452 / 535
ただ一つの願いさえ
しおりを挟む
(1)
「メリークリスマス」
そう言って乾杯をするとパオラと神奈が作ったクリスマス料理を食べていた。
孫はまだ幼いから家で過ごすとパオラが言ったので家族でクリスマスを過ごしている。
冬夜の子供達の様にそんなに一杯食べるわけではないけど、その分量は2人は大体把握してるらしい。
孫たちはまだシャンメリーは早いと思って普通のブドウジュースを飲ませていた。
渡辺班の中ではクリスマスは家族で過ごすものになっていた。
もちろん子供達は恋人と過ごすものもいる。
しかし子供が出来た夫婦は一家団欒で過ごすようになっていた。
誠司郎もサンタさんの格好をしていた。
誠司郎は不思議そうにしていた。
「自分がサンタさんだと誰がクリスマスプレゼントをくれるんだろう?」
パオラも初めてだったから戸惑っているのを俺と神奈は見ていた。
そういや水奈や誠司にはそういう時期が無かったな。
俺もせいかもしれないけど。
そんな水奈も立派な母親に……多分なっただろう。
あれでもいろいろ苦労しているらしい。
愛莉さん達が一番恐れていた状況になっているそうだ。
子供が親を馬鹿にしだす。
さすがにまずいと神奈に相談した。
神奈もどうしたらいいかわからずに冬夜に相談したらしい。
すると冬夜は他人事の様に言った。
「別にいいんじゃないか?」
「言いわけ無いだろ!?今のままだと確実に将来反抗期だぞ!」
「で、水奈はどうしてるんだ?」
「学と深夜に勉強してるらしい」
課題が終わるまでは夜の営みは無しと言うルールを作ったそうだ。
「……で、そんな水奈を馬鹿にするために優奈達はどうすると思う?」
「……なるほどな」
母娘で競争させたらいいというわけか。
それにそんなに優奈達が水奈を馬鹿にするわけはないと冬夜が言ったそうだ。
「だって悠翔と茉奈がいるだろう」
二人が産みの親であり育ての親を馬鹿にするのを許すはずがない。
水奈のいないところで説得しているはずだ。
「じゃあ、問題はもうないのか?」
「まあ、優奈達だけを気を付けてればいいんじゃないかってトーヤは言ってた」
神奈が言う。
崇博たちにも子供がいる。
誠司も今は2人の子供の世話を見ている。
これで俺も神奈を楽しめる……。
「お前は少しは私の立場を考えろ!」
「何かまずいのか?神奈」
「この前パオラに聞かれたんだ」
何をだろう?
「あ、あの神奈。一つ聞いてもいいですか?」
「どうしたんだ?」
「日本の男性はあのくらい大声でするものなんですか?」
「あ、あれはあの馬鹿だけだ……」
「それならいいんですけど」
「誠司が何か言ったのか?」
パオラも誠士郎達と部屋を分けて二人きりになる。
すると誠司が突然言い出した。
「俺も父さんに負けないくらい声を出すよ」
「恥ずかしいからやめて!」
隣の部屋とはいえ誠士郎が起きてしまうでしょ。
なんかの小説でやってたらしい。
もちろん中高生くらいをターゲットにした小説。
親がSMプレイをして何も知らない子供が警察を呼んで縄に縛られて鞭で打たれている両親を見つけたらしい。
両親は別の部屋に行って警察に事情を説明した。
「お愉しみもほどほどにしてください」
警察官はそう言って帰って行ったらしい。
その後通報した子供は両親にこっぴどく叱られたらしい。
子供はどうして怒られたのか不思議だったそうだ。
「頼む、誠司郎に誠司と同じ過ちを犯させたくないんだ」
「まあ、そういう事なら仕方ないな」
少し残念だが仕方ないな。
だけど神奈は不思議そうに言う。
「なんでそんな残念そうな顔をしてるんだ?」
「そりゃ、嫁を抱くのを諦めろって言ったらそうなるだろ?」
「私は大声を出すなと言っただけだぞ?」
え?
