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(1)
「おはようございます」
「あ、まさ君いらっしゃい」
僕は彼女の小泉夏希の家に一泊のお泊りで遊びに来ていた。
夏希は僕を家に上げると部屋に案内する。
当たり前だけどベッドは一つしかない。
夏希の部屋は紗理奈や茉里奈の部屋とは違ってとても可愛らしい部屋だった。
「あんまり見ないで。そんなに片付けたわけでもないから」
夏希がそう言うのと、床に転がっていた夏希の下着に気付いたのはほぼ同時だった。
僕の視線の先に何があるのを夏希が気づくと慌てて片付ける。
「あはは、大丈夫。そんなに気にしてないから」
まあ、僕も茉里奈の部屋に入った時はそんなもんだったから。
「そう言えばお兄さんは?」
とりあえず話題を作ってみた。
「秀史も今日は彼女の家に泊るって」
だから僕と夏希の2人っきりなんだそうだ。
ちょっとだけドキドキした。
そういうものなんだろうか?
「ちょっと待っててね。お菓子とか飲み物取ってくる」
そう言って夏希は部屋を出て僕一人が夏希の部屋に取り残された。
どうすればいいのか分からないから、取りあえず腰を降ろす。
ゲーム機の類は全くない。
テレビとコンポはあるけど。
机にもマスコットの人形とかが置いてある。
ベッドは女の子らしい可愛いベッドだ。
床には白いふかふかの絨毯が敷かれてある。
「おまたせ~」
夏希が戻って来た。
夏希はテーブルにお菓子と飲み物を置くと、テレビをつける。
特に代わり映えの無いワイドショーをやっていた。
夏希はそれを見ながらスマホを弄っている。
僕が読むような漫画は無い。
しょうがないからテレビを見る。
そんな僕に気付いた夏希が言う。
「ごめんね。私ゲームとか持ってなくて」
大体はゲーセンでするかスマホでゲームをする。
だからゲーム機は持ってないんだそうだ。
「あ、秀史の部屋ならあるはずだから持って来ようか?」
彼女の家にいて、彼女はスマホ、僕はゲームってどうなんだろう?
「いや、大丈夫。夏希はワイドショーとか好きなの?」
「まあ、芸能ニュースだけ見てるかな」
政治や事件などはどうでもいいらしい。
事件と言えば……。
「夏希あれから大丈夫?」
あいつらに仕返しされたりしてない?
「大丈夫だよ、まさ君が居てくれるし、そんな事態になったら純也が黙ってないから」
僕も紗理奈達に言われていた。
「何かされたらすぐにいえ。今度は二度と出てこれないようにセメントで埋めてやる」
それでもまだ、懲りずにSHの名を悪用してる輩は大勢いるらしい。
噂を聞けばまず茜が動く。
そして純也や茉里奈たちが制裁する。
それでもまだ把握しきれない高校にまで被害は及んでいるんだそうだ。
SHの敵FGは絶対にSHに手を出せない。
なかなか難しい状況にあるらしい。
……もう少し話題を変えた方がいいな。
「夏希の部屋ってなんか綺麗で可愛いね」
「え?」
「僕は女子の部屋と言えば姉さんの部屋しか見た事無いから」
姉の茉里奈や紗理奈の部屋はヒョウ柄の絨毯だったり、髑髏のマークの旗を壁に飾っていたりだから、こういう部屋には初めてなんだと説明した。
「そうなんだ。でもあまり掃除してないから」
「あ、ごめん」
「いいよ。そういう風に言われるのも慣れてなくて」
夏希は恥ずかしそうに言った。
テレビが話題を運んできてくれる。
「そう言えばまさ君は好きな芸能人とかいるの?」
「……オリーブオイルの人とか」
「まさ君は食べ物の事しかないんだね」
夏希はそう言って笑っていた。
夕方頃になると夏希が動いた。
「じゃ、私夕飯作って来るから待ってて」
「あ、僕も手伝うよ」
「まさ君料理出来るの?」
「男だって料理の一つくらい覚えておけって母さんが言ってたから」
「なるほどね。じゃあ、手伝ってもらおうかな」
2人でキッチンに向かう。
「じゃあ、人参とかジャガイモの皮向いてもらっていいかな?」
「分かった」
その間に夏希は調理器具を準備している。
何となく分かっていたけど、一応聞いてみた。
「で、何を作るの?」
「カレーライス」
ベタだったかな?
