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自由の対価
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(1)
昼休みに入った。
机の上に弁当と買ってきたパンを置く。
クラスメートと一緒にご飯を食べる。
それが当たり前だと思っていた。
しかしふと気づくと1人ぽつんと弁当を食べながらスマホを弄ってる女子に気付く。
確か蒼山美加って言ったっけ?
「お~い、蒼山」
私は当たり前のように声をかけていた。
蒼山は私の方を振り向く。
「一人寂しく食ってないでさ、こっち来いよ」
「一人にさせてくれないか」
蒼山はそう言う。
だけど蒼山の意思がどうあれ私は納得いかない。
皆グループを作って食べてる中一人孤立している奴を放ってはおけない。
「いいから来いよ。別におかずたかろうってわけじゃないんだから」
「どうして私に構うの?」
「見てしまったからしょうがないだろ?蒼山が来ないなら私がそっちに行く」
私がそう言うと蒼山も観念して私達と一緒に合流した。
調理科の生徒というだけあって皆自分で弁当を作ってくる。
そしてその弁当の気合の入りようはすごい。
ちなみに私はそこまで時間をかけない。
手早くそしてたっぷりとが私の弁当のコンセプト。
蒼山も私寄りだ。
もっとも量は全然違うけど。
でもシンプルな弁当だった。
「で、私を呼んだ理由は?」
「別に?一人で食ってたから誘ってみただけ」
食事は楽しく。
だから一人で食ってる蒼山を放っておけなかった。
ただそれだけ。
楽しくって言うからには何か話しかけないとだめだよな。
鉄板の質問をしてみた。
「蒼山って彼氏いるの?」
「いるよ」
意外だった。
クールというか無愛想な蒼山に男がいたなんて誰が想像しただろうか?
一緒にいた友達も驚いていた。
このクラスの女子は大体彼氏がいる。
そして大体が防府高校の男子。
蒼山も類に漏れないようだった。
佐渡康平。
大地の高校の友達らしい。
本当に世間て狭いな。
正義感が強く律義な奴。
言い換えればくそ真面目な優等生タイプ。
それなら蒼山にあうだろう。
一見クールぶってる蒼山も話をしているうちに打ち解けていった。
皆と話をしているのを聞きながらスマホを弄っていた。
そして蒼山に言う。
「お前もSHに入れよ」
「そういうのって私の趣味じゃない」
そう言うと思ったよ。
「佐渡も入ったみたいだぜ」
そう言ってスマホを蒼山に見せる。
「うちのグループまだ男子がたりないからさ。横取りもあり得るぜ」
心配だろ?
心配だったようだ。
蒼山は渋々SHに入る。
「で、何をやるグループなの?」
「特に何も?」
高校に入って特に何も無いな。
とはいえ、何かやらないとまずいよな。
閃いた。
「紗理奈。今日放課後暇か?」
私は渡辺紗理奈に聞いていた。
「ああ、いつだって暇だ。カラオケでも行くか?」
帰りに寄る場所と言ったらゲーセンかカラオケくらいしかない。
SAPで遊びまくるって手もあったな。
街のSAPは近所のSAPとは一味違う。
屋上に作られた観覧車やジェットコースターがある。
だけど今日の私はどれも選ばなかった。
「ちょっと行ってみたい店があるんだ」
私は違うクラスの水奈にメッセージを送りながら言った。
「なんの店だ?クラブでもいくのか?」
「パンケーキの店」
女子高生らしいだろ?
茜から聞いた店。
一度行ってみたいと思ってた。
駅ビルにはまだ他に色々お店があるらしい。
3階のフードコートしかないと思ってた私は致命的なミスを犯していたようだ。
やっぱり雑誌とかネットとかで調べないと駄目だな。
どうせ駅ビルの前を通ってバス停に行くんだ。
行ってみる価値はある。
水奈は行くと言っている。
クラスの皆も誘っていた。
「ごめん、連休に遊び過ぎて金欠なんだよね」
そういう奴もいた。
「私は大丈夫だぞ」
紗理奈は言った。
「じゃあ、決まりだな」
そう蒼山に行った。
「私は行くこと確定なんだね」
蒼山は観念したようだ。
そして放課後水奈と待ち合せて駅ビルに向かう。
水奈に蒼山を紹介した。
何人かで話しながら駅ビルに入ってその店に入る。
駅ビルの一階は宝石店や高いブランド物の店が並んでいる。
特に興味がないのでさっさとエスカレーターで上に行ってしまうので見落としてしまう。
同じような女子高生が列を作って並んでいた。
制服からして西校や藤明の子が多い。
まだ会社帰りのOLが並ぶには早い時間だった。
席に着くとメニューを見る。
ダッチベイビーと呼ばれるパンケーキが売りだった。
ちょっと想像していたパンケーキと違う。
それにリンゴとシナモンを乗せた料理がある。
それとミックスフルーツを乗せた普通のパンケーキを注文する。
トッピングも出来るらしい。
ホイップや、バニラアイスはともかく目玉焼きにベーコン?