「私だって歳を取ったけどまだ女だ。亭主にくらい抱かれたいと思うよ」
ただ大声を出したりどたばたするのは勘弁してくれ。
そういうのが恥ずかしいんだ。
亜依さんと飲みに言った時に亜依さんはそれでも神奈が羨ましいと言っていたらしい。
理由は瑛大。
瑛大はもっぱら若いグラドルや地下ドルを探求し続けている。
その情熱を少しは亜依さんに向けて欲しいと思っているらしい。
亜依さんだって千帆達が結婚して子育てが完了してやっとのんびりできる。
もう少し働いて退職したら瑛大と2人で余生を過ごすことになる。
なのに瑛大はいまだに亜依さんを労わろうとしないらしい。
もう自分を縛るものは無い!
そう言って遊び回っている。
亜依さんはいつも一人の夜を過ごす。
それはもう慣れたからいいとはいえ、やっぱり愛莉さんや神奈を見ていると羨ましいらしい。
そういう事なら俺も力になってやらないとな。
「ちょっと電話してくるよ」
「ここじゃまずいのか?」
「男同士の話って奴だ」
「お前瑛大に電話する気か?」
「やっぱりバレるか?」
「亜依の事上手く伝えてやってくれ」
神奈がそう言うと俺は部屋に行って電話した。
あいつの事だから今日はあのグループのクリスマスライブだろう。
ライブに夢中の瑛大は電話に気づかない。
しかしあるルールを決めてある。
俺は瑛大の、瑛大は俺の電話には必ず出る事。
そういう事態になったということは何かしらの非常事態だ。
だから必ず出るように音を出してバイブをセットする。
出れなくても絶対にかけなおしてこい。
だからしばらく待っていたら瑛大から電話がかかって来た。
「どうした誠?」
「お前今日何の日か知ってるよな?」
「ああ、だからライブに来てる」
「率直に言う。お前かなりやばいぞ?」
「何があった?」
亜依さんがストレスを貯めてる。
何かのドラマでやっていた。
夫が退職金を持って帰って来た翌日の話だ。
「私はあなたの世話をしてきたので半分はもらう権利があります」
そう言って退職金を半分抜いて失踪したらしい。
お前も下手すると同じ結末が待っているぞ。
そう言うと瑛大は慌てていた。
「ど、どうすればいい!?誠」
「そんなの一つしかないだろ?」
子供たちが大人になったんだ。
お疲れさんくらい言ってやれ。
それと亜依さんはお前の嫁……愛する人なんだ。
出会った頃の気持ちを忘れるな。
日本だけの風習でも構わない。
こんな特別な夜くらい一緒にいてやれ。
「わ、わかった。急いで帰る」
そう言って電話が切れた。
「ったく……上手い事考えるなお前も」
いつの間にか神奈が様子を見に来たみたいだ。
「どうしてもお前と瑛大って組み合わせが心配でな」
まあ、そう思われるのもしょうがない。
でもあいつとも随分長い事やって来たな。
「まだ、少しワインが残ってるんだけどどうする?」
「そうだな、もう少しくらいならいいか」
「なんでだ?」
「知らないのか?男はあまりデート中に酔うのは厳禁なんだ」
多分冬夜にも教えた気がするけど。
「お前の酒癖の悪さなんていつもだろ?」
いまさら隠すものでもないと神奈が言うが首を振った。
「神奈……男ってのはな、泥酔すると使い物にならなくなる」
瑛大と風俗に行った時瑛大が飲みすぎた上に年とったババアが相手だった。
「普段自慰行為しすぎるからこうなるんだよ」
そう言われて瑛大が激怒していた。
あ、こういうはクリスマスマスにするのはNGだったかな。
また神奈に怒られるか。
しかし神奈はにやにやして俺を見ていた。
「私はお前の妻だ。お前の扱い方くらいわかってる」
俺がどれだけ泥酔していようとも無理にでもその気になってもらうから覚悟しろ。
そんな神奈のテクニックも観て見たいな。
「とりあえず来いよ。とっておくにも微妙な量なんだ」
そう言って神奈とリビングに行くと誠司郎がカーテンをめくって夜空を見ていた。
花火を打ち上げてるところもあるけどそんな時間はとうに終わってる。
「そろそろ寝ないと明日起きれないよ」
「うん、もうちょっとだけ」
神奈が茉菜に聞いていた。
「何を見ているんだ?」
「お星さま」
サンタさんはお星さまのどれかからやってくるんでしょ?
