姉妹チート:RE

和希

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3rdSEASON

儚い僕らの痕跡

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(1)

「水奈、足下気を付けて」
「ありがとう。でも大丈夫」

僕達は別府駅で電車を降りた。
そして階段を降りている。
エスカレーターが無いと分かっていれば水奈も浴衣で来なかっただろうに。

「ごめん」
「気にするな、このくらい大丈夫。それに空に喜んでもらえて私は嬉しい。」

水奈はそう言って微笑む。
駅を出るとゆっくりと道を歩いて行く。
とりあえずは腹ごしらえだ。
夕食を食べるとお祭りの会場に向かう。
出店で食べ物を買っていい席を確保する。
早く来た甲斐があっていい場所を確保できた。
しかしまだ明るい。
花火が始まるまでまだ時間がある。
買ってきた食べ物を食べながら踊りを見ていた。
僕達は別府の火の海祭りに来ている。
父さん達が「どうせなら2人でいっておいで」というのでやってきた。
似たような踊りが続いている。
違いを探す方が大変だ。
踊る人は老若男女問わずだった。
企業の名前を書いたプラカードを持った人を先頭に列に並んで踊っている。
たまに綺麗な人がいるけど見とれてると水奈が落ち込むのであまり見ないようにした。
今でもやっぱり歳の差を気にしているのだろうか?
踊りもようやく終わり花火が始まった。
色々なBGMを流しながら次々と上がっていく花火。
父さん達は色々な場所から見たらしい。
海の上からとか高速のPAからとかリゾートホテルの温泉からとか。
僕達もそのうち行けると良いね。
そんな話を水奈としながら花火を楽しんでいた。
最後の花火が終るとアナウンスが流れる。
見に来ていた客が一斉に引き上げる。
僕達は少し待っていた。
人混みの中に混ざって困るのは水奈だから。
群れの最後尾をゆっくり歩いて行く。
慌てることは無い。
この日は臨時列車が出ている。
少々遅れてもバスには十分間に合う。
水奈はバスに乗り遅れても良いと思ってるらしい。

「高校生だからお泊りくらいいいだろ?」

いいわけない。
その時は父さんか母さんに迎えに来てもらえるようにお願いしておいた。
電車に乗ると人混みから水奈を守る。
そして駅で降りてバスターミナルに向かう。
バスはあるみたいだ。

「こんな時間に2人で街を歩くのって初めてだよな」
「お酒が飲めるようになったら2人で歩こう。その時はホテルを用意するから」
「分かった」

水奈は楽しみにしてるみたいだ。
バスが来たので乗る。
バスは座席に座れるくらいにゆとりがあった。
水奈と景色を眺めながら目的地にむかう。
バス停に着くとバスを降りる。
家までゆっくり歩く。
来週には純也と茜はホームステイ。天音も大地と別荘で避暑するのだから。
水奈の家に帰ると天音が出迎えた。

「高校生だろ?朝帰りしたっていいのに、水奈に色気が無いといいたいのか!」
「空とお前をいっしょにするな!」

水奈の両親のやり取りはもう慣れた。

「もう遅いから気を付けてな」

水奈の母さんに言われて家に帰る。
家に帰ると、風呂に入って部屋に戻る。
さすがに水奈も疲れたようだ。
メッセージを送っても返事が無い。
眠ってしまったみたいだ。
僕も寝るか。
僕達の夏休みは始まったばかりだ。

(2)

「ロンドンは冷えるから気を付けてね~」

りえちゃんがそう言う。
防寒用に何着かジャケットを用意しておいた。
8月なのに最高気温は20度に届かないらしい。
9度を記録することもあるそうだ。
あとは雨対策が必須らしい。
傘では間に合わないくらいの大雨が降るそうだ。
僕達は一カ月間ロンドンにホームステイすることになった。
厳密にはまるっと1カ月いるわけじゃないけど。
壱郎と梨々香も一緒だった。
英語が喋れないどうしよう?
そんな不安は全くなかった。
だって今まで英語圏を何度も旅してきたのだから。
ただアメリカとイギリスでは英語が若干違うようだ。
訛りがあるとかそういう生易しい者ではないらしい。
地下鉄をアメリカではサブウェイというが、イギリスではアンダーグラウンドというそうだ。
知らないで聞いたら、危険な世界に踏み込んでしまったかのような不安を覚えていただろう。
天音達はあまりイギリスには興味が無いようだった。
別にUK音楽に興味があるわけでも無いし何より「イギリス料理は不味い!」そういう印象が強いから。
父さんもフィッシュアンドチップスはともかくイングリッシュブレックファーストは豆料理があるから苦手らしい。
父さんでも苦手な料理ってあるんだな。

