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あなたといるということ
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(1)
「ねえ、椿」
「どうしたの結花?」
「昨夜お風呂入った?」
「今日入るからいいやって入ってない」
「……それって女子としてどうなの?」
隣に座っている山本結花がそう言った。
「女子だからお風呂に入らないといけないなんてくだらないルール誰が決めたの?」
「ルールっていうかさ、男子に見られてるとか気にしないの?」
臭いとか気にならない?
「それを言ったら毎日じゃない」
毎日体臭嗅いで来る変態に気を使う必要なんてない。
「まさかとは思うけど……」
結花が聞こうとしてる事は愛莉がいつも聞いてくるからわかった。
「うん、月に1度だけ入ってる」
「……どうして?」
「潤子が晶とそういう取り決めをしたらしいから」
潤子とは村井潤子。
村井泉の娘。
晶とは酒井晶。
潤子の祖母。
地元で晶を困らせられるのは泉や潤子だけだと聞いていた。
その晶も潤子がお風呂に入らないから注意したらしい。
「髪がべたべたして気持ち悪いでしょ?」
「だったら髪切るよ」
「どのくらい切るつもりなの?」
「丸刈りなら大丈夫でしょ?」
「……潤子はお洒落したくないの?」
「小学生がお洒落なんて知れてるでしょ?」
それにウィッグ被ったら問題ないでしょ?
「お願いだからせめて月に1回くらいは入らない?」
女子だから不潔のままだとまずい事もある。
そう言って晶が頭を下げて約束したらしい。
そんな母親を初めてみたと泉が言ってたそうだ。
で、そんな話を晶から聞いた私の祖母の愛莉が私といとこの松原冬華に同じ約束を持ち掛けた。
私の母親の佐原茜や松原冬莉も懸命に説得していた。
「月に一回風呂に入ればいいのね?」
「出来るかな?」
「いいよ。そのくらいなら大丈夫」
そう言って約束した。
風呂に入ると言ったけど髪を洗うとは約束していない。
デリケートゾーンだけは綺麗しておけと言われたけど、そんなのを母さんが確認するわけがない。
父さんもそんな残念な大人じゃないから誰にもバレるはずがない。
ただ風呂に入っておけばいいだけ。
髪を洗えと簡単に言うけど男子とは事情が違う。
髪を洗ったら髪が濡れる。
当然髪を乾かさなければならない。
男子の2倍くらい時間を使う事になる。
「そんなの自然乾燥でいいでしょ?」
茜はそう言っていたけど「そんなわけありません!」と愛莉に怒られていた。
まあ、私の入浴なんてどうでもいい。
今日はさすがに一人で部屋で待っているのも暇だから風呂に入るようにしていた。
茜がちゃんと着替えを用意しているかどうか検査してた。
「小学生だから私服でしょ。さすがに同じ服2日も着てたらばれるよ」
「じゃあ、下着は関係ないね」
そんなの教師が検査したらすぐに問題になる。
だけど別の問題があった。
「茜は自分の娘に何を教えてるの!」
そう言って愛莉と茜が喧嘩してた。
「中学生になったら制服だから大丈夫」
「いい加減にしなさい!」
父さんがこの問題に介入してくることはまずない。
だから父さんは悩んでじいじに相談していた。
「茜の娘だからね……。大変なのはこれからだよ」
「どうしてですか?」
茜は中学生くらいになると下着姿でじいじを誘惑しようとしたらしい。
もちろん目的は大ピンチの茜の小遣い。
娘が可愛いのはじいじも同じらしい。
財布を用意しようとしたら愛莉が必ず感づくらしい。
それは天音から理由を聞いていた。
食べ物の話になるとじいじは話が長くなる。
その間に風呂を済ませた愛莉が戻ってくるんだそうだ。
小遣いの無駄遣いを愛莉は叱ったりはしない。
自分の愛する夫を惑わそうとした娘を叱るんだそうだ。
「あまり壱郎に吹き込まないでください」
愛莉がそうじいじに注意したらしい。
茜は色々やらかしてるらしい。
その生活が快的すぎて結婚しても愛莉たちの面倒見るからと家に残ろうとしたらしい。
「今まで家事を一切してこなかった茜がどうやって私達の面倒を見るの!?」
そう言ってその案は却下されたそうだ。
今は冬吾と瞳子が実家に住んでいる。
今まで子供達の育児には手を出さない主義だったじいじが初めて「手伝うよ」と言わせるくらいに危険なのが雪。
私の不衛生な生活なんてどうでもいいくらいに強力な力を持っている。
実際に強いのは片桐結。
当時まだ中学生だった結がFGとの抗争でFGの切り札を全て処分した。
しかも質の悪いことにまだ成長中らしい。
ただでさえ茉莉がいるというのに私や冬華がいる。
「あんまり悩むと禿げるぞ?愛莉」
「そうそう。どうにかなるって」
「天音と茜は私の事を心配する前に娘の教育くらいしっかりしなさい」
で、今日から修学旅行だった。
長崎に一泊二日でいくらしい。
「おみやげはチャンポンな!」
「天音の娘が行くわけじゃないでしょ!」
天音と愛莉が言い合っているとじいじが口を出した。
「天音。父さんは思ったんだけど……」
「どうしたんだパパ?」
「通販で買えば済むんじゃないかなって思ったんだよね」
「冬夜さん!!」
で、茜達も北海道とかならともかく長崎だから荷物になるだけだからいらないと言っていた。
「あのさ……椿」
「どうしたの?」
まだ結花は聞きたい事があるようだった。
「今日は修学旅行だよ?」
「知ってるよ」
「うちの小学校の名物知らないの?」
「……知ってるよ」
なぜか卒業式や修学旅行に告白する男女が多いらしい。
それがどうかしたのだろうか?