本当に俺の孫なのか?と言うくらい純粋な子だな。
「で、誠司郎は何が欲しいんだ?」
神奈が聞くと誠司郎は少し考えて言った。
「雪」
さすがにそれは俺にはどうしようもないな。
パオラも悩んでいるらしい。
すると神奈が言った。
「誠司郎、私も雪のお爺ちゃんが好きだったんだ」
「神奈も?」
「ああ、でもダメだった。そういうのを恋愛って言うんだけどな。その上で絶対に必要なものがあるんだ」
「何が必要なの?」
「祈ってるだけじゃだめだ、自分で踏み出す勇気」
祈っているだけでも、想っているだけでもその気持ちは雪に1/3どころかこれっぽっちも伝わらない。
一か八かの賭けに出るしかない。
その一歩を踏み出す勇気。
神奈はそれが足りないから愛莉さんに冬夜を奪われた。
冬夜も言っていたな。
「急にボールが来たなんて言い訳人生では絶対に通用しない」
何がいつ来るかわからないのが人生。
だからいつでも心の準備はしておけ。
さすがにまだ早いと思うけど、何があるのか分からないのがこの世界。
「分かったら早く寝た方が良い。まだ夜更かしは早いぞ」
「わかった。ありがとう」
そう言って誠司郎は部屋に行った。
俺達も酒を飲んで部屋に戻る。
「やっぱり冬夜を奪えなかったこと後悔してるのか?」
ベッドの中でなんとなく聞いてみた。
「50年以上生きてりゃ後悔する事なんて山ほどあるだろ?」
私だってお前と一緒になってよかったのか分からない。
水奈の育て方だってもっとやりようがあったかもしれない。
亜依なんて未だに自分の初恋の相手に悩んでる。
でもそれでも今ここに俺がいるのが現実なんだ。
悔やむこともあるけど楽しいこともいっぱいあった。
それでいいじゃねーか。
「じゃ、約束だしお前を満足させてやるか?」
「神奈は満足しないのか?」
「そういう事を女性に聞くな」
そう言って神奈はデコピンする。
神奈も水奈も片桐家の子を捕まえる事が出来なかった。
だから誠司郎に期待しているのだろう。
しかしそうは言っても片桐家の子。
その時が来るのにはかなりの時間が必要だった。
(2)
「瞳子、聞きたい事があるんだけど?」
「どうしたの?」
「どうしてクリスマスにこれを見るの?」
「……なんでだろうね」
それはSF漫画の実写映画。
地球が核攻撃を受けて人類が滅亡する日のカウントダウンが始まった時、はるか彼方にある星の人が放射能を除去する装置を持ってるから取りに来いという話。
日本が実写化すると大体地雷になるんだけど、これはまさにその地雷だった。
主演からして父さんはやばいと思ったらしい。
母さんもあまりこういう男性は嫌いだったそうだ。
主演の俳優からしてすでにやばさが凄かったのだけど出演している俳優さんに父さんの気になる人がいるから見ていた。
父さんの予感は必ず当たる。
やっぱり主演の俳優が地雷だった。
「何をやらせても役になり切れてない」
父さんはそう酷評していた。
そして原作を完全に無視して再構築したストーリー。
日本中で映画ファンは共通した感想があるらしい。
「あの事務所のタレントが主演の作品は大体酷い」
地球を救うために旅立った艦内で何の前触れもなく主演女優との性行為をもくろむ主演俳優。
父さんも僕と同じ事を思ったらしい。
「無重力でするってどうなるんだろ?」
重力があるという事は多分ないだろう。
二人とも抱き合いながら宙を泳いでいたから。
ぽかっ
瞳子に小突かれた。
「冬吾さんはそういう事を気にしなくていいから」
父さんを見ると父さんも母さんに小突かれていた。
面白かったのは父さんが好きだという俳優がセリフを言ってるところ。
昔の刑事ドラマの役に似ていると父さんから聞いた。
2時間近くの映画で面白いのがその俳優だけだという酷い内容。
しかも地球に帰って来て主役は戦艦と一緒に爆発するんだけど、ヒロインがたった一回の性行為で妊娠したらしい。
天音が見ていたらきっと激怒しているだろうな。
父さんに孫を見せたいと必死に子作りを頑張っていたから。
適当にレビューを眺めていたら「この監督は映画監督をしてはいけない」と書かれていた。
しかしそんなつまらない映画をじっと見ていたの雪だった。
結は変身物がが好きらしいけど雪はSFの方が好きなのかな?
