姉妹チート

和希

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縁結び

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(1)

 バイトが終わって家に帰る。
 その前に夕飯の食材買っていくか。
 買い物を済ませて家に帰る。
 大地のやつは本当に肉ばっかりで魚を食わない。
 ギョロッケで騙そうとしたけど匂いで感づきやがった。

「お前は嫁の手料理を台無しにするつもりなのか!?」

 そう言って無理矢理食わせた。
 サラダはちゃんと食ってる。
 ポテトサラダはどうしてもダメみたいだけど。
 お前の味覚は小学生か!?と、怒鳴りつけたい時もあったがあえて我慢した。
 少しずつ騙しながら食わせたらいい。
 着替えるとスマホをカウンターに置いて調理に入る。 
 するとSHのチャットがやけに騒がしい。
 何があったのか気になったので手を止めてスマホを見る

「喜一がついに動いた」

 地元組が騒いでいる。
 ついにあの野郎に引導を渡す時が来たか。
 週末にでも東京に出向いてこの手で止めを刺してやる。
 だけど大地の様子がおかしい。

「今から家に帰るからちょっと待って」

 大地も行くっていうなら私は別に構わないぞ。
 さっさと料理を済ませて、大地の帰りを待っていた。
 すると大地が帰って来た。
 やけに慌ててるようだ。
 
「お帰り大地。今準備終わったところだ。喜一の最期の前祝だ。お前の好きな肉料理にしておいたぞ」

 たまたまだけどな。
 だけど大地は靴も脱がずに土下座した。
 どうしたんだ!?

「とりあえず僕の母さんと話をして欲しい!」
 
 大地の母さんと?
 それが喜一とどう関係があるんだ?
 大地が母親に電話している間もメッセージのログは流れていく。
 やはり様子がおかしい。
 さっさと喜一を始末しようという派と慎重派。
 慎重派には空や翼、茜に光太と学が入っている。
 今頃になってびびったのか?
 片桐・遠坂家のメッセージにも入って来た。

「天音はワイドショーとか全然見てないわけ!?」

 そんなつまんねーもん見てもしょうがないだろ。
 大地が母親と連絡がつくと、私にスマホを渡した。
 私は大地の母親と話をした。
 それは予想外の事だった。

(2)

 私はきーちゃんと公園にいた。
 私達を睨みつける大勢の大学生。
 正体は知っていた。
 セイクリッドハート。
 地元だけでは飽き足らず東京にまで進出したらしい。
 用があるのは私。
 私がSHを抜けるからその制裁だと呼び出された。
 青ざめて家を出ようとする私に気付いたきーちゃんが「どこに行くんだ?」と聞いてきた。
 用件を話すときーちゃんは少し考えて「俺も行く」と言い出した。
 でも、きーちゃんが統率していたフォーリンググレースはSHの宿敵。
 きっときーちゃんに危害を加える。
 それでもきーちゃんは、私一人だと危険だからと引き下がらなかった。
 そして今に至る。

「お前SHを抜けるって意味分かってるんだろうな?」

 SH東京組のリーダー如月当悟が言う。
 いつ入ったのかもわからないけど。
 私がきーちゃんと付き合っている……今は籍を入れている。
 イコールきーちゃんがSHに手を出した。
 だから処刑する。
 きーちゃんを傷つける存在なら私がいる理由がない。
 だから私はSHを抜けると言った。

「メッセージで話した通り。きーちゃんの敵なら私がいる理由なんて一つもない」

 正直足が震えていた。
 きーちゃんと一緒に来て正解だったかもしれない。
 一人だったら震えて声も出なかったかもしれない。
 
「じゃ、決まりだから制裁受けろよ」

 当悟が言うと全員武装している。
 たかが女性一人にそこまでするの?
 するときーちゃんが前に出た。
 
「邪魔するの?」

 当悟がきーちゃんに聞く。

「お前らの敵は俺だろ?だったら環奈の代わりに制裁を受けるよ。がっかりしたよ。ただの女性一人にここまで大勢で来る程度の存在に俺は怯えてたんだな」

 当悟の眉間にしわが寄る。

「じゃあ、お前が代りに死ねよ。お前が死んだところで何の問題もないって聞いてるからな」
「環奈。下がってろ」
「きーちゃんダメ!!」

 誰か助けて!!
 