まあ、海外じゃパンケーキは朝食らしいから普通なんだろう。
普通なんだろうけどホイップクリームとバニラアイスにしておいた。
それと飲み物を頼む。
全部頼んだら焼肉食い放題くらい行ける額になった。
今度から大地と来よう。
フレンチトーストですら下手すればラーメン替え玉出来るくらいの値段だった。
女子高生が「放課後お茶して帰らない?」で済む価格ではない。
海外に本店があって近年日本に上陸したらしくて東京でも並ぶ店なんだそうだ。
水奈とかは食べる前に写真を撮っていた。
また来ればいつでも見れるだろ?とは言いにくい店だった。
その後話題は蒼山を中心にパンケーキを食べる。
パンケーキにこれだけ金払って不味かったらテーブルひっくり返すところだ。
それなりの味だった。
店を出ると「どうする?」と紗理奈が言う。
「もう一件寄りたい店があるんだけど?」
「天音、まだ食うつもりか?」
「中学生でも食えるらしいぞ」
「まあ、お前がそう言うなら私はつきあうけど」
「私は無理、先に帰るよ」
紗理奈は残り、水奈は帰る。
蒼山に選択肢はない。
「蒼山の歓迎会なんだから。お前は残れ」
「……別にいいけど」
茜に聞いた焼き肉屋の系列店に行く。
高校生が食べにくる価格ではなかった。
2人はハンバーグを頼んだ。
スープとご飯はついて来るらしい。
問題は何をおかずにするかだ。
滅多に来ないだろうし食べれるだけ食べておきたい。
ステーキと牛タンとサラダとデザートを頼んだ。
2人もデザートは抑えていた。
ご飯が足りないのでおかわりを注文した。
目一杯食った。
ここも今度からは大地を連れてこよう。
帰ったら愛莉に小遣い交渉しないとやばいな。
店を出ると、蒼山に聞いてみた。
「どうだ?彼氏もいいけど女友達と遊ぶのも悪くないだろ?」
「遊ぶっていうか食べてただけじゃないか」
蒼山は笑っていた。
蒼山の家も近所らしい。
一緒のバスで帰る。
「……ありがとうな。密かに憧れてたんだよね。こういうの。天音の言う通り彼の前じゃ無理だから」
蒼山がそう言う。
「そうだろ?男同士でだって遊んでるんだ。女同士で遊んでも文句言われる筋合いねーよ」
次はカラオケとか行こうな。と、約束すると家に帰った。
もちろん夕食も食べる。
さすがにきつい。
きついと言えば財布の中身もきつい。
さすがに大地に「金くれ」とは言えない。
愛莉が冬眞達を風呂に入れてる時にパパにねだる。
「パパ~お願いがあるんだけど~」
「どうした?天音」
「今月小遣いピンチなんだよね。少し都合してもらえないかな?」
「そういう交渉は愛莉にする決まりじゃないのか?」
「そこを何とかお願い」
「一体何を買ったんだ?」
「聞いてくれよパパ。パンケーキと肉を食っただけなんだ」
「そんな高い店だったのか?」
下手すればクリスマスディナーが食える額だと説明する。
「純也が言ってた店に行ったのかい?」
「うん」
「美味しかった?」
パパが感想を聞いてくる。
そして味を説明してると愛莉達が戻ってくる。
しまった。
パパと話をしていると長引いてしまう事を忘れていた。
「天音。部屋に戻らないで何をしているの?」
まずい!
「ああ、愛莉。天音に小遣い渡してやってくれないか?」
愛莉に内緒でっていうのを忘れてた。
それを聞いた愛莉の表情が険しくなる。
私の行動など愛莉はお見通しだ。
だって私はパパの娘なんだから。
「天音、あなたそういえば今日夕飯控えめでしたね?まさかまた買い食いしたんじゃないでしょうね?」
「そうみたいだよ。美味しかったそうだ」
パパ、そう言うのは言わないのが約束だろ?
「天音!!」
愛莉の説教が続いた。
説教から解放されると部屋に戻る。
「随分絞られてたみたいだね」
茜がPCを操作しながら言う。
「ちょっと高い肉食ったくらいいいじゃんな」
まあ、いくらか小遣いもらえたからいいや。
次からは大地を連れて行こう。
意外と駅ビルには店が多いみたいだ。
食べ歩いてみるのもいいかもしれない。
いつもとんこつラーメンやら味噌ラーメンだったからな。
大地も喜ぶだろう。
この前パパが買ってきた新作のゲームをやっていた。
パパは3本ゲームを買ってきていた。
私は戦闘機のゲームを、空はFPSの最新作を、冬吾は架空世界を舞台にした戦車のゲームをやっていた。
どれも人気シリーズの最新作だ。
「終わったら父さんに貸してくれ」
パパもゲームは好きだし上手だ。
うちでゲームに興味があるのはパパと空と私と冬吾。
茜はネットで適当にゲームをやってる。
課金と呼ばれる行為はあまりしない。
暇な時間に気が向いた時にやるていっだから必要ないのだろう。
冬吾は誠司達がやってるからやってるだけ。
最近だとモンスターを倒すネットゲームに夢中になってた。
茜が寝る頃になると私もベッドに入る。
ゲームというかテレビの光は思った以上に強い。
睡眠の妨げになったら悪い。
もっとも中学生になった茜は勉強やらで日付が変わってから寝るようになった。
私もそのくらいには寝ないと朝が早い。
大地にメッセージを送って寝る。
「今度週末街に食事に行かない?」
大地は最近デートに誘ってくれるようになった。
離れているから不安にさせたくないと思ってるのだろうか?
