姉妹チート

和希

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箱舟の帰還

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(1)

「誠司、もう少しゆっくりお願い」
「あ、ごめん」

 すっかり忘れていた。
 パオラの手を取りゆっくり歩いていく。
 時間は十分あると案内を見て確認していた。

「しかし異常に人の密集してる場所ね」
「そりゃ、日本でもそんなにない国際空港だからな」

 隣の国とかなら地元空港からも出てるけど、ヨーロッパとかアメリカを繋ぐ便が発着する空港はそんなにない。
 時期的に考えたらまだ少ない方じゃないだろうかとパオラに説明する。

「それにしてもやけに誠司は慣れてるね」
「そりゃパオラ。俺は代表戦があるたびに呼ばれてるんだ」

 日本だけじゃなく各国を飛び回っていた。
 冬吾も同じはずだ。
 あいつの恐ろしい所はなんでそんな言語知ってるんだ?ってくらいどこでも会話が出来る事。
 代表の他の選手も驚いていた。

「お前それだけ喋れるなら引退後も仕事ありそうだな」
「出来るだけ現役でいるつもりだよ」
「そんだけ覚えてどこの国の女性を口説くつもりだ?」
「誠司とは違うよ」

 美味しい食べ物知りたいから覚えるそうだ。
 それは現地の人間に聞くのが一番だから。
 だけどそんな話を聞いていたスタッフが冬吾の単独行動を許すはずがない。

「妙なもの食べて試合前に腹下したとか言われたらかなわない!」

 今までそんなミスを冒したことは無いと冬吾が説得するもホテル以外での食事を一切許さなかった。
 
「これならスペインのチームにいた方がまだましだ」

 珍しく冬吾が不満を言っていた。
 あいつも来月には帰ってくるらしい。
 俺と冬吾の獲得の為に恵美さんは惜しむと言う言葉を忘れたらしい。
 小国の国家予算並みの金が動いたらしい。
 それだけ俺達に期待しているという事だ。
 そりゃ多少プレッシャーもある。

「そんなに日本に帰っていたのに地元に帰らなかったの?」
「こう見えてスターらしいからな」

 地元空港なんかでマスコミに捕まったら面倒だ。
 それにちゃんと結果を出してくるまでは帰らないと決めていたから。
 結果はそこそこ残せた。
 結局冬吾のチームに勝つことは出来なかった。
 だからこそ冬吾のチームの経営者は頭を抱えてるらしい。
 俺も同じだった。

「日本の女より絶対いいって!」

 そう言ってチームメイトから引き留められた。

「知ってるよ。だからパオラを連れて帰るんだ」
「少しくらい手加減してくれよ」
「手加減て言葉はイタリアに置いていくことにするよ」
「お前はイタリアでも手加減なんてしたことないだろ!」

 そんな話をしながらパオラと一緒に飛行機を乗り継いで地元空港に向かう。
 姉さんが迎えに来てるそうだ。
 優奈達も小学生だと聞いていた。
 もうすぐ3年生になるのにいまだに酷い学力らしい。
 テストをしてもまず最初の難関がある。
 国語の問題でこんな回答をした。

「しょうもない事考えてないで遊んでた方がいいんじゃない?」

 さすがに担任がやばいと思って姉さんに相談したそうだ。

「でも、確かにしょうもない問題だろ?こいつ何が知りたいんだ?」

 姉さんじゃ話にならないから学に相談する。
 それを聞いた学は「お前も一緒に小学生からやり直さないとだめなのか?」と呆れていたそうだ。
 当然母さんも知ってる。

「千帆……悪いけど水奈にも勉強教えてやってくれないか?バイト代は私が払う」
「私は家事で忙しいから無理だろ」
「水奈だけずるい!私たちが勉強してる間天音達とゲームしてるじゃん!」

 午前中に家事を出来る分だけ済ませて、優奈達が勉強してる間に遊んでいるらしい。
 と、いう事は天音もそういう戦術に出たわけだ。
 母さんはすぐに愛莉さんに伝える。
 
「天音はいい加減大人なんだからゲームは卒業しなさい!」
「それならパパに言えよ!パパはゲームでもチートだぞ!?」
「あ、そうだ。天音、この前実装されたサポートキャラ出たから設定しておいたから使っていいよ」
「冬夜さん!!」

