姉妹チート

和希

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アダムとイヴ

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(1)

 また僕達かい?
 策者に目をつけられたら最後。
 きっと最終話までネタにする気だよ。
 今年もテレビを見ていた。
 秋久は珍しくそのテレビに夢中になっていた。
 僕にしてみたら突っ込みどころか多いんだけど秋久の年頃だと高度な頭脳戦に思えたんだろうね。
 菫はもっと単純な物の方が好きらしい。

「人生なんて死ぬか生きるかだろ?」

 これが小学校3年生のセリフだよ。
 母さんに聞かれたら大惨事だ。
 翼も必死にそれは絶対に母さんの前で言ったらいけないと注意していた。
 まあ、理解できなくても菫はその映画を見ていた。
 主演の男優が菫の好みらしい。
 僕の中での評価は「叫ぶか根暗のどちらかしかできない大根役者」なんだけど。
 どうして日本人の俳優はこうも演技が下手なのだろう?
 洋画の俳優は皆かっこいいのに不思議だ。
 もちろん日本の俳優にもいた。
 昔の俳優は皆渋い。
 年を取ってるからそうなるんだろうけど今の若手俳優が歳を取ったらどうなるのだろうと危惧することもある。
 例えば「ちょっと待てよ!」が迷台詞のあの俳優にしたって何をやらせても全部同じ人間に見えてしまう。
 当たり前なんだけど役をちゃんと理解してない部分がかなりある。
 若くてイケメンだったらとりあえずいいだろう。
 そんな考えが芸能界にあるんじゃないのか?
 演技だけじゃない。
 歌手だって今頃になってまだ90年代や2000年代の曲を好む傾向がある。
 F・SEASONやフレーズが頑張ってるけど根強い人気には勝てない。
 若くて原型がそこそこよかったら後はメイクでごまかせる。
 そんな傾向があるんじゃないだろうか?
 その証拠にグループが違っても人間が違っても皆同じ顔という気味の悪いSF映画の様な状態になっている。
 それを好むのが誠さんや瑛大さんらしいけど、父さんは分からないらしい。
 父さんは70年代の洋楽を好む。
 それでも大学生の頃は流行りの曲くらい抑えるようにしていたらしいけど、最近は飽きたらしい。

「年を取ったみたいだよ」
「そのセリフ瑛大たちにも言ってやってよ」

 そんなやりとりを両親がしていた。
 で、案の定菫が言い出した。

「あのノートネットで売ってないかな?」

 あったとしても絶対に買わないね。
 菫の事だから僕や翼の名前を平気で書きかねない。
 絶対に渡したらいけない人物だ。
 きっと今頃茉莉も同じことを言ってるだろう。
 言っていたらしい。

「茉莉が天音に”あのノート買ってくれたら私が愛莉を殺してやる”と言って天音が困ってたって」

 娘たちに悪気はない。
 だから質が悪いんだ。
 学にはそっと教えておいた。

「この映画は優奈達に見せたらダメだよ」
「……水奈が気に入ってしまってな」

 手遅れだった。
 で、映画の内容は名前を書いたらその人間が死ぬというノートを使っての殺人鬼とその犯人を捜す探偵のW主演の映画。
「大人たちに宣戦布告する」とか失笑しかないセリフを言った人間は「私は神だ」と厨2全開の言葉を発していた。
 水奈も殺人鬼役が好きだったらしい。
 天音は犯人を探し出す探偵が好きだったそうだ。
 美希と翼はどうなんだろう。

「うーん、私は年配の人の方が好きですね。なんか味があるじゃないですか」
「私はあんまり興味ないな。役をこなしていればそれでいいと思う」

 というのが美希と翼の持論だった。
 しかしそんな事は関係なく天音が暴論にたどり着く。

「こんなノートに名前書くとかしなくても射殺すればいいだろ!」
「あ、そっか」

 大地もさすがに頭を抱えたらしい。
 しかし下手に逆らったら大地の眉間に穴が開く。
 もちろん翼が愛莉さんに言って愛莉さんが激怒。
 賑やかな家族だな。
 映画は2部作で両方終わるともう深夜だ。
 今年もクリスマスプレゼントを考えなければいけないんだけど。

