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想いは空を染める
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(1)
小学校の運動会。
子供たちは張り切って競技に参加してる。
それにひきかえ、誠達は小学校の運動会を宴会と勘違いしているようだ。
桜子が何度注意しても止める気が全くないらしい。
誠を止める役の神奈もまた飲んでいた。
飲んでない親を挙げて行った方が早いくらいだ。
僕と愛莉と石原君と酒井君。
子供たちがお昼に弁当を食べる前におかずを食べつくすという無茶苦茶な事をしている。
しょうがないから余分に作っておいたおかずを誠司達に分けてあげる。
そんなんだから「お父さんお酒臭いから嫌い」って言われるんだぞ。
冬眞と莉子も大人しくご飯を食べている。
そして午後の競技が始まる。
父兄参加の競技もある。
誠達は寝ている。
何しに来たんだ?
しかし僕達くらいの歳で若い親を相手にするのは結構辛い。
愛莉も大変そうだった。
「冬夜さんもたまには運動しないと駄目ですよ」
愛莉は笑ってそう言った。
競技が全て終わると誠達を起こして家に帰る。
「冬夜。冬吾達はどうだった」
父さんが聞く。
「ちゃんとカメラに収めておいたよ。今夜でもゆっくり見ると良いよ」
「悪いな」
「愛莉!いつもの事だ!今夜は焼肉だよな!」
天音は弟の競技よりその後の夕食の方が重要らしい。
冬吾達が帰ってくると着替えてそして少し休ませてやってから起きてくると焼肉屋さんに連れて行く。
冬吾や冬眞は相変わらずの活躍だった。
徒競走はもちろん他の個人種目や団体種目。最後の対抗リレーまでしっかり活躍していた。
その分冬吾と冬莉はしっかり食べていたけど。
僕は最近食べる量が減って来た。
自分で実感するくらい減って来た。
その分お酒の量が増える。
泥酔はしなかったけど。
「トーヤもやっと酒の楽しみ方を覚えたか」
カンナがそう言ってた。
「冬夜さん、少しお酒を控えてください。体に悪いですよ」
愛莉に注意される。
「今日は帰ってからのお酒はだめですからね」
「いや、愛莉ちゃん。こういう目出度い酒は滅多にないんだから……」
父さんが言うけど愛莉は受け入れない。
「冬夜さんは明日仕事なんです」
片桐家は女性に逆らえない。
まさにその通りだった。
だけど愛莉の意図は大体わかっていた。
家に帰って風呂に入るとテレビを見て寝室に行く。
ベッドに入る愛莉の上に覆いかぶさるように抱いてやる。
「今日は飲み過ぎたようだ。愛莉が介抱してくれないかい?」
「……困った方ですね」
愛莉は嬉しそうだった。
「今頃翼と空はどうしてるのでしょう?」
愛莉がふと漏らす。
「きっとうまくやっているよ」
そう答える。
楽しい同棲生活を楽しんでるはずだ。
思い出したようにベッドを出ようとすると愛莉が抱きしめる。
「今夜は甘えさせてくれるんじゃないのですか?」
「いや、ちょっとは父親らしいことをさせてくれないか?」
「どうしたのですか?」
スマホを取ると翼たちにメッセージを送る。
「正月くらいは一度挨拶に着なさい。愛莉が寂しがってるよ」
それを愛莉に見せる。
「寂しがってるのは冬夜さんも一緒なのにずるいですよ」
そういって僕を抱く。
「まあ、寂しい愛莉を慰めてやるのが僕のつとめだよね」
「じゃ、そうしてください」
愛莉はそう言って目を閉じる。
その表情はとても綺麗な物だった。
(2)
「ちょっと遊!この人誰!?」
学校でなずなは俺にスマホを突きつけ問い詰める。
粋も花に同じ様な状況にあっているようだった。
多分小泉優や大原奏、要も同じだろう。
SHにはバイク乗りが少ない。
まあ、バイクが好きって人が少ないんだろうから仕方ないんだろうけど。
だから別のバイクのグループに混ざってツーリングを楽しんだりしてる。
その事はなずなも知っていた。
その画像はそのバイク乗りの女性とツーショットで写真を撮っていたものだった。
「バイクは許すけど、浮気は許すとは言ってないよ!」
「放課後説明するから落ち着け!」
どうして放課後かって?
