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3rdSEASON
今私にはあなたが見えるから
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(1)
県総体・開会式。
部活生でない僕達も開会式には集まるようになっている。
自転車で競技場まで行く。
各高校に散らばった友達と会えるイベント。
もちろんすでに各会場で予選は始まっている。
前日から予選が行われている競技もある。
入場行進を見ながら学達と話をしていた。
喉が渇いたからジュースを買ってくる。
そしてジュースを買いに行くと光太と会う。
お互いの近況を少し話す。
「開会式終わったらファミレスに集合しないか?」
「わかった。皆に伝えとく」
自分の高校の席に戻ると学達に伝える。
皆の了解を得た。
3年生にとっては最後の大会。
野球部は高校総体がない代わりに甲子園がある。
開会式が終ると競技場近くのファミレスに集まる。
そして話をしていた。
防府高校組には関係のない行事だった。
誰一人として運動部に入っていないのだから。
光太たちの高校、大区工業はバレー部が強い。
6人のうち3人が日本代表なんだから当然だろう。
春高バレーも優勝してた。
この3年間のバレーは大区が強いんだろうな。
「みんなこの後暇か?」
光太が聞いている。
大体魂胆は分かる。
そして別に皆予定があるわけでも無かった。
帰りにSAPによって遊んで帰った。
家に帰ると夕食を食べて風呂に入って部屋でくつろぐ。
よく分からないテレビを見ながら話をして時間を潰す。
一緒にテレビを見る事に集中した。
テレビも特に見るものが無くなった頃僕はベッドに入る。
明日から連休。
しかし運動部にとっては激闘の3日間だった。
(2)
教室でいつも窓際の席に座って本を読んでいる男子がいた。
名前は知らない。
単なる興味本位だ。
そいつに話しかけてみた。
「いつもどんな本読んでるんだ?」
そいつは結構顔立ちも整ってる。
そんな奴が爽やかに笑って答えた。
「恋愛ものだよ。恋人が末期がんを患って死んでしまうんだ。女性の心がしっかり描かれてあって綺麗な小説」
どうして恋愛ものって必ずどっちかが死ぬんだろう?
嬉々として人を殺そうと伺っている恋愛小説もあるそうだけど。
「面白そうだな。貸してくれないか?」
「片桐さん本とか読むの?」
「まあ、面白かったら読むかな」
最初の1ページで判断するけど。
「じゃあ、いいよ。読み終わったら感想聞かせて」
「サンキュー」
そう言って本を受け取った。
家に帰ると早速読んでみた。
つまらん。
妊娠流産……。よくある恋愛ものだった。
刀を振り回したり、チェーンソーを振り回すよりかはましかもしれないけど如何にもお涙頂戴な展開で逆にしらける。
ていうかなんで末期癌の彼氏と死後妊娠が発覚するような事態になるんだよ!?
中学生が家でやるより無理があるぞ!
まあ、借りたからにはしっかり読まないと悪いと思って読んだけど。
さすがに人に本を借りておいてつまんなかったと返すのは悪いよな。
「天音が本読んでるなんて珍しいね」
茜がPCを操作しながら言った。
茜も中学生。この程度の小説なら理解するだろう。
「茜も読んでみるか?」
「どんな話?」
「恋愛もの、人が死ぬ話」
凄く分かりやすく解説したつもりだった。
主人公が人を殺そうとする恋愛小説もあるんだから、まあまだまともな部類だろう。
茜は本を受け取ると早速読み始める。
茜もどこで速読術を学んだのか知らないが読むのが早い。
まあ、文章もそんなに難しくない、わずか3文字で一行終わるようなものだしな。
茜はどこかでこの小説のドラマ版を見たことがあるらしい。
まあ、PHSなんて大昔の単語が出てくる時点で時代を感じるよな。
茜が読み終わると私に本を返す。
「どうだった?」
「つまんない」
中学生にも言われたぞ。
しかしそれでは流石に失礼だろ。
何か良い感想がないものか?
「ちょっと待って」
茜はそう言ってPCを操作する。
ネットで感想やレビューを探しているみたいだ。
しかしまともな感想は一つもなく。酷評ばかり。
まあ、しょうがないよな。
無菌室にいなきゃいけないような状態でエッチして死亡フラグ立てたというどうしようもない結末。
それでも私と茜は必死に何かいい感想はないか探した。
そして最終的に辿り着いた感想は一つだった。
感動した。泣いた。
内容にはあえて触れない。
触れると炎上するから。
もっとまともな感想もあるけどそれも中身にはあまり触れてない。
人は見た目によらない。病気の彼の優しさ。恋人は大切にしよう。
女子高生に妊娠させて女子高生は尻もち着いて流産してその後に別れようという彼氏のどこが優しいのか小一時間問い詰めたい。
勝手に人の携帯のアドレス盗んで他の連絡先全部消した挙句にメールを送ってくるような人格の男とどうして付き合おうと思ったのか分からない。
見た目が金髪なのはどうでもいい、中身の方がかなりヤバいだろ?
