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3rdSEASON
不確かな幻想
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(1)
チャイムが鳴ると皆シャーペンを机に置く。
列の最後尾の者が解答用紙を集めていく。
「おつかれ、どうだった?」
「わかんない、一応全部埋めることはできたけど」
「帰りにラーメンでも食っていくか?」
「水奈を待たせてるからいいよ」
そんなやりとりを学としていた。
人生初めての模試。
高校受験への最初の階段。
結果次第では志望校の変更を余儀なくされる。
より確実な道を選ばなければならない。
水奈に余計な気を使わせたくないから、成績は良い方が良い。
そんな事を考えながら昇降口に行くと水奈が待っていた。
「模試だったんだろ?お疲れ」
「ああ、ありがとう」
「……あんまりよくなかったのか?」
「そんな事無いよ大丈夫」
「ならいいんだけど」
早速変な気を使わせてしまった。
難しいな。
そんな僕の顔を見て水奈は言った。
「たまには寄り道していかないか?」
「寄り道?」
「今日は空もお疲れ様って事で特別に」
「……ありがとう」
そして僕達はお好み焼き屋さんに寄っていた。
僕達はお好み焼きを焼いて食べていた。
お好み焼きを食べた後翼は店員にもんじゃ焼きを注文する。
店員が具材を持ってくると水奈が僕に「空が焼いて」と僕に渡す。
僕はもんじゃを焼く。
それを水奈は楽しそうに見てる。
出汁を流して混ぜ合わせる頃水奈が言った。
「空はこういうの似合ってるよな。私一度体験してみたかったんだ。彼氏にお好み焼きとか焼いてもらうの」
「なるほどね」
「空は私にいつも言ってるじゃないか。変に力み過ぎるな。緊張してたら本番ミスるぞって
「大丈夫。空は頑張ってるんだから必ずいい結果が出るよ」
「普通は不安になるものだと思うけど」
「それは結果が出てから考える事だよ。空は一生懸命模試に備えて頑張って来た。だから今日は忘れて一緒にもんじゃつつこう?」
水奈はそう言ってもんじゃを食べだした。
「私一人じゃ食べきれないぞ?」
水奈はそう言って笑う。
水奈なりの気遣いなんだろうな。
水奈は自分が足かせになってると不安になってるんだ。
不安にさせていたら元も子もない。
「今日は勉強の事はわすれようか」
「ああ、たまには私と遊んでくれ」
店員を呼んでとんぺい焼きと高菜チャーハンを注文する。
「そんなに食って大丈夫なのか!?」
「連休は遊びに行こうか?どこがいい?」
「連休だとどこも混んでるから家でもいいけどあのド変態も休みだしな。……じゃあ、ショッピングモールに映画でも観に行こうか」
連休の予定を2人で考えながら、ふたりでもんじゃをつついてそして帰った。
家に帰ると部屋で着替えて夕食の時間までくつろぐ。
夕食の後風呂に入ると部屋でテレビを見る。
内容はあまり覚えてない。
今日は勉強はおやすみ。
気分転換につとめた。
大丈夫だろう。
いつもより早めに寝た。
後日結果が出た。
思ったよりいい結果だった。
これなら大丈夫そうだ。
「ほら、空なら大丈夫って言ったろ?」
水奈はそう言って笑う。
「じゃあ、今日は僕が奢るよ。何が良い?」
「うーん、じゃあうどんにしよう?」
「そんなのでいいの?」
「私はそんなに食べれない。それにうどんは美容にいいらしいんだ」
そんな話初めて聞いたぞ。
水奈の希望通り、帰りにうどん屋さんに寄って帰った。
母さん達に結果を伝える。
「空なら大丈夫だと思ってたよ」
父さんが言う。
「でも油断したらいけませんよ。あくまでも模試なんだから」
母さんの忠告を受ける。
そして最初の月が終り、連休が始まる。
(2)
(1)
その日は学校は休みだったけど朝早起きした。
ご飯を食べて身支度を整える。
服装もちょっと背伸びしたのを買ってみた。
そしてその時を待ちわびる。
インターホンが鳴った。
バッグを取って玄関に向かう。
朝倉先生が親と挨拶をしていた。
私に気付くと挨拶してくれる。
服装については何も言ってくれなかった。
もちろん化粧をしている事にも。
少しは褒めて欲しかったのに。
親と話が済むと家を出て先生の車に乗り込む。
先生の車は白いセダン。
別にタイヤが変な角度になっていたり車高が極端に低かったりはしない。
ごく普通のセダン。
内装も購入当初から装備してある物らしくて一体化してた。
シートも座り心地が良い。
シートベルトを締めると車はゆっくりと走り出す。
今日はドライブデート。
普通の高校生では絶対にありえないデートだ。
車をしばらく走らせると先生が突然言った。
「今日は随分お洒落してきたんだな。似合ってるよ」
気づいててくれたんだ。
嬉しかった。
車は無理に飛ばす事もなく軽快に走行していた。
ポップな音楽をBGMに私達のトークも弾む。
お昼になると適当なレストランに寄って食べる。
