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3rdSEASON
希望の種を探しに
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(1)
「あ、水奈久しぶり」
私を見つけた美希が手を振る。
私は空と一緒に花火大会に来ていた。
私と空は浴衣だったのでバスで来ていた。
花火の後はカラオケを楽しむそうだ。
街中にある江口リゾートホテルの一つでやるから問題ないそうだ。
名目上はホテルに泊まってるだけなのだから。
支配人には話を通してあるらしい。
父さんは「絶対にカラオケだけだからな!」と念を押していた。
父親って皆こんなものなのだろうか?
空の父さんは違うと天音から聞いていた。
ただ天音のお爺さんと夜な夜な酒を飲んでいるんだそうだ。
母さんは「まあ、高校生だしオールくらいやるだろ?」とだけだった。
母さんはあまり厳しく言わない。
育児放棄ではなく、自分もそうやって育ってきたから大丈夫だと思っているみたいだ。
他にはSHの高校生メンバーが集まっていた。
中学生は部活や受験勉強、小学生は夜に出歩くのはまだ早い。
天音と大地は別荘地に行っている。
適当に空いてる場所を見つけるとそこに陣取って時間を潰す。
高校生組も高校が別々な場所というのもあるせいか滅多に揃うことは無いらしい。
県総体の開会式以降会ってなかったそうだ。
花火が上がり始めた。
みんな花火に見とれてる。
そして作品が終わるごとに拍手が起こる。
たまにおまけの様に最後に一発打ち上がって咲く花もあるけど。
全部終わると皆で移動する。
まずは腹ごしらえだとファミレスに行く。
空は相変わらずよく食べる。
よくそれでこの引きしまった体形を維持できるな。
少し羨ましく思えた。
私と空は一つ歳の差がある。
来年には空は受験生。
そしてその次の年には大学生になってまた離れ離れになる。
大学に進学したら空はは一人暮らしをするらしい。
いつでも遊びにおいでと空は合鍵を私にくれると言った。
そして私が高校を卒業したら一緒に暮らそうって言ってくれた。
両親は反対しなかった。
両親は大学時代に結婚したのだから。
同棲するなら共働きした方が楽になる。
帰る家は一緒だ。
すれ違いの時間もあるだろうけど一緒にいられる時間は今よりは多いだろう。
光太と麗華は高校卒業したら就職するらしい。
高校2年で内定をもらっているような状態だから気楽なもんだと笑っていた。
水島さんも同じだった。
高校を卒業したら地元サッカークラブのレディースに所属するらしい。
海外に行くことも検討したが日本代表の常連となっている今一々合流するのが面倒に感じたそうだ。
拒否する権利も条件付きであるけど、肝心の五輪やW杯に出場できなくなったら元も子もない。
Aマッチ招集を拒否する権利はクラブチームには無い。
移動の負担を考えたうえでの進路らしい。
すでに水島さんはU-19を飛び越えA代表に選出されるようになっている。
沢木兄弟もバレーボールの日本代表に選ばれている。
SHのスポーツ組は凄い。
祈に聞いたけど、山崎姉妹も祈の母さんが専属契約を結ぶと言っているそうだ。
1年しか硬式テニスやってないのにインターハイ出場を決めたんだ。
高校を卒業したらプロ登録をする。
大学を卒業するまでは国内の大会で我慢する。
10年以上テニスをやってる猛者達の中勝ち抜いて出場を決めたのだから夢ではない。
バスケもサッカーもプロを目指す者がいる。
何でもありの世界だな。
あとは弁護士を目指すために熊本の大学をめざす者、取りあえず行っとけと地元大学を受ける者。
大学の先はまだ決まっていないらしい。
中には教師になると決めているのもいるそうだが。
私は空と同じ大学に行く。
だけどその先の事は何も考えていなかった。
なんとなく空のお嫁さんになりたい。
小学生みたいな夢しかもっていなかった。
だけど母さんはそれでいいと言ってくれた。
「空のお母さんもそうだったんだぞ」
母さんが教えてくれた。
どんな名門大学でも入れる才女が地元の大学に拘った理由。
それが空の父さんと一緒にいたいという事だけだったらしい。
だけど空はどう思ってるんだろう?