さっきも言ったように一つ年下の奏や要、優も一緒だからまとめて説明した方がいいだろ。
とりあえず怒り狂うなずなを宥めてこの場を収めた。
別に、束縛されてるとかそんな気はしない。
それだけ俺を大事に思ってくれてるんだと嬉しくなる。
だから誤解は解いてやりたい。
そして放課後2年のクラスに俺達は集まった。
恋や沙奈、歌穂もいる。
そして説明をはじめる。
あれは夏菜休みの事だった。
暇だったのでバイク組とツーリングに出かける。
そして途中道の駅でその女性に出会った。
大人のボディラインを強調するその女性はヘルメットを取ると頭を振る。
黒くて長い艶のある髪が靡いて一瞬で目を奪われた。
それは恋とかそういうのじゃなくてアイドルに憧れるそれに近かった。
だから折角だから写真撮ってもらおうぜ!
そう言いだしたのは俺だった。
そしてお姉さんに挨拶をして一緒に写真を撮ってくれないか頼んでいた。
「それってナンパか?」
そういってお姉さんは笑っていた。
「ち、違います。ていうか俺達彼女いるし」
「それはよかった。私も彼氏いるんだよね」
ちょっと残念に思ったのは内緒だ。
話がややこしくなる。
「康子、そいつら誰?」
男の人が来た。
逞しい体つきのかっこいい男性。
女性の名前は康子って言うのか?
この人が康子さんの彼氏?
「ああ、紹介するね。私の彼氏の泉映司。映司、この子達私と写真撮りたいんだって。私もまだ衰えてないみたい」
「その格好がそう思わせてるだけじゃないのか?」
「自分の彼女をそういう風に言う?普通」
「ああ、すまん。まあ写真撮るくらいなら良いんじゃないか?連絡先とか聞いてきたらさすがに俺も黙ってないが」
危なかった。
さすがに勝てそうにない。
そのあと康子さんとツーショットで写真を撮ってもらって昼食を一緒にした。
映司さん達はグループで月1くらいでツーリングに出るらしい。
映司さんは実業家らしくて趣味でバイクを運転している。
2人ともちゃんと車も所有しているそうだ。
皆と相談して俺達もグループに入れてもらうことになった。
グループの名前は”雪華団”という。
また際どい名前を付けたな。
今度秋にでもまた山に行こう。
そんな話をしていた。
そしてその事を要がSHで話して「どんな人だよ?」と聞かれて画像を載せたところから事件になった。
そして今に至る。
「バイクのグループね……」
なずなはやや不満そうだが女子は納得はしてくれたみたいだ。
「他の女の人いないの?」
花が聞くと「いない」と答えた。
タンデムは危険だから禁止。
雪華団のルールだ。
説明が終ると僕達は家に帰る。
なずな帰宅途中も黙っている。
待ち受け画像にしたのはまずかったか。
せっかく撮ったけど仕方ない。
さらば!
「なずな、ちょっと待って」
「どうしたの?」
なずなは自転車を降りた、
俺はなずなの目の前で康子さんとのツーショット写真を削除した。
「別にそこまでしなくてもいいのに」
「なずなの不安を煽ってまで残しておく物でもないだろ?」
「そう思うんだったら、最初から撮るな!」
本気で怒ってはいなさそうだ。
「でも、楽しそうだね。タンデムはダメなんだっけ?」
「うん、運転してる方も危ないから」
「私も2輪免許取ろうかな」
「そういう楽しみは車の免許取るまで楽しみにしてるよ」
「最初に私を乗せてくれる?ちょっと怖いけど」
「もちろん……それに」
「まだ何かあるの?」
「免許が無くてもなずなを乗りこなすことはできるよ」
なずなは黙ってしまった。
余計な一言だったか?
