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Debut
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(1)
初めて着る制服。
今日から僕と冬莉はちょっとだけ家の外に出る。
制服を着てダイニングに行くとお爺さんとお婆さんが「あら、2人とも似合ってるじゃない」と言ってくれた。
お世辞じゃない事くらいわかる。
兄さんと姉さんたちも「おはよう」とやってきた。
みんな揃うとご飯を食べる。
食事中はおとなしくありがたくいただく。
片桐家の絶対のルール。
天音姉さんですら絶対に破らない鉄の掟。
3人は学校に行く。
僕達は母さんの仕度が済むのを待つ。
父さんも今日は同行するらしい。
午前中だけ休みをとったそうだ。
駐車場が無いからと徒歩で幼稚園に向かって歩く。
途中で誠司や咲夜ちゃんや芹葉ちゃんと会う。
「今日からよろしく」
5人であいさつする。
幼稚園に着くとクラス分けされる。
5人とも同じクラスだったようだ。
そして入園式が始まる。
突然泣き出す子もいる。
親をちらちら見てる子もいる。
じっとしているのが苦痛でしょうがない子もいるらしい。
まあ3歳児だからしょうがない。
普通はそういうものらしい。
入園式がおわると先生から説明がある。
大体の子が聞いてないけど。
一日の流れの説明を受ける。
それが終ると帰る。
この時点で大体のグループ分けが出来ている。
当たり前だけど幼稚園の名札はひらがなで書いてある。
漢字で書いてもおかしい名前もあるけどひらがなで書くとおかしさがより強調される名前もある。
大雑把に分けて「きらきらネーム」と「普通の名前」に分かれる。
自然とそうなっていた。
今日は親がいるから表立って言う子はいないけどこれから先揶揄われるんだろうな。
改名も本人の意思でできるらしいけど、そんな難しい事まだ3歳の僕達に分かるはずがない。
一生つきまとうんだと悲観する子もいる。
帰ると言ったけど母さんたちは帰らない。
庭で「ママ友」と話をしている。
母さんは顔が広くママ友が沢山いる。
その間退屈だから誠司達と話をしている。
冬莉はジャングルジムをじっと見つめていた。
珍しいからなのだろうか?
冬莉の考えてる事は僕にも分からない。
話が終ると家に帰る。
誠司たちとはまだ一緒だ。
「せっかくだからお昼でも行かない?」
母さんが言った。
誠司の母さんもそのつもりだったらしい。
父さんは仕事があるからそのまま家で食べたけど、僕達は近所にある回転寿司に行った。
誠司はお子様ランチが食べたくてファミレスを主張したけど却下された。
「お前はどうせ途中で残すから駄目だ!」
誠司の狙いはお子様ランチじゃなくてそれについてくる玩具が目当てだった。
僕は正直どっちでもいい。
家族で行くときはファミレスに行くけど悲しい事に鉄板が熱いステーキやハンバーグはまだ食べさせてもらえない。
誠司の気持ちが分かるのは分かるけど理解はできなかった。
お子様ランチ程度じゃ僕のお腹は満たされない。
誠司は大体食事の途中で遊びだす。
僕はファミレスより回転寿司の方が好きだ。
何を食べても自由だしデザートやラーメンもついてくる。
端末で注文を取りながらひたすら食べ続ける。
冬莉も自分が食べたいものを言って僕に注文させて、黙々と食べている。
誠司は途中で食べることに飽きて遊びだす。
理解が出来ない行動だった。
思う存分食べると家に帰る。
家に帰ると昼寝をする。
まだ僕達には昼寝の時間は大切らしい。
