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(1)
「じゃ、行こう」
私は将門に言う。
「でもどうして私達の前に麻里達が?」
冬莉が申し訳なさそうに言っていた。
そんな冬莉の頭に手を乗せた。
「どんな理由があるのかどうかまでは恵美さんにしかわからない」
だけどフレーズに与えられた役目が場を温めておくことだという事は確かだろう。
ならばその役割を全うするだけ。
冬莉はそ盛り上がった観客を満足させるパフォーマンスだけを考えなさい。
フレーズだって先輩達に場を温める役割を任せたりしてる。
実力で順番が決まるわけじゃない。
最初に一番人気があるバンドを持ってくることもあるだろう。
だからそんな事を考えるだけ無駄だ。
いつも大事にしなきゃいけない事。
その時の自分が持てる最大限の力を出し尽くすこと。
「冬莉達だって覚悟しなきゃいけないよ」
私達が盛り上げた場を白けさせたら恵美さんに怒られるよ?
「それはちゃんと考えてありますから」
冬莉の夫の志希がにこりと笑って答えた。
「おっけー。じゃ、私達に任せておいて」
「そろそろ出番です」
スタッフが言うと私達は円陣を組む。
「世界で一番暑い夏にするよ!」
私が叫ぶと皆準備を始める。
出番が来るとステージに出る。
地元の遊園地のステージだったけど観客で埋め尽くされている。
ドラムがリズムを取ると演奏が始まる。
そして私が歌いだした。
順調に盛り上がっていく観客たち
何曲か歌って私が観客に言った。
「いつもやってる掛け声みたいなのがあるんですが、皆さんも協力していただけたら嬉しいのですが」
観客は歓声で答える。
「行くぞおまえらー!!」
「おお!」
「馬鹿になる覚悟出来たか?お前らぁ!」
いつもの掛け声で会場を盛り上げる。
最後に曲名を叫んで、曲が始まる。
デビューして間もない頃に作った曲だから高音が出せないけど、うまくごまかした。
手を抜いたわけじゃない。
自分の今の実力はすべて出し切った。
会場のファンも一緒に歌いだす
私自身のテンションも上がって叫んだり、飛び跳ねたりステージを走り回る。
将門もギターを演奏しながら私と一緒に歌っている。
私達と観客が一体となった瞬間だった。
曲の最後に拳を高く突き上げる。
ファンが雄たけびを上げる。
この曲が私達の最後の曲。
十分に客を乗せた。
「みんなありがとう!」
そう言ってステージを降りた。
「お疲れ様。よく頑張ったわね」
恵美さんがそう言って拍手してくれた。
次は冬莉の番だよ。
すると冬莉の姿に驚いていた。
(2)
「よくそんなの着る気になったわね!?冬莉産後でしょ!?」
麻里が驚いてた。
「これが片桐家たる由縁なのよ」
恵美さんがそう言ってため息を吐く。
天音や茜もそうだった。
産後太りなんて言葉は片桐家には無い。
愛莉も驚いてた。
私は今日チャイナドレスを着ている。
ボディラインがしっかり出ているけど志希を魅了するくらいにはなっていた。
「その格好で暴れまわるの?」
麻里が聞くと私はにやりと笑った。
「私達はいつだって挑戦者。麻里が作った客のテンションを下げるわけにはいかない」
私がそう言うと恵美さんたちも首を傾げていた。
ただ歌っているだけじゃフレーズと同じ。
私達の先を行くのがフレーズ。
だからフレーズを超える何かをしないといけない。
出番が来ると私達も円陣を組む。
「絶対に負けないよ!」
「当たり前」
掛け声をするとステージに先に志希たちの演奏組が上がる。
志希たちの準備が出来ると私がステージに立つ。
私がスピーカーに片足を乗せて思いっきり叫ぶ。
「私の歌を聞けぇ!」
そしてデビュー曲の前奏が流れる。
「カモン!」
客を煽ると客が乗る。
そして数曲歌うと私はドラムの人に変わってもらって軽く叩く。
「お前らついてこいよ!!」
そう言ってリズムを取ると志希が演奏しながら叫び出した。
私の声を称賛する人は多いけど実は志希も歌が上手い事も知っていた。
デスボイスと呼ばれる声を出しながら高音も同時にこなす。
多分また愛莉に怒られるだろうな。
今日初めて披露する曲だった。
私達は首を振りながら曲を歌う。
突然のパフォーマンスに客は最初戸惑っていたがやがて曲のリズムに合わせて首を振り出す。
これが今回のステージの私達の最大の仕掛けだと思わせる事に成功した。
だけど曲が終わると、その激しかった曲とは真反対に静かに志希がギターを奏でながら歌いだす。