適当と言ったけど実は最初から予定してたと昼食を食べながら聞いた。
先生が勧めるだけあって美味しい。
そして車はまた走り出す。
静かなエンジン音だった。
足下や天井にゆとりがありゆったりと乗っていられる。
両親に夕食は食べて帰ると伝えてある。
ただし22時には帰る。
先生がそう約束した。
ちなみに先生を呼ぶ時は先生とは言わない
「瑛一さん」
そう呼んでいる。
私達の交際は世間では良く思わない人の方が多い。
だから教職という立場を隠す必要がある。
そのかわり先生も「美穂」と呼んでくれる。
もちろん学校内では「大垣」だけど。
先生はなるべく混まなくて景色の良い道を選んでくれていたが夕暮れ時になって地元に帰るとなるとどうしても渋滞に巻き込まれる。
その代わり話が弾む。
地元に帰りつく頃には夜になっていた。
夕食の店も探しておいてくれたらしい。
料理を食べると店を出て家に帰る。
私の家に着くと車は止まる。
「こんなデートで良かったのか?」
先生が聞いてきた。
「どうせこの時期どこ行っても混んでるでしょ?別に今行く必要ないし」
「それはドライブだって同じじゃないのか?」
「一度経験してみたかったから。彼の運転でドライブっていうやつ」
「こんな車で悪かったな」
「全然平気。私この車気に入ったよ」
「とりあえず家に行こうか?」
エンジンを切って車を降りると私達は家に入る。
先生は両親に挨拶して途中で買ったお土産を渡している。
「今度からこういうのは要らない。朝倉さんの事は認めたんだ。余計な気を使わないでくれ」
父さんがそう言っていた。
「じゃあ、美穂。またな」
そう言って車に乗って家に帰る先生を見送る。
風呂に入って部屋に戻るとメッセージがあった。
「今日は楽しかったよ。ありがとう」
礼を言うのはこっちの方なのに。
それからしばらくメッセージをやり取りしてた。
「約束だからな。残りの連休はしっかり勉強しろよ」
先生は教師に戻っていた。
「は~い。今日は疲れたから寝ます。おやすみなさい」
「しょうがない奴だな。おやすみ」
スマホを置くと私はベッドに入る。
先生との初めてのデートはこんな感じだった。
これからもこんな感じで思い出を重ねていくのだろう。
次は夏休みかな?
でも暇な休日にも誘って欲しい。
どこに行くかな?
水族館行ってみたいな?
色々考えていたら寝たのは0時過ぎだった。
(3)
僕と水奈は映画を観に来ていた。
内容は退屈しないものを選んだ結果鉄板の作品を選んだ。
相変わらずCGが凄い。
だけどそれだけ。
それだけだけど凄い。
ストーリー重視の人にはお勧めしない。
映画を観終わると適当なレストランに入る。
連休中という事もあってどこも満席だ。
だからどこでもいいやとなった。
順番待ちしながら水奈と話をする。
どうでもいい事を話す。
映画の感想?
「すごかったね」
それしかなかった。
昼食を食べ終えると買い物が始まる。
水奈は時間をかけて服を選ぶ。
まだ5月だというのに夏服を選ぶ。
さすがに気が早いんじゃないのかと思ってしまった。
水奈に聞いてみると笑っていた。
「分かってないな、空は」
水奈の解説が始まった。
服は大体2~3か月前から売られる。
今から夏服を買うのでは遅いくらいだ。
そして流行りの服は無くなって売れ残った服が後でバーゲンで売られる。
だからこれと決めた服を1、2着選んで買っておいてバーゲンセールが始まったら大量に買えば良い。
その時にはすでに次の季節の服が売られているんだけど。
でもそんな事はあまり関係ない。
純粋に恋人との買い物を楽しみたいだけ。
欲しいのが無くてもいい。
買い物という行為が楽しいんだ。
その楽しさを僕と共有したい。
現に水奈は今楽しそうだ。
そう言う事ならと僕も水奈と買い物を楽しむことにした。
水奈はありとあらゆるジャンルの服を着こなす。
それでもスカートやワンピースを選ぶ。
それは僕の好みに合わせての事。
上は半そでやタンクトップ、肩を露出した物を着る。
「日焼けとか気にしないの?」
「日焼け止め塗るから大丈夫」
まあ、日焼けした水奈も綺麗だけど。
後は僕の服を見て回ってそして水奈の靴を見に行く。
毎夏サンダルを履いている。
流石に通学はちゃんと規定の靴を履いていくけど。
ちなみに僕は年中おなじスニーカーを履いている。
ちゃんとれっきとしたブランド物のスニーカーだ。
通学にも私服にも使える優れもの。
「足むれないの?」
「最近のは通気性あるから大丈夫だよ」
「臭いとか汚れは気にしないわけ?」
「気にしたことない」
「せめてもう2足くらい買おう?」
そうして2足靴を買った。
スエードシューズとブーツ。
そうなると当然着る服も気になってくる。
だけど今日は靴代とさっき買った服のお金でもう一杯だ。
どうせスエードシューズなんてまだ当分履かないし今買わなくてもいいんじゃないか。
水奈は納得してくれたようだ。
買い物が済むとコーヒーショップでコーヒーを飲む。
靴買わせてしまったからと水奈が奢ってくれた。
