姉妹チート

和希

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暗闇の彼方の光

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(1)

「それじゃ、乾杯」

 僕が音頭をとると皆話を始めた。
 今日はSHの大学生組の新歓。
 僕と翼も呼ばれていた。
 あまりむやみにSHのメンバーを増やしたくないという大学生組代表の大地の要望で高校生組が繰り上がる程度だった。
 特に面識がないという事は無いので自由にさせておいた。
 僕達社会人組は僕を中心に近くの席を陣取る。

「空、なんかおかしくないか?」

 光太が言う。
 学生組と社会人組が分かれてる事を言ってるのではないことぐらい僕でも分かる。
 やはり学生組は何か隠し事をしているみたいだ。

「空どうする?」

 光太が聞く。
 翼は学を見ている。
 学に何かあるのだろうか?

「学、何か知ってるの?」
「いや、特に水奈からは聞いていない」

 翼が天音に聞いても知らないと返事をしたそうだ。
 SHのチャットを見ても大学生組は静かだ。
 その代わり高校生以下のメンバーが騒いでいた。
 それも雪だるま式に増えていく。
 それが何か関係しているのだろうか。

「妙じゃない?だってその増えたメンバーは発言権がないんだよ?」

 翼が言う。
 管理人の茜以外発言権を誰かに付与することは出来ない。
 しかし今まで入って来たメンバーは無条件で付与していた。
 それが今年度になって急に替わった。

「……学。スマホ見せて」

 翼は学が何かを隠していると確信したらしい。

「……やはり翼に隠し事は無理か」

 学はあっさり認めた。

「大丈夫、天音達が言い出すまで私達は知らないふりをしているから」

 翼が言う。
 すると学はスマホを出さずに、代わりに学が聞いたことを説明した。

「ふざけた真似しやがって……」

 光太達は怒り出す。

「空は冷静にならないとダメだよ。空が動けばそれだけで大事になる」

 美希が言う。
 僕も落ち着いて状況を整理した。

「新学期が始まったって事はもうその連中は動き出してるんだね?」
「水奈達もそれが分からないらしい」

 大学生が小学校に乗り込むなんて真似できないだろ?と言う。
 大学生が無理でも小学生や中学生なら分かるかもしれない。
 僕はスマホをとると冬吾に個チャを送った。

「冬吾は学校に通っていて何か妙な事は無い?」

 大当たりだった。

「空から聞いた状況とまるで違うんだ」

 冬吾は言う。
 黒いリストバンドをした連中がしてない連中から恐喝、暴行等を受けている。
 きっとSHの連中だろうと思っていたけど、やっぱり気になったらしい。
 SHがそんな真似をする事を僕が許すはずがない。
 だから不思議だったんだそうだ。
 しかも冬吾と冬莉達には一切手を出してこない。
 だからSHだと判断したんだろうけど。
 冬眞からも同様の回答が返って来た。
 茜は隠すだろうから純也に聞いてみたら同じだった。
 純也の場合正俊の件があるから余計に見張っているらしい。
 ふざけた真似をしたやつを片っ端から殴り飛ばしてるそうだ。
 最近、大学生が恐喝を受けたというニュースをやってた。
 中高年のサラリーマンを袋にしてる連中もいるらしい。
 そんなニュースが流れだしたら否が応でもリーダーの僕に警察が関与してくる。
 さすがにもう無理だと判断した学はそろそろ僕達に相談しようかと考えていた時期らしい。

「天音が大人しいのは?」
「天音が動けば当然石原家が動く」

 そうなれば当然美希にも分かる。
 それに天音もいい加減自分の立場という物をわきまえる様になった。

「それを俺達に知らせなかったのはどうしてだ?」

 光太が聞く。

「俺達は社会人だ。空はまだ試用期間。俺にいたっては公務員だ。暴力沙汰なんて絶対できないだろ」
 
 与留もバレーの選手だ。
 不祥事は避けたい。

「そんな事なら私達がいるじゃない」

 美希が言う。
 多少の面倒事はもみ消してやると美希が言う。

「仕事で忙しいのにイライラさせて、余程埋められたいのでしょうね」

 善明も頭に来てるみたいだ。

「ここで僕達だけで話をしてもしょうがない。学、2次会にカラオケのパーティルーム取っておいて」
「分かった」
「じゃあ、いったんこの話はここまでにして皆仕事は順調?」