「椿は誰かに告白されたいとか、したいとかないの?」
単純に「好きな男子はいないのか?」だろう。
「いない」
出来たらちゃんと風呂に入ろうと思う。
泉はそれで失敗したらしい。
なぜか泉の尻に惚れた育人がパンツを盗んだらしい。
酷い馴れ初めだな。
どうしてそこから結婚までたどり着いたのかが不思議だった。
泉自身もあまり分かっていないらしい。
「そっかぁ~」
「結花はいるの?」
「私達のクラスって結構好物件が揃ってるじゃん」
同級生の男子を物件扱いする小学生もそんなにいないと思うんだけど。
まあ、どの男子でもいいから迷ってるらしい。
しょうがない、私がアドバイスしておこう。
「そんなに考えないでも勝手に告ってくるんじゃないの?」
「それもそうだね」
「2人とも好きな男子はいないのですか?」
後ろの座席にいた如月綺羅が聞いてきた。
綺羅は泉の姉の繭の娘。
繭がしっかり躾けて如月家のご令嬢と言ってもおかしくないくらいおしとやかな女子だった。
ただし怒らせると怖い。
中学生を撃退するくらいの芸当はやってのける。
残念だけど私や双子の兄の昴には無い力だ。
「綺羅はいるの?」
「ええ……ちょっとそれで相談に乗っていただけないかと思いまして」
私に恋の相談は自殺行為じゃないのか?
どうせ原爆資料館なんてどうでもいい所に行くらしいからその時に聞くか。
恋バナをする場所かどうかはおいておこう。
惨たらしい死体の写真とかを見ながら綺羅の相談を聞いていた。
綺羅のお目当ての男の事は楠木桃李。
バスケをやってる元気な子。
あんまり物事を深く考えない少年。
楽しかったら後はどうでもいい。
そんな事を言っていた。
どうして綺羅が気に入ったのか不思議だった。
「お父様に似ているから」
如月天。
綺羅の父親。
如月グループの次期当主にもかかわらずサッカーの代表戦で顔を日の丸にペイントしたりお酒を飲んで暴れて繭を悩ませている旦那。
4大企業の当主は極端に分かれている。
「難しいことは春奈にまかせるっす」
そんな事を平然と言う楠木晴斗や如月天。
それに対して絶対に嫁に逆らう事が出来ない酒井善明や石原大地。
後者はSHのメンバーは大体そうらしい。
SHの現リーダーの片桐空がそうなんだからそれが当然なのだろう。
同じ立場でありながらこうもはっきり分かれるのが不思議だった。
「……と、言うわけなのですがどうしたらいいのかと思いまして」
とりあえず綺羅の理想は父親で、どことなく似ている桃李を気に入ったらしい。
見ているだけで胸が苦しいとか会えない夜が辛いとか女々しいことを聞いていた。
……これ恋愛小説だよね?
私は結花と綺羅と話していた。
そして結論は一つ。
こういうときはストレートに行こう。
勝負はもう始まっている。
まずは長崎観光からだ。
(2)
「なあ、昴?」
「どうした桃李?」
俺達は修学旅行名物の女湯を覗いている男子の様子を眺めながら話していた。
いくらこれが恋愛小説でもあれは自殺願望じゃないのか?