帰って母さんに小遣いを要求する。
理由もちゃんと伝える。
「普段からちゃんとお洒落に気を使わないからこうなるんですよ」
無駄遣いをするなとは言わない。
水奈と遊ぶ必要経費だと母さんは考えているようだ。
すると天音が嗅ぎ付けてくる。
「空だけずりーぞ!私にもくれよ愛莉!」
「天音はまだ今月あげたばかりでしょ!」
「空だって一緒じゃねーか!」
「天音はどうして小遣いが足りないのですか?」
「私だって服とか色々欲しいぞ」
「天音は大地に買ってもらってるんじゃないの?」
僕が天音に聞いていた。
天音の服やアクセサリ、靴とかデート代は全て大地が支払っている。
街までも移動だって大地に送ってもらうか自分でバスで行くかだ。
その交通費も定期があるから自腹を切ることはない。
天音が自分の財布をつかうのは登下校の途中遊んだり買い食いしたリするだけだ。
ちなみに小遣いは月頭にもらう。
今月は連休があるため天音が小遣いを使うとしたら一人で買い物に行くくらいだ。
そんな事を3,4日続けただけで無くなるような額をもらっていない。
僕達は服や靴などを自分の小遣いで買う。
だけど僕が服を買うのは水奈に恥をかかせないように。
だから小遣いの請求が出来る。
むしろ「空は冬夜さんに似てファッションに無頓着過ぎです!」と怒られるくらいだ。
ちなみにゲームとかは自分で買わない。
買う必要がない。
「ただいま」
父さんが帰って来た。
「あ、空ちょうどよかった。ほら、これ」
父さんがビニール袋を僕に差し出す。
中味は何となく想像がつく。
だってそれはゲームソフトを売ってる店の袋だったから。
「空が終わったら天音や冬吾に渡しなさい」
シリーズの最新ものだ。
こんな感じで父さんが気になるタイトルの物は買ってくる。
「冬夜さん!また勝手に買ってきて。何度言ったら分かってもらえるんですか!」
母さんに怒られる。
ここまではいつも通りの光景だった。
「どうせ、空は水奈の相手してるんだろ?私が先にやらせてもらう」
天音がそう言って僕からソフトを奪って部屋に行く。
そんな天音を父さんが呼び止める。
「天音、明日は予定空いてるか?」
「空いてるけどなんかあるの?」
「せっかくの連休だから皆で遊びに行かないか?」
「どこに行くの?」
「サファリパークにでもたまには行ってみようかって相談してるんだけど」
あんまりご馳走はなさそうだ。
まあ、あまり行ったことがない場所だしたまにはいいか。
冬吾や冬莉も行ったことが無いので楽しみにしてる。
天音も行くことになった。
夕食を食べながら冬吾や冬莉がサファリパークについて父さんに質問している。
でっかい動物園。
多分それが分かりやすい説明だろう。
あとは行ってからのお楽しみ。
父さんはそう言った。
夕食が済むと風呂に入って部屋でくつろぐ。
テレビを見ながらスマホを触ってた。
明日が楽しみだと話をしながらテレビを見てた。
ドラマが終ると明日に備えて早めに寝た。
(4)
連休は梨々香の家で過ごしていた。
今日は梨々香と映画を観に来てた。
探偵アニメの映画版。
茜はもう見たそうだ。
ならピンバッジは買わなくてもいいな。
映画が終ると3階のフードコートで昼食にする。
梨々香はフライドチキン。
僕はラーメンを買った。
「それだけで足りるの?」
「これだけじゃないから」
梨々香はそう返事して微笑む。
この後どこに行くんだろう?
そういえば洋菓子がどうとか言ってたな。
昼食を終えると洋服屋さんや雑貨屋さんによる。
洋服と言ってもブランドものじゃない。
安い量販店だ。
僕も梨々香もそこで買う。
もっと安い店も近所にあるから利用する。
僕達は中学生だ。
自分でお金を稼いでるわけじゃない。
小遣いでやりくりしてるんだから分相応にあった物を買ってる。
たまにおじさん達が買ってくれるのでそれに合わせて服等を買ってる。
選ぶのは梨々香と相談して買ったり。
ただし足下だけはしっかりした靴を買っている。
「足元だけはきちんとしておきなさい」
りえちゃんが言ってた。
だから何足かスニーカーを買って順番に使ってる。
それが靴を長持ちさせる秘訣らしい。
もちろんお出かけ用の靴はそんなに持ってない。
通学用の学校の校則に合わせた靴を何足かもっている。
生徒会が先生と交渉したらしく、白を基調とした運動靴ならいいと校則が改正された。
ブランド名のロゴが入っていたり、ラインが入ってる程度は良しとなっているけどやはり白い運動靴に変わりない。
ずっと同じ靴を使用していると汚れが目立ってくる。
たとえどんなに服やズボンでお洒落していても靴の汚れが目立ったら台無しになる。
あとは自分の感性次第。
どんなにブランドで全身固めたところで着こなせてなかったら意味がない。
ようやく自分で着る服を選びだす年頃だ。
わざわざ高い金を出して実験する必要を感じなかった。
服や雑貨をみて靴も見て何も買わずに下に降りる。
ただの時間つぶしだった。
そして梨々香のご希望の店に行く。
洋菓子っていうんだろうか?
