姉妹チート

和希

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閉じ込めた夢

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(1)

 おかしいと気づいたのは一月前だった。
 俺の彼女の崎岡純香の前髪が微妙に短くなってる。
 その変化に気付くのは多分俺がずっと純香を見てきたから。
 俺と純香は通ってる高校が違う。
 だから週末必ずデートしてた。
 その度に純香は髪形を変えて誤魔化していたが気づいてしまう。
 何かあるに違いない。
 そう思って純香に聞いてみた。

「ただの、イメチェンだよ」
「ふざけるな!」

 思わず怒鳴ってしまった。
 純香の目は滲んでいた。

「ごめんなさい……」
「いや、俺の方こそ突然怒鳴ってごめん」
「そうじゃないの」

 そして純香は打ち明けた。
 嫌がらせを受けているらしい。
 陰湿ないじめ。
 そんないじめに抵抗できない自分が歯痒く思っているそうだ。

「どうかこんな情けない私と嫌わないで」

 そう言って抱き着く純香。

「大丈夫だ。嫌いになったりするもんか」

 優しく言って純香を落ち着かせる。

「また何かあったら相談しろ」
「うん」

 そう言って純香を家に送り届けて俺も帰った。
 それからこまめに連絡を取るようにした。
 不安で仕方なかったから。
 だけど仮に何かされていたとして俺に何がしてやれる?
 慰めるくらいしかできない自分が腹立たしい。
 人に言っていい事かどうか分からないけど他人の力を借りるしか方法がない。
 そして今俺はクラスメートの石原大地の席にいた。

「どうしたの?」
「ちょっと相談があるんだけどいいかな?」

 石原大地の彼女・片桐天音は純香と同じ学校に通っている。
 石原大地も所属しているSHと言うグループは市内では強大な力を持っている。
 しかし個人的な理由で動いてくれるだろうか?
 いじめがもっと陰湿化しないだろうか?
 悩んでいても仕方ない。
 他に手が無いのだから。
 ダメもとで大地に相談してみた。
 大地は俺の話を聞くと頷いてスマホを操作する。

「連絡先教えてよ。一緒のグループにいた方がやりやすい」
「……助けてくれるのか?」
「もっと早く言ってくれたらよかったのに」
「なんとかなるのか?」
「天音なら無理矢理でもなんとかするよ。その後始末は僕がする」

 大地は笑顔だった。
 これでよかったのだろうか?
 大地は心配いらないと言っている。
「ついでだから崎岡さんも招待しておいてよ」と大地が言うので俺は招待した。
 突然の事で驚いてる純香に説明する。
 そんなやりとりを見ていたらしい天音が一言いう。

「明日には片付いてるから心配するな!」

 俺と純香は天音に望みを託した。

(2)

 今日は寄り道せずに家に帰った。
 水奈と二人で崎岡純香の家にプリントを届けに行った。
 純香は部屋着で出てきた。

「これ、プリント。頼まれて持ってきた」
「ありがとう」

 純香はプリントを受け取ると礼を言う。

「具合悪いのか?」
「……そういうわけじゃないんだけど」
「ちょっとお邪魔していいかな?話が長くなりそうだ」
「どうぞ」

 そう言って私と水奈は家に上がり純香の部屋に行く。
 純香はお茶とお菓子を用意してくれた。
 それを頂いて話をする。
 まどろっこしい話をするつもりはない。
 こっちから話を切り出した。

「大地を通じて話は大体聞いてる。お前虐められてるんだって?」

 純香は黙ってうなずいた。

「誰に虐められてるんだ?」

 文字数がもったいない。名前は省略する。
 純香が受けている嫌がらせの内容を聞いた。

「わかった。明日迎えに来るから一緒に学校行こうぜ」
「でも……」
「心配いらない。このままじゃお前留年だぞ」
「わかってる……」
「じゃ、明日来るから準備しとけよ」

