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2ndSEASON
例えば自由、例えば夢
しおりを挟む(1)
「水奈、ちょっと来なさい」
父さんに呼ばれた。
今日は私なにもやってないぞ?
とりあえずリビングに座る。
父さんの隣には母さんがいた。
誠司はもう寝てる。
「今日チームの運営の人と話をしてな。合意を得たので水奈にも話しておこうと思ってな」
父さんがいつになく真剣だ。
何を話したのだろう?
「父さん、今季が終ったらサッカー選手辞めようと思う」
え?
「どこか悪いのか?」
私は聞いていた。
父さんは首を振る。
このまま行けば多分3連覇は間違いないだろう。
チームにも新戦力が次々入ってる。
父さんの役目は終わった。
今後はコーチとしてサッカー選手の育成に携わっていくつもりだ。
「母さんは賛成なの?」
「いやな事を続けさせたっていい結果にはつながらない。そういう世界らしいから」
「父さんはサッカーが嫌いになったの?」
父さんは首を振る。
「そうだな……冬夜流に言うと『もう満足した』かな?」
冬夜とは空の父さんの事。
空の父さんは大学時代にバスケットを二年して世界の頂点に二度たった。
頂点に立ってそして自ら幕を下ろした。
父さんの世代のフォワードは天才が多くて代表には選ばれなかった。
でもJリーグというアジアでは3番目の強豪リーグで何度もリーグ優勝に輝いている。
クラブワールドカップにも何度も出場した。
さすがに優勝は出来なかったけど。
父さんはもう限界を感じたのだろう。
「父さんはもう思い残すことは無い。これからの夢は誠司に託せる」
そっか、父さんの中ではもう未練はないんだな。
「水奈にこの話をしたのには理由があるんだ」
母さんが言う。
「多分水奈の中で今描いてるのは空のお嫁さんだろう?」
まだそんな先の事考えてない。
「でもそれは夢の続きだ。水奈の人生はこれからいろいろな選択肢が出てくる。それは自分で選ばなくちゃならない。振り返った時に父さんのように充実感を得られる選択をしなさい」
私の未来。自由、希望、夢。
それは私の自由だ。
だけどできるなら悔いのない人生を。
母さんはそう言う。
「話は以上だ。あまり夜更かしするなよ」
母さんが言うと私は部屋に戻る。
父さんの事はまだ伏せておいた方がいいだろうな。
空とメッセージのやり取りをする。
「水奈はやりたい事あるのか?」
「まあ、なんとなくな」
「そうか、高校くらいは行くんだろ」
「そのつもりだ」
出来れば空と一緒の高校に行きたい。
「頑張れ」
「ありがとう」
やりたい事があるならやりなさいという自由。
やりたい事という夢。
夢がもたらす希望という名の光。
それが天音の言っていた月の導きなのかもしれない。
(2)
10月中旬。
中間テストが終った。
とはいえ来月は期末テストがある。
中学というのはどうしてこうもテストが多いんだろう?
