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1stSEASON
ケジメ
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上田南中学校グラウンド。
その日は市総体の日だった。
決勝……去年よりは善戦してた。
が、誠へのマークがきつく相変わらず点がとれない。
0-0。
違うのは僕がなぜかベンチに座っていること。
数日前
「本気で頼む!!助っ人参加してくれ!」
「だからこの前も言ったろ?勝ち残るより思い出に他のメンバー出した方がいいって」
すると誠が土下座する。
「ば……やめろよ!」
「マジで勝ちたいんだ!決勝だけでいい!10分だけでいい!顧問には話しておくから」
まあ、サッカー部の顧問はミッキーだし大丈夫だろう。
「ていうか、決勝まで行けるんなら勝てるだろ?」
「毎年負けてるから今年こそ勝ちたいんだよ!」
誠は俺がOKというまで頭を上げないつもりらしい。
クラスの皆がざわついてる……
「……わかったから、頭を上げろよ」
「ほんとか!?」
「ああ……でも期待するなよ」
「大丈夫だ俺とお前が組めば勝てる!!」
もう勝った気でいるらしい。
てなことがあったわけで。
残り15分くらいになってきた。
そろそろかな~ってぼ~っとしてると。
「冬夜君。そろそろアップを」
来た。
アップって何すればいいんだ?
愛莉の件があって誠以外のメンバーには大体嫌われてる。
まあ、サッカー部だけに限った話じゃないんだけど。
リフティングでもするか……。
ボールを手に取り足元に落とし蹴り始める。
あんまり得意じゃないんだよなぁ。
……試合どうなってるかな。
リフティングしながら試合の様子を伺う。
(2)
サッカーの試合は私たちの中学のグラウンドの様だ。
誠の最後の試合だしちょっと応援してやるか。
休み時間に覗いてみる。
残り時間10分ちょい。
スコアは0-0
去年と同じ誠にはマークマンがしっかりついてる。
こりゃ今年も駄目かなぁ。
その時見ていた生徒がざわめく。
何事だ?
「冬夜君だよ」
いつの間にか隣にいた愛莉が声をかける。
「誠君の応援?」
「ああ、けどトーヤがどうしたんだ?」
「まあ、見てみなよ」
そういってベンチわきでリフティングしながらよそ見してるトーヤを指差す。
相変わらずぼーっとしてるなぁ……ってあれ?ボールは?
「冬夜君動き回るの面倒くさがってリフティングはいつもああなの」
どんだけ面倒くさがりなんだ。
しかし全く動かずにリフティングする事を覚えることの方が面倒じゃないか?
試合が止まる。
トーヤの出番だ。
「何で片桐が出てんだ……」
「折角同点なのに……」
「負けたら片桐のせいだな」
皆言いたい放題の中、期待のまなざしを冬夜に向ける愛莉。
本当大丈夫なのか?
トーヤはフィールドの中をうろうろしていた。
地面をきょろきょろ見ている。
……やる気あるのか?
当然ブーイングが起きる。
「始まるよ!冬夜君のプレー」
愛莉がそう告げる。
フィールド上にいるトーヤに目線をやる。
すると……
(3)
最近雨降ってなかったからなぁ。
グラウンドは普通だ。
これならなんとかなるか。
ボールは誠が持ってる。
本来僕がいるべき場所は完全にスペースとなってる。
僕をマークするものもいない。
そんな考えをしている間に僕はスペースに飛び出していた。
それを読んでいたかの如く誠のパスが飛んでくる。
ミスった。
このタイミングだと左足か。
左は苦手なんだけどな。
まあ、残り時間も少ないしミスったときの言い訳にしよう。
それ、ボールが来た。
左足で蹴る。
ボールは弧を描いてゴールに向かっていく。
キーパーが躊躇う。
躊躇うな。
だけどボールはゴールポストに嫌われた……かのようにみえた。
キーパーは姿勢を崩している。
ポストに当たったボールは跳ね返って……誠の真正面に転がる。
誠がボールを押し込む。
ピー!!