女子小学生の裸に興味を示す変態に恋をする女子がいるわけないだろうに。
少なくとも俺や桃李には無かった。
俺の場合は特別だけど。
「椿!お風呂に入ったら服を着なさい!」
「いいじゃん、エアコンつけてるんだから」
「そうじゃなくてお父さんが目のやり場に困ってるでしょ?」
「私父さんを誘惑できるくらいにはなったかな?」
「椿は小学生の体に興味を持つ変態と付き合いたいの?」
「それもそうだね。でもこれでも結構成長したんだよ?昴はどう思う?」
俺に何を求めているのか分からない妹の椿。
もちろんそんな妹の醜態を他人に言ったりしない。
桃李の姉の亜紀はそんなことなかったらしい。
だから多少は興味を持つのかと思ったけどそうではないみたいだった。
桃李のもっぱらの興味はバスケだった。
ミニバスケで奮闘している。
椿には信じられないみたいだ。
別にスポーツをしている人間を馬鹿にしているわけじゃない。
単にあんなに動き回って汗かいたら風呂に入るのが面倒じゃないのか?
月に1度だけでも風呂に入ると愛莉と約束した椿でも汗をかいたら風呂に入らないとまずいという認識はあるようだ。
だから極力無駄に動くことを嫌う。
日焼けしたくないとかじゃない。
汗をかきたくないからだ。
動かなくても汗をかく夏を嫌う。
服を着るから汗をかくんだと思った椿は家の中では服を着ない。
母さんも同じだったみたいだけど、なぜか父さんには隠し通していたみたいだ。
隠し通せたことが奇跡だと思うんだけど。
母さんと椿の家での凶行は愛莉も手を焼いていた。
で、桃李の話を聞いていた。
「何か気になる事あるのか?」
「今日の自由行動で、気になったことがあってな」
「綺羅の事か?」
「やっぱり昴でも気づくか」
気づくというか椿から聞いたんだけど。
なんでも綺羅は桃李が好きらしい。
そんな悩みを椿にするのは自殺行為なんじゃないかと思ったが、そんな相談を受けたらしい。
そう思うんだったらさっさと言えばいい。
余計な小細工するような年じゃないだろ。
椿はそう言ったらしい。
やっぱり椿に相談することじゃないと思った。
で、すぐに椿からメッセージをもらった。
綺羅と桃李を二人きりの状態を作るように協力しろ。
その場で告白なんて事は普段の綺羅からは想像つかない。
ただ、綺羅にその気があるんだよって素振りを見せるだけでいい。
その効果はあったみたいだ。
「なんか綺羅は俺の事どう思ってるのかな?って思ってさ」
「桃李はどう思ってるんだ?」
「まあ、綺麗な女子だなとは思う」
肉食動物みたいなうちのクラスの女子の中にどうして綺羅がいるのかが理解できないくらいだ。
大体の男子は綺羅に好意を持っていた。
一方椿は「あいつ化粧とか興味ないのかな?」と言われるくらいだ。
化粧どころか風呂すら入らねーよと言いたかったけど妹の名誉の為に黙っていた。
しかしそれも無駄に終わる。
悲鳴しか聞こえないと思っていた女湯から小泉詩織の大声が聞こえた。
「椿、シャンプー忘れたなら私の貸してあげようか?」
「持って来てるよ」
「じゃあなんでしないの?」
「汚れ落とすだけなら別にいらないでしょ?」
同じ理由でボディソープすら使わないのを母さんが悩んでいた。
「桃李がその気があるなら綺羅に告って見たらどうだ?」
話をそらすことにした。
「でも、俺の勘違いかもしれないじゃないか」
「あのさ、世の中は何をやっても後悔するんだ」
どうしてあの時しなかった?
どうしてあんなことをしてしまった?
どっちにしろ後悔するんだ。
だったらやる事やった方が良いんじゃないか?
母さんの片桐家では教訓がある。
人生「急にボールがきたので」じゃ済まされない。
チャンスが来たと思ったら躊躇わすに飛び出せ。
失敗してもいい。
その勇気はいつかきっと報われるから。
まあ、桃李の場合間違いないと思うけど。
「わ、わかったよ。でもいつすればいいんだ?」
「その話なんだけどさ。風呂あがったらちょっと付き合ってくれないか?」
「何かあるのか?」
「まあな」
「わかった」
「へえ、昴達でも女子が気になったりするのか?」
山本太一がやって来た。
「まあ、小学6年生にもなればそのくらいいるだろ?」
4年生くらいから男と女の意識くらいするらしい。
この世界では幼稚園児でも恋するらしいからな。
「太一もいるなら相談乗ってやるよ」
「相談したくて来たんだ」
へえ、太一でもそういう人いるんだ。
誰だろう?
まさかの事を聞いてしまった。
「昴さ、椿に誰か好きな男子いるとか聞いたことあるか?」
「特にないけど……ってまさかお前」
「ああ、椿の事が気になってさ」
いつも元気な太一がそう言ってた。
一体どうしてそうなったんだろ?