目が覚める頃には兄さんと姉さんが帰ってきてる。
天音姉さんは遠坂さん家に住んでる純也兄さんと茜姉さんの所に行く。
夕方のアニメを見て時間を潰す。
父さんが帰ってくると夕食の時間。
夕ご飯を食べると母さんと風呂に入る。
風呂に入ったら眠くなる。
そうして僕の一日が終わった。
(2)
翌週から本格的に幼稚園生活が始まる。
「冬吾と冬莉、行くぞ」
天音姉さんが言うと母さんたちに「行ってきます」と言って家を出る。
中学校と幼稚園はそんなに離れていない。
水奈姉さんが誠司を連れてやってくる。
幼稚園に着いて誠司と喋っていると、中山瞳子と理絵、咲夜と芹葉がきた。
あと知らない子がいる。
中山莉緒と玲奈。瞳子と理絵の親戚らしい。
しかしこの幼稚園フランス人からブラジル人となんでもありの幼稚園だな。
両方とも誠司は知ってるらしい。
去年引退したけど誠司のお父さんはJリーグの選手だった。
同じチームの選手の子供なんだそうだ。
クララは明るくて音楽が流れると踊りだす。
生後間もないころからダンススクールに通っているらしい。
とにかく踊りが大好きな子
ジャックはサッカーが好きなんだそうだ。父親後を継いでいる。
フランス人のカルツもサッカーが好きらしい。
レベッカはピアノのレッスンをしている。
カレンはサッカーに興味はない。温泉や神社や寺、お城が大好きなんだそうだ。
というか構造物に興味があるらしい。
今もじっと柱を眺めている。
冬莉は部屋で絵本を読んでいた。
ちなみに外国人も「おかしな名前の人」の部類に入る。
僕達と誠司はあまり気にしない。世界には色んな人がいることを知っているから。
色んな顔と心が世界中に溢れているから。
例えば同じクラスにあほと名のついた子がいる。
皆はそれを笑っている。
「おいで、一緒に遊ぼう”鎌倉さん”」
たったそれだけで済むだけの話。
「なんだお前?あほが好きなのか?」
そう言って冷やかす連中がいる。
そう言う奴等の心はあまり覗くなと父さんに言われてる。
汚れた心に触れたら自分まで汚れてしまうから。
むしして鎌倉兄弟の手をとって誠司たちのもとに連れて行く。
そうやって順調に友達を作って遊んでいた。
なぜか中山さんの心が悲しそうだった。
どうしたんだろう?
帰る時間になると僕は誠司達と一緒に帰る。
帰ると疲れがどっとくる。
部屋に入って昼寝をする。
そして夕食を作ってる母さんに今日あったことを話す。
楽しかったことがたくさんあった。
母さんも笑って聞いてた。
夕食の時間には父さんに同じ話を聞かせる。
「あの幼稚園そんなに大きかったか?」
父さんが不思議そうに聞いていた。
昔を知らないからわからないけど、父さんが言うんだからきっと大きな幼稚園なんだろう。
夕食が終ると母さんが片付けてる間テレビを見る。
そして母さんとお風呂に入る。
思い出した。
中山さんが悲しそうな顔をしている理由が知りたかったので同じ女性の母さんに聞いてみた。
「誰に似たのかしら?女の子を泣かせるような真似をしてはいけませんよ」
母さんはそう言った。
僕にどうしろと言うのだろうか?
同じ女の子ならと冬莉に聞いてみた。
「……女の子にも色々あるから」
たった一言そう答えてくれた。
風呂から出ると僕達は寝る。
新生活の始まりだった。
(3)
驚いた。
遠足が終って週が明けたら、凄いことになっていた。
SH3年生組は全員恋人がいるらしいと、梨々香から聞いた。
いつの間にそんなことになったんだ?
「奇跡だよね」
梨々香はそう一言で片づけた。
どうしてそうなった?
