姉妹チート

和希

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Winter Bells

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(1)

「では誓いのキスを」

 そう言われると俺とパオラはキスをする。
 式は厳かに執り行われた。
 パオラの親族はかなり呼ばれていた。
 パオラの家はこの辺ではかなりの名家だったから。
 俺も父さん達だけでなくてもっと呼ばないとまずいのだろうか?
 そんな相談をパオラにしたとき、パオラはあっさり解決策を提案した。

「日本でもう一度挙げたらいいじゃない」

 まあ、確かにそうだろうな。
 でも、姉さん達が言ってた。

「あれはマジでしんどい。二度とやりたくない」
「頼むから夫の前でそういう事を言わないでくれ」

 学は困っていたな。
 パオラも一緒じゃないのか?
 しんどいんじゃないか?
 とはいえ、やっぱり父さんの知り合いの手前、日本でも何らかの形を残した方が良いかもしれない。

「そういう事だったら軽くお披露目パーティでもしたらいいんじゃない」

 恵美さんがそう言ってくれた。
 それならパオラも日本の皆と仲良くなる交流のきっかけになる。
 きっと日本で生活を始めたらパオラは多分ストレスを貯めるから。
 しばらくは実家で暮らすことを決めていた。
 当然俺は別に家を建てる事を考えていた。
 孤独な日本な上に姑と一緒に生活はさすがにパオラが耐えられないだろうから。
 だけどパオラは言った。

「誠司は親の老後の事を考えたの?」

 俺が長男なら俺が面倒を見るのが普通じゃないのか?
 遅かれ早かれそうなるのなら早いうちに俺の親と仲良くなっておきたい。
 それはいいんだけど。

「何か問題があるの?」
 
 パオラには伝えてない。
 俺に色々教えてくれたのは父親だという事を。

「随分綺麗な嫁さんもらったな」

 父さんはパオラを見てそう言った。

「肌も白いし……いてぇ!」
「お前は今日は余計な事を一切しゃべるな!」

 海外まで来て私に恥をかかせる気かと母さんが言っていた。

「あ、初めまして」

 そう言ってパオラは挨拶する。

「出来の悪い息子だけど悪い奴じゃないんだ。よろしく頼む」

 母さんはそう言った。
 その後にパオラの両親とも軽く挨拶する。
 さすがに父さん達はイタリア語が分からなかったから俺とパオラが通訳する。
 それを見て父さんが言った。

「なるほどな。海外ならではの夫婦の共同作業ってやつか……。誠司は上手いか?……いてぇ!」
「だから余計な事をしゃべるなって言っただろ!ここがどういう場所か少しは考えろ!」

 すまないな。と母さんがパオラに謝っている。
 パオラは困っていた。
 そして俺に聞いていた。

「言った方がいいの?」
「パオラが言える範囲で言えばいいんじゃないか?」
「……誠司はとても優しいんです」

 パオラがそう言うと父さんと母さんは驚いていた。
 パオラが語る。
 俺がそんな気分になったらまずパオラの隣に座って腰のあたりに手を回す。
 それに気づいたパオラが俺の顔を見つめると俺は優しく微笑む。
 俺の気分に気づいたパオラは俺に抱きつく。
 大丈夫ならそのまま寝室に向かう。
 それを少し照れながら話していた。
 さすがに父さんでもその先を聞く場所じゃないと思ったのだろう。

「お前には女性の扱い方を教えてなかったから心配だったんだ」
「私は誠が誠司にまた妙な事を吹き込んでないかが心配だがな」

 父さんと母さんがそう言って笑う。

「私の娘も初めての事ばかりだから少し不安だったのですが、誠司君は上手く娘を誘導してくれるらしくて」

 パオラの父さんがそう言っている。
 パオラの兄の事は父さん達には伝えてるけど今話すことじゃないから伏せておいてくれた。
 それでもパオラの父さんは父さん達に兄の事を伝える。

「それなら大丈夫です。娘さんの事大事にしてるみたいだし、こいつはサッカー一筋ってほどじゃないから」

 母さんが言った。
 遠征したら絶対に飲みに行ったりする。
 アウェー先のホテルで大人しくしていたことは全くない。
 それはパオラと一緒に生活していても一緒だった。
 ただ、パオラが「変な病気もらってくるのだけは気を付けて」と俺の行動を許容すると不思議とそういう店に行かなくなった。

「どうして?私別にそこまで束縛する気ない」

 束縛が酷いと浮気すると友達からアドバイスを受けたらしい。
 だから俺は説明していた。

「最初に言っとく。別にパオラを性のはけ口にしているつもりはない」
「知ってる。誠司に抱かれるとすごく温かいから」
「だからそれを楽しみにしてるんだ」

 俺帰ったらパオラと寝るんだ。

「……私はどう反応すればいいの?」

 この変態!と怒鳴りつけたらいいのか嬉しいと喜べばいいのか。

「なるほどな……誠にもそうするべきだったのだろうか」

 母さんが悩んでいる。

「母さんだって口では怒っていたけど、内心許していたんじゃないの?」

 俺が母さんに聞いた。
 何度言っても守るそぶりすら見せない父さんの帰る家を守っていたのだから。

「お前も言うようになったんだな」

 父さんが感心していた。

「トンビが鷹を産むってやつか……」

 母さんも驚いていた。

「お二人ともこちらへ……私の知り合いを紹介したいので」

 そう言ってパオラの両親が俺の両親を案内する。

「俺たちいかなくて大丈夫かな?」
「さすがにこの場を新郎新婦が離れるのはまずいと思うけど」

 パオラはそう言って笑う。
 ちゃんと通訳を用意したから大丈夫。

「それより聞きたい事があるんだけど?」
「どうしたんだ?」
「トンビが鷹を産むってどういう意味?」

 ああ、その事か。
 もっとわかりやすく言った方がいいかな。

「こうも言うんだ。鳶が孔雀を産む」
「ごめん、私鳥のことまで知識無くて」
「簡単に言うと平凡な人が優れた子供を産むことを言うんだ」
「その子供が誠司って事?それっておかしくない?」