全く違うラブソング。
誠司がイタリアに行く前にぼやいていた話を題材に志希が作ったらしい。
「せっかく見つけたエロサイトが無くなっていた時の絶望感」
そんな事を志希に話していたそうだ。
だけどそんな話でよくこんなきれいな曲を作りだせたと自分の夫に感心していた。
歌や詩になれない感情と苦悩を歌詞にした曲。
私も最後だからと必死に演奏した。
志希が最後まで歌いきって演奏を終えると歓声が凄かった。
「ありがとう!まだまだ楽しんでね!」
そう言って私達はステージを降りた。
「志希はどれだけ引き出しを持ってるんだよ?」
フレーズの作詞作曲を担当している将門が志希に聞いていた。
「僕だけじゃないんだ」
そう、あの激しい曲は私が歌詞を書いた。
天音や水奈、茉莉や希美が好みそうな歌。
歌詞にすると意味がわからないけど英語やヒスパニックな感じにすると語呂が良い歌詞。
志希も偶に使っている詩の書き方。
「面白いね」
志希もそう言ってふさわしい曲を作ってくれた。
「あのさ、一応歌詞を見てもいいかしら?」
恵美さんはかろうじて歌詞が分かる箇所があったから気になったらしい。
志希が歌詞を見せると恵美さんが頭を抱えていた。
「これは愛莉ちゃんには見せたらだめね……」
まだ何を言ってるかわからない状態だからいい。
こんな歌詞を茉莉や希美に見せられない。
恵美さんはそう言っていた。
この曲だけはDL販売だけはしなかった。
CDでのみの販売にしておいた。
もちろん違法にアップロードされたPVなんかは茜達が処理していく。
それでも流行になってしまうと止まらない。
歌詞も勝手に掲載されて愛莉の目に止まると愛莉に呼び出された。
「冬莉はこんな歌を自分の娘に聞かせて平気なのですか!?」
美希も結に意味が分からないから教えてと言われて大変だったそうだ。
(3)
「しかし冬夜は本当に娘に恵まれているよな」
誠がそう言っていた
冬莉達が出るからと僕達も招待されていた。
そして誠はチャイナドレスを着た冬莉をしっかりと見ていたらしい。
実の娘ながら綺麗な体形だった。
産後太りと言う言葉があるらしく、普通は産後はあまりあんな服を着たがらないらしい。
愛莉もそうだった。
でも愛莉も全然そんなことなかったけど。
愛莉は今着ても十分似合うと思う。
そう言ったんだけど……
ぽかっ
「私だってもう50ですよ。無理です」
「そうかな」
みんな片桐家がチートだというけど遠坂家も負けてない気がするんだけど。
「誠さん!その意見だと私は愛莉の娘じゃないってことになる!」
天音がそう言っていた。
そういや、なぜか天音だけは少し物足りない感があるな……
ぽかっ
「娘をそんな目で見てはいけません」
愛莉に怒られた。
今日は愛莉は機嫌が悪い。
理由は冬莉のあの歌。
騎乗位だの肛門だの聞き取れた歌詞の部分だけでも酷い物があった。
志希を注意しようと恵美さんに聞いたら歌詞は冬莉が作ったらしい。
冬莉達のF・SEASONは偶にとんでもない歌を作り出してくる。
そしてその歌はすぐに茉莉や希美が覚える。
恵美さんは歌詞を見せてもらったそうだけど決して明かすことはなかった。
きっと愛莉には見せられないと思ったのだろう。
愛莉だけじゃない。
翼も同じだ。
翼はどうやら歌詞を大体把握したらしい。
だから困っていた。
それに気づいた空が「どんな歌詞なの?」と翼に聞いた。
「空は知らなくていい」
「だけどさ……気になるだろ?」
F・SEASONも普段はラブソングが多い。
そうでないのも同じくらいあるけど。
だけどどんなテーマの歌の歌詞に「肛門」って単語が入るのか気になったそうだ。
「あの曲は片桐家では絶対に流したらいけません!」
愛莉がはっきりと言った。
「そんな事言わないでよ。あれは単にノリを重視に適当に言葉を組み合わせただけ」
冬莉がやって来ると翼も注意していた。
「ノリだけの為にああいう歌詞は止めて!冬夜が不思議そうにしていて大変だったんだから」
大体冬華はどうするの?
「どうせ歌詞は非公開にしてもらったから大丈夫だよ」
はたから聞いたら日本語だという事すら怪しい歌なんだから。
と、いう事は日本語の歌詞なのか。
「やあ、冬莉。おじさんも見てたよ。見事な体形だったよ」
志希で物足りなくなったらおじさんが相手してあげるよ。
誠は父親の前で何を言ってるんだろうか?
「その時は誠司に頼むからいいよ」
「やっぱり若い方が良いのか?」
熟練されたテクニックもすごいんだぞ?