「椿はいつも元気だろ?だから一緒に遊べたら良いなって思っててさ」
椿に彼氏か……。
それは難しいな。
あいつに太一の事を気にしているかどうかは知らないけど、「恋人作ったらやっぱり毎日風呂入らないといけないかな?」と母さんと真面目に相談してたからな。
「そんなのデートの前日だけ入っておけばいいし、面倒な時は香水かけておけば問題ないよ」
母さんはそう答えて愛莉にバレて怒られていた。
愛莉だけじゃなく父さんも苦言を言っていた。
「頼むからそう言う話を俺の前でするのは止めてくれ」
「それもそうだね。じゃ、椿の部屋でしよっか」
そういう問題じゃない気がするけど。
「で、どうするんだ?俺が太一の問題に答えたら後に引けなくなるぞ?」
どっちにしろ動くしかないんだ。
その覚悟があるなら教えてやる。
「いや、聞かなくてもその覚悟はしてたんだ」
卒業式の日にしようと思っていたらしい。
今でもいいじゃないかと思ったけど、本人がそう言ってるならそうすればいいだろう。
椿にとっても都合がいい。
その間に何か奇跡が起きて風呂に入るようになるかもしれない。
ま、いいや。
太一に教えてやることにした。
「あいつにそういう対象の男子はいないよ」
むしろ男子と付き合う事をまだいいと思ってる。
「だってさすがに彼氏いるのに風呂入らないのはまずいかなって思うんだよね」
「そのくらいで幻滅するような彼氏なんてどのみち長続きしないから大丈夫だよ」
母さんがそう言って愛莉に怒られていた。
「そっか」
「だけどあまり悠長な事考えない方がいいぞ」
気がつけば付き合いだすカップルが多いんだ。
椿だってどんな気まぐれが起きるかわからない。
「わかってるんだけどな」
残り僅かな小学校生活を気まずい空気にしたくないというのが太一の考え。
太一は知らないのだろうか?
どうせ中学校でも同じクラスだ。
そんなに変わらないと。
風呂を出ると俺と桃李は椿と約束していた場所に行く。
俺達の方が先についていた。
まあ、当然だろう。
椿だけならともかく綺羅や結花が一緒なんだから。
「ごめん、遅れた」
「だからコンディショナーなんて面倒な事しなきゃよかったのに」
椿は髪を洗う事すら嫌うからな。
そんな実態太一に見られなくてよかったな。
「あの、なんで如月さん達が?」
桃李が俺に聞いてきた。
「だから修学旅行の恒例イベント」
「待て、お前俺が綺羅の事好きなのばらしたのか?」
お前が今自爆したよ。
「そうだったんだ。じゃあ、綺羅。もう迷わなくていいね」
結花が言うと綺羅が桃李に思いを伝えた。
「私は桃李君の事が好きです。お付き合いしていただけませんか?」
突然の告白に驚く桃李。
「今お前が言ったことをちゃんと言え。それで終わるんだ」
こんなの賭けでも何でもない出来レースだ。
ここで逃げたらただのチキンだぞ。
勝ちが見えてるんだ。
しっかりゴールしろ。
「お、俺も如月さんの事が気になってて」
でも桃李はバスケとかの事しか考えてないし如月家のお嬢さんなんかと釣り合いとれてないと余計な事を言う。
そんなもの気にする小学生の恋愛なんてないだろ。
大体お前だって白鳥グループの家系じゃないか。
「私の父はそう言うのを良くも悪くも気にしない方なんです」
自分の身分なんて全く気にしない。
自由奔放な父親が好きだった。
だからそんな父親にそっくりな桃李が好きだと綺羅が言う。
「だから桃李君も私を選んでいただけませんか?」
「お、俺でよければ。よろしくお願いします」
そう言って握手をしていた。
それを見ていた椿が自由時間少しだけあるしちょっと二人にしてあげようというので、俺達は二人を残して部屋に戻る。
その時に椿に聞いてみた。
「椿は好きな男子とかいないのか?」
「いない」
「なんで?」
予想は着くけどなんとなく聞いてみた。
「あのさ、私達まだ小学生だよ?恋人作って何するの?」
精々キスくらいだ。
小学生の裸に興味を示す変態と付き合うつもりはない。
だから今はまだ友達で十分。
いつか友達以上の関係になりたいという気持ちが生まれるかもしれない。
その時に伝えたらいいだけの話だ。
「昴は好きな女子いるの?」
結花が聞いてきた。
「正直好きって気持ちがまだわからないんだ」
「なるほどね」
そう言って結花はくすっと笑っていた。
翌日テーマパークの自由時間は2人は仲良く散策していた。
そんな2人を見てると椿はああは言ってたけど、俺も恋人が欲しいなとなんとなく考えていた。
本当に出来るとは思ってもみなかったけど、それはまだ先の話。
「ねえ、椿」
「どうしたの結花?」
「昨夜お風呂入った?」
「今日入るからいいやって入ってない」
「……それって女子としてどうなの?」
隣に座っている山本結花がそう言った。
「女子だからお風呂に入らないといけないなんてくだらないルール誰が決めたの?」
「ルールっていうかさ、男子に見られてるとか気にしないの?」
臭いとか気にならない?