その後付き合いだして彼氏の元カノが男友達に主人公を襲わせたり。
主人公もかなりキてたけど。
流産してふられてすぐに新しい男を見つけたと思ったらまた彼とよりを戻して……。
これのどこに恋する乙女の純情が描かれているのか私にはわからなかった。
唯一これも女心だろうと思ったのは作者が当時女子高生だったという点だけ。
茜と相談した。
これは普通に読書感想文を書くより厄介な作業だ。
一切批判せずにこの作品をただ褒めよという難題。
こんなものを読んで「女心が良く分かる」という奴は少なくとも私と茜はごめんだと話していた。
まだヴァイオリストとピアニストの中学生の恋愛話のほうが泣ける。
おなじ死亡ものでも雲泥の差があった。
しかしそんな酷評を伝えるわけにもいかず悩んでいると愛莉が部屋に来た。
「今何時だと思ってるの?皆いい加減に寝なさい」
夜更かしは美容の敵。決して徹夜で勉強しろとは言わない。
愛莉は床に転がった本を見た。
「あら?懐かしい本ですね」
愛莉は読んだ事があるらしい。
しかし愛莉もまた中絶などを軽々しく扱うこの作品に嫌悪感を示していた。
愛莉に事情を話す。
「そうですね……」
愛莉も困っていた。
そして辿り着いた答えは「女性の心理が詳しく描写された感動の作品」だった。
勘当ではなく感動。
結論が出ると私は床に放置された本を拾って部屋に戻って寝た。
翌日学校に本を持って行った。
そして朝その男に本を返す。
「面白かったよ。また他の本紹介してくれ」
「どうだった?」
「ああ、主人公の心理が分かりやすかったよ」
酷いキチガイだって事は茜でも理解できたらしい。
「そうだろ?じゃあ、次これ読んでみるといいよ」
なんかの厚紙かと思うくらいの薄っぺらい小説だった。
この場で読んで即答してやろうと思ったけど多分また酷評しか出ないんだろう?
「ありがとう、じっくり読ませてもらうよ」
そう言って机の引き出しに入れる。
昼休みに弁当を食って読んでみた。
自殺未遂、交通事故、DV、ドラッグ。
全て中学生が体験すること。
とにかく酷い。
喜一を屋上から放り投げてた方がまだ健全だと思えるくらいだ。
これも「女心が良く分かる作品」だと紹介してくれた。
今日借りて今日返すのも悪いか。
とりあえず持って帰ろう。
茜が興味を示すかもしれない。
机にしまっておいた。
そして学校が終ると教室の机に本を入れっぱなしにしていたことに気付いた。
私は紗理奈に「ちょっと待ってて」というと教室に本を取りに戻る。
すると男と女がいた。
告白でもするんか?
私は様子を見ていた。
「あんた片桐さんみたいな女子に興味あったの?」
女がそう言う。
「そんなわけないだろ?ただちょっと遊んでるだけ」
男が言った。
男は話を続ける。
「第一あんな食欲丸出しの女に惹かれる男子なんていないよ。馬鹿みたいに大口開けてさ。女らしさん欠片もない」
私はどうやら出るタイミングを間違えたみたいだ。
「そうだよね、年中食欲の秋ってかんじでさ。花より団子って言った方がいいのかな?みっともないよね」
そうやって人をコケ下ろしている方が惨めだと思うけど。
もちろん、大地に招待されたパーティでは控えてる。
だけど学校では豪快に詰め込まれたご飯と購買部やコンビニで買ったパンを食べる。
学校は別だからと油断していた。
私だって「女らしくない」と言われたら少なからずショックは受ける。
すこし教室の外で様子をうかがってた。
2人は私に気付くことなく言いたい放題悪口を言っている。
すると教室に様子を見に来た紗理奈が声をかける。
「天音、用は済んだのか?」
その声に2人は反応する。
私は無言で机にしまってある本をつき返す。
「もう読んだの?」
間抜けな反応だ。
「こんな薄っぺらな小説10分もあれば読める。内容もスカスカだ。ただ暴力描写を悪戯に使って悲劇のヒロインを作ってる駄作だ」
良くも悪くもこの世界には悲劇のヒロインは存在しない。
いてももっとましな理由だ。
学校が離れてしまったとか三角関係で敗れたとか。
私は男に言う。
「こんなもん読んで女心を知ったような顔して得意気な顔してる男子なんてこっちからお断りだね」
そう言って紗理奈と教室を出た。
別に名前も与えられない一般モブに心を動かす必要もない。
だけど「女らしくない」と言われたのはさすがにショックだった。
あんな名無しに言われるとは屈辱以外の何物でもなかった。
無意識に行動に出てしまう。
「ご馳走様」
「あれ?天音お腹の調子悪いの?」
茜が言う。
「ちょっと食欲ないんだ」
そう言って部屋に戻る。
そして連休を迎えた。
大地と映画を観に行った。
ミステリー物だった。
原作となった小説は大ヒットしたらしい。
空も持っている。
大地は一体どういう映画が好みなんだろう?
最初のデートは恋愛ものだったな。
それで私が寝てしまってあまり恋愛ものを選ばなくなった。
アニメや特撮物が多かったが高校生になってそれはもう無いだろうと思ったのか。
大地は私の好みを暗中模索しているようだ。
私が選んでやったほうがいいのだろうか?