夏希が申し訳なさそうに言う。
「大丈夫、カレーって簡単なようで実は難しいって聞いたから」
各家庭で味付けがかなり違ったりする。
夏希の味付けを知るにはいい機会だ。
「まさ君の口に合うといいんだけど」
そう言って夏希の手伝いをしながらカレーを作っていく。
さすがに母さんみたいにスパイスの配合から始めるわけじゃない。
市販のルーを使って作っていた。
カレーは夏希に任せて僕はご飯を炊く。
そのくらい僕一人で出来る。
カレーの仕込みが終り後は煮込むだけになると、夏希はサラダを作っている。
「まさ君はドレッシング好みとかある?」
「大体は大丈夫」
好き嫌いはいけないというのが我が家のルール。
作ってもらった料理に敬意を払えと母さんが言っていた。
ご飯が炊けてカレーも出来上がると盛り付けをしてテーブルに並べる。
夏希と向かい合わせに席に着く。
「頂きます」
「どうぞ召し上がれ」
早速カレーを食べてみる。
「夏希は辛いの平気なんだ?」
「まさ君は苦手?」
「うーん、むしろ甘口のカレーが苦手かな」
「そうなんだ」
嫌いというよりは、カレーを食べてるのに甘いってがっかりしてしまうと夏希に伝える。
「そう言われると確かにそうだね」
「でも激辛が好きってわけでもないんだ」
人が食べられないような味付けは食材に敬意を払ってない証拠だと母さんが言ってた。
食べきれないボリュームの料理とかも同様の理由で苦手だ。
まあ、僕が食べきれないなんて余程の量じゃない限りあり得ないけど。
それでも片桐家の男子には負けるけど。
冬吾ですら僕よりもはるかに多い量を平らげる。
……そう言えば。
「石原さんから聞いたんだけど」
「梨々香から?」
夏希が言うと僕が頷いた。
石原さんは純也でも敵わないくらいの量を平らげると聞いていた。
天音や紗理奈達も高校時代そうだったらしいし、夏希もそうなのかな?と聞いてみた。
「たぶん、まさ君には敵わないよ」
女子だけでうどんを食べる事があるんだけど夏希以外の女子はうどんにさらに追加で丼物を頼むらしい。
それも夕食前に。
それは聞いたことがある。
もっとも茉里奈や紗理奈は焼肉食っていたらしいけど。
食事が終ると、一緒に片づけをしていた。
やけに夏希が嬉しそうだったので「どうしたの?」って聞いてみた。
「秀史たちは全然手伝ってくれなかったってのが一つ」
「まだ何かあるの?」
「彼氏と一緒にキッチンに並ぶなんて初めてだから」
夏希にも初めての事ってあるんだな。
片づけが終ると夏希の部屋に戻る。
「まさ君先にお風呂どうぞ」
夏希にお風呂に案内してもらうと風呂に入る。
問題はこの後だ。
することは分かってるんだけど、どう誘えばいいか分からなかった。
風呂を出て夏希の部屋に戻る。
「じゃあ、私入ってくるからテレビでも見てて」
そう言って夏希が着替えを持って部屋を出た。
なんでこんなに緊張するんだろう?
