあげる。
今も忘れない恋の歌。
だから夢と希望を胸に抱いていこう。
辛い毎日がやがて白い恋に変わる。
今も忘れない恋の歌。
責めてもう一度だけこの旅立ちを。
一人泣きぬれた冬に白い恋が。
永遠の白い恋。
ただ会いたくて、もう切なくて。恋しくて……。
「行ってきま~す!」
天音の元気な声が響く。
冬だというのに本当に元気だ。
雪は降らないけどやっぱり寒い。
そんな思いも今日までだ。
今日は終業式。
明日から冬休みに入る。
冬休みに入ればクリスマスがある。
冬吾と冬莉の誕生日だ。
冬吾達は最近喋るようになった。
「パパ」と初めて言った時パパは感激してた。
もちろん「ママ」も言えるようになってる。
日々成長していく2人を見守りながら我が家は今年は平和に過ごせた。
天音はこの1年で変わった。
翼が言うには天音にも目標と夢ができたらしい。
夢は大地のお嫁さん。
天音の口からそんな言葉が出るとは思わなかった。
目標はまだ秘密なんだそうだ。
ただ、進路が決まったと張り切ってる。
夢を叶える為の準備をしているらしい。
これまでも何度か大地にパーティによばれたらしいが、母さんに礼儀作法を学んでいた。
「大地に恥をかかせたくない」と言う理由なんだそうだ。
人間夢や目標が決まると変われる強さを持てるらしい。
それからSHの5年生組は変わった。
天音が変わったのだから仕方ない。
皆で集まっているが悪戯等は一切しなくなった。
「ガキ臭くてやってらんない」
そう意識するようになったんだそうだ。
FGにおもちゃを取られたというのもあるんだろうが。
純也と茜も学校に馴染んだようだ。
純也は彼女ができて変わった。
茜にも彼氏がいるようだ。
その前から変化は会ったけど益々変わった。
茜も前は大人しかったけど、最近茜の悪戯が学校で問題になった。
チャットで水奈のお父さんと会話しているらしい。
変な会話じゃない。
普通の会話だった。
ある意味普通じゃないけど。
茜のチャットん友達は皆大人なんだそうだ。
そこで本で得たプログラミング等の知識をさらに深めているらしい。
プログラミングとネットワークの知識だけなら大学生並みの知識を有しているのだとか。
ハッカーのクラスで言うと「グル」と呼ばれるレベルの技術を身につけているのだとか。
分かりやすく言うととあるOSの開発者が同じ様に「グル」と呼ばれている。
普通にしていれば明るい純真無垢な少女なのに。
純真無垢だからこそ何でも吸い取っていくのだろう。
末恐ろしい子だ。
学校に着くと昇降口で皆別れる。
そして教室に入ると今日も皆が集まっている。
「おはよう」
「あ、空おはよう」
光太が返事した。
高槻先生が教室に入ってくると皆席についた。
朝礼が終ると体育館で終業式がある。
終わると教室に戻って終礼をして帰った
(2)
12月24日。
日本中の恋人達が盛り上がる夜。
僕は翼と家でゲームをしていた。
と、いっても僕がゲームをしてるのを翼が隣で見てるだけだけど。
翼はゲームが苦手らしい。
でも見てる分には楽しいらしい。
それはきっと僕と同調しているから。
僕達双子は「共鳴」という能力を持つ。
ありとあらゆる能力を「共有」し気持ちを「同調」することができる。
僕が「楽しい」と感じればその気持ちを翼も感じることができる。
ある出来事がきっかけでそれは強くなった。
お互いがお互いを好きだと思う気持ちを確かめ合う事ができる。
その代償に翼の気持ちが僕から離れていくのも分かってしまう。
翼は必死に隠そうとしてるけど。
それが悲しかった。
でも水奈に言われて気づかされた。
僕は誰よりも翼を応援してやらないといけないんだ。
翼の背中を押してやれるのは僕だけ。
だから僕も変わろうと必死になってる。
そんな僕を翼は優しく見守ってくれている。
妹の天音は冬吾と遊ぶことが多くなった。
天音の中でも何か心境の変化が起きているのだと母さんは言ってた。