「また明日」と言って純香の家を出た。
 家を出るとまず紗理奈に連絡をする。
 こう言う奴等は二度と歯向かう気を起こさないように徹底的にしないとな。
 そして翌日水奈と純香の家に迎えに行った。
 純香は制服に着替えて待っていた。
 一緒にバス停に向かう。
 バスに乗って駅前で降りて学校へ向かう。
 教室に入るととりあえず席に着く。
 朝は何事もなかった。
 そんな時間も無いのだろう。
 事件は休み時間に起こった。
 昨日純香が言ってた通り何人かに呼び出されていた。
 私達はそれを尾行する。

「髪の毛はこれ以上切ったらバレちまうよな?」
「崎岡はもうちょっとおしゃれしろよ。スカート長すぎじゃね?」
「じゃあ、今日短くするのはスカートにしましょうね~」

 抵抗できず、ただ震えて立ち尽くしている純香。
 そろそろ頃合いだな。

「なるほど、こんな場所があったとはな。私達の目に届かないわけだ」

 そう言って私達は姿を現す。

「なんで片桐がここにいるんだよ!?まさか崎岡がチクったのか?」

 雑魚共は純香を睨みつける。

「お洒落しろよか。確かにお前らの言う通りだな。紗理奈、貸せ」

 紗理奈からハサミを受け取ると私は雑魚の中でもポニーテールの奴を捕まえてゴムでくくってある部分から先を切り落とした。
 切られた女子生徒は泣き叫ぶ。

「何するんだよ片桐!?」

 他の雑魚が怒鳴りつける。

「長さに不満があるならこういうのも用意してあるぜ?」

 そう言って紗理奈はバリカンを見せる。

「それともスカート切り裂いておくか?時代錯誤の馬鹿ギャルに変身させてやってもいいぞ」
「こんな事してタダで済むと思ってるのか?」
「それはこっちの台詞だ。今日からお前らは私達の玩具だ。純香に妙な真似したら今度はこんな程度じゃ済まないぞ」

 全員丸刈りにしてやる。
 そう言うと雑魚共は立ち去っていった。
 もう大丈夫だろう。
 私はまだ震えている純香の肩をたたいた。

「もう大丈夫だ。これからは私達があいつらを見張ってる。下手な真似すれば徹底的にいたぶってやる」
「元気だしなって。今日は純香の歓迎会しようよ。純香の分は私が払うからさ」

 美穂が言う。
 それ以来、純香に対する嫌がらせは無くなった。
 純香に近づく事すら許さなかった。
 純香に何かあったらお前らが罪を償う事になる。
 そう警告しておいた。

「忘れるな。おまえらはずっと見張られているという事を」

 その事を大地に報告する。

「後は任せておいて」

 翌日髪を切った女子生徒は親を連れて学校に来たらしい。
 当然私達は呼び出された。
 だけど私達は動揺しなかった。

「そっちの方が似合ってるじゃん?」

 紗理奈がそう言って笑っていた。
 校長共は私達に言及することはなかった。
 帰りに街の美容室に純香を連れて行く。
 祈が手配しておいてくれた。
 切られた前髪を整え全体を合わせる。
 カットが終ると店を出る。
 もう駅前はイルミネーションが点灯していた。
 もうすぐクリスマスなんだな。
 そんな光景を目にしながら私達は家に帰った。

(3)

 ショーウィンドウもクリスマスモードに入っていた。
 クリスマスのバーゲンセールもやってる。
 美穂たちの買い物に付き合っていた。
 コートやらブーツやら色々物色している。
 紗理奈も何か目ぼしいものはないかと漁っていた。
 そんなもみくちゃにされた服を着るのか?と思っていたけど。
 買い物が終るとバス停に向かう。
 デパートの前からも乗れるけど定期が使えない。
 だから歩いて駅前に移動していた。
 途中で洋菓子屋さんがある。
 洋菓子屋もクリスマスケーキの予約とかで忙しいのだろう。
 すると一人の女子生徒が立ち止まった。
 相馬絢香。
 私達の中でも彼氏がいないというちょっと寂しい組だ。
 もちろんケーキに目がくらんだわけじゃない。
 ケーキを作っている職人に目が行ったみたいだ。
 一目惚れ。
 誰が見ていても分かってしまう、人が恋に落ちる瞬間。
 私もその職人を見た。
 まあ、常識的に考えて年上だ。
 爽やかな好青年。
 彼女くらいいるんじゃないのか?
 だけど誰も「やめとけ」と言わない。
 やってみなきゃわからないことだってある。