 僕が話題を変えてみた。

「順調とは言いづらいですね。仕事に没頭すると関連企業が一つ傾いてしまう」

 それどころか市長のすげ替えくらいしてしまいかねないらしい。

「あら?善明はいつも言ってるじゃない。社長に無駄な仕事振ってくる無能な連中に付き合う必要はないって」
「そうは言うけどね、翼や、相手は僕の倍以上生きてる年上のそれなりの役職についてる人だよ」

 普通に考えて強気ではいけないな。

「善明だって社長なんだからもっと堂々としてればいいのに」

 翼がそう言うと善明は参っていた。

「空はどうなんだい?」
「毎日入力業務だけしてる。そんなに難しい事はさせてもらえない」
「まあ、最初だけだよ。慣れたら後は楽になるから」

 光太が言う。
 1次会が済むと2次会のカラオケに向かう。
 学に言って水奈や大地には来るように伝えてもらった。
 パーティルームに入ると人数分の注文をとる。
 皆歌いださないのは呼び出した理由を察したからだろう。

「学から聞いたよ」

 僕が言うと大学生組は険しくなる。

「さすがにニュースになり出した。空だっていつ警察から事情聴取を受けてもおかしくない状態だ。突然来て慌てるよりはいいと思ってな」

 学が言うと水奈達は納得した。
 そして「ごめん」と神妙にしている。

「別に謝って欲しくて呼び出したんじゃないよ。水奈はこれからどうするつもり?」
「それが……」

 水奈が説明する。
 目に届く範囲なら見つけ次第ペナルティを与えている。
 しかし大学生の行動範囲は異常なまでに広い。
 加えてSHの影響は九州全土に広がっている。
 全部を潰していくのは無理だ。
 だからこれ以上増やさないように茜に指示をした。
 だけど招待だけなら誰でも出来る。
 茜達にも把握できない部分が出て来た。
 加えて別グルを起ち上げてそっちで話し込んでる。
 もちろん茜はそこは抑えた。
 指示があるまで様子見をしているそうだ。
 大体状況は分かった。
 僕は茜に指示を出す。

「勝手な真似ををしたら追放すると全員に知らせてくれ」
「追放してもSHを名乗るから無理だよ」
「以後SHの名前を騙ったらすぐに始末してやるとも伝えて」
「……空、大丈夫なの?」
「どっちにしろ警察に目をつけられてるんでしょ?」
「分かった」

 茜と電話を終わらせると皆が「本気か?」と聞いてくる。

「SHを名乗らないと何もできない雑魚くらいどう処理しても問題ないでしょ」
「空の言う通りだと思う。心配しないで。”行方不明”で済ませてあげる」

 美希が言う。

「ところでどうしてこうなったの?」

 翼が水奈達に聞いていた。
 やっぱり九頭竜會を壊滅させたのがデカかった。
 調子に乗ったSHの末端が暴走を始めた。
 SHに歯向かう奴はいない。
 しかしそれを理由に馬鹿な真似をする奴は決して許さない。
 力づくて潰してやる。

「まさに王の逆鱗に触れたってところか」

 学が言うと皆が笑う。

「冬吾と冬眞達にも知らせておこう。多分連中はそこを狙うはずだから」

 そこがSHの本拠地なんだから。

「まずどう出る?」

 光太が聞く。

「誰でもいい。ふざけた奴をさらし者にして警告する」

 あとは、学生組に任せよう。
 敵はいなくなった。
 いなくなったから、SHが変貌しようとしている。
 最大の敵は身内だった。
 今年も大変な事になりそうだ。
 そんな予感がした。

(2)

