優等生と劣等生

和希

文字の大きさ
44 / 442
1stSEASON

ケジメ

しおりを挟む

(1)

上田南中学校グラウンド。
その日は市総体の日だった。
決勝……去年よりは善戦してた。
が、誠へのマークがきつく相変わらず点がとれない。
0-0。
違うのは僕がなぜかベンチに座っていること。


数日前

「本気で頼む!!助っ人参加してくれ!」
「だからこの前も言ったろ?勝ち残るより思い出に他のメンバー出した方がいいって」

すると誠が土下座する。

「ば……やめろよ!」
「マジで勝ちたいんだ!決勝だけでいい!10分だけでいい!顧問には話しておくから」

まあ、サッカー部の顧問はミッキーだし大丈夫だろう。

「ていうか、決勝まで行けるんなら勝てるだろ?」
「毎年負けてるから今年こそ勝ちたいんだよ!」

誠は俺がOKというまで頭を上げないつもりらしい。
クラスの皆がざわついてる……

「……わかったから、頭を上げろよ」
「ほんとか!?」
「ああ……でも期待するなよ」
「大丈夫だ俺とお前が組めば勝てる!!」

もう勝った気でいるらしい。



てなことがあったわけで。

残り15分くらいになってきた。
そろそろかな~ってぼ~っとしてると。

「冬夜君。そろそろアップを」

来た。
アップって何すればいいんだ?
愛莉の件があって誠以外のメンバーには大体嫌われてる。
まあ、サッカー部だけに限った話じゃないんだけど。
リフティングでもするか……。
ボールを手に取り足元に落とし蹴り始める。
あんまり得意じゃないんだよなぁ。
……試合どうなってるかな。
リフティングしながら試合の様子を伺う。

(2)

サッカーの試合は私たちの中学のグラウンドの様だ。
誠の最後の試合だしちょっと応援してやるか。
休み時間に覗いてみる。
残り時間10分ちょい。
スコアは0-0
去年と同じ誠にはマークマンがしっかりついてる。
こりゃ今年も駄目かなぁ。
その時見ていた生徒がざわめく。
何事だ?

「冬夜君だよ」

いつの間にか隣にいた愛莉が声をかける。

「誠君の応援?」
「ああ、けどトーヤがどうしたんだ?」
「まあ、見てみなよ」

そういってベンチわきでリフティングしながらよそ見してるトーヤを指差す。
相変わらずぼーっとしてるなぁ……ってあれ?ボールは?

「冬夜君動き回るの面倒くさがってリフティングはいつもああなの」

どんだけ面倒くさがりなんだ。
しかし全く動かずにリフティングする事を覚えることの方が面倒じゃないか?
試合が止まる。
トーヤの出番だ。

「何で片桐が出てんだ……」
「折角同点なのに……」
「負けたら片桐のせいだな」

皆言いたい放題の中、期待のまなざしを冬夜に向ける愛莉。
本当大丈夫なのか?


トーヤはフィールドの中をうろうろしていた。
地面をきょろきょろ見ている。
……やる気あるのか?
当然ブーイングが起きる。

「始まるよ!冬夜君のプレー」

愛莉がそう告げる。
フィールド上にいるトーヤに目線をやる。
すると……

(3)

最近雨降ってなかったからなぁ。
グラウンドは普通だ。
これならなんとかなるか。
ボールは誠が持ってる。
本来僕がいるべき場所は完全にスペースとなってる。
僕をマークするものもいない。
そんな考えをしている間に僕はスペースに飛び出していた。
それを読んでいたかの如く誠のパスが飛んでくる。

ミスった。
このタイミングだと左足か。
左は苦手なんだけどな。
まあ、残り時間も少ないしミスったときの言い訳にしよう。
それ、ボールが来た。
左足で蹴る。
ボールは弧を描いてゴールに向かっていく。
キーパーが躊躇う。
躊躇うな。
だけどボールはゴールポストに嫌われた……かのようにみえた。
キーパーは姿勢を崩している。
ポストに当たったボールは跳ね返って……誠の真正面に転がる。
誠がボールを押し込む。

ピー!!

ふぅ……何とか役割は終えたな。
残り時間はほとんどない。

そして終了の合図がなる。
勝った。
まっさきに抱き着いてくる誠。
余程嬉しかったのだろう。

「ありがとな!!冬夜!!」

僕は10分動いただけで疲れたよ。

(4)

「すげーなトーヤ!」
「でしょ!冬夜君いつもああなんだよ!」
「なんであれでサッカー選手目指さねーんだよ!」
「疲れるからだって!冬夜君らしいよね!」

興奮が冷めない私とトーヤのプレーに歓喜する愛莉。
二人抱き合って喜んでた。
こういう時って感情が昂ってるんだな。
まあ、このトーヤへの気持ちへのけじめもあるし。
誠にメッセージを送っていた。

「今夜迎えに来た時に話がある。トーヤに話したらぶっ飛ばす」
「お前ら、もう授業が始まってるんだぞ」

生徒指導の波介だ。
皆散り散りになる。
私たちも教室に戻った。



放課後。
この日は午前中で授業は終わる。
トーヤと二人っきりで帰る。

「トーヤすげーな。あんな芸当ができるとは思わなかったよ」
「まあ、前にも言ったけどボッチだったからああいうプレイが身に着いたんだよ」
「普通しねーよ。やってる方がめんどくせーよ」
「よく言われる」
「……トーヤごめんな」
「何を?って……おい!」

