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頼りになる人
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「ただいま」
「おお、成行。元気にしとった?」
玄関を開けると母さんが出てきた。
母さんが俺の隣にいる冬莉を見ているのに気づいたので冬莉を紹介した。
「ああ、今付き合ってる彼女。片桐冬莉さん」
「成行さんと今お付き合いさせていただいてる片桐冬莉と申します。はじめまして」
冬莉はそう言って頭を下げる。
母さんは驚いていた。
「ま、まあ。ここでは何でしょうからどうぞ上がって」
「お邪魔します」
「荷物は冬莉の部屋でいいかい?」
「俺は別にいいけど」
同棲してるのに今さらだ。
冬莉も大人しく俺についてきた。
部屋には大して物がない。
ベッドと机とテレビくらいだ。
冬莉に適当なところに荷物を置くように言うと、俺達は1階の居間に向かう。
今には両親と弟の慊人とその妻琴音さんがいた。
琴音さんは既にかなり飲んでいる様だ。
「よお、兄貴。彼女連れて来るって聞いたから見に来たんだけど、凄い美人じゃん」
慊人は俺に女に興味がないんじゃないかと疑っていたらしいが、それはこっちのセリフだ。
小学校中学校と一緒に遊んでいたがどっちかというと慊人の方が女に興味が内容に思えた。
それが突然彼女と暮らしてると言いだして「お前んち市役所近いから婚姻届とってきてくんない?」と友人の高橋にメッセージを送ったらしい。
親よりも先に俺の友人に結婚の報告?をする慊人。
それから共働きをしながら実家の近くで暮らしているそうだ。
慊人の浪費癖は父親に似たらしい。
前に家に遊びに行った時、スロットの台があった時は流石に驚いた。
「ありがとうございます。でもそちらの奥さんにはかないません」
「ありがとう。えーと……冬莉だっけ?あんたも一杯やりなよ」
冬莉に酒を勧める琴音さん。
冬莉は迷うことなくそれを受け取って飲んでいた。
「で、2人はどうして付き合いだしたの?」
琴音さんが冬莉に質問していた。
「私が一目惚れしました」
躊躇うことなく冬莉が答える。
「兄貴のどこに惚れたの?」
慊人が聞くと冬莉はくすっと笑って答えた。
「私にまったく興味を示してくれないところかな。そんな男性初めてだったから」
褒められてるのかけなされてるのか分からないが冬莉はそう言うと慊人は笑った。
「兄貴は相変わらずなんだな。ゲームで恋人作ってる場合じゃないだろ」
「え?」
慊人が余計な事を言って、冬莉がそれに反応する。
そして冬莉は俺を見て尋ねて来た。
「ナリ。私が初めての恋人だって言ってたような気がしたけど?」
「……嘘はついてないよ」
「じゃあ、どうして教えてくれなかったの?私初耳だけど?」
それは言いたくなかったから。
思い出したくもなかったから。
しかし慊人は勝手に暴露する。
「兄貴のやつ東京まで行ってフラれたんだぜ」
「東京?」
ネットゲームをやりこんでるのは主に首都圏に多い。
首都圏に人口が密集してるから当然だ。
そしてオフ会をする。
ネットゲームの中では仲良くやっていた子がいた。
綺麗な子だった。
そして夜飲んでる時に2人で話をしていた。
「ねえ、大学どこ出たの?」
「あ、俺高卒なんだ」
「嘘……」
それから彼女の態度は一変した。
俺の隣にいた彼女は違う席に行って戻って来る事は無かった。
後日ゲームの中で結婚していた彼女は勝手に離婚していた。
そんな話ならいくらでもある。
「私はよくても、私の親戚はみんな学校の校長とかだから宮成君が肩見せまい思いするだけだよ」
そう言ってフラれた事もある。
さすがに落ち込んだ。
高卒で一緒に就職した同期のやつと話したことがある。
「どうせいつかは社会人になるんだからもう少し学生生活楽しむべきだったな」
うちの場合は大学に進学することを許されなかったから実業系の高校に進学した。
理由は財政的な問題。
俺は高校を出れただけまだいい。
慊人は高校受験を失敗した。
浪人なんて許される家ではなかった。
慊人は中卒で就職した。
それでも必死に資格を取って、仕事をしている。
そしてそんな真っ直ぐな慊人の前に琴音さんが現れた。
学歴がないから彼女が出来ないなんて言い訳は完全に否定された。
俺自身の問題なんだ。
俺には一生彼女が出来ない。
そう思っていたのに今は冬莉が隣にいる。
冬莉はそんな話を静かに聞いていた。
すると今度は父さんが言う。
「向こうの親にも挨拶したんだろ?もうそういう方向で話が進んでいるのか?」
どういう方向だ。
「だあ!兄貴相変わらず鈍いな。彼女が自分の親に紹介したんだぞ。行きつくところは一つしかないだろ!」
慊人はそう言うが話が全く分からない。
「私はそのつもりなんだけど、そういうのってナリの方から決断してほしいから待ってるつもりです」
俺は何を決断したらいいんだ?