そんな急激に変わる物でもないだろうに。
テストが終ると帰ろうとする。
しかし光太に呼び止められる。
「ちょっと話がしたいから放課後カラオケ行かね?」
まあ、いっか。
行くことにした。
「じゃあ、空。1時間後に近所のカラオケ店で」
「何でカラオケ店?」
「他に誰にも邪魔されない個室なんて無いだろ?」
確かにそうだな。
「わかった。じゃあ、1時間後に」
そう言って一度家に帰ると制服を脱いで着替える。
その家を出て自転車でカラオケ店に向かう。
カラオケ店にはクラスの男子が大体いた。
「じゃ、取りあえず中に入ろうぜ」
光太がそう言うと僕達はカラオケ店に入る。
部屋を取って皆が入ると光太がさっそく話題に触れる。
「ここにいる皆は彼女がいる。間違いないな?」
「僕にはいませんよ?」
酒井君が言う。
「善明はどうして作らないんだ?」
「さあ、こればっかりは相手次第ですから」
「それじゃ、ぶっちゃけて言う。皆夏休みに経験してるよな?」
そう言う話か。
「僕はまだかな?」
流石に小学生相手にしていい行為じゃないだろ。
「でもそれがどうかしたの?」
僕が光太に聞いていた。
「いやさ、よく言うじゃん。経験したら世界が変わるって。皆どうなのかなと思ってさ」
それが女子に聞かれたくない理由か。
「特に変わりはないな」
学が言う。
と、いう事は美希と済ませたのか。
他の皆もあまり変化がない様だ。
「やっぱ何も変わらないものなのかな」
光太が言う。
「まあ、多少なりとも気持ちに変化はあるかもしれないな」
学が言う。
「あんまり盛り上がらなかったな。じゃあ、カラオケでもしようぜ!」
それは19時過ぎまで続いた。
カラオケが終ると家に帰る。
「まだ中学生なんだから夜遊びは行けませんよ」
母さんに怒られた。
ご飯を食べるといつも通り一緒に風呂に入ってそして部屋に戻る。
僕はゲームをしながら水奈とメッセージ。
時間になるとゲームを終えてベッドに入る。
大人になったら水奈と夜景の綺麗なレストランに2人で行こう。
そんな事を考えていた。
父さんが教えてくれた夜景の綺麗なレストラン。
これから先のイメージを描いたらきっと夢は叶う。
微かに胸の奥で膨らむ夢を飛ばしながら。
水奈は近くにいるから気づいて欲しいと願っている。
ずっと恋してるからと願っている。
同じ季節に生きているから感じ合える心。
春夏秋冬が巡ってそして水奈がいる。
水奈は僕に訪れる5番目の季節。
水奈は僕に訪れる。
目眩く願わくば悠遠に。
温かい心と体を求める。
春夏秋冬……そして水奈という5番目の季節。
それは願わくば悠遠に。
終わらない物語。
(3)
「わあ、綺麗だね」
水奈は燥いで写真を撮っている。
僕達は紅葉を見に九酔渓に来ていた。
来ていたのは片桐家、多田家、桐谷家、石原家、酒井家、中島家、木元家、渡辺家。
渡辺家を除けば皆だいたい彼女、彼氏がいる。
そういう車の配置をしていた。
先頭を渡辺家が、最後尾を父さんが行く。
水奈は僕達の車に乗っていた。
父さんは高速であっという間において行かれてしまった。
多田家、桐谷家、中島家は父親の車の運転が上手いのだろうか?
あっという間に父さんを置き去りにしてしまう。
「左見てごらん?滝だよ」
一瞬だけ滝が見れた。
この辺も紅葉が始まっていた。
「空、凄いね!」
女性はこういうのを見ると気分が高まるのだろうか?
