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春がやって来る
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(1)
「皆で記念写真撮らない?」
玲衣が友達に声をかけていた。
来月にはまた同じ顔ぶれで中学に行くだけだぞ?
どうしてそういうのが好きなのか分からなかった。
卒業式だけじゃない。
女子は事あるたびに写真を撮りたがる。
まあ、そんなどうでもいいこと言って彼女の希美の機嫌を損ねたくない。
それなら……
「高槻先生にも入ってもらえばいいんじゃないか?」
そう提案すると佐為がさっそく高槻先生を呼びに行った。
皆揃うと母さんにスマホを渡して撮ってもらう。
「千歳、6年間お世話になりました」
玲衣がそう言ってうと高槻先生がにこりと笑う。
「中学生になっても頑張りなさい」
本番はそこからだ。
俺達の努力で未来はどのようにも変わる。
人生で初めての難関が高校入試だ。
俺達ならきっと乗り越えられる。
だから頑張れ。
「あんた達この後どうするの?」
母さんが僕にスマホを返しながら聞いていた。
「せっかくだからみんなで遊んで帰るよ」
「小学生で朝帰りなんて馬鹿な真似しないでね」
「そんな事する奴いねーよ」
「いたのよ」
そう言って父さんを見ていた。
父さんは笑っている。
「まあ、中学生になったら希美を泊めるくらいなら許してやるよ」
「光太!あんた子供に何言ってるの!?」
「だって空達もそうだったんだろ!麗華だって俺とそうだったじゃないか」
「そういう事を子供の前で言うのやめて!」
「光太!てめぇ人の娘を傷つけたら承知しねーぞ!」
「克樹も子供みたいな駄々こねるのやめて」
大人の方が大変そうだな。
「カラオケでする人もいるみたいだよ?」
希美はそう耳打ちした。
「さすがにみんなの前で初めてを済ますのは勘弁してくれ」
「よかった。私もそれだけは絶対いやだから」
まあ、普通はそうだよな。
その後皆とカラオケで昼食を食べながら騒いでいた。
女子は朝子の相談に乗っている。
「多分中学に行けばいい人見つかるよ」
他に言いようが無いよな。
「光聖たちも協力しなよ!」
「分かってるよ」
暗くなる前にはカラオケを出て「じゃ、入学式の時に会おうぜ」と言って皆帰って行く。
「光聖はやっぱり希美の制服姿気になる?」
「そういう趣味はねーよ」
ただ父さんが言ってた。
「夏服で女子の下着が透けて見えるのは錯覚だ!」
そんな派手な下着を認める程校則は緩くない。
どうでもいいような気がしたのは気のせいだろうか。
だってどうせ見せてくれるんだろ?
そんな事をお風呂に入った後に希美と話をしていた。
「光聖は私を侮っていない?」
「どういう意味?」
「中学生で私をその気にさせられるの?」
ああ、そういう意味か。
「なるべく努力するよ」
「よかった。私もあんまり待ってるの嫌だから」
じゃあ、希美から誘ったらいいんじゃないかと思ったけど、そこは年頃の女の子という事だろう。
卒業した後だから当然宿題なんてない。
短い休日をゆっくり楽しむことにした。
希美とデートでも行こうかな。
(2)
飛行機が着陸すると飛行機を降りる。
地元に帰ったら真っ先にすることを決めていた。
きっと大勢で迎えに来ているんだろうな。
そんな事を考えながらゲートを抜けると父さん達が待っていた。
「冬吾、こっち~」
菫達も大きくなったな。
中には瞳子の姿もしっかりあった。
父さん達に近づくと一言言った。
「わりぃ、待たせちまったな」
ぽかっ
母さんに小突かれた。
「まだその癖を直してなかったのですか!」
久しぶりに母さんに怒られた。
「お帰りなさい。冬吾君」
そう言って瞳子が前に出る。
そんな瞳子をしっかり抱きしめていた。
「ただいま」
「夢じゃないんだね?」
「確かめてみる?」
「え?」
ぼーっと僕を見ている瞳子にキスをする。
「ちょっと……他の人が見てる」
「見られたらいやなの?」
「……なんか昔より意地悪さが増してない?」
でも優しくなったね。
瞳子はそう言って笑っていた。
瞳子へのサプライズはこれだけじゃない。
「あんまり待たせすぎて誠司に先越されたから、地元に帰ってきたらすぐやろうと思ってたことがあったんだ」
「え、まだ何かあるの?」
瞳子は分からなかったみたいだ。
そんな瞳子に笑顔で小箱を渡す。
「本当はお洒落なレストランでと思ったけど、すぐ伝えたくて……ごめん。結婚しよう。瞳子」