なんとなくテレビを見ながら考えていたら夏希が戻って来た。
「ちょっとまってね」
そう言って化粧台の椅子に腰かけて髪を乾かし始める。
それが終ると昼間と違って僕の隣に密着して座る。
余計に緊張してしまった。
そんな頭が真っ白な時間を過ごしていると、いつの間にか夏希の手が僕の手の上に重なっていた。
僕は夏希を見る。
夏希が目で何かを訴えている。
ここではぐらかせばきっと夏希を傷つけてしまうだろう。
「あの……」
僕が何かを言おうとした時、夏希がキスをしてきた。
そして僕に抱きつく。
「初めてが私でも平気?」
「恋人が初めてって普通じゃないのかな?」
「私の事好き?」
「好きだよ」
「……ありがとう。私もまさ君に会えてよかった」
夏希は僕から離れてテレビと明かりを消すとベッドに入る。
もちろん僕も入った。
夏希は初めてじゃないから、夏希から色々教えてもらう。
情けないけど分からないから仕方がない。
そして肝心な事を忘れてた。
コンビニに寄ってくるのを忘れていた。
夏希にその事を言うと「だろうな、と思ったんだ」と笑っている。
夏希は一糸まとわぬ姿でベッドを出ると、バッグから取り出す。
「女子だって準備くらいするんだよ」
中にはつけないでしようとする不届き者がいるから。と夏希は説明した。
そして夏希と初めての夜を過ごす。
終わった後夏希は僕に抱きついていた。
「休憩したらもう一回だけお願いしていいかな?」
夏希って意外と大胆なんだな。
「うん、多分大丈夫だと思う」
僕も男だから求めてしまう。
夏希の「もう一回」は何度も続いた。
僕が疲れ果てて眠ってしまうまで。
朝になると夏希がいない。
ベッドを出て服を着ていると夏希が戻って来た。
「おはよう。朝ごはん出来たよ」
夏希の家はトースト派らしい。
それにハムエッグがあった。
「今度学校始まったらお弁当作ってあげるね」
「ありがとう」
「気にしないで。まさ君の美味しそうに食べる姿見てると嬉しいんだ」
折角だからと今日は外に出かけた。
いつものSAPで遊んでいた。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
「じゃあ、また電話するよ」
「うん、また楽しみにしてるね」
クリスマスとか一緒に過ごせたら嬉しいな。
「分かった」
そう言って家に帰る。
家に帰ると茉里奈から「どうだった?」と質問攻めにあう。
女子と言うのはどこまで過激なんだろう?
根掘り葉掘り質問してくる茉里奈に父さんが「あまり深く追求してやるな」という。
僕はもちろん、夏希も困るだろうから。
風呂に入って部屋に戻ると純也達から質問攻めにあう。
女子の追及に比べたら男子のそれはまったく些細な事だ。
普通に答えた。
夏希からメッセージが来てるのに気づいた。
「来年楽しみだね」
「どうして?」
「だって紫一人暮らしするって言ってたから」
大原紫。
秀史の彼女。
「だからまさ君が泊まりたいときにいつでも来れるよ」
むしろ来て欲しいのは夏希の方じゃないのか?と思った。
だけどそんな事は言わない。
僕が出来る事を伝える。
「いつだって側にいるよ」
そんな事を言い合える仲に僕達はなっていた。
(2)
「お前増渕将門だろ?」
謎の集団に俺は麻里と取り囲まれていた。
今日はUSEの社長の命令で俺と麻里の両親に挨拶に地元に戻って来た。
空港で待ち構えていた集団に絡まれていた。
麻里は不安そうに俺の腕を掴んでいる。
「そうだけど、それがどうかしたのか?」
俺と麻里のユニット「フレーズ」は国内では人気がある。
だけど追っかけのファンとかそういう風にはとても思えなかった。
「俺達はSHだ」
セイクリッドハート。
地元で最強の集団。
その勢力は県外にも進出しようとしている。
去年麻里の友達の山本環奈も抜けようとして制裁を受ける寸前だった。
SHは分裂してるらしい。
危害をくわえなければ手出ししない派閥と積極的に勢力を拡大しようとする派閥。
今は後者が圧倒的に多いらしい。
なぜ俺が知っているかというと俺もSHのメンバーだから。
だから俺がこいつらに狙われる理由が分からない。
「SHが俺達に何の用だ?」
俺は麻里を庇いながら聞いてみた。
「お前春山リリーの元カレだろ?」
「そうだけど、それがどうかしたのか?」
するとSHのメンバーは一言で説明した。
「仲間を傷つける奴は絶対に許さない」
なるほど。
俺がリリーを傷つけたから報いを受けろって事か。
「……分かった。ただ麻里は関係ない。麻里には一切手を出すな」
「ちょっと将門!」
麻里は今にも泣き出しそうだ。
だけど連中は告げる。
「関係ないわけないだろ。お前がリリーから将門を盗んだ泥棒猫だろうが!?」
理由さえあれば後は何をしようと俺達の自由だとこいつらは言う。
「取りあえず場所を変えないか?ここだと人目につく」
実際俺達の異様な状態を立ち止まって見てる人だかりが出来ていた。
「関係ないね。お前らは此処で公開処刑だ!」
「それは良い案だね」
言ったのは俺じゃない。
こいつらSHでもない。
いや、SHか……
俺達の腕を掴もうとする腕を小柄な男性が掴んでいた。
「なんだお前?」
男が聞く。
この人が誰かも知らないのにSHを名乗っていたのか?