 愛莉さんは大変そうだ。
 俺は別に冬吾みたいに風景に興味は無いけど隣で疲れて寝ているパオラを起こしたくなかったから音楽を聴きながら外を見ていた。
 着陸するために飛行機が高度を下げるとパオラが気づく。

「もう着いたの?」
「まあ、東京と地元だしな」

 2時間もかからないはずだ。
 飛行機が着陸すると俺はパオラと降りる。
 荷物を受け取ってゲートを出ると姉さんたちを見つけた。

「水奈。久しぶり!」
「おお、久しぶりだな誠司。活躍は聞いてる。えっと……隣にいるのが……」

 姉さんたちはパオラを見る。
 多分優奈と愛菜がパオラを見て驚いてる。

「うわあ、金髪だし肌も白い!お人形さんみたい」
「誠司と同い年なんでしょ?そんな厚化粧してたらだめだよ」

 誰に聞いたのかは大体想像つく。
 俺は笑って姉さんに言った。

「水奈。パオラ日本語上手なんだ」
「まじか!?す、すいません。どうも私に似たみたいで……」

 そう言って頭を下げる姉さんにパオラはにこりと笑った。

「初めまして。パオラ多田と言います。よろしくお願いします」
「こ、こちらこそよろしくお願いします。誠司の姉の水奈です」

 姉さんがやけに緊張していた。

「どうも、水奈の夫の学です。車持って来てるんでどうぞ」
  
 そう言って学が自分の車に案内する。

「誠司。お前確か免許取ってないよな?どうするんだ?」

 学が聞いてきたからその為に少し早めに帰国したと説明した。
 一か月程度で取れるらしいからすぐに手続きするつもりだった。

「誠司も実家で暮らすって聞いたけど本当に良いのか?」
 
 家には父さんがいる。
 パオラとはまだ新婚だ。
 色々大変じゃないのか?と水奈が聞いた。
 だけどそれでも一緒に暮らした方が良いと冬吾の父さんが言ったそうだ。
 珍しいこともあるんだな。

「パオラは意外と声出さないんだ」
「どうして誠司はそういう事を姉であれ人に話すわけ?私が恥ずかしいとは考えないの?」
「今更だろ?それに実家で暮らすってそういう事なんだと説明したろ?」

 きっと夜になったら父さんが耳をドアに当てて聞いてる。

「日本人て偶に理解に苦しむ行動にでるね」
「パオラさん、それは多分父さんともう一人だけが特殊なんだ」

 水奈がそう説明してた。
 久しぶりの実家に着く。
 荷物を降ろして呼び鈴を押す。
 久しぶりに母さんに対面した。

「元気そうだな。パオラさんもはるばるようこそ」
「お世話になります。それとパオラで構いません。私のお義母さんなのだから」
「じゃあ、そう呼ばせてもらうよ。とりあえず上がってくれ」
「はい。これお土産です。誠司がこれが一番喜ぶと言ったから」

 そう言ってパオラが母さんに渡したのはワインだった。
 パオラはそれなりの家柄だからいいワインをよく知っている。
 でも、父さんと母さんだとあまり値打ち物のワイン買っても意味なさそうな気がしたけど。

「じゃあ、これで夕食はパーっとやるか」

 母さんも嬉しそうだ。
 リビングに行くと父さんがいた。
 崇博と歩美は同棲してるらしい。
 もっともあまり家にいる時間は少ないそうだけど。
 あいつらも頑張ってるんだな。
 父さんはパオラをじっと見ていた。
 自然とパオラも緊張する。
 そして父さんは真剣な表情で言った。

「誠司。嫁さん交換してくれないか?」

 多分言うような気がしてた。
 パオラは驚いている。
 水奈と母さんが父さんをどついていた。

「お前は息子の嫁に何を馬鹿な事言ってるんだ!」
「だってなんか前より魅力的になってるからつい……」
「ほう、私は使い捨てだといいたいのか?」
「い、イタリアって一夫多妻制とかないのか?」

 そんな質問を受けてパオラは戸惑っていた。
 そんな父さんに罵声を浴びせる母さんと水奈。
 学は苦笑いをしていた。
 とりあえず部屋に案内して荷物を広げるパオラ。

「私日本でやっていけるかな?」

 初めてパオラが不安になったらしい。
 まあ、父さんの存在は女性にとっては不安だろう。

「困ったら母さんに相談するといいよ」

 母さんとは密に連絡を取っていた。
 母さんも姑にになるとはいえイタリア人の扱いなんて分かるわけがないから色々相談を受けていた。
 その夜パオラのワインに合った料理を母さんが作っていた。