ふぅ……何とか役割は終えたな。
残り時間はほとんどない。
そして終了の合図がなる。
勝った。
まっさきに抱き着いてくる誠。
余程嬉しかったのだろう。
「ありがとな!!冬夜!!」
僕は10分動いただけで疲れたよ。
(4)
「すげーなトーヤ!」
「でしょ!冬夜君いつもああなんだよ!」
「なんであれでサッカー選手目指さねーんだよ!」
「疲れるからだって!冬夜君らしいよね!」
興奮が冷めない私とトーヤのプレーに歓喜する愛莉。
二人抱き合って喜んでた。
こういう時って感情が昂ってるんだな。
まあ、このトーヤへの気持ちへのけじめもあるし。
誠にメッセージを送っていた。
「今夜迎えに来た時に話がある。トーヤに話したらぶっ飛ばす」
「お前ら、もう授業が始まってるんだぞ」
生徒指導の波介だ。
皆散り散りになる。
私たちも教室に戻った。
放課後。
この日は午前中で授業は終わる。
トーヤと二人っきりで帰る。
「トーヤすげーな。あんな芸当ができるとは思わなかったよ」
「まあ、前にも言ったけどボッチだったからああいうプレイが身に着いたんだよ」
「普通しねーよ。やってる方がめんどくせーよ」
「よく言われる」
「……トーヤごめんな」
「何を?って……おい!」
私はトーヤの腕にしがみついていた。
「こ、こんなところ他の人に見られたら……」
「今日だけ頼む……」
「……わかった。けど……」
「なんだ?」
「愛莉には内緒な?」
「当たり前だろ!」
それから、愛莉が来るまでの間トーヤと一緒の時間。
殊更意識することも無かった。
二人で会話しながら勉強してた。
そしてご飯を食べて。また勉強して。
やがて愛莉が来る。
それから、分からないところを聞きながら勉強。
相変わらず愛莉の説明は凡人には理解できなかった。
世の中には1990年の12月4日は何曜日だ?と聞かれたら「火曜日だけど?どうしたの?」って答える人間がいるらしい。
愛莉はまさにそれだった。
「普通じゃないの?」
普通じゃねーよ。
そうこうしてると、ピンポーンと呼び鈴が鳴る。
「神奈、来たんじゃない?」
「そうみたいだな」
緊張する、胸が張り裂けそうだ。
「どうしたんだ?いつもの神奈じゃないぞ?」
訳が分からないといった感じのトーヤに対して、何かを感じたのか愛莉が「神奈」と呼び止める。
「なんだ?」
「……がんばって!」
完全に敗北宣言だなこりゃ。
「ありがとよ」
きょとーんとしてるトーヤに向かって一言。
「じゃあ、また明日な!」
(5)
帰り道。
いつも通り神奈さんと一緒に帰る。
今日の神奈さんはなんからしくない。
そわそわしてるというか。なんか変だ。
昼間のメッセージも気になる。
「神奈さん?昼間のメッセージ何?」
冬夜もいないし今聞いてもいいだろ。
「ああ、あれか……」
そう言うと神奈さんは立ち止まる。
?
「前に、言ったよな『忘れるまで待つって』」
「うん……」
「今日の誠かっこよかった」
「あれはトーヤのパスが……」
「今夜はトーヤの話は無しだ」
急に神奈さんに抱き着かれる。
「ど、どうしたの?神奈さん」
「そろそろケジメつけないとな。お前にもトーヤにも迷惑かける」
「神奈さん……」
「前から思ってたんだけど、その『神奈さん』ってのやめろ。さん付けはしなくていいよ」
「え、でも……」
「誠は自分の事になると本当鈍いんだな」
どういうこと?
期待してもいいのか?
「今でも私の事好きか?」
「もちろん、言ったろ?いつまでも待ってるって」
「じゃあ、もう待つの止めろ」
え?
「……今度は私が追いかける番だ。逃がさないからな」
まじかよ!
「神奈さん、いや神奈……」
「誠……」
月明かりの道端で、月の光に照らされて口づけをしていた。
過去別れる前にしていたけど、あの時とは違う。
彼女は俺を見ている。
「ちゃんといわねーと、だめだよな。好きだよ、誠」
やっと、思いが通じた。
試合の事と言い、今日は良いことづくめだ。
「今度こそ、よろしく。神奈」
「ああ、誠」
そうして神奈を送って家路につくのだった。
「これでいいんだよな……」
(6)
「じゃあ、また明日な。愛莉」
「うん、冬夜君……」
「なんだ?」
「今日かっこよかったよ」
「見てたんだ」
「うん、しっかり目につけてた。冬夜君もサッカー選手目指せばいいのに」
「疲れるからいいよ。滑り止めは確保できたみたいだけど」
「え?」
「失礼ですがお名前は?」
見慣れない男性から名前を聞かれた。
「あ、こいつ片桐って言うんです」
誠が俺の首根っこを掴んで答えた。
「ああ、私こういうもので」
そう言って名刺を渡される。
伊田高のサッカー部スカウトと書いてある。
「多田君のゴールに対する嗅覚は鋭い。しかしその前の正確なパス、アレは狙ったものでしょう」
「まあ、そうですけど」
「是非うちの高校に来て欲しい!特待生として」
「冬夜チャンスだぞ」
興奮する誠
「でも、僕志望校決めてるんで」
「そうですか、まあ気が変わったら連絡ください」
そう言って立ち去るスカウトマン。
「お前勿体なさすぎるだろ!」
「愛莉と同じ高校に行くって決めたから、カンナもだけど」
「そうか……」
それ以上は誠は何も言わなかった。
「勿体ないね……」
「その後も地元Jリーグのスカウトやら大変だったよ」
「真面目にサッカーしたいならいいんだよ……?」
「言ったろ、僕は愛莉と同じ高校に行きたい。愛莉と同じように。カンナもいっしょだけどな」
「うん」
「これでサッカーとはおさらばさ」
「うん」
そう言って家に帰って行った。
誠は県大会に向けて大変だろうな。
もう助っ人は懲り懲りだからな。
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