多分理由は聞かない方がいい気がした。
運命の一言で片づけられるのならそれに越したことは無い。
2年も同じクラスで同じクラスメートだったらそういう事もあり得るだろう。……多分。
俺達3年組には春が訪れたんだ。
それが続けばいい。
多分続くんだろうな。
学校が終ると茜と家に帰る。
茜からも同じことを聞いた。
「すごいよね」
茜も梨々香と同じ考えだったらしい。
家に帰ると茜は宿題を済ませてからPCを触りだす。
俺も宿題だけ片付けてしまおうか。
宿題を片付けるとゲームをする。
ゲームをしてるとスマホが鳴る。
梨々香からだ。
女子との話は9割方どうでもいい無駄話が多い。
今回もそうだった。
テレビの話題から今日あったこととか。
今日あったことはさっき話せばよかったんじゃないか?
明日の朝にでも話せばいいんじゃないのか?
そんな事は絶対に言わない。
言えば怒りだすか泣き出すかのどちらかだ。
梨々香の場合は怒り出す方だろうな。
「私と話するのがそんなにイヤなわけ!?」
だから慎重に返事を返す。
「ああ」とか「そう」とか適当に返しても怒られる。
「ちゃんと真面目に人の話聞いてる!?」
テレビの話題ならテレビをつけて同じ番組を見ればいい。
しかし……
「この前さ、今年の春用の服買ったんだよね!」
どう返せばいいか凄く迷う。
悩んだ結果。
「そうなんだ、是非見たいな」
「ちょっと学校には着ていけないかな。汚したくないし」
じゃあ、何のために買ったんだ?
女子の心と言うのは難しい。
「じゃあ、いつだったら見れる?」
そう返事をしていた。
すぐに返事が返ってきた。
「連休にでも会えない?」
「会うってどこに行くの?」
「どこでもいい」
こういう場合のどこでもいいは本当に困る。
連休か。片桐家では特に予定がまだ立ってなかったな。
立ってたとしても皆別行動だろう?
「ちょっと待ってて」
そう返事してりえちゃんに連休の予定を聞いてみる。
「りえちゃん、5月の連休どうする?」
「特に何も予定してないわよ~。どうかしたの~?」
りえちゃんに事情を説明する。
「そういう事ならおばさんに任せて~」
りえちゃんはそう言うと、梨々香の家に電話する。
「もしもし、片桐純也の世話をしている遠坂といいますが。はい、突然の電話すいません実は……」
りえちゃんはとんでもないことを言い出した。
連休に二泊三日で大阪に行くと言い出した。
無茶だ、いくらなんでも突然そんな事言われて良いと言うはずがない。
と、思ってた。
「はい、責任もって預かりますので」
嘘だろ?
りえちゃんは電話を切ると次に2階の茜に何かを聞いていた。
そして電話する。
電話を終わるとすぐにスマホを操作する。
操作を終えると、僕に言う。
「これで連休は予定たてたわよ~。ちゃんとじゅんびしなさいね~」
「わかった……」
2階に戻ると茜が嬉しそうに言う。
「連休大阪に旅行だって!壱郎も連れて行っていいって」
片桐家は時々とんでもない行動をすると2年間の間に学んだと思ったけどまだ足りなかったようだ。
俺はとりあえずスマホを見る。
「誘ってくれてありがとう!楽しみだね!」
「そうだね。期待してるよ」
とりあえずそう答えるしかないだろう。
遠坂のおじさんが帰ってくるとりえちゃんが事情を話す。
「……片桐さんの家はいいのか?」
「あっちはほら~色々大変だと思うから~」
「……それもそうだな」
「あ、そうだ!」
りえちゃんの行動はたまに大胆な行動をとる。
梨々香と壱郎の両親に夏休みまでにパスポートを申請するように言う。
夏休みの予定まで立てるつもりらしい。
「……本場のハリウッドとかいいんじゃないか?」
小3のバカンスじゃないぞそれ!