「それを言ったら毎日じゃない」
毎日体臭嗅いで来る変態に気を使う必要なんてない。
「まさかとは思うけど……」
結花が聞こうとしてる事は愛莉がいつも聞いてくるからわかった。
「うん、月に1度だけ入ってる」
「……どうして?」
「潤子が晶とそういう取り決めをしたらしいから」
潤子とは村井潤子。
村井泉の娘。
晶とは酒井晶。
潤子の祖母。
地元で晶を困らせられるのは泉や潤子だけだと聞いていた。
その晶も潤子がお風呂に入らないから注意したらしい。
「髪がべたべたして気持ち悪いでしょ?」
「だったら髪切るよ」
「どのくらい切るつもりなの?」
「丸刈りなら大丈夫でしょ?」
「……潤子はお洒落したくないの?」
「小学生がお洒落なんて知れてるでしょ?」
それにウィッグ被ったら問題ないでしょ?
「お願いだからせめて月に1回くらいは入らない?」
女子だから不潔のままだとまずい事もある。
そう言って晶が頭を下げて約束したらしい。
そんな母親を初めてみたと泉が言ってたそうだ。
で、そんな話を晶から聞いた私の祖母の愛莉が私といとこの松原冬華に同じ約束を持ち掛けた。
私の母親の佐原茜や松原冬莉も懸命に説得していた。
「月に一回風呂に入ればいいのね?」
「出来るかな?」
「いいよ。そのくらいなら大丈夫」
そう言って約束した。
風呂に入ると言ったけど髪を洗うとは約束していない。
デリケートゾーンだけは綺麗しておけと言われたけど、そんなのを母さんが確認するわけがない。
父さんもそんな残念な大人じゃないから誰にもバレるはずがない。
ただ風呂に入っておけばいいだけ。
髪を洗えと簡単に言うけど男子とは事情が違う。
髪を洗ったら髪が濡れる。
当然髪を乾かさなければならない。
男子の2倍くらい時間を使う事になる。
「そんなの自然乾燥でいいでしょ?」
茜はそう言っていたけど「そんなわけありません!」と愛莉に怒られていた。
まあ、私の入浴なんてどうでもいい。
今日はさすがに一人で部屋で待っているのも暇だから風呂に入るようにしていた。
茜がちゃんと着替えを用意しているかどうか検査してた。
「小学生だから私服でしょ。さすがに同じ服2日も着てたらばれるよ」
「じゃあ、下着は関係ないね」
そんなの教師が検査したらすぐに問題になる。
だけど別の問題があった。
「茜は自分の娘に何を教えてるの!」
そう言って愛莉と茜が喧嘩してた。
「中学生になったら制服だから大丈夫」
「いい加減にしなさい!」
父さんがこの問題に介入してくることはまずない。
だから父さんは悩んでじいじに相談していた。
「茜の娘だからね……。大変なのはこれからだよ」
「どうしてですか?」
茜は中学生くらいになると下着姿でじいじを誘惑しようとしたらしい。
もちろん目的は大ピンチの茜の小遣い。
娘が可愛いのはじいじも同じらしい。
財布を用意しようとしたら愛莉が必ず感づくらしい。
それは天音から理由を聞いていた。
食べ物の話になるとじいじは話が長くなる。
その間に風呂を済ませた愛莉が戻ってくるんだそうだ。
小遣いの無駄遣いを愛莉は叱ったりはしない。
自分の愛する夫を惑わそうとした娘を叱るんだそうだ。
「あまり壱郎に吹き込まないでください」
愛莉がそうじいじに注意したらしい。
茜は色々やらかしてるらしい。
その生活が快的すぎて結婚しても愛莉たちの面倒見るからと家に残ろうとしたらしい。
「今まで家事を一切してこなかった茜がどうやって私達の面倒を見るの!?」
そう言ってその案は却下されたそうだ。
今は冬吾と瞳子が実家に住んでいる。
今まで子供達の育児には手を出さない主義だったじいじが初めて「手伝うよ」と言わせるくらいに危険なのが雪。
私の不衛生な生活なんてどうでもいいくらいに強力な力を持っている。
実際に強いのは片桐結。
当時まだ中学生だった結がFGとの抗争でFGの切り札を全て処分した。
しかも質の悪いことにまだ成長中らしい。
ただでさえ茉莉がいるというのに私や冬華がいる。
「あんまり悩むと禿げるぞ?愛莉」
「そうそう。どうにかなるって」
「天音と茜は私の事を心配する前に娘の教育くらいしっかりしなさい」
で、今日から修学旅行だった。
長崎に一泊二日でいくらしい。
「おみやげはチャンポンな!」
「天音の娘が行くわけじゃないでしょ!」
天音と愛莉が言い合っているとじいじが口を出した。
「天音。父さんは思ったんだけど……」
「どうしたんだパパ?」
「通販で買えば済むんじゃないかなって思ったんだよね」
「冬夜さん!!」
で、茜達も北海道とかならともかく長崎だから荷物になるだけだからいらないと言っていた。
「あのさ……椿」
「どうしたの?」
まだ結花は聞きたい事があるようだった。
「今日は修学旅行だよ?」
「知ってるよ」
「うちの小学校の名物知らないの?」
「……知ってるよ」
なぜか卒業式や修学旅行に告白する男女が多いらしい。
それがどうかしたのだろうか?
