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2ndSEASON
あらゆる罪を越えて
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(1)
今日は家庭訪問の日。
担任が来る生徒は皆早く帰る。
僕達も早く帰って先生が来るのを待つ。
呼び鈴がなる。
母さんが玄関に行く。
訪れた担任をリビングに案内する。
そして面談が始まった。
内容はそんなに大したことじゃない。
「今のままなら志望校は間違いなく合格できると思います」
もちろん、油断したらいけない。とお決まりの文句を言うけどとりあえずは大丈夫らしい。
だけど毎年の事だけど必ず聞かれる事。
「本当にここでいいのか?」
僕ならもう1ランク上の難関校を目指してもいいんじゃないのか?
高槻先生は言う。
ちなみに高槻先生は、小学校の時の担任高槻千歳先生の旦那さん。
偶然で片づけられる問題なのだろうか?
それは置いておいて先生の質問に答えなくてはならない。
なんて答えたらいいか?
「一番近い進学校が防府なんだからそこでいい」
どうせ、進学校だし受ける授業の内容なんてどこも同じだろうから。
僕はそう言った。
「防府じゃまずい事でもあるの?」
母さんが聞いていた。
「いや、問題は無いんですがその後の事を考えると少しでも環境の良い高校が良いと思ったので」
「さっきも空が言ってたけど、受ける授業の内容は一緒なんでしょ」
「若干工夫をしていたりしますね、それに防府の場合中学からの進級組と差がつくんですよ」
「工夫をしていようとしていまいと大学入試で解く問題にそんなに差がないでしょ。それにこの子達は難関大学に進学したいわけじゃないみたいだし」
「ああ、もう大学まで決めているんですね」
「就職先まで決めているみたい」
「そこまで将来を見据えての選択肢なら文句はいいません」
進路については高槻先生は納得したようだ。
あとは生活態度。
こっちも何も問題はない。
僕達は普通に学校生活を送っていた。
誰も手を出してこないならわざわざこっちから暴れるような真似はしない。
天音も大地に遠慮して派手に暴れることは無くなった。
精々音楽室の音楽家の絵の目に画鋲を指す程度だ。
何の意味があるのか分からないけど。
あとは学校を抜け出して近くのコンビニで漫画を読んでるくらい。
人に害を与えるようなことはしていない。
学校にとっては害みたいだけど。
「じゃあ、そういうことで」
「はい、よろしくお願いします」
高槻先生が次の訪問先へと向かった。
幸いにもクラスメートがこの近所に密集してるそうだ。
楽でいいと先生が笑っていた。
先生が帰ると母さんから話がある。
「さっきはああ入ったけど本当にいいのね?」
母さんが念を押す。
「大学なんてどこでもいいよ、資格を取ることが目的なんだから」
「わかりました。じゃあ、次は天音の担任が来るから天音呼んできて」
空は部屋にいってなさいと母さんは言う。
途中で部屋にいる天音に声をかけて部屋に戻ると宿題をする。
ハンバーガーにラーメン、お好み焼きにチャンポンにドーナツにフードコートにうどん……。
それは僕達の家から防府高校までの間にある食べ物さん。
夢と希望に溢れた未来。
いまからそんな予想図をたてていた。
(2)
「ずるいよ栗ちゃん!私だって冬吾君が好きだもん!」
僕は困惑していた。
いつものように遊んでいたら突然赤西栗から告白をされた。
悪戯とかそんなのではないらしい。
僕は特に好きな人とかいないので、まあいいかと思っていたら思わぬ介入者が現れた。
中山莉緒だ。
所謂三角関係というやつだろうか?
まだ幼稚園児なのに思わぬ展開に戸惑っていた。
事態はさらにややこしくなる。
中山莉緒といつも一緒にいる前田寛秀が明らかに悲しそうな顔をしている。
彼は莉緒が好きらしい。
誠司はそんな僕を面白そうに見ている。
自分だって赤西冴に告白されたくせに。
突然告白されてどっちか選べと言われても困る。
そして二人は口げんかになった。
それを聞きつけた先生が止めに入る。
そして原因を聞く。
「冬吾君はどっちを選ぶの?」
こういう時「どっちでもいい」なんて答えは不適切だってことくらい分かる。
「考える時間をくれないかな?」
多分最適解だと思う。
少なくとも現状からは免れた。
だけどそれは問題を先送りにしただけだった。
どっちが好きなの?
正直に答えるならまだ人を好きになるという感情がわからない。
理解できないでいた。
だってまだ僕幼稚園児だよ?
先生がお姉さんのように優しいから「好き」だと勘違いすることはあったけど、その程度の恋愛観だ。
ちなみに誠司は告白を受け入れたらしい。
だから今二人は手をつないで帰っている。
「冬吾君はどっちを選ぶの?」
中山瞳子が聞いてきた。
そして彼女の心に触れて知ってしまった。
瞳子も僕の事が好きらしい。
僕は3人の中から一人を選ばなくちゃいけないらしい。
「まだ分からない」
無難な答えをだした。
「ちゃんと選んであげてね」
瞳子はそう言った。
それから家に帰ると昼寝の時間。
昼寝が終わった後夕食までテレビを見てる。
国営放送の番組を見ていた。
民放はニュースとかばかりだから。
正直政治とかニュースとかわからない。
車が店に突っ込んだとか火事が起きたとか。
近所で起きた騒ぎなら興味もわくけど県外の遠くはなれた場所での事。
雪が自分の背よりも高く積もる。
そんな不思議な情景もニュースでやってた。
今はもっぱら来月頭の連休での帰省ラッシュがどうとかそんな話題だ。
だから国営放送を見てる。
たまに相撲を延々とやっていて面白くないけど。
父さんが帰って来ると夕食の時間になる。
夕食を食べながら今日の事を考えていた。
余り長引かせるのもよくない。
期待させるだけさせるのは残酷だと空兄さんが言ってた。
「冬吾。どうかしたの?今日は随分悩んでるみたいだけど」
母さんが言う。
少し考えて言った。
「父さんと母さん、お風呂入ったら相談したい事あるんだけどいいかな?」
「別にいいけど、冬夜さんも必要なの?」
母さんが聞く。
同じ男の父さんの意見も聞きたい。
父さんは僕の顔をじっと見ている。
そしてにこりと笑った。
「わかった。じゃあお風呂の後に話をきかせてもらうよ」
父さんの了解を得ると夕食を済ませて風呂に入ってリビングのソファに座る。
母さん達も座った。
「で、どうしたの?」
父さんが言う。
僕は今日あった出来事を話した。
「バレンタインの時もそうだったけど冬吾はもてるのね」
母さんが言う。
悪い気はしなかった。
でも返事をしないといけないと思うと気が重い。
振った方が可哀そうだと思うから。
「でも二股をかけるのは母さんは許しませんよ」
そんな事考えたことない。
どっちを選べばいい?