ケーキってつくんだから菓子なんだろうな。
僕達はパンケーキの専門店にやってきた。
パンって言うくらいだからパンなんじゃないのか?と悩んだけどケーキだから洋菓子なんだそうだ。
あまり難しく考えるのは止めよう。
列にならんでた。
たかがパンケーキになんでこんなに並ぶんだ?
東京とかでも並ぶらしいと梨々香が言ってた。
ようやく席に着くとメニューをみる。
僕が知っているパンケーキとは全く違うものがあった。
その特殊なパンケーキにリンゴとシナモンをふんだんに乗せているものがある。
さっき食べたラーメンに替え玉つけてもおつりがくる値段だった。
梨々香は躊躇うことなくそれとオレンジジュースを選んだ。
女子って生き物に脅威を感じる瞬間だった。
「ホイップクリームとバニラアイストッピングで」
まて、落ち着け。僕がおかしいのかもしれない。
「純也も早く決めなよ」
梨々香が急かす。
無難にいたって普通のパンケーキとコーヒーを注文した。
トッピングは無しで。
メニューを見て呆然としてた。
写真はイメージです。と一言注意書きが欲しかった。
パンケーキ4枚。
おやつにしてはヘビーじゃないか?
天音なら喜んで食べそうだけど。
驚くのはそれだけじゃなかった。
ラーメンにトッピング乗せてもおつりが出そうなフレンチトーストがあった。
写真を見る限り普通のフレンチトーストだった。
僕の金銭感覚が狂ってるのだろうか?
たった一日100円でって寄付のCMがあったが日本では目玉焼きを食うのに200円かかるらしいぞ。
そして注文が来る。
イメージ通りの大きさのパンケーキが4枚あった。
梨々香のもなんか凄い事になってる。
「美味しそう~♪」
女子的にはそう見えるんだろうな。
とりあえず食べる。
美味しかった。
当たり前だけど前にりえちゃんが作ってくれたパンケーキよりは美味しかった。
当然だろう。
これで不味かったら天音なら暴動起こすぞ。
そして食べ終わると店を出る。
時間的には夕食の頃合いだけど……。
「せっかくだから夕食食べて帰ろうよ」
梨々香ってそんなに大食いだったっけ?
「今さっきパンケーキ食ったばかりだよ?」
「あれはデザート」
デザートは別腹なんだよと言って梨々香は微笑む。
「なにがいいかな~?」
食わないとだめだろうな。
梨々香より小食なんて真似できないよな。
覚悟して食うしかないのか。
そして梨々香はよりによってすごい店を選んだ。
「昼ご飯ちょっと控えめにしてたからその分食べようかな?」
僕は昼にラーメン食べたんだけど?
ていうかさっきパンケーキ食ったばかりだよ?
そんな僕の言い分は胸のうちにしまっておいて梨々香の希望する店に入った。
焼肉のお店。
ハンバーグとかもある。
何故かもつ鍋もある。
正直ピザでいいやと思ったけど梨々香はステーキを選んだ。
「純也何食べる?」
メニューを見る、一番あっさりしたものを。
しかしこの店は容赦なかった。
サラダにすら牛肉が乗ってある。
それを見た梨々香は勘違いしたようだ。
「純也もお腹空いてるんだね。サラダも食べるんだ。メインはどれにするの?」
僕はもう一品選ばないといけないらしい。
「……牛タン一つ」
「ご注文は以上でいいですか?」
店員が聞く。
悪夢はまだ続く。
「デニッシュハニーブレッドラズベリー一つ。純也はデザートどうする?」
待て。さっきデザートを食ったばかりなのにまだデザートを食うのか?
梨々香も天音も大差ない気がしてきた。
2人ともよくその体形維持できてるな。
「……アイスクリーム下さい」
これ以上は限界だ。お願いだから戻ってくれ店員。
「以上でお願いします」
梨々香は満足したようだ。
そして注文が来た。
しっかりご飯とスープもついていた。
躊躇いもなく食べる梨々香。
僕も食べ始める。
こういうデートの場合女性よりも早く食べ終わったらいけないらしい。
逆じゃなくてよかった。
無理矢理食べればいいってもんじゃない。
楽しく食べなきゃいけない。
梨々香に不安を与えてはいけない。
まさか連休にこんな罠が待っていたとは……。
なんとかアイスまで無事に食べ終えた。
あとは帰るだけ。
「さすがにお腹いっぱいだね」
梨々香は平然と言う。
僕の胃袋は限界突破してるよ。
それからバスに乗って家に帰る。
家に帰ると風呂に入る。
風呂に入ると部屋でテレビを見る。
明日で終わりなんだな。
明日は何をしようかな?
そんな事を考えていると電話が鳴る。
天音からだ。
「もしもし」
「お前ら明日予定空いてるか?」
「特に何も無いけど?」
「明日サファリパークに連れて行ってくれるってさ梨々香も一緒でいいって」
梨々香にその事を伝えると梨々香は「わかった」と言った。
「いいよ」
「じゃあ、明日朝早いから早く寝とけ」
「わかった」
電話を切ると梨々香に伝える。
「明日早いから早く寝ろってさ」
「じゃあ、早く寝よっか」
梨々香がそう言うと僕はテレビを切ってベッドに入って照明を落とす。
お腹いっぱいだったせいかすぐに眠れた。
明日の朝は抜きでもいいよな?