まあ、今は恋愛物を観たい心境ではないので良かったけど。
映画を観終わると昼食をとる。
4階の店でも良かったのだが大地は私に合わせて3階のフードコートにしてくれる。
好きなだけ食べられるから。
だけど今日はホットドッグだけにした。
「お腹の具合悪いの?」
大地は心配してくれてる。
「いや、そうじゃないんだけど……」
「どうしたの?学校で何かあった?」
大地は優しく聞いてくれた。
大地に相談した。
「私って女らしくないか?」
率直に聞いていた。
大地は笑っていた。
「パーティの時は場を弁えてくれてるじゃないか。デートの時くらいありのままの天音でいて欲しい」
「お前に恥かかせてないか?」
「天音を馬鹿にするやつがいるなら全力で叩きつぶしなさい。自分の彼女くらい守ってやりなさい。母さんにはそう言われてる」
だから天音は今のままでいい。
私に立ちふさがる障壁は大地が打ち砕いて見せる。
「……最低ラーメンくらいは食べるでしょ?買ってくるよ」
「トッピング全乗せで。あと焼き飯と餃子」
私が言うと大地は買いに行った。
するとあいつらが来た。
「あれ?片桐さんじゃん。奇遇だね?ひょっとしてデート?」
「お前らには関係ないだろ」
「別に隠す必要ないじゃん。それにしてもフードコートとはね。天音さんらしいよ」
「食べるのはそれだけ……なわけないよね」
今すぐこいつらをぶっ飛ばしたいが、大地もいる。今暴れるのは得策じゃない。
「天音、お待たせ。あれ?この人達知り合い?」
大地が戻って来た。
「やっぱりデートだったんだ。それにしてもデートのランチにフードコートってもうちょっと気を使いなよ」
「だめだよ、高い店で片桐さんに食べさせたらお金いくらあっても足りないよ」
そう言って二人は笑う。
大地にまで馬鹿にするのは許せない。
私が一言言おうとすると大地は鼻で笑った。
「君達が天音をどこまで知ってるのか分からないけどたかだか君達の財布の中身で食べられるランチとフードコートにそんなに差がないと天音は思ってるだけだよ?僕もそう思う。違いを教えてくれない?」
2人の表情が険しくなる。
大地は2人を明らかに挑発していた。
「まあ、精々4階の店で食べて満足してるんだろうけど、天音は月に一回はホテルのディナーを食してる。目上の人と談笑しながら。そんな天音を馬鹿に出来る程君達が凄いとは思えない」
大地も私を馬鹿にされて機嫌が悪い様だ。
「で?君たち誰?天音の同級生?僕は君達の顔なんてみたことないけど」
そして名前すら与えてもらえない雑魚。
「さっき話した二人組」
何も言わない二人に変わって私が説明した。
「ああ、あの本なら僕も読んだよ。あんな感動の安売りしたような作品で女心を知ったふりしてるなんて、君達のほうが余程幼稚なんじゃない?」
「なんだと?」
男が何か言いたげだ。
「現に今等身大の女子高生の心を傷つけている事にすら気づけないでいる。そんな男をカッコいいと思ってる彼女も程度が知れてるね。君達みたいなのを昔は『スイーツ脳』って言ったそうだよ」
「俺の連れを馬鹿にするのか?」
「自分の彼女を馬鹿にされたら当然怒るよね。だから僕も機嫌が悪い。そして2人のせいで折角のラーメンが食べれずのびてしまってる。どうしても相手になるって言うなら受けて立つよ?」
大地は終始笑顔だったがその怒気は誰にでも分かるものだった。放っておいたら折角のデートが台無しになる。
「大地、もういい」
私は大地を止めた。
「天音が優しい性格でよかったね。天音の機嫌がいいうちに行った方がいいと思うよ」
大地がそう言うと二人は立ち去った。
「天音ごめん、折角バリカタにしたのに」
「大丈夫だ……それにありがとう」
「言ったろ?天音を守るくらいの事は僕にだってできるようになったつもりだよ。それよりそれだけで足りる?」
「……うどんとハンバーガーととんかつ、あとステーキとたこ焼きもいいか?」
「わかった。それ食べてて」
そう言って大地は買いに行った。
そして料理を持ってくる。
私が頼んでない料理もあった。
「天音一人が食べてたら天音に恥をかかせると思って」
「大地は私みたいな大食いの女にドン引きしたりするか?」
「小食な振りをしている女性よりは僕は好きだよ」
「そうか……悪いラーメン替え玉いいか?」
「分かった」
昼ごはんを食べ終わった後私は大地に一言言ってお手洗いに行く。
私だって少しは見た目を気にするようになった。
洗面所で歯を磨く。
たこ焼きの青のりがついたままではみっともない。
口臭も若干気にする。
私一人なら、紗理奈達といっしょならいい。
だけど今は大地とデート中。
大地に余計な気遣いをさせたくない。
ランチを済ませるとショッピングを楽しむ。
夜はちょっと高い店で食事をする。
そこでは大食いはしなくなった。
大体コース料理が多いから。
「それにしても天音はあれだけ食べてよくその体形維持できるね」
「父さんに似たらしい」
父さんも大食いだけど全然太らない。
もう40超えてるけどベルトが一つきつくなったとかそういう話は愛莉からも聞いてない。
大地とデートする時はSAPとかに行ってわざと遅くに帰る。
そうしないと大地が母さんに怒られるから。
そして大地が送迎を呼んで家まで送ってもらう。
「今日はありがとうな」
「あのくらいたいしたことないよ。僕も彼女を馬鹿にされてへらへらしてる様な男じゃないよ」
そして家に着くと車を降りる。
「また誘うよ」
「いつでも待ってる」
大地がの車が去るのを見送って家に入る。
風呂に入って部屋に戻る。
もうすぐ日が変わる。
大地から「今部屋に戻った」とメッセージが来るのを待って「もう寝るよ」と送ってベッドに入る。
まだ連休は始まったばかりだった。
(3)
呼び鈴が鳴った。
どうやら来たようだ。
僕は玄関に行く。
「おはよう」
「おはよう、いらっしゃい。さあ上がって」
僕がそう言うと梨々香を自分の部屋に案内する。
元々茜と過ごしていた部屋だ。
2人で狭いということはない。
「さてと、何する?」
片桐家では前半のうちに宿題とか必要な事は全部終わらせて後半遊び倒すという家風がある。
だからとりあえず宿題をしていた。
小学校の授業よりもちょっと難しい中学校の勉強。
それでも最初の学力テストでは上位にいた。
夢が決まっているから勉強もやる気になる。
だって大学に行かないと夢を叶える事はできないから。
夢に向かって努力したものは報われるのがこの世界の常識。
2人で分からないところを指摘しながら勉強する。
中学校のクラスは小学校のクラスと変わらない。
この世界の常識。
精々他校から来た子が加わるくらいだ。
部活はしなかった。
別に運動に興味があるわけじゃないし。
護身術に柔道でもやるべきかと思ったけど柔道部は無かった。
その代わり剣道があったけど。
空は剣道をしているわけじゃないけど道具を持たせるとやたらと強い。
始めの合図とともに神速で踏み込んで頭上に一撃を食らわせるだけの作業など誰が好き好んで読むだろうか?
