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sparking
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(1)
花火が終わり子供たちは眠った頃、僕たちは集まっていた。
誠たちに反省という言葉がないらしくて今年も嫁さんに怒られている。
で、僕と石原君と酒井君、それに今年は渡辺君が混ざっていた。
もちろん子供たちもいる。
そして愛莉たちも。
「冬夜さん達なら私たちがいても大丈夫ですよね」
「愛莉たちはランチを食べながら恵美さん達と話をしてるんだろ?」
僕達はそういう機会があまりないからこういう時に話すんだと愛莉に説明する。
「つまり私たちがいると不都合なのですか?」
「そ、そうじゃなくてね」
「逆を言えば私たちが昼間何を話しているかを教えたら問題ないわよね?」
恵美さんが言う。
「ま、まあそうだね」
「いいわ。大したことじゃない。多分片桐君達と同じ事」
もうすぐ育児という使命から解放される。
その後はのんびり過ごしたい。
……そう思っていたら子供の育児の仕方がどうも危うい。
菫と茉莉は手に負えない。
その後に優奈や愛菜が控えている。
琴音たちだって遊が頑張っているけど……。
「よりにもよって馬鹿亭主が問題を起こしてる」
それは多分誠と桐谷君のことだろうな。
美嘉さんは気にも留めてない。
自分で娘を育てたのだから紗理奈にも出来るはずだ。
そう信じているらしい。
しかし愛莉達は信じようにも。
「うっせぇ、ボケナス!」
そんなことを孫娘に面と向かって言われたら不安にもなるだろう。
それは今日に限ったことじゃない。
翼も他人事じゃない。
「あれ?天音。どうしたの?」
「ああ、……多分翼と同じ用事だ」
そんな風に4人で毎日のように幼稚園に呼び出されているらしい。
あとの二人は言うまでもなく美希と祈。
菫と茉莉を筆頭にやりたい放題。
結莉達は大人しくしているんだけど、二人で遊んでいることに飽きた茉莉達が結莉を挑発する。
隣に芳樹がいることを忘れて怒り出す結莉。
そんな4人を止めるために結が実力行使に出る。
……損壊した部分の修理費は天音と祈が弁償してるらしい。
結の破壊能力は窓ガラス一枚だけどかそんなレベルじゃない。
石膏ボードの壁をすべて吹き飛ばすとかそんなレベルになる。
1学期は修繕工事をしながら送っていた。
結はその工事に興味を持ったらしくてじっと見ているらしい。
そっとしておけばいいのにどうもFGというのは学習能力がない。
結に手を出して結を怒らせる。
その結果病院送りになっても懲りるということを知らない。
ある意味タフすぎる人間のようだ。
歳を重ねることに過激になっていく菫と茉莉の発言。
「てめぇ尻の穴二つにしてやる!」
「もとから二つあるわボケナス!お前はないのか!?やっぱママのお腹に玉忘れてきてんじゃねーか!」
そんな二人の女の子の話を聞いていたら不安にもなる。
しかもその茉莉の親は天音だ。
結莉も芳樹や陽葵がいないときはやりたい放題らしい。
「もう一回家を建て直す?」
恵美さんがそういうくらいに家の中を破壊しているらしい。
ようやく洗面器に手が届くくらいになった子供が洗面器を粉々にする。
ありえない状態が起きてるそうだ。
恵美さんもさすがにこれはまずいんじゃないかと毎日愛莉と相談している。
神奈も参考にしたいからと話を聞いていたそうだ。
同い年の男の子なんか簡単に躯に変えてしまいかねない4人の娘。
陽葵と菫は翼がある程度しっかりしているし、陽葵は刺激さえしなければ大人しい。
そりゃそうだろう。
菫が晶さんに「ババア!」なんて言われたら善明が墓の中に入ることになる。
「いずれ成長したときにちょこっと教えてやればいいんじゃない?」
とうの晶さんはそう言っている。
しかし酒井君はそうは思っていなかったらしい。
泉という例もある。
泉が嫁に出たら次は間違いなく菫の教育で頭を抱えることになる。
そんな相談を僕達としたいと恵美さんが言った。
「で、男共はどんな話をしてたの?」
恵美さんが聞いたので石原君が答えた。
「そんなに難しい問題じゃないんだ」
渡辺君が初めて孫を持つことになる。
娘に孫が宿った。
父親としてはどう対処するべきか?