「問題はアトラクションが苦手じゃないかよね~」
そう言う問題なのだろうか。
茜は喜んでいる。
行きつく答えは唯一つ。
まあ、いいか。
なるようになるさ。
とりあえずは目の前にある連休を楽しんでから考えることにしよう。
初めて着る制服。
今日から僕と冬莉はちょっとだけ家の外に出る。
制服を着てダイニングに行くとお爺さんとお婆さんが「あら、2人とも似合ってるじゃない」と言ってくれた。
お世辞じゃない事くらいわかる。
兄さんと姉さんたちも「おはよう」とやってきた。
みんな揃うとご飯を食べる。
食事中はおとなしくありがたくいただく。
片桐家の絶対のルール。
天音姉さんですら絶対に破らない鉄の掟。
3人は学校に行く。
僕達は母さんの仕度が済むのを待つ。
父さんも今日は同行するらしい。
午前中だけ休みをとったそうだ。
駐車場が無いからと徒歩で幼稚園に向かって歩く。
途中で誠司や咲夜ちゃんや芹葉ちゃんと会う。
「今日からよろしく」
5人であいさつする。
幼稚園に着くとクラス分けされる。
5人とも同じクラスだったようだ。
そして入園式が始まる。
突然泣き出す子もいる。
親をちらちら見てる子もいる。
じっとしているのが苦痛でしょうがない子もいるらしい。
まあ3歳児だからしょうがない。
普通はそういうものらしい。
入園式がおわると先生から説明がある。
大体の子が聞いてないけど。
一日の流れの説明を受ける。
それが終ると帰る。
この時点で大体のグループ分けが出来ている。
当たり前だけど幼稚園の名札はひらがなで書いてある。
漢字で書いてもおかしい名前もあるけどひらがなで書くとおかしさがより強調される名前もある。
大雑把に分けて「きらきらネーム」と「普通の名前」に分かれる。
自然とそうなっていた。
今日は親がいるから表立って言う子はいないけどこれから先揶揄われるんだろうな。
改名も本人の意思でできるらしいけど、そんな難しい事まだ3歳の僕達に分かるはずがない。
一生つきまとうんだと悲観する子もいる。
帰ると言ったけど母さんたちは帰らない。
庭で「ママ友」と話をしている。
母さんは顔が広くママ友が沢山いる。
その間退屈だから誠司達と話をしている。
冬莉はジャングルジムをじっと見つめていた。
珍しいからなのだろうか?
冬莉の考えてる事は僕にも分からない。
話が終ると家に帰る。
誠司たちとはまだ一緒だ。
「せっかくだからお昼でも行かない?」
母さんが言った。
誠司の母さんもそのつもりだったらしい。
父さんは仕事があるからそのまま家で食べたけど、僕達は近所にある回転寿司に行った。
誠司はお子様ランチが食べたくてファミレスを主張したけど却下された。
「お前はどうせ途中で残すから駄目だ!」
誠司の狙いはお子様ランチじゃなくてそれについてくる玩具が目当てだった。
僕は正直どっちでもいい。
家族で行くときはファミレスに行くけど悲しい事に鉄板が熱いステーキやハンバーグはまだ食べさせてもらえない。
誠司の気持ちが分かるのは分かるけど理解はできなかった。
お子様ランチ程度じゃ僕のお腹は満たされない。
誠司は大体食事の途中で遊びだす。
僕はファミレスより回転寿司の方が好きだ。
何を食べても自由だしデザートやラーメンもついてくる。
端末で注文を取りながらひたすら食べ続ける。
冬莉も自分が食べたいものを言って僕に注文させて、黙々と食べている。
誠司は途中で食べることに飽きて遊びだす。
理解が出来ない行動だった。
思う存分食べると家に帰る。
家に帰ると昼寝をする。
まだ僕達には昼寝の時間は大切らしい。