「椿は誰かに告白されたいとか、したいとかないの?」
単純に「好きな男子はいないのか?」だろう。
「いない」
出来たらちゃんと風呂に入ろうと思う。
泉はそれで失敗したらしい。
なぜか泉の尻に惚れた育人がパンツを盗んだらしい。
酷い馴れ初めだな。
どうしてそこから結婚までたどり着いたのかが不思議だった。
泉自身もあまり分かっていないらしい。
「そっかぁ~」
「結花はいるの?」
「私達のクラスって結構好物件が揃ってるじゃん」
同級生の男子を物件扱いする小学生もそんなにいないと思うんだけど。
まあ、どの男子でもいいから迷ってるらしい。
しょうがない、私がアドバイスしておこう。
「そんなに考えないでも勝手に告ってくるんじゃないの?」
「それもそうだね」
「2人とも好きな男子はいないのですか?」
後ろの座席にいた如月綺羅が聞いてきた。
綺羅は泉の姉の繭の娘。
繭がしっかり躾けて如月家のご令嬢と言ってもおかしくないくらいおしとやかな女子だった。
ただし怒らせると怖い。
中学生を撃退するくらいの芸当はやってのける。
残念だけど私や双子の兄の昴には無い力だ。
「綺羅はいるの?」
「ええ……ちょっとそれで相談に乗っていただけないかと思いまして」
私に恋の相談は自殺行為じゃないのか?
どうせ原爆資料館なんてどうでもいい所に行くらしいからその時に聞くか。
恋バナをする場所かどうかはおいておこう。
惨たらしい死体の写真とかを見ながら綺羅の相談を聞いていた。
綺羅のお目当ての男の事は楠木桃李。
バスケをやってる元気な子。
あんまり物事を深く考えない少年。
楽しかったら後はどうでもいい。
そんな事を言っていた。
どうして綺羅が気に入ったのか不思議だった。
「お父様に似ているから」
如月天。
綺羅の父親。
如月グループの次期当主にもかかわらずサッカーの代表戦で顔を日の丸にペイントしたりお酒を飲んで暴れて繭を悩ませている旦那。
4大企業の当主は極端に分かれている。
「難しいことは春奈にまかせるっす」
そんな事を平然と言う楠木晴斗や如月天。
それに対して絶対に嫁に逆らう事が出来ない酒井善明や石原大地。
後者はSHのメンバーは大体そうらしい。
SHの現リーダーの片桐空がそうなんだからそれが当然なのだろう。
同じ立場でありながらこうもはっきり分かれるのが不思議だった。
「……と、言うわけなのですがどうしたらいいのかと思いまして」
とりあえず綺羅の理想は父親で、どことなく似ている桃李を気に入ったらしい。
見ているだけで胸が苦しいとか会えない夜が辛いとか女々しいことを聞いていた。
……これ恋愛小説だよね?
私は結花と綺羅と話していた。
そして結論は一つ。
こういうときはストレートに行こう。
勝負はもう始まっている。
まずは長崎観光からだ。
(2)
「なあ、昴?」
「どうした桃李?」
俺達は修学旅行名物の女湯を覗いている男子の様子を眺めながら話していた。
いくらこれが恋愛小説でもあれは自殺願望じゃないのか?
女子小学生の裸に興味を示す変態に恋をする女子がいるわけないだろうに。
少なくとも俺や桃李には無かった。
俺の場合は特別だけど。
「椿!お風呂に入ったら服を着なさい!」
「いいじゃん、エアコンつけてるんだから」
「そうじゃなくてお父さんが目のやり場に困ってるでしょ?」
「私父さんを誘惑できるくらいにはなったかな?」
「椿は小学生の体に興味を持つ変態と付き合いたいの?」
「それもそうだね。でもこれでも結構成長したんだよ?昴はどう思う?」
俺に何を求めているのか分からない妹の椿。
もちろんそんな妹の醜態を他人に言ったりしない。
桃李の姉の亜紀はそんなことなかったらしい。
だから多少は興味を持つのかと思ったけどそうではないみたいだった。
桃李のもっぱらの興味はバスケだった。
ミニバスケで奮闘している。
椿には信じられないみたいだ。
別にスポーツをしている人間を馬鹿にしているわけじゃない。
単にあんなに動き回って汗かいたら風呂に入るのが面倒じゃないのか?
月に1度だけでも風呂に入ると愛莉と約束した椿でも汗をかいたら風呂に入らないとまずいという認識はあるようだ。
だから極力無駄に動くことを嫌う。
日焼けしたくないとかじゃない。
汗をかきたくないからだ。
動かなくても汗をかく夏を嫌う。
服を着るから汗をかくんだと思った椿は家の中では服を着ない。
母さんも同じだったみたいだけど、なぜか父さんには隠し通していたみたいだ。
隠し通せたことが奇跡だと思うんだけど。
母さんと椿の家での凶行は愛莉も手を焼いていた。
で、桃李の話を聞いていた。
「何か気になる事あるのか?」
「今日の自由行動で、気になったことがあってな」
「綺羅の事か?」
「やっぱり昴でも気づくか」
気づくというか椿から聞いたんだけど。
なんでも綺羅は桃李が好きらしい。
そんな悩みを椿にするのは自殺行為なんじゃないかと思ったが、そんな相談を受けたらしい。
そう思うんだったらさっさと言えばいい。
余計な小細工するような年じゃないだろ。
椿はそう言ったらしい。
やっぱり椿に相談することじゃないと思った。
で、すぐに椿からメッセージをもらった。
綺羅と桃李を二人きりの状態を作るように協力しろ。
その場で告白なんて事は普段の綺羅からは想像つかない。
ただ、綺羅にその気があるんだよって素振りを見せるだけでいい。
その効果はあったみたいだ。
「なんか綺羅は俺の事どう思ってるのかな?って思ってさ」
「桃李はどう思ってるんだ?」
「まあ、綺麗な女子だなとは思う」
肉食動物みたいなうちのクラスの女子の中にどうして綺羅がいるのかが理解できないくらいだ。
大体の男子は綺羅に好意を持っていた。
一方椿は「あいつ化粧とか興味ないのかな?」と言われるくらいだ。
化粧どころか風呂すら入らねーよと言いたかったけど妹の名誉の為に黙っていた。
しかしそれも無駄に終わる。
悲鳴しか聞こえないと思っていた女湯から小泉詩織の大声が聞こえた。
「椿、シャンプー忘れたなら私の貸してあげようか?」
「持って来てるよ」
「じゃあなんでしないの?」
「汚れ落とすだけなら別にいらないでしょ?」
同じ理由でボディソープすら使わないのを母さんが悩んでいた。
「桃李がその気があるなら綺羅に告って見たらどうだ?」
話をそらすことにした。
「でも、俺の勘違いかもしれないじゃないか」
「あのさ、世の中は何をやっても後悔するんだ」
どうしてあの時しなかった?
どうしてあんなことをしてしまった?
どっちにしろ後悔するんだ。
だったらやる事やった方が良いんじゃないか?
母さんの片桐家では教訓がある。
人生「急にボールがきたので」じゃ済まされない。
チャンスが来たと思ったら躊躇わすに飛び出せ。
失敗してもいい。
その勇気はいつかきっと報われるから。
まあ、桃李の場合間違いないと思うけど。
「わ、わかったよ。でもいつすればいいんだ?」
「その話なんだけどさ。風呂あがったらちょっと付き合ってくれないか?」
「何かあるのか?」
「まあな」
「わかった」
「へえ、昴達でも女子が気になったりするのか?」
山本太一がやって来た。
「まあ、小学6年生にもなればそのくらいいるだろ?」
4年生くらいから男と女の意識くらいするらしい。
この世界では幼稚園児でも恋するらしいからな。
「太一もいるなら相談乗ってやるよ」
「相談したくて来たんだ」
へえ、太一でもそういう人いるんだ。
誰だろう?
まさかの事を聞いてしまった。
「昴さ、椿に誰か好きな男子いるとか聞いたことあるか?」
「特にないけど……ってまさかお前」
「ああ、椿の事が気になってさ」
いつも元気な太一がそう言ってた。
一体どうしてそうなったんだろ?