後はご苦労様。
それだけの事だと説明していた。
「やっぱりしょうもないことじゃない」
恵美さんがあきれていた。
「恵美、そうは言うけどやっぱり父親としては複雑だよ」
結婚したんだから娘に手を出しやがってとかは言わない。
その代わり妊娠したら不安になる。
娘は無事に孫を産めるか?
育てられるのか?
娘の体調は大丈夫なのだろうか?
それは合間に様子を見に行ける愛莉たちにはわからない。
会いたくても仕事がある。
休日に夫婦でゆっくりしているのに邪魔したら悪いんじゃないか。
そんなことを考えると様子を見に行けるわけがない。
だから不安になる。
「その割には誠君達はよく行っていたみたいだけど?」
「それで実際水奈が困ってたから」
学が笑っている。
「あれは問題外だから気にするな学」
カンナ達がこっちに混ざった。
「学ごめんね。母さんも仕事あるし琴音がどうも不安で」
亜依さんもそう言って座る。
「でも、冬夜さんも困った人だったんだよ」
愛莉が言う。
「トーヤの奴何かやらかしたのか?」
カンナが聞くと、ほかの女性陣が愛莉を見ていた。
天音が妊娠後期に入った時だった。
入院している天音がきっと「飯がまずい」と不満を漏らすだろうと思って大量のお菓子とカップ麺を差し入れした話。
「私はあれで助かったけどな」
「天音そんな事よくできたな」
とてもじゃないけど食欲なんて湧かなかったぞと水奈が言う。
「それってつわりが酷い時の話だろ?安定期に入ったらめっちゃ腹減って大変だったんだ」
それでも一度に一気に食えないからって小さいカップ麺をたくさん買ってくれた僕に感謝してるらしい。
「あんたそれでよく体型維持できたね」
翼が驚いている。
戦後くらいだと少しでも栄養をと妊婦に食べさせるらしいけど、最近は産後に一気に太るから適度な運動を勧めるらしい。
それでも天音はお腹が邪魔で動きたくないと大地に売店に買いに行かせるとかやりたい放題していた。
それでも太らなかった。
その理由は天音は理解していた。
「私はパパの娘だからな!」
胸を張って言う。
天音は小学生の時から想像もつかないほど大食いだ。
小学生や中学生の時はそれに負けないくらい暴れていたから説明がつくけど、高校に入ったくらいから暴れることも比較的減った。
でも食欲はそれ相応に増す。
学校の帰りに夕食がきつくなるくらい食べて帰ってくる。
愛莉の悩みの種だった。
「でも油断しない方がいいんじゃない?」
「なんでだよ?」
翼はくすっと笑って言った。
「天音は愛莉の娘でもあるんだよ?」
そういや愛莉ウェストが増えたって悩んでた時期あったな。
「翼はそうかもしれないけど私は大丈夫だ」
「何を根拠に言ってるの?」
「私は愛莉ほど胸が大きくならなかった!」
愛莉の血なんてまったくないじゃないか!と天音の主張。
「天音ちゃん、私も翼の言うとおりだと思う。気づいてると思うけど……」
どんなに食べても胸は大きくならない。
それだけならまだいい。
お腹が大きくなったら減らすのに苦労する。
子供が小さい間は今のままでもいい。
そのうち家事くらいしかすることがなくなったら大変だと恵美さんが言う。
「うぬぬ……そうなるとやっぱり不安があるな」
「どうしたの?」
恵美さんが聞くと天音は答えた。
「大地の子ってことは美希の血も多少なりともあるんだろ?」
私は娘に負けるのか?
そんなに気にすることなのだろうか?