「絢香、ついでだからケーキ見ていこうぜ」

 そう言って絢香の手を引っ張って店に入る。

「いらっしゃいませ」

 閉店間際で片づけで忙しいみたいだ。

「お前が何か言わないと始まらないぞ?」

 そう言って絢香の背中を押してやる。

「あの!」
「はい、どれをお求めですか?」

 店員が聞き返した。

「あなたを私に下さい!」

 絢香が言うと店員が驚いている。
 絢香は続けてこう言った。

「一目惚れです。付き合ってもらえませんか?」
「お客様……この場ではちょっと困ります」
「ダメですか?」
「君、自転車で来たの?」
「いえ、バスです」
「じゃあさ、もうすぐ店閉めるから隣のコーヒショップで待っててもらえないかな?」
「わかりました」

 ただ告白して帰ったんじゃ悪いから私達がケーキをいくつか買う。
 店を出ると絢香は私達と別れてコーヒーショップに入った。

「天音は脈ありと分かっていて絢香を後押ししたの?」

 美穂が聞いてきた。

「そんなわけねーじゃん」

 ただ言いたい事言えずに年越すのも嫌だろ?
 スッキリして新年迎えた方がいい。
 ただそれだけ。
 後はなるようになれ。
 きっと神様も応援してくれるよ。

(4)

 コーヒーショップで1時間近く待っているとさっきの店員がやって来た。
 無理言って定時で帰らせてもらったらしい。
 冷静に考えたらこの時期に洋菓子屋さんが暇なわけがない。
 彼に迷惑かけたかな。
 私服の彼も素敵だった。
 彼はコーヒーを買ってきて私のテーブルの向かいに座った。
 コーヒーを一啜りすると先に彼の方から話しかけてきた。

「君、名前は?俺は東山吉生」
「私相馬絢香で。絢香でいいです」
「じゃあ、俺も吉生でいいよ。絢香は今いくつ?その制服桜丘だよね?」
「17歳。今高2です」
「17歳か……同い年の子に好きな子とかいないの?」

 遠回しに拒絶されてるのだろうか?

「いません……あの、私じゃ迷惑ですか?」

 普通に考えたら迷惑だろうな。

「あ、いや。そういうわけじゃないんだ。ただ俺22だからさ女子高生からしたらおっさんなんじゃないかって」
「そんな事無いです。素敵な方だと思います」
「ありがとう。で、俺を選んだ理由は?」

 単なる一目惚れだと告げた。
 偶然店の前を通って偶然吉生をみかけただけ。

「あの、彼女がいるとか私じゃ子供だとかそういう理由ならはっきり言ってください。諦めますから」

諦めるしかないんだろうな。

「大丈夫。心配するような事はない。ただこれまでそういう交際とかしたこと無かったから」

 一途にパティシエの道を歩んできたらしい。
 世界的な賞も受賞したんだとか。

「私、吉生の邪魔になる?」
「絢香は何でも否定的に捕らえるんだね。違うよ。僕はもっと別の事で悩んでる」

 別の事?

「とはいえ、悩んでいても仕方ないよね。家まで送るよ」

 そう言って吉生は席を立つ。
 そして吉生の車まで歩いて車に乗り私の家に向かう。
 私の家の前に車を止めると何故か吉生も車を降りて呼び鈴を鳴らす。

「おかえり……隣の方は誰?」

 母さんが訝しげに吉生を見ている。
 吉生は自己紹介して事情を説明する。
 それを聞いた母さんはとりあえず家に上がってくださいと言った。
 リビングには父さんと母さんがいる。
 吉生は再び事情を説明した。 