「本当に鈍いんだね」
冬莉は俺の顔を見てにこりと笑う。
「他にナリの事教えてもらえませんか?私の知らないナリを知りたい」
「ああ、いいよ。あれは小4の時だったかな……」
慊人も多少は飲んでいたんだろう。
俺の黒歴史を余すことなく暴露する。
夕飯も食べて風呂に入ってそれからしばらくして部屋に戻ってベッドに入る。
最近冬莉と同じベッドで寝る事に抵抗が無かった。
いつも通りに横になると冬莉が抱きついてくる。
こんな状況でも何もしないのが魔法使いの特徴だ。
いつもの事だった。
「ナリ、今日機嫌悪い?」
「どうして?」
「だって、ナリ今日あまり話してないから」
なるほどね……。
「大丈夫だよ。心配しないで」
そう言って冬莉の頭を撫でてやる。
「やっぱり昔の事蒸し返されたら嫌だよね。ごめん、私の調子に乗り過ぎたみたい」
「そうじゃないんだ」
「じゃあ、どうしたの?」
いつもと様子が違うと冬莉は思ったらしい。
そんな冬莉に優しく説明してやる。
「まず、冬莉に彼女はいなかったと嘘をついたかなって心配してた事」
「でも話を聞いてたら彼女でもなんでもなかった」
「その理由が原因なんだ」
「え?」
冬莉の家も大層な経歴を持つ人たちばかり。
凡人以下の俺がそんな家の娘と結婚したらやっぱり肩身が狭いんじゃないだろうか?
「せめて年収1000万は欲しい」
地元でどんな職種に就いたら手に入れられるんだ?
冬莉も本当はもっと高収入の人と結婚したいんじゃないだろうか?
慊人の例もあるけど、慊人はその人柄の良さがフォローしている。
それに引き換え俺は何を持っている?
大人になって思い知る。
もっと勉強すればよかった。
それを思い知る時には大抵遅い。
恋愛と結婚は別。
「いずれ別れるのだから」
最後に東京の子から聞いた言葉を思い出していた。
それを聞いた冬莉は俺のおでこをデコピンする。
「ナリの悪い癖だよ」
すぐに自虐的になる。
自信過剰な人は嫌いだけど、俺にはもう少し自信を持って欲しいと冬莉は言った。
「ナリは何も持ってないと言ったけど、そんなことないよ」
現に冬莉の支えになっている。
そうなのか?
「ナリが出張に行ってる間心細かった。また離れていくんじゃないかって不安だった。だけど帰ってきてくれた時ほっとした」
今の冬莉には俺がいないとだめなんだと実感したらしい。
「それじゃダメなの?それだけでも私にとっては大切な人だし、誇りに思える人だよ?」
俺に出会う前はモノトーンだった冬莉の世界に色をつけてくれた人だと冬莉は言う。
「俺にとっても冬莉は俺の人生を明るくしてくれた」
「お互い出会えてよかった。それが運命なんだよ」
「冬莉の言う通りかもしれないな」
「うん、だからもう自分を卑下するのは止めにして。私にとって頼りになる人なんだから」
「わかった。じゃあ寝ようか?」
「このシチュエーションで何もせずに寝れるのはナリだけだよ」
冬莉はそう言って笑顔を見せた。
やっぱりここは抱きしめた方が良いのだろうか。
抱き締めて来たのは冬莉の方だった。
「言ったはずだよ。ナリのペースに合わせるって」
「ごめん」
「本当に結婚初夜になりそうだね」
「冬莉の中では結婚は決まってるのか?」
「あれ?ナリは他の人と結婚する気なの?」
どうせ結婚できないのだから。
これまで何度も言われてきた言葉。
なのに、冬莉はそんな俺と結婚する気でいてくれる。
「……もう少し時間をくれないか?」
「いいけど、出産にはリミットあるんだからね」
とりあえず今日はこれで我慢しよう。
冬莉を抱きしめてキスを重ねる。
冬莉はそのまま俺の胸に顔を寄せて眠ってしまった。
本当に俺を頼ってくれてるんだな。
そんな冬莉に俺も応えてやらないといけない。
今は冬莉をやさしく包んで眠ることにした。
「おお、成行。元気にしとった?」
玄関を開けると母さんが出てきた。
母さんが俺の隣にいる冬莉を見ているのに気づいたので冬莉を紹介した。
「ああ、今付き合ってる彼女。片桐冬莉さん」
「成行さんと今お付き合いさせていただいてる片桐冬莉と申します。はじめまして」
冬莉はそう言って頭を下げる。
母さんは驚いていた。
「ま、まあ。ここでは何でしょうからどうぞ上がって」
「お邪魔します」
「荷物は冬莉の部屋でいいかい?」