「そこまでだクソガキ共!」

 その一言で皆の注目を受けたのは赤髪のショートヘアの女性だった。

(3)

 飛行機に乗っている中どうしたらいいか私自身どうしたらいいのか分からなかった。
 振り上げた拳をどこに向けたらいい?
 頭の中がもやもやしてイライラする。
 それは大地の母親の石原恵美さんから事情を聞いてから。
 喜一はUSEのタレント土屋環奈……今は山本環奈と結婚した。
 それが喜一の動いた内容。
 山本環奈はSHに入っていた。
 しかし、環奈を誘った秋吉麻里は喜一と知り合ってからSHを抜けている。
 だからSHにはほとんど無関係な状態だった。
 そして喜一の息の根を止めると聞いた時、だったら私はSHを抜けると言った。
 そしたら制裁をすると言ったそうだ。
 それを知った麻里は恵美さんを通じてSHに訴えた。

「他人が純粋に恋をしているのに、それを邪魔するのがSHなの!?」と。

 喜一を仕留める口実を失った。
 しかし怒りが収まらない。
 どうしたらいいか分からない。

「空に聞いてみたら?空がSHのリーダーなんだから」

 大地がそう言うと私は空に相談してみた。
 その日空と翼、学や善明達と集まって話をした。
 相談しても答えは出ない。
 そして辿り着いた結論。
 
 空の判断に委ねる。

 皆が空を見る。
 空はにこりと笑うと話した。

「みんな週末空いてる?」

 水奈達もバイトの休みは取れるらしい。
 私も大丈夫だった。

「じゃ、大地。東京組に”僕達が直接ケリをつけるから待って”と伝えてくれないかな」

 日時は週末の夜。
 空はやるつもりなのか?
 だが、空の隣にいる美希を見るとそうじゃなさそうだ。
 そして私達は週末、大地の手配した飛行機で東京に向かっている。

「空、いい加減目的をおしえてくれないか?」

 学が聞いている。

「空はパパに似て肝心な事を言わない。悪い癖だよ?」

 翼も聞いている。
 空は少し考えて言った。

「だから決着をつけようと言ったはず」
「それって喜一をやるのかい?」

 善明が聞いていた……が、空は首を振る。
 空もまた茜や愛莉から色々事情を聞いていたらしい。

「喜一はFGの人間じゃない。僕達が手を出す相手じゃないでしょ?」
「じゃあ、なんで東京まで出向くんだい?」
「身内の不祥事くらい片付けておかないとね」
「それってつまり……」

 翼は感づいたようだ。
 私もなんとなく空の目的が分かった。

「父さんのグループ渡辺班は縁結びの神様だったそうだよ」

 だったら僕達も真似てみよう。
 それが空の結論だった。

(4)

 目の前で不可解な事が起きた。
 天音は俺ではなくSH東京組のリーダーを思いっきり殴り飛ばした。

「なんだお前ら!?」

 東京組は地元組の顔すら知らないらしい。
 それでよくSHを名乗っていたな。
 自分たちが牙を向けているのがSHでも危険な人間だと知らないらしい。

「それはこっちのセリフ。あんた達何者?」

 翼が聞き返していた。
 翼の隣には秋吉麻里がいる。

「俺達はSH東京組だ!!」

 名前すら消された人間が答えた。

「ふーん。で、何をしようとしているわけ?」
「組抜けするとかふざけた事言ってる奴に制裁しようとしているところだ」
「あ、そう……どうして?」

 翼の言葉に東京組が騒めく。
 そんな事関係なしに翼は淡々と告げる。

「SHを抜けるから制裁なんてルール誰が決めたの?」
「え……?」

 その言葉に麻里も環奈も驚いたらしい。
 翼の話は続く。

「抜けるから制裁……、ってことは制裁が済むまではSHの人間で間違いないよね?」

 翼がそう言うと後ろにいた桐谷学、水奈、遊、栗林粋、酒井祈、善明、美希達が前に出る。
 そして空が冷酷に告げる。

「どんな理由があろうと仲間を傷つける奴は絶対に許さない」
「ま、待ってください。俺達だってSHだ」
「そうだったね。翼、いいよ」
「わかった……あんた達スマホ見な」