「……私夢を見てるわけじゃないよね?」
なかなか返事を聞かせてくれないようだ。
「夢じゃない事はさっき確かめたろ?」
「……ありがとう。よろしくお願いします」
嬉しいと言っている割には泣いているのが不思議だった。
「嬉しいから泣いているのですよ」
母さんがそう言った。
「それにしても冬吾変わったな」
父さんがそう言って驚いてた。
「その彼女の扱い方はスペインで知ったのか?」
「これでも結構雑だと思ったんだけど」
「そこは冬夜さんに似なくてよかったですね」
母さんがそう言って笑っていた。
「とりあえず家に帰ろうか?部屋はもう整理してあるから」
父さんがそう言うと瞳子の車に乗って帰る。
瞳子は免許を持っていたんだな。
「僕も免許取らないとな」
「誠司君はもう学校に通ってるみたい」
女性はずるいよな。ミニスカ穿くだけでハンコくれるんだから。
そんな馬鹿な事を言って水奈さん達を怒らせたらしい。
「気持ち悪い禿の目線を感じる女性の気持ちが分かんねーのか!?」
「だったら穿かなきゃいいじゃん」
「それは問題が違うだろ!?例えばお前だってパオラ以外の女性に胸を押し当てられたら嫌だろ?」
「うーん、その女性に寄るかな?」
「お前は堂々と浮気をするつもりか!?」
「そんなの浮気にもならないだろ!」
そんな問答をする水奈と誠司をパオラは優しく見ていたらしい。
どんな女性が誠司に迫ろうとも誠司は絶対にパオラを裏切らない。
そんな信頼が出来ているんだろうな。
「僕は瞳子がそういう服装が趣味じゃなくて助かったよ」
「私の体形が幼いから?」
「水奈達みたいな質問されなくて済むからだよ」
幼い体形なのかは今夜見せてくれるんだろ?
「本当に冬吾君変わったね」
瞳子は驚いてた。
その週末に渡辺班がパーティを開いてくれた。
「早速二人には活躍してもらうからね!」
恵美さんがそう言っていた。
「こんなこともあろうかと俺は用意しておいた」
誠さんが誠司に何か渡している。
メモ帳みたいだった。
「中身は絶対に神奈に言うな。燃やされるかもしれない」
「へえ、この期に及んでお前は一体息子に何を教えるつもりなんだ?」
「サ、サッカーの事だよ。俺の最後の戦術を息子に授ける時が来たと思って……」
「ふーん。まあ、あんまり知らない人多いよね。熊本も結構風俗店多いって」
「なんで冬莉がその事しってるんだよ!?」
「スタッフがよく盛り上がってたから」
「……誠司すぐそのメモ帳貸せ!」
そう言って神奈さんが誠司から無理やりメモ帳を取り上げて読んでいた。
それは驚くくらい誠さんがまめに調べた全国各地の風俗店の店名と一押しの風俗嬢の名前が書かれてあった。
「お前は新婚早々嫁を怒らせる気か!」
「それはない!病気をもらってこないなら許すってちゃんとパオラと約束してたんだ」
「本当か!?パオラ」
「はい、今は私も誠司の相手してられないしそのくらいは許すつもりでしたけど」
日本では違うんですか?
違うようだ。
パオラさんを亜依さんや神奈さんが説得する。
「いいか!こいつらは日本人の中でも異常なんだ!」
「訳の分からない性癖覚えてそれをパオラに押し付けたりするに決まってる。考え直した方が良い」
「誠司が特殊なのは知ってます」
「え?」
パオラさんは素直に言った。
誠司は行ってもいいのに行かないんだそうだ。
かえって浮気をしないか心配になるくらいに。
神奈さんは誠さんを睨んでいた。
「なんで父親と息子でこうも違うんだ?」
「俺だって今は神奈しか抱いてないぞ!」
「俺だってそうだ。亜依が不規則だから仕方なく風俗で……」
「ば、馬鹿瑛大!」
「……お前は私が仕事している間にお楽しみか?」
「だって娘に手を出したらダメって言われたら仕方ないだろ!?」
「どこの世界に孫娘に手を出す祖父がいるんだ!?」
「あ、そうだ冬吾。お前に言っておきたい事があったんだ?」
誠司がそう言って僕を見る。
しょうもない事な気がするけど話題を変えた方が良いと思ったので聞いてみた。
聞いて後悔した。
「するときに”天井のシミを数えている間に終わるよ”って言ってやるといいらしい」
僕達は4年ぶりだ。
だから瞳子が緊張してると思ったそうだ。
「それ、今更だよ」
「え?」
誠司が驚いた。
すると瞳子が恥ずかしそうに言う。
「冬吾君長旅で疲れてるのに”今までほったらかしにしてたから今日は瞳子に尽くす”って相手してくれたの」
本当は冬吾君がしたいだけでしょ?