「冬夜さんは意外と好き嫌いが多いのよ。困った人でしょ」

そう母さんが言ってた。
父さんが苦手なイギリス料理にミートパイというのがある。
食べたことは無いらしい。
食べようと思ったこともないらしい。
昔見た洋画でミートパイの肉がないから人を殺してその肉を挽肉にして食べさせるというえげつない作品があったそうだ。
それを思い出してどうしても食べる気にならないらしい。
その映画のタイトルを知らなかった父さんは前作のタイトルからファンタジー系の作品だと誤解して観に行ったらタイトルの名前の殺人理髪師のお話だったという。
父さんは基本的にぐろいのは駄目だ。
しばらく食欲がなかったらしい。
そんな父さんを見てみたかった。
予定時刻になると僕達は手荷物検査を受ける。
母さん達と別れを告げて羽田空港に向かう。
羽田空港からヒースロー空港までは12時間。
僕達はまだ中学生、あまり博物館とかに興味はない。
ただテーマパークには行ってみたいと思った。
あとは語学を学んだりする程度。
それも大変らしい。
まず首都圏には部屋を借りれないらしい。
電車で40分以上かかるところに割り当てられるそうだ。
食事も朝昼晩と三食ついているオプションは無いそうだ。
僕達も音楽に興味はない。
食べ物にも興味がない。
そして何より博物館や天文台、観光地に興味がない。
ただテレビで見るロンドンの洋風の街並みが楽しみだった。
それに梨々香や茜は観光地を楽しみにしている。
撮影は禁止だと思ったけどそうではないらしい。
大英博物館は撮影許可出てた。
当然撮影できない場所もある。
それは確認するしかないな。
下宿先に着くと一息つく。
夕飯が振舞われる。

「出されたものはちゃんと食べなさい」

母さんの言いつけを守った。
そしてホストファミリーの人と話をする。
イギリスのホストファミリーはイギリス人とは限らない、ヨーロッパ大陸の人は中華系の人もいる。
僕達のホストファミリーは息子が独立して部屋が余ったから登録したそうだ。
彼等にとって僕達は孫のような存在らしくて快く迎えてくれた。
これから彼等の世話になる。
小学校最後の夏はロンドンで過ごすことになった。

(3)

私と大地は別荘に来ていた。
私と大地、それに世話役の新條由梨香さん。
食事などの世話をしてくれる。
私達は勉強をして息抜きに観光に行くくらい。
大地の家は思っていたより凄かった。
まさかこの歳で軽井沢で避暑なんて思いつかなかった。

「偶には気分変えたいでしょ」

そんな理由で選んだらしい。

「天音が望むなら海外でもいいけど」

大地が言う。

「いや、ここでいいよ。それよりさ。ここ長野だよな?」
「そうだけどそれがどうかしたの?」
「長野って言ったら蕎麦だろ!蕎麦食いに行こうぜ!」

蕎麦だけじゃない!
ソースカツ丼にラーメンに山賊焼きに中華そば。
こういうのを待っていたんだ。

「じゃあ、お昼は新條さんに行って食べに行こうか?」

朝と夜は新條さんが作ってくれるよ。
大地はそう言った。
もちろん私だって女子だ。
観光に興味が全くないわけじゃない。
勉強は夜にして昼間は観光することにした。
その代わり大地には私が懇切丁寧に指導してやった。
私は内容をかみ砕いて分かりやすく説明する能力がある。
数学だけじゃない。
歴史だってそうだ。時代背景から教えてやる。
英語や国語だってそうだ。文章の流れ、会話の流れから相応しい単語を並べていく。
難しい理論なんてどうでもいい。答えがあってれば文句は言われない。
もちろん夜は勉強だけじゃない。
2人っきりの夜。
期待くらいしてもいいだろ?
大地は期待に応えてくれた。
こうしていられるのもそんなにない。
だから大切に生きていく。
だけど大地は否定する。

「天音が望むならどこまでも付き合うよ」
「浮気したら締めるからな」
「まだ死にたくないから気を付けるよ」

大地はそう言うけど本当は違う。
大地の戦闘力は私なんかよりはるかに上だ。
ただ私にだけは絶対に手を出さない。
そう決めてるらしい。

「実は免許取ったら買う車決めてるんだ」
「やっぱりSUVなのか?」
「うん、外車だけど」

有名な車のメーカーだった。

「助手席に乗ってくれる?」
「もちろん、私の助手席にも乗ってくれよ!」
「分かった」

そんな話をしながら私たちは夜を過ごす。
まだ8月も始まったばかりの話だった。

(4)

