姉妹チート

和希

文字の大きさ
312 / 535

next generation

しおりを挟む

「じゃ、始めようか。乾杯」

 渡辺さんが挨拶いて宴が始まった。
 まさか4大企業のトップが揃ってさらに県知事までこんな公園で花見をしてるとは誰も思わないだろう。
 片桐君と渡辺君が挨拶をして回っていた。
 
「晴斗、仕事はどうだ?」
「よくわかんねーから春奈に聞いてるっす」

 それでいいのか?県知事。
 まあ、ただの税理士事務所の社長に頭を下げる大企業の社長がいる世の中だからいいんだろう。
 今日は僕達渡辺班と子供達のSHが揃って花見を催していた。
 大体の子供は孫が生まれてこれからもどんどん生まれていくらしい。
 一々書くのも面倒になって来てる程だ。
 
「ついに来たな冬夜」
「そうだね」
「冬吾は他の国でも大食いしてお腹壊さなければいいんだけど」
「冬吾なら大丈夫だろ?」

 多田君と片桐君と愛莉さんと神奈さんが言っている。
 今年の5月にあるU-20のW杯に呼ばれていた。
 U-18を飛び越えての招集だ。
 体力はしっかり多田君が仕込んだらしい。
 何度か海外試合を経験してコンディションの調整の仕方も覚えたらしい。
 
「冬吾は多分食い物目当てなんだろうけど、誠司は何か楽しみあるの?」
「どうやって冬吾と活かそうか考えててそれどころじゃないよ。なんかお土産欲しいか?」
「どうせ自分で行く事になるからいいよ」

 そんな話を娘の泉としている。
 もちろん彼氏の村井育人が隣にいる。
 あくまでもただの友達らしい。
 誠司がサッカーに夢中なのは親から見ても間違いないらしい。
 しかし心配もある。
 そんなにサッカーに熱を入れ過ぎてサッカーを失った時大丈夫なのか?
 まだそんな心配をする年じゃないけどやはり不安だ。
 桜子の夫の佐がそうだったから。

「あんたもいい加減彼女作ったらどうなの?」
「じゃあ、泉が付き合ってくれよ」
「二股かけるような女子が好きなの?」

 そんな感じで軽口をたたいている。
 反省をしたのは間違いない。
 ただそのあまりに自信を失っているのじゃないか?
 彼女を幸せにする自身。
 そんな自信を持っている高校生がいるわけないけど。
 でもそんな自信過剰なくらいの男子は多少はいるだろう。

「違うよ」

 片桐君が来た。

「誠司は落ち着いたんだよ。ちょっと早すぎるけど」

 散々遊んで遊ばれて傷ついて。
 そしてやっと気づいた真実の愛。
 それは与える物でも奪う物でも無くて気づいたらそばにある物。
 自分でどうこうしなくてもふとした時に気づく物。
 だから慌てる必要は無いと思ってるんだろうと片桐君が説明した。

「それで大丈夫なわけ?」

 亜依さんが言う。

「恵美さん達だってそうだったでしょ」

 何がきっかけになるのか分からない。

「なるほどね」
「あいつそこまで大人になったんだな」

 恵美さんと多田君が言っている。

「それより翼達はどうだった?入園式」

 片桐君は翼に聞いていた。
 ちなみに僕は善明から聞いている。
 だからまずいと思った。
 天音ですらまずいと思ったのか「普通だった。やっぱつまんねーよな。大人になっても苦手だよ」と答えた。
 翼もただ作り笑いをしているだけ。
 石原君達は聞いていないらしい。
 だから興味があったのだろう。
 しかしあれは恵美さん達に聞かせて良い話じゃない。
 しかし子供は正直だ。

