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2ndSEASON
心の戦場
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(1)
「ふぅ~」
僕達は帰り銭湯に寄っていた。
「ふぅ~」
冬吾も僕の隣に来て同じように足を延ばして風呂に浸かる。
だが冬吾はまだ体が小さい。
首から上までつかってしまう。
すると誠司と一緒に泳いで遊びだす。
まだそういう年頃なんだな。
僕にもあんな頃があったんだろうか?
「そんな事を考える歳じゃないと思うよ」
父さんが隣に座った。
水奈の父さんと渡辺さんも一緒だ。
正俊君が冬吾と誠司の面倒を見ている。
「お風呂は遊ぶところじゃないんだぞ!」
小さかった正俊君も大きくなったんだな。
「あいつはお姉さんしかいなかったろ?だから嬉しいんだよ。弟という存在が」
渡辺さんが言う。
「やっぱり女姉妹のなか男一人だと肩見せまいかい?」
酒井君のお父さんと石原君のお父さんも来た。
「それはあまり関係ないんじゃないか?まあ、服装をあれこれ弄られたりはするみたいだが」
渡辺さんが言う。それは僕も経験した。でもタダのスタイリストが付いたと思えば楽でいい。
もっとも今僕の服を選んでくれるのは水奈だけど。
天音は標的を冬吾に移してしかも茜まで参戦するという酷い状態だけど。
「しかし空のこの歳で人生を悟ったような感じは冬夜に似たのか?」
渡辺さんが言う。
そこまで達観してるわけでもないんだけどね。
水奈の心すらわからない。
心が分からない異性と付き合うってすごく難しいんだなと実感してた。
学達も同じなんだろうか?
世の中の事なんてまるでわかっていない。
水奈の気持ちすら分からないんだから。
「僕は父さんに比べたらまだまだですよ」
「それを分かっているのが妙に大人びているというんだよ。空くらいの歳頃なら世の中の事なら何でも知ってる。世界は自分を中心に回ってるくらいの事考えるもんだぞ」
渡辺さんがそう言って笑う。
「僕は今の彼女の気持ちすらわからなくてもがいてるだけですよ」
「それが普通なんだよ、空君や」
善明君と大地もきた。
「僕も天音の気持ちが全然わからない」
大地君が悩んでいる。
「それが普通だから気にするな大地」
水奈の父さんが言った。
「いや、僕も海璃の気持ちが全然読めない。行動も予測不能だ。あんな大胆な子なんて全然気づかなかった」
「善明や、父さんも晶ちゃんの気持ちが全然わからないんだ。夫婦でさえこうなんだからしょうがないんだよ」
「善明君も大変だね」
善明君が言うと善明君の父さんや大地の父さんが励ます。
なんとなく想像がつくから何があったのかは敢えて聞かなかった。
「ああ!美希の奴また胸がでかくなってる」
「ちょっと!?それはさすがに反則なんじゃないか!」
天音と水奈だ。
「学はそんなに美希の胸もんでるのか!?」
「ちょっと声でかいって!」
声と反比例して小さくなっていく学の立場。
「その論だけどよ、一つ疑問があるんだ!」
「どうした?天音」
「美希がデカいのはそれで説明つくかもしれない。じゃあなんで水奈の胸まででかくなるんだよ!」
「やっぱ素質ってあるんじゃね?」
得意気に話す水奈。
そういや中学になってから急に大きくなってきたって言ってたな。
「それはおばさんにも不思議なんだ。天音」
水奈のお母さんの声だ。
「……そろそろ出た方がいいかもな」
「そうだね」
渡辺さんと父さんが言う。
僕達も冬吾と誠司を呼んで風呂を出た。
風呂を出て服を着るとコーヒー牛乳を一気飲みしてアイスを食べる。
冬吾の分も買ってやる。
それからしばらくすると天音たち女性陣が出てきた。
その後ファミレスに移動する。
「やい!大地!!」
大地の前に陣取った天音が大地を睨みつける。
「ど、どうしたの?」
「お前のせいで私は屈辱味わったぞ!お前はこのままでいいのか!?私を助けてくれるのが大地じゃないのか!?」
「な、何があったの?」
「お前がもたもたしていつまでも私と寝てくれないから私のおっぱいは小さいままなんだぞ!」
みんな一斉に吹いた。
「いい加減諦めたら?天音」
水奈が勝ち誇ったように言う。
「天音、はしたないですよ!」
母さんから叱られる天音。
「うぬぬ……」
納得がいかない天音。
「ごめんね天音ちゃん。大地にはおばさんからビシッと言っとくから」
笑えば良いと思うよ。
そう大地君に声をかけてやりたい状態だった。
昼食を食べると解散する。
家に帰ると部屋に戻って片付ける。
洗濯物は下に持って降りる。
すると水奈からメッセージが届いた。
「ずっと不思議だったんだけど、空は私のおっぱいに興味ないのか?」
動揺してスマホを落としそうになった。
「どうしてそう思ったの?」
「私だっておっぱい膨らんできたのに空は全然興味もたないからまだ足りないのかなって」
女子ってそういう生き物なのだろうか?
「おっぱいは大きさだけじゃないよ。色や形も重要なんだ」
僕は何を真面目に自分の彼女に向かって自分のおっぱい観を語っているんだろう?
「男ってみんなそうなの?」
「みんなじゃないと思う、だって小さい人が好きっていう人もいるし」
「う~ん、それじゃダメなんだよね」
「どうして?」
「その理屈だと私のおっぱいは空の興味をひかないってことじゃないか」」
「そ、そんなことないよ。見た事も無いんだよ」
「見たくないのか?」
「そ、そうじゃなくて。まだ早いって思ったから」
だって中学生だよ。
「でもそれじゃ、だめなんだ。女子としてのプライドが許さない」
そんな事にプライドが必要なのだろうか?