そんな話をしているとお昼になる。
「さてと、冷蔵庫覗いても良いかな?」
梨々香が言う。
「出前とってもいいんだよ?」
「それじゃ意味が無いよ」
梨々香が言うので梨々香に任せる事にした。
梨々香は鼻歌交じりに昼食を作っている。
何か手伝おうか?と聞いても大丈夫と返ってくる。
梨々香1人をキッチンに残しておくわけにもいかないのでダイニングで梨々香を見守っていた。
料理が出来上がると2人で食べる。
梨々香は料理が上手なようだ。
「どう?」
「美味しいよ」
「よかった」と喜んでいる梨々香。
食べ終わると「片づけくらい手伝う」と言ったがやっぱり断られた。
「これは私の修行なの」
梨々香がいう。
そして午後も勉強を続けていた。
夕方になると梨々香が「買い物にいかない?」という。
足りない食材があるらしい。
2人でスーパーに買い物に行った。
歩いて行く。
荷物を片手で持ってやってもう片方の手で梨々香と手をつなぐ。
家に帰ると早速梨々香が夕食に取り掛かる。
何もしないのはまずいと思ったのでとりあえず部屋を掃除する。
洗濯はそんなに溜まってないからいいや。
夕食を食べると夜は部屋でテレビを見て過ごす。
「一日中勉強してたら脳が疲れて捗りません」
そんな事を言う親は遠坂家と片桐家くらいだろう。
ちなみに親はいない。
今年も海外旅行に行ってる。
5連休だから満喫しているそうだ。
一応確認の電話は着た。
けれどあまり心配はしてなさそうだ。
僕達は今年から家に残ることになった。
もう中学生だから一人で大丈夫。
遠坂家ではそう判断するらしい。
それに一人というわけじゃない。
りえちゃんは梨々香の親に電話して梨々香の外泊を認めてもらった。
梨々香の親も少し気になるところはあったが認めたそうだ。
「梨々香ももう中学生だから」
そう言って梨々香の父さんを宥めていたらしい。
交互に風呂に入ると再びテレビを見る。
梨々香はドラマが好きらしい。
俳優の名前とかも良く知ってる。
さすがに梨々香が遊びに来てるのにゲームをしたりするのはまずいと思ってしなかった。
梨々香とドラマを見ている。
ドラマが終りニュースの時間になるとベッドに入る。
元々茜と一緒に過ごしていた部屋。
2段ベッドになっていたけど同じベッドに入る。
そして夜を過ごした。
朝になって掃除機の音で目が覚めた。
梨々香が掃除している。
「掃除くらい僕がやるよ」
「平気だから。ゆっくり寝てて」
そう言って梨々香は掃除を続ける。
梨々香の掃除が終わると勉強をする。
この分だと明日には宿題が終るだろう。
「明後日くらいどこか遊びに行かない?」
「じゃあ、映画でも観に行こうか?」
「なんかいい映画やってるの?」
「アニメやってるよ」
茜の好きな探偵アニメ。
茜も見に行くって言ってたな。
「それショッピングモールでやってる?」
「やってるけどどうせなら駅ビルにいかない?」
洋菓子屋さんに行きたいらしい。
「分かった。じゃあ駅ビルで」
「そうと決まったら明日までに宿題おわらせないとね」
そして昨日と同じ様に一日を過ごす。
ニュースでは高速道路が渋滞していると報じられていた。
高速道路で渋滞するなんて地元じゃ考えられない。
事故もそんなに聞かないし。
開通した時は軽自動車が風にあおられて横転する事故があったそうだが。
他にもいろいろニュースをやっていた。
あまりニュースには興味がないのでバラエティ番組に変えた。
そして21時を過ぎるとドラマを見る。
近頃のドラマは単なる恋愛ドラマはあまりやらない。
様々な職業にスポットを当てた物語が流行っている。
医療と刑事ものはだいたいいつでもやっている。
単なる恋愛ものはあまり好きじゃない。
2人が別れる結末も後味が悪いし、あっさりくっついても白けるし。ましてや病気で死に別れるのは感動の安売りで好きじゃない。
中には告白シーンすら省く物語もあるそうだ。
昔はそうでもなかったらしい。
死に別れなんて普通にあって、そしてそれに感動する女子が多かったそうだ。
中2で妊娠・出産するなんてドラマもあったらしい。
月が綺麗な夜に妊娠する。
子供はそう思ったみたいだ。
妊娠させた男子高校生の家は悲惨な結末を迎えていた。
もちろんドラマだから綺麗に見せていたけど、冷静にかんがえると悲惨すぎる。
会社が倒産して高校生の母親は保険の営業からやり直しという人生を送る。
それでも主題歌が良い曲だったみたいだ。
会社が倒産する。
この世界ではよくある事。
市長や知事は頭を悩ませているらしい。
最善の対処法は2人の母親の機嫌を損ねない事。
ドラマが終って今日一日が終る。
2人でベッドに入る。
「心配しないでいいからね」
梨々香が言う。
「何の話?」
「私は結婚を『愛情の摂取』なんて思ってないから」
ああ、さっき見てたドラマの話か。
「そんな先の話まだ考えてないよ」
高校を卒業して大学に行って公務員試験受けて警察官になって……。
その先の事考えてなかったな?
物語的には僕と梨々香は結婚するんだろうか?