「つまんなかった。知らないおっさんが話を始めてつまんなかったから……」

 茉莉は悪気はない。
 だから質が悪い。
 大地は苦笑いしている。
 天音は慌てている。
 そして茉莉が全部話した。
 恵美さんは笑っていた。

「そういうつまらない時も我慢する必要があるんだからだめですよ」

 そう言って注意していた。
 それに対して愛莉さんは……。

「天音!どういう事ですか!?」

 天音に詰め寄る愛莉さん。

「いや、子供は正直って言うだろ」
「ええ、正直です。子供はすぐ親の真似をするんです」
「わ、私は愛莉みたいにはならなかったぞ」
「どうしてなんでしょうね?」
「な、なんでだろうな?大地、どうなんだ?」

 大地に救援を求める天音。
 多分大地は理由を知っている。

「テレビとかの影響じゃないかな」
「ば、馬鹿!!」

 大地に救援を求めたのが間違いだったようだ。
 天音が普通の3歳児が見るテレビを観るはずがない。
 そして過激な映画やゲームを見て育って来た。
 するとこうなるんだろう。

「だからあれほど気をつけなさいと言ったでしょ!」

 愛莉さんの怒りが爆発する。

「あ、愛莉ちゃん。元気があっていいじゃない。天音ちゃんそっくりよ」
「恵美……だから問題なの!」

 このまま成長したら天音か天音以上に手に負えない子になる。

「大丈夫よ。茉莉ちゃんに無礼な真似した奴は片っ端から地獄に突き落としてやるから」

 むしろ茉莉は自分で地獄に突き落としかねないけどね。

「それにしても結莉は不思議ですね」

 石原君がそう言って結莉を見ている。
 結莉は結と一緒に弁当を食べている。

「結莉がおにぎり握ったんだよ」
「美味しいね」
「ありがとう」

 同じ双子でこうも違うのか?
 それに気になるのはやはり茉奈。
 今は優翔の隣で愛菜や優菜の世話をしているけど、結莉達を羨ましそうに見ている。
 茉奈の気持ちに気付くなという方が無理な話だろう。

「で、肝心の結はどう思ってるんだ?」

 美嘉さんが聞いていた。

「まだ3歳ですから。何も考えてないんじゃないかな?」

 美希が答える。
 そりゃ3歳だもんね。
 食べ物をくれる人程度にしか思ってないんじゃないだろうか。

「それで思ったんだけどさ」
「どうしたんだ水奈」
「天音確かうちの娘と同じ年の子がいたよな?」
「ああ、海翔か?それがどうしたんだ?」
「いや、うちの優奈か愛菜をどうだと思ってな」

 恋人がいれば大人しくなるなら試してみたいらしい。

「お前は娘の彼氏探す前に、娘の教育をどうにかしろ!」

 神奈さんが怒ってる。
 まあ、無理もない。
 惨状は善明から聞いてるよ。
 多田君がついていた方が良かったんじゃないかと思うくらい酷い。
 その分悠翔と茉奈はしっかりしてきているらしい。
 ただ優奈と愛菜が神奈さんの手にもおえないくらいになっている。

「亜依、琴音はどうなんだ?」
「遊を手こずらせて遊んでるよ」

 遊が注意するといったん止めて目を離すとまた始めるらしい。
 遊が帰ってくる時間になると「ちぇーん」となずなに言うらしい。
 そして家に入れようとしない琴音。
 少しでも酒を飲もうとすると「お酒臭いパパ嫌い」と訴えるそうだ。
 なずなが困ってる遊を困らせる琴音。
 なずなも面白がってるみたいだ。
 それでも琴音は遊を気に入ってるらしい。

「パパはママと琴音どっちが好き?」

 そんな意地悪な質問をして遊を悩ませる。

「なんだかんだ言ってちゃんと父親してるんだな」

 亜依さんが感心していた。
 まあ、瑛大君に比べたら全然マシなんだろうね。

「秋久は相変わらず?」

 晶さんが翼に聞いていた。

「そうなんですよ。良くも悪くも欲がないんです」

 誕生日プレゼントに何か買ってあげようかと言っても玩具をねだらない。
 辞典をせがむらしい。

「どういう理由なんだい?」

 善明は疑問に思ったらしい。
 しかし家に帰ると納得した。
 分厚い辞典を枕にして寝てるそうだ。
 自分の役割をしっかり把握している。
 入園式の時もそうだった。
 茉莉が爆睡して園長が激怒してる中周りを観察していた。
 人間観察だ。
 そして四宮と神谷を見つけると結を見る。
 結も秋久に気づくと頷く。
 自分は結の指示を仰げばいい。
 ポジションまで把握したらしい。

「四宮と神谷か……」

 渡辺君が呟く。
 渡辺班に恨みを持つ者の集団リベリオン。
 そのリーダーが神谷十郎。
 四宮も関わって言うという事はアルテミスとも繋がっているのだろうか?