「わかった」
「じゃあ、楽しみにしてる。おやすみなさい」
週末大地は悲鳴を上げる事になると思ったけど。
「天音もこういう料理に興味持つようになったんだね」
そういう感想をもらった。
大地の懐は全然大丈夫らしい
(2)
「皆さん静かにしてください!」
生徒会執行部が叫んでいる。
俺は梨々香たちと話を聞いていた。
生徒総会と言うものにまったく興味が無かった。
だって校則改正なんてする必要ないだろ?
どうせ守る気ないんだから。
大体スカートの丈だって現行の「膝が隠れる程度」で十分だろ?
それ以上短くしてどうするんだ?
90年代のファッションじゃないんだぞ。
ブランド物のスニーカー履いて来て盗難されたかったら好きにすればいい。
財布持ってきてカツアゲされたきゃされたらいい。
そんな事をやってSHに目をつけられたら某国の諜報員予備生が増えるだけだ。
学校にピアスしてくる意味が分からない。
学ランの裏ボタンをわざわざ替えるファッションが理解できない。
そんなどうでもいい事を延々と話していた。
ちなみに梨々香は校則を守ってる。
悪戯にスカートを短くしても足が冷えるんだそうだ。
今の丈でも下に短パン穿きたいくらいだけどそれをすると猶更スカート丈を短くできない。
ただカーデガンくらいは許可して欲しいと言っていた。
男子は学ランの下に服を着こめるからいい。
しかし女子は冬時期に指定のコートを着てくるくらいだ、
大昔は「貧富の差がでるから」とマフラーすら禁止されていたそうだ。
もはや意味不明の校則。
同様の理由でロングコートの使用も禁止されている学校もあるらしい。
とにかく男子と違って女子は冬とか着こめなくて寒い。
夏も校則で下着は白と決まっている。
それはどうでもいい、夏服の生地が薄いのでどのみち色物のものはつけてこれない。
透けてしまう。
白でも多少透けてしまうのでキャミソールなどを着ているそうだ。暑いけど。
冬はどうするのか梨々香に聞いてみた。
「そんなの聞いてどうするの?」
「聞いたらまずい事なら取り消すよ」
「別に純也になら教えてもいいけど、茜から聞いてないの?」
「今は家が違うから」
「じゃあ、教えるね腹巻とかするの」
は、腹巻!?
「幻滅したでしょ?」
梨々香はそう言ってにこりと笑う。
まあ、若い中学生が腹巻してるなんて想像したら誰だって驚くよね。
でもやっぱり女性はお腹や腰が冷えるのは避けたいそうだ。
中学校の中なら男子の前で制服を脱ぐことはない。
上にセーターを着て良い学校ならそうするけどうちは禁じられている。
「あとは下にヒートテック着たりホッカイロを張ったりすればいいって先輩から聞いた」
「なるほどね」
せめてセーラーの上に何か着るくらい許してやったらいいのに。
スカートの丈を短くするよりよほど死活問題だろうに。
まあ、騒いでるのはFGの連中だ。
生徒会役員は集まって相談していた。
生徒会長の大原奏がマイクの前に立つ。
結論は「却下」だった。
その理由を奏が説明する。
「これまで校則は改善されてきた。買い食いも許可がでた。学校内にジュースの自販機も設置した。靴も白を基調としたものに変更されてきた。全部先輩たちの努力です」
「だったらお前らも努力しろよ!」
FGの連中が野次を飛ばす。
「だけどその結果皆はどうした!?通学路のあちこちにゴミはばらまかれ、中庭に空き缶やペットボトルが捨てられている。靴だって運動靴じゃないものを履いてるじゃないか」
生徒会がいくら改善を求めてもその結果を突きつけられてはどうしようもない。
ゴミの問題は苦情が来るくらいだ。
コンビニのゴミ箱もコンビニで買ったものでないものまで捨てられ、分別すらせずに捨てた結果。コンビニはゴミ箱を撤去した。
学校側はやはり買い食いは禁止するべきなんじゃないかと反論してくる。
それを考え直してもらえるように生徒会は必死らしい。
連休の間も打開案を見つけようと話し合いが行われたそうだ。
ルールを改善しようにもその結果が悪い方向に向かうのであれば通るわけがない。
真っ赤な靴を平然と履いてくる生徒を弁護できるわけがない。
これ以上の校則の改善は生徒が生活態度を改めない限り無理だと結論付けた。
違反する者がいるから馬鹿正直に校則を守っているものが損をする。
そんな事態を避けるだけで精一杯だと言う。
今の現状を作り出したのは生徒自身じゃないのか?