水奈のテンションは高かった。
父さんはその後も色々案内してくれる。
天音は石原家の車に乗っている。
九重インターで降りるとコンビニで一度皆集まる。
「ここから先は絶対に追い越しとかダメだからな!」
渡辺さんが言う。
そして九酔渓の見事な紅葉を見ていた。
綺麗なだけじゃお腹がすく。
ゲームでもして時間を潰したかったけど、それより水奈との時間を過ごしたかった。
水奈はとても楽しそうだったからいたずらに不安を煽りたくなかった。
そして目的地の夢大吊橋に着く。
ここからは自由時間で。
もっとも自由行動を許されたのは僕と水奈と善明君と美希と学だけだったけど。
水奈は橋を渡ろうという。
「夢バーガーは後だ」
水奈はそう言って笑った。
橋の上からも滝が見えて紅葉で染まっている。
水奈は写真をたくさん撮っていた。
多分SNSにでも投稿するつもりなんだろう。
橋を渡ると引き返す。
そして待望の夢バーガー。
水奈が悩んでた。
レディースでもかぶりりつけない大きなハンバーガー
水奈にも女心というものがあるらしい。
彼氏の前でみっともない真似はしたくない。
「気にする事無いから好きなの食べなよ」
それでも水奈はレディースを頼んでいた。
ファストフード店のそれとは違って大きくて食べづらかったけど美味しかった。
「じゃ、あとソフトクリーム食べようか?」
そう言って、ソフトクリームを注文すると外のベンチに腰掛けソフトクリームを食べながら皆を待っていた。
「あ、お前たちだけずりーぞ!」
天音がそう言う。
そして自分もと大地を連れて買いに行く。
みんな揃ったところで昼ご飯を食べに久住のレストランに行く。
ハンバーグが美味しいらしい。
子供は子供だけでまとまって座る。
昼食を食べ終わると地元に帰る。
地元に帰る頃には夜になっていた。
ファミレスに寄って夕食を食べる。
お昼もハンバーグだったけど、やはりハンバーグを選んだ。
パスタ程度じゃ僕のお腹は満たされない。
水奈はスパゲティを選んだようだ。
「冬夜と愛莉さんは今年は忘年会これるんだろ?」
渡辺さんと父さんがメッセージをしていた。
「うん、冬吾も冬莉も大人しいからね。親に任せておくから大丈夫」
「家も大丈夫だ。誠司も大人しいんだ」
ただし2次会は無理だけど。
父さんと水奈のお父さんが言っていた。
今年の忘年会は皆のお父さんのお疲れ様会も兼ねるらしい。
地元チームはよほどひどい負け方をしない限り3連覇は間違いないだろうと言われている。
失点が極端に低く、そして得点が異常に高い。
ルイス選手の活躍がすごいらしい。
今年もクラブワールドカップに出場できるだろう。
AFCなんて余裕だと多田選手は言う。
そしてクラブワールドカップを最後に皆のお父さんは引退する。
夕食が終ると家に帰る。
水奈は多田家の車に乗って帰った。
帰りは天音もいた。
家に帰ると風呂に入って家でゆっくり休む。
明日は日曜日。
僕は水奈を家に招待した。
別に変な事をするわけでもなくゲームしたりしてのんびりしようと話をしていた。
(4)
期末テストが終る頃。
地元でも紅葉が目立つようになった。
AFCは地元チームが優勝した。
そして来月からいよいよクラブワールドカップが始まる。
週末僕達は期末テストの打ち上げに来ていた。
ボーリングはいつも通りだった。
水奈も連れてきた。
僕は翼がいないと球技はからきしだめだった。
水奈が好スコアを出していたけど。
ボーリングが終るとカラオケに移動する。
距離がちょっとある。
自転車で10分ほど。
皆カラオケがさほど好きなわけでも無くおしゃべりをしながら食べ物を食べる。
中学生の打ち上げだ。
それ以上はない。
カラオケ店を出るとさっさと家に帰る。
日が暮れるのも早くなってきた。
家に帰ると夕食を食べて風呂に入って部屋でのんびり過ごす。
ドラマを見ながら水奈とメッセージをする。
昔あった不良漫画を実写化したもの。
今時こんな格好をしている不良なんていないだろう。
金髪頭が不自然に思えた。
だけど面白かった。
水奈も同じドラマを見ていたようだ。
水奈は俳優に興味があったらしい。
それが終ると僕達はベッドに入る。
「もう一年も終わりだね」
水奈が言う。
「まだやる事は残ってるよ」
僕が答えた。
クリスマス・冬吾に冬莉の誕生日会に渡辺班の忘年会。そして最後は翼と一緒に年を越す。
来年は修学旅行が楽しみだ。
だけど、僕が言えるのは一言だけ。
「どんな時でも水奈の隣には僕がいるから」
僕が言うと水奈は笑っていた。
「分かってる」
そうして今日もまた終わる。
月が綺麗な夜だった。
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