「俺は別にいいけど」
同棲してるのに今さらだ。
冬莉も大人しく俺についてきた。
部屋には大して物がない。
ベッドと机とテレビくらいだ。
冬莉に適当なところに荷物を置くように言うと、俺達は1階の居間に向かう。
今には両親と弟の慊人とその妻琴音さんがいた。
琴音さんは既にかなり飲んでいる様だ。
「よお、兄貴。彼女連れて来るって聞いたから見に来たんだけど、凄い美人じゃん」
慊人は俺に女に興味がないんじゃないかと疑っていたらしいが、それはこっちのセリフだ。
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それが突然彼女と暮らしてると言いだして「お前んち市役所近いから婚姻届とってきてくんない?」と友人の高橋にメッセージを送ったらしい。
親よりも先に俺の友人に結婚の報告?をする慊人。
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慊人の浪費癖は父親に似たらしい。
前に家に遊びに行った時、スロットの台があった時は流石に驚いた。
「ありがとうございます。でもそちらの奥さんにはかないません」
「ありがとう。えーと……冬莉だっけ?あんたも一杯やりなよ」
冬莉に酒を勧める琴音さん。
冬莉は迷うことなくそれを受け取って飲んでいた。
「で、2人はどうして付き合いだしたの?」
琴音さんが冬莉に質問していた。
「私が一目惚れしました」
躊躇うことなく冬莉が答える。
「兄貴のどこに惚れたの?」
慊人が聞くと冬莉はくすっと笑って答えた。
「私にまったく興味を示してくれないところかな。そんな男性初めてだったから」
褒められてるのかけなされてるのか分からないが冬莉はそう言うと慊人は笑った。
「兄貴は相変わらずなんだな。ゲームで恋人作ってる場合じゃないだろ」
「え?」
慊人が余計な事を言って、冬莉がそれに反応する。
そして冬莉は俺を見て尋ねて来た。
「ナリ。私が初めての恋人だって言ってたような気がしたけど?」
「……嘘はついてないよ」
「じゃあ、どうして教えてくれなかったの?私初耳だけど?」
それは言いたくなかったから。
思い出したくもなかったから。
しかし慊人は勝手に暴露する。
「兄貴のやつ東京まで行ってフラれたんだぜ」
「東京?」
ネットゲームをやりこんでるのは主に首都圏に多い。
首都圏に人口が密集してるから当然だ。
そしてオフ会をする。
ネットゲームの中では仲良くやっていた子がいた。
綺麗な子だった。
そして夜飲んでる時に2人で話をしていた。
「ねえ、大学どこ出たの?」
「あ、俺高卒なんだ」
「嘘……」
それから彼女の態度は一変した。
俺の隣にいた彼女は違う席に行って戻って来る事は無かった。
後日ゲームの中で結婚していた彼女は勝手に離婚していた。
そんな話ならいくらでもある。
「私はよくても、私の親戚はみんな学校の校長とかだから宮成君が肩見せまい思いするだけだよ」
そう言ってフラれた事もある。
さすがに落ち込んだ。
高卒で一緒に就職した同期のやつと話したことがある。
「どうせいつかは社会人になるんだからもう少し学生生活楽しむべきだったな」
うちの場合は大学に進学することを許されなかったから実業系の高校に進学した。
理由は財政的な問題。
俺は高校を出れただけまだいい。
慊人は高校受験を失敗した。
浪人なんて許される家ではなかった。
慊人は中卒で就職した。
それでも必死に資格を取って、仕事をしている。
そしてそんな真っ直ぐな慊人の前に琴音さんが現れた。
学歴がないから彼女が出来ないなんて言い訳は完全に否定された。
俺自身の問題なんだ。
俺には一生彼女が出来ない。
そう思っていたのに今は冬莉が隣にいる。
冬莉はそんな話を静かに聞いていた。
すると今度は父さんが言う。
「向こうの親にも挨拶したんだろ?もうそういう方向で話が進んでいるのか?」
どういう方向だ。
「だあ!兄貴相変わらず鈍いな。彼女が自分の親に紹介したんだぞ。行きつくところは一つしかないだろ!」
慊人はそう言うが話が全く分からない。
「私はそのつもりなんだけど、そういうのってナリの方から決断してほしいから待ってるつもりです」
俺は何を決断したらいいんだ?