「多分トーヤや愛莉にはわからねーよ……」
カンナが沈んでいた。
「私にもわからねーな」
美嘉さんが言っていた。
胸が膨らむころにはろくに母親と会ってないらしい。
「もっと前向きに考えたらいいんじゃない?」
西松深雪さんが言った。
「どういうことですか?」
天音が聞いていた。
「天音ちゃんは胸に自信がないんでしょ?神奈もそうだけど」
「そうですね」
「それがどうやったら前向きになるんだ?」
天音とカンナが聞いていた。
「逆に言えば胸しか見ないとかしょうもない男は寄ってこなかったんでしょ」
「まあ、そうですね」
ただ、天音は大地が積極的になってくれないから不満らしい。
それを聞いた恵美さんが大地を睨みつける。
大地は頭を抱えていた。
「それでも子供は作ってくれたんだからいいじゃない」
深雪さんの旦那さんの啓介さんは深雪さんに興味を示さず他の女性に声をかけていた。
それでも仲直りをしたらそう言うのはまったくなくなったけど深雪さんにもなかなか手を出さなかった。
どうして?と聞いたら「ほら、深雪は腕利きの医者だから妊娠でもさせたら病院としては痛いかなと思って」と答えたそうだ。
「そんなこと気にしてたら私ずっと子供作れないじゃない」
いつでもいいから。
そう言ってやっと手を出したらしい。
「胸の大きな人……例えば穂乃果が言ってたけどそう言う男しか寄ってこないって悩んでたわよ」
「そう言えば穂乃果言ってたね」
「自慢の武器っていえばそうなんだけど、私にはそれしか求められないの?って不安になってさ」
亜依さんと穂乃果さんが話していた。
「なるほどな、この貧相な胸のおかげで大地に出会えたって事か?」
「実際は大地に聞いてみないとわからない。でもそう思うと少しは気が晴れるでしょ?」
多分大地に聞いても正直には話してくれない。
まあ、正直に言う男はいないだろうな。
何人か心当たりがあるけど。
「なるほどな、大地はそういうタイプだったか。だったら娘が楽しみだな!」
「大地と天音の子だったらどっちも楽しめるかもしれないぜ!」
心当たりのある男が二人気が。
「大地!やっぱりロリだったのか!?結莉達に手を出したらぶっ殺すぞ!」
「天音ちゃん心配しないでいい。そんなふざけた性根の持ち主だったら私が中東に1年くらい叩き込んでやる!」
「恵美落ち着いて。天音もその言葉遣いいい加減にやめなさい!結莉達の言葉遣いの原因は天音でしょ!」
陽葵や菫はそんなこと全くない……と、思ってた。
「天使とダンスだ!」
そんなこと言って幼稚園で暴れ出すらしい。
「多分空の癖が移ったんだと思う」
翼は少し不安に思ってるみたいだ。
「それは多分冬夜さんの責任です!冬吾まで真似しだしたじゃないですか!」
愛莉が怒り出したからなだめることにした。
「大地!びくびくすることない!自分に正直に生きろ!」
「大地こっちにこい!俺が父親として見本を教えてやる!」
「お前らはいい加減にしろ!」
「誰のせいで育児で悩んでるんだと思ってるんだ!?」
また亜依さんとカンナが怒り出す。
「……そろそろ寝ようか?」
「そうだね」
酒井君が言うと石原君が答える。
多田夫妻と桐谷夫妻を宥めながらテントに入った。
(2)
昨夜は楽しかった。
皆でBBQして花火して……菫たちはその後にラーメン食べてた。
食べ終わると3人でテントに入ってお話してた。
女子3人が集まると自然とそう言う話になる。
「雪菜は好きな男子とかいないの?」
菫たちにもそういう興味があったんだな。
きっと誰も思わないだろう。
「この恨みを晴らす時までずっと忘れるな」
そんなことをずっと言われ続けてきたから。
それがある日突然成実が言った。
「もうやめよう……こんな生活していても私たちは幸せになれない」
「そんなのわかってる。私達に光が届くことなんてない」
ずっと暗闇の中を二人で彷徨うんだって言ってたじゃない。
「そう思ってた。でも現実はそこまで酷くなかった」
「……あの人達を信じるの?」
「どっちに行っても幸せになれるかなんて分からない……ならば」
光の指す方へ行ってみない?
わずかでも私達を救ってくれるのなら。
十郎がそうじゃないのは間違いない。
だからどうせならあの人たちに賭けてみたい。
成実はそう言った。
成実一人ならこのままみじめでもいい。
でも成実は私の事を考えてくれた。
成実は私を守ろうとした。
それならば私は成実を信じる。
成実に賭ける。
そう成実に伝えた。
そうして私は友人を得て、親友を失った。
「どしたの?突然黙り込んで」
考え込んでる私を見て二人が不思議に思ったそうだ。
「その反応はいるんだね?」
「だれだれ?」
二人が誤解したみたいだ。
「私なんかに好かれる男子が可哀そうだよ」
「……まだそんな事考えていたの?」
陽葵が言う。
「あのさ、もう友達だから遠慮なく言うね。覚悟しなさい。これからの雪菜にはたくさんの幸せの雨が降るから」
傘を差したくらいじゃ意味がないくらい幸せの光が降り注ぐから。
そんな事あるのだろうか?