そう言われたけど別に悪いとは思わなかった。
「そりゃ恋人と久しぶりに寝る事が出来るのに嬉しくないわけないだろ」
「そうだったね」
そんな話をしてパオラは不思議そうにしてた。
こうも同じ日本人で差があるのかと水奈達に聞いていた。
「パオラ、日本人でも片桐家……特に冬吾レベルになると特別なんだ」
「神奈の言う通り。いい?娘が生まれたら絶対に冬吾の息子を狙いなさい」
神奈さんと亜依さんがそう言っている。
未だ出来てもいないのに。
パオラの不思議な事はもう一つあった。
「新婚だから当然新居なのにどうして天井にシミがあるの?」
僕は実際に数えてる女性を聞いたことがない。
「まあ、確かに女性が上って事もあるしな」
「誠は黙ってろ!」
そんな皆を見て僕は安心していた。
本当に地元に帰って来たんだと実感していた。
(3)
「それじゃ、乾杯」
僕が言うとみんながジョッキを上げて一斉に飲みだすと話が始まった。
今日は瞳子の大学卒業式。
卒業式のはかま姿を見て欲しいというから見ていた。
意外と地味な色合いなんだな。
そんな感想は置いておいて褒めておくことにした。
「とても似合ってるよ、綺麗だね」
「ありがとう」
今日ばかりはさすがに瞳子も実家に帰っていた。
そして瞳子の卒業式が終わると家に来る。
「今日から本格的にお世話になります」
「気にしなくていいのよ。瞳子みたいな娘が欲しかったから」
「あれ?愛莉は天音達じゃ不満だったのかい?」
「……あの子達の世話をするのがどれだけ大変だったか」
多分天音だけじゃなくて茜や冬莉も入っているんだろう。
大人しかったのは莉子くらいだったし。
母さんは瞳子と買い物に行ったり料理をするのが楽しみらしい。
今日は卒業祝いでみんなで宴会だと言っていた。
僕が行ってもいいのか疑問だったけど。
「だって誠司君は来るって言ってたよ」
「誠司はパオラの事大丈夫なの?」
「まあ、夫がいたって役に立たないって私は聞いてるけど」
確かに妊娠期間中に夫が出来る事は家事の交代くらいだ。
それは母さんがいるから大丈夫だと言っていた。
誠司と僕の周りには皆が殺到していた。
「サイン欲しい」
「一緒に写真撮って」
皆恋人がいるから瞳子達が目くじらを立てる事は無かった。
そうして1次会が終わり2次会でカラオケに行くと朝まで歌っていた。
朝になると皆「またね」と言って去っていく。
どうせ花見には参加するのだろうけど。
瞳子は来月から小学校の教師になる。
桜子先生の後輩になるそうだ。
大丈夫だろうか?
「桜子先生なら経験は豊富だろうし」
瞳子はそう言って笑っている。
家に帰ると父さん達がちょうど朝食を食べていた。
「お帰り。楽しめた?」
「おかげさまで。ありがとうございます」
「瞳子。そんなによそよそしい話方しなくていいから」
母さんがそう言って笑っていた。
「疲れただろうからシャワー浴びて少し休むといいよ」
「じゃあ、先に瞳子入って」
「分かった」
そう言って瞳子が着替えを持って浴室に向かうと父さんが言った。
「冬吾、覚悟出来てる?」
リベリオンの話は空達から聞いていた。
瞳子に手を出すなら容赦しない。
父さんにそう伝えると父さんは首を振った。
「もっと違う覚悟だよ」
他に何かあるのだろうか?