目が覚める頃には兄さんと姉さんが帰ってきてる。
天音姉さんは遠坂さん家に住んでる純也兄さんと茜姉さんの所に行く。
夕方のアニメを見て時間を潰す。
父さんが帰ってくると夕食の時間。
夕ご飯を食べると母さんと風呂に入る。
風呂に入ったら眠くなる。
そうして僕の一日が終わった。
(2)
翌週から本格的に幼稚園生活が始まる。
「冬吾と冬莉、行くぞ」
天音姉さんが言うと母さんたちに「行ってきます」と言って家を出る。
中学校と幼稚園はそんなに離れていない。
水奈姉さんが誠司を連れてやってくる。
幼稚園に着いて誠司と喋っていると、中山瞳子と理絵、咲夜と芹葉がきた。
あと知らない子がいる。
中山莉緒と玲奈。瞳子と理絵の親戚らしい。
しかしこの幼稚園フランス人からブラジル人となんでもありの幼稚園だな。
両方とも誠司は知ってるらしい。
去年引退したけど誠司のお父さんはJリーグの選手だった。
同じチームの選手の子供なんだそうだ。
クララは明るくて音楽が流れると踊りだす。
生後間もないころからダンススクールに通っているらしい。
とにかく踊りが大好きな子
ジャックはサッカーが好きなんだそうだ。父親後を継いでいる。
フランス人のカルツもサッカーが好きらしい。
レベッカはピアノのレッスンをしている。
カレンはサッカーに興味はない。温泉や神社や寺、お城が大好きなんだそうだ。
というか構造物に興味があるらしい。
今もじっと柱を眺めている。
冬莉は部屋で絵本を読んでいた。
ちなみに外国人も「おかしな名前の人」の部類に入る。
僕達と誠司はあまり気にしない。世界には色んな人がいることを知っているから。
色んな顔と心が世界中に溢れているから。
例えば同じクラスにあほと名のついた子がいる。
皆はそれを笑っている。
「おいで、一緒に遊ぼう”鎌倉さん”」
たったそれだけで済むだけの話。
「なんだお前?あほが好きなのか?」
そう言って冷やかす連中がいる。
そう言う奴等の心はあまり覗くなと父さんに言われてる。
汚れた心に触れたら自分まで汚れてしまうから。
むしして鎌倉兄弟の手をとって誠司たちのもとに連れて行く。
そうやって順調に友達を作って遊んでいた。
なぜか中山さんの心が悲しそうだった。
どうしたんだろう?
帰る時間になると僕は誠司達と一緒に帰る。
帰ると疲れがどっとくる。
部屋に入って昼寝をする。
そして夕食を作ってる母さんに今日あったことを話す。
楽しかったことがたくさんあった。
母さんも笑って聞いてた。
夕食の時間には父さんに同じ話を聞かせる。
「あの幼稚園そんなに大きかったか?」
父さんが不思議そうに聞いていた。
昔を知らないからわからないけど、父さんが言うんだからきっと大きな幼稚園なんだろう。
夕食が終ると母さんが片付けてる間テレビを見る。
そして母さんとお風呂に入る。
思い出した。
中山さんが悲しそうな顔をしている理由が知りたかったので同じ女性の母さんに聞いてみた。
「誰に似たのかしら?女の子を泣かせるような真似をしてはいけませんよ」
母さんはそう言った。
僕にどうしろと言うのだろうか?
同じ女の子ならと冬莉に聞いてみた。
「……女の子にも色々あるから」
たった一言そう答えてくれた。
風呂から出ると僕達は寝る。
新生活の始まりだった。
(3)
驚いた。
遠足が終って週が明けたら、凄いことになっていた。
SH3年生組は全員恋人がいるらしいと、梨々香から聞いた。
いつの間にそんなことになったんだ?
「奇跡だよね」
梨々香はそう一言で片づけた。
どうしてそうなった?
