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1stSEASON
クラス替え。揺らぐ気持ち
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始業式。
久しぶりの学校だ。
「冬夜君おはよう」
当然眠い。
愛莉は何を思ったのか、耳元に顔を近づけ、耳の裏に息を吹きかける。
「○▼※△☆▲※◎★●!?」
僕は飛び起きる。
「あ、意外とこれで起きるんだ?」
色々手を変えてくるな。
「下で待ってるね」
もう慣れたのか。すぐに部屋を出る。
寝ぼけ眼で起きると着替えを始める。
着替えが終わると、下に降りる。
カンナも着ていた。
誠は……朝練か。
「おっす!」
「……おはよう」
挨拶するカンナ。
朝から元気良いなあ。
欠伸する僕
「なんだよ!今日から3年生だぞ!しっかりしろよ」
カンナは元気だな。
「別に何も変わらないよ」
「とりあえず準備した方がいいんじゃない?」
そう言って時計を指さす愛莉。
まずい!
本当に何も変わってない。
急いで準備して家を出る。
3年生。中学最後の年。
と、いっても何も変わらない。
年を一つとったくらいだ。
あとは……本格的に受験に備えないといけないくらいか。
憂鬱だ。
しかし2人はそんな事は意にも介してないらしい。
キャッキャと話をしている。
あ、変わったことがある。
普通に腕を組んで歩いていること。
去年の僕にくらべれば雲泥の差だ。
愛莉も恥ずかしげもなくくっついてくる。
春休み
何もなかった。
相変わらずの勉強の日々。
めずらしく愛莉が「どこか行きたい~」と言いださなかった。
カンナも珍しく勉強に必死になってた。
やっぱ受験を意識してるのだろうか?
「……ね?」
「え?」
「だから、また同じクラスだといいね!って言ったの!?」
「相変わらずぼーっとしてるんだからぁ~」と愛莉は頬を膨らませる。
「そ、そうだな」
それがあった。
クラス替え。
1年2年の時は同じクラスだった。
3年まで一緒だったら出来過ぎだよな。
……神様お願いします。
日頃の信心が足らなかったようだ。
結果を言おう。
僕とカンナと誠は同じクラスだった。
愛莉だけ……1組だった。
僕たちは2組。
愛莉の表情が陰る。
「ま、しょうがねーよな。こればっかりは。で、誰が一緒なんだ?」
愛莉の心配はそれだけじゃなかったみたいだ。
仲摩と佐伯が一緒のクラスだった。
「どうやら学力でクラス分けしたみたいだね」
仲摩がこっちを見つけたらしくやってきた。
僕もカンナもあまり良い印象をもってない。
2年の時ぶん殴った相手。
愛莉は何も答えない。
「やっぱり君たちと遠坂さんは済む世界が違うんだよ」
「この野郎……」
掴みかかろうとするカンナを制して愛莉は言う。
「私たちに関わらないでって言ったはずだよ。頭が良い割には物覚えが悪いんだね」
めっちゃ怒ってる時の声だ。
愛莉もこの男が嫌いらしい。
「遠坂さんもいずれ気付くよ、こいつらと一緒に居ることの無意味さを」
「また叩かれないとわからないの?」
どこまでも冷たい愛莉の言葉。
気圧されたのか仲摩は立ち去る。
「あんなのと一緒なのか。大変だな愛莉」
「それもそうなんだけど……」
そう言って愛莉は僕たちを見る。
ん?
「……私を置いて帰ったりしないよね?」
なるほど、カンナと二人になるのが嫌なわけか。
「ちゃんと廊下で待っててやるよ」
僕はそう言って愛莉の肩をぽんと叩く。
「ほんと?」
愛莉の表情が明るくなる。
「クラスが違うだけだろ?気持ちはいつもそばにいるから」
そう言うと愛莉が抱き着く。
一応言っとく。
ここは学校の玄関前で、クラス表を見ようと大勢の生徒が詰めかけてる。
当然こっちに気づいた生徒が冷やかしの声をかけてくるわけで。
でも、そんなの気にしなくなっていた。
下手に隠すと困るのは愛莉だ。
なら、周りに周知された方が良い。
その方が僕も気が楽だ。
もちろん敢えて見せびらかす必要もないんだが。
その日から学校が終わるとお互いに教室を覗いて終わってないか様子を見て待っていた。
昼休みも給食を食べた後中庭なんかで話をしていた。
その時は誠もいっしょだった。
授業の合間の休み時間はさすがにクラスメートと話をしていた。
と、いってもカンナ、誠とほとんど一緒だったが。
そんな生活が一週間続いた。
そしてたった一週間で終わった。
掲示される一枚の紙きれ。
生徒会長 仲摩修治
副会長 遠坂愛莉
………
……
…
愛莉の顔が青白かった。
「大丈夫か?愛莉?」
「う、うん……でも……」
一緒に帰れなくなる。
その事が不安だったらしい。
「そんな事気にするなよ。家に帰れば一緒に居られる」
「そんな事?カンナと冬夜君が二人っきりになるんだよ!」
ああ、そう言うことか。
「心配しなくても、間違いはないよ」
僕は断言してた。
自信は無いけど……。
「カンナには誠がいるだろ?」
「神奈に聞いたもん。まだ正式には付き合ってないって」
カンナめ、余計な事を……。
「自分で言ってたろ?『私を選んでくれて』って。僕は愛莉を選んだんだ。信じてくれよ」
「う、うん……」
正直な気持ち不安だった。
クラスを離れた不安もあったけど、仲摩達と一緒に居て意思が変わるんじゃないかって……。
取り越し苦労だといいんだけど……。
(2)
その日からカンナと二人で家に帰ってた。
二人で家に来て、ご飯を食べて勉強してると愛莉がやってくるという感じだ。
ある日カンナに聞いてみる。
「なあカンナ?」
「なんだ?」
「お前さ、俺と二人っきりで誠平気なのか?」
その時カンナのペンがピタッと止まる。
「……私とトーヤが何かあるかもしれないと?」
「うん」
「ねーよ」
へ?