そう問いかける。
皆黙ってしまった。
生徒会がいくらいい方向に改善しようと働きかけても結果がついてこないのではこれ以上の要求は出来ない。
皆が校則を守っていればそんな事態にはならない。
現に私服で登校していい中学校もあるらしい。
それは皆が中学生らしい姿を理解しているから。
成績もかなりいい学校なんだそうだ。
自由を手に入れる代わりに責任が付きまとう。
片桐家ではずっと言われている事。
そしてその自由の代償が今突きつけられてる。
スカートの丈の自由化を訴えていた者は下がった。
議題に「自販機のジュースの種類を増やして欲しい」と書かれてあったが取り下げられた。
学校のゴミ箱は空き缶もペットボトルも一緒に捨てられている。
美化委員長はその事について追及する。
これ以上守れないなら紙パックの自販機に変更する。
当然皆は反発する。
だったら分別くらいきちんとしろ。
納得せざるを得ない状況だった。
奏が言った一言が皆の心に突き刺さる。
生徒総会は2時間で終わらずに時間切れとなった、
生徒総会が終ると教室に戻り清掃の時間になる。
ゴミ捨ての係はゴミ袋を持って所定の場所に集められる。
そのゴミ袋には飲みかけのジュースがこぼれて液体が溜まっていた。
空き缶とペットボトルが混ざっていた。
清掃が終ると終礼があり、梨々香と一緒に帰る。
帰りにコンビニに寄る
ペットボトルのジュースを買って飲みながら帰る。
ゴミは家に持ち帰り家で分別して捨てた。
翌日学校に行く。
相変わらず個性という盾をもって校則を無視した服装でくる生徒がいた。
(3)
運動会があった。
中学校の運動会は走る種目が多い。
そして一人で何種目でも出て良い。
前日に誰が何の種目にでるか相談して決める。
結果私は走る競技全てに出る羽目になった。
運動部に所属しているわけでもないのに。
パパも愛莉もりえちゃんもおじさんも応援に来てた。
小学校の時と違うのはお昼の弁当は親と一緒に食べない事。
皆教室で弁当を食べる。
そして午後の部が終り閉会式をもって運動会は終わった。
さすがに疲れた私は家に帰ると少し仮眠をとる。
夕食を食べてお風呂に入って部屋に戻る。
そして壱郎のメッセージに気付く。
「今日はお疲れ様」
「ありがとう、壱郎もお疲れ」
その後ブログの更新をしながら天音のゲームを見ていた。
壱郎からメッセージが届く。
「明後日暇?」
明後日は振り替え休日。特に予定はなかった。
「暇だけど」
「SAPに行かない?」
「いいよ」
「じゃあ、現地集合で」
その後も少しやり取りをして疲れていたので早めに寝た。
当日家を出てSAPに向かうとクラスメートに会った。
田口緑。クラスメートだ。
「おはよう、茜」
「おはよう。今日はデート?」
緑にも付き合ってる人はいる。
この辺の同級生で彼氏がいない子をあげた方が早いくらいだ。
「茜は何も聞いてないの?」
「なんの事?」
そんな話をしていると壱郎が兄の壱成を連れて来た。
「おまたせ」
「壱郎、説明して欲しいんだけど」
「あ、言うの忘れてた。ごめん。実は運動会の後壱成と話したんだけど」
私が真香を連れて来た時の話をしたそうだ。
すると壱成が俺達もそういうの面白そうだからやってみたいと言ったそうだ。
「茜もまえに江口さん連れて来たしいいだろ?と思って。まずかった?」
「そんなことはないけど」
「ごめんね、茜。なんか邪魔してるみたいで」
緑が謝っている。
「本当に大丈夫だから。偶にはこういうのもいいよね」
それから4人で1日遊んだ。
お互いの事を話した。
男子というのはどうして余計な事を喋りたがるのだろう?
私と緑がお互いの彼を叱っていた。
もちろん私がスカーレットだということは内緒にしておいてくれた。
そして日が暮れる頃店を出る。
私は3人と別れて家に帰った。
風呂に入って部屋に戻るとスマホを見る。
着信履歴があった。
壱郎からだ。
どうしたんだろう?
私から電話してみる。
「もしもし?」
「壱郎、どうしたの?」
「いや、今日機嫌悪かったのかな?って思って」
へ?
「なんでそう思ったの?」
「怒ってたじゃん」
そんな事か。
「それは単純に壱郎が悪いだけだよ」
夜の事まで暴露されて気分いいわけないじゃない。
「あ、ごめん」
「まあ、男同士でそう言う話をすることもあるんだろうけど、彼女の前でわざわざ持ち出す話題じゃないと思うよ」
「今度から気を付けるよ」
「うん、それよりそっちはどうだった?」
「何が?」
「壱成は私の事どう思ってる?」
「茜、壱成が気になるの?」
「違うって!」
良い彼女だな。とか何か感想なかったか聞きたかっただけ。
折角だもん、壱郎が恥ずかしくない彼女でいたいじゃない。
「そういう事なら大丈夫だよ」
「用件はそれだけ?」
「うん」
「じゃあ、また明日」
「おやすみ」
電話を切って机に置いた。
PCを触りながら天音のゲームを観てる。
「やっぱクラスメートとかでも”彼女です”って改めて紹介されると苦労するよな」
天音は話の内容を聞いていたようだ。
「そうだね。天音もそうなの?」
「私の場合は大地だろ?大地に恥かかせないように苦労してるよ」
「そっか」
「まあ、上手くいったみたいでよかったじゃねーか」
「まあね」
そんな話をしながら天音はゲームをしていた。
片桐家の人間は家にいる時は日付が変わる頃には皆寝る。
徹夜なんて絶対にしない。
別に美容に気を使ってるわけじゃないけど、冬眞達が寝てる。
明日の授業に差し支えるから。
徹夜で勉強して授業で寝てたら意味がない。
「そろそろ寝るか」
天音が言うと私もベッドに上がる。
真香に壱郎を紹介した時も壱郎は今の私と同じ気持ちだったのだろうか?