瞳子が耳打ちしてた。
「あの子ラブシーンの所に興味があったみたい」
瞳子もこの主演俳優が好きだったから一緒に見ていたらしい。
やっぱり誠司郎の事気にしているのかな?
しかし雪は違う事を父さんに聞いていた。
「本で見たんだけど、今確認されている宇宙の中で生命が住める星なんてないって書いてたけど違うの?」
雪が子供だからだろう。
そんな事を言っていたら今頃月は人で埋め尽くされているはずだ。
主人公のロボットを作っている裏側の工場でライバルのロボットを作るくらいなんだから。
しかし企業というのは月までいっても悪者のイメージが拭えないらしい。
企業の経営者は悪役というイメージがあるんだろうな。
地元の企業の経営者である天は社長室でゲームして繭に怒られてるそうだけど。
それはおいておいて父さんは結の質問にどう答えるのだろう?
自分ならどう返事するか考えながら様子を見ていた。
「雪は本を読むのが好きなんだね。小さいのにすごいね」
「うん。何をやればいいのか分からなくて」
あの子がとにかく知識を欲しているので瞳子が仕事の帰りに図鑑とかを買って雪に与えるらしい。
そして父さんは逆に雪に聞いていた。
「お爺さんが思うには雪は少し発想が足りないんじゃないかな」
「どういう事?」
「雪は生命が存在する可能性と言うのを何を根拠に言っているの?」
人間が住める星の条件は3つあるらしい。
地球には水と空気と太陽の光があるから生きていける。
だけどその条件が揃った星はそんなにない。
だから火星にその環境を作ろうとしている。
だけどそれはあくまでも”地球上での生命が住む条件”だ。
生命が住む条件がじゃない。
ひょっとしたら人間が住めなくても何かが住んでいる可能性はいくらでもある。
自分が無理でも他の生物なら住める。
さっきの映画でもやっていた。
敵は他の星に住んでいた。
それも人間が住むには過酷するほどの環境でだ。
今観た映画ではそれがちゃんと描写されていない。
あの映画で考察するなら瞳子や母さんにアニメ版のDVDを見てみた方が良い。
相手の理由というのも知ることが出来る。
生き残るという事は実はそんなにたやすいことじゃない。
相手がどんな理由があってそれが共感できる理由だったとしても、自分が生き残るために、大切な人を守るために生き残らなければならない。
「……つまり自分と全く違う生き物がいるって事?」
「夏にライオンや象を見ただろ?」
ライオン達だって野生の動物は全部生き残りをかけて戦っているんだ。
「そっかぁ、さすがじいじだね」
理解してしまう雪の方が凄い気がするけど。
「雪も同じだよ」
「どういう意味?」
「雪はまだ生まれて間もない子供だ。多分雪は降りかかる困難を自分で排除できる力がある」
だから恐れる事なんてほとんどないはずだ。
だけど雪は無意識に恐れていることがある。
それはいつか克服しなければならない。
それをちゃんと正面で受け止めなければならない。
運命を恐れる者に女神は微笑まない。
「……それは何?」
「そのうち気づくよ」
それが雪に欠けているもの。
それを克服できた雪は誰にも負けない。
自分にも負けない。
だから自分自身で見出してみせなさい。
「……わかった。ありがとう。もう寝るね」
「うん、おやすみなさい」
父さんが言うと雪は部屋に戻る。
「上手くいったのでしょうか?」
母さんじゃなくても僕でも気になった。
「あの子は凄く頭がいい。あれなら馬鹿な真似は絶対にしないよ」
それさえ克服出来たら後は大丈夫だろう。
あの子の行く手を阻む物なんてない。
それは片桐家の男子全てに言える事。
父さんには少しだけ結の気持ちが分かったらしい。
あのラブシーンを見ている時間は違いなく誠司郎を意識していた。
本人でも自覚がないだろうけど。
ただ……。
「優秀過ぎるから気づくのに時間がかかるかもしれない」