まだ僕には理解出来てなかった。
瞳子と母さんの企みに気づいていなかったみたいだ。
そして物語は最終章に入る。
「皆で記念写真撮らない?」
玲衣が友達に声をかけていた。
来月にはまた同じ顔ぶれで中学に行くだけだぞ?
どうしてそういうのが好きなのか分からなかった。
卒業式だけじゃない。
女子は事あるたびに写真を撮りたがる。
まあ、そんなどうでもいいこと言って彼女の希美の機嫌を損ねたくない。
それなら……
「高槻先生にも入ってもらえばいいんじゃないか?」
そう提案すると佐為がさっそく高槻先生を呼びに行った。
皆揃うと母さんにスマホを渡して撮ってもらう。
「千歳、6年間お世話になりました」
玲衣がそう言ってうと高槻先生がにこりと笑う。
「中学生になっても頑張りなさい」
本番はそこからだ。
俺達の努力で未来はどのようにも変わる。
人生で初めての難関が高校入試だ。
俺達ならきっと乗り越えられる。
だから頑張れ。
「あんた達この後どうするの?」
母さんが僕にスマホを返しながら聞いていた。
「せっかくだからみんなで遊んで帰るよ」
「小学生で朝帰りなんて馬鹿な真似しないでね」
「そんな事する奴いねーよ」
「いたのよ」
そう言って父さんを見ていた。
父さんは笑っている。
「まあ、中学生になったら希美を泊めるくらいなら許してやるよ」
「光太!あんた子供に何言ってるの!?」
「だって空達もそうだったんだろ!麗華だって俺とそうだったじゃないか」
「そういう事を子供の前で言うのやめて!」
「光太!てめぇ人の娘を傷つけたら承知しねーぞ!」
「克樹も子供みたいな駄々こねるのやめて」
大人の方が大変そうだな。
「カラオケでする人もいるみたいだよ?」
希美はそう耳打ちした。
「さすがにみんなの前で初めてを済ますのは勘弁してくれ」
「よかった。私もそれだけは絶対いやだから」
まあ、普通はそうだよな。
その後皆とカラオケで昼食を食べながら騒いでいた。
女子は朝子の相談に乗っている。
「多分中学に行けばいい人見つかるよ」
他に言いようが無いよな。
「光聖たちも協力しなよ!」
「分かってるよ」
暗くなる前にはカラオケを出て「じゃ、入学式の時に会おうぜ」と言って皆帰って行く。
「光聖はやっぱり希美の制服姿気になる?」
「そういう趣味はねーよ」
ただ父さんが言ってた。
「夏服で女子の下着が透けて見えるのは錯覚だ!」
そんな派手な下着を認める程校則は緩くない。
どうでもいいような気がしたのは気のせいだろうか。
だってどうせ見せてくれるんだろ?
そんな事をお風呂に入った後に希美と話をしていた。
「光聖は私を侮っていない?」
「どういう意味?」
「中学生で私をその気にさせられるの?」
ああ、そういう意味か。
「なるべく努力するよ」
「よかった。私もあんまり待ってるの嫌だから」
じゃあ、希美から誘ったらいいんじゃないかと思ったけど、そこは年頃の女の子という事だろう。
卒業した後だから当然宿題なんてない。
短い休日をゆっくり楽しむことにした。
希美とデートでも行こうかな。
(2)
飛行機が着陸すると飛行機を降りる。
地元に帰ったら真っ先にすることを決めていた。
きっと大勢で迎えに来ているんだろうな。
そんな事を考えながらゲートを抜けると父さん達が待っていた。
「冬吾、こっち~」
菫達も大きくなったな。
中には瞳子の姿もしっかりあった。
父さん達に近づくと一言言った。
「わりぃ、待たせちまったな」
ぽかっ
母さんに小突かれた。
「まだその癖を直してなかったのですか!」
久しぶりに母さんに怒られた。
「お帰りなさい。冬吾君」
そう言って瞳子が前に出る。
そんな瞳子をしっかり抱きしめていた。
「ただいま」
「夢じゃないんだね?」
「確かめてみる?」
「え?」
ぼーっと僕を見ている瞳子にキスをする。
「ちょっと……他の人が見てる」
「見られたらいやなの?」
「……なんか昔より意地悪さが増してない?」
でも優しくなったね。
瞳子はそう言って笑っていた。
瞳子へのサプライズはこれだけじゃない。
「あんまり待たせすぎて誠司に先越されたから、地元に帰ってきたらすぐやろうと思ってたことがあったんだ」
「え、まだ何かあるの?」
瞳子は分からなかったみたいだ。
そんな瞳子に笑顔で小箱を渡す。
「本当はお洒落なレストランでと思ったけど、すぐ伝えたくて……ごめん。結婚しよう。瞳子」
「……私夢を見てるわけじゃないよね?」