「お疲れ様でした」

 終業のチャイムが鳴ると僕は荷物をまとめて帰ろうとした時だった。

「空、ちょっとおいで」

 父さんに呼び止められた。
 何かあったのだろうか?
 僕はとりあえず社長室に向かう。
 すると父さんは僕が作成した書類を見せた。

「頼んでいた物と違うけど、どういう事か説明して欲しい」
「チェックしたら明らかに間違っている部分があるので訂正しました」
「どうして間違いだと判断したの?」

 え?
 明らかに数字がおかしいから。
 チェックしたら、一緒に渡された資料と食い違いがある。
 資料の方が正しいだろうと判断して訂正しておいた。
 
「それは空一人で判断したの?」
「はい」
「どうして勝手な真似をしたの?」

 父さんは明らかに怒っていた。

「でも、どう見ても間違っていたから」
「それは空の独断だろ?」

 僕は勘違いしているとパパが言った。
 この仕事は父さんが私に頼んだ物だけど、僕が請け負っている仕事じゃない。
 あくまでも父さんの補佐をしているだけ。
 この数字が間違っていたのは、父さんでも分かっている。
 客先と相談して敢えて弄る事に寄って帳尻合わせをして作ったものだから。
 なのに僕が間違っていると安易に判断して勝手に数字を変えたら、それによって客先が被害を被る。
 その時に僕に責任が取れるの?
 父さんはそう言った。

「正しい事だけをやるだけが仕事じゃない。可能な限り客先が利益を得るように調整するのも仕事の一つだ」

 僕は資格はもっているが実務経験は無い。
 客とも話をしていない。
 昨今の会計ソフトは優秀だ。
 正確な物を作るだけならソフトの通りにしていればいい。
 それなら私じゃなくても誰でも出来る仕事だ。
 そういう経験をこれから積んでいく段階でそんな勝手な真似は許さない。
 どうして気づいた時に父さんに相談しなかった?
 父さんはそう言った。

「……申し訳ありません」
「悪いけど、これ明日必要だから今日中に作り直して」

 そう言って父さんは書類を突き返す。
 父さんは最後にチェックをするから一緒に残るという。
 それから修正作業をしていた。
 大学で学んだことなんてほとんど役に立たない。
 まさに身に染みる一言だった。
 僕は思い上がっていた。
 周りが暗くなる頃、いつの間にか事務所を出ていたパパが袋をもって帰って来た。

「お腹空いたろ?」

 そう言って袋を差し出す。
 お弁当が入っていた。
 大盛りが物凄いご飯の量のお店のだった。
 それを食べている間父さんは書類のチェックをする。

「これならいいよ。お疲れ様」
「申し訳ありませんでした」

 僕は父さんに謝罪した。
 そんな僕に父さんは一言言った。

「ほうれんそう」

 報告・連絡・相談。
 まだ試用期間の僕には必要不可欠な要素。
 たとえ僕がミスをしても責任をとるのは先輩や社長だ。
 だから些細な事でもいいから必ず確認をしなさい。
 それがヒューマンエラーなのか、それとも意図的に変えているのか判断するのは僕じゃないと話していた。

「じゃ、今日はそろそろ帰ろう」

 父さんが言うと僕達は家に帰った。
 家に帰ると美希が「お疲れ」と言ってくれる。
 何があったのか聞いてきたので話した。
 それを聞いていた美希が言う。

「これは私の勘なんだけど……」
「どうしたの?」

 僕は美希に聞いてみた。

「冬夜さんはその仕事を敢えて空に渡したんじゃないかな?」

 僕が優秀だから。
 何でもこなすから。
 だから敢えて罠を張った。
 そうでもしないと僕がどういう立場でどういう仕事をしているのか分からないだろうから。

「決して空に辛くあたってるわけじゃないと思う。そうやって空に社会の常識を教えてるんじゃないかな」

 それは説明しても理解したつもりで正しく理解していない。
 だからミスを誘発させて叱って反省を促しているんだと美希は言う。
 これから仕事をしていたら起こるであろう様々なトラブルに対処できるように。

「美希の言う通りかもしれないね」
「だから空も落ち込む必要はないよ。同じ失敗をしなければいいだけなんだから」
「うん。ありがとう」
「それよりもうじきだね?」
「何が?」
「4月19日」

 あ……
 父さん達からの最後の贈り物。
 翼や天音の時は平然としていたから、多分僕の時も大丈夫なんだろうな。
 美希のウェディングドレス姿を楽しみにしていた。
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