 東京組の連中がスマホを見ると唖然としていた。
 
 グループから追放されました。

 それを見た連中が叫ぶ。
 だが空はそんなこと構わずに続ける。

「金輪際SHの名前を口にするな。口にした時死ぬのは喜一じゃない。お前らだ」
「何度も東京まで出向くのも面倒だし、この際全員この場に埋めちまおうぜ!」

 天音が言う。

「だ、そうだよ?こっちもしょうもない事で東京まで来てるんだ。お前らで憂さ晴らししても僕は構わないよ?」

 空が言うと皆散り散りになって逃げだした。
 空がそれを見届けると麻里を見て言った。

「君が秋吉麻里さん?僕ファンだったんだよね。サインもららえないかな……」

 ぽかっ

 美希が空の頭を小突いた。

「彼女の前で堂々と口説くなんて度胸は必要ないって愛莉さんが言ってた」
「ち、違うよ。本当にファンだったからサイン欲しくてさ……」
「じゃあ、私もファンだから私がお願いする。空は話しかけたら駄目」

 そんな言い合いを美希と空と翼がしている中、天音がこっちに近づいてきた。
 一発くらいもらうかな。
 すると環奈が間に入る。

「山本環奈さん?ちょっとそこの馬鹿と話をしたいだけだから。口説くとかそんなんじゃないから。私も旦那いるからさ」

 天音がそう言って笑うと環奈は譲った。
 天音は俺の前に立つ。

「お前みたいな奴でも、女性一人くらい幸せにしてやれるんだな」

 天音はそう言って胸ぐらをつかむ。

「いいか!?絶対に泣かせるなよ!?こいつの情報は大地の母さんからすぐ入ってくるんだ。泣かせるような真似したら今度こそコンクリと一緒に東京湾に沈めてやる」

 天音の用件はそれだけだったらしい。
 それだけ言って俺を放した。
 振り返ると去り際に一言言った。

「幸せにしてやれよ」
「……わかってる」
「麻里っていったっけ!?東京にわざわざきたんだ。どうせ泊まるホテルすらない。どっかいい店知らないか?」
「カラオケとかでいいなら……」
「ちげーだろ!もっといいところあるだろ!クラブとかスナックとか風俗とか!」

 それは女性のお前が行って楽しい所なのか?
 
「天音、あんたまだ未成年でしょ!」

 翼が天音に注意する。

「ざけんな!東京まで来てなんでカラオケなんだよ!」

 地元にも風俗あるんじゃないのか?

「天音、母さんが人数分ホテルの部屋とってるって」
「大地、私はあいつらまでぶん殴らずに我慢したんだぞ!遊ぶか誰か埋めないと気が済まない!!」
「思いっきり殴り飛ばしてたでしょ!」
「天音、新宿だったらその手の馬鹿いるんじゃね?」

 遊が言うと三沢なずなが注意する。
 だけど大地がちゃんと解決策を用意していたみたいだ。

「……ホテルのパーティホール使えるようにしてあるらしいから。後は明日東京見物して帰ろう?」
「……しょうがねーなぁ」
「カラオケかぁ……」
 
 空がそう言って麻里の顔を見ている。
 
 ぽかっ

 美希にはお見通しのようだった。
 なんやかんや言いながら一行は去っていった。

「あの人達ってなんなの?」

 環奈が聞いてきた。
 あいつらの親も言われてたんだっけ?

「縁結びの神様ってところか」
「なるほどね……」

そう言いながら俺達3人は幸運の使者ご一行を見送っていた。
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