「本当に鈍いんだね」
冬莉は俺の顔を見てにこりと笑う。
「他にナリの事教えてもらえませんか?私の知らないナリを知りたい」
「ああ、いいよ。あれは小4の時だったかな……」
慊人も多少は飲んでいたんだろう。
俺の黒歴史を余すことなく暴露する。
夕飯も食べて風呂に入ってそれからしばらくして部屋に戻ってベッドに入る。
最近冬莉と同じベッドで寝る事に抵抗が無かった。
いつも通りに横になると冬莉が抱きついてくる。
こんな状況でも何もしないのが魔法使いの特徴だ。
いつもの事だった。
「ナリ、今日機嫌悪い?」
「どうして?」
「だって、ナリ今日あまり話してないから」
なるほどね……。
「大丈夫だよ。心配しないで」
そう言って冬莉の頭を撫でてやる。
「やっぱり昔の事蒸し返されたら嫌だよね。ごめん、私の調子に乗り過ぎたみたい」
「そうじゃないんだ」
「じゃあ、どうしたの?」
いつもと様子が違うと冬莉は思ったらしい。
そんな冬莉に優しく説明してやる。
「まず、冬莉に彼女はいなかったと嘘をついたかなって心配してた事」
「でも話を聞いてたら彼女でもなんでもなかった」
「その理由が原因なんだ」
「え?」
冬莉の家も大層な経歴を持つ人たちばかり。
凡人以下の俺がそんな家の娘と結婚したらやっぱり肩身が狭いんじゃないだろうか?
「せめて年収1000万は欲しい」
地元でどんな職種に就いたら手に入れられるんだ?
冬莉も本当はもっと高収入の人と結婚したいんじゃないだろうか?
慊人の例もあるけど、慊人はその人柄の良さがフォローしている。
それに引き換え俺は何を持っている?
大人になって思い知る。
もっと勉強すればよかった。
それを思い知る時には大抵遅い。
恋愛と結婚は別。
「いずれ別れるのだから」
最後に東京の子から聞いた言葉を思い出していた。
それを聞いた冬莉は俺のおでこをデコピンする。
「ナリの悪い癖だよ」
すぐに自虐的になる。
自信過剰な人は嫌いだけど、俺にはもう少し自信を持って欲しいと冬莉は言った。
「ナリは何も持ってないと言ったけど、そんなことないよ」
現に冬莉の支えになっている。
そうなのか?
「ナリが出張に行ってる間心細かった。また離れていくんじゃないかって不安だった。だけど帰ってきてくれた時ほっとした」
今の冬莉には俺がいないとだめなんだと実感したらしい。
「それじゃダメなの?それだけでも私にとっては大切な人だし、誇りに思える人だよ?」
俺に出会う前はモノトーンだった冬莉の世界に色をつけてくれた人だと冬莉は言う。
「俺にとっても冬莉は俺の人生を明るくしてくれた」
「お互い出会えてよかった。それが運命なんだよ」
「冬莉の言う通りかもしれないな」
「うん、だからもう自分を卑下するのは止めにして。私にとって頼りになる人なんだから」
「わかった。じゃあ寝ようか?」
「このシチュエーションで何もせずに寝れるのはナリだけだよ」
冬莉はそう言って笑顔を見せた。
やっぱりここは抱きしめた方が良いのだろうか。
抱き締めて来たのは冬莉の方だった。
「言ったはずだよ。ナリのペースに合わせるって」
「ごめん」
「本当に結婚初夜になりそうだね」
「冬莉の中では結婚は決まってるのか?」
「あれ?ナリは他の人と結婚する気なの?」
どうせ結婚できないのだから。
これまで何度も言われてきた言葉。
なのに、冬莉はそんな俺と結婚する気でいてくれる。
「……もう少し時間をくれないか?」
「いいけど、出産にはリミットあるんだからね」
とりあえず今日はこれで我慢しよう。
冬莉を抱きしめてキスを重ねる。
冬莉はそのまま俺の胸に顔を寄せて眠ってしまった。
本当に俺を頼ってくれてるんだな。
そんな冬莉に俺も応えてやらないといけない。
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