だけどなずなは笑っている。
「そうだね、クリスマスイブにでも家に泊まりにこない?」
「いいの?」
「遊の家だと恋がいるでしょ?恋だって兄弟が家に居ると要呼びづらいでしょ」
家の中を裸で歩き回る恋が気にするとも思えないけど。
父さんは喜んで見ていて母さんに怒られてる。
まあ。学生がそういう事を出来てる場所なんて限られてるよな。
「親は大丈夫?」
「さあね。私の声結構響いてたみたいだから気づいてはいるみたいだよ」
まじかよ。
でも逆を言えば今さら気にする必要も無いって事か?
「避妊だけはしろって母さんには言われた」
「そ、そのくらいわかってるよ」
「じゃ、取りあえず帰ろう?」
「そうだね」
「……私よりスタイルよさそうだったね。その康子さんて人」
また意地悪な質問してくるな。
「相手は大人だぜ。それになずなのスタイルも負けてないよ。誰よりもなずなの体を把握してる俺が言うんだから間違いない」
「……馬鹿」
嬉しそうになずなは笑っていた。
(3)
「空、おまたせ」
美希が後部座席に荷物を積むと助手席に乗り込む。
僕は車を発進させる。
昨夜は遅かった。
準備をする時間もあったのだけど大きな問題があった。
今日の昼食について。
高菜ご飯にするか指原蘭華が言ってた赤牛丼というのにするか?
カロリーとかそういう問題じゃない。
どっちの方がレア度が高いかだ。
どっちも同じくらいだと判断した僕達は「両方食べちゃえ」という結論にでた。
先にがっつり赤牛丼を頂く事にした。
今からだったらゆっくり行っても開店時間には間に合う。
のんびりと車を走らせる。
阿蘇に入るとすぐにお店が見つかった。
丁度いい時間だったので店に入る。
美希は料理が来ると写真を撮ってる。
僕はその間に食べる。
美味しい。
父さんにも教えてやろう。
食べ終わると少し竹田の方にもどる。
そこに高菜めしの店があった。
高菜めしと馬刺しのセットを頼む。
さすがに美希には無理だった。
夜はオーベルジュでフランス料理を食べる。
オーベルジュとはレストラン付きのホテルの事。
そのオーベルジュはおまけに家族風呂がついているらしい。
部屋にバスルームがあったけど、どうせならたまには広いお風呂も良い。
混浴は今さらな話だ。
美希以外の女性に興味はないのかと言われると難しい。
まだ9月。
宿泊施設に入るにはまだ時間があったので動物園によるとまだ露出の多い服を着てる女性がいる。
そんな女性に見とれることだってある。
でもなるべく意識しないようにしてる。
それでも不可抗力というものがある。
僕だって一応健全な男子だ。
そして「こらっ!」と美希に小突かれる。
それから美希のご機嫌を直すのに時間がかかる。
美希の気持ちは誰よりも把握してる自信がある。
美希だって十分魅力的な女性だ。
どうして周りの男性が声をかけないのか不思議なくらいい。
まあ、僕にぴったりくっついてるのが理由なんだけど。
それでも美希は自分の体形に納得いかないらしい。
胸はある。
ウェストのラインも申し分ない。
ただ、その豊かな胸にいやらしい視線が突き刺さるのが嫌らしい。
動物園を出るとコンビニに寄る。
どうせ夕食だけじゃ足りないと食料とジュースを買い込む。
オーベルジュに着くと手続きを済ませて部屋に案内してもらう。
部屋に入るとベッドにダイブする。
ずっと運転してるとやはり肩が凝ったりする。
それを美希がマッサージしてくれる。
「お疲れさま」という美希の気持ちが伝わってこころも体も癒される。
夕食の時間になると食堂に行く。
やっぱり量が足りなかった。
さすがにこういうムードの中で飲み物はおかわりで来てもご飯は無理。
夕食が終ると予約していた家族風呂の時間までテレビを見ていた。
そして風呂に入ると部屋に戻って買ってきた食料を食べる。
お腹が満たされたら一緒に寝る。
ベッドは二つあったけど今さら別々に寝るなんてことはしない。
十分大きいベッドだったし。
疲れていたのですぐに寝てしまった。
朝起きると隣で寝ていたはずの美希は服を着ている。