本当に誠は馬鹿じゃないのか?と思った。
「それに誠司は新婚だろ?さすがに無理があるだろ?」
「つまり誠は新婚じゃなかったらいいと思ってるのか?」
「最近NTRってジャンルが流行っているからさ。やってみたいなって……あれ?神奈?」
やっと気づいたらしい。
「お前のその癖はいつになったら治るんだ!?そのうち孫にまで手を出す気じゃないだろうな!」
「さすがに優奈達が成人する頃には俺も現役じゃいられないぞ」
「そう言う問題じゃないだろ!?この馬鹿!」
「じいじは私達の裸に興味あるの?」
優奈達が誠に聞いていた。
やっぱり誠だった。
「そうだな、あと10年くらいしたら見てみたいかな」
「分かった!楽しみにしててね!」
「誠、お前だけずるいぞ!優奈達は桐谷家の孫だからまず俺が最初だろ!?」
「お前も何を言っているんだこの馬鹿!」
桐谷君も亜依さんにどつかれていた。
水奈も怒ると思ったけどそうではないらしい。
「優奈達……この際だからはっきり言っておく。あまり過度の期待はするな」
水奈もカンナからそう言われたらしい。
でもそれは違うだろと空が言い出した。
「だって学から聞いた話だと水奈って神奈さんより大きくなったそうじゃないか」
ぽかっ
「旦那様はそういう情報だけ手に入れるのが早いんですね」
「心配しなくても美希の大きさとかは誰にも言ってないよ!」
「空もやっぱり大きいのが好きなのか?」
天音が空に聞いていた。
だから美希を選んだのか?
なんとなく空の回答が想像つく。
だって空は僕の息子だから。
「ずっと見慣れてる美希のが一番に決まってるだろ。今更他の人に興味湧かないよ」
「だからそういう事を人に話すのをやめてください!」
そうは言ってるけどやっぱり嬉しそうな美希だった。
これ以上この話を続けると翼と愛莉が機嫌を悪くするから変えたいな。
「志希も歌上手かったね。歌詞もすごくよかった。あれはどんな心境で作ったの?」
志希に話題を振ると志希は困っていた。
冬莉の作った歌詞よりは全然よかったけど聞いたらいけなかったのだろうか?
すると冬莉が説明してくれた。
「そんなに難しくないよ。曲名の通りだよ」
「……おい、誠。どういうことだ?」
「ま、待て!さすがに息子のPCの中までチェックしないだろ!」
「神奈も誠君もいい加減にして!」
まずいな。
最後の望みをかけて恵美さんに相談した。
「心配しなくてもうちの売れっ子に手出ししたら誠君でも容赦しないわよ?」
「まあ、それは心配してないんだけど」
「じゃあ、どうしたの?」
「冬莉達が襲われた件だけどその後どうなったのかなって」
「片桐君も耳にしたの?」
え?
僕達は何も聞いてないけど。
それは冬莉や麻里も一緒だったみたいだ。
「何かあったんですか?」
「その件なら俺も知ってる。ただ恵美さんと違ってあくまでもネットの噂だから」
誠はそう言った。
「恵美さん。何があったか説明してくれる?」
僕が言うと「そうね、それだけ大きくなってるなら知っておいた方がいいかも」と話し出した。
男性のそれよりも女性の熱狂的なファンと言う者の方が質が悪い。
年齢層が幅広く、情報網が張り巡らされ、そして文字通り熱狂的だ。
だから男性は芸能人の女性以外は交際相手は一般人女性としか事務所が公表しない。
それでも相手を特定するのが女性のファン。
そしてどこからともなく情報を手に入れる。
今回は冬莉達が標的になった。
あの日冬莉と麻里達はアイドルと酒を飲んだ。
それだけで許せない存在になっている。
そして剃刀の入ったファンレター等が事務所に届いていた。
呪われろ。
そんな口説き文句だ。
そんなラブレターが届いたら動揺するから恵美さんが隠しておいた。
だけど誠が言ったようにネットでもう噂が立っている。
ネットで噂になるくらいだ。
事務所も公表していない情報までしっかり把握されている。
そうなるとやはり心配なのは冬莉の娘の冬華だ。
ずっとそばにいてやることなんてできない。
もちろん恵美さんがしっかり護衛をつけている。
しかし一方的な嫉妬というのは男性よりも女性の方が強い。
麻里達だって同様だ。
子供を狙われたらひとたまりもない。
マスコミには恵美さん達が圧力をかけている。
だけど決定的な証拠が出たらすべてが台無しだ。
そんな圧力などものともしない芸能雑誌。
その根性を警察の事件解決に協力してやればいいのだが、かれらは逆に事件をかき回す。
本当は冬莉達には伏せておきたかった。
自分だけならどうも思わないだろうけど、子供が狙われると知ったら動揺してもおかしくない。
冬莉達だって母親なんだから。
「……つまりそれだけの情報網と規模のでかい馬鹿が挑発してるってことだな?」
美嘉さんがそう言ってにやりと笑う。
まあ、そうなるだろうとは思っていたけど。
「いいじゃない。そんな馬鹿が相手ならこっちも少々本気を出してやるわよ」
晶さんもやる気になったようだ。
「お、落ち着け。冬夜はどう思ってるんだ?」
渡辺君が僕に聞いてきた。
僕なら美嘉さん達を止められると思ったのだろうか?
「トーヤ。手前の娘の話だぞ。ビビったなんて言ったら殺すぞ!」
「神奈の言うとおりだ。今回は渡辺班が相手してやるべきだろ!?」
「……父さんがやらないなら僕がやるよ?」
カンナと美嘉さんと空が言う。
空はフレーズのファンだから。
そして冬莉の兄だから。
SHが……空が動き出すのは渡辺班が動くよりまずい。
昔日本列島が海に沈むという危機に直面する漫画があったけど空なら文字通り沈めてしまいかねない。
運が良ければ日本列島を爆撃機で火の海にする程度だろう。
と、なるとやっぱり僕が抑えるしかないか?
僕は恵美さんを見て確認した。
「誘ってきたのは相手?」
「ええ、環奈にお願いしてきたそうよ?」
「そこに冬莉が同席して酒を飲んだ?」
「やっぱりまずかったかな?」
冬莉が聞く。
殺人が起こるこの物語で飲酒くらいどうってことないだろう。
しかしある要素が加わると状況ががらりと変わる。
それなら問題ないだろう。
「冬夜さん、何を企んでいるのですか?」
愛莉が聞いてきた。
だから僕は答えた。
「何もする必要ないでしょ」
「ざけんな!渡辺班に喧嘩売ってるんだろ!?」
カンナが怒り出すと女性陣も一緒だった。
「片桐君。娘の問題だけじゃない!?麻里達も関わってるのよ」
恵美さんがそう言うと「そうだよ?」と答えた。
「冬夜。お前の悪い癖だぞ」
渡辺君は僕の顔を見て言う。
その顔はもうとっくに手段を考えているんだろう。
渡辺君には気づかれたみたいだ。
そしてその手段を公生達も気づいていた。
「確かに勢力は凄そうだけど、こればっかりは一々動くのも面倒な案件だね」
「すでに相手は自爆している……そうですね?片桐さん」
奈留が言うと頷いた。
「恵美さんが圧力をかけているだけだと最初思ったけど、多分相手ももみ消したがっているはずだ」
「どうしてそうなるのよ?」
「さっき冬莉と恵美が言ったとおりだから。……そういう事ですか?冬夜さん」
愛莉が言うと空も落ち着きを取り戻したみたいだ。
そう、相手は自分の立場をわきまえないでやらかした。
昔の西松君と言えばいいだろうか?
そっちが何もしないならこっちも二人の事を考えたら事を荒立てたくない。
だけどそっちがその気ならこっちも対応するよ?
「私達が薬を盛られたから?」
冬莉も気づいたみたいだ。
薬まで持ち出したらもう逃げられない。
間違いなくアイドルの芸能人活動は永久的に出来なくなる。
おそらくそれを相手も知っている。
だから事を荒立てないように必死になっているのは間違いないだろう。
恵美さんは放っておいてもいいくらいだ。
この事件の相手の最大の弱点はそれを知らない熱狂的なファン。
相手は事情をそこまで把握してないからただの嫉妬で冬莉達を狙っている。
そのファンの対処で困っているはずだ。
だから僕達は何もする必要が無い。
精々頑張ってもみ消しをするといい。
それが出来なくなったらこっちは遠慮なく相手してやろう。
「だとすると俺の役目は……」
誠が言った。
さすがに誠も気づいたみたいだ。
そう、敢えて狙うとしたらファンとかいう雑魚じゃない。
どこかに保管してあるはずの証拠画像。
冬莉達の不倫と言われるかもしれない。
しかしこういう時に強いのは女性だ。
麻里さん達が事件の事をばらせばそれを釈明しなければならない。
「でも腕を組んで出てきた写真だと同意したも同然じゃないですか?」
大地が聞いていた。
「大地は何を聞いていたの?麻里も冬莉も抵抗していたんだ」
そんなの写真にしっかり残ってるはず。
「……糞旦那とバカ娘のせいでたまってるストレスを発散するいい機会だと思ったんだけどな」
そう言ってカンナは笑っていた。
「神奈。そう言う相談なら私が聞くわよ」
愛莉がそう言っている。
まあ、天音、茜と続いて冬莉までだから大変なんだろうな。
「帰ったら僕が聞いてあげるよ」
愛莉にそう耳打ちすると「えへへ~」と笑っていた。
「じゃ、行こう」
私は将門に言う。
「でもどうして私達の前に麻里達が?」
冬莉が申し訳なさそうに言っていた。
そんな冬莉の頭に手を乗せた。
「どんな理由があるのかどうかまでは恵美さんにしかわからない」
だけどフレーズに与えられた役目が場を温めておくことだという事は確かだろう。
ならばその役割を全うするだけ。
冬莉はそ盛り上がった観客を満足させるパフォーマンスだけを考えなさい。
フレーズだって先輩達に場を温める役割を任せたりしてる。
実力で順番が決まるわけじゃない。
最初に一番人気があるバンドを持ってくることもあるだろう。
だからそんな事を考えるだけ無駄だ。
いつも大事にしなきゃいけない事。
その時の自分が持てる最大限の力を出し尽くすこと。
「冬莉達だって覚悟しなきゃいけないよ」
私達が盛り上げた場を白けさせたら恵美さんに怒られるよ?
「それはちゃんと考えてありますから」
冬莉の夫の志希がにこりと笑って答えた。
「おっけー。じゃ、私達に任せておいて」
「そろそろ出番です」
スタッフが言うと私達は円陣を組む。
「世界で一番暑い夏にするよ!」
私が叫ぶと皆準備を始める。
出番が来るとステージに出る。
地元の遊園地のステージだったけど観客で埋め尽くされている。
ドラムがリズムを取ると演奏が始まる。
そして私が歌いだした。
順調に盛り上がっていく観客たち
何曲か歌って私が観客に言った。
「いつもやってる掛け声みたいなのがあるんですが、皆さんも協力していただけたら嬉しいのですが」
観客は歓声で答える。
「行くぞおまえらー!!」
「おお!」
「馬鹿になる覚悟出来たか?お前らぁ!」
いつもの掛け声で会場を盛り上げる。
最後に曲名を叫んで、曲が始まる。
デビューして間もない頃に作った曲だから高音が出せないけど、うまくごまかした。
手を抜いたわけじゃない。
自分の今の実力はすべて出し切った。
会場のファンも一緒に歌いだす
私自身のテンションも上がって叫んだり、飛び跳ねたりステージを走り回る。
将門もギターを演奏しながら私と一緒に歌っている。
私達と観客が一体となった瞬間だった。
曲の最後に拳を高く突き上げる。
ファンが雄たけびを上げる。
この曲が私達の最後の曲。
十分に客を乗せた。
「みんなありがとう!」
そう言ってステージを降りた。
「お疲れ様。よく頑張ったわね」
恵美さんがそう言って拍手してくれた。
次は冬莉の番だよ。
すると冬莉の姿に驚いていた。
(2)
「よくそんなの着る気になったわね!?冬莉産後でしょ!?」
麻里が驚いてた。
「これが片桐家たる由縁なのよ」
恵美さんがそう言ってため息を吐く。
天音や茜もそうだった。
産後太りなんて言葉は片桐家には無い。
愛莉も驚いてた。
私は今日チャイナドレスを着ている。
ボディラインがしっかり出ているけど志希を魅了するくらいにはなっていた。
「その格好で暴れまわるの?」
麻里が聞くと私はにやりと笑った。
「私達はいつだって挑戦者。麻里が作った客のテンションを下げるわけにはいかない」
私がそう言うと恵美さんたちも首を傾げていた。
ただ歌っているだけじゃフレーズと同じ。
私達の先を行くのがフレーズ。
だからフレーズを超える何かをしないといけない。
出番が来ると私達も円陣を組む。
「絶対に負けないよ!」
「当たり前」
掛け声をするとステージに先に志希たちの演奏組が上がる。
志希たちの準備が出来ると私がステージに立つ。
私がスピーカーに片足を乗せて思いっきり叫ぶ。
「私の歌を聞けぇ!」
そしてデビュー曲の前奏が流れる。
「カモン!」
客を煽ると客が乗る。
そして数曲歌うと私はドラムの人に変わってもらって軽く叩く。
「お前らついてこいよ!!」
そう言ってリズムを取ると志希が演奏しながら叫び出した。
私の声を称賛する人は多いけど実は志希も歌が上手い事も知っていた。
デスボイスと呼ばれる声を出しながら高音も同時にこなす。
多分また愛莉に怒られるだろうな。
今日初めて披露する曲だった。
私達は首を振りながら曲を歌う。
突然のパフォーマンスに客は最初戸惑っていたがやがて曲のリズムに合わせて首を振り出す。
これが今回のステージの私達の最大の仕掛けだと思わせる事に成功した。
だけど曲が終わると、その激しかった曲とは真反対に静かに志希がギターを奏でながら歌いだす。
全く違うラブソング。
誠司がイタリアに行く前にぼやいていた話を題材に志希が作ったらしい。
「せっかく見つけたエロサイトが無くなっていた時の絶望感」
そんな事を志希に話していたそうだ。
だけどそんな話でよくこんなきれいな曲を作りだせたと自分の夫に感心していた。
歌や詩になれない感情と苦悩を歌詞にした曲。
私も最後だからと必死に演奏した。
志希が最後まで歌いきって演奏を終えると歓声が凄かった。
「ありがとう!まだまだ楽しんでね!」
そう言って私達はステージを降りた。
「志希はどれだけ引き出しを持ってるんだよ?」
フレーズの作詞作曲を担当している将門が志希に聞いていた。
「僕だけじゃないんだ」
そう、あの激しい曲は私が歌詞を書いた。
天音や水奈、茉莉や希美が好みそうな歌。
歌詞にすると意味がわからないけど英語やヒスパニックな感じにすると語呂が良い歌詞。
志希も偶に使っている詩の書き方。
「面白いね」
志希もそう言ってふさわしい曲を作ってくれた。
「あのさ、一応歌詞を見てもいいかしら?」
恵美さんはかろうじて歌詞が分かる箇所があったから気になったらしい。
志希が歌詞を見せると恵美さんが頭を抱えていた。
「これは愛莉ちゃんには見せたらだめね……」
まだ何を言ってるかわからない状態だからいい。
こんな歌詞を茉莉や希美に見せられない。
恵美さんはそう言っていた。
この曲だけはDL販売だけはしなかった。
CDでのみの販売にしておいた。
もちろん違法にアップロードされたPVなんかは茜達が処理していく。
それでも流行になってしまうと止まらない。
歌詞も勝手に掲載されて愛莉の目に止まると愛莉に呼び出された。
「冬莉はこんな歌を自分の娘に聞かせて平気なのですか!?」
美希も結に意味が分からないから教えてと言われて大変だったそうだ。
(3)
「しかし冬夜は本当に娘に恵まれているよな」
誠がそう言っていた
冬莉達が出るからと僕達も招待されていた。
そして誠はチャイナドレスを着た冬莉をしっかりと見ていたらしい。
実の娘ながら綺麗な体形だった。
産後太りと言う言葉があるらしく、普通は産後はあまりあんな服を着たがらないらしい。
愛莉もそうだった。
でも愛莉も全然そんなことなかったけど。
愛莉は今着ても十分似合うと思う。
そう言ったんだけど……
ぽかっ
「私だってもう50ですよ。無理です」
「そうかな」
みんな片桐家がチートだというけど遠坂家も負けてない気がするんだけど。
「誠さん!その意見だと私は愛莉の娘じゃないってことになる!」
天音がそう言っていた。
そういや、なぜか天音だけは少し物足りない感があるな……
ぽかっ
「娘をそんな目で見てはいけません」
愛莉に怒られた。
今日は愛莉は機嫌が悪い。
理由は冬莉のあの歌。
騎乗位だの肛門だの聞き取れた歌詞の部分だけでも酷い物があった。
志希を注意しようと恵美さんに聞いたら歌詞は冬莉が作ったらしい。
冬莉達のF・SEASONは偶にとんでもない歌を作り出してくる。
そしてその歌はすぐに茉莉や希美が覚える。
恵美さんは歌詞を見せてもらったそうだけど決して明かすことはなかった。
きっと愛莉には見せられないと思ったのだろう。
愛莉だけじゃない。
翼も同じだ。
翼はどうやら歌詞を大体把握したらしい。
だから困っていた。
それに気づいた空が「どんな歌詞なの?」と翼に聞いた。
「空は知らなくていい」
「だけどさ……気になるだろ?」
F・SEASONも普段はラブソングが多い。
そうでないのも同じくらいあるけど。
だけどどんなテーマの歌の歌詞に「肛門」って単語が入るのか気になったそうだ。
「あの曲は片桐家では絶対に流したらいけません!」
愛莉がはっきりと言った。
「そんな事言わないでよ。あれは単にノリを重視に適当に言葉を組み合わせただけ」
冬莉がやって来ると翼も注意していた。
「ノリだけの為にああいう歌詞は止めて!冬夜が不思議そうにしていて大変だったんだから」
大体冬華はどうするの?
「どうせ歌詞は非公開にしてもらったから大丈夫だよ」
はたから聞いたら日本語だという事すら怪しい歌なんだから。
と、いう事は日本語の歌詞なのか。
「やあ、冬莉。おじさんも見てたよ。見事な体形だったよ」
志希で物足りなくなったらおじさんが相手してあげるよ。
誠は父親の前で何を言ってるんだろうか?
「その時は誠司に頼むからいいよ」
「やっぱり若い方が良いのか?」
熟練されたテクニックもすごいんだぞ?