空は教えてくれなかった。
「まずは大学を出る事を考えよう」
それだけだった。
私のやりたいようにやればいい。
「それが空のお嫁さんだったらどうするんだ?」
ちょっとした意地悪だった。
だけど空は答えてくれた。
「水奈は僕を幸せにしてくれる。……もしその時に水奈にその気持ちが残ってるなら」
その先のセリフは将来の楽しみに取っておこう。
食事が済むとホテルに行く。
パーティホールを貸し切ってのカラオケ大会。
高校生のやることじゃないな。
飲み物は飲み放題だった。
私は部屋を借りて浴衣から着替える。
一晩盛り上がっていた。
朝になると皆「おつかれさま~」と帰りだす。
私も空と始発のバスに乗って帰る。
「今日はゆっくり休むといいよ」
「空もな」
そう言って私達は自分の家に帰る。
母さんが朝食の準備をしていた。
ああ、今日は月曜だっけ?
父さんは仕事があるんだな。
「あ、水奈お帰り。どうだった?」
母さんが聞いてきた。
「オールでカラオケしてただけ」
「そうか、昼まで寝とけ」
これがうちの母さんの対応だ。
「こんな時間まで何してたの!?」
そのくらい言われるのは覚悟してたんだけどな。
部屋に戻ると着替えて寝る。
昼になると起きて昼ご飯を食べる。
それからゲームしてた。
まだ夏休みは続く。
(2)
お盆の時期の恒例の行事。
久住にキャンプに行くこと。
キャンプ道具を積み込むと出発する。
まずは山の麓のコンビニに集合する。
桐谷君が僕の車をみて呆れていた。
「そんな車じゃスピード出せないだろ?」
まあ、車体は重いし曲がらない・止まらない・走らないの3拍子。
だけど子供たちを全員乗せようと思ったらしかたない。
それにどうせ飛ばさないしね。
渡辺君が最後に来ると僕達は出発した。
久住の「酒井リゾートフォレスト」に向かう。
遊園地とキャンプ場が隣接していてすごく便利な場所。
問題はどうしてこんな辺鄙な場所に作ったかということ。
他に広い場所が思いつかなかったらしい。
しかし近くにフラワーパークもあればコテージやオーベルジュもある。
大観峰までも来るまで数十分といったところで割と人も多い。
目的地に到着すると晶さんからチケットが配られる。
乗り放題食べ放題のチケットだ。
株主優待に使えそうなものをティッシュ配りの様にばらまく。
集合場所と時間を決めると子供たちはアトラクションに向かって行った。
僕達も冬吾達の面倒をみなくちゃならない。
誠司が乗りたいと言っていたアトラクションは誠司の身長が足りなくて乗れない。
カンナ達も必死に説得していた。
「大きくなったらまた来ような」
そう言い聞かせるカンナ達。
冬吾はあまり乗り物に興味を示さない。
怖がってるわけでも無さそうだ。
誠司達が乗れるアトラクションを何度も乗る。
僕達も冬吾や冬莉と一緒に乗ったり乗っているところを撮影したりと大忙しだった。
子供たちのお腹がすくと昼食を食べる。
食べ終わると子供たちがまた遊ぼうとねだる。
子供の体力は無尽蔵にあるようだ。
僕達の体力は落ちる一方だった。
日頃の運動不足もたたっているのだろうか?