僕も服を着る。
朝食もなんか物足りなかった。
こんなぺらぺらの生ハムじゃ満たされるはずがない。
またコンビニで何か買うか。
朝食が終ると荷物をまとめて早めに出発する。
今日のスケジュールも結構時間ぎりぎりだ。
コンビニで食料を調達して阿蘇山を上る。
結構な勾配を上りながら草を食べてる牛を眺める。
美希は普段ロングスカートでいる事が多い。
美希の綺麗なラインの足を見るのは僕だけの特権だと主張すると、美希は喜んで受け入れてくれた。
だけど今日だけは特別らしい、ジーパンを穿いていた。
理由は母さんに「草千里に行くならスカートは止めておきなさい。後サンダルも」と言われたそうだ。
その理由はすぐにわかった。
地面が少し柔らかい土だから。
しかもぬかるんでる。
馬に跨って一周するのもスカートでは難儀しただろう。
最後に馬に餌をやって。
阿蘇山の火口に行く。
今日は近くまでいけるようだ。
近づくと綺麗な色をしていた。
いつまでも見て居たいけど時間があまりない。
出発すると上って来た道とは反対の方へ降りる。
狭い国道を抜けると高千穂に着く。
とりあえずお腹空いた。
美希と相談する。
夕食はチキン南蛮と決まっていたけど昼食を決めていなかった。
肉か蕎麦か。
宮崎と言えば和牛。
しかし高千穂の名水で打ったそばも捨てがたい。
悩んだ末両方食べる事にした。
美希はそばにしていた。
どちらも滅多に味わえないものなのだからありだろうと思った。
腹を満たすと美希のパワースポット巡りに付き合う。
今さら神様にお願いする事なんてあるのだろうか?
パワーをもらって何に使うんだろう?
単にリフレッシュしたいからと観光目的なんだそうだ。
心も体も洗われる気分になれる。
まあ、美希とこうやって観光してる気分は悪くないので不満は無いけど。
大体の神社を見て回ると延岡に向かう。
観光していた時間も結構あったので延岡に着く頃には日も暮れていた。
夕食には丁度いい頃合いだ。
父さんに言われた店にいってチキン南蛮を食べる。
美味しかった。
車の方もエンプティ間近だったので給油する。
給油している間に美希と相談する。
帰りは国道を通るか高速を利用するか?
どうせ明日も休みだ。
空の疲れは私が癒してあげるから国道走ろう?
美希がそう言うので国道を走ることにした。
山道を走って行く。
途中温泉のある道の駅があったので寄った。
家族風呂を美希がスマホで予約していた。
出来る限りいつも一緒に居たいらしい。
風呂で美希が肩を揉んでくれた。
犬飼に辿り着く頃には日が暮れている。
中判田のラーメン屋でラーメンを食べて家に帰った。
風呂は途中で入ったからいいや。
さすがに2日も運転していると疲れる。
部屋着に着替えてベッドに入る。
時計は23時を回っていた。
僕達の年頃ではまだ早いかもしれないけど疲れていたので寝ようとした。
だけどそれを美希は許してくれなかった。
「空は昨日私に構ってくれなかったんだから今夜構ってよ」
そう言って僕の上に伸し掛かる。
そういや昨日も疲れてすぐ寝たんだったな。
美希の背中に両手を回すと美希はにこりと笑う。
この二日間は美希の疲れをいやすためのもの。
だから最後まで美希の我儘につきやってやることにした。
小学校の運動会。
子供たちは張り切って競技に参加してる。
それにひきかえ、誠達は小学校の運動会を宴会と勘違いしているようだ。
桜子が何度注意しても止める気が全くないらしい。
誠を止める役の神奈もまた飲んでいた。
飲んでない親を挙げて行った方が早いくらいだ。
僕と愛莉と石原君と酒井君。
子供たちがお昼に弁当を食べる前におかずを食べつくすという無茶苦茶な事をしている。
しょうがないから余分に作っておいたおかずを誠司達に分けてあげる。
そんなんだから「お父さんお酒臭いから嫌い」って言われるんだぞ。
冬眞と莉子も大人しくご飯を食べている。
そして午後の競技が始まる。
父兄参加の競技もある。
誠達は寝ている。
何しに来たんだ?