片桐空。
地元では「空の王」と表でも裏でも知られてる人物。
その強さとカリスマはまさに王の器だった。
たまにミスったりする。
それでも自分たちを守ってくれる大切な人。
「SHではそれが当たり前なんだって」
弱い者を救って歯向かう者には容赦しない。
そうやって自分のグループを守っている。
空は自分の重責に耐えて日々生きている。
だからもしこの先私の前にあいつらが立ちはだかるなら空はためらわず戦うだろう。
自ら戦おうとする王だからこそ仲間がついてくる。
「こんな雑魚に王が一々相手にすることはない」
そう言って仲間が動く。
だから私は何も心配する必要がない。
陽葵はそう言った。
SHの強さはその実力だけじゃない。
王である空を信頼する仲間との絆が強固な集まりにしている。
そんなSHのメンバーになったのだから心配する必要はない。
「宇宙開闢って知ってる?」
何もないところに突然発生した高エネルギーから宇宙が始まったという逸話。
「雪菜は今その瞬間にいるんだよ」
何が起きるかわからない。
だけど何が起きようとSHが私に立ちはだかる困難を退けてみせる。
だからもっと私達を信用してほしい。
陽葵がそう言った。
陽葵の二つ名は「紫陽花の姫君」
生を司る者。
陽葵が絶対に私の道を切り開くからという。
「……わかった。でも……、今まで考えなかったから」
「じゃあさ、どんな人が好きとかないの?」
「優しく見守ってくれる人かな?」
「うーん、幼稚園児にそれを求めるのは難しいんじゃない?」
「じゃあ、2人はどんな人がいいの?」
私が聞くと2人はにこっと笑って言った。
「パパみたいな人」
「……そっちの方が無理があると思うよ」
「だよねえ、幼稚園のガキ共は少し殴っただけで泣き出すしさあ」
本気で悩んでるようだ。
陽葵達のパパのような人がそんなにたくさんいるわけない。
それでもいつしか誰かにそれを求めて恋をするのだろう。
それこそ突然放たれる先行のように。
テンションが高かった私たちその後もしばらく話をしていた。
花火が終わり子供たちは眠った頃、僕たちは集まっていた。
誠たちに反省という言葉がないらしくて今年も嫁さんに怒られている。
で、僕と石原君と酒井君、それに今年は渡辺君が混ざっていた。
もちろん子供たちもいる。
そして愛莉たちも。
「冬夜さん達なら私たちがいても大丈夫ですよね」
「愛莉たちはランチを食べながら恵美さん達と話をしてるんだろ?」
僕達はそういう機会があまりないからこういう時に話すんだと愛莉に説明する。
「つまり私たちがいると不都合なのですか?」
「そ、そうじゃなくてね」
「逆を言えば私たちが昼間何を話しているかを教えたら問題ないわよね?」
恵美さんが言う。
「ま、まあそうだね」
「いいわ。大したことじゃない。多分片桐君達と同じ事」
もうすぐ育児という使命から解放される。
その後はのんびり過ごしたい。
……そう思っていたら子供の育児の仕方がどうも危うい。
菫と茉莉は手に負えない。
その後に優奈や愛菜が控えている。
琴音たちだって遊が頑張っているけど……。
「よりにもよって馬鹿亭主が問題を起こしてる」
それは多分誠と桐谷君のことだろうな。
美嘉さんは気にも留めてない。
自分で娘を育てたのだから紗理奈にも出来るはずだ。
そう信じているらしい。
しかし愛莉達は信じようにも。
「うっせぇ、ボケナス!」
そんなことを孫娘に面と向かって言われたら不安にもなるだろう。
それは今日に限ったことじゃない。
翼も他人事じゃない。
「あれ?天音。どうしたの?」
「ああ、……多分翼と同じ用事だ」
そんな風に4人で毎日のように幼稚園に呼び出されているらしい。
あとの二人は言うまでもなく美希と祈。
菫と茉莉を筆頭にやりたい放題。
結莉達は大人しくしているんだけど、二人で遊んでいることに飽きた茉莉達が結莉を挑発する。
隣に芳樹がいることを忘れて怒り出す結莉。
そんな4人を止めるために結が実力行使に出る。
……損壊した部分の修理費は天音と祈が弁償してるらしい。
結の破壊能力は窓ガラス一枚だけどかそんなレベルじゃない。
石膏ボードの壁をすべて吹き飛ばすとかそんなレベルになる。
1学期は修繕工事をしながら送っていた。