「パパ!一々一人ずつやるのが面倒だ。パイナップルが欲しい!」

 無茶苦茶な要求をする娘にどうしたらいいか悩んでいたら翼が答えた。

「3個までなら用意します。1年間で3個だけです。大切に使いなさい」

 それでいいのか母親。
 1年間に3個も使ったら大事件だよ。
 もみ消すのが石原家だろうけど。

「じゃあ、ばあばもアップルを3個だけ買ってあげる」

 そんな事に張り合わないでおくれ母さん。
 この子達学校を解体するつもりだよきっと。
 あ、そうだ。

「それは良いんだけど菫一つ忘れてないかい?」
「何か文句あるのか?」
「そうじゃないんだけど、学校を破壊するなら結莉がいれば十分だろう」

 僕も父親として何か狂ってる気がしてきたよ。

「それもそうだな。じゃあムカつく奴の口に突っ込んでやる」
 
 そもそもチェーンソーを嚙み砕く希美にそんな道具必要なのかすごく疑問なんだけど。

「じゃあ、そろそろ寝ないとサンタさんが困るわよ」
「はーい」

 こういう時は素直だ。
 まだ僕にとって可愛い娘のようだ。

「時に翼や。一つ聞きたい事があるんだけど」
「どうしたの?善明」
「翼があのノートを手に入れたら誰を殺したいんだい?」

 たまにはそう言う話もしていいのだろう。
 クリスマスイブにする話かどうかは分からないけど。
 すると翼は少し考えた。

「敢えて言うなら私自身かな?」

 一番まずい回答が来た。

「善明は妻がそこまで悩んでるのに放っておいたわけ!仕事なんて言い訳にさせないわよ!」

 そのくらいの事母さんなら絶対に言う。

「翼や。悩んでる事があるなら僕に相談しておくれ」
「善明さんはちゃんと父親として頑張ってくれてるよ。でも菫を見てると私は力不足なのかなって自信がなくなって……」
「父さんが言ってたよ。あの子ももうすぐ思春期だ」

 ひょっとしたら色気が出てくるかもしれない。
 わずかな可能性だけどそれに賭けるしかない。

「出来るだけ僕も協力するからあまり思いつめないでおくれ」
「ありがとう。母さん達も来年から忙しくなるだろうし」
「どうしてだい?」

 だって冬吾達が帰ってくるから。
 翼はそう答えた。
 誠司にいたっては既に結婚している。
 確か言ってたな。

「最後の世代」

 どんな無茶をやらかす気なのか?
 このときまだ誰も知る由もなかった。

(2)

「今年は無事でよかったな。冬夜」

 無事かどうかは分からないけど特に何か事件があるわけじゃなかった。
 それが普通の気がするんだけど、僕達の感覚がおかしくなっているのだろうか?

「片桐先輩たちは良いですね……私達はどれだけ散々な目にあっているか……」
「桜子先輩の気持ちなんとなくわかります」

 桜子と中山瞳美がそう言っていた。
 もう冬休みなのにやつれている。
 原因は言うまでもなく茉莉と菫と優奈達だろう。
 菫にいたってはクリスマスプレゼントにパイナップルを要求したらしい。
 空達はそんなに困ってなかった。
 ある意味困っていたけど。

「変身ヒーローの変身ベルトが欲しい」

 結はいまだに集めているらしい。
 そろそろTVゲームが欲しいとか言い出しそうだけど全くそんな様子はないらしい。
 海翔と一緒に遊んでいるそうだ。

「空はずっとゲームしてたよね?」
「だって他にする事なかったし」

 そろそろ他の興味を見つけてくるかと思ったけどそうでもない。
 空と美希は違う意味で悩んでいた。
 愛莉もそれは相談に乗ってやっていた。

「もう少ししたら結も茉奈とデートに行ったりするんじゃない?」
「それは分かってるんだけど……そうすると次の問題があるし」

 美希が悩んでいた。
 愛莉も悩んでいたな。
 そろそろ茉奈も頃合いだろう。
 冬夜も同じはず。
 女子の体に興味を示す頃合いだ。
 もうごまかしようがない。
 いい加減教えてあげないといけない。
 それも正しい知識を。
 誠の馬鹿は誠司に「これを見れば全部分かる」といってそういうDVDを何の予備知識も無しに渡したらしい。
 それを知ったカンナと大ゲンカをしていた。
 愛莉が美希が悩んでると相談してきたけど「愛莉は二人をみてるだけでいい」と答えた。
 子供が成長していくうえで絶対に避けられない試練をどう超えていくか拝見しようと愛莉に伝えた。