しかし僕達くらいの歳で若い親を相手にするのは結構辛い。
愛莉も大変そうだった。
「冬夜さんもたまには運動しないと駄目ですよ」
愛莉は笑ってそう言った。
競技が全て終わると誠達を起こして家に帰る。
「冬夜。冬吾達はどうだった」
父さんが聞く。
「ちゃんとカメラに収めておいたよ。今夜でもゆっくり見ると良いよ」
「悪いな」
「愛莉!いつもの事だ!今夜は焼肉だよな!」
天音は弟の競技よりその後の夕食の方が重要らしい。
冬吾達が帰ってくると着替えてそして少し休ませてやってから起きてくると焼肉屋さんに連れて行く。
冬吾や冬眞は相変わらずの活躍だった。
徒競走はもちろん他の個人種目や団体種目。最後の対抗リレーまでしっかり活躍していた。
その分冬吾と冬莉はしっかり食べていたけど。
僕は最近食べる量が減って来た。
自分で実感するくらい減って来た。
その分お酒の量が増える。
泥酔はしなかったけど。
「トーヤもやっと酒の楽しみ方を覚えたか」
カンナがそう言ってた。
「冬夜さん、少しお酒を控えてください。体に悪いですよ」
愛莉に注意される。
「今日は帰ってからのお酒はだめですからね」
「いや、愛莉ちゃん。こういう目出度い酒は滅多にないんだから……」
父さんが言うけど愛莉は受け入れない。
「冬夜さんは明日仕事なんです」
片桐家は女性に逆らえない。
まさにその通りだった。
だけど愛莉の意図は大体わかっていた。
家に帰って風呂に入るとテレビを見て寝室に行く。
ベッドに入る愛莉の上に覆いかぶさるように抱いてやる。
「今日は飲み過ぎたようだ。愛莉が介抱してくれないかい?」
「……困った方ですね」
愛莉は嬉しそうだった。
「今頃翼と空はどうしてるのでしょう?」
愛莉がふと漏らす。
「きっとうまくやっているよ」
そう答える。
楽しい同棲生活を楽しんでるはずだ。
思い出したようにベッドを出ようとすると愛莉が抱きしめる。
「今夜は甘えさせてくれるんじゃないのですか?」
「いや、ちょっとは父親らしいことをさせてくれないか?」
「どうしたのですか?」
スマホを取ると翼たちにメッセージを送る。
「正月くらいは一度挨拶に着なさい。愛莉が寂しがってるよ」
それを愛莉に見せる。
「寂しがってるのは冬夜さんも一緒なのにずるいですよ」
そういって僕を抱く。
「まあ、寂しい愛莉を慰めてやるのが僕のつとめだよね」
「じゃ、そうしてください」
愛莉はそう言って目を閉じる。
その表情はとても綺麗な物だった。
(2)
「ちょっと遊!この人誰!?」
学校でなずなは俺にスマホを突きつけ問い詰める。
粋も花に同じ様な状況にあっているようだった。
多分小泉優や大原奏、要も同じだろう。
SHにはバイク乗りが少ない。
まあ、バイクが好きって人が少ないんだろうから仕方ないんだろうけど。
だから別のバイクのグループに混ざってツーリングを楽しんだりしてる。
その事はなずなも知っていた。
その画像はそのバイク乗りの女性とツーショットで写真を撮っていたものだった。
「バイクは許すけど、浮気は許すとは言ってないよ!」
「放課後説明するから落ち着け!」
どうして放課後かって?