自分はいつだって何かが足りないと自覚している。
それは僕でもなかった。
だから悩み続けるだろう。
それを教えてやれるのはただ一人だけ。
だから今はそっとしておいてやろう。
そしてここから雪はひたすら悩んでいくことになる。
「メリークリスマス」
そう言って乾杯をするとパオラと神奈が作ったクリスマス料理を食べていた。
孫はまだ幼いから家で過ごすとパオラが言ったので家族でクリスマスを過ごしている。
冬夜の子供達の様にそんなに一杯食べるわけではないけど、その分量は2人は大体把握してるらしい。
孫たちはまだシャンメリーは早いと思って普通のブドウジュースを飲ませていた。
渡辺班の中ではクリスマスは家族で過ごすものになっていた。
もちろん子供達は恋人と過ごすものもいる。
しかし子供が出来た夫婦は一家団欒で過ごすようになっていた。
誠司郎もサンタさんの格好をしていた。
誠司郎は不思議そうにしていた。
「自分がサンタさんだと誰がクリスマスプレゼントをくれるんだろう?」
パオラも初めてだったから戸惑っているのを俺と神奈は見ていた。
そういや水奈や誠司にはそういう時期が無かったな。
俺もせいかもしれないけど。
そんな水奈も立派な母親に……多分なっただろう。
あれでもいろいろ苦労しているらしい。
愛莉さん達が一番恐れていた状況になっているそうだ。
子供が親を馬鹿にしだす。
さすがにまずいと神奈に相談した。
神奈もどうしたらいいかわからずに冬夜に相談したらしい。
すると冬夜は他人事の様に言った。
「別にいいんじゃないか?」
「言いわけ無いだろ!?今のままだと確実に将来反抗期だぞ!」
「で、水奈はどうしてるんだ?」
「学と深夜に勉強してるらしい」
課題が終わるまでは夜の営みは無しと言うルールを作ったそうだ。
「……で、そんな水奈を馬鹿にするために優奈達はどうすると思う?」
「……なるほどな」
母娘で競争させたらいいというわけか。
それにそんなに優奈達が水奈を馬鹿にするわけはないと冬夜が言ったそうだ。
「だって悠翔と茉奈がいるだろう」
二人が産みの親であり育ての親を馬鹿にするのを許すはずがない。
水奈のいないところで説得しているはずだ。
「じゃあ、問題はもうないのか?」
「まあ、優奈達だけを気を付けてればいいんじゃないかってトーヤは言ってた」
神奈が言う。
崇博たちにも子供がいる。
誠司も今は2人の子供の世話を見ている。
これで俺も神奈を楽しめる……。
「お前は少しは私の立場を考えろ!」
「何かまずいのか?神奈」
「この前パオラに聞かれたんだ」
何をだろう?
「あ、あの神奈。一つ聞いてもいいですか?」
「どうしたんだ?」
「日本の男性はあのくらい大声でするものなんですか?」
「あ、あれはあの馬鹿だけだ……」
「それならいいんですけど」
「誠司が何か言ったのか?」
パオラも誠士郎達と部屋を分けて二人きりになる。
すると誠司が突然言い出した。
「俺も父さんに負けないくらい声を出すよ」
「恥ずかしいからやめて!」
隣の部屋とはいえ誠士郎が起きてしまうでしょ。
なんかの小説でやってたらしい。
もちろん中高生くらいをターゲットにした小説。
親がSMプレイをして何も知らない子供が警察を呼んで縄に縛られて鞭で打たれている両親を見つけたらしい。
両親は別の部屋に行って警察に事情を説明した。
「お愉しみもほどほどにしてください」
警察官はそう言って帰って行ったらしい。
その後通報した子供は両親にこっぴどく叱られたらしい。
子供はどうして怒られたのか不思議だったそうだ。
「頼む、誠司郎に誠司と同じ過ちを犯させたくないんだ」
「まあ、そういう事なら仕方ないな」
少し残念だが仕方ないな。
だけど神奈は不思議そうに言う。
「なんでそんな残念そうな顔をしてるんだ?」
「そりゃ、嫁を抱くのを諦めろって言ったらそうなるだろ?」
「私は大声を出すなと言っただけだぞ?」
え?