「今なら無料お試し期間1週間おまけするよ」
「使い方も教えてあげるからさ」

友達と気晴らしにクラブに入っていた。
お酒は飲まないようにソフトドリンクを注文して大音量のBGMで気を紛らわせていた。
ひょっとしたら出会いもあるかもしれない。
そして今男二人組に絡まれていた。
それは恋の誘いとかではない。
怪しいハーブの販売だった。
用途はアロマやハーブ、お香。
一昔前は合法ドラッグとして売られていたけど中味は成分を少し変えただけの立派な違法。
成分を変えてある分本物よりも危険な物。
やがて警察から危険ドラッグと呼称を変えられたもの。
用途だけ聞いたら買う人もいるかもしれない。
ただ「気分が良くなるよ」とか「すっきりするよ」とか効用を聞かされたら私でもそれが怪しいものだとわかる。

「私興味ないんで」

そう言ってその場を立ち去ろうとすると腕を掴まれた。

「興味あるからこの店に入ったんでしょ?子供のくせに」
「そんな怖いものじゃないって一度試してみなよ」

なんでも経験してみるべき。
どうやって断ればいい?
叫んで騒ぎになれば私はこのクラブに入れなくなってしまう。
友達も巻き込んでしまう。
学校に知れたらきっと厳しい処分が待っている。

「美砂、探したぞ。こんなところにいたのか?」

男の声がした。
聞き覚えのある声。
振り返ると背筋が凍った。
中学の教師の浅井耕太。
なんでこんなところに。

「そろそろ時間だ。帰ろう。これ以上は保護者同伴でも無理だ」

そう言って私を男たちから引き離す。

「俺の妹に何か用か?」

浅井が言うと男たちは黙って去っていった。

「じゃ、店を出よう。美砂一人で来たのか?」

浅井が聞くと私は友達とその彼氏と来てる事を伝えた。
2人で楽しそうだから一人離れて楽しんでいたら声をかけられた。

「その二人に店を出るように伝えなさい」
「わかった」

2人の場所に行って先に帰ると伝えると店を出る。
その間に浅井も一緒に来てた友達に事情を説明していた。

「じゃ、帰るぞ」
「いやだ、帰りたくない」

私は拒絶した。
家に帰れば一人になる。
家族はいるけど孤独なのに変わりはない。
1人でいると寂しくなる。
不安が襲う。

「それでこんな場所に来たのか。でもだめだ。お前はまだ18にすらなってないだろ?深夜徘徊を認めるわけにはいかない」

浅井はそう言うと私の腕を掴んで駐車場に連れて行った。
車に乗り込む。当然運転席には浅井が。

「浅井、お前酒飲んでるんじゃないのか?」
「心配するな。俺はハンドルキーパーだよ」

クラブで遊んだ後朝までドライブするつもりだったらしい。

「それより家に電話しろ。今から帰るって。親御さん心配してるだろうから」

素直に電話する。
両親ともそんなに心配してないらしい。
近頃の高校生なら当たり前だ。
明日も休みだしオールくらいするのかと思ってこれから寝るところだったらしい。

「美砂、俺に電話貸してもらえないか?」

浅井にそう言われると私はスマホを渡す。
事情を説明して、これから送り届けると伝える浅井。
電話を終えると私にスマホを返して車を出す。

「中学の時は真面目だったのに急にどうしたんだ?」

浅井に4月に起きたことを伝える。
私が教師に恋をして振られたことも。

「お前年上が好きなのか?」
「そうみたい。でも私はまだ未熟……子供扱いされて誰にも相手してもらえない」

だからこんな真似をしたんだろう?

「一人でいるのが不安なのか?」
「不安じゃない奴なんているのか?」
「強がる奴はたくさんいるよ。弱さを認めることが出来るやつの方が少ないんだ」
「浅井にとっても私はまだ子供なんだろ?」
「そう思うか?」
「え?」

どういう意味だ?

「美砂、約束しないか?二度とこんな真似しないと約束するなら俺がお前の不安を解消してやる」

そんなことできるのか?