さっきも言ったように一つ年下の奏や要、優も一緒だからまとめて説明した方がいいだろ。
とりあえず怒り狂うなずなを宥めてこの場を収めた。
別に、束縛されてるとかそんな気はしない。
それだけ俺を大事に思ってくれてるんだと嬉しくなる。
だから誤解は解いてやりたい。
そして放課後2年のクラスに俺達は集まった。
恋や沙奈、歌穂もいる。
そして説明をはじめる。
あれは夏菜休みの事だった。
暇だったのでバイク組とツーリングに出かける。
そして途中道の駅でその女性に出会った。
大人のボディラインを強調するその女性はヘルメットを取ると頭を振る。
黒くて長い艶のある髪が靡いて一瞬で目を奪われた。
それは恋とかそういうのじゃなくてアイドルに憧れるそれに近かった。
だから折角だから写真撮ってもらおうぜ!
そう言いだしたのは俺だった。
そしてお姉さんに挨拶をして一緒に写真を撮ってくれないか頼んでいた。
「それってナンパか?」
そういってお姉さんは笑っていた。
「ち、違います。ていうか俺達彼女いるし」
「それはよかった。私も彼氏いるんだよね」
ちょっと残念に思ったのは内緒だ。
話がややこしくなる。
「康子、そいつら誰?」
男の人が来た。
逞しい体つきのかっこいい男性。
女性の名前は康子って言うのか?
この人が康子さんの彼氏?
「ああ、紹介するね。私の彼氏の泉映司。映司、この子達私と写真撮りたいんだって。私もまだ衰えてないみたい」
「その格好がそう思わせてるだけじゃないのか?」
「自分の彼女をそういう風に言う?普通」
「ああ、すまん。まあ写真撮るくらいなら良いんじゃないか?連絡先とか聞いてきたらさすがに俺も黙ってないが」
危なかった。
さすがに勝てそうにない。
そのあと康子さんとツーショットで写真を撮ってもらって昼食を一緒にした。
映司さん達はグループで月1くらいでツーリングに出るらしい。
映司さんは実業家らしくて趣味でバイクを運転している。
2人ともちゃんと車も所有しているそうだ。
皆と相談して俺達もグループに入れてもらうことになった。
グループの名前は”雪華団”という。
また際どい名前を付けたな。
今度秋にでもまた山に行こう。
そんな話をしていた。
そしてその事を要がSHで話して「どんな人だよ?」と聞かれて画像を載せたところから事件になった。
そして今に至る。
「バイクのグループね……」
なずなはやや不満そうだが女子は納得はしてくれたみたいだ。
「他の女の人いないの?」
花が聞くと「いない」と答えた。
タンデムは危険だから禁止。
雪華団のルールだ。
説明が終ると僕達は家に帰る。
なずな帰宅途中も黙っている。
待ち受け画像にしたのはまずかったか。
せっかく撮ったけど仕方ない。
さらば!
「なずな、ちょっと待って」
「どうしたの?」
なずなは自転車を降りた、
俺はなずなの目の前で康子さんとのツーショット写真を削除した。
「別にそこまでしなくてもいいのに」
「なずなの不安を煽ってまで残しておく物でもないだろ?」
「そう思うんだったら、最初から撮るな!」
本気で怒ってはいなさそうだ。
「でも、楽しそうだね。タンデムはダメなんだっけ?」
「うん、運転してる方も危ないから」
「私も2輪免許取ろうかな」
「そういう楽しみは車の免許取るまで楽しみにしてるよ」
「最初に私を乗せてくれる?ちょっと怖いけど」
「もちろん……それに」
「まだ何かあるの?」
「免許が無くてもなずなを乗りこなすことはできるよ」
なずなは黙ってしまった。
余計な一言だったか?