結はその工事に興味を持ったらしくてじっと見ているらしい。
そっとしておけばいいのにどうもFGというのは学習能力がない。
結に手を出して結を怒らせる。
その結果病院送りになっても懲りるということを知らない。
ある意味タフすぎる人間のようだ。
歳を重ねることに過激になっていく菫と茉莉の発言。
「てめぇ尻の穴二つにしてやる!」
「もとから二つあるわボケナス!お前はないのか!?やっぱママのお腹に玉忘れてきてんじゃねーか!」
そんな二人の女の子の話を聞いていたら不安にもなる。
しかもその茉莉の親は天音だ。
結莉も芳樹や陽葵がいないときはやりたい放題らしい。
「もう一回家を建て直す?」
恵美さんがそういうくらいに家の中を破壊しているらしい。
ようやく洗面器に手が届くくらいになった子供が洗面器を粉々にする。
ありえない状態が起きてるそうだ。
恵美さんもさすがにこれはまずいんじゃないかと毎日愛莉と相談している。
神奈も参考にしたいからと話を聞いていたそうだ。
同い年の男の子なんか簡単に躯に変えてしまいかねない4人の娘。
陽葵と菫は翼がある程度しっかりしているし、陽葵は刺激さえしなければ大人しい。
そりゃそうだろう。
菫が晶さんに「ババア!」なんて言われたら善明が墓の中に入ることになる。
「いずれ成長したときにちょこっと教えてやればいいんじゃない?」
とうの晶さんはそう言っている。
しかし酒井君はそうは思っていなかったらしい。
泉という例もある。
泉が嫁に出たら次は間違いなく菫の教育で頭を抱えることになる。
そんな相談を僕達としたいと恵美さんが言った。
「で、男共はどんな話をしてたの?」
恵美さんが聞いたので石原君が答えた。
「そんなに難しい問題じゃないんだ」
渡辺君が初めて孫を持つことになる。
娘に孫が宿った。
父親としてはどう対処するべきか?
後はご苦労様。
それだけの事だと説明していた。
「やっぱりしょうもないことじゃない」
恵美さんがあきれていた。
「恵美、そうは言うけどやっぱり父親としては複雑だよ」
結婚したんだから娘に手を出しやがってとかは言わない。
その代わり妊娠したら不安になる。
娘は無事に孫を産めるか?
育てられるのか?
娘の体調は大丈夫なのだろうか?
それは合間に様子を見に行ける愛莉たちにはわからない。
会いたくても仕事がある。
休日に夫婦でゆっくりしているのに邪魔したら悪いんじゃないか。
そんなことを考えると様子を見に行けるわけがない。
だから不安になる。
「その割には誠君達はよく行っていたみたいだけど?」
「それで実際水奈が困ってたから」
学が笑っている。
「あれは問題外だから気にするな学」
カンナ達がこっちに混ざった。
「学ごめんね。母さんも仕事あるし琴音がどうも不安で」
亜依さんもそう言って座る。
「でも、冬夜さんも困った人だったんだよ」
愛莉が言う。
「トーヤの奴何かやらかしたのか?」
カンナが聞くと、ほかの女性陣が愛莉を見ていた。
天音が妊娠後期に入った時だった。
入院している天音がきっと「飯がまずい」と不満を漏らすだろうと思って大量のお菓子とカップ麺を差し入れした話。
「私はあれで助かったけどな」
「天音そんな事よくできたな」
とてもじゃないけど食欲なんて湧かなかったぞと水奈が言う。
「それってつわりが酷い時の話だろ?安定期に入ったらめっちゃ腹減って大変だったんだ」
それでも一度に一気に食えないからって小さいカップ麺をたくさん買ってくれた僕に感謝してるらしい。
「あんたそれでよく体型維持できたね」
翼が驚いている。
戦後くらいだと少しでも栄養をと妊婦に食べさせるらしいけど、最近は産後に一気に太るから適度な運動を勧めるらしい。
それでも天音はお腹が邪魔で動きたくないと大地に売店に買いに行かせるとかやりたい放題していた。
それでも太らなかった。
その理由は天音は理解していた。
「私はパパの娘だからな!」
胸を張って言う。
天音は小学生の時から想像もつかないほど大食いだ。
小学生や中学生の時はそれに負けないくらい暴れていたから説明がつくけど、高校に入ったくらいから暴れることも比較的減った。
でも食欲はそれ相応に増す。
学校の帰りに夕食がきつくなるくらい食べて帰ってくる。
愛莉の悩みの種だった。