「パオラは下戸なのか?」

 父さんがパオラにワインを勧めると拒否したからそう思ったんだろう。

「すいません、今はちょっと飲める状態じゃないから」
「緊張でもしてるのか?そんなに固くならないで。ざっくばらんに楽しもう」

 父さんはそう言うけど母さんは察したのだろう。
 同じ女性だからだろうか。

「そういう事なら恵美にも言っておくよ」

 今度の週末結婚祝いのパーティを開いてくれるらしい。
 本当は式を準備してあげると恵美さんから聞いたけどさすがにドレスがきついだろうからと断っておいた。

「……そういうことなら誠司も頑張らないとね」

 なんだかんだ言って頼りにしてるのは亭主なんだから。
 恵美さんはそう言っていた。

(2)

「冬莉!いい加減にしなさい!」
「誠司もだ!お前はどうしてそういうしょうもないことを平気でやるんだ!?今日がどういう席かわかってんだろ!」

 冬莉と誠司君が愛莉さんと神奈さんに怒られている。
 今日は誠司君の結婚祝いのパーティ。
 ドレスはちょっと難しいと誠司君が言うから普通の格好でいる。
 で、結婚式じゃないならと冬莉が悪だくみをした。
 披露宴の余興で歌う人もいたからいいだろうと思ったそうだ。
 普通なら2次会とかでやることらしいけど。
 何をやったか?
 例の酷い歌を歌っていた。
 すると遊や天音達が悪乗りする。
 それどころか誠司君まで歌いだす。
 頭を抱えるのは親たち。
 結は興味なさそうに料理を食べていた。
 
「結、お肉ばっかりじゃダメだよ」
「わかった。でもやっぱりないね。ラーメン」
「でもパスタとかあるよ」

 やはり片桐家の中では究極のメニューはとんこつラーメンとチャーハンらしい。
 冬吾君も同じことを考えていたそうだ。

「やっぱりイタリアにしておくべきだったかな」
 
 サッカーでのパワーバランスを一人でぶち壊す冬吾君。
 ただ「麺類が食べたいから」の一言で移籍されたらかなわないと経営陣は頭を抱えていたそうだ。
 結局は冬莉が自分がツアー中に食べた美味しかったご当地のカップラーメンを冬吾君に送っていたらしいけど。

「冬夜さんが原因だってどうして分からないんですか!?」
「でも愛莉。パスタはフォークで撒くのが面倒なんだ」
「そういう問題じゃありません!」

 片桐家の食の好みの元凶は冬吾君のお父さんだと言っていた。
 恵美さんも必死に海翔達に色々食べさせてるらしい。
 食のマナーも一緒に教えていた。
 片桐家にもやっぱり問題はあるんだな。
 娘はすぐに父親を誘うらしいし。
 冬吾君の娘もそうなるのだろうか?

「お前はどうして嫁の前でそういう歌を平気で歌えるんだ!?」

 まだ新婚なんだろ?
 普通ならパオラも怒り出すぞ。
 神奈さんがそう言うと誠司君は何か困っていた。
 珍しいな。
 冬吾君のお父さんも気づいたみたいだ。

「あ、神奈。私の事は大丈夫だから」

 パオラが誠司君を庇っていた。

「パオラ、こういうのは早いうちに直しておかないとこいつの父親はどうしようもない男なんだ」

 神奈さんが言っていた。

「それでも浮気は絶対にしないって信じてるから」
「どうして?」

 泉が聞いていた。
 するとパオラは少し恥ずかしそうに言った。

「私の胎内に誠司と私の愛の証が宿っているから」

 パオラが言うと皆が沈黙した。

「誠司!お前もう子作りしたのか!?」

 誠さんもさすがに驚いたようだ。
 誠司君もアウェーに行ったりで大変なはずだ。
 その間パオラさんはどうするつもりだ。
 そこで愛莉さんが気づいた。

「冬夜さん。まさかそれを見越して実家で暮らすことを勧めたのですか?」

 愛莉さんが尋ねると「まあ、多分そうなるんじゃないかなとは思ったよ」と答えた。
 結婚も冬吾君より早くした。
 だから子作りも多分早くするんじゃないかと思った。
 ただ、そう思ったのは多分誠司だけじゃない。
 パオラも一枚かんでるはずだ。
 結婚したのだから子供を産む。
 まあ、文章にしたら当たり前の事だけど。
 誠司君は変わった。
 ホームにいる間は常にパオラと接している。
 そんな誠司君の子供を産みたいとパオラも思ったのだろう。
 そこまで想っている誠司との絆を作りたい。
 