ゴルフで1ラウンド回るのも大変になって来た。
愛莉は平気らしい。
そりゃ子供5人の面倒を見ていたら「しんどい」なんて言ってる場合じゃないか。
集合時間になると皆集合場所に集まりだす。
全員揃ったのを確認すると車でキャンプ場にいどうする。
去年に比べて林ができてた。
子供たちがカブトムシを採れるようにと設置したらしい。
僕達がテントを設置してる間冬吾は誠司とサッカーボールで遊んでいた。
空達はボートに乗って寛いでいる。
高校生組中学生組は皆そんな感じだった。
そろそろ夕食の準備を始めようかという頃子供たちが戻ってくる。
女性陣が野菜や肉などを準備して焼き始めると渡辺君の乾杯で宴が始まる。
無我夢中で食べる子供達。
誠や桐谷君も酒が入って騒いでいた。
食べ終わると片づけに入る。
その間に子供達は花火で遊んでいる。
空と水奈、善明と海璃、美希と学は静かに花火を楽しんでいる。
遊や紗理奈達は相変わらずあたりかまわずロケット花火を飛ばしていた。
さすがにテントに飛んできたときは焦った。
亜依さんが注意する。
花火が終る頃夜食の準備をする。
夜食を食べ終わると子供たちはテントに入る。
残っているのは大人たちだけだった。
「空は今年修学旅行だったっけ?」
亜依さんが聞くと愛莉が返事した。
「私達の始まりは修学旅行からだったんだよね」
亜依さんが懐かしんでる。
「そうね、あれが無かったら私は望と一緒になんてなってなかった」
「ラーメンはのびないうちに食え……でしたね」
恵美さんと石原君が言う。
「修学旅行で何があったんだい?」
「そうだな、そこは俺達は知らないな」
酒井君と木元先輩が言う。
僕達は昔話を始めた。
高校生になって友達が増えた。
そして修学旅行で絆が深まった。
大学生になって雪だるま式に仲間が増えて行った。
そして今もなお続いている交流。
「色んな事がありましたね」
花菜さんが言ってる。
車で峠を駆け抜けたり逆刃刀を振り回したり時々ジャンルが変わっていたけど、それは今でも変わらないか。
だけど今ではただの一般人。
皆家庭を持ってそれを守ることに一生懸命だ。
そしてその仕事を終える者も出てくる。
まだ続ける者もいる。僕達の様に。
人生の終わりまでの果てなき旅。
何度も繰り返される1年。
僕たちはどこまで見届けられるだろう?
夜空に浮かぶ希望の種。
その宝石を掴もうと腕を伸ばす。
必死に腕を伸ばしていたのは遠い過去の話。
今は同じように背伸びする子供たちを見守る傍観者。
彷徨う子供たちに希望の種を振りまく仕事。
今はただ昔話に花を咲かせながら酒を楽しんでいた。
夏には星。
それだけで十分だった。
(3)
朝目が覚める。
地面がごつごつしているテントの中では早く目覚めてしまう。
キャンプという状況がテンションを上げているせいなのかもしれない。
とりあえず私は目が覚めた。
テントを出ると美希の父さんと善明の父さんが火の番をしていた。
「水奈か、随分早いね」
大地の父さんがそう言う。
「おはようございます」
挨拶をして空が寝ているテントに向かった。
冬吾と空のお父さんはいない。
「空、起きて」
そっと空に呼び掛ける。
「どうしたの?」
空は起き上がった。
「あまり眠れなくてさ……なんとなく」
「んじゃ、散歩でもしようか」
「うん」
何かと口実を作っては、空と2人きりの時間を作ろうとする。
空もその事に気付いてるのか、私に付き合ってくれる。
「父さんと冬吾は?」
「私が来た時にはいなかったぞ?」
「どこいったんだろう?」
空もテントを出ると大地のお父さん達に聞いていた。
「ああ、カブトムシを探しに林の方に行ったよ」
善明の父さんが言う。
昨日の夜空の父さんが林の木に蜜を塗っていたらしい。