「お前たちに名乗る必要は無い。名乗ったところで意味がない」
「なんだと?お前もSHに逆らうつもりか?」
男が言うと小柄な男性は睨みつける。
「その名前を二度と口にするな。次に口にしたら二度と物を言えないようにしてやる」
「大地はやることがまどろっこしいんだよ!」
そう言って赤毛のショートボブの女性が男を殴り飛ばした。
「天音は大人しくしてるって約束だろ?」
「大地がもたもたしてるから悪いんだろ!」
「ここだと厄介だ。場所を変えないと」
「確かにそうだな。将門って言ったか?お前等もついてこい!大丈夫。大地の母さんから事情は聞いてる」
USEの専務はこうなることを見越して大地達に頼んでおいたらしい。
大地が指示を出すとどこかの軍の兵隊みたいな大男たちがSHの身柄を拘束して輸送車に積み込む。
輸送車が走り出すと大地の車も輸送車を追っていた。
その間に天音から説明を受ける。
リリーはSHを抜けた。
SHには思い出があり過ぎて辛いから。
しかし連中はそうは思わなかった。
全部俺のせいだと思い込んだらしい。
天音は事情を明らかにするために妹の茜に頼んだ。
一度でもSHにいたメンバーの情報は茜が掌握済み。
そして天音がリリーに事情を聴いた。
最近こういう勘違いの馬鹿が多くて天音達も忙しいらしい。
なんせ天音の兄の空達は内定が決まっている状態で下手に動けないから。
そうこうしている間に車は山の中に入る。
輸送車から連中を降ろすと天音は一言言った。
「お前ら全員服を脱げ」
当然連中は拒否する。
すると兵隊たちが無理矢理服を脱がしてその場で燃やした。
中には当然女子もいる。
連中は固まって怯えているのを天音は写真を撮ると告げた。
「この程度で済んでよかったと思え。よりにもよってフレーズの2人に手を出しやがって。本来なら空が直接お前らを処刑だぞ」
天音の兄と姉の空と翼は俺達の大ファンなんだそうだ。
実際事件が発覚した時、翼ですら直接手を下そうとしたらしい。
「神はお前らを見捨ててなかったらしい。精々感謝してそこでいつまでもガタガタ震えてやがれ」
そう言って天音と大地は俺たちを車に乗せて連中を残して地元に帰った。
天音の裁きはその程度では済まない。
撮った画像ファイルを茜に渡すと「山の中で大学生が乱交」とでたらめの記事を作りあげてネットに流す。
その場にいた全員休学処分が下されたらしい。
「ありがとうございます」
麻里が礼を言う。
「礼の代わりにさ、一緒に写真撮ってくれないか?」
空達に自慢したいらしい。
俺達は心よく承諾した。
「天音だけずるい!」
後日、翼と空は怒不満を言っていたそうだ。
翼と空には環奈の件でも世話になってる。
何か恩返しをしたい。
そんな事を考えていた。
そしてその機会を専務が与えてくれることになるのはまだ知る由も無かった。
「おはようございます」
「あ、まさ君いらっしゃい」
僕は彼女の小泉夏希の家に一泊のお泊りで遊びに来ていた。
夏希は僕を家に上げると部屋に案内する。
当たり前だけどベッドは一つしかない。
夏希の部屋は紗理奈や茉里奈の部屋とは違ってとても可愛らしい部屋だった。
「あんまり見ないで。そんなに片付けたわけでもないから」
夏希がそう言うのと、床に転がっていた夏希の下着に気付いたのはほぼ同時だった。
僕の視線の先に何があるのを夏希が気づくと慌てて片付ける。
「あはは、大丈夫。そんなに気にしてないから」
まあ、僕も茉里奈の部屋に入った時はそんなもんだったから。
「そう言えばお兄さんは?」
とりあえず話題を作ってみた。
「秀史も今日は彼女の家に泊るって」
だから僕と夏希の2人っきりなんだそうだ。
ちょっとだけドキドキした。
そういうものなんだろうか?