「でも、どうして冬夜さんはそう思ったのですか?」

 愛莉さんが聞いていた。

「愛莉がそうだったじゃないか?」

 冬吾君のお父さんがプロポーズして式の予定も組んだら「子供が欲しい」と愛莉さんが言ったそうだ。
 結果愛莉さんは式の当日に妊娠したことを冬吾君のお父さんに伝えた。
 ちょっとうらやましいかな。
 私も早く作りたいかも……。
 そんな私を見た誠司君が言う。

「悔しいだろ」

 誠司君は笑顔だった。
 すごいのはそれを見抜いた冬吾君のお義父さんなんだけど。

「誠たちは常に片桐家に対抗心を持っているからね」
 
 そのくらいはするんじゃないかと思ったそうだ。
 だから「誠司君はきっと娘の名前を考えている」とか予想したのだろう。

「でもそれだったら私の娘の冬華がいるじゃない」

 冬莉が言う。

「環境が違うだろ?少なくともイタリアに渡る前はそんな事考える余裕がなかったはずだし」

 恋人すらいない状態だったんだからと冬吾君のお父さんは説明する。

「今度こそトーヤの子供を超えるかもしれないのか?」
「そういうのって勝負することじゃないだろ?多分勝負にならないと思う」
「どうしてだ?」
「目指す夢が違うような気がするんだ。……それに」
「どうした?」
「いや、今はまだ秘密にしておくよ」

 多分私が産む子供はそんな事を気にする余裕なんてない気がする。
 それに何を基準にどっちが優秀とか決めるつもり?
 たまたま誠司と冬吾はサッカーという同じ世界を目指しただけじゃないか。
 孫にそこまで強制させるつもりはない。

「単純に能力だけなら結を超える奴なんていないだろうしな」

 瑛大さんがそう言うと「どうかな?」と冬吾君のお父さんは答えた。
 どういう意味だろう?
 とにかくそういう話は冬吾君が帰国してこないと分からない。

「瞳子だって冬吾のプロポーズを受けるかどうか分からないんだ」

 ぽかっ

 愛莉さんが冬吾君のお父さんを小突いていた。

「そういう事を言って瞳子を困らせてはいけません。……冬夜さんは瞳子の左手に気づかなかったのですか?」

 愛莉さんがそう言うと皆が私を見る。
 私は静かに左手をみんなに見せた。
 こまめに手入れはしている。
 プラチナの指輪が薬指にはまっていた。

「瞳子もいよいよだね」

 泉がそう言って笑う。

「瞳子、こっちにこい。片桐家の男の扱い方を教えてやる!」
「そう言う話なら私も監視しておいた方が良いかな。善明、秋久達をお願い」
「あんまり瞳子に変な入れ知恵をしてはいけませんよ」

 愛莉さんがそう言うとけど冬吾君のお父さんは私を呼び止めた。

「瞳子は愛莉の事は愛莉さんと呼んでるけど、僕の事はなんて呼ぶの?」
「……冬夜さんでいいかなって」
 
 私達が結婚したら冬夜さんの実家で暮らすことになる。
 すると空達は引っ越すらしい。
 だから家にいる間は普通に「冬夜さん」でいいんじゃないかと思ってる。
 そう言うと愛莉さんが「さんはいらない」と言って笑っていた。

「パパでもいいんじゃないか?その方が色々パパにおねだりしやすいだろ?」

 それを真面目に言える天音が凄いと思った。
 当然愛莉さんに怒られている。

「俺もそう思うぞ。意外と冬吾も好きなんじゃないか?近親相姦……いてぇ!」
「お前は他人様の娘に何を吹き込んでるんだこの馬鹿!」
「心配しないでも冬吾に限ってそれは絶対にないわ」

 喧嘩を始める神奈さん達と呆れている冬莉。
 
「でもいよいよ次は瞳子の番か」

 泉が言う。
 私もその日が待ち遠しくてたまらなかった。
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