天音は自覚してないらしいけど。
天音は今までが反抗期みたいなものだったので性格が逆転したのかもしれない。
22時になると翼は部屋に戻る。
僕もゲームを止める。
ベッドに入りスマホを弄る。
翼とメッセージでやり取りをしていた。
天音はもう寝たらしい。
翼の反応も無くなった。
寝たんだろう。
そうして僕達は聖夜を迎えた。
(3)
12月25日。
クリスマス。
神様が生まれた日。
そして冬吾と冬莉の誕生日。
朝起きると枕元には欲しかったゲームソフトがおいてあった。
天音は江口家のクリスマスパーティに招待されている。
朝からそわそわしていた。
母さんも冬吾と冬莉の世話をしながらクリスマス料理をお婆さんと一緒に作っている。
翼はその間の冬吾達の世話をしていた。
僕は父さんと一緒に部屋の飾りつけをしている。
夕方頃になると大地が迎えに来た。
天音はパーティドレスを着て髪形も母さんにセットしてもらって出かける。
凄く大人しくなっていた。
「あの子も大人になっていくんだな」
「そうですよ。女の子は成長がはやいんですから」
両親がそう言っている。
父さんはちょっと寂しげだった。
夜になると遠坂家のお爺さん達と純也と茜が来る。
父さん達はシャンパンを、僕達はシャンメリーを取り乾杯する。
主役は冬吾と冬莉。
自分の事を祝ってくれてると分かっているのだろうか?
冬吾達は、はしゃいでいる。
テレビはクリスマス特番の歌番組が流れている。
料理を食べてる僕達には関係なかったけど。
料理を食べ終わると翼は片づけを手伝っていた。
僕達はテレビを見ている。
片づけが終ると翼と風呂に入る。
風呂を上がる頃には遠坂家の人達は帰っていた。
僕達は部屋に戻ってゲームをしていた。
23時頃天音が帰ってくる。
「天音、寝るならお風呂入ってからにしなさい」
母さんの声が聞こえる。
天音が僕の部屋に入らなくなったかわりに僕も天音たちの部屋に入らなくなっていた。
日が変わる前に僕は眠っていた。
(4)
12月25日。
今日は江口家でパーティがある。
江口家までは大地の世話係の新條さんが送ってくれる。
夕方ごろ呼び鈴がなった。
「天音、お迎えが来ましたよ」
何度も鏡を見てチェックする。
そして部屋を出て家を出る。
送迎の車に乗ると大地が隣に座っていた。
大地は私の異変に気が付いたらしい。
「今からそんなに緊張しなくてもいいよ。いつもどおりでいいから」
そう言って大地は私の手を握る。
大地の手が大きく感じた。
今日の大地はいつもよりも一際頼もしく思える。
今日だけは大地に頼ろう。
そう思った。
江口家は大きい。
大地の母親、石原恵美の実家らしい。
江口グループの元締めの家。
鷲見のどこにこんな広大な土地があったんだと思うくらいの広さだった。
玄関を通るとパーティホールに通される。
沢山のご馳走がある。
だけど今日は我慢。
挨拶をして回る大地について行く。
「綺麗なお嬢様ですね。どちらのかたですか?」
「片桐と申します」
「片桐?聞いたこと無いわね」
首をかしげる客人に大地のお父さんが言う。
「片桐さんは家が経営してる会社の税理士でいつもお世話になってるんです」
「あら、そうでしたの。失礼しました。可愛らしいお嬢様ね」
「ありがとうございます」
そんなやりとりを何十回も繰り返している。
想像がつかなかった。
私なんてただの庶民の家。
大地がいなかったら絶対に足を踏み入れる事のない世界。
今まで、どんな年上の大人が相手でも怖いと思ったことは今まで一度もなかった。
だけど、今日は朝から緊張していた。
私が何かをすれば大地の顔に泥を塗ることになる。
この世界が怖かった。
世界に怯えていたんだ。
「天音、ちょっとこっちに」
大地にエスコートされテーブル席に座る。
「少し待ってて」
そう言って大地はどこかへ行く。
その間この部屋を見回していた。
みんな華やかなドレスを着ている。
私はどんな目で見られているんだろう?