「いきなり押しかけてすみません。ただこういう事はきちんとしておいた方がいいと思ったので」

 吉生は私と真剣な交際をしたいと言った。
 それが答えなんだ。
 私も吉生と一緒に両親に頭を下げた。

「まあ、そういう事ならしょうがないですね。誘ったのは娘の方らしいし」

 父さんはあっさり承諾する。
 父さんも吉生なら大丈夫だと思ったのだろう。

「ありがとうございます。不慣れなので失礼をするかもしれませんがよろしくお願いします」
「こちらこそ娘をよろしく頼むよ」

 昔なら結婚できる年齢。娘が選んだ男性なら文句は言わない。
 父さんはそう言った。
 挨拶を済ませた吉生は家を出る。

「待って吉生!」

 慌てて吉生を呼び止める。

「連絡先くらい交換しないと」
「あ、そうだね。ごめん。本当に慣れてないんだ」

 連絡先を交換するとじゃあまたと言う。
 まだ駄目だよ。
 車に乗り込もうとする吉生の手を取るとキスをする。
 吉生にとっては初めてだったそうだ。

「じゃあ、気を付けて帰ってね」
「ありがとう、じゃあ。またね」

 そう言って吉生は帰って行った。
 私も家に戻ると夕食を食べて風呂に入って部屋に戻ると皆に連絡する。

「おめでとう、よかったね」

 そんなメッセージで溢れていた。
 それからしばらくメッセージをやって最後寝る前に吉生に「おやすみ」とメッセージを送る。
「おやすみ」と返って来た。
 朝になると「おはよう」とメッセージを着信していた。
 返信すると制服に着替えて準備をして家を出る。
 バス停には皆が待っていた。
 私を見るなり「今度から美味しいケーキ食えるな!」と天音が言う。

「友達に割引してもらえるように言っとくよ」
「頼む!」

 そしてバスが来てバスに乗って学校に向かう。
 クリスマスはきっと忙しいだろうけど。
 年末くらいは一緒にいられるといいな。

(5)

「天音、明日暇?」

 美穂からだ。

「暇だけど?」

 強いていうなら年内に宿題を片付ける為に必死になってる事くらいか。

「じゃあさ、SAPで遊ばない?」
「別にいいけど?」

 どうして個人メッセージなんだ?
 皆と遊んだ方が良くないか?
 その回答は美穂が説明してくれた。
 SHの彼氏いない女子はまだ何人かいる。
 で、美穂の知り合いを紹介したいんだけど3人じゃ間が持たないから私にも来て欲しい。
 私は盛り上がっていた。
 そう言うのは得意分野だ。任せろ!

「じゃあ、11時にSAPでね」

 そして翌日SAPに向かう。
 美穂と池山唯香といかにもイケメンな男が立っていた。

「紹介するね。黒崎恭也。なんと藤明の特特進なんだよ!」

 そりゃすげーな。驚いた。
 県内じゃ上野丘高校とタメ張るくらいの私立高じゃないか。
 いっちゃ悪いがうちのような高校とつり合い取れる奴じゃねーぞ。
 美穂が黒崎に私のことを紹介している。

「片桐天音さんね。よろしく」

 そう言って爽やかな笑顔を見せる黒崎。
 多分アニメにしたら白い歯がキラリと光っているんだろう。
 大地がいなかったら私の彼にしたいくらいだ。
 大地と比べるのは話が違うと思うけど。
 もちろん大地も来ている。
 美穂の彼氏の朝倉は今日は仕事らしい。
 教師は長期休暇の間も仕事があるんだそうだ。
 それから5人で遊んでいた。
 ボーリングしてゲーセン行ってカラオケして。
 途中で私はトイレに行く。
 トイレから出ると大地が待っていた。

「どうした?」
「いや、ちょっと気になることがあって……」
「気になる事ってなんだ?」
「あの、黒崎恭也って男子の事」

 大地でも不安になるんだろうか?