私達も林に向かった。
空のお父さんと冬吾がいた。
冬吾は私達に気付くと「見て」と大きなカブトムシを見せる。
「すごいね~、家で飼うの?」
「いや、そんなに長く生きてられないらしいからここに返すんだ」
スマホで写真だけはとったらしい。
「水奈達はなぜここへ?」
空のお父さんが聞いてきた。
「朝早く目が覚めたから」
「……水奈に起こされた」
「空は彼女が起こしに来たのに、そういう言い方するんだな」
私が言うと慌てる空。
空のお父さんは空を見て笑っていた。
それから4人で湖を一周してテントに戻ると朝食の準備を始めていた。
私もそれを見て手伝う。
そしてご飯を食べて片づけに入る。
その間に男性陣はテントの撤収をしていた。
今日はあのテーマパークには行かないらしい。
銭湯に行ってファミレスで昼ご飯を食べて解散らしい。
荷物を全部車に積み終わると出発した。
銭湯で体を洗うと風呂に入って一息つく。
「もうじき夏休みも終わりだね」
隣に美希がやって来た。
「そうだね。天音達は楽しんでいるのかな?」
「大丈夫だと思う、天音の機嫌損ねたら自分が危ない事を大地はよく理解しているから」
美希が言う。
それなら安心だ。
「水奈は空と何かあった?」
「いや、いつも通りだ」
そう、いつも通り平和だった。
それが嬉しい。
「美希はどうだった?」
「私もいつも通りだったかな」
美希はそう言って笑う。
結局皆いつもどおりがいいんだ。
風呂を出ると服を着て脱衣所を出る。
空はいつも通りアイスを食べていた。
ファミレスでお昼を食べる。
片桐家はいつものメニュー。
たまにキムチ雑炊とか食べたりするけど。
ご飯を食べ終わるとファミレスを出て解散する。
家に帰るとキャンプ道具を片付けて家に入る。
「今日は夕飯は出前でいいか?」
「うん」
そう言って私は部屋にもどる。
空にメッセージを送る。
返事が返ってこない。
朝早かったせいもあるだろう。
疲れているのもあるだろう。
きっと寝てるんだろうな。
だからそのまま寝せておいてやることにした。
夕飯の時間になると母さんに呼ばれた。
夕飯を食べてお風呂に入って部屋でくつろいでいた。
ようやく空からメッセージが返ってくる。
「ごめん、疲れててつい……」
「気にしなくていいよ、楽しかったな」
「そうだね」
それからメッセージをやり取りしながらテレビを見ていた。
プロ麻雀とかの番組があったけど見なかった。
父さんは賭け事だけはしなかった。
昔のドラマの一挙放送をやっていたのでそれを見ていた。
最終話まで見る頃には日付が変わろうとしていた。
盆休みが終るともう夏休みもあとわずか。
そして2学期がはじまる。
「あ、水奈久しぶり」
私を見つけた美希が手を振る。
私は空と一緒に花火大会に来ていた。
私と空は浴衣だったのでバスで来ていた。
花火の後はカラオケを楽しむそうだ。
街中にある江口リゾートホテルの一つでやるから問題ないそうだ。
名目上はホテルに泊まってるだけなのだから。
支配人には話を通してあるらしい。
父さんは「絶対にカラオケだけだからな!」と念を押していた。
父親って皆こんなものなのだろうか?
空の父さんは違うと天音から聞いていた。
ただ天音のお爺さんと夜な夜な酒を飲んでいるんだそうだ。
母さんは「まあ、高校生だしオールくらいやるだろ?」とだけだった。
母さんはあまり厳しく言わない。
育児放棄ではなく、自分もそうやって育ってきたから大丈夫だと思っているみたいだ。
他にはSHの高校生メンバーが集まっていた。
中学生は部活や受験勉強、小学生は夜に出歩くのはまだ早い。
天音と大地は別荘地に行っている。
適当に空いてる場所を見つけるとそこに陣取って時間を潰す。
高校生組も高校が別々な場所というのもあるせいか滅多に揃うことは無いらしい。