みすぼらしい娘だと笑われているのだろうか?
1人でいることが恐ろしかった。
「あれ?天音じゃん。大地はどうした?」
陸と祈がきた。
「ちょっといま席を外してる」
「大丈夫か天音、顔色悪いぞ?」
「大丈夫……」
「天音ちゃん?大地は何してるの?」
大地のお母さんが来た。
「何か用があるらしくて」
「あの子は全く……」
「あ、私は大丈夫ですから」
大地が料理を取って戻ってきた。
「はい、これでも食べて少し落ち着いた方がいいよ」
「大地あなた何やってるの!」
大地のお母さんが怒ってる。
「天音具合悪そうだから少し休んでもらって、料理でもたべてもらおうと」
「『ちょっと料理取ってくる』の一言くらい言えないの!?天音ちゃんに心細い思いさせるなんて!」
「ご、ごめん!」
「ちゃんと天音ちゃんの面倒見てなさい!」
そう言って大地のお母さんは去っていった。
「大地、ごめん」
私のせいだよな。
「僕の方こそごめん、まだ気配りが上手くできないみたいだ」
「大地の言う通りだ。天音らしくないぜ。もっと堂々としてろよ。お前の不始末くらい大地がちゃんとするよ」
祈が言う。
「それじゃ、ダメだろ。私が大地の足引っ張ってる」
「天音?」
祈が私の異変に気付いた。
こんな思い生まれて初めてだ。
恥ずかしいとか悔しいとか申し訳ないとかいろんな気持ちが入り交ざって涙に変わって流れていた。
大地も突然泣き出した私に慌てふためいている。
落ち着け、私。
こんな姿大地の母さんに見られたらまた大地が怒られる。
だけど焦れば焦るほど止まらない。
見るに見かねた祈が私の手を取る。
「大地、ちょっと天音借りるぞ。陸と適当に誤魔化しておいてくれ」
「わかった」
私は祈とテラスに出る。
さすがに何も羽織って無いから寒い。
「今日は一段と冷えるな。雪でもふるんじゃないか」
祈が言う。
「そんなに力むことはねーよ。まだ私達11歳だぜ」
「でも大地だって同じだろ……」
大地と同じ道を歩むと決めたならしっかりしないと。
「天音は基本は変わってないんだな。自分で道を切り開こうとする。そして大地はそれに懸命に追いつこうとしてる」
「祈は違うのか?」
「私は天音と違う。別に何かを背負うわけじゃないからな」
「私だって背負ってるわけじゃない」
「嘘ついてる事くらい私にも分かるぞ。天音は大地と一緒の道を選ぶ。石原家って看板を大地と背負いこもうとしてるだろ?」
それがいけないことなのか?
あいつに負担をかけたくないって思う事が悪い事なのか?
「あいつはお前にこれ以上負担をかけたくないと思って言わないんだろうけど、私は言わせてもらう。大地はお前と一緒に看板を背負うなんてことを望んでないよ」
え?
私じゃやっぱり力不足なのか?
急に不安になった。
大地は何を考えている?