「空に揉んでもらえたらもっと大きくなると思ったんだけど……自分で揉んでもあまり効果ないらしいし」
「それなら説明できる……たぶん」
「じゃあ、説明して」
「自分で揉むのと、彼氏に揉んでもらうのとじゃ決定的な差があるんだって」
「決定的な差?」
水奈が聞いてきたので返信した。
「女性ホルモンの分泌量が問題なんだって。異性を意識してる方が高いんだって」
「へえ……で?」
「へ?」
「なんで空がそんなことに詳しいの?」
水奈が聞いてきた。
「水奈がいつも深刻な表情で自分の胸を見て悩んでいたから」
ネットで調べた。
水奈は喜んでいるみたいだ。
「やっぱり空は私の事考えてくれてるんだね」
「そ、そういうわけだからさ、水奈も止めた方がいいよ」
「どうして?」
「女性ホルモンの分泌量の影響とか言ったけど科学的に証明されてるわけじゃなさそうだし、それに下手にそんなことしてると見た目も悪くなるよ」
「そうなの?」
「うん」
「そしたら、空にも嫌われちゃうね。……止めとく」
水奈は落ち込んでるようだ。
「大丈夫だよ水奈、水奈のおっぱいがどんな風になっても僕にとっては水奈のが一番だから」
真面目に慰めたつもりだけど、セリフにするとかなり馬鹿な事言ってるよな。
「ありがとう!私も空のが一番だよ。……ていうか空の見た事ないや」
恥ずかしそうに返してきた。
「今夜は外食にするから降りてらっしゃい」
母さんが呼んでる。
僕達は部屋を出て下に降りて行った。
(2)
夏休み。
僕と梨々香、茜と壱郎は地元空港に来ていた。
毎シーズンある事だけど今年はとんでもなかった。
カナダにサマーキャンプに出掛ける。
僕達小学生だけで海外に行って来いという。
「若いうちに海外留学は経験しておくべきだ」
遠坂のおじさんの一存で決まった。
カナダって何があるんだ?
食い物は魚から肉まで色々あるらしい。
「じゃあ、気を付けていっておいで」
父さんが言う。
「行ってきます」
そう言うと僕達は手荷物検査に並ぶ。
飛行機に乗るとシートを少し倒して寝る姿勢に入る。
そんな様子を梨々香が見ている。
「どうしたの?」
僕が梨々香に聞いていた。
「いや、なんか旅慣れしてるって感じがしてかっこいいなって」
「まあ、ほぼ毎年いってるからね」
女性からカッコいいって言われるのは何かこそばゆい。
「純也君英語大丈夫?」
「まあ、現地の人と喋るくらいはできるよ
日本で学ぶ英語は動詞やら複数形やら理屈から入ることが多くて分かりづらい。
ヒアリングテストとかもあるらしいけど、でもやっぱりテストは理屈を並び立てるだけだ。
それに比べて比べたら、現地で聞く会話はジェスチャーを混ぜながらも生の言葉を聞く事が出来る。
国によって多少表現が違うけどそんなの日本語で言う方言みたいなものだ。
カナダのバンクーバーまでは9時間くらいでつく。
そこで現地の人と話をして家に連れて行ってもらう。
家に行くと家族に挨拶をして部屋を案内してもらう。
部屋割りはいつも通り。
もう何とも思わなくなったね。
それから、一月足らずのカナダ生活が始まった。
日本に比べて広大な土地で異国の子供達と異文化交流をしながら英語などを並んでいく。
食生活も違う。
朝はシリアル、昼はサンドイッチにりんご、夜は麺・肉・寿司など。
そういう体験を茜はブログにまとめて掲載する。
カナダのインターネット事情は日本と変わらない。
好意もあってLANを使わせてもらえた。
あとは現地の子供達と話をしながら夜を過ごす。
梨々香や壱郎は僕や茜が通訳しながらだったが、徐々に慣れていく。
ただの小学生にしては贅沢なサマーバケーションを楽しんでいた。
(3)
「大地!今日から家に泊まりに来い!」
純也達を見送った後車の中で私は大地に電話していた。
茜はいない、部屋には私一人、条件は悪くない。
「いきなり言われても宿題があるし」
そんなもん7月中に済ませとけとあれほど言っただろうが!
って怒鳴りつけても大地を委縮させるだけ、優しく対応してやろう。
「私が教えてあげる。一人で勉強するよりましだろ?」
「母さんに聞いてみる」
しばらくして大地のお母さんが電話に出た。
「もしもし、天音ちゃん。ごめんね手間をかけて。大地にはちゃんと言っておくから、これで何も無かったなんて馬鹿を言ったら冬休みは湯布院の別荘に新條をつれて徹底的に教育してあげる」
「はい」
「ちょっと愛莉ちゃんに変わってもらえる?」
「分かりました」
愛莉にスマホを渡した。
「もしもし恵美?ごめんね天音が無理言って……大丈夫元々二人用の部屋だし防音もしてあるから」
話はとんとん拍子にに進んだ。
待ってるだけが女じゃないって誰かが言ってた。
誘ってくれないならこっちから攻めるのみ!
美希は実践したらしい。
空たちに声を聞かれる?
それに秘策は用意してある。
あとは、大地次第だ。
家に帰ると大地がバッグを持って家の前に立っていた。
車を駐車するとパパが大地に「いらっしゃい。ごめんね。ちょっと純也達の送迎に行ってて」と言う。
「大丈夫です。こちらこそ突然押しかけてすいません」
「誘ったのは天音なんだ、気にしないよ」
パパは「うちの娘に手を出したら許さん!」と叱るタイプじゃない。
ただお爺さんと「娘も大人になった」と寂しそうに酒を飲むだけだ。
大地を部屋に案内する。
大地は部屋を見回している。
「女子っぽくなくてがっかりしたろ?」
これでも多少茜の趣味でぬいぐるみが転がってたりするんだけど。
それ以上に茜がネットで買ってるジャンクパーツが転がってるけど。
大地が適当な場所に荷物を置くと聞く。
「僕は上と下どっちに寝たらいいの?」
「上は茜用だから」
「じゃあ、うえかな?」
なんでそうなるんだよ!
「下だよ!全部言わせるな!」
私だって女子だぞ!恥ずかしい思いさせるな!