「梨々香は雑誌の編集者になりたいんだっけ?」
「そうだよ。それがどうかした?」
「僕は、大学を卒業した後も忙しい日々を過ごす」
それでもおじさんと同じ立場になるには4年はかかる。
一人前の医者になるのと同じ年頃になるだろう。
「それまで待てる?」
中学生の台詞じゃないよな。
だけど母さんは小6で結婚相手を決めたという。
梨々香も同じ性分だったようだ。
「とりあえず子供が産める年齢までにしてほしいかな」
「わかった」
そう言うと梨々香は「寝よう?」と言う。
次の日宿題が終った。
「お疲れ様」
「梨々香もね」
残り連休はあと二日。
僕達はゆっくりと楽しむことにした。
県総体・開会式。
部活生でない僕達も開会式には集まるようになっている。
自転車で競技場まで行く。
各高校に散らばった友達と会えるイベント。
もちろんすでに各会場で予選は始まっている。
前日から予選が行われている競技もある。
入場行進を見ながら学達と話をしていた。
喉が渇いたからジュースを買ってくる。
そしてジュースを買いに行くと光太と会う。
お互いの近況を少し話す。
「開会式終わったらファミレスに集合しないか?」
「わかった。皆に伝えとく」
自分の高校の席に戻ると学達に伝える。
皆の了解を得た。
3年生にとっては最後の大会。
野球部は高校総体がない代わりに甲子園がある。
開会式が終ると競技場近くのファミレスに集まる。
そして話をしていた。
防府高校組には関係のない行事だった。
誰一人として運動部に入っていないのだから。
光太たちの高校、大区工業はバレー部が強い。
6人のうち3人が日本代表なんだから当然だろう。
春高バレーも優勝してた。
この3年間のバレーは大区が強いんだろうな。
「みんなこの後暇か?」
光太が聞いている。
大体魂胆は分かる。
そして別に皆予定があるわけでも無かった。
帰りにSAPによって遊んで帰った。
家に帰ると夕食を食べて風呂に入って部屋でくつろぐ。
よく分からないテレビを見ながら話をして時間を潰す。
一緒にテレビを見る事に集中した。
テレビも特に見るものが無くなった頃僕はベッドに入る。
明日から連休。
しかし運動部にとっては激闘の3日間だった。
(2)
教室でいつも窓際の席に座って本を読んでいる男子がいた。
名前は知らない。
単なる興味本位だ。
そいつに話しかけてみた。
「いつもどんな本読んでるんだ?」
そいつは結構顔立ちも整ってる。
そんな奴が爽やかに笑って答えた。
「恋愛ものだよ。恋人が末期がんを患って死んでしまうんだ。女性の心がしっかり描かれてあって綺麗な小説」
どうして恋愛ものって必ずどっちかが死ぬんだろう?
嬉々として人を殺そうと伺っている恋愛小説もあるそうだけど。
「面白そうだな。貸してくれないか?」
「片桐さん本とか読むの?」
「まあ、面白かったら読むかな」
最初の1ページで判断するけど。
「じゃあ、いいよ。読み終わったら感想聞かせて」
「サンキュー」
そう言って本を受け取った。
家に帰ると早速読んでみた。
つまらん。
妊娠流産……。よくある恋愛ものだった。
刀を振り回したり、チェーンソーを振り回すよりかはましかもしれないけど如何にもお涙頂戴な展開で逆にしらける。
ていうかなんで末期癌の彼氏と死後妊娠が発覚するような事態になるんだよ!?
中学生が家でやるより無理があるぞ!
まあ、借りたからにはしっかり読まないと悪いと思って読んだけど。
さすがに人に本を借りておいてつまんなかったと返すのは悪いよな。
「天音が本読んでるなんて珍しいね」
茜がPCを操作しながら言った。
茜も中学生。この程度の小説なら理解するだろう。
「茜も読んでみるか?」
「どんな話?」
「恋愛もの、人が死ぬ話」
凄く分かりやすく解説したつもりだった。
主人公が人を殺そうとする恋愛小説もあるんだから、まあまだまともな部類だろう。
茜は本を受け取ると早速読み始める。
茜もどこで速読術を学んだのか知らないが読むのが早い。
まあ、文章もそんなに難しくない、わずか3文字で一行終わるようなものだしな。
茜はどこかでこの小説のドラマ版を見たことがあるらしい。
まあ、PHSなんて大昔の単語が出てくる時点で時代を感じるよな。
茜が読み終わると私に本を返す。
「どうだった?」
「つまんない」
中学生にも言われたぞ。
しかしそれでは流石に失礼だろ。
何か良い感想がないものか?
「ちょっと待って」
茜はそう言ってPCを操作する。
ネットで感想やレビューを探しているみたいだ。
しかしまともな感想は一つもなく。酷評ばかり。
まあ、しょうがないよな。
無菌室にいなきゃいけないような状態でエッチして死亡フラグ立てたというどうしようもない結末。
それでも私と茜は必死に何かいい感想はないか探した。
そして最終的に辿り着いた感想は一つだった。
感動した。泣いた。
内容にはあえて触れない。
触れると炎上するから。
もっとまともな感想もあるけどそれも中身にはあまり触れてない。
人は見た目によらない。病気の彼の優しさ。恋人は大切にしよう。
女子高生に妊娠させて女子高生は尻もち着いて流産してその後に別れようという彼氏のどこが優しいのか小一時間問い詰めたい。
勝手に人の携帯のアドレス盗んで他の連絡先全部消した挙句にメールを送ってくるような人格の男とどうして付き合おうと思ったのか分からない。
見た目が金髪なのはどうでもいい、中身の方がかなりヤバいだろ?
その後付き合いだして彼氏の元カノが男友達に主人公を襲わせたり。
主人公もかなりキてたけど。
流産してふられてすぐに新しい男を見つけたと思ったらまた彼とよりを戻して……。
これのどこに恋する乙女の純情が描かれているのか私にはわからなかった。
唯一これも女心だろうと思ったのは作者が当時女子高生だったという点だけ。
茜と相談した。
これは普通に読書感想文を書くより厄介な作業だ。
一切批判せずにこの作品をただ褒めよという難題。
こんなものを読んで「女心が良く分かる」という奴は少なくとも私と茜はごめんだと話していた。
まだヴァイオリストとピアニストの中学生の恋愛話のほうが泣ける。
おなじ死亡ものでも雲泥の差があった。
しかしそんな酷評を伝えるわけにもいかず悩んでいると愛莉が部屋に来た。
「今何時だと思ってるの?皆いい加減に寝なさい」
夜更かしは美容の敵。決して徹夜で勉強しろとは言わない。
愛莉は床に転がった本を見た。
「あら?懐かしい本ですね」
愛莉は読んだ事があるらしい。
しかし愛莉もまた中絶などを軽々しく扱うこの作品に嫌悪感を示していた。
愛莉に事情を話す。
「そうですね……」
愛莉も困っていた。
そして辿り着いた答えは「女性の心理が詳しく描写された感動の作品」だった。
勘当ではなく感動。
結論が出ると私は床に放置された本を拾って部屋に戻って寝た。
翌日学校に本を持って行った。
そして朝その男に本を返す。
「面白かったよ。また他の本紹介してくれ」
「どうだった?」
「ああ、主人公の心理が分かりやすかったよ」
酷いキチガイだって事は茜でも理解できたらしい。
「そうだろ?じゃあ、次これ読んでみるといいよ」
なんかの厚紙かと思うくらいの薄っぺらい小説だった。
この場で読んで即答してやろうと思ったけど多分また酷評しか出ないんだろう?
「ありがとう、じっくり読ませてもらうよ」
そう言って机の引き出しに入れる。
昼休みに弁当を食って読んでみた。
自殺未遂、交通事故、DV、ドラッグ。
全て中学生が体験すること。
とにかく酷い。
喜一を屋上から放り投げてた方がまだ健全だと思えるくらいだ。
これも「女心が良く分かる作品」だと紹介してくれた。
今日借りて今日返すのも悪いか。
とりあえず持って帰ろう。
茜が興味を示すかもしれない。
机にしまっておいた。
そして学校が終ると教室の机に本を入れっぱなしにしていたことに気付いた。
私は紗理奈に「ちょっと待ってて」というと教室に本を取りに戻る。
すると男と女がいた。
告白でもするんか?
私は様子を見ていた。
「あんた片桐さんみたいな女子に興味あったの?」
女がそう言う。
「そんなわけないだろ?ただちょっと遊んでるだけ」
男が言った。
男は話を続ける。
「第一あんな食欲丸出しの女に惹かれる男子なんていないよ。馬鹿みたいに大口開けてさ。女らしさん欠片もない」
私はどうやら出るタイミングを間違えたみたいだ。
「そうだよね、年中食欲の秋ってかんじでさ。花より団子って言った方がいいのかな?みっともないよね」
そうやって人をコケ下ろしている方が惨めだと思うけど。
もちろん、大地に招待されたパーティでは控えてる。
だけど学校では豪快に詰め込まれたご飯と購買部やコンビニで買ったパンを食べる。
学校は別だからと油断していた。
私だって「女らしくない」と言われたら少なからずショックは受ける。
すこし教室の外で様子をうかがってた。
2人は私に気付くことなく言いたい放題悪口を言っている。
すると教室に様子を見に来た紗理奈が声をかける。
「天音、用は済んだのか?」
その声に2人は反応する。
私は無言で机にしまってある本をつき返す。
「もう読んだの?」
間抜けな反応だ。
「こんな薄っぺらな小説10分もあれば読める。内容もスカスカだ。ただ暴力描写を悪戯に使って悲劇のヒロインを作ってる駄作だ」
良くも悪くもこの世界には悲劇のヒロインは存在しない。
いてももっとましな理由だ。
学校が離れてしまったとか三角関係で敗れたとか。
私は男に言う。
「こんなもん読んで女心を知ったような顔して得意気な顔してる男子なんてこっちからお断りだね」
そう言って紗理奈と教室を出た。
別に名前も与えられない一般モブに心を動かす必要もない。
だけど「女らしくない」と言われたのはさすがにショックだった。
あんな名無しに言われるとは屈辱以外の何物でもなかった。
無意識に行動に出てしまう。
「ご馳走様」
「あれ?天音お腹の調子悪いの?」
茜が言う。
「ちょっと食欲ないんだ」
そう言って部屋に戻る。
そして連休を迎えた。
大地と映画を観に行った。
ミステリー物だった。
原作となった小説は大ヒットしたらしい。
空も持っている。
大地は一体どういう映画が好みなんだろう?
最初のデートは恋愛ものだったな。
それで私が寝てしまってあまり恋愛ものを選ばなくなった。
アニメや特撮物が多かったが高校生になってそれはもう無いだろうと思ったのか。
大地は私の好みを暗中模索しているようだ。
私が選んでやったほうがいいのだろうか?
まあ、今は恋愛物を観たい心境ではないので良かったけど。
映画を観終わると昼食をとる。
4階の店でも良かったのだが大地は私に合わせて3階のフードコートにしてくれる。
好きなだけ食べられるから。
だけど今日はホットドッグだけにした。
「お腹の具合悪いの?」
大地は心配してくれてる。
「いや、そうじゃないんだけど……」
「どうしたの?学校で何かあった?」
大地は優しく聞いてくれた。
大地に相談した。
「私って女らしくないか?」
率直に聞いていた。
大地は笑っていた。
「パーティの時は場を弁えてくれてるじゃないか。デートの時くらいありのままの天音でいて欲しい」
「お前に恥かかせてないか?」
「天音を馬鹿にするやつがいるなら全力で叩きつぶしなさい。自分の彼女くらい守ってやりなさい。母さんにはそう言われてる」
だから天音は今のままでいい。
私に立ちふさがる障壁は大地が打ち砕いて見せる。
「……最低ラーメンくらいは食べるでしょ?買ってくるよ」
「トッピング全乗せで。あと焼き飯と餃子」
私が言うと大地は買いに行った。
するとあいつらが来た。
「あれ?片桐さんじゃん。奇遇だね?ひょっとしてデート?」
「お前らには関係ないだろ」
「別に隠す必要ないじゃん。それにしてもフードコートとはね。天音さんらしいよ」
「食べるのはそれだけ……なわけないよね」
今すぐこいつらをぶっ飛ばしたいが、大地もいる。今暴れるのは得策じゃない。
「天音、お待たせ。あれ?この人達知り合い?」
大地が戻って来た。
「やっぱりデートだったんだ。それにしてもデートのランチにフードコートってもうちょっと気を使いなよ」
「だめだよ、高い店で片桐さんに食べさせたらお金いくらあっても足りないよ」
そう言って二人は笑う。
大地にまで馬鹿にするのは許せない。
私が一言言おうとすると大地は鼻で笑った。
「君達が天音をどこまで知ってるのか分からないけどたかだか君達の財布の中身で食べられるランチとフードコートにそんなに差がないと天音は思ってるだけだよ?僕もそう思う。違いを教えてくれない?」
2人の表情が険しくなる。
大地は2人を明らかに挑発していた。
「まあ、精々4階の店で食べて満足してるんだろうけど、天音は月に一回はホテルのディナーを食してる。目上の人と談笑しながら。そんな天音を馬鹿に出来る程君達が凄いとは思えない」
大地も私を馬鹿にされて機嫌が悪い様だ。
「で?君たち誰?天音の同級生?僕は君達の顔なんてみたことないけど」
そして名前すら与えてもらえない雑魚。
「さっき話した二人組」
何も言わない二人に変わって私が説明した。
「ああ、あの本なら僕も読んだよ。あんな感動の安売りしたような作品で女心を知ったふりしてるなんて、君達のほうが余程幼稚なんじゃない?」
「なんだと?」
男が何か言いたげだ。
「現に今等身大の女子高生の心を傷つけている事にすら気づけないでいる。そんな男をカッコいいと思ってる彼女も程度が知れてるね。君達みたいなのを昔は『スイーツ脳』って言ったそうだよ」
「俺の連れを馬鹿にするのか?」
「自分の彼女を馬鹿にされたら当然怒るよね。だから僕も機嫌が悪い。そして2人のせいで折角のラーメンが食べれずのびてしまってる。どうしても相手になるって言うなら受けて立つよ?」
大地は終始笑顔だったがその怒気は誰にでも分かるものだった。放っておいたら折角のデートが台無しになる。
「大地、もういい」
私は大地を止めた。
「天音が優しい性格でよかったね。天音の機嫌がいいうちに行った方がいいと思うよ」
大地がそう言うと二人は立ち去った。
「天音ごめん、折角バリカタにしたのに」
「大丈夫だ……それにありがとう」
「言ったろ?天音を守るくらいの事は僕にだってできるようになったつもりだよ。それよりそれだけで足りる?」
「……うどんとハンバーガーととんかつ、あとステーキとたこ焼きもいいか?」
「わかった。それ食べてて」
そう言って大地は買いに行った。
そして料理を持ってくる。
私が頼んでない料理もあった。
「天音一人が食べてたら天音に恥をかかせると思って」
「大地は私みたいな大食いの女にドン引きしたりするか?」
「小食な振りをしている女性よりは僕は好きだよ」
「そうか……悪いラーメン替え玉いいか?」
「分かった」
昼ごはんを食べ終わった後私は大地に一言言ってお手洗いに行く。
私だって少しは見た目を気にするようになった。
洗面所で歯を磨く。
たこ焼きの青のりがついたままではみっともない。
口臭も若干気にする。
私一人なら、紗理奈達といっしょならいい。
だけど今は大地とデート中。
大地に余計な気遣いをさせたくない。
ランチを済ませるとショッピングを楽しむ。
夜はちょっと高い店で食事をする。
そこでは大食いはしなくなった。
大体コース料理が多いから。
「それにしても天音はあれだけ食べてよくその体形維持できるね」
「父さんに似たらしい」
父さんも大食いだけど全然太らない。
もう40超えてるけどベルトが一つきつくなったとかそういう話は愛莉からも聞いてない。
大地とデートする時はSAPとかに行ってわざと遅くに帰る。
そうしないと大地が母さんに怒られるから。
そして大地が送迎を呼んで家まで送ってもらう。
「今日はありがとうな」
「あのくらいたいしたことないよ。僕も彼女を馬鹿にされてへらへらしてる様な男じゃないよ」
そして家に着くと車を降りる。
「また誘うよ」
「いつでも待ってる」
大地がの車が去るのを見送って家に入る。
風呂に入って部屋に戻る。
もうすぐ日が変わる。
大地から「今部屋に戻った」とメッセージが来るのを待って「もう寝るよ」と送ってベッドに入る。
まだ連休は始まったばかりだった。
(3)
呼び鈴が鳴った。
どうやら来たようだ。
僕は玄関に行く。
「おはよう」
「おはよう、いらっしゃい。さあ上がって」
僕がそう言うと梨々香を自分の部屋に案内する。
元々茜と過ごしていた部屋だ。
2人で狭いということはない。
「さてと、何する?」
片桐家では前半のうちに宿題とか必要な事は全部終わらせて後半遊び倒すという家風がある。
だからとりあえず宿題をしていた。
小学校の授業よりもちょっと難しい中学校の勉強。
それでも最初の学力テストでは上位にいた。
夢が決まっているから勉強もやる気になる。
だって大学に行かないと夢を叶える事はできないから。
夢に向かって努力したものは報われるのがこの世界の常識。
2人で分からないところを指摘しながら勉強する。
中学校のクラスは小学校のクラスと変わらない。
この世界の常識。
精々他校から来た子が加わるくらいだ。
部活はしなかった。
別に運動に興味があるわけじゃないし。
護身術に柔道でもやるべきかと思ったけど柔道部は無かった。
その代わり剣道があったけど。
空は剣道をしているわけじゃないけど道具を持たせるとやたらと強い。
始めの合図とともに神速で踏み込んで頭上に一撃を食らわせるだけの作業など誰が好き好んで読むだろうか?