なかなか返事を聞かせてくれないようだ。
「夢じゃない事はさっき確かめたろ?」
「……ありがとう。よろしくお願いします」
嬉しいと言っている割には泣いているのが不思議だった。
「嬉しいから泣いているのですよ」
母さんがそう言った。
「それにしても冬吾変わったな」
父さんがそう言って驚いてた。
「その彼女の扱い方はスペインで知ったのか?」
「これでも結構雑だと思ったんだけど」
「そこは冬夜さんに似なくてよかったですね」
母さんがそう言って笑っていた。
「とりあえず家に帰ろうか?部屋はもう整理してあるから」
父さんがそう言うと瞳子の車に乗って帰る。
瞳子は免許を持っていたんだな。
「僕も免許取らないとな」
「誠司君はもう学校に通ってるみたい」
女性はずるいよな。ミニスカ穿くだけでハンコくれるんだから。
そんな馬鹿な事を言って水奈さん達を怒らせたらしい。
「気持ち悪い禿の目線を感じる女性の気持ちが分かんねーのか!?」
「だったら穿かなきゃいいじゃん」
「それは問題が違うだろ!?例えばお前だってパオラ以外の女性に胸を押し当てられたら嫌だろ?」
「うーん、その女性に寄るかな?」
「お前は堂々と浮気をするつもりか!?」
「そんなの浮気にもならないだろ!」
そんな問答をする水奈と誠司をパオラは優しく見ていたらしい。
どんな女性が誠司に迫ろうとも誠司は絶対にパオラを裏切らない。
そんな信頼が出来ているんだろうな。
「僕は瞳子がそういう服装が趣味じゃなくて助かったよ」
「私の体形が幼いから?」
「水奈達みたいな質問されなくて済むからだよ」
幼い体形なのかは今夜見せてくれるんだろ?
「本当に冬吾君変わったね」
瞳子は驚いてた。
その週末に渡辺班がパーティを開いてくれた。
「早速二人には活躍してもらうからね!」
恵美さんがそう言っていた。
「こんなこともあろうかと俺は用意しておいた」
誠さんが誠司に何か渡している。
メモ帳みたいだった。
「中身は絶対に神奈に言うな。燃やされるかもしれない」
「へえ、この期に及んでお前は一体息子に何を教えるつもりなんだ?」
「サ、サッカーの事だよ。俺の最後の戦術を息子に授ける時が来たと思って……」
「ふーん。まあ、あんまり知らない人多いよね。熊本も結構風俗店多いって」
「なんで冬莉がその事しってるんだよ!?」
「スタッフがよく盛り上がってたから」
「……誠司すぐそのメモ帳貸せ!」
そう言って神奈さんが誠司から無理やりメモ帳を取り上げて読んでいた。
それは驚くくらい誠さんがまめに調べた全国各地の風俗店の店名と一押しの風俗嬢の名前が書かれてあった。
「お前は新婚早々嫁を怒らせる気か!」
「それはない!病気をもらってこないなら許すってちゃんとパオラと約束してたんだ」
「本当か!?パオラ」
「はい、今は私も誠司の相手してられないしそのくらいは許すつもりでしたけど」
日本では違うんですか?
違うようだ。
パオラさんを亜依さんや神奈さんが説得する。
「いいか!こいつらは日本人の中でも異常なんだ!」
「訳の分からない性癖覚えてそれをパオラに押し付けたりするに決まってる。考え直した方が良い」
「誠司が特殊なのは知ってます」
「え?」
パオラさんは素直に言った。
誠司は行ってもいいのに行かないんだそうだ。
かえって浮気をしないか心配になるくらいに。
神奈さんは誠さんを睨んでいた。
「なんで父親と息子でこうも違うんだ?」
「俺だって今は神奈しか抱いてないぞ!」
「俺だってそうだ。亜依が不規則だから仕方なく風俗で……」
「ば、馬鹿瑛大!」
「……お前は私が仕事している間にお楽しみか?」
「だって娘に手を出したらダメって言われたら仕方ないだろ!?」
「どこの世界に孫娘に手を出す祖父がいるんだ!?」
「あ、そうだ冬吾。お前に言っておきたい事があったんだ?」
誠司がそう言って僕を見る。
しょうもない事な気がするけど話題を変えた方が良いと思ったので聞いてみた。
聞いて後悔した。
「するときに”天井のシミを数えている間に終わるよ”って言ってやるといいらしい」
僕達は4年ぶりだ。
だから瞳子が緊張してると思ったそうだ。
「それ、今更だよ」
「え?」
誠司が驚いた。
すると瞳子が恥ずかしそうに言う。
「冬吾君長旅で疲れてるのに”今までほったらかしにしてたから今日は瞳子に尽くす”って相手してくれたの」
本当は冬吾君がしたいだけでしょ?