だけど、朝目が覚めたら梨々香が朝食を作ってくれていた。
チャイムが鳴ると皆シャーペンを机に置く。
列の最後尾の者が解答用紙を集めていく。
「おつかれ、どうだった?」
「わかんない、一応全部埋めることはできたけど」
「帰りにラーメンでも食っていくか?」
「水奈を待たせてるからいいよ」
そんなやりとりを学としていた。
人生初めての模試。
高校受験への最初の階段。
結果次第では志望校の変更を余儀なくされる。
より確実な道を選ばなければならない。
水奈に余計な気を使わせたくないから、成績は良い方が良い。
そんな事を考えながら昇降口に行くと水奈が待っていた。
「模試だったんだろ?お疲れ」
「ああ、ありがとう」
「……あんまりよくなかったのか?」
「そんな事無いよ大丈夫」
「ならいいんだけど」
早速変な気を使わせてしまった。
難しいな。
そんな僕の顔を見て水奈は言った。
「たまには寄り道していかないか?」
「寄り道?」
「今日は空もお疲れ様って事で特別に」
「……ありがとう」
そして僕達はお好み焼き屋さんに寄っていた。
僕達はお好み焼きを焼いて食べていた。
お好み焼きを食べた後翼は店員にもんじゃ焼きを注文する。
店員が具材を持ってくると水奈が僕に「空が焼いて」と僕に渡す。
僕はもんじゃを焼く。
それを水奈は楽しそうに見てる。
出汁を流して混ぜ合わせる頃水奈が言った。
「空はこういうの似合ってるよな。私一度体験してみたかったんだ。彼氏にお好み焼きとか焼いてもらうの」
「なるほどね」
「空は私にいつも言ってるじゃないか。変に力み過ぎるな。緊張してたら本番ミスるぞって
「大丈夫。空は頑張ってるんだから必ずいい結果が出るよ」
「普通は不安になるものだと思うけど」
「それは結果が出てから考える事だよ。空は一生懸命模試に備えて頑張って来た。だから今日は忘れて一緒にもんじゃつつこう?」
水奈はそう言ってもんじゃを食べだした。
「私一人じゃ食べきれないぞ?」
水奈はそう言って笑う。
水奈なりの気遣いなんだろうな。
水奈は自分が足かせになってると不安になってるんだ。
不安にさせていたら元も子もない。
「今日は勉強の事はわすれようか」
「ああ、たまには私と遊んでくれ」
店員を呼んでとんぺい焼きと高菜チャーハンを注文する。
「そんなに食って大丈夫なのか!?」
「連休は遊びに行こうか?どこがいい?」
「連休だとどこも混んでるから家でもいいけどあのド変態も休みだしな。……じゃあ、ショッピングモールに映画でも観に行こうか」
連休の予定を2人で考えながら、ふたりでもんじゃをつついてそして帰った。
家に帰ると部屋で着替えて夕食の時間までくつろぐ。
夕食の後風呂に入ると部屋でテレビを見る。
内容はあまり覚えてない。
今日は勉強はおやすみ。
気分転換につとめた。
大丈夫だろう。
いつもより早めに寝た。
後日結果が出た。
思ったよりいい結果だった。
これなら大丈夫そうだ。
「ほら、空なら大丈夫って言ったろ?」
水奈はそう言って笑う。
「じゃあ、今日は僕が奢るよ。何が良い?」
「うーん、じゃあうどんにしよう?」
「そんなのでいいの?」
「私はそんなに食べれない。それにうどんは美容にいいらしいんだ」
そんな話初めて聞いたぞ。
水奈の希望通り、帰りにうどん屋さんに寄って帰った。
母さん達に結果を伝える。
「空なら大丈夫だと思ってたよ」
父さんが言う。
「でも油断したらいけませんよ。あくまでも模試なんだから」
母さんの忠告を受ける。
そして最初の月が終り、連休が始まる。
(2)
(1)
その日は学校は休みだったけど朝早起きした。
ご飯を食べて身支度を整える。
服装もちょっと背伸びしたのを買ってみた。
そしてその時を待ちわびる。
インターホンが鳴った。
バッグを取って玄関に向かう。
朝倉先生が親と挨拶をしていた。
私に気付くと挨拶してくれる。
服装については何も言ってくれなかった。
もちろん化粧をしている事にも。
少しは褒めて欲しかったのに。
親と話が済むと家を出て先生の車に乗り込む。
先生の車は白いセダン。
別にタイヤが変な角度になっていたり車高が極端に低かったりはしない。
ごく普通のセダン。
内装も購入当初から装備してある物らしくて一体化してた。
シートも座り心地が良い。
シートベルトを締めると車はゆっくりと走り出す。
今日はドライブデート。
普通の高校生では絶対にありえないデートだ。
車をしばらく走らせると先生が突然言った。
「今日は随分お洒落してきたんだな。似合ってるよ」
気づいててくれたんだ。
嬉しかった。
車は無理に飛ばす事もなく軽快に走行していた。
ポップな音楽をBGMに私達のトークも弾む。
お昼になると適当なレストランに寄って食べる。
適当と言ったけど実は最初から予定してたと昼食を食べながら聞いた。
先生が勧めるだけあって美味しい。
そして車はまた走り出す。
静かなエンジン音だった。
足下や天井にゆとりがありゆったりと乗っていられる。
両親に夕食は食べて帰ると伝えてある。