だけどなずなは笑っている。
「そうだね、クリスマスイブにでも家に泊まりにこない?」
「いいの?」
「遊の家だと恋がいるでしょ?恋だって兄弟が家に居ると要呼びづらいでしょ」
家の中を裸で歩き回る恋が気にするとも思えないけど。
父さんは喜んで見ていて母さんに怒られてる。
まあ。学生がそういう事を出来てる場所なんて限られてるよな。
「親は大丈夫?」
「さあね。私の声結構響いてたみたいだから気づいてはいるみたいだよ」
まじかよ。
でも逆を言えば今さら気にする必要も無いって事か?
「避妊だけはしろって母さんには言われた」
「そ、そのくらいわかってるよ」
「じゃ、取りあえず帰ろう?」
「そうだね」
「……私よりスタイルよさそうだったね。その康子さんて人」
また意地悪な質問してくるな。
「相手は大人だぜ。それになずなのスタイルも負けてないよ。誰よりもなずなの体を把握してる俺が言うんだから間違いない」
「……馬鹿」
嬉しそうになずなは笑っていた。
(3)
「空、おまたせ」
美希が後部座席に荷物を積むと助手席に乗り込む。
僕は車を発進させる。
昨夜は遅かった。
準備をする時間もあったのだけど大きな問題があった。
今日の昼食について。
高菜ご飯にするか指原蘭華が言ってた赤牛丼というのにするか?
カロリーとかそういう問題じゃない。
どっちの方がレア度が高いかだ。
どっちも同じくらいだと判断した僕達は「両方食べちゃえ」という結論にでた。
先にがっつり赤牛丼を頂く事にした。
今からだったらゆっくり行っても開店時間には間に合う。
のんびりと車を走らせる。
阿蘇に入るとすぐにお店が見つかった。
丁度いい時間だったので店に入る。
美希は料理が来ると写真を撮ってる。
僕はその間に食べる。
美味しい。
父さんにも教えてやろう。
食べ終わると少し竹田の方にもどる。
そこに高菜めしの店があった。
高菜めしと馬刺しのセットを頼む。
さすがに美希には無理だった。
夜はオーベルジュでフランス料理を食べる。
オーベルジュとはレストラン付きのホテルの事。
そのオーベルジュはおまけに家族風呂がついているらしい。
部屋にバスルームがあったけど、どうせならたまには広いお風呂も良い。
混浴は今さらな話だ。
美希以外の女性に興味はないのかと言われると難しい。
まだ9月。
宿泊施設に入るにはまだ時間があったので動物園によるとまだ露出の多い服を着てる女性がいる。
そんな女性に見とれることだってある。
でもなるべく意識しないようにしてる。
それでも不可抗力というものがある。
僕だって一応健全な男子だ。
そして「こらっ!」と美希に小突かれる。
それから美希のご機嫌を直すのに時間がかかる。
美希の気持ちは誰よりも把握してる自信がある。
美希だって十分魅力的な女性だ。
どうして周りの男性が声をかけないのか不思議なくらいい。
まあ、僕にぴったりくっついてるのが理由なんだけど。
それでも美希は自分の体形に納得いかないらしい。
胸はある。
ウェストのラインも申し分ない。
ただ、その豊かな胸にいやらしい視線が突き刺さるのが嫌らしい。
動物園を出るとコンビニに寄る。
どうせ夕食だけじゃ足りないと食料とジュースを買い込む。
オーベルジュに着くと手続きを済ませて部屋に案内してもらう。
部屋に入るとベッドにダイブする。
ずっと運転してるとやはり肩が凝ったりする。
それを美希がマッサージしてくれる。
「お疲れさま」という美希の気持ちが伝わってこころも体も癒される。
夕食の時間になると食堂に行く。
やっぱり量が足りなかった。
さすがにこういうムードの中で飲み物はおかわりで来てもご飯は無理。
夕食が終ると予約していた家族風呂の時間までテレビを見ていた。
そして風呂に入ると部屋に戻って買ってきた食料を食べる。
お腹が満たされたら一緒に寝る。