「ちょっと待っててね。お菓子とか飲み物取ってくる」
そう言って夏希は部屋を出て僕一人が夏希の部屋に取り残された。
どうすればいいのか分からないから、取りあえず腰を降ろす。
ゲーム機の類は全くない。
テレビとコンポはあるけど。
机にもマスコットの人形とかが置いてある。
ベッドは女の子らしい可愛いベッドだ。
床には白いふかふかの絨毯が敷かれてある。
「おまたせ~」
夏希が戻って来た。
夏希はテーブルにお菓子と飲み物を置くと、テレビをつける。
特に代わり映えの無いワイドショーをやっていた。
夏希はそれを見ながらスマホを弄っている。
僕が読むような漫画は無い。
しょうがないからテレビを見る。
そんな僕に気付いた夏希が言う。
「ごめんね。私ゲームとか持ってなくて」
大体はゲーセンでするかスマホでゲームをする。
だからゲーム機は持ってないんだそうだ。
「あ、秀史の部屋ならあるはずだから持って来ようか?」
彼女の家にいて、彼女はスマホ、僕はゲームってどうなんだろう?
「いや、大丈夫。夏希はワイドショーとか好きなの?」
「まあ、芸能ニュースだけ見てるかな」
政治や事件などはどうでもいいらしい。
事件と言えば……。
「夏希あれから大丈夫?」
あいつらに仕返しされたりしてない?
「大丈夫だよ、まさ君が居てくれるし、そんな事態になったら純也が黙ってないから」
僕も紗理奈達に言われていた。
「何かされたらすぐにいえ。今度は二度と出てこれないようにセメントで埋めてやる」
それでもまだ、懲りずにSHの名を悪用してる輩は大勢いるらしい。
噂を聞けばまず茜が動く。
そして純也や茉里奈たちが制裁する。
それでもまだ把握しきれない高校にまで被害は及んでいるんだそうだ。
SHの敵FGは絶対にSHに手を出せない。
なかなか難しい状況にあるらしい。
……もう少し話題を変えた方がいいな。
「夏希の部屋ってなんか綺麗で可愛いね」
「え?」
「僕は女子の部屋と言えば姉さんの部屋しか見た事無いから」
姉の茉里奈や紗理奈の部屋はヒョウ柄の絨毯だったり、髑髏のマークの旗を壁に飾っていたりだから、こういう部屋には初めてなんだと説明した。
「そうなんだ。でもあまり掃除してないから」
「あ、ごめん」
「いいよ。そういう風に言われるのも慣れてなくて」
夏希は恥ずかしそうに言った。
テレビが話題を運んできてくれる。
「そう言えばまさ君は好きな芸能人とかいるの?」
「……オリーブオイルの人とか」
「まさ君は食べ物の事しかないんだね」
夏希はそう言って笑っていた。
夕方頃になると夏希が動いた。
「じゃ、私夕飯作って来るから待ってて」
「あ、僕も手伝うよ」
「まさ君料理出来るの?」
「男だって料理の一つくらい覚えておけって母さんが言ってたから」
「なるほどね。じゃあ、手伝ってもらおうかな」
2人でキッチンに向かう。
「じゃあ、人参とかジャガイモの皮向いてもらっていいかな?」
「分かった」
その間に夏希は調理器具を準備している。
何となく分かっていたけど、一応聞いてみた。
「で、何を作るの?」
「カレーライス」
ベタだったかな?