多分理由は聞かない方がいい気がした。
運命の一言で片づけられるのならそれに越したことは無い。
2年も同じクラスで同じクラスメートだったらそういう事もあり得るだろう。……多分。
俺達3年組には春が訪れたんだ。
それが続けばいい。
多分続くんだろうな。
学校が終ると茜と家に帰る。
茜からも同じことを聞いた。
「すごいよね」
茜も梨々香と同じ考えだったらしい。
家に帰ると茜は宿題を済ませてからPCを触りだす。
俺も宿題だけ片付けてしまおうか。
宿題を片付けるとゲームをする。
ゲームをしてるとスマホが鳴る。
梨々香からだ。
女子との話は9割方どうでもいい無駄話が多い。
今回もそうだった。
テレビの話題から今日あったこととか。
今日あったことはさっき話せばよかったんじゃないか?
明日の朝にでも話せばいいんじゃないのか?
そんな事は絶対に言わない。
言えば怒りだすか泣き出すかのどちらかだ。
梨々香の場合は怒り出す方だろうな。
「私と話するのがそんなにイヤなわけ!?」
だから慎重に返事を返す。
「ああ」とか「そう」とか適当に返しても怒られる。
「ちゃんと真面目に人の話聞いてる!?」
テレビの話題ならテレビをつけて同じ番組を見ればいい。
しかし……
「この前さ、今年の春用の服買ったんだよね!」
どう返せばいいか凄く迷う。
悩んだ結果。
「そうなんだ、是非見たいな」
「ちょっと学校には着ていけないかな。汚したくないし」
じゃあ、何のために買ったんだ?
女子の心と言うのは難しい。
「じゃあ、いつだったら見れる?」
そう返事をしていた。
すぐに返事が返ってきた。
「連休にでも会えない?」
「会うってどこに行くの?」
「どこでもいい」
こういう場合のどこでもいいは本当に困る。
連休か。片桐家では特に予定がまだ立ってなかったな。
立ってたとしても皆別行動だろう?
「ちょっと待ってて」
そう返事してりえちゃんに連休の予定を聞いてみる。
「りえちゃん、5月の連休どうする?」
「特に何も予定してないわよ~。どうかしたの~?」
りえちゃんに事情を説明する。
「そういう事ならおばさんに任せて~」
りえちゃんはそう言うと、梨々香の家に電話する。
「もしもし、片桐純也の世話をしている遠坂といいますが。はい、突然の電話すいません実は……」
りえちゃんはとんでもないことを言い出した。
連休に二泊三日で大阪に行くと言い出した。
無茶だ、いくらなんでも突然そんな事言われて良いと言うはずがない。
と、思ってた。
「はい、責任もって預かりますので」
嘘だろ?
りえちゃんは電話を切ると次に2階の茜に何かを聞いていた。
そして電話する。
電話を終わるとすぐにスマホを操作する。
操作を終えると、僕に言う。
「これで連休は予定たてたわよ~。ちゃんとじゅんびしなさいね~」
「わかった……」
2階に戻ると茜が嬉しそうに言う。
「連休大阪に旅行だって!壱郎も連れて行っていいって」
片桐家は時々とんでもない行動をすると2年間の間に学んだと思ったけどまだ足りなかったようだ。
俺はとりあえずスマホを見る。
「誘ってくれてありがとう!楽しみだね!」
「そうだね。期待してるよ」
とりあえずそう答えるしかないだろう。
遠坂のおじさんが帰ってくるとりえちゃんが事情を話す。
「……片桐さんの家はいいのか?」
「あっちはほら~色々大変だと思うから~」
「……それもそうだな」
「あ、そうだ!」
りえちゃんの行動はたまに大胆な行動をとる。
梨々香と壱郎の両親に夏休みまでにパスポートを申請するように言う。
夏休みの予定まで立てるつもりらしい。
「……本場のハリウッドとかいいんじゃないか?」
小3のバカンスじゃないぞそれ!
「問題はアトラクションが苦手じゃないかよね~」
そう言う問題なのだろうか。
茜は喜んでいる。
行きつく答えは唯一つ。
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なるようになるさ。
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