「誠はそんな度量の狭い奴じゃねーよ。愛莉に言われたのか?」
「まあ、心配はしてた……」
「あ、そうか。誤解されちゃったかな」
そう言って自分の頭を軽く小突く。
「前に聞かれたんだよな。お前と同じように。『どうして、誠君とより戻したの?』って。トーヤと同じように答えたんだ『付き合ってるわけじゃないただ、向こうが私がトーヤを忘れるまで待つ』って言っただけだって。そしたら愛莉勘違いしちゃったんだろうな」
「カンナお前……」
「忘れる努力はしてるよ。今のお前らに敵いそうにないしな」
「そうか……」
「ところでお前はどうなんだ?トーヤ」
「え?」
「愛莉とクラス離れて、副会長になって一緒に帰ったりもできなくなって。不安か?」
「そ、そんなことは無いけど」
「いいか?何度も言うけど揺らぐなよ!断言していい!愛莉は紛れもなくお前のものだ。愛莉もそう思ってる!何も心配することないんだからな!」
「わ、わかった」
カンナから見てそう見えるんだ。多分大丈夫だろう。
揺るぐな。
その言葉はずっと言われてきた言葉だった。
だけど肝心な事を忘れてしまうのだ。
「こんばんは~」
愛莉の声だ。
やがて階段の音が聞こえてくる。
そして……。
(3)
悪夢だ。
どうして仲摩君と一緒なの?
他の人もいるけど。
正直こういうの苦手だ。
だから演説も適当にした。
でも、選ぶ人は見た目とか人気でしか選ばない。
人気で選んだならなんで仲摩君なの?
人ってわからない。
夕方になると仲摩君たちと一緒だ。
どうでもいい話を延々とする。
あまり冬夜君に生徒会での話題はしないほうがいいかな?
冬夜君心配するだろうし。
心配してくれるかな?
不安に思ってくれるかな?
ふーん、で済まされたら、それはそれで悲しい。
帰り道。
仲摩君が送るよという。
私は断った。
それでもついてきた。
私は走る。
それでも付いてくる。
家を知られたくない。
冬夜君の家に直接行こう。
それが間違いだった。
その日は遅くなった。
だから仲摩君が送るといいだしたのだ。
どこまでもついてくる仲摩君。
そしてその日に限って冬夜君が玄関前まで出てきてた。
「冬夜君!」
この日の2度目の間違い。
神様は3度目まで大目に見てくれなかった。
「なんで仲摩が一緒なんだ?」
冬夜君が険しい表情をしている、
「言ったろ?遠坂さんには僕が……」
「帰って!!」
私は冬夜君に駆け寄ると腕をつかむ。
「もう帰ってよ。私たちに関わらないでって何度言わせるの!」
「……もう3年生だよ。そろそろ自分の将来について真面目に考えた方が良い!君ならその才能を生かせば……」
「先生みたいなこと言わないで。自分の将来は自分で選ぶ!私は冬夜君と一緒の未来を選ぶ!」
「後悔しても遅いよ」
「後悔なんてしない」
「……君はどう思ってるんだい?片桐君。冬夜さんの進路はこのままでいいと思ってるのかい?」
どうして冬夜君に話を振るの?
「……お前には関係ない事だとは思うけど?」
冬夜君の機嫌が若干悪いみたいだった。
その後仲摩君は何も言わず立ち去った。
(4)
実際悩んでいた。
愛莉は頭が良い。
何でも出来る。
そして可愛い。
こんな優等生は滅多にいない。
そんな優等生が僕とずっと一緒なんていいんだろうか?
その優等生は僕みたいな劣等生が良いと言ってくれる。
でもそんな言葉に甘えて良いのか?
付き合いだしてから何度も考えたことだ。
仲摩の言葉が突き刺さる。
このままでいいと思ってるのかい?
良い!って言いきれない。
自信が無いんだ。
愛莉の未来は愛莉がえらぶこと。
でも僕といる以外の道の方がいいんじゃないか?
僕と同じ平凡な高校に進学して平凡な大学にでて平凡に生きる。
彼女はそれ以外の選択肢を選ぶ能力はある。
突き放すのも優しさなんじゃないか?って。
どうして今日に限ってそんな気の迷いがあったのだろう?
「何してるの?家にはいろ?」
愛莉が話しかけてくる。
この可愛い声を聞くのも最後かもな……。
そう思いながら僕は家に入った。
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