そう言われたけど別に悪いとは思わなかった。
「そりゃ恋人と久しぶりに寝る事が出来るのに嬉しくないわけないだろ」
「そうだったね」
そんな話をしてパオラは不思議そうにしてた。
こうも同じ日本人で差があるのかと水奈達に聞いていた。
「パオラ、日本人でも片桐家……特に冬吾レベルになると特別なんだ」
「神奈の言う通り。いい?娘が生まれたら絶対に冬吾の息子を狙いなさい」
神奈さんと亜依さんがそう言っている。
未だ出来てもいないのに。
パオラの不思議な事はもう一つあった。
「新婚だから当然新居なのにどうして天井にシミがあるの?」
僕は実際に数えてる女性を聞いたことがない。
「まあ、確かに女性が上って事もあるしな」
「誠は黙ってろ!」
そんな皆を見て僕は安心していた。
本当に地元に帰って来たんだと実感していた。
(3)
「それじゃ、乾杯」
僕が言うとみんながジョッキを上げて一斉に飲みだすと話が始まった。
今日は瞳子の大学卒業式。
卒業式のはかま姿を見て欲しいというから見ていた。
意外と地味な色合いなんだな。
そんな感想は置いておいて褒めておくことにした。
「とても似合ってるよ、綺麗だね」
「ありがとう」
今日ばかりはさすがに瞳子も実家に帰っていた。
そして瞳子の卒業式が終わると家に来る。
「今日から本格的にお世話になります」
「気にしなくていいのよ。瞳子みたいな娘が欲しかったから」
「あれ?愛莉は天音達じゃ不満だったのかい?」
「……あの子達の世話をするのがどれだけ大変だったか」
多分天音だけじゃなくて茜や冬莉も入っているんだろう。
大人しかったのは莉子くらいだったし。
母さんは瞳子と買い物に行ったり料理をするのが楽しみらしい。
今日は卒業祝いでみんなで宴会だと言っていた。
僕が行ってもいいのか疑問だったけど。
「だって誠司君は来るって言ってたよ」
「誠司はパオラの事大丈夫なの?」
「まあ、夫がいたって役に立たないって私は聞いてるけど」
確かに妊娠期間中に夫が出来る事は家事の交代くらいだ。
それは母さんがいるから大丈夫だと言っていた。
誠司と僕の周りには皆が殺到していた。
「サイン欲しい」
「一緒に写真撮って」
皆恋人がいるから瞳子達が目くじらを立てる事は無かった。
そうして1次会が終わり2次会でカラオケに行くと朝まで歌っていた。
朝になると皆「またね」と言って去っていく。
どうせ花見には参加するのだろうけど。
瞳子は来月から小学校の教師になる。
桜子先生の後輩になるそうだ。
大丈夫だろうか?
「桜子先生なら経験は豊富だろうし」
瞳子はそう言って笑っている。
家に帰ると父さん達がちょうど朝食を食べていた。
「お帰り。楽しめた?」
「おかげさまで。ありがとうございます」
「瞳子。そんなによそよそしい話方しなくていいから」
母さんがそう言って笑っていた。
「疲れただろうからシャワー浴びて少し休むといいよ」
「じゃあ、先に瞳子入って」
「分かった」
そう言って瞳子が着替えを持って浴室に向かうと父さんが言った。
「冬吾、覚悟出来てる?」
リベリオンの話は空達から聞いていた。
瞳子に手を出すなら容赦しない。
父さんにそう伝えると父さんは首を振った。
「もっと違う覚悟だよ」
他に何かあるのだろうか?
まだ僕には理解出来てなかった。
瞳子と母さんの企みに気づいていなかったみたいだ。
そして物語は最終章に入る。
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