「私だって歳を取ったけどまだ女だ。亭主にくらい抱かれたいと思うよ」
ただ大声を出したりどたばたするのは勘弁してくれ。
そういうのが恥ずかしいんだ。
亜依さんと飲みに言った時に亜依さんはそれでも神奈が羨ましいと言っていたらしい。
理由は瑛大。
瑛大はもっぱら若いグラドルや地下ドルを探求し続けている。
その情熱を少しは亜依さんに向けて欲しいと思っているらしい。
亜依さんだって千帆達が結婚して子育てが完了してやっとのんびりできる。
もう少し働いて退職したら瑛大と2人で余生を過ごすことになる。
なのに瑛大はいまだに亜依さんを労わろうとしないらしい。
もう自分を縛るものは無い!
そう言って遊び回っている。
亜依さんはいつも一人の夜を過ごす。
それはもう慣れたからいいとはいえ、やっぱり愛莉さんや神奈を見ていると羨ましいらしい。
そういう事なら俺も力になってやらないとな。
「ちょっと電話してくるよ」
「ここじゃまずいのか?」
「男同士の話って奴だ」
「お前瑛大に電話する気か?」
「やっぱりバレるか?」
「亜依の事上手く伝えてやってくれ」
神奈がそう言うと俺は部屋に行って電話した。
あいつの事だから今日はあのグループのクリスマスライブだろう。
ライブに夢中の瑛大は電話に気づかない。
しかしあるルールを決めてある。
俺は瑛大の、瑛大は俺の電話には必ず出る事。
そういう事態になったということは何かしらの非常事態だ。
だから必ず出るように音を出してバイブをセットする。
出れなくても絶対にかけなおしてこい。
だからしばらく待っていたら瑛大から電話がかかって来た。
「どうした誠?」
「お前今日何の日か知ってるよな?」
「ああ、だからライブに来てる」
「率直に言う。お前かなりやばいぞ?」
「何があった?」
亜依さんがストレスを貯めてる。
何かのドラマでやっていた。
夫が退職金を持って帰って来た翌日の話だ。
「私はあなたの世話をしてきたので半分はもらう権利があります」
そう言って退職金を半分抜いて失踪したらしい。
お前も下手すると同じ結末が待っているぞ。
そう言うと瑛大は慌てていた。
「ど、どうすればいい!?誠」
「そんなの一つしかないだろ?」
子供たちが大人になったんだ。
お疲れさんくらい言ってやれ。
それと亜依さんはお前の嫁……愛する人なんだ。
出会った頃の気持ちを忘れるな。
日本だけの風習でも構わない。
こんな特別な夜くらい一緒にいてやれ。
「わ、わかった。急いで帰る」
そう言って電話が切れた。
「ったく……上手い事考えるなお前も」
いつの間にか神奈が様子を見に来たみたいだ。
「どうしてもお前と瑛大って組み合わせが心配でな」
まあ、そう思われるのもしょうがない。
でもあいつとも随分長い事やって来たな。
「まだ、少しワインが残ってるんだけどどうする?」
「そうだな、もう少しくらいならいいか」
「なんでだ?」
「知らないのか?男はあまりデート中に酔うのは厳禁なんだ」
多分冬夜にも教えた気がするけど。
「お前の酒癖の悪さなんていつもだろ?」
いまさら隠すものでもないと神奈が言うが首を振った。
「神奈……男ってのはな、泥酔すると使い物にならなくなる」
瑛大と風俗に行った時瑛大が飲みすぎた上に年とったババアが相手だった。
「普段自慰行為しすぎるからこうなるんだよ」
そう言われて瑛大が激怒していた。
あ、こういうはクリスマスマスにするのはNGだったかな。
また神奈に怒られるか。
しかし神奈はにやにやして俺を見ていた。
「私はお前の妻だ。お前の扱い方くらいわかってる」
俺がどれだけ泥酔していようとも無理にでもその気になってもらうから覚悟しろ。
そんな神奈のテクニックも観て見たいな。
「とりあえず来いよ。とっておくにも微妙な量なんだ」
そう言って神奈とリビングに行くと誠司郎がカーテンをめくって夜空を見ていた。
花火を打ち上げてるところもあるけどそんな時間はとうに終わってる。
「そろそろ寝ないと明日起きれないよ」
「うん、もうちょっとだけ」
神奈が茉菜に聞いていた。
「何を見ているんだ?」
「お星さま」
サンタさんはお星さまのどれかからやってくるんでしょ?