県総体の開会式以降会ってなかったそうだ。
花火が上がり始めた。
みんな花火に見とれてる。
そして作品が終わるごとに拍手が起こる。
たまにおまけの様に最後に一発打ち上がって咲く花もあるけど。
全部終わると皆で移動する。
まずは腹ごしらえだとファミレスに行く。
空は相変わらずよく食べる。
よくそれでこの引きしまった体形を維持できるな。
少し羨ましく思えた。
私と空は一つ歳の差がある。
来年には空は受験生。
そしてその次の年には大学生になってまた離れ離れになる。
大学に進学したら空はは一人暮らしをするらしい。
いつでも遊びにおいでと空は合鍵を私にくれると言った。
そして私が高校を卒業したら一緒に暮らそうって言ってくれた。
両親は反対しなかった。
両親は大学時代に結婚したのだから。
同棲するなら共働きした方が楽になる。
帰る家は一緒だ。
すれ違いの時間もあるだろうけど一緒にいられる時間は今よりは多いだろう。
光太と麗華は高校卒業したら就職するらしい。
高校2年で内定をもらっているような状態だから気楽なもんだと笑っていた。
水島さんも同じだった。
高校を卒業したら地元サッカークラブのレディースに所属するらしい。
海外に行くことも検討したが日本代表の常連となっている今一々合流するのが面倒に感じたそうだ。
拒否する権利も条件付きであるけど、肝心の五輪やW杯に出場できなくなったら元も子もない。
Aマッチ招集を拒否する権利はクラブチームには無い。
移動の負担を考えたうえでの進路らしい。
すでに水島さんはU-19を飛び越えA代表に選出されるようになっている。
沢木兄弟もバレーボールの日本代表に選ばれている。
SHのスポーツ組は凄い。
祈に聞いたけど、山崎姉妹も祈の母さんが専属契約を結ぶと言っているそうだ。
1年しか硬式テニスやってないのにインターハイ出場を決めたんだ。
高校を卒業したらプロ登録をする。
大学を卒業するまでは国内の大会で我慢する。
10年以上テニスをやってる猛者達の中勝ち抜いて出場を決めたのだから夢ではない。
バスケもサッカーもプロを目指す者がいる。
何でもありの世界だな。
あとは弁護士を目指すために熊本の大学をめざす者、取りあえず行っとけと地元大学を受ける者。
大学の先はまだ決まっていないらしい。
中には教師になると決めているのもいるそうだが。
私は空と同じ大学に行く。
だけどその先の事は何も考えていなかった。
なんとなく空のお嫁さんになりたい。
小学生みたいな夢しかもっていなかった。
だけど母さんはそれでいいと言ってくれた。
「空のお母さんもそうだったんだぞ」
母さんが教えてくれた。
どんな名門大学でも入れる才女が地元の大学に拘った理由。
それが空の父さんと一緒にいたいという事だけだったらしい。
だけど空はどう思ってるんだろう?
空は教えてくれなかった。
「まずは大学を出る事を考えよう」
それだけだった。
私のやりたいようにやればいい。
「それが空のお嫁さんだったらどうするんだ?」
ちょっとした意地悪だった。
だけど空は答えてくれた。
「水奈は僕を幸せにしてくれる。……もしその時に水奈にその気持ちが残ってるなら」
その先のセリフは将来の楽しみに取っておこう。
食事が済むとホテルに行く。
パーティホールを貸し切ってのカラオケ大会。
高校生のやることじゃないな。
飲み物は飲み放題だった。
私は部屋を借りて浴衣から着替える。
一晩盛り上がっていた。
朝になると皆「おつかれさま~」と帰りだす。
私も空と始発のバスに乗って帰る。
「今日はゆっくり休むといいよ」
「空もな」
そう言って私達は自分の家に帰る。
母さんが朝食の準備をしていた。
ああ、今日は月曜だっけ?