「でも油断しない方がいいんじゃない?」
「なんでだよ?」
翼はくすっと笑って言った。
「天音は愛莉の娘でもあるんだよ?」
そういや愛莉ウェストが増えたって悩んでた時期あったな。
「翼はそうかもしれないけど私は大丈夫だ」
「何を根拠に言ってるの?」
「私は愛莉ほど胸が大きくならなかった!」
愛莉の血なんてまったくないじゃないか!と天音の主張。
「天音ちゃん、私も翼の言うとおりだと思う。気づいてると思うけど……」
どんなに食べても胸は大きくならない。
それだけならまだいい。
お腹が大きくなったら減らすのに苦労する。
子供が小さい間は今のままでもいい。
そのうち家事くらいしかすることがなくなったら大変だと恵美さんが言う。
「うぬぬ……そうなるとやっぱり不安があるな」
「どうしたの?」
恵美さんが聞くと天音は答えた。
「大地の子ってことは美希の血も多少なりともあるんだろ?」
私は娘に負けるのか?
そんなに気にすることなのだろうか?
「多分トーヤや愛莉にはわからねーよ……」
カンナが沈んでいた。
「私にもわからねーな」
美嘉さんが言っていた。
胸が膨らむころにはろくに母親と会ってないらしい。
「もっと前向きに考えたらいいんじゃない?」
西松深雪さんが言った。
「どういうことですか?」
天音が聞いていた。
「天音ちゃんは胸に自信がないんでしょ?神奈もそうだけど」
「そうですね」
「それがどうやったら前向きになるんだ?」
天音とカンナが聞いていた。
「逆に言えば胸しか見ないとかしょうもない男は寄ってこなかったんでしょ」
「まあ、そうですね」
ただ、天音は大地が積極的になってくれないから不満らしい。
それを聞いた恵美さんが大地を睨みつける。
大地は頭を抱えていた。
「それでも子供は作ってくれたんだからいいじゃない」
深雪さんの旦那さんの啓介さんは深雪さんに興味を示さず他の女性に声をかけていた。
それでも仲直りをしたらそう言うのはまったくなくなったけど深雪さんにもなかなか手を出さなかった。
どうして?と聞いたら「ほら、深雪は腕利きの医者だから妊娠でもさせたら病院としては痛いかなと思って」と答えたそうだ。
「そんなこと気にしてたら私ずっと子供作れないじゃない」
いつでもいいから。
そう言ってやっと手を出したらしい。
「胸の大きな人……例えば穂乃果が言ってたけどそう言う男しか寄ってこないって悩んでたわよ」
「そう言えば穂乃果言ってたね」
「自慢の武器っていえばそうなんだけど、私にはそれしか求められないの?って不安になってさ」
亜依さんと穂乃果さんが話していた。
「なるほどな、この貧相な胸のおかげで大地に出会えたって事か?」
「実際は大地に聞いてみないとわからない。でもそう思うと少しは気が晴れるでしょ?」
多分大地に聞いても正直には話してくれない。
まあ、正直に言う男はいないだろうな。
何人か心当たりがあるけど。
「なるほどな、大地はそういうタイプだったか。だったら娘が楽しみだな!」
「大地と天音の子だったらどっちも楽しめるかもしれないぜ!」
心当たりのある男が二人気が。
「大地!やっぱりロリだったのか!?結莉達に手を出したらぶっ殺すぞ!」
「天音ちゃん心配しないでいい。そんなふざけた性根の持ち主だったら私が中東に1年くらい叩き込んでやる!」
「恵美落ち着いて。天音もその言葉遣いいい加減にやめなさい!結莉達の言葉遣いの原因は天音でしょ!」
陽葵や菫はそんなこと全くない……と、思ってた。
「天使とダンスだ!」
そんなこと言って幼稚園で暴れ出すらしい。
「多分空の癖が移ったんだと思う」
翼は少し不安に思ってるみたいだ。
「それは多分冬夜さんの責任です!冬吾まで真似しだしたじゃないですか!」
愛莉が怒り出したからなだめることにした。
「大地!びくびくすることない!自分に正直に生きろ!」
「大地こっちにこい!俺が父親として見本を教えてやる!」
「お前らはいい加減にしろ!」
「誰のせいで育児で悩んでるんだと思ってるんだ!?」
また亜依さんとカンナが怒り出す。
「……そろそろ寝ようか?」
「そうだね」
酒井君が言うと石原君が答える。
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(2)