夏希が申し訳なさそうに言う。
「大丈夫、カレーって簡単なようで実は難しいって聞いたから」
各家庭で味付けがかなり違ったりする。
夏希の味付けを知るにはいい機会だ。
「まさ君の口に合うといいんだけど」
そう言って夏希の手伝いをしながらカレーを作っていく。
さすがに母さんみたいにスパイスの配合から始めるわけじゃない。
市販のルーを使って作っていた。
カレーは夏希に任せて僕はご飯を炊く。
そのくらい僕一人で出来る。
カレーの仕込みが終り後は煮込むだけになると、夏希はサラダを作っている。
「まさ君はドレッシング好みとかある?」
「大体は大丈夫」
好き嫌いはいけないというのが我が家のルール。
作ってもらった料理に敬意を払えと母さんが言っていた。
ご飯が炊けてカレーも出来上がると盛り付けをしてテーブルに並べる。
夏希と向かい合わせに席に着く。
「頂きます」
「どうぞ召し上がれ」
早速カレーを食べてみる。
「夏希は辛いの平気なんだ?」
「まさ君は苦手?」
「うーん、むしろ甘口のカレーが苦手かな」
「そうなんだ」
嫌いというよりは、カレーを食べてるのに甘いってがっかりしてしまうと夏希に伝える。
「そう言われると確かにそうだね」
「でも激辛が好きってわけでもないんだ」
人が食べられないような味付けは食材に敬意を払ってない証拠だと母さんが言ってた。
食べきれないボリュームの料理とかも同様の理由で苦手だ。
まあ、僕が食べきれないなんて余程の量じゃない限りあり得ないけど。
それでも片桐家の男子には負けるけど。
冬吾ですら僕よりもはるかに多い量を平らげる。
……そう言えば。
「石原さんから聞いたんだけど」
「梨々香から?」
夏希が言うと僕が頷いた。
石原さんは純也でも敵わないくらいの量を平らげると聞いていた。
天音や紗理奈達も高校時代そうだったらしいし、夏希もそうなのかな?と聞いてみた。
「たぶん、まさ君には敵わないよ」
女子だけでうどんを食べる事があるんだけど夏希以外の女子はうどんにさらに追加で丼物を頼むらしい。
それも夕食前に。
それは聞いたことがある。
もっとも茉里奈や紗理奈は焼肉食っていたらしいけど。
食事が終ると、一緒に片づけをしていた。
やけに夏希が嬉しそうだったので「どうしたの?」って聞いてみた。
「秀史たちは全然手伝ってくれなかったってのが一つ」
「まだ何かあるの?」
「彼氏と一緒にキッチンに並ぶなんて初めてだから」
夏希にも初めての事ってあるんだな。
片づけが終ると夏希の部屋に戻る。
「まさ君先にお風呂どうぞ」
夏希にお風呂に案内してもらうと風呂に入る。
問題はこの後だ。
することは分かってるんだけど、どう誘えばいいか分からなかった。
風呂を出て夏希の部屋に戻る。
「じゃあ、私入ってくるからテレビでも見てて」
そう言って夏希が着替えを持って部屋を出た。
なんでこんなに緊張するんだろう?