父さんは仕事があるんだな。
「あ、水奈お帰り。どうだった?」
母さんが聞いてきた。
「オールでカラオケしてただけ」
「そうか、昼まで寝とけ」
これがうちの母さんの対応だ。
「こんな時間まで何してたの!?」
そのくらい言われるのは覚悟してたんだけどな。
部屋に戻ると着替えて寝る。
昼になると起きて昼ご飯を食べる。
それからゲームしてた。
まだ夏休みは続く。
(2)
お盆の時期の恒例の行事。
久住にキャンプに行くこと。
キャンプ道具を積み込むと出発する。
まずは山の麓のコンビニに集合する。
桐谷君が僕の車をみて呆れていた。
「そんな車じゃスピード出せないだろ?」
まあ、車体は重いし曲がらない・止まらない・走らないの3拍子。
だけど子供たちを全員乗せようと思ったらしかたない。
それにどうせ飛ばさないしね。
渡辺君が最後に来ると僕達は出発した。
久住の「酒井リゾートフォレスト」に向かう。
遊園地とキャンプ場が隣接していてすごく便利な場所。
問題はどうしてこんな辺鄙な場所に作ったかということ。
他に広い場所が思いつかなかったらしい。
しかし近くにフラワーパークもあればコテージやオーベルジュもある。
大観峰までも来るまで数十分といったところで割と人も多い。
目的地に到着すると晶さんからチケットが配られる。
乗り放題食べ放題のチケットだ。
株主優待に使えそうなものをティッシュ配りの様にばらまく。
集合場所と時間を決めると子供たちはアトラクションに向かって行った。
僕達も冬吾達の面倒をみなくちゃならない。
誠司が乗りたいと言っていたアトラクションは誠司の身長が足りなくて乗れない。
カンナ達も必死に説得していた。
「大きくなったらまた来ような」
そう言い聞かせるカンナ達。
冬吾はあまり乗り物に興味を示さない。
怖がってるわけでも無さそうだ。
誠司達が乗れるアトラクションを何度も乗る。
僕達も冬吾や冬莉と一緒に乗ったり乗っているところを撮影したりと大忙しだった。
子供たちのお腹がすくと昼食を食べる。
食べ終わると子供たちがまた遊ぼうとねだる。
子供の体力は無尽蔵にあるようだ。
僕達の体力は落ちる一方だった。
日頃の運動不足もたたっているのだろうか?
ゴルフで1ラウンド回るのも大変になって来た。
愛莉は平気らしい。
そりゃ子供5人の面倒を見ていたら「しんどい」なんて言ってる場合じゃないか。
集合時間になると皆集合場所に集まりだす。
全員揃ったのを確認すると車でキャンプ場にいどうする。
去年に比べて林ができてた。
子供たちがカブトムシを採れるようにと設置したらしい。
僕達がテントを設置してる間冬吾は誠司とサッカーボールで遊んでいた。
空達はボートに乗って寛いでいる。
高校生組中学生組は皆そんな感じだった。
そろそろ夕食の準備を始めようかという頃子供たちが戻ってくる。
女性陣が野菜や肉などを準備して焼き始めると渡辺君の乾杯で宴が始まる。
無我夢中で食べる子供達。
誠や桐谷君も酒が入って騒いでいた。
食べ終わると片づけに入る。
その間に子供達は花火で遊んでいる。
空と水奈、善明と海璃、美希と学は静かに花火を楽しんでいる。
遊や紗理奈達は相変わらずあたりかまわずロケット花火を飛ばしていた。
さすがにテントに飛んできたときは焦った。
亜依さんが注意する。
花火が終る頃夜食の準備をする。
夜食を食べ終わると子供たちはテントに入る。
残っているのは大人たちだけだった。
「空は今年修学旅行だったっけ?」
亜依さんが聞くと愛莉が返事した。
「私達の始まりは修学旅行からだったんだよね」
亜依さんが懐かしんでる。
「そうね、あれが無かったら私は望と一緒になんてなってなかった」
「ラーメンはのびないうちに食え……でしたね」
恵美さんと石原君が言う。
「修学旅行で何があったんだい?」
「そうだな、そこは俺達は知らないな」
酒井君と木元先輩が言う。
僕達は昔話を始めた。
高校生になって友達が増えた。
そして修学旅行で絆が深まった。
大学生になって雪だるま式に仲間が増えて行った。
そして今もなお続いている交流。
「色んな事がありましたね」
花菜さんが言ってる。
車で峠を駆け抜けたり逆刃刀を振り回したり時々ジャンルが変わっていたけど、それは今でも変わらないか。
だけど今ではただの一般人。
皆家庭を持ってそれを守ることに一生懸命だ。
そしてその仕事を終える者も出てくる。
まだ続ける者もいる。僕達の様に。
人生の終わりまでの果てなき旅。
何度も繰り返される1年。
僕たちはどこまで見届けられるだろう?
