姉妹チート

和希

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輝く時の中で

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(1)

「事故にはくれぐれも気をつけなさい」

 母さんが言う。

「行ってきます」

 母さんに言うと僕は車を出した。
 何日か前に僕と翼の車が出来上がった。
 それを受け取ってきて休日に美希と初ドライブすることになった。
 母さん達もついて行こうか?と言っていたけど「初めてなんだから2人で楽しんできなさい」と父さんが言う。
 それから美希と二人でどこに行こうか相談していた。
 母さん達にも聞いてみた。

「今なら大観峰にでも行ってみたらどうだい。行きと帰りを違うルートで帰れるし」

 お勧めのお店もあるという。
 僕と美希はそこに決めた。
 大観峰に行くにはいくつかルートがある。
 いずれも瀬の本高原を通るんだけど。
 朝は海が見晴らしが良いだろうと別府周りにで山を登って水分峠を抜けてやまなみハイウェイを通っていく。
 翼は隣でFMラジオを聞きながら上機嫌で話していた。
 父さんの言う通り混んでいたといったら水族館の前くらいで後はすいすいと進めた。
 別府に着くとコンビニでジュース等を買ってから再び出発する。
 山を登っていると美希は助手席から外を見てその綺麗な景色に感動していた。
 遊園地の前を過ぎて湯布院を越えて水分峠で再び休憩する。
 何か買うわけじゃない。
 最初のうちは緊張するから休憩しながら行きなさいと父さんが言ってたから。
 確かに疲れる。
 峠道を抜けてきたせいもあるけど。
 美希がソフトクリームを奢ってくれた。
 ありがたくいただく。

「ここでお昼食べてく?空お腹空いてない?」

 美希が聞いてくる。

「大丈夫、父さんの言ってた店が気になるし我慢するよ」
「空だったらここで食べても食べられるんじゃない?」

 まあ、そうなんだけどせっかくなら空腹で楽しみたい。
 車に乗ると目的地に向かう。
 ひたすら広い高原かと思ったら再び山を登る。
 案の定煽ってくる車がいた。
 車間距離を詰めて来てパッシングしてくる。
 ハザードランプをつけて道を譲る。
 後方の車は激しい音を鳴らして一気に僕達を抜き去っていった。
 白いラリーカーだった。

「空も本当はあんな車乗りたかったんじゃない?」

 美希が聞いてくる。

「まあね、ディーラーで試しに運転席に座らせてもらった」
「どうしてこの車にしたの?」
「運転しやすそうだったから」

 車高が高いから。ゆったりした空間だから。シートも座り心地が全然違った。
 そして山道も難なくこなせる。
 茜に弄ってもらえたら飛ばすことも可能だろう。
 ただそうするとこの車を買った意味が無くなってしまう。
 ハンドルも軽い。
 難点は燃費が悪い事。
 翼の車の半分以下の悪さだ。
 ディーゼルだけど車体がデカくて重いのとタイヤもでかいせいだ。
 それ以外は特に問題ない。
 ディーゼル車なのに不気味なくらい静かに走る。
 燃費も悪いといったけどさっき僕を抜き去っていったスポーツカーよりは僅かに良い。
 そんな話をしているうちに目的地に着いた。
 駐車場は空いてた。
 車を止めると車を降りて丘を上がる。
 その先に広がる巨大ならカルデラ。
 美希は写真を撮っていた。
 自撮り棒も持ってきていたらしい。
 看板の前に立って2人で写真を撮っていた。

「空にも送ってあげるね」

 美希はそう言いながらスマホを弄っている。
 景色を楽しむと来た道を戻る。
 そして父さんの言ってた店に寄るとうどんと高菜めしのセットを頼んだ。
 美希は高菜めしだけにしていた。
 父さんが勧めるだけの事はある。
 美味しい。
 美希は食べる前に写真を撮っていた。
 時間は14時を回っていた。
 帰りは竹田に抜けて朝地・犬飼へと抜ける。
 自動車道が途中まで通っていたけど敢えて国道を通った。
 ケチったわけじゃない。
 だってただなんだから。
 ゆっくり帰って途中で夕食に寄って帰ろうと決めていた。
 国道を夕方になるとやはり混む。
 地元に着く頃には日が暮れていた。
 夕食を食べて家に帰る。