ただし22時には帰る。
先生がそう約束した。
ちなみに先生を呼ぶ時は先生とは言わない
「瑛一さん」
そう呼んでいる。
私達の交際は世間では良く思わない人の方が多い。
だから教職という立場を隠す必要がある。
そのかわり先生も「美穂」と呼んでくれる。
もちろん学校内では「大垣」だけど。
先生はなるべく混まなくて景色の良い道を選んでくれていたが夕暮れ時になって地元に帰るとなるとどうしても渋滞に巻き込まれる。
その代わり話が弾む。
地元に帰りつく頃には夜になっていた。
夕食の店も探しておいてくれたらしい。
料理を食べると店を出て家に帰る。
私の家に着くと車は止まる。
「こんなデートで良かったのか?」
先生が聞いてきた。
「どうせこの時期どこ行っても混んでるでしょ?別に今行く必要ないし」
「それはドライブだって同じじゃないのか?」
「一度経験してみたかったから。彼の運転でドライブっていうやつ」
「こんな車で悪かったな」
「全然平気。私この車気に入ったよ」
「とりあえず家に行こうか?」
エンジンを切って車を降りると私達は家に入る。
先生は両親に挨拶して途中で買ったお土産を渡している。
「今度からこういうのは要らない。朝倉さんの事は認めたんだ。余計な気を使わないでくれ」
父さんがそう言っていた。
「じゃあ、美穂。またな」
そう言って車に乗って家に帰る先生を見送る。
風呂に入って部屋に戻るとメッセージがあった。
「今日は楽しかったよ。ありがとう」
礼を言うのはこっちの方なのに。
それからしばらくメッセージをやり取りしてた。
「約束だからな。残りの連休はしっかり勉強しろよ」
先生は教師に戻っていた。
「は~い。今日は疲れたから寝ます。おやすみなさい」
「しょうがない奴だな。おやすみ」
スマホを置くと私はベッドに入る。
先生との初めてのデートはこんな感じだった。
これからもこんな感じで思い出を重ねていくのだろう。
次は夏休みかな?
でも暇な休日にも誘って欲しい。
どこに行くかな?
水族館行ってみたいな?
色々考えていたら寝たのは0時過ぎだった。
(3)
僕と水奈は映画を観に来ていた。
内容は退屈しないものを選んだ結果鉄板の作品を選んだ。
相変わらずCGが凄い。
だけどそれだけ。
それだけだけど凄い。
ストーリー重視の人にはお勧めしない。
映画を観終わると適当なレストランに入る。
連休中という事もあってどこも満席だ。
だからどこでもいいやとなった。
順番待ちしながら水奈と話をする。
どうでもいい事を話す。
映画の感想?
「すごかったね」
それしかなかった。
昼食を食べ終えると買い物が始まる。
水奈は時間をかけて服を選ぶ。
まだ5月だというのに夏服を選ぶ。
さすがに気が早いんじゃないのかと思ってしまった。
水奈に聞いてみると笑っていた。
「分かってないな、空は」
水奈の解説が始まった。
服は大体2~3か月前から売られる。
今から夏服を買うのでは遅いくらいだ。
そして流行りの服は無くなって売れ残った服が後でバーゲンで売られる。
だからこれと決めた服を1、2着選んで買っておいてバーゲンセールが始まったら大量に買えば良い。
その時にはすでに次の季節の服が売られているんだけど。
でもそんな事はあまり関係ない。
純粋に恋人との買い物を楽しみたいだけ。
欲しいのが無くてもいい。
買い物という行為が楽しいんだ。
その楽しさを僕と共有したい。
現に水奈は今楽しそうだ。
そう言う事ならと僕も水奈と買い物を楽しむことにした。
水奈はありとあらゆるジャンルの服を着こなす。
それでもスカートやワンピースを選ぶ。
それは僕の好みに合わせての事。
上は半そでやタンクトップ、肩を露出した物を着る。
「日焼けとか気にしないの?」
「日焼け止め塗るから大丈夫」
まあ、日焼けした水奈も綺麗だけど。
後は僕の服を見て回ってそして水奈の靴を見に行く。
毎夏サンダルを履いている。
流石に通学はちゃんと規定の靴を履いていくけど。
ちなみに僕は年中おなじスニーカーを履いている。
ちゃんとれっきとしたブランド物のスニーカーだ。
通学にも私服にも使える優れもの。
「足むれないの?」
「最近のは通気性あるから大丈夫だよ」
「臭いとか汚れは気にしないわけ?」
「気にしたことない」
「せめてもう2足くらい買おう?」
そうして2足靴を買った。
スエードシューズとブーツ。
そうなると当然着る服も気になってくる。
だけど今日は靴代とさっき買った服のお金でもう一杯だ。
どうせスエードシューズなんてまだ当分履かないし今買わなくてもいいんじゃないか。
水奈は納得してくれたようだ。
買い物が済むとコーヒーショップでコーヒーを飲む。
靴買わせてしまったからと水奈が奢ってくれた。
帰って母さんに小遣いを要求する。
理由もちゃんと伝える。
「普段からちゃんとお洒落に気を使わないからこうなるんですよ」
無駄遣いをするなとは言わない。
水奈と遊ぶ必要経費だと母さんは考えているようだ。
すると天音が嗅ぎ付けてくる。
「空だけずりーぞ!私にもくれよ愛莉!」