「男の子なんだから旦那様が教えたらいいんじゃない?」
 
 美希はそう言ったが空はそれは違うと言った。

「男だからそこまで女性の体の仕組みに詳しいわけじゃないよ」
 
 精々知ってるのは美希の扱い方くらいだ。
 そんな知識だと小学生でお腹が膨れるなんて事態になりかねない。
 相手は茉奈だから大丈夫だとは思うけど。
 
「そもそも何を教えたらいいのだろう?」

 そんな根本的な問題から躓いていた。

「俺も美嘉に任せっきりだったな」

 渡辺君が言う。

「なんで男はやりたがるくせにそういう知識がゼロなんだ?」

 美嘉さんが不思議に思ったらしい。
 それなら模範解答がある。

「そういう知識を身につけた結果が誠や桐谷君だと言えば納得する?」
「……それは確かに問題ね」

 恵美さんが悩んでいた。
 恵美さんも大地や美希に教えた。
 その結果が全然違うのに驚いたらしい。
 美希は空を押し倒して、大地は天音に押し倒される。
 この世界に至っては女性が絶対的に強いんだろうな。

「冬夜、何客観的に言ってるんだ。お前の息子が情けないから渡辺班がそうなるんだろ!」
「誠の言う通りだ。お前が息子にしっかり教育していたらよかっただけじゃないか!?」

 この2人はどうしていつまでたっても理解しないのだろう?
 今日はこの2人を説得するか。

「誠も桐谷君もその理屈は間違ってるとどうして思わないの?」
「どういう意味だよ?」
「珍しいな。お前がそんな風に言い出すのは」

 誠と神奈が言う。

「桐谷君は言うまでもなく学が水奈の指導で苦戦している。遊だって同じだろ?」

 結局娘可愛さに手を焼いているじゃないか。

「遊は俺がしっかり指導しようとしても亜依となずなが邪魔するんだ」
「当たり前だこの馬鹿!遊は子供作って親らしくなってほっとしてるのに余計な真似するな!」
「私からもお願いします。あんまり娘に妙な事吹き込まないでください」
「……ちょっと待て」

 亜依さんが何か言おうとしていた。
 大体予想着くけど。

「お前、琴音に何吹き込んだ?」
「た、大したことじゃねーよ」
「多分誠さんと同じ事をしてるみたいです」

 学が説明した。
 孫娘の下着を買い取ろうとしたらしい。
 だけど琴音は優奈達とは違っていた。
 気持ち悪いからどうしようかと母親のなずなに相談したらしい。

「相手にしたらダメ!」

 なずなはそう言って琴音を注意して学に相談したそうだ。

「おまえは……」

 亜依さんが怒り出すと誠が言った。

「じゃあ、うちはどうなんだ」
「そうだぞ。私の家の問題は水奈だぞ?」

 誠とカンナが言う。

「お前忘れてないか?誠司の話聞いてないのか?」
「あ!?」

 思い出したらしい。
 誠司は海外のマスコミでも報じられるほど愛妻家なんだそうだ。
 それまでの女遊びが嘘の様になくなってパオラさんに夢中らしい。
 そんなに夢中なら子供を作ってもいいよとパオラさんが言うと誠司が首を振った。

「今したら日本に移る時にパオラ大変だろ?」
「まあ、言われたらそうだけど、私としてはそんなに私の事を愛してくれるなら別にいいと思ってるんだけど」
「まあ、確かにゴム無しは気持ちいいからしてみたい思う時もあるけど、やっぱり子作りの時の楽しみにしとくよ」
「……あのさ。一つ聞いてもいい?」

 パオラさんは不思議に思ったらしい。
 パオラさんも女性の友達がいる。
 あまりそう言う話はしないけど友達と違う点があるので気になったらしい。
 そんなに難しくない。
 日本では男性が責任あるからとゴムを使用する。
 しかしヨーロッパではそうじゃないらしい。
 自分が妊娠したくないからピルを飲むんだそうだ。
 それは一夜限りの男とかじゃなくて親密な恋人や夫を相手にするときは絶対にする。
 そういう関係の男が性病にかかっているかどうかくらい把握してるから。
 パオラさんも初めての時にどうしたらいいか分からなくて友達に聞いたら「ピル忘れちゃだめだよ」といわれて毎日飲んでるらしい。
 なのに誠司はいつもゴムをつける。
 ゴムを付けない方が気持ちいいのは女性だって同じだ。
 なのに誠司がつけている理由が分からなかった。
 信用されてないか性病があるのか?
 そんな風に聞いたそうだ。