「……わかった」
「分かったら行くぞ」
「どこに?」
「コンビニだよ」
「ああ、飲み物買いに行くんだね」
大地の頭をどついた。
「どうせ大地だから用意してないんだろ?今から買いに行くぞ」
「何を?」とは聞かなかった。それを女子に言わせるのは大地でもまずいと思ったんだろう。
「ちょっと出かけてくる」
「夕食どうするの?」
「家で食べる」
「分かった」
愛莉と話をするとコンビニに行くと。
ここまで来て躊躇うのが大地だ。
本当に情けない奴だな。
「どうせ、標準でいいんだろ?」
私はMサイズのそれを取ると大地は言った。
「さすがに女子に買わせるのはまずいから……僕が買うよ」
大地は覚悟を決めたようだ。
買う物買うと家に帰る。
夕食の時間まで大地の勉強に付き合った。
大地は平均的にこなすタイプの様だ。
ずっと勉強は私にまずいと思ってくれたらしい。
一緒にゲームなんかしたりした。
そしてごはんを食べると一緒に風呂に入る。
嫌がる大地を引きずって一緒に風呂に入る。
その晩は何も無かった。
想定の範囲内だ。
その後も暫く何も無かった。
それも想定の範囲内だ。
決戦は日曜日!
花火大会の日。
パパ達にはお願いしておいた。
「私達は今年は家で楽しむ」と。
愛莉が許可してくれた。
空たちも今年はパパたちと花火を見にいくらしい。
「大きくなったらどうせ2人でみるんだし、去年2人で見たからいい」
昼頃父さん達は出かけて行った。
昼食と夕食は私が作ってあげた。
片づけを終えると風呂に入って部屋でくつろぐ。
ここからが勝負だ。
私は大地を誘う。
だけど大地は躊躇っている。
やっぱり私じゃ未熟なのか?
「私魅力ない?」
そう言って膝を抱えて座っていた。
これで何も行動しなかったら徹底的に教育してもらえ!
大地は行動した。
私をベッドに誘導する。
ネットで調べたんだろう。
手順をこなしていく。
初めてというのもあって私の体は強張っていたけど、それでも大地なりに私の心と体をほぐしてくれた。
そして事件が起こった。
大地が焦っている。
焦らなくてもまだ花火が始まったくらいの時間だ。
落ち着け。
しかし大地はうなだれた。
「どうしたの?」
大地に聞いてみた。
「ごめん、緊張してるみたいで……その」
情けないのは根性だけじゃなかったようだ。
でも、ここで怒ったら大地はますます委縮するだけだ。
私も協力してやった。
ネットで得た知識を頼りに最善の手を尽くした。
上手く言ったみたいだ。
だけど次の段階でまた躓いた。
ゴムのつけ方が分からないらしい。
そのくらいネットで調べとけ。
だけど怒ったらまたやり直しだ。
「私がつけてあげる」
そう言ってゴムを装着した。
もう問題はない。
「初めてだから優しくな」
「わかった……」
激痛が走る。
でも「痛い」なんて言っちゃいけない。
これが大人になる通過儀礼なんだ。
「大丈夫?」
大地が不安そうに聞いている。
「……大丈夫」
そして大地は最後にへまをやった。
数十秒後に異変を感じた。
「大地?」
大地は私から離れる。
まさかお前……。
大地は泣いている。
「どこまで情けないんだ僕は……」
たった数十秒が私の初めてだった。
ふざけんな!
前の私ならそう怒鳴りつけていた。
だけど不思議と怒りは無かった。
そんな大地が愛しく思えた。
だから大地の後頭部をポカっと叩く。
「情けなくなんかないよ。大地は十分頑張ったよ」
回数こなしていけばきっと慣れるさ。
だからこれからもよろしくな。
一瞬だったけど私は気持ちよかった。
私を幸せな気分にさせてくれた。
私は下着をつけて服を着る。
「大地も服着ろ。風呂入ろうぜ」
「天音は僕に愛想尽かしてない?」
大地を抱きしめた。
「そんなわけないだろ。私の初めての大切な彼氏だ」
私以外の誰にも渡せない大事な人。
その後風呂に入って、お菓子とジュースを手にテレビを見ていたらパパ達が帰って来た。
パパは少し酔っていたようだ。
でも気分は沈んでいる。
何があったんだろう?
「今はそっとしておいてあげて」
愛莉がそう言って笑う。
大好きな彼と一つになる。
その事に意味があるんだと知った。
でも夏はまだ始まったばかり。
これからもっと幸せな出来事が待っているんだろう。
辛い事もいっぱいあるかもしれないけど。
それでも明日に胸は震える。
どんな事が起こるんだろうと想像していた。
(4)
今年は父さん達と一緒に行くことにした。
遠坂のお爺さん達と水奈も一緒だ。
父さんが誘っていいと言ったから。
バスで移動した。
街につくと駅ビルのフードコートでご飯を食べる。
その後映画を観る。
青春ファンタジーと評された映画。
海のない街に突然現れたペンギンの謎と秘密を解き明かしていく話。
説明を聞いているだけでファンタジーだ。
水奈はじっと見ていた。
映画は面白かった。
冬吾と冬莉もポップコーンを食べながら見入っていた。
その後服や雑貨を物色しながら駅ビルで時間を潰す。
ゲームセンターで特撮物のメダル等を欲しがっている冬吾。
来年になったらまた変わるんだぞ。
希少価値なんて全くないんだ。
そう言って説得する母さんと父さん。
冬吾は聞きわけがいい。
その代わりクレーンゲームでゲームのキャラのぬいぐるみをとって渡してやった。
「荷物になるのに!」
母さんに叱られた。
「私にはなにもないの!?」
冬莉に強請られたのでもう一個頑張って取った。
ゲームのキャラクターグッズを扱ってる店や鉄道模型の店にも寄ったが冬吾は興味を示さない。
冬吾はあまり玩具は欲しがらない。
すぐに飽きると知っているようだ。
駅ビルを出ると商店街を歩く。
母さんと水奈は浴衣だ。
歩幅はゆっくり進んでいく。
短冊の願い事を見て回りながら。
「なんて書いてるの?」
冬吾が偶に聞くと父さんが説明する。
夕食は焼肉だった。
肉を食らいつくす。
父さん達は今日は珍しく飲んでいた。
車で来なかった理由はこれか。
そんな父さんをみて母さんは笑っている。
「お肉焦げてしまいますよ?」
母さんが父さんに肉を食べるように勧める。
「ああ」
「言ったでしょ?天音だってもうお年頃なんですよ。覚悟を決めてくださいって」
「分かってるんだけど」
「そうは言ってもやりきれないのが男親ってもんなんだよ愛莉ちゃん、ねえ?遠坂さん」
「……うむ」
「パパさんも愛莉ちゃんの時は大変だったのよ~。一人で飲んで沈んでいてね~」
大人たちが話をしている。
よくわからないので肉を食う。
「……冬夜君。間違っても娘なんて持つものじゃないと思っちゃだめだよ。いつか報われる日が来るから……」
「……はい」
肉を存分に食べると会場まで歩く。
父さん達が場所を取ってる間に夜店を周る。
食べ物を買って父さん達の所に戻る。
食べながら花火を見上げる。
夜空に浮かぶ様々な色の花。
連発花火が終ると拍手がなる。
花火が終ると僕達はバスターミナルに戻る。
そしてバスに乗って水奈を送って家に帰る。
家に帰ると天音達は部屋で楽しんでいるようだった。
何となく想像がついたので聞くのはやめた。
風呂に入ると部屋でジュースを飲んで一息つく。
そして眠りにつく。
時間は0時前だった。
「あと何回同じ日々を過ごすのだろう?」
「それは空が望んだ数だけ」
水奈はそう答えた。
じゃあ、数えきれないな。
「でも来年になればまた変化があるよきっと」
来年の今頃は僕は高校生だから。
「そうだね」
どんな事が起こるんだろう?と明日に胸が震える。
(5)
「お、学、遅かったな。2人そろって浴衣か。似合ってるじゃん」
「すまんな。浴衣で自転車は無理だったんでバス停から歩くしかなかった」
学がそう言って光太たちに謝る。
今いるのは光太に麗華、善明に海璃、そして私と学。
今日は花火大会。
皆で見ようって集まった。
「でも、美希は浴衣似合ってるね」
海璃が言う。
それはよかった。
適当に場所を取ると花火を見る。
毎年見る花火だけど毎年違って見えるのは私達が成長している証?