私はトーヤの腕にしがみついていた。

「こ、こんなところ他の人に見られたら……」
「今日だけ頼む……」
「……わかった。けど……」
「なんだ?」
「愛莉には内緒な?」
「当たり前だろ!」


それから、愛莉が来るまでの間トーヤと一緒の時間。
殊更意識することも無かった。
二人で会話しながら勉強してた。
そしてご飯を食べて。また勉強して。
やがて愛莉が来る。
それから、分からないところを聞きながら勉強。
相変わらず愛莉の説明は凡人には理解できなかった。
世の中には1990年の12月4日は何曜日だ?と聞かれたら「火曜日だけど?どうしたの?」って答える人間がいるらしい。
愛莉はまさにそれだった。

「普通じゃないの?」

普通じゃねーよ。
そうこうしてると、ピンポーンと呼び鈴が鳴る。

「神奈、来たんじゃない?」
「そうみたいだな」

緊張する、胸が張り裂けそうだ。

「どうしたんだ?いつもの神奈じゃないぞ?」

訳が分からないといった感じのトーヤに対して、何かを感じたのか愛莉が「神奈」と呼び止める。

「なんだ?」
「……がんばって!」

完全に敗北宣言だなこりゃ。

「ありがとよ」

きょとーんとしてるトーヤに向かって一言。

「じゃあ、また明日な!」

(5)

帰り道。
いつも通り神奈さんと一緒に帰る。
今日の神奈さんはなんからしくない。
そわそわしてるというか。なんか変だ。
昼間のメッセージも気になる。

「神奈さん?昼間のメッセージ何?」

冬夜もいないし今聞いてもいいだろ。

「ああ、あれか……」

そう言うと神奈さんは立ち止まる。


「前に、言ったよな『忘れるまで待つって』」
「うん……」
「今日の誠かっこよかった」
「あれはトーヤのパスが……」
「今夜はトーヤの話は無しだ」

急に神奈さんに抱き着かれる。

「ど、どうしたの?神奈さん」
「そろそろケジメつけないとな。お前にもトーヤにも迷惑かける」
「神奈さん……」
「前から思ってたんだけど、その『神奈さん』ってのやめろ。さん付けはしなくていいよ」
「え、でも……」
「誠は自分の事になると本当鈍いんだな」

どういうこと?
期待してもいいのか?

「今でも私の事好きか?」
「もちろん、言ったろ?いつまでも待ってるって」
「じゃあ、もう待つの止めろ」

え?

「……今度は私が追いかける番だ。逃がさないからな」

まじかよ!

「神奈さん、いや神奈……」
「誠……」

月明かりの道端で、月の光に照らされて口づけをしていた。
過去別れる前にしていたけど、あの時とは違う。
彼女は俺を見ている。

「ちゃんといわねーと、だめだよな。好きだよ、誠」

やっと、思いが通じた。
試合の事と言い、今日は良いことづくめだ。

「今度こそ、よろしく。神奈」
「ああ、誠」

そうして神奈を送って家路につくのだった。

「これでいいんだよな……」


(6)

「じゃあ、また明日な。愛莉」
「うん、冬夜君……」
「なんだ?」
「今日かっこよかったよ」
「見てたんだ」
「うん、しっかり目につけてた。冬夜君もサッカー選手目指せばいいのに」
「疲れるからいいよ。滑り止めは確保できたみたいだけど」
「え?」



「失礼ですがお名前は?」

見慣れない男性から名前を聞かれた。

「あ、こいつ片桐って言うんです」

誠が俺の首根っこを掴んで答えた。

「ああ、私こういうもので」

そう言って名刺を渡される。
伊田高のサッカー部スカウトと書いてある。

「多田君のゴールに対する嗅覚は鋭い。しかしその前の正確なパス、アレは狙ったものでしょう」
「まあ、そうですけど」
「是非うちの高校に来て欲しい!特待生として」
「冬夜チャンスだぞ」

興奮する誠

「でも、僕志望校決めてるんで」
「そうですか、まあ気が変わったら連絡ください」

そう言って立ち去るスカウトマン。

「お前勿体なさすぎるだろ!」
「愛莉と同じ高校に行くって決めたから、カンナもだけど」
「そうか……」

それ以上は誠は何も言わなかった。



「勿体ないね……」
「その後も地元Jリーグのスカウトやら大変だったよ」
「真面目にサッカーしたいならいいんだよ……?」
「言ったろ、僕は愛莉と同じ高校に行きたい。愛莉と同じように。カンナもいっしょだけどな」
「うん」
「これでサッカーとはおさらばさ」
「うん」

そう言って家に帰って行った。
誠は県大会に向けて大変だろうな。 
もう助っ人は懲り懲りだからな。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」 ※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

楠ノ木雫
恋愛
 蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……

人質王女の恋

小ろく
恋愛
先の戦争で傷を負った王女ミシェルは顔に大きな痣が残ってしまい、ベールで隠し人目から隠れて過ごしていた。 数年後、隣国の裏切りで亡国の危機が訪れる。 それを救ったのは、今まで国交のなかった強大国ヒューブレイン。 両国の国交正常化まで、ミシェルを人質としてヒューブレインで預かることになる。 聡明で清楚なミシェルに、国王アスランは惹かれていく。ミシェルも誠実で美しいアスランに惹かれていくが、顔の痣がアスランへの想いを止める。 傷を持つ王女と一途な国王の恋の話。

処理中です...