昨夜は楽しかった。
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「雪菜は好きな男子とかいないの?」
菫たちにもそういう興味があったんだな。
きっと誰も思わないだろう。
「この恨みを晴らす時までずっと忘れるな」
そんなことをずっと言われ続けてきたから。
それがある日突然成実が言った。
「もうやめよう……こんな生活していても私たちは幸せになれない」
「そんなのわかってる。私達に光が届くことなんてない」
ずっと暗闇の中を二人で彷徨うんだって言ってたじゃない。
「そう思ってた。でも現実はそこまで酷くなかった」
「……あの人達を信じるの?」
「どっちに行っても幸せになれるかなんて分からない……ならば」
光の指す方へ行ってみない?
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だからどうせならあの人たちに賭けてみたい。
成実はそう言った。
成実一人ならこのままみじめでもいい。
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成実は私を守ろうとした。
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成実に賭ける。
そう成実に伝えた。
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考え込んでる私を見て二人が不思議に思ったそうだ。
「その反応はいるんだね?」
「だれだれ?」
二人が誤解したみたいだ。
「私なんかに好かれる男子が可哀そうだよ」
「……まだそんな事考えていたの?」
陽葵が言う。
「あのさ、もう友達だから遠慮なく言うね。覚悟しなさい。これからの雪菜にはたくさんの幸せの雨が降るから」
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たまにミスったりする。
それでも自分たちを守ってくれる大切な人。
「SHではそれが当たり前なんだって」
弱い者を救って歯向かう者には容赦しない。
そうやって自分のグループを守っている。
空は自分の重責に耐えて日々生きている。
だからもしこの先私の前にあいつらが立ちはだかるなら空はためらわず戦うだろう。
自ら戦おうとする王だからこそ仲間がついてくる。
「こんな雑魚に王が一々相手にすることはない」
そう言って仲間が動く。
だから私は何も心配する必要がない。
陽葵はそう言った。
SHの強さはその実力だけじゃない。
王である空を信頼する仲間との絆が強固な集まりにしている。
そんなSHのメンバーになったのだから心配する必要はない。
「宇宙開闢って知ってる?」
何もないところに突然発生した高エネルギーから宇宙が始まったという逸話。
「雪菜は今その瞬間にいるんだよ」
何が起きるかわからない。
だけど何が起きようとSHが私に立ちはだかる困難を退けてみせる。
だからもっと私達を信用してほしい。
陽葵がそう言った。
陽葵の二つ名は「紫陽花の姫君」
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陽葵が絶対に私の道を切り開くからという。
「……わかった。でも……、今まで考えなかったから」
「じゃあさ、どんな人が好きとかないの?」
「優しく見守ってくれる人かな?」
「うーん、幼稚園児にそれを求めるのは難しいんじゃない?」
「じゃあ、2人はどんな人がいいの?」
私が聞くと2人はにこっと笑って言った。
「パパみたいな人」
「……そっちの方が無理があると思うよ」
「だよねえ、幼稚園のガキ共は少し殴っただけで泣き出すしさあ」
本気で悩んでるようだ。
陽葵達のパパのような人がそんなにたくさんいるわけない。
それでもいつしか誰かにそれを求めて恋をするのだろう。
それこそ突然放たれる先行のように。
テンションが高かった私たちその後もしばらく話をしていた。
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