「天音はまだ今月あげたばかりでしょ!」
「空だって一緒じゃねーか!」
「天音はどうして小遣いが足りないのですか?」
「私だって服とか色々欲しいぞ」
「天音は大地に買ってもらってるんじゃないの?」
僕が天音に聞いていた。
天音の服やアクセサリ、靴とかデート代は全て大地が支払っている。
街までも移動だって大地に送ってもらうか自分でバスで行くかだ。
その交通費も定期があるから自腹を切ることはない。
天音が自分の財布をつかうのは登下校の途中遊んだり買い食いしたリするだけだ。
ちなみに小遣いは月頭にもらう。
今月は連休があるため天音が小遣いを使うとしたら一人で買い物に行くくらいだ。
そんな事を3,4日続けただけで無くなるような額をもらっていない。
僕達は服や靴などを自分の小遣いで買う。
だけど僕が服を買うのは水奈に恥をかかせないように。
だから小遣いの請求が出来る。
むしろ「空は冬夜さんに似てファッションに無頓着過ぎです!」と怒られるくらいだ。
ちなみにゲームとかは自分で買わない。
買う必要がない。
「ただいま」
父さんが帰って来た。
「あ、空ちょうどよかった。ほら、これ」
父さんがビニール袋を僕に差し出す。
中味は何となく想像がつく。
だってそれはゲームソフトを売ってる店の袋だったから。
「空が終わったら天音や冬吾に渡しなさい」
シリーズの最新ものだ。
こんな感じで父さんが気になるタイトルの物は買ってくる。
「冬夜さん!また勝手に買ってきて。何度言ったら分かってもらえるんですか!」
母さんに怒られる。
ここまではいつも通りの光景だった。
「どうせ、空は水奈の相手してるんだろ?私が先にやらせてもらう」
天音がそう言って僕からソフトを奪って部屋に行く。
そんな天音を父さんが呼び止める。
「天音、明日は予定空いてるか?」
「空いてるけどなんかあるの?」
「せっかくの連休だから皆で遊びに行かないか?」
「どこに行くの?」
「サファリパークにでもたまには行ってみようかって相談してるんだけど」
あんまりご馳走はなさそうだ。
まあ、あまり行ったことがない場所だしたまにはいいか。
冬吾や冬莉も行ったことが無いので楽しみにしてる。
天音も行くことになった。
夕食を食べながら冬吾や冬莉がサファリパークについて父さんに質問している。
でっかい動物園。
多分それが分かりやすい説明だろう。
あとは行ってからのお楽しみ。
父さんはそう言った。
夕食が済むと風呂に入って部屋でくつろぐ。
テレビを見ながらスマホを触ってた。
明日が楽しみだと話をしながらテレビを見てた。
ドラマが終ると明日に備えて早めに寝た。
(4)
連休は梨々香の家で過ごしていた。
今日は梨々香と映画を観に来てた。
探偵アニメの映画版。
茜はもう見たそうだ。
ならピンバッジは買わなくてもいいな。
映画が終ると3階のフードコートで昼食にする。
梨々香はフライドチキン。
僕はラーメンを買った。
「それだけで足りるの?」
「これだけじゃないから」
梨々香はそう返事して微笑む。
この後どこに行くんだろう?
そういえば洋菓子がどうとか言ってたな。
昼食を終えると洋服屋さんや雑貨屋さんによる。
洋服と言ってもブランドものじゃない。
安い量販店だ。
僕も梨々香もそこで買う。
もっと安い店も近所にあるから利用する。
僕達は中学生だ。
自分でお金を稼いでるわけじゃない。
小遣いでやりくりしてるんだから分相応にあった物を買ってる。
たまにおじさん達が買ってくれるのでそれに合わせて服等を買ってる。
選ぶのは梨々香と相談して買ったり。
ただし足下だけはしっかりした靴を買っている。
「足元だけはきちんとしておきなさい」
りえちゃんが言ってた。
だから何足かスニーカーを買って順番に使ってる。
それが靴を長持ちさせる秘訣らしい。
もちろんお出かけ用の靴はそんなに持ってない。
通学用の学校の校則に合わせた靴を何足かもっている。
生徒会が先生と交渉したらしく、白を基調とした運動靴ならいいと校則が改正された。
ブランド名のロゴが入っていたり、ラインが入ってる程度は良しとなっているけどやはり白い運動靴に変わりない。
ずっと同じ靴を使用していると汚れが目立ってくる。
たとえどんなに服やズボンでお洒落していても靴の汚れが目立ったら台無しになる。
あとは自分の感性次第。
どんなにブランドで全身固めたところで着こなせてなかったら意味がない。
ようやく自分で着る服を選びだす年頃だ。
わざわざ高い金を出して実験する必要を感じなかった。
服や雑貨をみて靴も見て何も買わずに下に降りる。
ただの時間つぶしだった。
そして梨々香のご希望の店に行く。
洋菓子っていうんだろうか?
ケーキってつくんだから菓子なんだろうな。
僕達はパンケーキの専門店にやってきた。
パンって言うくらいだからパンなんじゃないのか?と悩んだけどケーキだから洋菓子なんだそうだ。
あまり難しく考えるのは止めよう。
列にならんでた。
たかがパンケーキになんでこんなに並ぶんだ?