本当に俺の孫なのか?と言うくらい純粋な子だな。
「で、誠司郎は何が欲しいんだ?」
神奈が聞くと誠司郎は少し考えて言った。
「雪」
さすがにそれは俺にはどうしようもないな。
パオラも悩んでいるらしい。
すると神奈が言った。
「誠司郎、私も雪のお爺ちゃんが好きだったんだ」
「神奈も?」
「ああ、でもダメだった。そういうのを恋愛って言うんだけどな。その上で絶対に必要なものがあるんだ」
「何が必要なの?」
「祈ってるだけじゃだめだ、自分で踏み出す勇気」
祈っているだけでも、想っているだけでもその気持ちは雪に1/3どころかこれっぽっちも伝わらない。
一か八かの賭けに出るしかない。
その一歩を踏み出す勇気。
神奈はそれが足りないから愛莉さんに冬夜を奪われた。
冬夜も言っていたな。
「急にボールが来たなんて言い訳人生では絶対に通用しない」
何がいつ来るかわからないのが人生。
だからいつでも心の準備はしておけ。
さすがにまだ早いと思うけど、何があるのか分からないのがこの世界。
「分かったら早く寝た方が良い。まだ夜更かしは早いぞ」
「わかった。ありがとう」
そう言って誠司郎は部屋に行った。
俺達も酒を飲んで部屋に戻る。
「やっぱり冬夜を奪えなかったこと後悔してるのか?」
ベッドの中でなんとなく聞いてみた。
「50年以上生きてりゃ後悔する事なんて山ほどあるだろ?」
私だってお前と一緒になってよかったのか分からない。
水奈の育て方だってもっとやりようがあったかもしれない。
亜依なんて未だに自分の初恋の相手に悩んでる。
でもそれでも今ここに俺がいるのが現実なんだ。
悔やむこともあるけど楽しいこともいっぱいあった。
それでいいじゃねーか。
「じゃ、約束だしお前を満足させてやるか?」
「神奈は満足しないのか?」
「そういう事を女性に聞くな」
そう言って神奈はデコピンする。
神奈も水奈も片桐家の子を捕まえる事が出来なかった。
だから誠司郎に期待しているのだろう。
しかしそうは言っても片桐家の子。
その時が来るのにはかなりの時間が必要だった。
(2)
「瞳子、聞きたい事があるんだけど?」
「どうしたの?」
「どうしてクリスマスにこれを見るの?」
「……なんでだろうね」
それはSF漫画の実写映画。
地球が核攻撃を受けて人類が滅亡する日のカウントダウンが始まった時、はるか彼方にある星の人が放射能を除去する装置を持ってるから取りに来いという話。
日本が実写化すると大体地雷になるんだけど、これはまさにその地雷だった。
主演からして父さんはやばいと思ったらしい。
母さんもあまりこういう男性は嫌いだったそうだ。
主演の俳優からしてすでにやばさが凄かったのだけど出演している俳優さんに父さんの気になる人がいるから見ていた。
父さんの予感は必ず当たる。
やっぱり主演の俳優が地雷だった。
「何をやらせても役になり切れてない」
父さんはそう酷評していた。
そして原作を完全に無視して再構築したストーリー。
日本中で映画ファンは共通した感想があるらしい。
「あの事務所のタレントが主演の作品は大体酷い」
地球を救うために旅立った艦内で何の前触れもなく主演女優との性行為をもくろむ主演俳優。
父さんも僕と同じ事を思ったらしい。
「無重力でするってどうなるんだろ?」
重力があるという事は多分ないだろう。
二人とも抱き合いながら宙を泳いでいたから。
ぽかっ
瞳子に小突かれた。
「冬吾さんはそういう事を気にしなくていいから」
父さんを見ると父さんも母さんに小突かれていた。
面白かったのは父さんが好きだという俳優がセリフを言ってるところ。
昔の刑事ドラマの役に似ていると父さんから聞いた。
2時間近くの映画で面白いのがその俳優だけだという酷い内容。
しかも地球に帰って来て主役は戦艦と一緒に爆発するんだけど、ヒロインがたった一回の性行為で妊娠したらしい。
天音が見ていたらきっと激怒しているだろうな。
父さんに孫を見せたいと必死に子作りを頑張っていたから。
適当にレビューを眺めていたら「この監督は映画監督をしてはいけない」と書かれていた。
しかしそんなつまらない映画をじっと見ていたの雪だった。
結は変身物がが好きらしいけど雪はSFの方が好きなのかな?