壱郎の場合は初対面だ。
そういや聞いてなかったな。
今度聞いてみよう。
昼休みに入った。
机の上に弁当と買ってきたパンを置く。
クラスメートと一緒にご飯を食べる。
それが当たり前だと思っていた。
しかしふと気づくと1人ぽつんと弁当を食べながらスマホを弄ってる女子に気付く。
確か蒼山美加って言ったっけ?
「お~い、蒼山」
私は当たり前のように声をかけていた。
蒼山は私の方を振り向く。
「一人寂しく食ってないでさ、こっち来いよ」
「一人にさせてくれないか」
蒼山はそう言う。
だけど蒼山の意思がどうあれ私は納得いかない。
皆グループを作って食べてる中一人孤立している奴を放ってはおけない。
「いいから来いよ。別におかずたかろうってわけじゃないんだから」
「どうして私に構うの?」
「見てしまったからしょうがないだろ?蒼山が来ないなら私がそっちに行く」
私がそう言うと蒼山も観念して私達と一緒に合流した。
調理科の生徒というだけあって皆自分で弁当を作ってくる。
そしてその弁当の気合の入りようはすごい。
ちなみに私はそこまで時間をかけない。
手早くそしてたっぷりとが私の弁当のコンセプト。
蒼山も私寄りだ。
もっとも量は全然違うけど。
でもシンプルな弁当だった。
「で、私を呼んだ理由は?」
「別に?一人で食ってたから誘ってみただけ」
食事は楽しく。
だから一人で食ってる蒼山を放っておけなかった。
ただそれだけ。
楽しくって言うからには何か話しかけないとだめだよな。
鉄板の質問をしてみた。
「蒼山って彼氏いるの?」
「いるよ」
意外だった。
クールというか無愛想な蒼山に男がいたなんて誰が想像しただろうか?
一緒にいた友達も驚いていた。
このクラスの女子は大体彼氏がいる。
そして大体が防府高校の男子。
蒼山も類に漏れないようだった。
佐渡康平。
大地の高校の友達らしい。
本当に世間て狭いな。
正義感が強く律義な奴。
言い換えればくそ真面目な優等生タイプ。
それなら蒼山にあうだろう。
一見クールぶってる蒼山も話をしているうちに打ち解けていった。
皆と話をしているのを聞きながらスマホを弄っていた。
そして蒼山に言う。
「お前もSHに入れよ」
「そういうのって私の趣味じゃない」
そう言うと思ったよ。
「佐渡も入ったみたいだぜ」
そう言ってスマホを蒼山に見せる。
「うちのグループまだ男子がたりないからさ。横取りもあり得るぜ」
心配だろ?
心配だったようだ。
蒼山は渋々SHに入る。
「で、何をやるグループなの?」
「特に何も?」
高校に入って特に何も無いな。
とはいえ、何かやらないとまずいよな。
閃いた。
「紗理奈。今日放課後暇か?」
私は渡辺紗理奈に聞いていた。
「ああ、いつだって暇だ。カラオケでも行くか?」
帰りに寄る場所と言ったらゲーセンかカラオケくらいしかない。
SAPで遊びまくるって手もあったな。
街のSAPは近所のSAPとは一味違う。
屋上に作られた観覧車やジェットコースターがある。
だけど今日の私はどれも選ばなかった。
「ちょっと行ってみたい店があるんだ」
私は違うクラスの水奈にメッセージを送りながら言った。
「なんの店だ?クラブでもいくのか?」
「パンケーキの店」
女子高生らしいだろ?
茜から聞いた店。
一度行ってみたいと思ってた。
駅ビルにはまだ他に色々お店があるらしい。
3階のフードコートしかないと思ってた私は致命的なミスを犯していたようだ。
やっぱり雑誌とかネットとかで調べないと駄目だな。
どうせ駅ビルの前を通ってバス停に行くんだ。
行ってみる価値はある。
水奈は行くと言っている。
クラスの皆も誘っていた。
「ごめん、連休に遊び過ぎて金欠なんだよね」
そういう奴もいた。
「私は大丈夫だぞ」
紗理奈は言った。
「じゃあ、決まりだな」
そう蒼山に行った。
「私は行くこと確定なんだね」
蒼山は観念したようだ。
そして放課後水奈と待ち合せて駅ビルに向かう。
水奈に蒼山を紹介した。
何人かで話しながら駅ビルに入ってその店に入る。
駅ビルの一階は宝石店や高いブランド物の店が並んでいる。
特に興味がないのでさっさとエスカレーターで上に行ってしまうので見落としてしまう。
同じような女子高生が列を作って並んでいた。
制服からして西校や藤明の子が多い。
まだ会社帰りのOLが並ぶには早い時間だった。
席に着くとメニューを見る。
ダッチベイビーと呼ばれるパンケーキが売りだった。
ちょっと想像していたパンケーキと違う。
それにリンゴとシナモンを乗せた料理がある。
それとミックスフルーツを乗せた普通のパンケーキを注文する。
トッピングも出来るらしい。
ホイップや、バニラアイスはともかく目玉焼きにベーコン?
