姉妹チート

和希

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世界が変わるまでは

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「遊!!」

 バシッ
 泣いているなずなの手が俺の頬を打つ。

「あれほどやめて!って言ったのにどうしてわかってくれないの!?」

 そう言って俺の胸に縋り泣きつくなずな。

「不可抗力だよ。止めようがなかった……」
「そういう問題じゃない!いい歳して何やってんの!」
「まあ、落ち着けなずな」

 天音がなずなの肩を支える。
 ここは中央署。
 俺達は西港で大ゲンカをして連行された。
 先に仕掛けたのは俺達雪華団。
 相手はFG傘下の暴走族”堕天使”
 週末の港湾道路を走っていたら奴らに遭遇した。

「竜也!!」

 雪華団の新しいリーダー今村真琴の因縁の相手。
 俺達SHにとってもFGの横行は見過ごせない。
 そして騒ぎをかぎつけた警察に取り押さえられ中央署に連行された。
 天音のお爺さんのつてを伝って、天音が知ってなずな達に知らせたらしい。

「まあ、若いやつらの多少のやんちゃは見逃すが、公道で他の市民に迷惑をかけるなら話は別だぞ」

 初老の刑事がそう言うと俺達は礼をした。

「お前単車で来てるんだろ?なずなは私が送っていくから」

 天音と大地がそう言うと、俺と粋も一緒に中央署を後にした。
 家に帰ってからもなずなは口をきいてくれなかった。
 こりゃ大分怒ってるな。
 大地と天音からメッセージが届いていた。

「今回は遊達が悪いんだからひたすら謝れ。下手な言い訳はするな」

 まあ、そうだろうな。

「なずな」
「……なに?」

 なずなはまだ泣いているようだった。

「すまない、俺が悪かった!今度からは気をつける!」
「……何を気を付けるの?」
「え?」

 それは喧嘩をしないって事じゃないのか?

「やっぱりわかってないじゃん!」
「……ごめん」
「天音達はいいよ。……私たちと天音達って何が違うと思う?」

 婚約したこと?
 大地がべらぼうに強い事?

「……大地は絶対に天音に心配をかけない」
「俺と一緒じゃ嫌になったか?」
「そんなわけないじゃん。だったらこんなに心配しない。大好きだから心配なの!こんな事繰り返してたらいつか絶対大事故になるよ!」
「どうすればいい?」

 俺はなずなに聞いてみた。
 答えは何となくわかる気がする。
 でもそうじゃないようだ。

「単車を止めてっていってもこっそりやるんでしょ?」

 雪華団を止めてと言っても続けるんでしょ?
 俺の信用は0のようだ。
 そうでもないらしい。

「……泉さんにあって話をした」

 泉映司。
 雪華団を作った元・リーダー。
 その映司さんに俺達が雪華団から手を引くようにお願いしたらしい。
 だけど、映司さんは言った。

「例え雪華団を抜けてもきっと単車を止める事はできない。止めたとしても今度は車に対象が変わるだけ」

 だから映司さんは危険を承知の上でなずな達にお願いしたらしい。

「遊達は真琴たちよりも年上だし経験も豊富だ。ガキの暴走にブレーキをかけて欲しい」

 なずなと花は悩んだそうだ。
 それでもまだ未成年のなずな達に頭を下げる映司さんのお願いを断ることは出来なかった。

「私も考えた。陰でこそこそされるよりはマシだって。だから約束して。こんな馬鹿な真似はこれで最後にして」
「破ったら?」
「……言ったでしょ。私は遊が好き。だから何度でもお願いするしかない。でも遊だって私の事が好きなら私を心配させないで」

 前から思っていたことを聞いてみた。

「どうして俺なんだ?」

 普通ならとっくに愛想尽かすだろ?

「何度も言わせないでよ。好きなんだからしょうがないじゃない」

 どんなに俺がバカな真似をしても、それでも俺の代わりなんていない。
 かけがえのない大切な人だから何度でも叱るんだとなずなは俺に訴える。

「今日はもう寝よう?」

 なずなが言う。
 これ以上話すことは無いらしい。
 なずなが寝室に入ろうとするのを俺は後ろから抱きしめた。

「本当にごめん。俺もなずなが好きだ」
「……その言葉を毎日聞かせて」

 ある日突然聞けなくなるんじゃないか?
 そんな不安を常に抱えているらしい。
 そういや恋が口酸っぱく父さんに言ってたな。

「無事に帰ってきてくれることが何よりのプレゼントなんだよ」

 俺の帰りをなずなはずっと待ってる。
 そのなずなを泣かせてどうする?

「……わかった」
「じゃあ、今日はもう休んで」

 今夜出かけるのは止めて。
 なずなはそう言ってベッドに入る。
 俺もベッドに入るとなずなを抱く。
 なずなも俺の存在を確かめるように必死に抱きつく。
 俺も同じだと思った。
 なずなの身になにかあったとして、例えば誰かに殺されたとしたら、俺はそれを許せるだろうか?
 同じ思いをなずなにさせていたんだな。
 人は支え合う生き物か。
 その意味を噛みしめながら、俺は眠りについた。
 だけど過ちや間違いを繰り返して人は初めて気づく。
 あとどれだけの犠牲があれば争いは終える事が出来るのだろう?
 レクイエムにもならない歌を歌いながら、俺達は今日を生き続ける。
 それは果てしなく続くように思えた。
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