瞳子が耳打ちしてた。
「あの子ラブシーンの所に興味があったみたい」
瞳子もこの主演俳優が好きだったから一緒に見ていたらしい。
やっぱり誠司郎の事気にしているのかな?
しかし雪は違う事を父さんに聞いていた。
「本で見たんだけど、今確認されている宇宙の中で生命が住める星なんてないって書いてたけど違うの?」
雪が子供だからだろう。
そんな事を言っていたら今頃月は人で埋め尽くされているはずだ。
主人公のロボットを作っている裏側の工場でライバルのロボットを作るくらいなんだから。
しかし企業というのは月までいっても悪者のイメージが拭えないらしい。
企業の経営者は悪役というイメージがあるんだろうな。
地元の企業の経営者である天は社長室でゲームして繭に怒られてるそうだけど。
それはおいておいて父さんは結の質問にどう答えるのだろう?
自分ならどう返事するか考えながら様子を見ていた。
「雪は本を読むのが好きなんだね。小さいのにすごいね」
「うん。何をやればいいのか分からなくて」
あの子がとにかく知識を欲しているので瞳子が仕事の帰りに図鑑とかを買って雪に与えるらしい。
そして父さんは逆に雪に聞いていた。
「お爺さんが思うには雪は少し発想が足りないんじゃないかな」
「どういう事?」
「雪は生命が存在する可能性と言うのを何を根拠に言っているの?」
人間が住める星の条件は3つあるらしい。
地球には水と空気と太陽の光があるから生きていける。
だけどその条件が揃った星はそんなにない。
だから火星にその環境を作ろうとしている。
だけどそれはあくまでも”地球上での生命が住む条件”だ。
生命が住む条件がじゃない。
ひょっとしたら人間が住めなくても何かが住んでいる可能性はいくらでもある。
自分が無理でも他の生物なら住める。
さっきの映画でもやっていた。
敵は他の星に住んでいた。
それも人間が住むには過酷するほどの環境でだ。
今観た映画ではそれがちゃんと描写されていない。
あの映画で考察するなら瞳子や母さんにアニメ版のDVDを見てみた方が良い。
相手の理由というのも知ることが出来る。
生き残るという事は実はそんなにたやすいことじゃない。
相手がどんな理由があってそれが共感できる理由だったとしても、自分が生き残るために、大切な人を守るために生き残らなければならない。
「……つまり自分と全く違う生き物がいるって事?」
「夏にライオンや象を見ただろ?」
ライオン達だって野生の動物は全部生き残りをかけて戦っているんだ。
「そっかぁ、さすがじいじだね」
理解してしまう雪の方が凄い気がするけど。
「雪も同じだよ」
「どういう意味?」
「雪はまだ生まれて間もない子供だ。多分雪は降りかかる困難を自分で排除できる力がある」
だから恐れる事なんてほとんどないはずだ。
だけど雪は無意識に恐れていることがある。
それはいつか克服しなければならない。
それをちゃんと正面で受け止めなければならない。
運命を恐れる者に女神は微笑まない。
「……それは何?」
「そのうち気づくよ」
それが雪に欠けているもの。
それを克服できた雪は誰にも負けない。
自分にも負けない。
だから自分自身で見出してみせなさい。
「……わかった。ありがとう。もう寝るね」
「うん、おやすみなさい」
父さんが言うと雪は部屋に戻る。
「上手くいったのでしょうか?」
母さんじゃなくても僕でも気になった。
「あの子は凄く頭がいい。あれなら馬鹿な真似は絶対にしないよ」
それさえ克服出来たら後は大丈夫だろう。
あの子の行く手を阻む物なんてない。
それは片桐家の男子全てに言える事。
父さんには少しだけ結の気持ちが分かったらしい。
あのラブシーンを見ている時間は違いなく誠司郎を意識していた。
本人でも自覚がないだろうけど。
ただ……。
「優秀過ぎるから気づくのに時間がかかるかもしれない」
自分はいつだって何かが足りないと自覚している。
それは僕でもなかった。
だから悩み続けるだろう。
それを教えてやれるのはただ一人だけ。
だから今はそっとしておいてやろう。
そしてここから雪はひたすら悩んでいくことになる。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる