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1stSEASON
初春
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1月3日
僕と愛莉、誠とカンナ、父さんと母さんは高塚へ向かっていた。
合格祈願のお参りだ。
誠とカンナはうちの両親を交えて会話してる。
愛莉は何も言わない。
ただにこにこしてるだけ。
カンナに「どうかしたのか?」と聞かれても「別に~」と答えるだけ。
笑顔の理由は今のところ知ってるのは僕だけだろう。
誠にメッセージで「……したのか?」って聞かれたけど「……ノーコメント」と答えた。
ノーコメントって言ってる時点で肯定してるような気がするけど。
「なにがあったんだよ?遠坂さんは元気あるのに。お前なんか浮かない顔してるぞ」
誠が話を振ってきた。
「そうだよな、何があったんだ?大晦日から変だぞ?」
カンナも乗ってくる。
間違っても今言えない。
「そうなのよね。帰って来た時からずっと変なのよ」
母さんまで……。
父さんの表情が険しい。
気付かれたか?
「ああ、もうイライラするなぁ!何があったんだよ!」
カンナが騒ぎ出す。
「別に悪いことがあったわけじゃないから~。喧嘩もしてないし」
「良いことなら話せよ!気になってしょうがねーよ」
しばらくして愛莉がスマホを取り出すと操作する。
多分カンナにメッセージを送ってるんだろう。
当ったみたいだ。
カンナはスマホを見ると笑い出す。
そして誠に耳打ちする。
誠は爆笑する……。
全部話したんだな。
愛莉は恥ずかしそうに下をむいてる。
僕はため息を吐く。
だから二人には知られたくなかったんだ。
誠は僕に耳打ちする……
「帰ってから詳しく聞くからな」
傷口に塩を塗る行為だ。
事情を察したのか、両親は口を閉ざす。
ただ一言。
「これから受験まであと少しなんだから少しは自重しろよ」
はい……今は、そんな元気ないです。
高塚愛宕地蔵尊
多くの受験生がお参りにくる名所。
一つの願い事を歳の数だけ願い事を書いてお参りすると願いが叶うという。
僕たちも用意してきた。
神頼みかよ!っていうかもしれないけど、げんかつぎくらいいいだろ?
本殿までは、だいぶ坂を上る。
お参りを済ませると。さ~てと……まずは焼きイカから……。
誰かが腕をつかむ。
まあ、大体察しはつくけど。
愛莉はにっこり微笑んで言う
「お昼前だよ?」
ですよね……ああ、ごめんなさい、色んな食べ物たち。
帰り道
「お昼どうしようかしら?」
母さんが聞いてきた。
「せっかくここまで来たんだし、焼きそばでも!」
「そんなの市内でも食えるだろ」
と、誠。
「でもここまできてだんご汁は寂しいぞ」
抵抗する僕。
今日の為に愛莉の目を盗んで焼きそばの名店を調べてきたのに!
「ていうか市内に戻ってからって知恵はないのかよ」
どうでもよさげなカンナ。
「本当に食べ物の事になると元気になるんだから……」
呆れた様子の愛莉。
「でもせっかくここまで来たんだし……」
「遊びに来たんじゃない!!」
5人に言われ大人しく市内まで戻りファミレスで食事するのでした。
「ふぅ~食った食った」
満足してベッドに横になる。
「よく食べるよな~」
「で、太らないのが不思議だよなぁ」
「ダブルハンバーグ和食セットご飯二人前納豆玉子付きって冬夜君専用メニューだよ……」
三者三様の感想。
なんとでもいえ、僕は満足だ。
このまま眠りたい……いたっ!
「寝るなよ!帰ったら詳しく話す約束だぞ!」
約束はした覚えはないが……。
「私から話すよ……」
恥ずかし気に言う愛莉。
それでいいのか!僕!。
「そっちの方が面白そうだな!」
「遠坂さんがいいならぜひそれで」
いや、それはだめ!!……って訴えようと思ったが誠の手が僕の口を塞いだ。
「じゃあ、話すね。そうだね。一昨年と同じように去年もりえちゃんとパパさんだけ実家に帰ったの……」
(2)
去年の12月31日。
一昨日からりえちゃんとパパさんは実家に帰っていて家にいない。
今年は冬夜君の両親も30日から2日までの4日間実家に帰ってる。
冬夜君も帰ると思ったけどなぜか残ってた。
受験勉強あるからかな?
そのはずだけどいま冬夜君はベッドで寝てる。
私の部屋で。
そう、今年末は私の家で過ごそうって二人で話し合った。
もちろん両親’sの了解は得てある。
りえちゃんは「今度こそ頑張って」と励ましてくれた。
しかしこの二日間何もなかった。
何かをしようとする意気込みも感じなかった。
誠君や神奈は冬夜君に何か言ってるみたいだけど、何もなかった。
もう諦めたの?
そんなに簡単に諦めるの?
わたしに愛想尽かされたとも思った?
その割にはご飯作るの手伝ってくれたり、大掃除も手伝ってくれる。
何を考えてるの?
また隠し事?
今年もお笑い番組を見て年を越そうとしている。
笑えない。
そばを食べ終わると再びテレビを見始める。
このまま今年は終わるのかな?
その時すっと立ち上がる。
このタイミング!?意味が分からない。
でもタイミングなんてどうでもいい!
ちょっとだけ期待したけど見事に裏切られた。
「ちょっとトイレ借りるね」
がくっ!
そう言って部屋を出る冬夜君。
……。
一縷の望みをかけて枕を取ってみる。
……あった!
その気があるのは確かみたいだ!
タイミングを計ってるのね。
良かった。
どのタイミングで言うつもり?
もう考えられるのは年越しくらいしか……。
最初からそのつもりだった?
冬夜君はもどってくると何もなかったかのようにテレビを見る。
23時45分
テレビはまだ続いていたが、冬夜君の顔から笑いが消えた。
ちらちらと時計を見てる。
なんとなく私も気になってきた。
除夜の鐘が聞こえてくる。
二人共黙ってしまった。
テレビのバカ騒ぎと除夜の鐘の音だけ。
冬夜君の様子がおかしい?
何か悩んでるようだ。
どうしたの?
「愛莉!!」
え!?今!?
「はい!?」
「……どう思う?」
え?
「新年になってからした方がいいのか、今年中にした方がいいかどう思う?」
本当にどうでもいいことで悩むんだからこの人は……。
「……何を?」
ちょっと意地悪してみた。
「え……だから……だからその……」
なんか戸惑ってる冬夜君。
そうこうしているうちに時間は経っていた。
0時……
「あ、えーとうち喪中だから挨拶はできないけど……その」
「もう悩まなくて済むね」
「え?」
私は戸惑う冬夜君を押し倒す。
そして長い時間口づけをかわす。
「あの、愛莉……一つだけいい?」
「な~に?」
この期におよんでまだ何かあるのか?
「……ベッドに行かない?」
「……うん」
そうして私たちはやっと事に至ったのでした。
今度はちゃんとアレの出番はあったよ。
………
……
…
じゃあ、なにが問題だったのか?
それはね……。
「痛いっ!」
「ご、ごめん」
「い、いいの……」
こんなに痛かったとは……。
それから数十秒経った頃
「……愛莉!!」
「はい?」
「ごめん!」
へ?
痛みならもうないよ?
その時彼の異変に気付いた……。
あ、そういうこと?
あの時みたいに落ち込む冬夜君。
「ごめん……」
「気にしてないから」
彼はそれから何も喋らなかった。
そんなに落ち込むことないのに。
私はそっと冬夜君を抱きしめる。
「言ったでしょ?冬夜君のペースで良いって。前に比べたら大きな前進だよ」
「そうか……?」
「……寝ちゃった時に比べたらね」
(3)
誠とカンナは爆笑する。
だろうと思った。
「相手が愛莉でよかったなトーヤ。私だったら激怒してたぞ」
「おまえ(自主規制)だったんだな!」
「そういうお前らはどうだったんだよ?」
「へ?」
「僕たちの事ばかり聞いて誠達は何も言わないなんてないよな?」
「ああ、俺はいいんだけど、神奈が……」
「お前それ言ったらマジで別れるからな!」
「と、言うわけだすまん。俺からは何も言えない」
と、いい笑いながら謝る誠
「あ~ずるい神奈。私だって恥ずかしかったんだから!!」
珍しく、引き下がらない愛莉。
「いや、ちょっと……想像より痛くてさ……」
「あ、分かる。凄い痛いよね」
痛くてどうしたんだ?
「まあ、よかったじゃないか!これで一人前ってもんだ」
そう言ってカンナが背中をたたく。
「あ、ありがとう」
「次はもうちょっと続くと良いな、秒殺はどうかと思うぞ!」
それをまだいうか……。
でも……次は頑張ろう。
「冬夜君のペースだと次は卒業くらいかなぁ~。受験シーズンは流石にないだろうし」
愛莉が笑っていう。
そうか、こうやって笑ってられるのも今日までかな?
もうすぐ受験生最大の難関がやってくる。
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