判断材料がなさすぎる。
だけど父さんは僕の悩みを解決してくれた。
「冬吾は違う事を考えているんじゃないのか?」
父さんは上手く僕の気持ちを読み取る。
恐ろしいくらいに正確に読み取る。
優しさに触れるとにじむような弱さを知ると誰かが言ってた。
僕は彼女の心に触れてしまった。
これ以上僕を困らせたくない。
そんな気持ちで彼女は何も言わなかった。
「冬吾が今思ってる事をちゃんと伝えなさい。中途半端な優しさは切れ味の悪いナイフみたいなものだ」
切れ味のいいナイフは傷の治りも早い。
思い切ってちゃんと伝えなさい。
それが父さんの回答だった。
僕にはまだ早いと思ってたけど僕は恋に落ちていた。
あの子の優しい気持ちに触れてしまった瞬間から。
それが今の僕の気もち。
「わかった」
「結論はでたの?」
母さんが聞くと僕は「うん」と答えた。
「じゃ、もう寝なさい。おやすみ」
父さんが言うと僕は寝室に行って寝る。
もし僕がスマホを持っていたなら今すぐ伝えてあげたかった。
彼女は凄く寂しく思っているだろうから。
次の日目を覚ますと制服に着替えてダイニングに行く。
「おはよう」
朝食を準備している母さんがそう言った。
僕と冬莉は自分の指定席に座る。
姉さんたちも降りて来た。
皆揃うと朝食を食べる。
その後準備をしていると水奈姉さんと誠司、それに純也兄さんもいた。
いつもと違うのは、冴と栗がいること。
姉さん達と一緒に幼稚園に行く。
そして莉緒と栗と瞳子を呼び出す。
何故か誠司と冴と冬莉もいる。
「もう結論出たの?」
栗が言う。
「うん」
「どうして瞳子がいるの?」
「瞳子も当事者だから」
瞳子は戸惑っていた。
「僕が好きなのは中山瞳子さんです」
思い切って言った。
「ちょっとまってよ、瞳子は何も言ってないよ!その結論はおかしくない?」
莉緒が言う。
「そうだよ、告白をしたのは莉緒と栗ちゃんだよ」
瞳子が言った。
「知ってる、でも僕は瞳子を好きになった。僕とつきあってもらえませんか?」
「……どうして私なの?」
瞳子が聞いた。
「分からない、昨日までは誰かを好きになるという気持ちが分からなかった。だけど突然瞳子の事ばかり考えるようになってた。それがきっと好きって感情なんだと理解したんだ」
僕が言うと瞳子はじっと聞いていた。
莉緒と栗も黙って聞いている。
「本当に私でいいの?後悔しない?二人は冬吾君の事好きって言ってくれてるんだよ?」
「瞳子は僕の事嫌い?」
僕は瞳子に聞いていた。
答を知った上でだけど。
やがて瞳子は泣き出した。
さすがにその反応は考えてなかった。
「私ってズルい女だね。何も言わずに冬吾君から言ってくれるのを待ってただけのずるい女」
「ずるいとか卑怯だとかそんなの関係ないよ。僕は自分の気持ちを伝えただけ」
だから瞳子の気持ちもきかせて。
そんな気持ちに瞳子は答えてくれた。
「私も冬吾君の事好きだよ。でも私なんか相手にしてもらえないと思ってた。莉緒とかの方が私よりずっと冬吾君の事好きだと思ってたから」
「どっちの方が好きだとかそんなの関係ないよ。栗だって僕の事好きだって言ってくれた。きっと思いは同じだよ」
「じゃあ、どうして?」
「正直僕も分からない。でも今は瞳子が好きだ。それじゃだめ?」
瞳子が莉緒と栗を見る。
「意外だった。瞳子はそんな素振り全然見せなかったから……まあ今回は仕方ないわね。冬吾君が選んだんだから」
「今日の所は大人しく引き下がるよ。でも諦めたわけじゃないから。これから先どうなるかわからないんだし。喧嘩だってするかもしれないし」
莉緒と栗が言う。
「じゃあ、よろしく。瞳子」
僕は瞳子に手を差し出す。
瞳子は僕の手を握手する。
「みんな先に行っててくれないかな。流石に振られた後だから立て直す時間が欲しい」
「分かった」
僕が言うと誠司たちもその場を立ち去る。
その日僕も誠司たちと同じように瞳子と手をつないで帰った。
僕達は好きだと確かめ合っただけ。
それをこれからどう表現していけば良いのか分からない。
デートに行けるわけでも無い、スマホもまだ持たせてもらえない。
「また明日」
そう言って孤独で寂しい夜を迎える。
瞳子もおなじなんだろうか?
夕食の時に家族に話をしていた。
そしたら母さんが回答を教えてくれた。
だから恋って大切なのよ。
離れている時間互いの事を想うのも恋のうち。
だから会える時間を大切にする。
恋はそうやって温めていく物だと母さんは言う。
「ねえ、冬吾」
冬莉が寝る前に質問してきた。
何だろう?
「どうしたの?」
「恋をするってどんな気持ち?」
上手く答える自信がないけど出来る限りの言葉で伝えてみた
「凄く優しい気持ちになったり、苦しい気持ちになったり複雑で一言で表せないんだ」
「ふ~ん……じゃあ、私もそうなのかな?」
え?