「おかえり。どうだった?」

 父さんから聞かれた。

「やっぱり長時間運転するのは疲れるね」

 美希も満足していたと話す。
 天音や茜が今度は私達も乗せてと言う。
 風呂に入って部屋に戻る。
 グルチャを見ると善明の車が届いたらしい。
 見た目は普通のSUV車と変わらない。
 だけど、僕の車が2台は買える値段だそうだ。
 燃費もスポーツカーと変わらない。
 まあ、燃費を求める会社の車じゃないんだけど。
 美希からメッセージが届いていた。

「今日はお疲れ様」
「ありがとう」

 そうやって一日の疲れを癒してベッドに入る。
 疲れていたせいかすぐに眠れた。
 翌日学校に行くときに車庫を見ると少し汚れていた。
 今度洗車してやらないとな。
 そして自転車で学校に向かった。

(2)

「じゃあ次亀梨光太君どうぞ」
「はい」

 俺の番が来たようだ。

「失礼します」

 学校で習って来たとおりに挨拶する。

「かけてください」

 椅子に座る。
 今日は俺と麗華は入社試験を受けていた。
 筆記試験を終えた後少し休憩して面接に入っていた。
 他校からも何人か来ている。

「じゃあ、まず当社を志望した理由を聞かせてください」

 面接官は全員で5人いる。
 緊張はしていたが、次々と投げかけられる質問に答えていた。
 一通り質問が終ると面接官がくすりと笑う。

「随分学校で練習したんだね」

 ちょっと捻った方が良かったか?

「車の免許はこれから取るの?」
「はい」
「早く取っておいてね。家から会社までの通勤に慣れて欲しいし」
「通勤は徒歩にしようかと思っていたのですが」
「営業にしろ現場監督にしろ車は必須だよ。もちろん社用車も用意してあるけど君営業希望?」
「そういうわけではないんですけど」
「現場に直接行ってもらうから車は買っておいてね」
「分かりました」
「最初は雑用が多いけど頑張って」
「はい」
「残業は極力させないように上から言われてるから心配しないで」

 ああ、俺採用決まってるんだな。

「じゃ、今日はご苦労様でした。頑張って学校卒業してね」
「ありがとうございました」

 そう言って俺は退室する。

「どうだった?」
「採用は決まってるみたいだ」

 麗華に答えた。
 それからしばらくして麗華が呼ばれる。

「そんなに緊張する必要ないぞ」
「分かってる」

 そう言って面接室に入る麗華。
 10分くらいで出てきた。

「どうだった?」
「受付をやってもらうから化粧くらいは覚えて来てくれって」

 麗華はそう言って笑顔をみせた。
 夕方を過ぎていたので家に連絡して夕食は2人で食べた。
 翌週職員室に呼び出された。
 渡されたのは採用通知書。
 来年の4月から働く事になる。
 その翌日俺は自動車学校に手続きに行った。
 中免を持っていたので若干早く免許を取れるみたいだ。
 そして免許を取ると父さんと一緒に車を見に行く。
 乗る車は決めてあった。
 皆より一足遅いけど車を手に入れた。
 色々弄りたいけどまた麗華の苦情が来る。
 我慢しておいた。
 週末に麗華とドライブに行った。
 麗華は少し化粧していた。
 今のうちに練習しておこうと思ったのだろう。

「化粧似合ってるよ」
「わき見しないで前見て運転して」

 せっかく内定決まったのに事故死はごめんだ。
 麗華はそう言って笑う。
 いつか見たあの夢を両手でだきしめたら、離さず諦めずに信じ続けよう。
 輝く時の中で守り続けよう。
 辿り着くときまでこの手を離さない。
 ずっと追い求めていく。
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