「大丈夫だ、私に相応しいのは大地だけだから。それとも私が大地に相応しくないか?」
「そうじゃないけど」
「じゃあ、気にするなよ。私にその気はない」
「そうじゃなくて」

 ちゃんと最後まで大地の話を聞いておくべきだった。
 部屋に戻ると唯香が泣いている。
 それを宥める美穂とそんな2人を嘲笑っている黒崎。

「じゃ、俺用済みみたいだから帰るね」

 そう言って部屋を出ようとする黒崎の腕を掴んだ。
 黒崎の前には大地が立ちふさがっている。

「美穂、何があったか説明しろ」

 美穂は説明した。
 私が部屋を出た後後を追うように大地も部屋を出て行った。
 唯香の隣には黒崎が座っていた。
 私がいた時と同じように話が盛り上がっていた。
 けどそれは黒崎が合わせていただけの話。
 唯香は行けると思ったのだろう。

「連絡先交換しませんか?」

 そこから状況は一変した。
 黒崎は鼻で笑ってこう言った。

「やっぱり思った通り時間の無駄だったな」

 黒崎は最初からこうなることを予感していたらしい。
 端から唯香の事なんかどうでもよかったんだ。
 ただ、自分の見た目と藤明特特進と言うステータスに酔いしれているだけの下種。
 ちょっと優しくしてやるだけで女子は皆自分に靡くと思っているらしい。
 そしてそんな黒崎に唯香はまんまとはまってしまった。

「これだから馬鹿な女はつまらねーんだ。すぐ恋に憧れる。ただの時間の無駄なのに」

 黒崎が言うと唯香は泣き出した。
 そして今の状況がある。

「ま、他につり合いの取れる男なんていくらでもいると思うから他あたりなよ」

 黒崎はそう言って私の手を振りほどいて大地を押しのけようとする。
 だが、大地は動かなかった。

「何勘違いしてるの?君?」
「は?」
「最初から感づいていたんだけど、勘違いも甚だしいよ君」
「どういう意味?」

 黒崎が言うと大地は私を指差していった。

「そこにいる彼女はそんなに勉強してないのに特特進推薦された結果、それを投げ捨てて桜丘に通ってる。はっきり言ってブランドに酔ってるだけの見苦しいのは君の方だよ?」
「お前俺に喧嘩売ってるの?チビ?」
「それは俺の台詞だ。大した実力を持ってるわけでもなさそうなのに少ない長所の見た目まで不細工にされたいなら相手するよ?」
「大地止めとけ!」

 こんな奴お前が殴る価値がない。
 やるんだったら私がやる。

「もういい!」

 そう叫んだのは唯香だった。

「ごめんね。私頭悪いから一人で舞い上がってたみたい。場を白けさせちゃったし帰るわ」

 そう言って部屋を飛び出す唯香。

「お前の周りにどんな女がいたのか知ったこっちゃないが、相手が本気だったかどうかも見抜けないのならただのカスだ」

 私がそう言うと黒崎は黙ってしまった。
 後味が悪いまま遊びは終わった。
 帰りは同じバスで帰った。
 気まずい空気のまま。
 やがて美穂が話し出した。

「恭也の事ゆるしてやってくれないかな?恭也にも色々事情があってさ」
「美穂、話すことはない!」
「恭也だって反省してるんでしょ?恭也の事誤解されたまま終わったら後味悪い」
「どういうことだ?」

 私が美穂に聞いていた。
 両親は別居しているらしい。
 その事が恋愛不審につながった。
 両親が別居する時黒崎は泣きもせず怒りもしなかったそうだ。
 真実の愛なんてない。
 そう思い込んでしまったのだろう。
 そして唯香が嬉しそうにしているのを勘違いしてしまった。
 こいつもどうせ見た目に惑わされているだけの雑魚だと。
 大抵の奴は怒って帰るそうだ。
 そんな奴等をみて黒崎は笑っていたらしい。
 だけど唯香の反応を見てさすがに動揺したらしい。

「笑いたければ笑え。お前たちの言う通り俺は勘違いして他の女と変わらないただの道化だ」

 黒崎は言った。

「本当にそう思っているんだったらやる事あるんじゃねーのか?」

 私は黒崎に言った。
 唯香の事をちゃんと見てやれ。やり直しは何度でも出来る。

「どうすればいいんだよ?」
「それを探して足掻くのがお前のやるべきことだ」

 バス停を降りると二人と別れた。
 クリスマスイブを前にしてお先真っ暗の展開になってしまった。
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