そんな話をしているとお昼になる。
「さてと、冷蔵庫覗いても良いかな?」
梨々香が言う。
「出前とってもいいんだよ?」
「それじゃ意味が無いよ」
梨々香が言うので梨々香に任せる事にした。
梨々香は鼻歌交じりに昼食を作っている。
何か手伝おうか?と聞いても大丈夫と返ってくる。
梨々香1人をキッチンに残しておくわけにもいかないのでダイニングで梨々香を見守っていた。
料理が出来上がると2人で食べる。
梨々香は料理が上手なようだ。
「どう?」
「美味しいよ」
「よかった」と喜んでいる梨々香。
食べ終わると「片づけくらい手伝う」と言ったがやっぱり断られた。
「これは私の修行なの」
梨々香がいう。
そして午後も勉強を続けていた。
夕方になると梨々香が「買い物にいかない?」という。
足りない食材があるらしい。
2人でスーパーに買い物に行った。
歩いて行く。
荷物を片手で持ってやってもう片方の手で梨々香と手をつなぐ。
家に帰ると早速梨々香が夕食に取り掛かる。
何もしないのはまずいと思ったのでとりあえず部屋を掃除する。
洗濯はそんなに溜まってないからいいや。
夕食を食べると夜は部屋でテレビを見て過ごす。
「一日中勉強してたら脳が疲れて捗りません」
そんな事を言う親は遠坂家と片桐家くらいだろう。
ちなみに親はいない。
今年も海外旅行に行ってる。
5連休だから満喫しているそうだ。
一応確認の電話は着た。
けれどあまり心配はしてなさそうだ。
僕達は今年から家に残ることになった。
もう中学生だから一人で大丈夫。
遠坂家ではそう判断するらしい。
それに一人というわけじゃない。
りえちゃんは梨々香の親に電話して梨々香の外泊を認めてもらった。
梨々香の親も少し気になるところはあったが認めたそうだ。
「梨々香ももう中学生だから」
そう言って梨々香の父さんを宥めていたらしい。
交互に風呂に入ると再びテレビを見る。
梨々香はドラマが好きらしい。
俳優の名前とかも良く知ってる。
さすがに梨々香が遊びに来てるのにゲームをしたりするのはまずいと思ってしなかった。
梨々香とドラマを見ている。
ドラマが終りニュースの時間になるとベッドに入る。
元々茜と一緒に過ごしていた部屋。
2段ベッドになっていたけど同じベッドに入る。
そして夜を過ごした。
朝になって掃除機の音で目が覚めた。
梨々香が掃除している。
「掃除くらい僕がやるよ」
「平気だから。ゆっくり寝てて」
そう言って梨々香は掃除を続ける。
梨々香の掃除が終わると勉強をする。
この分だと明日には宿題が終るだろう。
「明後日くらいどこか遊びに行かない?」
「じゃあ、映画でも観に行こうか?」
「なんかいい映画やってるの?」
「アニメやってるよ」
茜の好きな探偵アニメ。
茜も見に行くって言ってたな。
「それショッピングモールでやってる?」
「やってるけどどうせなら駅ビルにいかない?」
洋菓子屋さんに行きたいらしい。
「分かった。じゃあ駅ビルで」
「そうと決まったら明日までに宿題おわらせないとね」
そして昨日と同じ様に一日を過ごす。
ニュースでは高速道路が渋滞していると報じられていた。
高速道路で渋滞するなんて地元じゃ考えられない。
事故もそんなに聞かないし。
開通した時は軽自動車が風にあおられて横転する事故があったそうだが。
他にもいろいろニュースをやっていた。
あまりニュースには興味がないのでバラエティ番組に変えた。
そして21時を過ぎるとドラマを見る。
近頃のドラマは単なる恋愛ドラマはあまりやらない。
様々な職業にスポットを当てた物語が流行っている。
医療と刑事ものはだいたいいつでもやっている。
単なる恋愛ものはあまり好きじゃない。
2人が別れる結末も後味が悪いし、あっさりくっついても白けるし。ましてや病気で死に別れるのは感動の安売りで好きじゃない。
中には告白シーンすら省く物語もあるそうだ。
昔はそうでもなかったらしい。
死に別れなんて普通にあって、そしてそれに感動する女子が多かったそうだ。
中2で妊娠・出産するなんてドラマもあったらしい。
月が綺麗な夜に妊娠する。
子供はそう思ったみたいだ。
妊娠させた男子高校生の家は悲惨な結末を迎えていた。
もちろんドラマだから綺麗に見せていたけど、冷静にかんがえると悲惨すぎる。
会社が倒産して高校生の母親は保険の営業からやり直しという人生を送る。
それでも主題歌が良い曲だったみたいだ。
会社が倒産する。
この世界ではよくある事。
市長や知事は頭を悩ませているらしい。
最善の対処法は2人の母親の機嫌を損ねない事。
ドラマが終って今日一日が終る。
2人でベッドに入る。
「心配しないでいいからね」
梨々香が言う。
「何の話?」
「私は結婚を『愛情の摂取』なんて思ってないから」
ああ、さっき見てたドラマの話か。
「そんな先の話まだ考えてないよ」
高校を卒業して大学に行って公務員試験受けて警察官になって……。
その先の事考えてなかったな?
物語的には僕と梨々香は結婚するんだろうか?
「梨々香は雑誌の編集者になりたいんだっけ?」
「そうだよ。それがどうかした?」
「僕は、大学を卒業した後も忙しい日々を過ごす」
それでもおじさんと同じ立場になるには4年はかかる。
一人前の医者になるのと同じ年頃になるだろう。
「それまで待てる?」
中学生の台詞じゃないよな。
だけど母さんは小6で結婚相手を決めたという。
梨々香も同じ性分だったようだ。
「とりあえず子供が産める年齢までにしてほしいかな」
「わかった」
そう言うと梨々香は「寝よう?」と言う。
次の日宿題が終った。
「お疲れ様」
「梨々香もね」
残り連休はあと二日。
僕達はゆっくりと楽しむことにした。
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