なんとなくテレビを見ながら考えていたら夏希が戻って来た。
「ちょっとまってね」
そう言って化粧台の椅子に腰かけて髪を乾かし始める。
それが終ると昼間と違って僕の隣に密着して座る。
余計に緊張してしまった。
そんな頭が真っ白な時間を過ごしていると、いつの間にか夏希の手が僕の手の上に重なっていた。
僕は夏希を見る。
夏希が目で何かを訴えている。
ここではぐらかせばきっと夏希を傷つけてしまうだろう。
「あの……」
僕が何かを言おうとした時、夏希がキスをしてきた。
そして僕に抱きつく。
「初めてが私でも平気?」
「恋人が初めてって普通じゃないのかな?」
「私の事好き?」
「好きだよ」
「……ありがとう。私もまさ君に会えてよかった」
夏希は僕から離れてテレビと明かりを消すとベッドに入る。
もちろん僕も入った。
夏希は初めてじゃないから、夏希から色々教えてもらう。
情けないけど分からないから仕方がない。
そして肝心な事を忘れてた。
コンビニに寄ってくるのを忘れていた。
夏希にその事を言うと「だろうな、と思ったんだ」と笑っている。
夏希は一糸まとわぬ姿でベッドを出ると、バッグから取り出す。
「女子だって準備くらいするんだよ」
中にはつけないでしようとする不届き者がいるから。と夏希は説明した。
そして夏希と初めての夜を過ごす。
終わった後夏希は僕に抱きついていた。
「休憩したらもう一回だけお願いしていいかな?」
夏希って意外と大胆なんだな。
「うん、多分大丈夫だと思う」
僕も男だから求めてしまう。
夏希の「もう一回」は何度も続いた。
僕が疲れ果てて眠ってしまうまで。
朝になると夏希がいない。
ベッドを出て服を着ていると夏希が戻って来た。
「おはよう。朝ごはん出来たよ」
夏希の家はトースト派らしい。
それにハムエッグがあった。
「今度学校始まったらお弁当作ってあげるね」
「ありがとう」
「気にしないで。まさ君の美味しそうに食べる姿見てると嬉しいんだ」
折角だからと今日は外に出かけた。
いつものSAPで遊んでいた。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。
「じゃあ、また電話するよ」
「うん、また楽しみにしてるね」
クリスマスとか一緒に過ごせたら嬉しいな。
「分かった」
そう言って家に帰る。
家に帰ると茉里奈から「どうだった?」と質問攻めにあう。
女子と言うのはどこまで過激なんだろう?
根掘り葉掘り質問してくる茉里奈に父さんが「あまり深く追求してやるな」という。
僕はもちろん、夏希も困るだろうから。
風呂に入って部屋に戻ると純也達から質問攻めにあう。
女子の追及に比べたら男子のそれはまったく些細な事だ。
普通に答えた。
夏希からメッセージが来てるのに気づいた。
「来年楽しみだね」
「どうして?」
「だって紫一人暮らしするって言ってたから」
大原紫。
秀史の彼女。
「だからまさ君が泊まりたいときにいつでも来れるよ」
むしろ来て欲しいのは夏希の方じゃないのか?と思った。
だけどそんな事は言わない。
僕が出来る事を伝える。
「いつだって側にいるよ」
そんな事を言い合える仲に僕達はなっていた。
(2)
「お前増渕将門だろ?」
謎の集団に俺は麻里と取り囲まれていた。
今日はUSEの社長の命令で俺と麻里の両親に挨拶に地元に戻って来た。
空港で待ち構えていた集団に絡まれていた。
麻里は不安そうに俺の腕を掴んでいる。
「そうだけど、それがどうかしたのか?」
俺と麻里のユニット「フレーズ」は国内では人気がある。
だけど追っかけのファンとかそういう風にはとても思えなかった。
「俺達はSHだ」
セイクリッドハート。
地元で最強の集団。
その勢力は県外にも進出しようとしている。
去年麻里の友達の山本環奈も抜けようとして制裁を受ける寸前だった。
SHは分裂してるらしい。
危害をくわえなければ手出ししない派閥と積極的に勢力を拡大しようとする派閥。
今は後者が圧倒的に多いらしい。
なぜ俺が知っているかというと俺もSHのメンバーだから。
だから俺がこいつらに狙われる理由が分からない。
「SHが俺達に何の用だ?」
俺は麻里を庇いながら聞いてみた。
「お前春山リリーの元カレだろ?」
「そうだけど、それがどうかしたのか?」
するとSHのメンバーは一言で説明した。
「仲間を傷つける奴は絶対に許さない」
なるほど。
俺がリリーを傷つけたから報いを受けろって事か。
「……分かった。ただ麻里は関係ない。麻里には一切手を出すな」
「ちょっと将門!」
麻里は今にも泣き出しそうだ。
だけど連中は告げる。
「関係ないわけないだろ。お前がリリーから将門を盗んだ泥棒猫だろうが!?」
理由さえあれば後は何をしようと俺達の自由だとこいつらは言う。
「取りあえず場所を変えないか?ここだと人目につく」
実際俺達の異様な状態を立ち止まって見てる人だかりが出来ていた。
「関係ないね。お前らは此処で公開処刑だ!」
「それは良い案だね」
言ったのは俺じゃない。
こいつらSHでもない。
いや、SHか……
俺達の腕を掴もうとする腕を小柄な男性が掴んでいた。
「なんだお前?」
男が聞く。
この人が誰かも知らないのにSHを名乗っていたのか?