来年はどんな色をしているのだろう?
来年も私の隣に学はたっていてくれるのだろうか?
恋の神様はいる。
私達の世界では常識。
たまに気紛れを起こす困った神様だけど、常に私達を見守っていてくれる。
花火が終るとファミレスで夕食を食べる。
初めての経験。
ファミレスが初めてなんじゃない。
こんな時間に友達と騒いでるのが初めてなんだ。
中学生になったら門限は無くなった。
「間違ってもネカフェで寝泊まりなんで真似は許さないわよ」
母さんに言われた言葉。
「それと中学生で酒の味を知るのはまだ早いわ」
せめて大学生まで待ちなさい!
そこは大人になるまで待てというのが親じゃないのだろうか?
反抗してタバコを吸ってみたくなったり酒を飲んでみたくなったりするものだけどそう言われると逆に興味を示さなくなる。
そこまで計算しているのだろうか?
タバコは、光太が吸おうとして麗華に叱られてた。
「私タバコ臭い人嫌いなの」
たしかにタバコ臭い男は嫌いだ。
雑誌で読んだ事がある。
女性でもタバコを吸っているといざという時にタバコの匂いがして男がドン引きするって。
体臭を気にするならタバコは吸うべきじゃない。
それが子供なりの結論だ。
ただ私には母さんと父さんの血が流れている。
それ以前に学が許してくれないんだが。
親の言うことに反発してるわけじゃないけど、反発する理由が無いから。
学に嫌われたくないから。
私は学が好きだから。
「ちょっと飲み物取ってくる」
私が席を立つ。
「ああ、俺が取ってくるよ。ちょうどきれたし。何が良い?」
「いいよ、一緒に行こう」
そしてソフトドリンクのコーナーに行く。
「美希、時間大丈夫か?」
「日付が変わらなかったら文句は言わないって言ってた」
「じゃあ、少し急いだ方がいいな。終便に間に合わなくなる」
「それなら大丈夫。迎えに来てもらうから」
「しかしあまり美希を深夜まで連れまわすわけにはいかない」
「まあ、そういうことならしょうがないか」
光太が言う。
それから私が家に連絡して迎えをこさせた。
送迎の車が来るのにそんなに時間はかからなかった。
車の中で学は時計を気にしている。
「そんなに気にしなくても大丈夫。ただ泊まるとは伝えてなかったから」
「いや、親御さんから大切な娘さんを預かってる身としては……」
「そんなに私が重荷?」
「そういうわけじゃないんだが」
「私たち来年には高校生だよ?」
「まあ、そうだな」
「そしたらもっと遊びの範囲が広くなる」
「受験勉強もあるんだが……」
そんなのしなくても私達の運命は決まってるよ。
「まあ、遊びの範囲は広くなるだろうな……」
「でしょ?」
学は少し考えて言った。
「いつか俺も車の免許を取ろうと思うんだ」
「うん」
「そしたらドライブでもしないか?」
学はそう言って笑う。
「でも、俺が美希の世界を広げる以上に、美希が俺の世界を広げてくれる。どちらにしろいつも一緒だ」
「……ありがとう」
学の世界には優しさが溢れている。
私はその世界に足を踏み入れることを許された。
車は先に学の家に寄った。
「学、意外と早かったな。今日は帰ってこないと思っていたけど」
ちなみに時間は23時55分。
「こんな時間になってすいません」
「美希が謝ることじゃないよ。こいつ誰に似たのか妙に真面目だからさ。たまにはこれくらい……」
むしろ美希の方こそ大丈夫?と学の母さんがいう。
「私の親も学と一緒って言ったらそんなに五月蠅く言わないので」
むしろどっか街中のホテルの一室取っておこうか?と聞かれたくらいだ。
そうして学を見送ると私は家に入り着替えて風呂に入る。
風呂を出て部屋に戻る。
スマホはメッセージを受け取っていた。
「今夜はありがとう。おやすみ」
私も「おやすみなさい」と返した。
変わらない景色。
変わらない笑顔。
そんな月日を幾年も重ねすぎてもこの世界に優しさを。
勇気を見せつけても強がっても一人では生きられない。
いつか私も学もそれぞれの未来を描いても
強い絆はあるから
「夢が叶いますように」
心の底から祈ってる。
でもどうせまた一緒になるんだって誓って指切りする。
見えない行先へと迷いながらでもいつでも進んでる。
変わりゆく季節と時の中懐かしい音色。
きっと大人になっても色あせないだろう。
私達の大切な想い出。
決して忘れない。
この広い世界と大切な仲間達の事。
「ふぅ~」
僕達は帰り銭湯に寄っていた。
「ふぅ~」
冬吾も僕の隣に来て同じように足を延ばして風呂に浸かる。
だが冬吾はまだ体が小さい。
首から上までつかってしまう。
すると誠司と一緒に泳いで遊びだす。
まだそういう年頃なんだな。
僕にもあんな頃があったんだろうか?