「冬莉にも好きな人いるの?」
「うん、隼人君」
「だったら思い切って伝えてみるといいよ」
「嫌われたりしないかな?」
「それは言ってみないとわからないよ」
本当は心を覗けばすぐにわかるんだけど。
物語の性質を考えたら一目瞭然なんだけど。
「分かった、明日言ってみるね」
「頑張りなっよ」
そして2人で眠りにつく。
次の日起きると朝の仕度をする。
瞳子も迎えに来ていた。
少し恥ずかしそうにしていた。
一緒に幼稚園に行く。
その瞬間の喜びを。
出逢えた事の意味を噛みしめながら僕は歩いていた。
冬莉も無事に高久隼人に告白して付き合う事になったそうだ。
何もできないもどかしい恋。
あまりにも未成熟で幼い恋の始まり。
(3)
今日は茜は愛莉パパ達と旅に出かけていない。
冬吾と冬莉は部屋から出てきた。
まだ少し眠そうだけど元気だ。
愛莉は朝食を作っている。
僕は新聞を見ていた。
最近は政治欄をしっかり見るようになった。
片桐家では新聞を3紙ほどとっている
父さんが新聞記者なせいもあるけど、同じ事がらでも書き手によって様々な形に変化する。
真の姿を模索するには一つのメディアに捕らわれていてはいけない。
皆は高所得者から税金を巻き上げれば消費税を下げられると謳っている。
でも、それをやった挙句富裕層が国外に流出、外資系の企業は撤退、経済は衰退して物資の不足、食料不足で物価は上がり続けとんでもない額面の基軸通貨が発行される事態になった。
結局基軸通貨は廃止され、海外の通貨が流通するようになった。
日本は金持ちに甘いというけどそんなことは無い。
割合でみても額面で考えても富裕層はかなりの額を払ってる。
所得税にしてみても累進課税制度というものがとられている。
低所得者は5%の所得税を払っているのに対して所得が4000万円を超える高所得者は45%も所得税で持っていかれる。
単純に所得の半分持っていかれますよと考えてみよう。
2000万円は税金を納めるわけだ。
それだけじゃない、消費税の額だって違う。高い車に乗ればそれだけ高い消費税を払うことになる。
法人税だって払わなきゃならない。
日本は富裕層に甘い。
そんな事は決してない。
そしてこれ以上富裕層を締め付ければ国外に移住するだろう。
富裕層が逃げ出した国がどうなるかは前に示した通りだ。
他人が不幸になればいい。
そんな考え方ではどのみち国なんて立ち行かなくなる。
日本は高い所得税の割に重税をかけられている。
税金が世界の中でも高い。
そんな事は決してない。
あくまでも最高税率での話だ。
それに社会保障の個人負担の率は低い。
だからこそ消費税の増税をしないとやっていけないと言っている。
決して借金の返済に充てる為ではない。
国債は国の借金。
良く時間換算で国民一人当たりの借金と称している馬鹿げたサイトがある。
国債はあくまでも政府機関が運営するために必要な予算を組み立てる為の政府が発行しているものだ。
考えても見よう。
国民が借金を背負っていると言うがその金を貸しているのは誰?
証券会社や銀行。それに個人投資家だ。
ちなみに日本が債務不履行になることは100%ない。これからも絶対におこりえない。
だって日本の国債は全て円建てなのだから。
ぶっちゃけていうと「返してほしいなら返してあげますよ。はいどうぞ」と札を刷って渡せばいい。
そんなことをして円の価値を下げられて困るのは投資家だ。
だから膨大な額に反して0.1%を切る利率という水準を保っている。
国民の借金をこれ以上増やすな、でもこれ以上税率を上げるな。
言いたい放題の国民。
だけど公務員だって生活している。
公共機関にストライキなど絶対に許されない。
借金にふれたのでもう一つだけ言おう。
貸借対照表というものがある。
これをみると日本には切り売りできる資産が900兆円超ある。
日本の借金は1000兆円あると言うが資産と徴税権(国の信用、見えない資産)を考えるとあと250兆円は財政出動してもびくともしないらしい。
それが国債の利率が上がらない理由、放っておくと円高が始まる理由。
難しい話をしてしまったけど「まだ日本は世間が言うほど危険な状態じゃないよ」って事。
とはいえ、税制改革は僕の仕事に大きくかかわってくるから。
そして一つのマスコミに固執してると真相が見えないから。
色んな媒体に目を通してる。
すると空が降りて来た。
姿を見ると今日は水奈と2人でお出かけのようだ。
2人とも本当に仲が良いようだ。
喧嘩をしたという話も聞かない。
翼が東京に行った後しばらくは立ち直れずにいたけど、解決したみたいだ。
とはいえ、恵美さんから聞いている翼の現状は空達には伏せていた。
いつまた想いが蘇るかもしれない。
大丈夫だと確信できるまで知らせずにいた。
翼はある目的が出来たらしい。
その為の修行を林田さんの下でやっている。
飲み込みは早いらしい。
最後に天音が降りて来た。
そして愛莉に一言いう。
「おい、愛莉!!どういうことだ!?私のおっぱいは全然大きくならないじゃないか!?」
コーヒー吹いた。
「あら?そうなの?」
愛莉が聞き返す。
「私は愛莉の血を継いでないのか?」
「個人差があるんだし仕方がないでしょ」
愛莉が答える。
「愛莉はそういうの気にしてた時期あったの?」
愛莉に聞いてみた。
「どうでしょう?私は特に気にしたことはありませんでしたね。神奈は気にしてたみたいだけど」
「それだよそれ!!水奈の奴、自分はそういう血だからと諦めてたのにこの前嬉しそうに『ブラ買い換えないときついな』とか言ってるんだぜ。このままだと水奈以下になるの確定だ」
天音が訴える。
空がそれを聞いて気まずそうにしている。
ひょっとして……。
「空は水奈に服を選んでやるのか?」
「ま、まあそういう約束してたから!」
「なんだと!?空まさか水奈のブラ選ぶんじゃないだろうな!?」
空の曖昧な態度を見てると一目瞭然だった。」
「うぬぬ……」
そう言いながらパンを齧る天音。
そうか、カンナの娘は胸が膨らんできたのか。
胸のあるカンナか。モデルとしてやっていけそうな気がするけど。
「冬夜さん、いけません。子供でそういう想像をしては」
愛莉には筒抜けのようだ。
呼び鈴がなる。
多分石原君の家のものだろう。
今日から大地の家に泊まりこみで遊ぶらしい。
美希は学君の家に泊まって勉強らしい。
勉強っていうのは口実だろうけど。
天音が出ていくとしばらくして空も出て行った。
冬吾は一人で退屈そうに携帯ゲームを弄っている。
冬莉は絵を描いている。
壁とかに描かずにちゃんと紙に書いてくれるのがいい子だ。
たまには父親らしいことしておくかな。
「冬吾と冬莉、たまには父さんと公園にでも遊びに行くか?」
「うん!」
それじゃあ、お弁当作りますね。ピクニックにしましょう。
愛莉がそういうと弁当を作り始める。
その間に僕と冬吾も準備を始めた。
那奈瀬の公園には芝生がある。
ご丁寧にサッカーのゴールまで準備されてある。
公園につくと冬吾とボールの蹴り合いをしていたが、お互い正確すぎて面白くも何ともない。
「じゃあ、冬吾。父さんを止められるか?」
「やってみる」
冬吾はそういうと僕と一定の距離を取って構える。
ドリブルで抜きに行きますよと宣言してるんだ。
ディフェンスの方が圧倒的に優位だ。
冬吾も素質があると思っていたけど、自分から動くような真似はしない。
僕のドリブルに備えてじっと待っている。
かといって僕も動かないんじゃじっと立っているだけだ。
僕がボールを前に蹴ると冬吾が動く。
着地点を見極めていたんだろう。
だが、見極めていた位置よりはるかに僕に近い位置でボールは戻ってくる。
利き足のかかとでボールを受け止め反対の足を軸に反転する。
ボールにつられた冬吾の逆位置に出来たスペースに飛び込む。
あとはトップスピードまで一気に加速して冬吾を置き去りにする。
しかしすぐにブレーキした。
「冬吾!」
愛莉が大声をあげている。
芝生に足を取られたらしい。
コケている冬吾がいた。
すぐに冬吾のそばにかけよる。
「ごめん、ちょっとムキになったかな」
「平気。やっぱり父さん凄いよ」
「冬吾はボールに釣られやすいのが今後の課題だね」
もっとも冬吾はフォワード向きなんだろうけど。
「でもやっぱりやられぱなしじゃ悔しいから父さんキーパーやってよ。PKしよう?」
「ああ、いいけど」
僕がゴール前に位置すると冬吾も適度に離れた位置にボールをセットして準備する。
PKは心理戦。
心を読める物通しでやっても勝負は明らか。
左上隅。
冬吾が打つと同時に跳んでいた。
やっぱり狙い通り。
そして狙い通りに打ってくる我が子を賞賛していた。
だが、それだけじゃなかった。
ボールがブレる。変則的な変化をする。
ちょっと焦った。
両手でしっかりキャッチすると胸に抱え込み倒れる。
「冬夜さん、だいじょうぶですか?」
2人が倒れ込む僕の側に駆け寄る。
「うーん、カルツ相手には決められたんだけどな」
そう言って笑う冬吾。
「まさか、冬吾の年で無回転シュートを正確に打ってくるとは思わなかったよ」
狙いを読めてなかったらヤバかった。
「どこで覚えたの?」
「たまたま不思議な軌道のボールが打てたから再現しようと努力しただけ」
「なるほどね」
「ねえ?どうしたら父さんのように上手くなれる?」
「冬吾の夢はサッカー選手か?」
「うん!」
冬吾は元気に答える。
どんな言葉をかけてやろうか?
そうだ……良い言葉があった。
「『ボールは友達』かな?」
「それって昔の漫画のあれ?」
「そうだよ」
出てくるキャラクターが必殺シュートを持ってる漫画。
ボールが友達といいながら破裂させたりする漫画。
ゴールのネットは常に交換しないといけない漫画。
スライディングタックルは常にファールの危険なサッカー。
その漫画の序盤でやってたこと。
登校中、学校にいる間そして家にいる間も常にボールに振れていなさいというもの。
「でもそんなのうちでやったら危ないよ」
冬吾が言う。
「こういう漫画があったんだ。どうしたら車を速く走れるか?その回答にこう答えたそうだよ」
朝も昼も夜も関係なく常に車の事だけを考える10個アイデアがあって8,9個はボツだったとしてそうやって技術は身につけていく物。
サッカーも同じじゃないかな?
常に考えて思いついたことを試してみる。それの繰り返しで自分のサッカーを作っていく。
だから冬吾は今のままでいい。
あとは冬吾の活躍する舞台を僕と愛莉で準備してやる。
そう冬吾に優しく説明した。
「わかった!」
そういうと冬吾は一人でサッカーボールで遊んでいる。
僕が見せたドリブルを自分のものしようとしているようだ。
「どうですか?子供と遊んでみた感想は?」
愛莉が聞いてきた。
「驚いたよ、まさかあそこまで上達してるとはね」
しかもまだ伸びしろがある。
僕の事をファンタジスタと呼んでいた人がいたが、冬吾は紛れもないサッカーの神様に愛されたファンタジスタだろう。
だから冬吾が望むなら僕は全力で応援してやりたい。
あの子はきっと学校の部活サッカーで収まる器じゃない。
親馬鹿と言われるかもしれないけど。
いつかきっと世界の舞台に立つ日が来るだろう。
あの子もまた日の丸の重荷を背負う時が来るだろう。
でも忘れないでほしい。
ひたすらにサッカーが好きだった今を。
そう思いながら懸命に練習する冬吾を見ていた。
「父さん、出来たよー」
元気に叫ぶ冬吾に笑顔で答えていた。
今日は家庭訪問の日。
担任が来る生徒は皆早く帰る。
僕達も早く帰って先生が来るのを待つ。
呼び鈴がなる。
母さんが玄関に行く。
訪れた担任をリビングに案内する。
そして面談が始まった。
内容はそんなに大したことじゃない。
「今のままなら志望校は間違いなく合格できると思います」
もちろん、油断したらいけない。とお決まりの文句を言うけどとりあえずは大丈夫らしい。
だけど毎年の事だけど必ず聞かれる事。
「本当にここでいいのか?」
僕ならもう1ランク上の難関校を目指してもいいんじゃないのか?
高槻先生は言う。
ちなみに高槻先生は、小学校の時の担任高槻千歳先生の旦那さん。
偶然で片づけられる問題なのだろうか?
それは置いておいて先生の質問に答えなくてはならない。
なんて答えたらいいか?
「一番近い進学校が防府なんだからそこでいい」
どうせ、進学校だし受ける授業の内容なんてどこも同じだろうから。
僕はそう言った。
「防府じゃまずい事でもあるの?」
母さんが聞いていた。
「いや、問題は無いんですがその後の事を考えると少しでも環境の良い高校が良いと思ったので」
「さっきも空が言ってたけど、受ける授業の内容は一緒なんでしょ」
「若干工夫をしていたりしますね、それに防府の場合中学からの進級組と差がつくんですよ」
「工夫をしていようとしていまいと大学入試で解く問題にそんなに差がないでしょ。それにこの子達は難関大学に進学したいわけじゃないみたいだし」
「ああ、もう大学まで決めているんですね」
「就職先まで決めているみたい」
「そこまで将来を見据えての選択肢なら文句はいいません」
進路については高槻先生は納得したようだ。
あとは生活態度。
こっちも何も問題はない。
僕達は普通に学校生活を送っていた。
誰も手を出してこないならわざわざこっちから暴れるような真似はしない。
天音も大地に遠慮して派手に暴れることは無くなった。
精々音楽室の音楽家の絵の目に画鋲を指す程度だ。
何の意味があるのか分からないけど。
あとは学校を抜け出して近くのコンビニで漫画を読んでるくらい。
人に害を与えるようなことはしていない。
学校にとっては害みたいだけど。
「じゃあ、そういうことで」
「はい、よろしくお願いします」
高槻先生が次の訪問先へと向かった。
幸いにもクラスメートがこの近所に密集してるそうだ。
楽でいいと先生が笑っていた。
先生が帰ると母さんから話がある。
「さっきはああ入ったけど本当にいいのね?」
母さんが念を押す。
「大学なんてどこでもいいよ、資格を取ることが目的なんだから」
「わかりました。じゃあ、次は天音の担任が来るから天音呼んできて」
空は部屋にいってなさいと母さんは言う。
途中で部屋にいる天音に声をかけて部屋に戻ると宿題をする。
ハンバーガーにラーメン、お好み焼きにチャンポンにドーナツにフードコートにうどん……。
それは僕達の家から防府高校までの間にある食べ物さん。
夢と希望に溢れた未来。
いまからそんな予想図をたてていた。
(2)
「ずるいよ栗ちゃん!私だって冬吾君が好きだもん!」
僕は困惑していた。
いつものように遊んでいたら突然赤西栗から告白をされた。
悪戯とかそんなのではないらしい。
僕は特に好きな人とかいないので、まあいいかと思っていたら思わぬ介入者が現れた。
中山莉緒だ。
所謂三角関係というやつだろうか?
まだ幼稚園児なのに思わぬ展開に戸惑っていた。
事態はさらにややこしくなる。
中山莉緒といつも一緒にいる前田寛秀が明らかに悲しそうな顔をしている。
彼は莉緒が好きらしい。
誠司はそんな僕を面白そうに見ている。
自分だって赤西冴に告白されたくせに。
突然告白されてどっちか選べと言われても困る。
そして二人は口げんかになった。
それを聞きつけた先生が止めに入る。
そして原因を聞く。
「冬吾君はどっちを選ぶの?」
こういう時「どっちでもいい」なんて答えは不適切だってことくらい分かる。
「考える時間をくれないかな?」
多分最適解だと思う。
少なくとも現状からは免れた。
だけどそれは問題を先送りにしただけだった。
どっちが好きなの?
正直に答えるならまだ人を好きになるという感情がわからない。
理解できないでいた。
だってまだ僕幼稚園児だよ?
先生がお姉さんのように優しいから「好き」だと勘違いすることはあったけど、その程度の恋愛観だ。
ちなみに誠司は告白を受け入れたらしい。
だから今二人は手をつないで帰っている。
「冬吾君はどっちを選ぶの?」
中山瞳子が聞いてきた。
そして彼女の心に触れて知ってしまった。
瞳子も僕の事が好きらしい。
僕は3人の中から一人を選ばなくちゃいけないらしい。
「まだ分からない」
無難な答えをだした。
「ちゃんと選んであげてね」
瞳子はそう言った。
それから家に帰ると昼寝の時間。
昼寝が終わった後夕食までテレビを見てる。
国営放送の番組を見ていた。
民放はニュースとかばかりだから。
正直政治とかニュースとかわからない。
車が店に突っ込んだとか火事が起きたとか。
近所で起きた騒ぎなら興味もわくけど県外の遠くはなれた場所での事。
雪が自分の背よりも高く積もる。
そんな不思議な情景もニュースでやってた。
今はもっぱら来月頭の連休での帰省ラッシュがどうとかそんな話題だ。
だから国営放送を見てる。
たまに相撲を延々とやっていて面白くないけど。
父さんが帰って来ると夕食の時間になる。
夕食を食べながら今日の事を考えていた。
余り長引かせるのもよくない。
期待させるだけさせるのは残酷だと空兄さんが言ってた。
「冬吾。どうかしたの?今日は随分悩んでるみたいだけど」
母さんが言う。
少し考えて言った。
「父さんと母さん、お風呂入ったら相談したい事あるんだけどいいかな?」
「別にいいけど、冬夜さんも必要なの?」
母さんが聞く。
同じ男の父さんの意見も聞きたい。
父さんは僕の顔をじっと見ている。
そしてにこりと笑った。
「わかった。じゃあお風呂の後に話をきかせてもらうよ」
父さんの了解を得ると夕食を済ませて風呂に入ってリビングのソファに座る。
母さん達も座った。
「で、どうしたの?」
父さんが言う。
僕は今日あった出来事を話した。
「バレンタインの時もそうだったけど冬吾はもてるのね」
母さんが言う。
悪い気はしなかった。
でも返事をしないといけないと思うと気が重い。
振った方が可哀そうだと思うから。
「でも二股をかけるのは母さんは許しませんよ」
そんな事考えたことない。
どっちを選べばいい?
判断材料がなさすぎる。
だけど父さんは僕の悩みを解決してくれた。
「冬吾は違う事を考えているんじゃないのか?」
父さんは上手く僕の気持ちを読み取る。
恐ろしいくらいに正確に読み取る。
優しさに触れるとにじむような弱さを知ると誰かが言ってた。
僕は彼女の心に触れてしまった。
これ以上僕を困らせたくない。
そんな気持ちで彼女は何も言わなかった。
「冬吾が今思ってる事をちゃんと伝えなさい。中途半端な優しさは切れ味の悪いナイフみたいなものだ」
切れ味のいいナイフは傷の治りも早い。
思い切ってちゃんと伝えなさい。
それが父さんの回答だった。
僕にはまだ早いと思ってたけど僕は恋に落ちていた。
あの子の優しい気持ちに触れてしまった瞬間から。
それが今の僕の気もち。
「わかった」
「結論はでたの?」
母さんが聞くと僕は「うん」と答えた。
「じゃ、もう寝なさい。おやすみ」
父さんが言うと僕は寝室に行って寝る。
もし僕がスマホを持っていたなら今すぐ伝えてあげたかった。
彼女は凄く寂しく思っているだろうから。
次の日目を覚ますと制服に着替えてダイニングに行く。
「おはよう」
朝食を準備している母さんがそう言った。
僕と冬莉は自分の指定席に座る。
姉さんたちも降りて来た。
皆揃うと朝食を食べる。
その後準備をしていると水奈姉さんと誠司、それに純也兄さんもいた。
いつもと違うのは、冴と栗がいること。
姉さん達と一緒に幼稚園に行く。
そして莉緒と栗と瞳子を呼び出す。
何故か誠司と冴と冬莉もいる。
「もう結論出たの?」
栗が言う。
「うん」
「どうして瞳子がいるの?」
「瞳子も当事者だから」
瞳子は戸惑っていた。
「僕が好きなのは中山瞳子さんです」
思い切って言った。
「ちょっとまってよ、瞳子は何も言ってないよ!その結論はおかしくない?」
莉緒が言う。
「そうだよ、告白をしたのは莉緒と栗ちゃんだよ」
瞳子が言った。
「知ってる、でも僕は瞳子を好きになった。僕とつきあってもらえませんか?」
「……どうして私なの?」
瞳子が聞いた。
「分からない、昨日までは誰かを好きになるという気持ちが分からなかった。だけど突然瞳子の事ばかり考えるようになってた。それがきっと好きって感情なんだと理解したんだ」
僕が言うと瞳子はじっと聞いていた。
莉緒と栗も黙って聞いている。
「本当に私でいいの?後悔しない?二人は冬吾君の事好きって言ってくれてるんだよ?」
「瞳子は僕の事嫌い?」
僕は瞳子に聞いていた。
答を知った上でだけど。
やがて瞳子は泣き出した。
さすがにその反応は考えてなかった。
「私ってズルい女だね。何も言わずに冬吾君から言ってくれるのを待ってただけのずるい女」
「ずるいとか卑怯だとかそんなの関係ないよ。僕は自分の気持ちを伝えただけ」
だから瞳子の気持ちもきかせて。
そんな気持ちに瞳子は答えてくれた。
「私も冬吾君の事好きだよ。でも私なんか相手にしてもらえないと思ってた。莉緒とかの方が私よりずっと冬吾君の事好きだと思ってたから」
「どっちの方が好きだとかそんなの関係ないよ。栗だって僕の事好きだって言ってくれた。きっと思いは同じだよ」
「じゃあ、どうして?」
「正直僕も分からない。でも今は瞳子が好きだ。それじゃだめ?」
瞳子が莉緒と栗を見る。
「意外だった。瞳子はそんな素振り全然見せなかったから……まあ今回は仕方ないわね。冬吾君が選んだんだから」
「今日の所は大人しく引き下がるよ。でも諦めたわけじゃないから。これから先どうなるかわからないんだし。喧嘩だってするかもしれないし」
莉緒と栗が言う。
「じゃあ、よろしく。瞳子」
僕は瞳子に手を差し出す。
瞳子は僕の手を握手する。
「みんな先に行っててくれないかな。流石に振られた後だから立て直す時間が欲しい」
「分かった」
僕が言うと誠司たちもその場を立ち去る。
その日僕も誠司たちと同じように瞳子と手をつないで帰った。
僕達は好きだと確かめ合っただけ。
それをこれからどう表現していけば良いのか分からない。
デートに行けるわけでも無い、スマホもまだ持たせてもらえない。
「また明日」
そう言って孤独で寂しい夜を迎える。
瞳子もおなじなんだろうか?
夕食の時に家族に話をしていた。
そしたら母さんが回答を教えてくれた。
だから恋って大切なのよ。
離れている時間互いの事を想うのも恋のうち。
だから会える時間を大切にする。
恋はそうやって温めていく物だと母さんは言う。
「ねえ、冬吾」
冬莉が寝る前に質問してきた。
何だろう?
「どうしたの?」
「恋をするってどんな気持ち?」
上手く答える自信がないけど出来る限りの言葉で伝えてみた
「凄く優しい気持ちになったり、苦しい気持ちになったり複雑で一言で表せないんだ」
「ふ~ん……じゃあ、私もそうなのかな?」
え?
「冬莉にも好きな人いるの?」
「うん、隼人君」
「だったら思い切って伝えてみるといいよ」
「嫌われたりしないかな?」
「それは言ってみないとわからないよ」
本当は心を覗けばすぐにわかるんだけど。
物語の性質を考えたら一目瞭然なんだけど。
「分かった、明日言ってみるね」
「頑張りなっよ」
そして2人で眠りにつく。
次の日起きると朝の仕度をする。
瞳子も迎えに来ていた。
少し恥ずかしそうにしていた。
一緒に幼稚園に行く。
その瞬間の喜びを。
出逢えた事の意味を噛みしめながら僕は歩いていた。
冬莉も無事に高久隼人に告白して付き合う事になったそうだ。
何もできないもどかしい恋。
あまりにも未成熟で幼い恋の始まり。
(3)
今日は茜は愛莉パパ達と旅に出かけていない。
冬吾と冬莉は部屋から出てきた。
まだ少し眠そうだけど元気だ。
愛莉は朝食を作っている。
僕は新聞を見ていた。
最近は政治欄をしっかり見るようになった。
片桐家では新聞を3紙ほどとっている
父さんが新聞記者なせいもあるけど、同じ事がらでも書き手によって様々な形に変化する。
真の姿を模索するには一つのメディアに捕らわれていてはいけない。
皆は高所得者から税金を巻き上げれば消費税を下げられると謳っている。
でも、それをやった挙句富裕層が国外に流出、外資系の企業は撤退、経済は衰退して物資の不足、食料不足で物価は上がり続けとんでもない額面の基軸通貨が発行される事態になった。
結局基軸通貨は廃止され、海外の通貨が流通するようになった。
日本は金持ちに甘いというけどそんなことは無い。
割合でみても額面で考えても富裕層はかなりの額を払ってる。
所得税にしてみても累進課税制度というものがとられている。
低所得者は5%の所得税を払っているのに対して所得が4000万円を超える高所得者は45%も所得税で持っていかれる。
単純に所得の半分持っていかれますよと考えてみよう。
2000万円は税金を納めるわけだ。
それだけじゃない、消費税の額だって違う。高い車に乗ればそれだけ高い消費税を払うことになる。
法人税だって払わなきゃならない。
日本は富裕層に甘い。
そんな事は決してない。
そしてこれ以上富裕層を締め付ければ国外に移住するだろう。
富裕層が逃げ出した国がどうなるかは前に示した通りだ。
他人が不幸になればいい。
そんな考え方ではどのみち国なんて立ち行かなくなる。
日本は高い所得税の割に重税をかけられている。
税金が世界の中でも高い。
そんな事は決してない。
あくまでも最高税率での話だ。
それに社会保障の個人負担の率は低い。
だからこそ消費税の増税をしないとやっていけないと言っている。
決して借金の返済に充てる為ではない。
国債は国の借金。
良く時間換算で国民一人当たりの借金と称している馬鹿げたサイトがある。
国債はあくまでも政府機関が運営するために必要な予算を組み立てる為の政府が発行しているものだ。
考えても見よう。
国民が借金を背負っていると言うがその金を貸しているのは誰?
証券会社や銀行。それに個人投資家だ。
ちなみに日本が債務不履行になることは100%ない。これからも絶対におこりえない。
だって日本の国債は全て円建てなのだから。
ぶっちゃけていうと「返してほしいなら返してあげますよ。はいどうぞ」と札を刷って渡せばいい。
そんなことをして円の価値を下げられて困るのは投資家だ。
だから膨大な額に反して0.1%を切る利率という水準を保っている。
国民の借金をこれ以上増やすな、でもこれ以上税率を上げるな。
言いたい放題の国民。
だけど公務員だって生活している。
公共機関にストライキなど絶対に許されない。
借金にふれたのでもう一つだけ言おう。
貸借対照表というものがある。
これをみると日本には切り売りできる資産が900兆円超ある。
日本の借金は1000兆円あると言うが資産と徴税権(国の信用、見えない資産)を考えるとあと250兆円は財政出動してもびくともしないらしい。
それが国債の利率が上がらない理由、放っておくと円高が始まる理由。
難しい話をしてしまったけど「まだ日本は世間が言うほど危険な状態じゃないよ」って事。
とはいえ、税制改革は僕の仕事に大きくかかわってくるから。
そして一つのマスコミに固執してると真相が見えないから。
色んな媒体に目を通してる。
すると空が降りて来た。
姿を見ると今日は水奈と2人でお出かけのようだ。
2人とも本当に仲が良いようだ。
喧嘩をしたという話も聞かない。
翼が東京に行った後しばらくは立ち直れずにいたけど、解決したみたいだ。
とはいえ、恵美さんから聞いている翼の現状は空達には伏せていた。
いつまた想いが蘇るかもしれない。
大丈夫だと確信できるまで知らせずにいた。
翼はある目的が出来たらしい。
その為の修行を林田さんの下でやっている。
飲み込みは早いらしい。
最後に天音が降りて来た。
そして愛莉に一言いう。
「おい、愛莉!!どういうことだ!?私のおっぱいは全然大きくならないじゃないか!?」
コーヒー吹いた。
「あら?そうなの?」
愛莉が聞き返す。
「私は愛莉の血を継いでないのか?」
「個人差があるんだし仕方がないでしょ」
愛莉が答える。
「愛莉はそういうの気にしてた時期あったの?」
愛莉に聞いてみた。
「どうでしょう?私は特に気にしたことはありませんでしたね。神奈は気にしてたみたいだけど」
「それだよそれ!!水奈の奴、自分はそういう血だからと諦めてたのにこの前嬉しそうに『ブラ買い換えないときついな』とか言ってるんだぜ。このままだと水奈以下になるの確定だ」
天音が訴える。
空がそれを聞いて気まずそうにしている。
ひょっとして……。
「空は水奈に服を選んでやるのか?」
「ま、まあそういう約束してたから!」
「なんだと!?空まさか水奈のブラ選ぶんじゃないだろうな!?」
空の曖昧な態度を見てると一目瞭然だった。」
「うぬぬ……」
そう言いながらパンを齧る天音。
そうか、カンナの娘は胸が膨らんできたのか。
胸のあるカンナか。モデルとしてやっていけそうな気がするけど。
「冬夜さん、いけません。子供でそういう想像をしては」
愛莉には筒抜けのようだ。
呼び鈴がなる。
多分石原君の家のものだろう。
今日から大地の家に泊まりこみで遊ぶらしい。
美希は学君の家に泊まって勉強らしい。
勉強っていうのは口実だろうけど。
天音が出ていくとしばらくして空も出て行った。
冬吾は一人で退屈そうに携帯ゲームを弄っている。
冬莉は絵を描いている。
壁とかに描かずにちゃんと紙に書いてくれるのがいい子だ。
たまには父親らしいことしておくかな。
「冬吾と冬莉、たまには父さんと公園にでも遊びに行くか?」
「うん!」
それじゃあ、お弁当作りますね。ピクニックにしましょう。
愛莉がそういうと弁当を作り始める。
その間に僕と冬吾も準備を始めた。
那奈瀬の公園には芝生がある。
ご丁寧にサッカーのゴールまで準備されてある。
公園につくと冬吾とボールの蹴り合いをしていたが、お互い正確すぎて面白くも何ともない。
「じゃあ、冬吾。父さんを止められるか?」
「やってみる」
冬吾はそういうと僕と一定の距離を取って構える。
ドリブルで抜きに行きますよと宣言してるんだ。
ディフェンスの方が圧倒的に優位だ。
冬吾も素質があると思っていたけど、自分から動くような真似はしない。
僕のドリブルに備えてじっと待っている。
かといって僕も動かないんじゃじっと立っているだけだ。
僕がボールを前に蹴ると冬吾が動く。
着地点を見極めていたんだろう。
だが、見極めていた位置よりはるかに僕に近い位置でボールは戻ってくる。
利き足のかかとでボールを受け止め反対の足を軸に反転する。
ボールにつられた冬吾の逆位置に出来たスペースに飛び込む。
あとはトップスピードまで一気に加速して冬吾を置き去りにする。
しかしすぐにブレーキした。
「冬吾!」
愛莉が大声をあげている。
芝生に足を取られたらしい。
コケている冬吾がいた。
すぐに冬吾のそばにかけよる。
「ごめん、ちょっとムキになったかな」
「平気。やっぱり父さん凄いよ」
「冬吾はボールに釣られやすいのが今後の課題だね」
もっとも冬吾はフォワード向きなんだろうけど。
「でもやっぱりやられぱなしじゃ悔しいから父さんキーパーやってよ。PKしよう?」
「ああ、いいけど」
僕がゴール前に位置すると冬吾も適度に離れた位置にボールをセットして準備する。
PKは心理戦。
心を読める物通しでやっても勝負は明らか。
左上隅。
冬吾が打つと同時に跳んでいた。
やっぱり狙い通り。
そして狙い通りに打ってくる我が子を賞賛していた。
だが、それだけじゃなかった。
ボールがブレる。変則的な変化をする。
ちょっと焦った。
両手でしっかりキャッチすると胸に抱え込み倒れる。
「冬夜さん、だいじょうぶですか?」
2人が倒れ込む僕の側に駆け寄る。
「うーん、カルツ相手には決められたんだけどな」
そう言って笑う冬吾。
「まさか、冬吾の年で無回転シュートを正確に打ってくるとは思わなかったよ」
狙いを読めてなかったらヤバかった。
「どこで覚えたの?」
「たまたま不思議な軌道のボールが打てたから再現しようと努力しただけ」
「なるほどね」
「ねえ?どうしたら父さんのように上手くなれる?」
「冬吾の夢はサッカー選手か?」
「うん!」
冬吾は元気に答える。
どんな言葉をかけてやろうか?
そうだ……良い言葉があった。
「『ボールは友達』かな?」
「それって昔の漫画のあれ?」
「そうだよ」
出てくるキャラクターが必殺シュートを持ってる漫画。
ボールが友達といいながら破裂させたりする漫画。
ゴールのネットは常に交換しないといけない漫画。
スライディングタックルは常にファールの危険なサッカー。
その漫画の序盤でやってたこと。
登校中、学校にいる間そして家にいる間も常にボールに振れていなさいというもの。
「でもそんなのうちでやったら危ないよ」
冬吾が言う。
「こういう漫画があったんだ。どうしたら車を速く走れるか?その回答にこう答えたそうだよ」
朝も昼も夜も関係なく常に車の事だけを考える10個アイデアがあって8,9個はボツだったとしてそうやって技術は身につけていく物。
サッカーも同じじゃないかな?
常に考えて思いついたことを試してみる。それの繰り返しで自分のサッカーを作っていく。
だから冬吾は今のままでいい。
あとは冬吾の活躍する舞台を僕と愛莉で準備してやる。
そう冬吾に優しく説明した。
「わかった!」
そういうと冬吾は一人でサッカーボールで遊んでいる。
僕が見せたドリブルを自分のものしようとしているようだ。
「どうですか?子供と遊んでみた感想は?」
愛莉が聞いてきた。
「驚いたよ、まさかあそこまで上達してるとはね」
しかもまだ伸びしろがある。
僕の事をファンタジスタと呼んでいた人がいたが、冬吾は紛れもないサッカーの神様に愛されたファンタジスタだろう。
だから冬吾が望むなら僕は全力で応援してやりたい。
あの子はきっと学校の部活サッカーで収まる器じゃない。
親馬鹿と言われるかもしれないけど。
いつかきっと世界の舞台に立つ日が来るだろう。
あの子もまた日の丸の重荷を背負う時が来るだろう。
でも忘れないでほしい。
ひたすらにサッカーが好きだった今を。
そう思いながら懸命に練習する冬吾を見ていた。
「父さん、出来たよー」
元気に叫ぶ冬吾に笑顔で答えていた。
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