まあ、海外じゃパンケーキは朝食らしいから普通なんだろう。
普通なんだろうけどホイップクリームとバニラアイスにしておいた。
それと飲み物を頼む。
全部頼んだら焼肉食い放題くらい行ける額になった。
今度から大地と来よう。
フレンチトーストですら下手すればラーメン替え玉出来るくらいの値段だった。
女子高生が「放課後お茶して帰らない?」で済む価格ではない。
海外に本店があって近年日本に上陸したらしくて東京でも並ぶ店なんだそうだ。
水奈とかは食べる前に写真を撮っていた。
また来ればいつでも見れるだろ?とは言いにくい店だった。
その後話題は蒼山を中心にパンケーキを食べる。
パンケーキにこれだけ金払って不味かったらテーブルひっくり返すところだ。
それなりの味だった。
店を出ると「どうする?」と紗理奈が言う。
「もう一件寄りたい店があるんだけど?」
「天音、まだ食うつもりか?」
「中学生でも食えるらしいぞ」
「まあ、お前がそう言うなら私はつきあうけど」
「私は無理、先に帰るよ」
紗理奈は残り、水奈は帰る。
蒼山に選択肢はない。
「蒼山の歓迎会なんだから。お前は残れ」
「……別にいいけど」
茜に聞いた焼き肉屋の系列店に行く。
高校生が食べにくる価格ではなかった。
2人はハンバーグを頼んだ。
スープとご飯はついて来るらしい。
問題は何をおかずにするかだ。
滅多に来ないだろうし食べれるだけ食べておきたい。
ステーキと牛タンとサラダとデザートを頼んだ。
2人もデザートは抑えていた。
ご飯が足りないのでおかわりを注文した。
目一杯食った。
ここも今度からは大地を連れてこよう。
帰ったら愛莉に小遣い交渉しないとやばいな。
店を出ると、蒼山に聞いてみた。
「どうだ?彼氏もいいけど女友達と遊ぶのも悪くないだろ?」
「遊ぶっていうか食べてただけじゃないか」
蒼山は笑っていた。
蒼山の家も近所らしい。
一緒のバスで帰る。
「……ありがとうな。密かに憧れてたんだよね。こういうの。天音の言う通り彼の前じゃ無理だから」
蒼山がそう言う。
「そうだろ?男同士でだって遊んでるんだ。女同士で遊んでも文句言われる筋合いねーよ」
次はカラオケとか行こうな。と、約束すると家に帰った。
もちろん夕食も食べる。
さすがにきつい。
きついと言えば財布の中身もきつい。
さすがに大地に「金くれ」とは言えない。
愛莉が冬眞達を風呂に入れてる時にパパにねだる。
「パパ~お願いがあるんだけど~」
「どうした?天音」
「今月小遣いピンチなんだよね。少し都合してもらえないかな?」
「そういう交渉は愛莉にする決まりじゃないのか?」
「そこを何とかお願い」
「一体何を買ったんだ?」
「聞いてくれよパパ。パンケーキと肉を食っただけなんだ」
「そんな高い店だったのか?」
下手すればクリスマスディナーが食える額だと説明する。
「純也が言ってた店に行ったのかい?」
「うん」
「美味しかった?」
パパが感想を聞いてくる。
そして味を説明してると愛莉達が戻ってくる。
しまった。
パパと話をしていると長引いてしまう事を忘れていた。
「天音。部屋に戻らないで何をしているの?」
まずい!
「ああ、愛莉。天音に小遣い渡してやってくれないか?」
愛莉に内緒でっていうのを忘れてた。
それを聞いた愛莉の表情が険しくなる。
私の行動など愛莉はお見通しだ。
だって私はパパの娘なんだから。
「天音、あなたそういえば今日夕飯控えめでしたね?まさかまた買い食いしたんじゃないでしょうね?」
「そうみたいだよ。美味しかったそうだ」
パパ、そう言うのは言わないのが約束だろ?
「天音!!」
愛莉の説教が続いた。
説教から解放されると部屋に戻る。
「随分絞られてたみたいだね」
茜がPCを操作しながら言う。
「ちょっと高い肉食ったくらいいいじゃんな」
まあ、いくらか小遣いもらえたからいいや。
次からは大地を連れて行こう。
意外と駅ビルには店が多いみたいだ。
食べ歩いてみるのもいいかもしれない。
いつもとんこつラーメンやら味噌ラーメンだったからな。
大地も喜ぶだろう。
この前パパが買ってきた新作のゲームをやっていた。
パパは3本ゲームを買ってきていた。
私は戦闘機のゲームを、空はFPSの最新作を、冬吾は架空世界を舞台にした戦車のゲームをやっていた。
どれも人気シリーズの最新作だ。
「終わったら父さんに貸してくれ」
パパもゲームは好きだし上手だ。
うちでゲームに興味があるのはパパと空と私と冬吾。
茜はネットで適当にゲームをやってる。
課金と呼ばれる行為はあまりしない。
暇な時間に気が向いた時にやるていっだから必要ないのだろう。
冬吾は誠司達がやってるからやってるだけ。
最近だとモンスターを倒すネットゲームに夢中になってた。
茜が寝る頃になると私もベッドに入る。
ゲームというかテレビの光は思った以上に強い。
睡眠の妨げになったら悪い。
もっとも中学生になった茜は勉強やらで日付が変わってから寝るようになった。
私もそのくらいには寝ないと朝が早い。
大地にメッセージを送って寝る。
「今度週末街に食事に行かない?」
大地は最近デートに誘ってくれるようになった。
離れているから不安にさせたくないと思ってるのだろうか?