夜空に浮かぶ希望の種。
その宝石を掴もうと腕を伸ばす。
必死に腕を伸ばしていたのは遠い過去の話。
今は同じように背伸びする子供たちを見守る傍観者。
彷徨う子供たちに希望の種を振りまく仕事。
今はただ昔話に花を咲かせながら酒を楽しんでいた。
夏には星。
それだけで十分だった。
(3)
朝目が覚める。
地面がごつごつしているテントの中では早く目覚めてしまう。
キャンプという状況がテンションを上げているせいなのかもしれない。
とりあえず私は目が覚めた。
テントを出ると美希の父さんと善明の父さんが火の番をしていた。
「水奈か、随分早いね」
大地の父さんがそう言う。
「おはようございます」
挨拶をして空が寝ているテントに向かった。
冬吾と空のお父さんはいない。
「空、起きて」
そっと空に呼び掛ける。
「どうしたの?」
空は起き上がった。
「あまり眠れなくてさ……なんとなく」
「んじゃ、散歩でもしようか」
「うん」
何かと口実を作っては、空と2人きりの時間を作ろうとする。
空もその事に気付いてるのか、私に付き合ってくれる。
「父さんと冬吾は?」
「私が来た時にはいなかったぞ?」
「どこいったんだろう?」
空もテントを出ると大地のお父さん達に聞いていた。
「ああ、カブトムシを探しに林の方に行ったよ」
善明の父さんが言う。
昨日の夜空の父さんが林の木に蜜を塗っていたらしい。
私達も林に向かった。
空のお父さんと冬吾がいた。
冬吾は私達に気付くと「見て」と大きなカブトムシを見せる。
「すごいね~、家で飼うの?」
「いや、そんなに長く生きてられないらしいからここに返すんだ」
スマホで写真だけはとったらしい。
「水奈達はなぜここへ?」
空のお父さんが聞いてきた。
「朝早く目が覚めたから」
「……水奈に起こされた」
「空は彼女が起こしに来たのに、そういう言い方するんだな」
私が言うと慌てる空。
空のお父さんは空を見て笑っていた。
それから4人で湖を一周してテントに戻ると朝食の準備を始めていた。
私もそれを見て手伝う。
そしてご飯を食べて片づけに入る。
その間に男性陣はテントの撤収をしていた。
今日はあのテーマパークには行かないらしい。
銭湯に行ってファミレスで昼ご飯を食べて解散らしい。
荷物を全部車に積み終わると出発した。
銭湯で体を洗うと風呂に入って一息つく。
「もうじき夏休みも終わりだね」
隣に美希がやって来た。
「そうだね。天音達は楽しんでいるのかな?」
「大丈夫だと思う、天音の機嫌損ねたら自分が危ない事を大地はよく理解しているから」
美希が言う。
それなら安心だ。
「水奈は空と何かあった?」
「いや、いつも通りだ」
そう、いつも通り平和だった。
それが嬉しい。
「美希はどうだった?」
「私もいつも通りだったかな」
美希はそう言って笑う。
結局皆いつもどおりがいいんだ。
風呂を出ると服を着て脱衣所を出る。
空はいつも通りアイスを食べていた。
ファミレスでお昼を食べる。
片桐家はいつものメニュー。
たまにキムチ雑炊とか食べたりするけど。
ご飯を食べ終わるとファミレスを出て解散する。
家に帰るとキャンプ道具を片付けて家に入る。
「今日は夕飯は出前でいいか?」
「うん」
そう言って私は部屋にもどる。
空にメッセージを送る。
返事が返ってこない。
朝早かったせいもあるだろう。
疲れているのもあるだろう。
きっと寝てるんだろうな。
だからそのまま寝せておいてやることにした。
夕飯の時間になると母さんに呼ばれた。
夕飯を食べてお風呂に入って部屋でくつろいでいた。
ようやく空からメッセージが返ってくる。
「ごめん、疲れててつい……」
「気にしなくていいよ、楽しかったな」
「そうだね」
それからメッセージをやり取りしながらテレビを見ていた。
プロ麻雀とかの番組があったけど見なかった。
父さんは賭け事だけはしなかった。
昔のドラマの一挙放送をやっていたのでそれを見ていた。
最終話まで見る頃には日付が変わろうとしていた。
盆休みが終るともう夏休みもあとわずか。
そして2学期がはじまる。
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