「そうだったんだな……日本では女性にピルを飲ませるのは無責任だって思われるんだ」
「じゃあ、今夜からは大丈夫だね」

 そうやってお互い納得したらしい。
 そんなことを冬吾に話したそうだ。
 もちろんそんな事を聞いて浮気する冬吾じゃないけど。

「誠司の奴羨ましいな……」
「そうじゃないだろ馬鹿!」

 話を元に戻そう。

「誠司だって結婚して愛妻家って呼ばれるくらい溺愛してるんだ。誠の子供だからとか理由は言い訳にならないぞ?」
 
 そう言うと誠達は納得していた。

「しかしそうなるといよいよ来年だな」

 渡辺君が言うと2人とも楽しみにしてるようだけど、カンナは不安もあるそうだ。

「水奈は自分の娘だからいいけど、パオラさんはそうじゃないだろ?それにイタリアと日本じゃ色々違いがあるだろうし」

 誠司よりも長い時間パオラさんと過ごすことが不安だったみたいだ。

「それは大丈夫じゃないかな?」

 翼が言う。
 冬吾達から聞いたらしい。
 パオラさんは必死で日本食を覚えたり日本の文化を学んでいるそうだ。

「日本て夜這いって文化があるんだ」
「……誠司は私が他の男に抱かれても平気なの?」
「うーん、難しいな……。たださ、日本にはこういうジャンルがあるんだ」
 
 寝取り。

 教えたのは言うまでもないだろう。

「お前は自分の息子にどうして馬鹿な事ばかり吹き込むんだ!?」
「俺は瑛大から聞いたんだ!」
「ば、馬鹿!誠、亜依がいるのによせ!」
「馬鹿はお前だ!瑛大。お前何を言ったか正直に言え」
「べ、別に大したこと言ってねーよ……」
「だったら今言えるだろ!?白状しろ!」
「亜依さん。その話なら私も遊から聞いた」

 なずながそう言って説明しだした。
 亜依さんは穂乃果さんと一緒に看護師をしている。
 そして中島君が一枚のDVDを桐谷君に渡した。
 それは看護師が患者と関係を持つという物。
 看護師だから無抵抗だと2人は信じたらしい。
 自分の奥さんがそんな目にあってると思ったら普通は不安になると思ったけどこの二人は違った。

「つまり亜依も……」
 
 そう思うと興奮するらしい。
 うん、全然わからない。

 ぽかっ

「冬夜さんは気にしなくていいんですよ」
「でも、普通さ……」
「考えてもいけません」
「……分かった」

 ちなみに遊はそういうのはあまり見なかった。
 だって琴音が目にしたら大変だから買うのもPCで見るのも我慢したらしい。
 そんな遊だから遊が求めてきたらなずなは応えてるらしい。
 妊娠してる間、進や朱鳥が一人で寝れるようになるまでは我慢してとお願いしたくらいだ。
 遊だって琴音の時に大地達に注意されて懲りて、なずなの辛さは知っている。
 だから同じ失敗はしなかった。
 学も同じ……だと思った。

「もう、子供も一人で寝てるからいいだろ?」
「本当に寝てるのか?」
「ね、寝てるだろ?もう23時だぞ?」
「じゃあ、子供の部屋を見に行こうか」
 
 そう言って学は水奈と一緒に部屋に行く。
 部屋の外まで聞こえてくる笑い声。
 一応ノックして水奈がドアを開けるといつの間にか冷蔵庫から取り出したコーラとお菓子を食べながらゲームをしていた。

「だって、天音達が夜じゃないと時間とれないからって……」
「……どういう事だ?水奈」

 別に夜更かししたい年頃なのだろう。
 しかし朝眠いからと教室で寝ている。
 あんまりうるさいと突然学校を抜け出して家で寝ているらしいと瞳美から聞いていたらしい。

「ただでさえ勉強しない娘が授業も受けなかったらどうなるかくらいわからないのか!?」
「どうせ落第なんて面倒な事考えないから大丈夫だって天音達も言ってるじゃねーか!?」
「いくらなんでも自分の名前を漢字で書けない子供が高校に入れると思ってるのか!」

 それで徹夜で夫婦喧嘩をしたらしい。
 
「そんな話聞いてなかったぞ?」

 カンナが水奈を睨みつける。

「お前ふざけるな!水奈。どうして私を巻き込むんだ!」
「ふざけてるのは貴方でしょ!子供達に勉強させるのが親の役目でしょ!」
「愛莉の子だから大丈夫だよ。勉強しなくても覚えてるから!」
「天音。それはちょっと違うんだ」
「へ?」

 あんまり言うべき事じゃないと思ったけど言わないとダメだろうな。
 そう思って僕達の学生生活を説明した。

「愛莉は天音と一緒で授業を聞くだけで全部理解していた。……だけど僕はそうじゃなかった」

 成績も中くらいだったと説明した。
 カンナもそんなに良くなかった。
 誠も同様だ。

「確かにあの時は愛莉さんは本気で天才だと思ったな」
「しかも私達に合せて勉強をしながら常にトップだったしな」

 誠とカンナも思い出したようだ。

「だったらいいじゃん」

 天音が言う。
 だけど僕は言った。

「天音が子供達に言ってる事と愛莉が僕達に言っていた事はちょっと違うんだ」
「どう違ったの?」

 翼も気になったらしい。
 翼も空に勉強教えるのに苦労してたからな。
 僕はその疑問に答えた

「やる時にちゃんとしっかりやっておけば、連休くらい遊んでも大差ない。それくらいで差がつくことはない」

 だから愛莉は黙認しているだろ?
 例えば夏休みの宿題は7月中に終わらせることが出来たらあとは何をしてもいい。
 冬休みは年を越す前に宿題を済ませたら正月は何をしてもいい。
 まともに考えて無茶なスケジュールを容易くこなすのは僕の力じゃない。愛莉の力だ。
 そんな愛莉でも毎日僕やカンナ達と勉強をしていたんだ。
 
「勉強の時間はちゃんと勉強する。その代わり終わったら甘えたい」
「二人っきりになれたら勉強の時間だってデートだよ~」

 そんな事を言って愛莉は僕やカンナ達を引っ張って来た。
 少々やりすぎな所があって大学1年生の時に僕が倒れたけど。

「そんな事もあったな」
「確かにあの頃の愛莉ちゃんは化け物染みた成績を誇っていたわね」

 渡辺君と恵美さんが言った。

「……実はその話に続きがあってね」
「まだあったのか!?」

 誠が驚いてた。
 確かに誰にも話してないからな。
 それは僕が税理士試験を受ける時。
 最初は独学で勉強していた。
 しかしペース配分が上手くなくて倒れる事態になった。
 すると愛莉は僕が休んでる間に参考書を全部読んで要点だけを見事につかみ取って付箋を貼っていた。

「なんで分かったの?」

 僕も驚いて聞いていた。
 愛莉は当たり前の様に答えた。

「一度読めば大体わかりますよ?」
「つまり化け物なのは片桐君だけじゃなくて愛莉もだったってわけ!?」

 亜依さんが驚いていた。

「そんなにすごいことなのかな~?」

 そう言って悩んでいる翼と愛莉。

「亜依……年明けたら飲み行かないか?」
「神奈……私も同じ事考えていた」

 カンナと亜依さんはなぜか落ち込んでいる。

「つまり片桐君と愛莉ちゃんが化け物みたいな子供達の原点なわけ?」

 まあ、そうなんだろうね。
 
「でも美嘉さんもしっかり才能を娘に与えてるじゃないか」
「まあ、あの二人はそのうち私を超えるだろうな」
「誠だって誠司のサッカーの才能は間違いなくお前の物だろ?」

 見た目だっていいし。

「余計な性格までついてきたけどな」

 そう言ってカンナが誠を睨む。

「そ、それは直ったって冬夜が言ってただろ?」
「ああ、誠司はそうみたいだな。で、お前はどうしたらその馬鹿な頭を直せるんだ?」

 カンナがそう言って誠に質問すると誠は悩んでいた。
 僕は話を戻して水奈に説明する。

「分かるかい?天音の様な才能を授けた愛莉ですら最低限の勉強をしていたんだ」

 連休くらいどこか連れてって!くらいは言ってたけど。
 天音は進路を決めていたからそうでもなかったけど、翼は大学に進学するって決めてたから空と一緒に必死に勉強していた。
 第一水奈だって学に家庭教師を頼んで勉強していたじゃないか。
 成績にこだわる必要はない。
 だけど大事なのはやるべきことはやるという事。
 それを子供に教えるのも大事な仕事だよ。
 そう言うと水奈は理解したようだ。

「せめて水奈も小学生の宿題くらい手伝ってやれるようにならないとね」

 例えそれで社会に出たとしてもいつか必ず恥をかくときがくる。
 数学なんて、理科なんか学んでも将来役に立たない。
 そう思ったことを必ず後悔する時が来る。
 今はPCが計算してくれる。
 だけどその計算の仕組みを知っていないと計算させることが出来ない。
 結局は扱う側もある程度の知識が必要なのが世の中なんだ。

「わかりました」
「悪いなトーヤ。私達が教えるべき事なんだけど……」
「そういう事なら気にしなくていいよ」
「海翔の事か?」
「いや、もっと近い間柄になる気がする」
「え?」

 丁度年明けのカウントダウンが終わっていた。
 新しい年の始まり。
 そして最後のアダムとイヴが出会う時もそう遠くない予感がした。
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