「祈には大地が何を考えているのか分かるのか?」
「はっきりわかるね」
「なんだよそれ?」
「あいつはお前の前に立っていたいんだ。今はお前に必死に追いつこうとしてるけど、いつかお前の前に立ちたいと思ってる」
「どういう意味だ?」
「天音は女だ。大地もああみえて立派な男なんだよ。大好きな人を守りたい。男なら当然の感情だろ?」
大地は私を守りたい。
考えたことも無かった。
でもよく考えたら初めての時からそうだった。
私を守るために力を手に入れようとしていた。
がむしゃらに進む私のそばには常に大地がいてくれた。
「天音は強いよ。でも天音にも弱点はある。例えば今日のパーティみたいな時だ。でもそれが悪いってわけじゃない。弱くていいんだよ。甘えて良いんだ」
「私はどうしたらいい?」
「そろそろ大地を頼ってもいいんじゃないのか?」
祈はそう言った。
「天音だって女の子なんだ。大地を好きでいるって決めたなら。信頼して背中を預けていいんじゃないのか?」
「……私も女の子か」
当たり前だけど、ちょっと悔しいけど。
隣り合わせた人を思い遣る魂よ。
私の涙は止まっていた。
私の中にある熱い何かが沸き上がる。
私にはまだ覚悟がたりなかった。
私は一人で立っているんじゃない。
振り返れば大地がいる。
私に必要な覚悟。
それは、大地に身を委ねる覚悟。
そう決めた時祈は言った。
「……そろそろ行こうか?」
「ああ、行こう」
私達は2人の元に戻る。
「天音、大丈夫?」
大地が聞いてきた。
「もう大丈夫」
そう言って大地が持ってきた料理を食べる。
「まだ足りないよね?取ってくるから待ってて」
そういう大地の服を掴む。
ちょっと恥ずかしいけどでも勇気を出して言ってみた。
「一人にしないで」
「……わかった」
繰り返し何度も過ちを犯して私達は進んでいく。
今までもこれからも。
違うのは、私がミスしても大地がフォローしてくれる。
大地をもっと信頼しよう。
そう思った時大地が少しだけ大きく見えた。
パーティが終ると私は大地と家に帰る。
「今日はお疲れ様」
「こっちこそありがとう。……なあ大地」
「どうしたの?」
「一つだけお願いしてもいいか?」
「いいけど」
私は大地の肩に寄り添う様に身を預ける。
「家に着くまでの間でいいからこうしていさせてくれ」
「……わかった」
交わす言葉もなくただ身を預ける。
少しだけ楽になる。
家に着くと車を降りる。
「じゃあ、また」
「ああ、今度は年越しパーティだっけ?」
「そうだけど、天音無理してない?」
「どういう意味だ?」
「こういうパーティ苦手なら断ってくれても」
「私を誘わないで誰を誘う気だ?もう浮気か?」
「そ、そういうつもり言ったんじゃなくて……」
「……私は大地を信頼するって決めた。だから大地も私を信頼してくれ。私だって成長してるつもりだぞ?」
「じゃあ、また連絡する」
「ああ、またな」
そう言うと家に帰る。
疲れがどっと出た。
部屋には翼が戻ってる。
もうそういう時間か。
ベッドに倒れ込む。
「天音、寝るならお風呂に入ってからにしなさい。それとドレスが皴になるから脱ぎなさい」
「は~い」
愛莉はそう言って下に降りて行った。
「どうだった?美味しい料理食べれた?」
翼が聞く。
そういやほとんど食べてないな。
「緊張してそれどころじゃなかったよ。まだ私には難しい世界らしい」
「なるほどね」
でもいつか必ず乗り越えてやる。あいつが胸を張って自慢できる淑女になってやる。
でもとりあえず腹減った。
「愛莉~腹減った。何か食うものない?」
「天音ご馳走食べて来たんじゃなかったの?」
「ほとんど食う暇なかったんだって」
「その癖も直さないとそのうちその体型維持できなくなっても知りませんよ」
「それは翼もいっしょだろ!」
「今からラーメン作ってあげるからお風呂入ってきなさいな」
「は~い」
私の成長はまだ続く
(5)
12月25日。
今日は江口家のパーティに呼ばれていた。
もう俺は江口家の親戚になっているらしい。
俺は今石原美希と付き合っているから。
で、石原美希の母親、石原恵美が江口家の一人娘。
だから僕は親戚の仲間入りってわけ。
地元の政経界のお偉いさんが挨拶にさっきから切れ目なく来てその対応に追われてる。
それだけじゃない。繭が天君と手を組んだ事で地元産業のほとんどを独占してしまっている。
そのカギを握るのが美希の母さん石原恵美の機嫌一つなんだからそりゃもうみんなご機嫌取りに来るわけだ。
そんな大ごとになってることに気付かないでのこのこと迷い込んだ憐れな子がまたいる。
ご愁傷様。
話はこれだけじゃ終わらない。
江口家の親戚に市長の秘書がいる。
今の情勢だったら間違いなく次は県知事選に当選するだろう。
そうすると市長選には県議会議員の如月祐貴が出馬することが噂されてる。
噂という言い方は生易しい。
出馬するからよろしくねと言う意味だ。
もっというと投票しなかったらどうなるか分かってるだろうな?という脅しだ。
僕達は政界にも進出するみたいだよ。
噂では白鳥グループも進出してきてるらしい
地元を支配する気でいるらしい。
だから僕みたいな若造に現職の県知事が挨拶に来てる。
俺に出来る事なんて何もないのに。
パーティも終盤を迎え一息ついたところで隣で一緒に対応していた美希が服を引っ張った。
「ちょっといいかな?」
「いいけどどうかしたのかい?」
「うん、ちょっと外の空気吸いたくて」
気持ちは分かるけどその格好じゃ寒いんじゃないのかい?