本当に誠は馬鹿じゃないのか?と思った。
「それに誠司は新婚だろ?さすがに無理があるだろ?」
「つまり誠は新婚じゃなかったらいいと思ってるのか?」
「最近NTRってジャンルが流行っているからさ。やってみたいなって……あれ?神奈?」
やっと気づいたらしい。
「お前のその癖はいつになったら治るんだ!?そのうち孫にまで手を出す気じゃないだろうな!」
「さすがに優奈達が成人する頃には俺も現役じゃいられないぞ」
「そう言う問題じゃないだろ!?この馬鹿!」
「じいじは私達の裸に興味あるの?」
優奈達が誠に聞いていた。
やっぱり誠だった。
「そうだな、あと10年くらいしたら見てみたいかな」
「分かった!楽しみにしててね!」
「誠、お前だけずるいぞ!優奈達は桐谷家の孫だからまず俺が最初だろ!?」
「お前も何を言っているんだこの馬鹿!」
桐谷君も亜依さんにどつかれていた。
水奈も怒ると思ったけどそうではないらしい。
「優奈達……この際だからはっきり言っておく。あまり過度の期待はするな」
水奈もカンナからそう言われたらしい。
でもそれは違うだろと空が言い出した。
「だって学から聞いた話だと水奈って神奈さんより大きくなったそうじゃないか」
ぽかっ
「旦那様はそういう情報だけ手に入れるのが早いんですね」
「心配しなくても美希の大きさとかは誰にも言ってないよ!」
「空もやっぱり大きいのが好きなのか?」
天音が空に聞いていた。
だから美希を選んだのか?
なんとなく空の回答が想像つく。
だって空は僕の息子だから。
「ずっと見慣れてる美希のが一番に決まってるだろ。今更他の人に興味湧かないよ」
「だからそういう事を人に話すのをやめてください!」
そうは言ってるけどやっぱり嬉しそうな美希だった。
これ以上この話を続けると翼と愛莉が機嫌を悪くするから変えたいな。
「志希も歌上手かったね。歌詞もすごくよかった。あれはどんな心境で作ったの?」
志希に話題を振ると志希は困っていた。
冬莉の作った歌詞よりは全然よかったけど聞いたらいけなかったのだろうか?
すると冬莉が説明してくれた。
「そんなに難しくないよ。曲名の通りだよ」
「……おい、誠。どういうことだ?」
「ま、待て!さすがに息子のPCの中までチェックしないだろ!」
「神奈も誠君もいい加減にして!」
まずいな。
最後の望みをかけて恵美さんに相談した。
「心配しなくてもうちの売れっ子に手出ししたら誠君でも容赦しないわよ?」
「まあ、それは心配してないんだけど」
「じゃあ、どうしたの?」
「冬莉達が襲われた件だけどその後どうなったのかなって」
「片桐君も耳にしたの?」
え?
僕達は何も聞いてないけど。
それは冬莉や麻里も一緒だったみたいだ。
「何かあったんですか?」
「その件なら俺も知ってる。ただ恵美さんと違ってあくまでもネットの噂だから」
誠はそう言った。
「恵美さん。何があったか説明してくれる?」
僕が言うと「そうね、それだけ大きくなってるなら知っておいた方がいいかも」と話し出した。
男性のそれよりも女性の熱狂的なファンと言う者の方が質が悪い。
年齢層が幅広く、情報網が張り巡らされ、そして文字通り熱狂的だ。
だから男性は芸能人の女性以外は交際相手は一般人女性としか事務所が公表しない。
それでも相手を特定するのが女性のファン。
そしてどこからともなく情報を手に入れる。
今回は冬莉達が標的になった。
あの日冬莉と麻里達はアイドルと酒を飲んだ。
それだけで許せない存在になっている。
そして剃刀の入ったファンレター等が事務所に届いていた。
呪われろ。
そんな口説き文句だ。
そんなラブレターが届いたら動揺するから恵美さんが隠しておいた。
だけど誠が言ったようにネットでもう噂が立っている。
ネットで噂になるくらいだ。
事務所も公表していない情報までしっかり把握されている。
そうなるとやはり心配なのは冬莉の娘の冬華だ。
ずっとそばにいてやることなんてできない。
もちろん恵美さんがしっかり護衛をつけている。
しかし一方的な嫉妬というのは男性よりも女性の方が強い。
麻里達だって同様だ。
子供を狙われたらひとたまりもない。
マスコミには恵美さん達が圧力をかけている。
だけど決定的な証拠が出たらすべてが台無しだ。
そんな圧力などものともしない芸能雑誌。
その根性を警察の事件解決に協力してやればいいのだが、かれらは逆に事件をかき回す。
本当は冬莉達には伏せておきたかった。
自分だけならどうも思わないだろうけど、子供が狙われると知ったら動揺してもおかしくない。
冬莉達だって母親なんだから。
「……つまりそれだけの情報網と規模のでかい馬鹿が挑発してるってことだな?」
美嘉さんがそう言ってにやりと笑う。
まあ、そうなるだろうとは思っていたけど。
「いいじゃない。そんな馬鹿が相手ならこっちも少々本気を出してやるわよ」
晶さんもやる気になったようだ。
「お、落ち着け。冬夜はどう思ってるんだ?」
渡辺君が僕に聞いてきた。
僕なら美嘉さん達を止められると思ったのだろうか?
「トーヤ。手前の娘の話だぞ。ビビったなんて言ったら殺すぞ!」
「神奈の言うとおりだ。今回は渡辺班が相手してやるべきだろ!?」
「……父さんがやらないなら僕がやるよ?」
カンナと美嘉さんと空が言う。
空はフレーズのファンだから。
そして冬莉の兄だから。
SHが……空が動き出すのは渡辺班が動くよりまずい。
昔日本列島が海に沈むという危機に直面する漫画があったけど空なら文字通り沈めてしまいかねない。
運が良ければ日本列島を爆撃機で火の海にする程度だろう。
と、なるとやっぱり僕が抑えるしかないか?
僕は恵美さんを見て確認した。
「誘ってきたのは相手?」
「ええ、環奈にお願いしてきたそうよ?」
「そこに冬莉が同席して酒を飲んだ?」
「やっぱりまずかったかな?」
冬莉が聞く。
殺人が起こるこの物語で飲酒くらいどうってことないだろう。
しかしある要素が加わると状況ががらりと変わる。
それなら問題ないだろう。
「冬夜さん、何を企んでいるのですか?」
愛莉が聞いてきた。
だから僕は答えた。
「何もする必要ないでしょ」
「ざけんな!渡辺班に喧嘩売ってるんだろ!?」
カンナが怒り出すと女性陣も一緒だった。
「片桐君。娘の問題だけじゃない!?麻里達も関わってるのよ」
恵美さんがそう言うと「そうだよ?」と答えた。
「冬夜。お前の悪い癖だぞ」
渡辺君は僕の顔を見て言う。
その顔はもうとっくに手段を考えているんだろう。
渡辺君には気づかれたみたいだ。
そしてその手段を公生達も気づいていた。
「確かに勢力は凄そうだけど、こればっかりは一々動くのも面倒な案件だね」
「すでに相手は自爆している……そうですね?片桐さん」
奈留が言うと頷いた。
「恵美さんが圧力をかけているだけだと最初思ったけど、多分相手ももみ消したがっているはずだ」
「どうしてそうなるのよ?」
「さっき冬莉と恵美が言ったとおりだから。……そういう事ですか?冬夜さん」
愛莉が言うと空も落ち着きを取り戻したみたいだ。
そう、相手は自分の立場をわきまえないでやらかした。
昔の西松君と言えばいいだろうか?
そっちが何もしないならこっちも二人の事を考えたら事を荒立てたくない。
だけどそっちがその気ならこっちも対応するよ?
「私達が薬を盛られたから?」
冬莉も気づいたみたいだ。
薬まで持ち出したらもう逃げられない。
間違いなくアイドルの芸能人活動は永久的に出来なくなる。
おそらくそれを相手も知っている。
だから事を荒立てないように必死になっているのは間違いないだろう。
恵美さんは放っておいてもいいくらいだ。
この事件の相手の最大の弱点はそれを知らない熱狂的なファン。
相手は事情をそこまで把握してないからただの嫉妬で冬莉達を狙っている。
そのファンの対処で困っているはずだ。
だから僕達は何もする必要が無い。
精々頑張ってもみ消しをするといい。
それが出来なくなったらこっちは遠慮なく相手してやろう。
「だとすると俺の役目は……」
誠が言った。
さすがに誠も気づいたみたいだ。
そう、敢えて狙うとしたらファンとかいう雑魚じゃない。
どこかに保管してあるはずの証拠画像。
冬莉達の不倫と言われるかもしれない。
しかしこういう時に強いのは女性だ。
麻里さん達が事件の事をばらせばそれを釈明しなければならない。
「でも腕を組んで出てきた写真だと同意したも同然じゃないですか?」
大地が聞いていた。
「大地は何を聞いていたの?麻里も冬莉も抵抗していたんだ」
そんなの写真にしっかり残ってるはず。
「……糞旦那とバカ娘のせいでたまってるストレスを発散するいい機会だと思ったんだけどな」
そう言ってカンナは笑っていた。
「神奈。そう言う相談なら私が聞くわよ」
愛莉がそう言っている。
まあ、天音、茜と続いて冬莉までだから大変なんだろうな。
「帰ったら僕が聞いてあげるよ」
愛莉にそう耳打ちすると「えへへ~」と笑っていた。
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