「椿はいつも元気だろ?だから一緒に遊べたら良いなって思っててさ」
椿に彼氏か……。
それは難しいな。
あいつに太一の事を気にしているかどうかは知らないけど、「恋人作ったらやっぱり毎日風呂入らないといけないかな?」と母さんと真面目に相談してたからな。
「そんなのデートの前日だけ入っておけばいいし、面倒な時は香水かけておけば問題ないよ」
母さんはそう答えて愛莉にバレて怒られていた。
愛莉だけじゃなく父さんも苦言を言っていた。
「頼むからそう言う話を俺の前でするのは止めてくれ」
「それもそうだね。じゃ、椿の部屋でしよっか」
そういう問題じゃない気がするけど。
「で、どうするんだ?俺が太一の問題に答えたら後に引けなくなるぞ?」
どっちにしろ動くしかないんだ。
その覚悟があるなら教えてやる。
「いや、聞かなくてもその覚悟はしてたんだ」
卒業式の日にしようと思っていたらしい。
今でもいいじゃないかと思ったけど、本人がそう言ってるならそうすればいいだろう。
椿にとっても都合がいい。
その間に何か奇跡が起きて風呂に入るようになるかもしれない。
ま、いいや。
太一に教えてやることにした。
「あいつにそういう対象の男子はいないよ」
むしろ男子と付き合う事をまだいいと思ってる。
「だってさすがに彼氏いるのに風呂入らないのはまずいかなって思うんだよね」
「そのくらいで幻滅するような彼氏なんてどのみち長続きしないから大丈夫だよ」
母さんがそう言って愛莉に怒られていた。
「そっか」
「だけどあまり悠長な事考えない方がいいぞ」
気がつけば付き合いだすカップルが多いんだ。
椿だってどんな気まぐれが起きるかわからない。
「わかってるんだけどな」
残り僅かな小学校生活を気まずい空気にしたくないというのが太一の考え。
太一は知らないのだろうか?
どうせ中学校でも同じクラスだ。
そんなに変わらないと。
風呂を出ると俺と桃李は椿と約束していた場所に行く。
俺達の方が先についていた。
まあ、当然だろう。
椿だけならともかく綺羅や結花が一緒なんだから。
「ごめん、遅れた」
「だからコンディショナーなんて面倒な事しなきゃよかったのに」
椿は髪を洗う事すら嫌うからな。
そんな実態太一に見られなくてよかったな。
「あの、なんで如月さん達が?」
桃李が俺に聞いてきた。
「だから修学旅行の恒例イベント」
「待て、お前俺が綺羅の事好きなのばらしたのか?」
お前が今自爆したよ。
「そうだったんだ。じゃあ、綺羅。もう迷わなくていいね」
結花が言うと綺羅が桃李に思いを伝えた。
「私は桃李君の事が好きです。お付き合いしていただけませんか?」
突然の告白に驚く桃李。
「今お前が言ったことをちゃんと言え。それで終わるんだ」
こんなの賭けでも何でもない出来レースだ。
ここで逃げたらただのチキンだぞ。
勝ちが見えてるんだ。
しっかりゴールしろ。
「お、俺も如月さんの事が気になってて」
でも桃李はバスケとかの事しか考えてないし如月家のお嬢さんなんかと釣り合いとれてないと余計な事を言う。
そんなもの気にする小学生の恋愛なんてないだろ。
大体お前だって白鳥グループの家系じゃないか。
「私の父はそう言うのを良くも悪くも気にしない方なんです」
自分の身分なんて全く気にしない。
自由奔放な父親が好きだった。
だからそんな父親にそっくりな桃李が好きだと綺羅が言う。
「だから桃李君も私を選んでいただけませんか?」
「お、俺でよければ。よろしくお願いします」
そう言って握手をしていた。
それを見ていた椿が自由時間少しだけあるしちょっと二人にしてあげようというので、俺達は二人を残して部屋に戻る。
その時に椿に聞いてみた。
「椿は好きな男子とかいないのか?」
「いない」
「なんで?」
予想は着くけどなんとなく聞いてみた。
「あのさ、私達まだ小学生だよ?恋人作って何するの?」
精々キスくらいだ。
小学生の裸に興味を示す変態と付き合うつもりはない。
だから今はまだ友達で十分。
いつか友達以上の関係になりたいという気持ちが生まれるかもしれない。
その時に伝えたらいいだけの話だ。
「昴は好きな女子いるの?」
結花が聞いてきた。
「正直好きって気持ちがまだわからないんだ」
「なるほどね」
そう言って結花はくすっと笑っていた。
翌日テーマパークの自由時間は2人は仲良く散策していた。
そんな2人を見てると椿はああは言ってたけど、俺も恋人が欲しいなとなんとなく考えていた。
本当に出来るとは思ってもみなかったけど、それはまだ先の話。
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