姉妹チート

和希

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王命

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(1)

「じゃあ、元気に暮らせよ」
「うん、さとりもあまり無理しないでね」

 そう言って私は荷物を車に積んでさとりと一緒に過ごしていた家を出て研斗の家に向かう。
 さよならを告げる時期をずっと悩んでいた。
 私の中にさとりはもういない。
 ほとんど家に帰らず研斗と同棲しているような状態だった。
 それでもさとりは何も言わず「あんまり無理しないでね」と言ってくれていた。
 そんなさとりの優しさに耐えるのが辛かった。
 だから早く言わないと。
 でも、それを言ったら一緒に暮らすことはできない。
 単に引っ越しの時期を考えたら前期が終わった後が一番いいと思った。

「さとり、大事な話がいる」
「わかった。今日は早く帰る」

 さとりだって馬鹿じゃない。
 いつかこういう日が来るんだろうと予想していたのだろう。
 怒鳴られるとかそういうことを覚悟していた。
 
「俺もついていこうか?」
 
 研斗はそう言ったけどさすがにそれはダメだと思ったから断った。
 そして二人で話を告げる。

「ごめん、他に好きな人が出来た」

 怒りだすさとりなんて初めて見るかもしれない。
 だけど見れなかった。
 さとりは怒らなかった。
 
「そっか。まあ、仕方ないよね」

 ただそう言うだけだった。

「同じサークルの人?」
「うん」
「いつから?」
「……サークルに入った時くらいから」
「なるほど」

 完全に浮気だ。
 どんな罵声も受け止める覚悟でいた。
 だけどさとりはそんな事しなかった。

「今言うって事は夏休み中に引っ越すつもりだった?」

 手配はしてあるの?
 事務的にさとりは聞いていた。

「怒ってもいいんだよ?」

 私の方からそう言ってみた。

「怒ったら冴とより戻せるの?」

 さとりはそう聞いていた。
 いまさら何を言っても無駄だろう。
 精々みっともない姿を見せるだけ。
 だったら笑って送り出してやった方がいい。
 さとりでは私を幸せにすることが出来ない。
 だったらその相手に冴を託すくらいがさとりに出来る事。

「悲しい思い出にしたくないから」

 パッと咲いて静かに消える花火のように幕を下ろしたい。

「ごめんなさい……」
「気にしないで」

 そんな優しさが身に染みて涙が出てくる。
 自分に浸っているだけかもしれない。
 それでも私は泣いてしまう。

「絶対にハッピーエンドで終わらせるのがこの物語なんだそうだ」

 だから私もきっと幸せになれるとさとりは言う。
 だから僕の事は気にしないで冴は幸せになってほしい。
 それが僕の最後のわがまま。
 さとりは最後まで笑顔を絶やさなかった。
 車でさとりと過ごした家を出るまで。
 荷物を運ぶのは研斗も手伝ってくれた。

「今日皆で集まろうって言ってくれたんだ」

 私の引っ越し祝い。
 きっと落ち込んでる私を励ましてあげたい。
 そしてみんなで集まって騒いでいた。
 涙を忘れるまでずっと騒いでいた。
 研斗の家に帰ると風呂に入ってすぐに眠ってしまった。
 疲れ切った私の心と体を研斗は抱きしめてくれた。

(2)

「そうなんだ……」

 私は冴からさとりと別れた事を電話で聞いていた。
 理由は言うまでもない。
 新しい彼氏ができたから。
 そんな事を繰り返して幸せになれるのかどうかは私には分からない。
 本音を言うと冴を許せない。
 でも、冴には冴なりの事情があるのだろう。
 しかしSHと男子達はそうは思わなかったみたいだ。

「完全に浮気じゃないか!ふざけるな!」

 そんな意見がグルチャに上がってSHのグルチャが炎上する。
 もちろん男子だけじゃない。
 冴の行動を許せる女子なんてリリーくらいだ。
 寂しかったから新しい彼を見つけた。
 そんな理由通用するはずがない。
 瑞穂なんて4年間耐えたんだ。
 瑞穂ほど会えないわけじゃない。
 同棲までしていたんだ。
 そんな理由が通じる状況じゃない。

「瞳子の友達でありながら、瞳子の事情も考えないで学校で会えないからなんてふざけるな!」

 水奈や天音も怒っていた。
 ただ、空は違うことを考えてたみたいだ。
 そして当然の結末を迎える。

「私やっぱり抜けるわ」

 そう言って冴はSHを抜けていった。
 しかしそれで許される状況じゃなかったみたいだ。

「水奈、時間空いてるか?」
「わかってる、あの馬鹿を叩きのめさないと気が済まない」

 天音達は冴に直接手を下さないと気が済まないみたいだ。

「ま、待て。落ち着け、そんな事をしてもさとりを困らせるだけだろ?」
「学はこのバカ女を放っておいていいのか!?」
 
 私が同じ真似をしたら怒るだろ?
 水奈がそう言っていた。
 だけど学は言った。

「今はともかく学生時代に同じことを水奈をが同じことをしたとしても、それは水奈だけが悪いとは俺は思わない」
「なんでだよ?」
「それだけの絆を水奈との間に作れなかっただけの話だろ」