「そんな事を考える歳じゃないと思うよ」
父さんが隣に座った。
水奈の父さんと渡辺さんも一緒だ。
正俊君が冬吾と誠司の面倒を見ている。
「お風呂は遊ぶところじゃないんだぞ!」
小さかった正俊君も大きくなったんだな。
「あいつはお姉さんしかいなかったろ?だから嬉しいんだよ。弟という存在が」
渡辺さんが言う。
「やっぱり女姉妹のなか男一人だと肩見せまいかい?」
酒井君のお父さんと石原君のお父さんも来た。
「それはあまり関係ないんじゃないか?まあ、服装をあれこれ弄られたりはするみたいだが」
渡辺さんが言う。それは僕も経験した。でもタダのスタイリストが付いたと思えば楽でいい。
もっとも今僕の服を選んでくれるのは水奈だけど。
天音は標的を冬吾に移してしかも茜まで参戦するという酷い状態だけど。
「しかし空のこの歳で人生を悟ったような感じは冬夜に似たのか?」
渡辺さんが言う。
そこまで達観してるわけでもないんだけどね。
水奈の心すらわからない。
心が分からない異性と付き合うってすごく難しいんだなと実感してた。
学達も同じなんだろうか?
世の中の事なんてまるでわかっていない。
水奈の気持ちすら分からないんだから。
「僕は父さんに比べたらまだまだですよ」
「それを分かっているのが妙に大人びているというんだよ。空くらいの歳頃なら世の中の事なら何でも知ってる。世界は自分を中心に回ってるくらいの事考えるもんだぞ」
渡辺さんがそう言って笑う。
「僕は今の彼女の気持ちすらわからなくてもがいてるだけですよ」
「それが普通なんだよ、空君や」
善明君と大地もきた。
「僕も天音の気持ちが全然わからない」
大地君が悩んでいる。
「それが普通だから気にするな大地」
水奈の父さんが言った。
「いや、僕も海璃の気持ちが全然読めない。行動も予測不能だ。あんな大胆な子なんて全然気づかなかった」
「善明や、父さんも晶ちゃんの気持ちが全然わからないんだ。夫婦でさえこうなんだからしょうがないんだよ」
「善明君も大変だね」
善明君が言うと善明君の父さんや大地の父さんが励ます。
なんとなく想像がつくから何があったのかは敢えて聞かなかった。
「ああ!美希の奴また胸がでかくなってる」
「ちょっと!?それはさすがに反則なんじゃないか!」
天音と水奈だ。
「学はそんなに美希の胸もんでるのか!?」
「ちょっと声でかいって!」
声と反比例して小さくなっていく学の立場。
「その論だけどよ、一つ疑問があるんだ!」
「どうした?天音」
「美希がデカいのはそれで説明つくかもしれない。じゃあなんで水奈の胸まででかくなるんだよ!」
「やっぱ素質ってあるんじゃね?」
得意気に話す水奈。
そういや中学になってから急に大きくなってきたって言ってたな。
「それはおばさんにも不思議なんだ。天音」
水奈のお母さんの声だ。
「……そろそろ出た方がいいかもな」
「そうだね」
渡辺さんと父さんが言う。
僕達も冬吾と誠司を呼んで風呂を出た。
風呂を出て服を着るとコーヒー牛乳を一気飲みしてアイスを食べる。
冬吾の分も買ってやる。
それからしばらくすると天音たち女性陣が出てきた。
その後ファミレスに移動する。
「やい!大地!!」
大地の前に陣取った天音が大地を睨みつける。
「ど、どうしたの?」
「お前のせいで私は屈辱味わったぞ!お前はこのままでいいのか!?私を助けてくれるのが大地じゃないのか!?」
「な、何があったの?」
「お前がもたもたしていつまでも私と寝てくれないから私のおっぱいは小さいままなんだぞ!」
みんな一斉に吹いた。
「いい加減諦めたら?天音」
水奈が勝ち誇ったように言う。
「天音、はしたないですよ!」
母さんから叱られる天音。
「うぬぬ……」
納得がいかない天音。
「ごめんね天音ちゃん。大地にはおばさんからビシッと言っとくから」
笑えば良いと思うよ。
そう大地君に声をかけてやりたい状態だった。
昼食を食べると解散する。
家に帰ると部屋に戻って片付ける。
洗濯物は下に持って降りる。
すると水奈からメッセージが届いた。
「ずっと不思議だったんだけど、空は私のおっぱいに興味ないのか?」
動揺してスマホを落としそうになった。
「どうしてそう思ったの?」
「私だっておっぱい膨らんできたのに空は全然興味もたないからまだ足りないのかなって」
女子ってそういう生き物なのだろうか?
「おっぱいは大きさだけじゃないよ。色や形も重要なんだ」
僕は何を真面目に自分の彼女に向かって自分のおっぱい観を語っているんだろう?
「男ってみんなそうなの?」
「みんなじゃないと思う、だって小さい人が好きっていう人もいるし」
「う~ん、それじゃダメなんだよね」
「どうして?」
「その理屈だと私のおっぱいは空の興味をひかないってことじゃないか」」
「そ、そんなことないよ。見た事も無いんだよ」
「見たくないのか?」
「そ、そうじゃなくて。まだ早いって思ったから」
だって中学生だよ。
「でもそれじゃ、だめなんだ。女子としてのプライドが許さない」
そんな事にプライドが必要なのだろうか?
「空に揉んでもらえたらもっと大きくなると思ったんだけど……自分で揉んでもあまり効果ないらしいし」
「それなら説明できる……たぶん」
「じゃあ、説明して」
「自分で揉むのと、彼氏に揉んでもらうのとじゃ決定的な差があるんだって」
「決定的な差?」
水奈が聞いてきたので返信した。
「女性ホルモンの分泌量が問題なんだって。異性を意識してる方が高いんだって」
「へえ……で?」
「へ?」
「なんで空がそんなことに詳しいの?」
水奈が聞いてきた。
「水奈がいつも深刻な表情で自分の胸を見て悩んでいたから」
ネットで調べた。
水奈は喜んでいるみたいだ。
「やっぱり空は私の事考えてくれてるんだね」
「そ、そういうわけだからさ、水奈も止めた方がいいよ」
「どうして?」
「女性ホルモンの分泌量の影響とか言ったけど科学的に証明されてるわけじゃなさそうだし、それに下手にそんなことしてると見た目も悪くなるよ」
「そうなの?」
「うん」
「そしたら、空にも嫌われちゃうね。……止めとく」
水奈は落ち込んでるようだ。
「大丈夫だよ水奈、水奈のおっぱいがどんな風になっても僕にとっては水奈のが一番だから」
真面目に慰めたつもりだけど、セリフにするとかなり馬鹿な事言ってるよな。
「ありがとう!私も空のが一番だよ。……ていうか空の見た事ないや」
恥ずかしそうに返してきた。
「今夜は外食にするから降りてらっしゃい」
母さんが呼んでる。
僕達は部屋を出て下に降りて行った。
(2)
夏休み。
僕と梨々香、茜と壱郎は地元空港に来ていた。
毎シーズンある事だけど今年はとんでもなかった。
カナダにサマーキャンプに出掛ける。
僕達小学生だけで海外に行って来いという。
「若いうちに海外留学は経験しておくべきだ」
遠坂のおじさんの一存で決まった。
カナダって何があるんだ?
食い物は魚から肉まで色々あるらしい。
「じゃあ、気を付けていっておいで」
父さんが言う。
「行ってきます」
そう言うと僕達は手荷物検査に並ぶ。
飛行機に乗るとシートを少し倒して寝る姿勢に入る。
そんな様子を梨々香が見ている。
「どうしたの?」
僕が梨々香に聞いていた。
「いや、なんか旅慣れしてるって感じがしてかっこいいなって」
「まあ、ほぼ毎年いってるからね」
女性からカッコいいって言われるのは何かこそばゆい。
「純也君英語大丈夫?」
「まあ、現地の人と喋るくらいはできるよ
日本で学ぶ英語は動詞やら複数形やら理屈から入ることが多くて分かりづらい。
ヒアリングテストとかもあるらしいけど、でもやっぱりテストは理屈を並び立てるだけだ。
それに比べて比べたら、現地で聞く会話はジェスチャーを混ぜながらも生の言葉を聞く事が出来る。
国によって多少表現が違うけどそんなの日本語で言う方言みたいなものだ。
カナダのバンクーバーまでは9時間くらいでつく。
そこで現地の人と話をして家に連れて行ってもらう。
家に行くと家族に挨拶をして部屋を案内してもらう。
部屋割りはいつも通り。
もう何とも思わなくなったね。
それから、一月足らずのカナダ生活が始まった。
日本に比べて広大な土地で異国の子供達と異文化交流をしながら英語などを並んでいく。
食生活も違う。
朝はシリアル、昼はサンドイッチにりんご、夜は麺・肉・寿司など。
そういう体験を茜はブログにまとめて掲載する。
カナダのインターネット事情は日本と変わらない。
好意もあってLANを使わせてもらえた。
あとは現地の子供達と話をしながら夜を過ごす。
梨々香や壱郎は僕や茜が通訳しながらだったが、徐々に慣れていく。
ただの小学生にしては贅沢なサマーバケーションを楽しんでいた。
(3)
「大地!今日から家に泊まりに来い!」
純也達を見送った後車の中で私は大地に電話していた。
茜はいない、部屋には私一人、条件は悪くない。
「いきなり言われても宿題があるし」
そんなもん7月中に済ませとけとあれほど言っただろうが!
って怒鳴りつけても大地を委縮させるだけ、優しく対応してやろう。
「私が教えてあげる。一人で勉強するよりましだろ?」
「母さんに聞いてみる」
しばらくして大地のお母さんが電話に出た。
「もしもし、天音ちゃん。ごめんね手間をかけて。大地にはちゃんと言っておくから、これで何も無かったなんて馬鹿を言ったら冬休みは湯布院の別荘に新條をつれて徹底的に教育してあげる」
「はい」
「ちょっと愛莉ちゃんに変わってもらえる?」
「分かりました」
愛莉にスマホを渡した。
「もしもし恵美?ごめんね天音が無理言って……大丈夫元々二人用の部屋だし防音もしてあるから」
話はとんとん拍子にに進んだ。
待ってるだけが女じゃないって誰かが言ってた。
誘ってくれないならこっちから攻めるのみ!
美希は実践したらしい。
空たちに声を聞かれる?
それに秘策は用意してある。
あとは、大地次第だ。
家に帰ると大地がバッグを持って家の前に立っていた。
車を駐車するとパパが大地に「いらっしゃい。ごめんね。ちょっと純也達の送迎に行ってて」と言う。
「大丈夫です。こちらこそ突然押しかけてすいません」
「誘ったのは天音なんだ、気にしないよ」
パパは「うちの娘に手を出したら許さん!」と叱るタイプじゃない。
ただお爺さんと「娘も大人になった」と寂しそうに酒を飲むだけだ。
大地を部屋に案内する。
大地は部屋を見回している。
「女子っぽくなくてがっかりしたろ?」
これでも多少茜の趣味でぬいぐるみが転がってたりするんだけど。
それ以上に茜がネットで買ってるジャンクパーツが転がってるけど。
大地が適当な場所に荷物を置くと聞く。
「僕は上と下どっちに寝たらいいの?」
「上は茜用だから」
「じゃあ、うえかな?」
なんでそうなるんだよ!
「下だよ!全部言わせるな!」
私だって女子だぞ!恥ずかしい思いさせるな!
「……わかった」
「分かったら行くぞ」
「どこに?」
「コンビニだよ」
「ああ、飲み物買いに行くんだね」
大地の頭をどついた。
「どうせ大地だから用意してないんだろ?今から買いに行くぞ」
「何を?」とは聞かなかった。それを女子に言わせるのは大地でもまずいと思ったんだろう。
「ちょっと出かけてくる」
「夕食どうするの?」
「家で食べる」
「分かった」
愛莉と話をするとコンビニに行くと。
ここまで来て躊躇うのが大地だ。
本当に情けない奴だな。
「どうせ、標準でいいんだろ?」
私はMサイズのそれを取ると大地は言った。
「さすがに女子に買わせるのはまずいから……僕が買うよ」
大地は覚悟を決めたようだ。
買う物買うと家に帰る。
夕食の時間まで大地の勉強に付き合った。
大地は平均的にこなすタイプの様だ。
ずっと勉強は私にまずいと思ってくれたらしい。
一緒にゲームなんかしたりした。
そしてごはんを食べると一緒に風呂に入る。
嫌がる大地を引きずって一緒に風呂に入る。
その晩は何も無かった。
想定の範囲内だ。
その後も暫く何も無かった。
それも想定の範囲内だ。
決戦は日曜日!
花火大会の日。
パパ達にはお願いしておいた。
「私達は今年は家で楽しむ」と。
愛莉が許可してくれた。
空たちも今年はパパたちと花火を見にいくらしい。
「大きくなったらどうせ2人でみるんだし、去年2人で見たからいい」
昼頃父さん達は出かけて行った。
昼食と夕食は私が作ってあげた。
片づけを終えると風呂に入って部屋でくつろぐ。
ここからが勝負だ。
私は大地を誘う。
だけど大地は躊躇っている。
やっぱり私じゃ未熟なのか?
「私魅力ない?」
そう言って膝を抱えて座っていた。
これで何も行動しなかったら徹底的に教育してもらえ!
大地は行動した。
私をベッドに誘導する。
ネットで調べたんだろう。
手順をこなしていく。
初めてというのもあって私の体は強張っていたけど、それでも大地なりに私の心と体をほぐしてくれた。
そして事件が起こった。
大地が焦っている。
焦らなくてもまだ花火が始まったくらいの時間だ。
落ち着け。
しかし大地はうなだれた。
「どうしたの?」
大地に聞いてみた。
「ごめん、緊張してるみたいで……その」
情けないのは根性だけじゃなかったようだ。
でも、ここで怒ったら大地はますます委縮するだけだ。
私も協力してやった。
ネットで得た知識を頼りに最善の手を尽くした。
上手く言ったみたいだ。
だけど次の段階でまた躓いた。
ゴムのつけ方が分からないらしい。
そのくらいネットで調べとけ。
だけど怒ったらまたやり直しだ。
「私がつけてあげる」
そう言ってゴムを装着した。
もう問題はない。
「初めてだから優しくな」
「わかった……」
激痛が走る。
でも「痛い」なんて言っちゃいけない。
これが大人になる通過儀礼なんだ。
「大丈夫?」
大地が不安そうに聞いている。
「……大丈夫」
そして大地は最後にへまをやった。
数十秒後に異変を感じた。
「大地?」
大地は私から離れる。
まさかお前……。
大地は泣いている。
「どこまで情けないんだ僕は……」
たった数十秒が私の初めてだった。
ふざけんな!
前の私ならそう怒鳴りつけていた。
だけど不思議と怒りは無かった。
そんな大地が愛しく思えた。
だから大地の後頭部をポカっと叩く。
「情けなくなんかないよ。大地は十分頑張ったよ」
回数こなしていけばきっと慣れるさ。
だからこれからもよろしくな。
一瞬だったけど私は気持ちよかった。
私を幸せな気分にさせてくれた。
私は下着をつけて服を着る。
「大地も服着ろ。風呂入ろうぜ」
「天音は僕に愛想尽かしてない?」
大地を抱きしめた。
「そんなわけないだろ。私の初めての大切な彼氏だ」
私以外の誰にも渡せない大事な人。
その後風呂に入って、お菓子とジュースを手にテレビを見ていたらパパ達が帰って来た。
パパは少し酔っていたようだ。
でも気分は沈んでいる。
何があったんだろう?
「今はそっとしておいてあげて」
愛莉がそう言って笑う。
大好きな彼と一つになる。
その事に意味があるんだと知った。
でも夏はまだ始まったばかり。
これからもっと幸せな出来事が待っているんだろう。
辛い事もいっぱいあるかもしれないけど。
それでも明日に胸は震える。
どんな事が起こるんだろうと想像していた。
(4)
今年は父さん達と一緒に行くことにした。
遠坂のお爺さん達と水奈も一緒だ。
父さんが誘っていいと言ったから。
バスで移動した。
街につくと駅ビルのフードコートでご飯を食べる。
その後映画を観る。
青春ファンタジーと評された映画。
海のない街に突然現れたペンギンの謎と秘密を解き明かしていく話。
説明を聞いているだけでファンタジーだ。
水奈はじっと見ていた。
映画は面白かった。
冬吾と冬莉もポップコーンを食べながら見入っていた。
その後服や雑貨を物色しながら駅ビルで時間を潰す。
ゲームセンターで特撮物のメダル等を欲しがっている冬吾。
来年になったらまた変わるんだぞ。
希少価値なんて全くないんだ。
そう言って説得する母さんと父さん。
冬吾は聞きわけがいい。
その代わりクレーンゲームでゲームのキャラのぬいぐるみをとって渡してやった。
「荷物になるのに!」
母さんに叱られた。
「私にはなにもないの!?」
冬莉に強請られたのでもう一個頑張って取った。
ゲームのキャラクターグッズを扱ってる店や鉄道模型の店にも寄ったが冬吾は興味を示さない。
冬吾はあまり玩具は欲しがらない。
すぐに飽きると知っているようだ。
駅ビルを出ると商店街を歩く。
母さんと水奈は浴衣だ。
歩幅はゆっくり進んでいく。
短冊の願い事を見て回りながら。
「なんて書いてるの?」
冬吾が偶に聞くと父さんが説明する。
夕食は焼肉だった。
肉を食らいつくす。
父さん達は今日は珍しく飲んでいた。
車で来なかった理由はこれか。
そんな父さんをみて母さんは笑っている。
「お肉焦げてしまいますよ?」
母さんが父さんに肉を食べるように勧める。
「ああ」
「言ったでしょ?天音だってもうお年頃なんですよ。覚悟を決めてくださいって」
「分かってるんだけど」
「そうは言ってもやりきれないのが男親ってもんなんだよ愛莉ちゃん、ねえ?遠坂さん」
「……うむ」
「パパさんも愛莉ちゃんの時は大変だったのよ~。一人で飲んで沈んでいてね~」
大人たちが話をしている。
よくわからないので肉を食う。
「……冬夜君。間違っても娘なんて持つものじゃないと思っちゃだめだよ。いつか報われる日が来るから……」
「……はい」
肉を存分に食べると会場まで歩く。
父さん達が場所を取ってる間に夜店を周る。
食べ物を買って父さん達の所に戻る。
食べながら花火を見上げる。
夜空に浮かぶ様々な色の花。
連発花火が終ると拍手がなる。
花火が終ると僕達はバスターミナルに戻る。
そしてバスに乗って水奈を送って家に帰る。
家に帰ると天音達は部屋で楽しんでいるようだった。
何となく想像がついたので聞くのはやめた。
風呂に入ると部屋でジュースを飲んで一息つく。
そして眠りにつく。
時間は0時前だった。
「あと何回同じ日々を過ごすのだろう?」
「それは空が望んだ数だけ」
水奈はそう答えた。
じゃあ、数えきれないな。
「でも来年になればまた変化があるよきっと」
来年の今頃は僕は高校生だから。
「そうだね」
どんな事が起こるんだろう?と明日に胸が震える。
(5)
「お、学、遅かったな。2人そろって浴衣か。似合ってるじゃん」
「すまんな。浴衣で自転車は無理だったんでバス停から歩くしかなかった」
学がそう言って光太たちに謝る。
今いるのは光太に麗華、善明に海璃、そして私と学。
今日は花火大会。
皆で見ようって集まった。
「でも、美希は浴衣似合ってるね」
海璃が言う。
それはよかった。
適当に場所を取ると花火を見る。
毎年見る花火だけど毎年違って見えるのは私達が成長している証?
来年はどんな色をしているのだろう?
来年も私の隣に学はたっていてくれるのだろうか?
恋の神様はいる。
私達の世界では常識。
たまに気紛れを起こす困った神様だけど、常に私達を見守っていてくれる。
花火が終るとファミレスで夕食を食べる。
初めての経験。
ファミレスが初めてなんじゃない。
こんな時間に友達と騒いでるのが初めてなんだ。
中学生になったら門限は無くなった。
「間違ってもネカフェで寝泊まりなんで真似は許さないわよ」
母さんに言われた言葉。
「それと中学生で酒の味を知るのはまだ早いわ」
せめて大学生まで待ちなさい!
そこは大人になるまで待てというのが親じゃないのだろうか?
反抗してタバコを吸ってみたくなったり酒を飲んでみたくなったりするものだけどそう言われると逆に興味を示さなくなる。
そこまで計算しているのだろうか?
タバコは、光太が吸おうとして麗華に叱られてた。
「私タバコ臭い人嫌いなの」
たしかにタバコ臭い男は嫌いだ。
雑誌で読んだ事がある。
女性でもタバコを吸っているといざという時にタバコの匂いがして男がドン引きするって。
体臭を気にするならタバコは吸うべきじゃない。
それが子供なりの結論だ。
ただ私には母さんと父さんの血が流れている。
それ以前に学が許してくれないんだが。
親の言うことに反発してるわけじゃないけど、反発する理由が無いから。
学に嫌われたくないから。
私は学が好きだから。
「ちょっと飲み物取ってくる」
私が席を立つ。
「ああ、俺が取ってくるよ。ちょうどきれたし。何が良い?」
「いいよ、一緒に行こう」
そしてソフトドリンクのコーナーに行く。
「美希、時間大丈夫か?」
「日付が変わらなかったら文句は言わないって言ってた」
「じゃあ、少し急いだ方がいいな。終便に間に合わなくなる」
「それなら大丈夫。迎えに来てもらうから」
「しかしあまり美希を深夜まで連れまわすわけにはいかない」
「まあ、そういうことならしょうがないか」
光太が言う。
それから私が家に連絡して迎えをこさせた。
送迎の車が来るのにそんなに時間はかからなかった。
車の中で学は時計を気にしている。
「そんなに気にしなくても大丈夫。ただ泊まるとは伝えてなかったから」
「いや、親御さんから大切な娘さんを預かってる身としては……」
「そんなに私が重荷?」
「そういうわけじゃないんだが」
「私たち来年には高校生だよ?」
「まあ、そうだな」
「そしたらもっと遊びの範囲が広くなる」
「受験勉強もあるんだが……」
そんなのしなくても私達の運命は決まってるよ。
「まあ、遊びの範囲は広くなるだろうな……」
「でしょ?」
学は少し考えて言った。
「いつか俺も車の免許を取ろうと思うんだ」
「うん」
「そしたらドライブでもしないか?」
学はそう言って笑う。
「でも、俺が美希の世界を広げる以上に、美希が俺の世界を広げてくれる。どちらにしろいつも一緒だ」
「……ありがとう」
学の世界には優しさが溢れている。
私はその世界に足を踏み入れることを許された。
車は先に学の家に寄った。
「学、意外と早かったな。今日は帰ってこないと思っていたけど」
ちなみに時間は23時55分。
「こんな時間になってすいません」
「美希が謝ることじゃないよ。こいつ誰に似たのか妙に真面目だからさ。たまにはこれくらい……」
むしろ美希の方こそ大丈夫?と学の母さんがいう。
「私の親も学と一緒って言ったらそんなに五月蠅く言わないので」
むしろどっか街中のホテルの一室取っておこうか?と聞かれたくらいだ。
そうして学を見送ると私は家に入り着替えて風呂に入る。
風呂を出て部屋に戻る。
スマホはメッセージを受け取っていた。
「今夜はありがとう。おやすみ」
私も「おやすみなさい」と返した。
変わらない景色。
変わらない笑顔。
そんな月日を幾年も重ねすぎてもこの世界に優しさを。
勇気を見せつけても強がっても一人では生きられない。
いつか私も学もそれぞれの未来を描いても
強い絆はあるから
「夢が叶いますように」
心の底から祈ってる。
でもどうせまた一緒になるんだって誓って指切りする。
見えない行先へと迷いながらでもいつでも進んでる。
変わりゆく季節と時の中懐かしい音色。
きっと大人になっても色あせないだろう。
私達の大切な想い出。
決して忘れない。
この広い世界と大切な仲間達の事。
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