姉妹チート

和希

文字の大きさ
176 / 535

アーヴァインコード

しおりを挟む
 外見は廃ビル。
 中は見た事もない機器が並んでいる中、僕は白いマントを羽織った少し年上の男性と会っていた。
 男性の隣には由衣の姉であり、男性の妻でもある宮田蜜柑さんがいる。
 男性の名前は宮田キリク。
 魅惑の魔眼のブレイン。
 僕は創世神のリーダーとして、魅惑の魔眼の本拠地であるトロパイオンと呼ばれる場所に呼び出されていた。

「初めまして……僕は……」
「赤松景太郎。面倒な挨拶は抜きにして早速本題に入らせてもらう」

 キリクは僕を鋭い目線で睨みつける。
 敵意むき出しのようだ。
 まずはこの空気を変えたい。

「僕はあなた達と争う気はありません」
「そっちの用件は大体蜜柑を通じて由衣から聞いている。結論から言おう。交渉に応じるつもりはない」

 本当に率直な人だな。

「しかしこのまま抗争になったらどっちにも被害が出てしまいます」

 それだけじゃない。
 関係ない人まで巻き込んでしまう。

「だが、創世神の狙いがイーリスである以上、交渉する余地はない」

 譲歩する余地はないとキリクは言う。

「そもそも君はどこまで知っているんだ?何を翔和から吹き込まれた?」

 キリクが聞いてきたので僕は知っていることをすべて話した。
 するとキリクはふっと笑った。

「つまりイーリスという物がどういう物かまったく知らされていないんだな?」

 僕はただ頷いた。

「知らないなら知らない方がいい。まだ手を引く余地がある。知ってしまったら二度と引き戻せない」
「しかし僕が翔和さんを説得するには知る必要がある」
「説得する必要なんかない。翔和は絶対にイーリスに手が出せない」
「……イーリスってそんなにやばい物なんですか?」
「君は何を想像していた?世界を滅ぼす悪魔の兵器か?人類を滅ぼす凶悪なウィルスか?」
「……違うんですか?」

 僕が言うとキリクは首を振った。

「……そんなに痛い目を見たいなら教えてあげよう。君の目の前にある物がイーリスだよ」

 そう言ってキリクは自分の背後にある巨大なスパコンのような物を指した。
 これがイーリス?
 もっと仰々しいものを想像していたけど。
 ただのPCに何があるというんだ?

「それは私にもわからない。中身は簡単に見れないようになっている」

 パスワードみたいなものだろうか?
 しかしネットではイーリスは検索にかからないとスカーレットが言っていた。
 実際に自分でも検索したけど削除された跡があるだけで存在していなかった。

「中身が分からないのになぜ危険だと言い切れるんですか?」

 僕は違う角度から質問していた。

「この中にあるのは地元の裏社会全てを詰めたものが入っていると聞いている」

 地元の裏社会?

「イーリスの情報が出回れば地元の基盤が覆されることになる」
「じゃあ、すぐに破壊すればいいじゃないですか?」
「そこがこいつの厄介なところでね。イーリスを削除、または破壊しようとすればイーリスは自ら違う媒体に乗り移ろうとする」

 前の抗争でその事を知ったらしい。

「中身を確かめる事が出来ないのなら、中身は無いのと同じ事じゃないんですか?」
「君が勘は鋭いようだな。君の言う通りだ。イーリスの鍵を知らない者が手にしたところで何もできない」
「……あるんですね?鍵が」

 僕がそう言うとキリクは少し考えてから不思議た単語を口にした。

「……アーヴァインコード」
「なんですか?それ?」
「イーリスにアクセスすることが出来る唯一の手段」

 ある人物の網膜にそれは仕込まれているらしい。
 その人物もまた手をくわえられ危機的状況に陥ると全能力を開放して身を守るという。

「誰ですか?」

 僕が聞くと首を振った。

「私は君を全面的に信用しているわけじゃない。そこまで君に話す理由はない。……ただ」
「ただ?」
「レガリアと呼ばれる子供たちの網膜に同じようにアーヴァインコードを持つ物の情報の断片を分け与えている。それを解析すれば……」
「コードにたどり着けるっちゅうわけやな?」

 突然聞こえて来たのは翔和さんの声。
 キリクはどこから聞こえて来たのか分かったらしく、背後にあるPCのモニターを見る。
 モニターには翔和さんの顔が映っていた。

「くそっ!罠にはまったか」
「そういうわけや。いやあ、ええ仕事してくれたで。景太郎君」

 翔和さんはそう言って笑っている。
 でもどうしてこの場所を?
 僕は今日キリクに会う事は翔和さんには話してない。
 由衣にそう説明する。
 するとキリクが僕の手首につけているリストバンドに気付く。

「……発信器か」
「せや。いやあ、景太郎君は本当に純粋やな。人を疑うっちゅうことを知らん。ただであんな能力を授けるわけないやろ?」

 翔和さんはそう言って説明を始めた。
 由衣の同居相手の僕に目をつけた。
 創世神と魅惑の魔眼の事を知れば必ず動くと話をして確信した。
 そして発信器付きのリストバンドを僕に渡した。
 僕は翔和さんの思惑通りに由衣と話してこのトロパイオンの場所を探し当てた。
 トロパイオンの場所にはイーリスがあることは分かっていた。
 だからその周辺のPCを検索した。
 無論リストバンドには盗聴器も付いてある。
 そしてキリクは油断して話してしまった。

「大手柄やで、景太郎君。まさかこの短期間で成果を出すとは思わんかったわ」
「さ、最初から僕を騙す気だったのか!?」
「人聞きの悪い事いわんでーな。うちらを裏切って勝手に交渉しようとしたのは景太郎君やで」
「くっ……」
「じゃ、もう君必要ないからサヨナラや。そのリストバンドは褒美にやるわ」
「……アーヴァインコードが分からない以上イーリスには手が出せないぞ」

 キリクが言うと翔和さんは余裕を見せた。

「さっき”子供”っち自分言うたろ?それだけの情報があれば大体の想像はつくわ」
 
 キリクさんは何も言わなかった。

「ほなら、うちらはこれで失礼するわ。景太郎君はもう用済みやから好きにしてえーで」

 そう言って翔和さんとの通信は終った。
 キリクは何も言わないけどかなり頭にきているらしい。
 蜜柑さんが落ち着かせようとしている。
 しばらくしてキリクは僕を見ると言った。

「今の話の通りだ。今の君には交渉価値すらなくなった。私が怒りを抑えている前にさっさとここを去れ」

 そして二度とキリクの前に顔を見せるなと言って立ち去った。
 僕は由衣とトロパイオンを出ると家に帰る。

「由衣……ごめん」
「いいの。でもこれで手を引いてくれるよね?」

 僕は創世神から見放されたのだから。
 でもこのまま翔和に利用されっぱなしでいいのか?
 とはいえ、僕に出来る事なんてもうない。
 却って由衣達の足を引っ張ることになる。

「わかったよ」

 久しぶりに味わった感覚。
 悔しい。
 悔しさのあまり涙が出るのを由衣がハンカチで拭ってくれた。
 やっぱりこのまま引き下がるなんてできない。
 反撃する手段を考えていると、スマホが鳴る。
 相手は武内枢さんだった。
 どういうつもりだろう?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...