 家に帰ったらさとりが迎えてくれる。
 さとりに支えてもらっている。
 そういう風に冴を安心させることが出来なかっただけの話だと学は言う。
 だけど学はそんなことない。
 学校が違っていてもしっかり水奈が寂しくないように配慮していた。
 もちろんさとりだってそうしただろう。
 でもそれだけじゃ物足りなかった。
 結局は2人の関係はそれだけだったってことだと学が言う。

「で、さとりは今いるの?」

 空が初めて話に混ざってきた。

「います」
「さとりは復讐を望んでるの?」

 それなら力を貸すけど?

「いえ、さっき言ったとおりに冴が幸せならそれでいいと思ってます」
「そう」
「空!まさかお前何もしないつもりじゃないだろうな!?」
「他人の恋路を邪魔するやつは馬に蹴られて地獄に落ちるらしいよ」
「だったらその比嘉って奴を地獄に落とさないと気が済まない!」
「だからそれは冴の恋路を邪魔するだけじゃないか?」

 SHは今回の件には何もしない。
 空はそう告げた。

「空……私は冴が許せない。だって自分が誠司にされたことと同じことをしたんだよ」
「私もそう思う。さとりの気持ちを踏みにじっている」

 冬莉と泉も何かしら制裁するべきだという。
 だけど空は「これ以上この問題を大事にするとさとり自身がSHに居づらくなる」と言う。
 やるべき事を敢えて言うなら「冴に制裁を下す」じゃなくて「さとりの新しい拠り所を見つけてやる」事だと空は言った。

「すいません……さすがに今すぐ新しい彼女が欲しいなって気持ちになれない」
「まあ、そうなんだろうね」

 誠司君ですらすぐに新しい恋なんて無理だったんだから。

「瞳子はどう思ってるの?冴は友達なんでしょ?」

 多分僕達より先に気づいていたんじゃないか?と聞かれた。
 空に隠し事は通じない。
 そんな事冬吾君が言ってたな。
 私は空に冴から相談を受けていた内容を全部伝えた。
 私自身冴から新しい彼氏を紹介されたことも伝えた。
 するともう冴を庇う人間なんて殆どいなかった。
 しかしそれでも空は絶対に冴に手を出すことを許さなかった。

「これはSHの王としての”命令”。絶対に冴に手を出すな」

 空が初めて命令という言葉を使った。
 その意味は誰もが理解していた。
 逆らった者がSHの敵になるだけ。
 空がそう告げるとそれ以上この話をしても面倒だと皆話を変えていた。
 すると空から電話が鳴る。
 どうしたんだろ?

「もしもし?」
「あ、瞳子。ちょっとお願いがあるんだけど」
「どうしました?」
「今度の週末暇かな?……いたっ!」

 ぽかっと頭を小突かれたみたいだ。

「私の目の前で浮気をするわけですか?それに相手は冬吾の彼女ですよ!」
「そういうわけじゃない。ただちょっと会っておきたくて」
「誰とですか?」
「冴さんと比嘉君」
 
 え?
 空は何を考えているのだろう?

(3)

 瞳子に呼び出されて私は研斗と別府駅に来ていた。
 理由は分からない。
 すると現れたのは瞳子と空だった。
 空は私達を見ていた。

「あの、何か用があるんですか?」

 私はもうSHとは関係ない。

「冴、そういう言い方は無いよ」

 瞳子が言うけどどうして呼び出されたのか理由も分からないのに警戒くらいするよ。
 私だけじゃなくて研斗もいる。
 SHの力も恐ろしさも知っているのだから、疑ってしまうのも無理はない。
 しかし空は全く気にしてないようだった。

「その前にさ、ここで立ち話もなんだからどっか店に入らない?」

 行ってみたい店があるという。
 まだ昼間だ。
 さすがに研斗を連れて風俗に行くという発想は空には無かった。
 そう、空の目的なんて単純だ。
 別府を指定した理由は滅多に来ないから。
 ラーメンを食うためだけに別府まで来るなんて真似しないから。
 空の指定した店は別府でも行列が出来るほどの人気のあるラーメン屋さんだった。
 店員が注文を聞きに来ると空は大量の注文をする。

「大食いの人の為のメニューがあると助かるけど地元にはないんだよね」

 空はそう言って笑った。

「あの、いい加減用件を教えてください」

 瞳子が私を注意しようとすると空がそれを止めた。

「冴の彼氏を見てみたかったから」

 ただそれだけ?
 私が聞くと頷いた。

「僕は父さんほどじゃないけど、それなりにいろんな人を見てきたからある程度は分かるつもりなんだ」

 2人とも負い目を感じてるでしょ?
 確かに私も研斗も多少は気にする。
 しかも最後に大ゲンカしたわけでもなく「幸せにね」って言われたんだ。
 悪いことをしたかもしれないと思う。
 研斗だってさとりから私を奪い取ったのだから引け目があるだろう。
 だけど空は言った。

「それが間違ってる」

 私は浮気したという事実。
 さとりは私を幸せにしてやれなかったという負い目、新しい彼氏とはちゃんとやれてるかという不安。
 研斗は私をさとりから奪い取ったという罪悪感。
 結局浮気なんて誰も幸せになれないんだ。
 そういうことなんだろうか。
 違ったみたいだ。

「そんな気分で新しい恋が迎えられるの?さとりに安心させてやれるの?」

 そんな事ばかりに気を取られて肝心な事を忘れていないか?