東京とかでも並ぶらしいと梨々香が言ってた。
ようやく席に着くとメニューをみる。
僕が知っているパンケーキとは全く違うものがあった。
その特殊なパンケーキにリンゴとシナモンをふんだんに乗せているものがある。
さっき食べたラーメンに替え玉つけてもおつりがくる値段だった。
梨々香は躊躇うことなくそれとオレンジジュースを選んだ。
女子って生き物に脅威を感じる瞬間だった。
「ホイップクリームとバニラアイストッピングで」
まて、落ち着け。僕がおかしいのかもしれない。
「純也も早く決めなよ」
梨々香が急かす。
無難にいたって普通のパンケーキとコーヒーを注文した。
トッピングは無しで。
メニューを見て呆然としてた。
写真はイメージです。と一言注意書きが欲しかった。
パンケーキ4枚。
おやつにしてはヘビーじゃないか?
天音なら喜んで食べそうだけど。
驚くのはそれだけじゃなかった。
ラーメンにトッピング乗せてもおつりが出そうなフレンチトーストがあった。
写真を見る限り普通のフレンチトーストだった。
僕の金銭感覚が狂ってるのだろうか?
たった一日100円でって寄付のCMがあったが日本では目玉焼きを食うのに200円かかるらしいぞ。
そして注文が来る。
イメージ通りの大きさのパンケーキが4枚あった。
梨々香のもなんか凄い事になってる。
「美味しそう~♪」
女子的にはそう見えるんだろうな。
とりあえず食べる。
美味しかった。
当たり前だけど前にりえちゃんが作ってくれたパンケーキよりは美味しかった。
当然だろう。
これで不味かったら天音なら暴動起こすぞ。
そして食べ終わると店を出る。
時間的には夕食の頃合いだけど……。
「せっかくだから夕食食べて帰ろうよ」
梨々香ってそんなに大食いだったっけ?
「今さっきパンケーキ食ったばかりだよ?」
「あれはデザート」
デザートは別腹なんだよと言って梨々香は微笑む。
「なにがいいかな~?」
食わないとだめだろうな。
梨々香より小食なんて真似できないよな。
覚悟して食うしかないのか。
そして梨々香はよりによってすごい店を選んだ。
「昼ご飯ちょっと控えめにしてたからその分食べようかな?」
僕は昼にラーメン食べたんだけど?
ていうかさっきパンケーキ食ったばかりだよ?
そんな僕の言い分は胸のうちにしまっておいて梨々香の希望する店に入った。
焼肉のお店。
ハンバーグとかもある。
何故かもつ鍋もある。
正直ピザでいいやと思ったけど梨々香はステーキを選んだ。
「純也何食べる?」
メニューを見る、一番あっさりしたものを。
しかしこの店は容赦なかった。
サラダにすら牛肉が乗ってある。
それを見た梨々香は勘違いしたようだ。
「純也もお腹空いてるんだね。サラダも食べるんだ。メインはどれにするの?」
僕はもう一品選ばないといけないらしい。
「……牛タン一つ」
「ご注文は以上でいいですか?」
店員が聞く。
悪夢はまだ続く。
「デニッシュハニーブレッドラズベリー一つ。純也はデザートどうする?」
待て。さっきデザートを食ったばかりなのにまだデザートを食うのか?
梨々香も天音も大差ない気がしてきた。
2人ともよくその体形維持できてるな。
「……アイスクリーム下さい」
これ以上は限界だ。お願いだから戻ってくれ店員。
「以上でお願いします」
梨々香は満足したようだ。
そして注文が来た。
しっかりご飯とスープもついていた。
躊躇いもなく食べる梨々香。
僕も食べ始める。
こういうデートの場合女性よりも早く食べ終わったらいけないらしい。
逆じゃなくてよかった。
無理矢理食べればいいってもんじゃない。
楽しく食べなきゃいけない。
梨々香に不安を与えてはいけない。
まさか連休にこんな罠が待っていたとは……。
なんとかアイスまで無事に食べ終えた。
あとは帰るだけ。
「さすがにお腹いっぱいだね」
梨々香は平然と言う。
僕の胃袋は限界突破してるよ。
それからバスに乗って家に帰る。
家に帰ると風呂に入る。
風呂に入ると部屋でテレビを見る。
明日で終わりなんだな。
明日は何をしようかな?
そんな事を考えていると電話が鳴る。
天音からだ。
「もしもし」
「お前ら明日予定空いてるか?」
「特に何も無いけど?」
「明日サファリパークに連れて行ってくれるってさ梨々香も一緒でいいって」
梨々香にその事を伝えると梨々香は「わかった」と言った。
「いいよ」
「じゃあ、明日朝早いから早く寝とけ」
「わかった」
電話を切ると梨々香に伝える。
「明日早いから早く寝ろってさ」
「じゃあ、早く寝よっか」
梨々香がそう言うと僕はテレビを切ってベッドに入って照明を落とす。
お腹いっぱいだったせいかすぐに眠れた。
明日の朝は抜きでもいいよな?
だけど、朝目が覚めたら梨々香が朝食を作ってくれていた。
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