「わかった」
「じゃあ、楽しみにしてる。おやすみなさい」
週末大地は悲鳴を上げる事になると思ったけど。
「天音もこういう料理に興味持つようになったんだね」
そういう感想をもらった。
大地の懐は全然大丈夫らしい
(2)
「皆さん静かにしてください!」
生徒会執行部が叫んでいる。
俺は梨々香たちと話を聞いていた。
生徒総会と言うものにまったく興味が無かった。
だって校則改正なんてする必要ないだろ?
どうせ守る気ないんだから。
大体スカートの丈だって現行の「膝が隠れる程度」で十分だろ?
それ以上短くしてどうするんだ?
90年代のファッションじゃないんだぞ。
ブランド物のスニーカー履いて来て盗難されたかったら好きにすればいい。
財布持ってきてカツアゲされたきゃされたらいい。
そんな事をやってSHに目をつけられたら某国の諜報員予備生が増えるだけだ。
学校にピアスしてくる意味が分からない。
学ランの裏ボタンをわざわざ替えるファッションが理解できない。
そんなどうでもいい事を延々と話していた。
ちなみに梨々香は校則を守ってる。
悪戯にスカートを短くしても足が冷えるんだそうだ。
今の丈でも下に短パン穿きたいくらいだけどそれをすると猶更スカート丈を短くできない。
ただカーデガンくらいは許可して欲しいと言っていた。
男子は学ランの下に服を着こめるからいい。
しかし女子は冬時期に指定のコートを着てくるくらいだ、
大昔は「貧富の差がでるから」とマフラーすら禁止されていたそうだ。
もはや意味不明の校則。
同様の理由でロングコートの使用も禁止されている学校もあるらしい。
とにかく男子と違って女子は冬とか着こめなくて寒い。
夏も校則で下着は白と決まっている。
それはどうでもいい、夏服の生地が薄いのでどのみち色物のものはつけてこれない。
透けてしまう。
白でも多少透けてしまうのでキャミソールなどを着ているそうだ。暑いけど。
冬はどうするのか梨々香に聞いてみた。
「そんなの聞いてどうするの?」
「聞いたらまずい事なら取り消すよ」
「別に純也になら教えてもいいけど、茜から聞いてないの?」
「今は家が違うから」
「じゃあ、教えるね腹巻とかするの」
は、腹巻!?
「幻滅したでしょ?」
梨々香はそう言ってにこりと笑う。
まあ、若い中学生が腹巻してるなんて想像したら誰だって驚くよね。
でもやっぱり女性はお腹や腰が冷えるのは避けたいそうだ。
中学校の中なら男子の前で制服を脱ぐことはない。
上にセーターを着て良い学校ならそうするけどうちは禁じられている。
「あとは下にヒートテック着たりホッカイロを張ったりすればいいって先輩から聞いた」
「なるほどね」
せめてセーラーの上に何か着るくらい許してやったらいいのに。
スカートの丈を短くするよりよほど死活問題だろうに。
まあ、騒いでるのはFGの連中だ。
生徒会役員は集まって相談していた。
生徒会長の大原奏がマイクの前に立つ。
結論は「却下」だった。
その理由を奏が説明する。
「これまで校則は改善されてきた。買い食いも許可がでた。学校内にジュースの自販機も設置した。靴も白を基調としたものに変更されてきた。全部先輩たちの努力です」
「だったらお前らも努力しろよ!」
FGの連中が野次を飛ばす。
「だけどその結果皆はどうした!?通学路のあちこちにゴミはばらまかれ、中庭に空き缶やペットボトルが捨てられている。靴だって運動靴じゃないものを履いてるじゃないか」
生徒会がいくら改善を求めてもその結果を突きつけられてはどうしようもない。
ゴミの問題は苦情が来るくらいだ。
コンビニのゴミ箱もコンビニで買ったものでないものまで捨てられ、分別すらせずに捨てた結果。コンビニはゴミ箱を撤去した。
学校側はやはり買い食いは禁止するべきなんじゃないかと反論してくる。
それを考え直してもらえるように生徒会は必死らしい。
連休の間も打開案を見つけようと話し合いが行われたそうだ。
ルールを改善しようにもその結果が悪い方向に向かうのであれば通るわけがない。
真っ赤な靴を平然と履いてくる生徒を弁護できるわけがない。
これ以上の校則の改善は生徒が生活態度を改めない限り無理だと結論付けた。
違反する者がいるから馬鹿正直に校則を守っているものが損をする。
そんな事態を避けるだけで精一杯だと言う。
今の現状を作り出したのは生徒自身じゃないのか?
そう問いかける。
皆黙ってしまった。
生徒会がいくらいい方向に改善しようと働きかけても結果がついてこないのではこれ以上の要求は出来ない。
皆が校則を守っていればそんな事態にはならない。
現に私服で登校していい中学校もあるらしい。
それは皆が中学生らしい姿を理解しているから。
成績もかなりいい学校なんだそうだ。
自由を手に入れる代わりに責任が付きまとう。
片桐家ではずっと言われている事。
そしてその自由の代償が今突きつけられてる。
スカートの丈の自由化を訴えていた者は下がった。
議題に「自販機のジュースの種類を増やして欲しい」と書かれてあったが取り下げられた。
学校のゴミ箱は空き缶もペットボトルも一緒に捨てられている。
美化委員長はその事について追及する。
これ以上守れないなら紙パックの自販機に変更する。
当然皆は反発する。
だったら分別くらいきちんとしろ。
納得せざるを得ない状況だった。
奏が言った一言が皆の心に突き刺さる。
生徒総会は2時間で終わらずに時間切れとなった、
生徒総会が終ると教室に戻り清掃の時間になる。
ゴミ捨ての係はゴミ袋を持って所定の場所に集められる。
そのゴミ袋には飲みかけのジュースがこぼれて液体が溜まっていた。
空き缶とペットボトルが混ざっていた。
清掃が終ると終礼があり、梨々香と一緒に帰る。
帰りにコンビニに寄る
ペットボトルのジュースを買って飲みながら帰る。
ゴミは家に持ち帰り家で分別して捨てた。
翌日学校に行く。
相変わらず個性という盾をもって校則を無視した服装でくる生徒がいた。
(3)
運動会があった。
中学校の運動会は走る種目が多い。
そして一人で何種目でも出て良い。
前日に誰が何の種目にでるか相談して決める。
結果私は走る競技全てに出る羽目になった。
運動部に所属しているわけでもないのに。
パパも愛莉もりえちゃんもおじさんも応援に来てた。
小学校の時と違うのはお昼の弁当は親と一緒に食べない事。
皆教室で弁当を食べる。
そして午後の部が終り閉会式をもって運動会は終わった。
さすがに疲れた私は家に帰ると少し仮眠をとる。
夕食を食べてお風呂に入って部屋に戻る。
そして壱郎のメッセージに気付く。
「今日はお疲れ様」
「ありがとう、壱郎もお疲れ」
その後ブログの更新をしながら天音のゲームを見ていた。
壱郎からメッセージが届く。
「明後日暇?」
明後日は振り替え休日。特に予定はなかった。
「暇だけど」
「SAPに行かない?」
「いいよ」
「じゃあ、現地集合で」
その後も少しやり取りをして疲れていたので早めに寝た。
当日家を出てSAPに向かうとクラスメートに会った。
田口緑。クラスメートだ。
「おはよう、茜」
「おはよう。今日はデート?」
緑にも付き合ってる人はいる。
この辺の同級生で彼氏がいない子をあげた方が早いくらいだ。
「茜は何も聞いてないの?」
「なんの事?」
そんな話をしていると壱郎が兄の壱成を連れて来た。
「おまたせ」
「壱郎、説明して欲しいんだけど」
「あ、言うの忘れてた。ごめん。実は運動会の後壱成と話したんだけど」
私が真香を連れて来た時の話をしたそうだ。
すると壱成が俺達もそういうの面白そうだからやってみたいと言ったそうだ。
「茜もまえに江口さん連れて来たしいいだろ?と思って。まずかった?」
「そんなことはないけど」
「ごめんね、茜。なんか邪魔してるみたいで」
緑が謝っている。
「本当に大丈夫だから。偶にはこういうのもいいよね」
それから4人で1日遊んだ。
お互いの事を話した。
男子というのはどうして余計な事を喋りたがるのだろう?
私と緑がお互いの彼を叱っていた。
もちろん私がスカーレットだということは内緒にしておいてくれた。
そして日が暮れる頃店を出る。
私は3人と別れて家に帰った。
風呂に入って部屋に戻るとスマホを見る。
着信履歴があった。
壱郎からだ。
どうしたんだろう?
私から電話してみる。
「もしもし?」
「壱郎、どうしたの?」
「いや、今日機嫌悪かったのかな?って思って」
へ?
「なんでそう思ったの?」
「怒ってたじゃん」
そんな事か。
「それは単純に壱郎が悪いだけだよ」
夜の事まで暴露されて気分いいわけないじゃない。
「あ、ごめん」
「まあ、男同士でそう言う話をすることもあるんだろうけど、彼女の前でわざわざ持ち出す話題じゃないと思うよ」
「今度から気を付けるよ」
「うん、それよりそっちはどうだった?」
「何が?」
「壱成は私の事どう思ってる?」
「茜、壱成が気になるの?」
「違うって!」
良い彼女だな。とか何か感想なかったか聞きたかっただけ。
折角だもん、壱郎が恥ずかしくない彼女でいたいじゃない。
「そういう事なら大丈夫だよ」
「用件はそれだけ?」
「うん」
「じゃあ、また明日」
「おやすみ」
電話を切って机に置いた。
PCを触りながら天音のゲームを観てる。
「やっぱクラスメートとかでも”彼女です”って改めて紹介されると苦労するよな」
天音は話の内容を聞いていたようだ。
「そうだね。天音もそうなの?」
「私の場合は大地だろ?大地に恥かかせないように苦労してるよ」
「そっか」
「まあ、上手くいったみたいでよかったじゃねーか」
「まあね」
そんな話をしながら天音はゲームをしていた。
片桐家の人間は家にいる時は日付が変わる頃には皆寝る。
徹夜なんて絶対にしない。
別に美容に気を使ってるわけじゃないけど、冬眞達が寝てる。
明日の授業に差し支えるから。
徹夜で勉強して授業で寝てたら意味がない。
「そろそろ寝るか」
天音が言うと私もベッドに上がる。
真香に壱郎を紹介した時も壱郎は今の私と同じ気持ちだったのだろうか?
壱郎の場合は初対面だ。
そういや聞いてなかったな。
今度聞いてみよう。
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