「それってなんですか?」

 瞳子が聞いていた。

「そんなの決まり切ってるじゃないか」

 空は届いたラーメンを食べながら答えた。

「二人とも今幸せなんじゃないの?」

 そうじゃないならどうしてさとりと別れたの?
 それが気になったから会ってみようって気になった。
 あまり大勢で行くと私達が警戒する。
 SHの大半が私達を敵視しているのだから。
 そうはいっても空一人でも恐怖はある。
 片桐家の人間は地元の人間なら誰でも恐れるだろう。
 空の王と称される空の強さは化け物染みている。
 FGがどれだけいようが、リベリオンがどれだけいようが空の能力の前では関係ない。
 事実ロシアのギャングを短期間で壊滅に追い込んだ。
 私はどう答えたらいいか迷った。
 代わりに研斗が答えてくれた。

「俺は幸せです。だから冴に何か罰を与えるなら俺が受けます。俺が冴を守るつもりです」

 空に向かって挑戦するなんて無謀だ。
 私は不安だった。
 だけど空の返事は全く予想していなかった。

「君が幸せなのは分かった。だけど僕は別に冴に何かするために呼んだんじゃない」
「じゃあなぜ?」
「このままだと3人共上手くいかない気がしてね」

 会ってみてやっぱりそうだった。
 現に二人とも全然幸せそうに見えない。
 だから空は私に言う。

「2人で幸せになれ。それが僕から冴へのSHの王としての最後の”命令”」

 そうでなければさとりも引きずって次の恋に踏み出せない。
 勘違いしないで。
 空はSHの人間だ。
 SHの人間が幸せになるためになら手段をいとわない。
 さとりが幸せになるのに必要な事。
 それは私と研斗が幸せになる事。
 さとりがいなくても大丈夫。
 そうすればさとりは私がいない現実を生きていくだろう。

「だからもう一度聞くよ。君達今幸せ?」

 空が聞くと私達は頷いた。

「それでいい。人間ってね。切っても切れない絆があるんだって」

 だから私が例えSHと絶縁しようが完全に切れることはない。
 少なくとも僕やさとりに瞳子は私の事を忘れない。
 困った時はいつでも相談に乗ればいい。
 それを実践した人間を私は知っているんじゃないか?
 そう言われて私は思い出した。
 そういうことか……。
 空の食事が終わると、空と瞳子は電車で帰って行った。
 私達も買い物をして家に帰る。
 夕食を食べて風呂に入るとテレビを見ていた。
 すると、スマホが鳴る。
 誠司からだった。

「どうしたの?」
「いや、さっきSHのグルチャ見てびっくりしてさ」

 冬吾に聞いたら事情を知って不安になったらしい。
 SHのグルチャは予想通り私への粛清を呼びかけるようなものだったそうだ。
 それでも空が初めて「これは僕の命令」という言葉を使ったから誰もその事には触れなくなった。
 空がそう言った以上、例え天音や水奈でも絶対に逆らうことを許さないという意味。
 それでも心配だったから電話したらしい。
 私は誠司に事情を説明する。

「そっか、今度は上手くいくといいな」

 誠司はそう答えた。

「誠司の方はどうなの?」

 そういう話全く聞かないけど。
 やっぱり風俗にずっと通い続けているの。

「そりゃ、サッカー以外の時間なんてそんなにやることねーよ」

 ナンパしようにもどこに行けばいいのかさっぱり分からない。
 そしたら仲間と飲むくらいしかやることがない。
 男だけで飲みにいったらそうなるだろ?
 本当にしょうもないやつだな。

「あ、そういや今度なんか紹介してくれるってアントニオが言ってた」

 コーチから相談されたらしい。
 誠司の遊び方はいつ問題になってもおかしくない。
 いい加減恋人でも押し付けて制御させろとアントニオさんが命令されたそうだ。
 
「誠司もそろそろ私を安心させてくれない?」
「そもそも心配してくれてるのか?」
「そりゃするよ」
 
 私に振られて女遊びが酷くなったなんて聞いたら心配するでしょ。

「そのうち白人の美女捕まえてくるよ」
「楽しみにしてる」
「じゃあな」

 そう言って電話を切った。

「誰から?」
「多田誠司って知ってる」
「……本当に?」
「まあ、私付き合っていたから」
「なんで別れたんだ?」

 たまには私の思い出を話すのもいいか。
 その日の夜は2人でゆっくりと話をしていた。
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