 俺の父さんだってクラブワールド杯の優勝まで牽引した立役者って言ってたじゃない。
 サッカーに関してはしっかり才能を継いでる気がするけど。

「まあ、そうだな。しかし一方で困ったことがあるんだ」
「多少の変態癖は許すつもりでいたけど?」
「そうじゃないよ。冬吾の家系にはなぜか敵わないんだ」

 今も冬吾だけは敵に回したくない。
 どんな策を考えてもすぐに冬吾は攻略の糸口を見つけ出す。
 それは多分冬吾の所属するチームの戦力だけでなくもうすぐ2年になるくらい冬吾とプレイをしていて冬吾を知り尽くしているんだろう。
 だから冬吾のチームメイトは恐れているはずだ。

「頼むから日本代表で出る時は手加減してくれ」
「残念だけどそれは出来ないよ」

 冬吾だって実力で勝ち取ったポジションだ。
 誰にも文句を言わせない実力。
 世界のトップの中でもずば抜けた才能の持ち主。
 双子の妹も違う舞台で世界中を驚かせた。

「だけど崇博たちも頑張ってるって言ってたよ」

 そう言って冬吾が挨拶に来た。

「おめでとう。誠司」
「ありがとう。祝いに今度の試合俺達に譲ってくれよ」
「それは無理だ。こっちもプライドがあるんでね」

 冬吾の奴俺の知らないところで貫録ってもんを身に着けてきやがった。
 
「その余裕、いつか消してやるからな」

 俺がそう言うと冬吾はにやりと笑った。

「やれるものならどうぞ。でも今日はその事じゃなくて誠司に少し不満があるんだ」
「不満?」
「誠司は4年間の間は恋愛は考えないとか言ってなかったか?」

 なのに俺の方が先に結婚するとはどういう理由だ?と冬吾は言う。
 そうだな。冬吾流に言ってやろうか。

「ばーか。俺は彼女の事は考えてないが結婚の事については何も言ってないぞ」
「それって屁理屈じゃないか」
「羨ましくなったか?」
「正直これでサッカーまで負けたらへこむね」
「あの、2人とも親友じゃなかったの?」

 やりとりを見ていたパオラがそう言った。

「友達だからこんなやりとりもやるのさ」

 そうパオラに説明した。

「ふうん。……誠司の前でこんな事言うのはダメかなって思ったんだけど」
「どうかしたの?」

 実は冬吾の事が好きとか言わないよな?

「あのね。だったら結婚なんてしません」
「で、何か冬吾に用があるのか?」
「あのね……」

 そう言って俺に耳打ちする。
 友達にサインをもらえないか頼まれているらしい。
 でもさすがに夫のライバルにそんなお願いしていい場所なのか悩んだらしい。

「だったら俺から頼んでやるよ。冬吾、嫁の友達にサイン書いてやってくれないか?」
「別にいいけど」
「ありがとうございます」

 冬吾はイタリア語もしっかり身に着けている。
 だからイタリア語でちゃんと書いていた。

「誠司は頼まれたりしないの?」
 
 パオラにサインを書いた色紙を渡しながら聞いていた。
 
「冬吾と変わらないんじゃないか?試合終わりとかに出待ちがいるくらいだ」
「それだけ?」
「冬吾は違うのか?」
「いや、僕はそんなに外に出ないから……」

 だけど母さんが言ってたそうだ。
 誠司はアウェーに行くとホテルで大人しくしてたことは一度もないと。

「あ、あの。日本で誠司がどんなことをしてたのかは少しは誠司から聞いてます。だけど……」

 ホームにいる間は遊びに行くときはパオラも一緒に行く。
 冬吾のチーム以外には大体勝ててる。
 だから打ち上げでメンバーと飲みに行くくらいだ。
 少しははめ外しても文句言わないよ。
 そう言ってもぜったい怪しい店にはいかない。
 きっと誠司が日本に行ったら知ってる人はみんな驚くんじゃないか。
 それは多分父さんも母さんも知らない事情だとパオラは説明した。
 だから結婚の報告に行った時もパオラの両親は喜んでくれた。
 パオラの父さんと夜通し飲んだくらいだ。

「そうなんだ。それならいいんだ」

 あまり冬吾一人に時間を取るのも悪いからと席に戻って行った。

「思ったより普通の男性だったんだね」

 パオラがそう感想を言っていた。

「ああ見えて中身は化け物だぞ」
「そうなんだ」

 今でも変わらない。
 あいつを……片桐家を敵に回したらいけない。
 そんな片桐家と縁が結ばれる時が来るなんてまだ思いもしなかった。
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