ライトグリーンのワンピースドレスを着ている。
そんな事関係なしに俺達はテラスに出る。
案の定彼女が寒そうにしている。
見るに見かねて上着を脱いで美希の肩にかけてやる。
「ありがとう、でも学が寒いんじゃ」
「このくらいなんてことないよ」
僕はにこりと笑って返した。
それより彼女が「外の空気を吸いたい」なんて理由だけで二人きりと言う状況を作り出したなんて僕でも信じない。
「で、何か悩み事」
美希は少し考えて話を始めた。
「私と交際したこと後悔してる?」
美希なりに不安になることもあるのだろう。
こんな大きな家のご令嬢ともなれば相手にも相応のプレッシャーを与える。
「その質問は無意味じゃないか?」
「どうして?」
「その質問に答えたところで事実は変わらない」
「私は、不安です。学を幸せにできるかどうか自信がない」
「お互い様だよ。俺も美希を幸せにできる自信なんて持ってない」
「じゃあ……」
「だからだよ、理由はどうあれ俺達は一緒に歩む道を選んだ。これから必要なのはそれを悔いる事じゃない。生まれてくる朝を笑って迎える事だよ」
僕達は朝と夜の狭間で必死にもがいて生きている。
生まれていく希望も、失う絶望も両手にかけて。
僕達は生まれていく朝を旅立つ。
それは冬の天秤のように傾くことは無いだろう。
「私と共に歩いてくれますか?」
「その覚悟は決めたつもりだ」
その時白い光がちらついていた。
ホワイトクリスマス。
白い光がちらついてる。
「そろそろ中に戻ろうか?本当に風を引いてしまう」
「はい!」
ホールに戻ると既に終演を迎えていた。
俺達は送迎の車に乗って美希の家に行く。
「ねえ、まだ先の話だけどお願いを聞いてくれますか?」
美希が言う。
「いいよ、どうしたんだい?」
「翼たちは中学生に入学したら許されるらしいよ」
何のことだ?
「翼は小学校を卒業したらその気になってるらしい」
色々突っ込みどころがあるんだけど取りあえず話を聞いてた。
「だから来年のパーティは2人っきりで過ごしたい。この意味、わかりますか?」
分かりたくないけど分かってしまった。
遂にその時が来たのか。
ここで、無理なんて言えるはずがない。
「来年もし同じ気持ちでいられたら受け入れるよ」
「……ありがとう。楽しみにしてる」
車は美希の家の前に着いた。
「じゃ、今日はありがとう。次は年越しパーティだね」
「そうだね。楽しみにしてるよ」
「うんまたね」
美希が家に入るのを見ると車を出してもらった。
遊と恋はケーキを食べてテレビを見ていたみたいだ。
父さんはいない。
クリスマスだと言うのに……。
「なんだ学、今夜は帰ってこないと思ってたぞ」
遊は小学生に何を求めているのだろうか?
「学お風呂沸いてるよ」
恋に言われると風呂に入って部屋に戻る。
そしていつも通り美希に挨拶を送る。
外は白い雪が降っていた。
誰かが言う。
白い雪の街の中のカップルを白い恋人たちと表現していた。
夜に向かって雪が降り積もると寂しさがそっと胸にこみあげる。
今も忘れない恋の歌。
だから夢と希望を胸に抱いていこう。
辛い毎日がやがて白い恋に変わる。
今も忘れない恋の歌。
責めてもう一度だけこの旅立ちを。
一人泣きぬれた冬に白い恋が。
永遠の白い恋。
ただ会いたくて、もう切なくて。恋しくて……。
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