ベッドは二つあったけど今さら別々に寝るなんてことはしない。
十分大きいベッドだったし。
疲れていたのですぐに寝てしまった。
朝起きると隣で寝ていたはずの美希は服を着ている。
僕も服を着る。
朝食もなんか物足りなかった。
こんなぺらぺらの生ハムじゃ満たされるはずがない。
またコンビニで何か買うか。
朝食が終ると荷物をまとめて早めに出発する。
今日のスケジュールも結構時間ぎりぎりだ。
コンビニで食料を調達して阿蘇山を上る。
結構な勾配を上りながら草を食べてる牛を眺める。
美希は普段ロングスカートでいる事が多い。
美希の綺麗なラインの足を見るのは僕だけの特権だと主張すると、美希は喜んで受け入れてくれた。
だけど今日だけは特別らしい、ジーパンを穿いていた。
理由は母さんに「草千里に行くならスカートは止めておきなさい。後サンダルも」と言われたそうだ。
その理由はすぐにわかった。
地面が少し柔らかい土だから。
しかもぬかるんでる。
馬に跨って一周するのもスカートでは難儀しただろう。
最後に馬に餌をやって。
阿蘇山の火口に行く。
今日は近くまでいけるようだ。
近づくと綺麗な色をしていた。
いつまでも見て居たいけど時間があまりない。
出発すると上って来た道とは反対の方へ降りる。
狭い国道を抜けると高千穂に着く。
とりあえずお腹空いた。
美希と相談する。
夕食はチキン南蛮と決まっていたけど昼食を決めていなかった。
肉か蕎麦か。
宮崎と言えば和牛。
しかし高千穂の名水で打ったそばも捨てがたい。
悩んだ末両方食べる事にした。
美希はそばにしていた。
どちらも滅多に味わえないものなのだからありだろうと思った。
腹を満たすと美希のパワースポット巡りに付き合う。
今さら神様にお願いする事なんてあるのだろうか?
パワーをもらって何に使うんだろう?
単にリフレッシュしたいからと観光目的なんだそうだ。
心も体も洗われる気分になれる。
まあ、美希とこうやって観光してる気分は悪くないので不満は無いけど。
大体の神社を見て回ると延岡に向かう。
観光していた時間も結構あったので延岡に着く頃には日も暮れていた。
夕食には丁度いい頃合いだ。
父さんに言われた店にいってチキン南蛮を食べる。
美味しかった。
車の方もエンプティ間近だったので給油する。
給油している間に美希と相談する。
帰りは国道を通るか高速を利用するか?
どうせ明日も休みだ。
空の疲れは私が癒してあげるから国道走ろう?
美希がそう言うので国道を走ることにした。
山道を走って行く。
途中温泉のある道の駅があったので寄った。
家族風呂を美希がスマホで予約していた。
出来る限りいつも一緒に居たいらしい。
風呂で美希が肩を揉んでくれた。
犬飼に辿り着く頃には日が暮れている。
中判田のラーメン屋でラーメンを食べて家に帰った。
風呂は途中で入ったからいいや。
さすがに2日も運転していると疲れる。
部屋着に着替えてベッドに入る。
時計は23時を回っていた。
僕達の年頃ではまだ早いかもしれないけど疲れていたので寝ようとした。
だけどそれを美希は許してくれなかった。
「空は昨日私に構ってくれなかったんだから今夜構ってよ」
そう言って僕の上に伸し掛かる。
そういや昨日も疲れてすぐ寝たんだったな。
美希の背中に両手を回すと美希はにこりと笑う。
この二日間は美希の疲れをいやすためのもの。
だから最後まで美希の我儘につきやってやることにした。
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この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
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