「お前たちに名乗る必要は無い。名乗ったところで意味がない」
「なんだと?お前もSHに逆らうつもりか?」
男が言うと小柄な男性は睨みつける。
「その名前を二度と口にするな。次に口にしたら二度と物を言えないようにしてやる」
「大地はやることがまどろっこしいんだよ!」
そう言って赤毛のショートボブの女性が男を殴り飛ばした。
「天音は大人しくしてるって約束だろ?」
「大地がもたもたしてるから悪いんだろ!」
「ここだと厄介だ。場所を変えないと」
「確かにそうだな。将門って言ったか?お前等もついてこい!大丈夫。大地の母さんから事情は聞いてる」
USEの専務はこうなることを見越して大地達に頼んでおいたらしい。
大地が指示を出すとどこかの軍の兵隊みたいな大男たちがSHの身柄を拘束して輸送車に積み込む。
輸送車が走り出すと大地の車も輸送車を追っていた。
その間に天音から説明を受ける。
リリーはSHを抜けた。
SHには思い出があり過ぎて辛いから。
しかし連中はそうは思わなかった。
全部俺のせいだと思い込んだらしい。
天音は事情を明らかにするために妹の茜に頼んだ。
一度でもSHにいたメンバーの情報は茜が掌握済み。
そして天音がリリーに事情を聴いた。
最近こういう勘違いの馬鹿が多くて天音達も忙しいらしい。
なんせ天音の兄の空達は内定が決まっている状態で下手に動けないから。
そうこうしている間に車は山の中に入る。
輸送車から連中を降ろすと天音は一言言った。
「お前ら全員服を脱げ」
当然連中は拒否する。
すると兵隊たちが無理矢理服を脱がしてその場で燃やした。
中には当然女子もいる。
連中は固まって怯えているのを天音は写真を撮ると告げた。
「この程度で済んでよかったと思え。よりにもよってフレーズの2人に手を出しやがって。本来なら空が直接お前らを処刑だぞ」
天音の兄と姉の空と翼は俺達の大ファンなんだそうだ。
実際事件が発覚した時、翼ですら直接手を下そうとしたらしい。
「神はお前らを見捨ててなかったらしい。精々感謝してそこでいつまでもガタガタ震えてやがれ」
そう言って天音と大地は俺たちを車に乗せて連中を残して地元に帰った。
天音の裁きはその程度では済まない。
撮った画像ファイルを茜に渡すと「山の中で大学生が乱交」とでたらめの記事を作りあげてネットに流す。
その場にいた全員休学処分が下されたらしい。
「ありがとうございます」
麻里が礼を言う。
「礼の代わりにさ、一緒に写真撮ってくれないか?」
空達に自慢したいらしい。
俺達は心よく承諾した。
「天音だけずるい!」
後日、翼と空は怒不満を言っていたそうだ。
翼と空には環奈の件でも世話になってる。
何か恩返しをしたい。
そんな事を考えていた。
そしてその機会を専務が与えてくれることになるのはまだ知る由も無かった。
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