「どうだ、できるか?」

浅井はいつもと変わらない表情だった。
そう、私が中学生だった頃と全然変わらない。

「わかった……。で、浅井は私に何をしてくれるんだ?」
「それはこれから分かるよ。とりあえず急いで家に帰ろう」

そう言って浅井は私の家の前に車を止めた。
浅井はエンジンを止めて車を降りると私と一緒に家に入る。

「お帰り、思ったより早かったわね。あれ?確か中学の時の」
「はい、浅井ともうします。娘さんが中学の時は勉強させてもらいました」

浅井はそう言って礼をする。

「先生が一緒って事は娘が何か問題を起こしたのですか?」
「大したことじゃないです。ただ偶然鉢合わせただけです。それよりお願いがあるんですけどいいですか?」
「お願い?」

母さんは首をかしげる。
私にも話が分からない。

「娘さんとの交際を許してもらいたくてきました。もちろん遊びなんかじゃないちゃんと最後まで責任もって面倒見ます」

は?

「交際っていくら先生が若いからと言っても……」
「もちろん私も教職者です、それなりの節度を守った交際をするつもりです。それは約束します」

話が長くなりそうだと浅井をリビングに案内した。
既に寝室で寝ていた父さんを起こすと母さんが父さんに事情を説明する。

「そんなことか」

たった一言で片づける父親。

「娘が良いって言うなら別にいいんじゃないのか?相手が教職者なら馬鹿な真似はしないだろう」
「もちろんそれは固く約束します。それでいいか美砂?」

普通言う順番が逆じゃないのか?

「美砂は俺にこういった。ひとりでいるのが寂しいと。だったら俺が一緒にいてやる。それならいいだろ?」

そう言って微笑む浅井。
うちじゃなかったら修羅場だぞ。
でも、そんな浅井を頼もしく思えたのも事実だ。
相手が浅井なら……。

「私はまだ15歳だ。これから先どうなるか分からないよ」
「その時はその時だ」
「……父さんお願いします」

そんな私と浅井のやり取りを見ていた父さんはうなずく。

「じゃ、俺は眠いから寝るぞ」

そう言って寝室に向かう父さん。
そんな父さんを見届けると深夜遅くに長居は悪いと浅井も立ち上がる。

「そんな仲になったのなら今晩泊っていただいても」
「私も教師の端くれです。良からぬ噂を立てなくないのでお気持ちだけ受け取っておきます」

浅井はそう言って玄関に向かう。

「じゃあ、今日は早く寝ろよ」
「浅井、待って」

私は浅井を呼び止めた。

「どうした?」
「連絡先くらい交換しよう」
「あ、そうだな」

私は浅井と連絡先を交換する。

「じゃ、また」

そう言って浅井は帰って行った。
その後風呂からでて部屋に戻ると浅井からメッセージが届いてた。

「週末空いてる?」
「いつでも空いてる」
「じゃあ、海でも観に行こうか?」
「わかった」
「じゃあ、おやすみ」

私はスマホを置くとベッドに入って寝た。
日曜日に浅井はやって来た。
それまでは大人しくしていた。

「ちゃんと勉強しているか?」

とか、何かと用件を作っては連絡を入れてくれる浅井だった。
浅井が家に来ると浅井の車に乗って家を出た。
車は赤いセダン。
私がシートベルトをすると、車はゆったりと動き出した。

「何してた?」
「買い物行ったりしてた。先生は?」
「俺は部活指導はしてないから楽な方だよ」

部活指導をしている先生は大変らしい。
連休も生徒の練習につきあうのだから。
そうでない教師も平日は忙しいらしい。
下校後家に帰っていない生徒を探し回ったりと大変なんだそうだ。
それに事務仕事やテストの作成もある。
高校には伝家の宝刀「退学処分」がある。
だけど中学は義務教育だからできない。

「教師も大変なんだな?」
「そう思うなら問題を増やしてくれるな」
「あれからちゃんと約束守ってるよ」

ちゃんと門限には帰ってる。
ああいう店には入ってない。
誘われても断ってる。
車は海岸線沿いを走り空港を越えて国東半島を一周する。
途中でレストランで昼食を取った。
ゆっくりしていたらあっという間に夜になる。
帰りは高速で帰って夕食を食べて帰った。
家の前に車を止める。

「じゃあ、また連絡する」
「わかった」
「明日からまた頑張れよ」

浅井はそう言って家に帰った。
私も家に入ると風呂に入ってテレビを見てた。
浅井の定時連絡を待っていた。
いつも通りの時間にいつも通りのメッセージ。
私も返事を送るとベッドに入って眠りにつく。
無我夢中で進んだ先に光があった。
その光を頼りにこれからは進もう。
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