「それは無いと思うよ」

 片桐君が言う。

「なんでだ?」
「だってリベリオンには高橋グループも絡んでるんでしょ?」

 太陽の騎士団の残党みたいな連中がアルテミスと組むわけがない。
 確かに片桐君の言う通りだね。

「だけど、手を組んで俺達を潰すかもしれないんじゃないか?」
「誠、相変わらず視野が狭いぞ。よく考えろ。そんなことまでして潰さなきゃいけない存在か?」

 利害関係が一致しているように見えて実は全違う。
 敵対関係になる可能性はあるかもしれないけど、そんな相手と組んでまで潰す理由があるのか?
 元々敵対してた相手だぞ。

「そういう事か」

 多田君は納得したみたいだ。
 
「しかし次から次へときりないな」

 渡辺君がため息を吐く。
 少なくともリベリオンは僕達が恨みを買ってしまっているだけの気がするけどね。
 いつかは出て来るんじゃないかと予感はしてたよ。

「なんとかなるでしょ」

 片桐君は気楽に言う。
 その根拠は多分結だろう。
 結が変に性格が歪まない限り大惨事は無いはずだ。
 その結も結莉によって制御されている。
 心配する事はない。
 精々処刑方法が変わるくらいだ。
 恐ろしい事言うね、君。

「こっちは知事まで準備したんだ。そう簡単に手出ししないでしょ」

 相手して欲しいならするけどどうなっても知らないよ。
 そんな意味だろう。

「水奈!いい加減にしろ!そんなに飲んで帰って悠翔達を誰が風呂に入れるんだ!?」
「いつも学がやってるからいいだろう。私は今日はもう帰ったら寝るよ」
「水奈!お前は全部学に押し付けるつもりか!?」

 聞けば朝ごはんと晩御飯は学が作ってるらしい。
 昼はカップ麺。
 3歳と2歳の子供なのにそれでいいの?
 離乳食なんてレベルじゃないよ?
 
「……そろそろお開きにするか」
「そうだね……」

 渡辺君と片桐君が言うと皆片づけを始める。
 子供達もそれに気づいたらしくて片づけを始める。
 そして代行を頼んで家に帰った。
 
「泉!先にお風呂に入りなさい!」
「明日は日曜だよ」
「じゃあ、夕食に育人君呼んでも問題ないわね?」
「……それ、ずるくない?」

 とはいいつつ本当に呼ばれたらまずいと思ったのか渋々風呂に入る。

「晶ちゃんは泉の扱い方慣れて来たね」
「まあ、弱点が勝手に出来たみたいなものだし」
「時に晶ちゃんに聞きたいんだけど」
「どうしたの?」
「やっぱり彼氏と一緒だと風呂に入らないと気になるのかい?」
「どうかしらね。私は毎日入っていたから」

 でも体臭が気になるくらい大切な人なんでしょ?
 晶ちゃんの言う通りなんだろうな。
 
「私達の子育てもあと少しで終わるわね」
「そうだね」

 あとは善斗と善久だ。
 あの子達は問題ないだろう。
 
「で、善君はどう思ったの?」
「何がだい?」
「秋久と陽葵と菫。全く話してなかったから」
「秋久の事は話したじゃないか」

 あの子は自分の役割を理解してるよ。
 問題があるとしたら菫だろう。
 何か能力があるのは今日見た感じ察した。
 子供がいくら隠そうとしても分かってしまうんだ。
 親って凄いね。
 これからの世代がどんな物語を織り上げていくのか。
 そんな事を考えながら眠りについた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...