55 / 442
1stSEASON
私立入試
しおりを挟む(1)
3学期。
いきなりのテスト。
テストと試験が入り乱れて、パニックだ。
ちょっと冬休み遊び過ぎたかな……っていいわけは通用しない。
愛莉は相も変わらずトップだった。
本当に不思議だ。
まあ、僕たちも落ちなかったけど。
受験の先陣を切ったのは誠だった。
伊田高の得奨生受験。
「んじゃ、行ってくる」
と、軽く言ってたが。大丈夫なんだろうか?
え?愛莉は特進受けなかったのかって?
「え?伊田高の普通科受けるよ?」
「なんでだよ!そこまで私に合わせなくて良いって」
「愛莉、藤明の特進勧められてたんじゃなかったのか?」
「……うん。でも断った」
「なんでだよ、まるで俺たちが足を……!?」
突然愛莉が口づけをしてきた。
「その話は無しにしようって言ったよ」
カンナの見てる前でよくやるなぁ。
現にカンナは「ひゅ~」と口笛を吹いている。
「防府が本命なんだから私立なんてどこでもいいじゃん!」
そう言って笑う愛莉。
「わかったよ。愛莉の好きにしろよ、でも俺が防府に受かるって確信はないからな」
「その時は伊田高に行く」
「伊田高も堕ちたらどうすんだよ」
「冬夜君なら大丈夫だよ。緊張はダメだよ」
「ああ……」
「じゃ、頑張りますか!」
その日から勉強の仕方が変わった。
まず宿題を済ます。
つぎに志望校の過去問を徹底的に解く。
「カンナ答え丸暗記はダメだからね」
愛莉がカンナに念を押す。
「分かってるって」
カンナも必死に勉強してる。
カンナも随分変わったな。
数日後
誠からメッセージが届いた。
「受かった!ありがとうな」
すぐに返信する。
「おめでとう!」
これで誠は進路は安泰ってわけだ。
その日も4人集まった。
「誠君おめでとう」
愛莉が誠を見てそう言った。
「ありがとう、遠坂さん」
「もう勉強する必要ないんじゃないか?」
カンナがそう言うと、「いや、まあ……」と言葉を濁した。
「神奈。誠君は神奈と一緒に居る時間を作りたいんだよ。高校は別々になっちゃうから。中学最後の思い出に」
愛莉がそう言うと、カンナは笑った。
「まるで、中学卒業したら終わりみたいな言い方だな。大げさだって」
「ま、まあそうだけど……」
誠ははっきりしない。
そこにカンナはムッとしたようだ。
「なんだ?高校に行ったら別の彼女作るつもりか?」
「それはないよ!」
誠ははっきり言った。
「ただ、中学生活最後だろ?4人で過ごしたいと思っただけだよ」
誠がそう言うとカンナは「そうか……」と言った。
中学生活最後か……。
色々あったな。
こうして同じテーブルで勉強するのもこれが最後か……。
そんな感傷に浸ってると愛莉が頬をつつく。
「ぼーっとしてないで、問題を解く!」
その通りだな。
「今の成績なら、伊田高は大丈夫でしょう」
ミッキーのお墨付きだ。
多分大丈夫だろう。
絶対とは言い難い。
最後まで何があるか分からない。
正にその通りだった。
無理をしたのが祟ったのか?
連日の雨にやられたのか?
ここ数日冷え込んでいたのか?
体調管理を怠ったのは間違いない。
試験当日風邪を引いた。
熱もある、頭がぼーっとする。
マスクをして受験しようとしたが、親に止められた。
……悔しい。
泣きそうになった。
何も大事な受験の日に引かなくても。
一日くらいずらしてもらえなかったのか?
そんな事を考えながら、ずっとベッドの上で過ごす。
「はい、あーん」
お昼におかゆを食べる。
あれ?
どこかで聞いた声。
おかゆを僕の口へ運ぶ女子を見る。
え、女子……?
愛莉だ。
なんで愛莉が!?
時間を見る、12時過ぎだ。
まだ受験は続いてるはず。
「どうしたの?」
愛莉は首をかしげる。
「どうしたのじゃないよ!なんで愛莉がいるんだよ!?」
「だって、冬夜君が風邪引いたって聞いたから心配して」
「受験は!?」
「休んだ」
どこから突っ込んだらいいのか。
「ただのテストじゃないんだぞ、入試だぞ!」
「冬夜君が受けないなら受ける意味ない」
「この馬鹿、それじゃ俺が……」
「それ以上は言わないで!怒るよ?」
「怒りたいのはこっちだよ!」
「冬夜君が言いたい事はなんとなくわかる。でも私だけ受かってもしょうがない。冬夜君がいないんだもん。あ、足をひっぱってるとか思わないでね。私かそうしたいからそうしたの」
「愛莉の言いたい事は分かる。でも余計に自分を責める。風邪さえ引かなかったらって……」
「仕方ないよ。ずっと頑張ってたもん。無理が祟ったんだよ」
「愛莉たちは風邪ひいてないのに……」
「……おかゆ冷めちゃうよ」
そう言って口に匙をはこぶ。
素直にそれを食べる。
「美味しい?」
「うん」
「良かった~麻耶さんに頼んで私が作ったの~」
どこまで一生懸命なんだろう?
健気な少女を抱きしめていた。
「ちょ、ちょっと冬夜君!?」
驚く愛莉。
「ごめんな……」
僕は一言そう呟く。
「自分を責めないで」
愛莉はそう言って僕を抱き返す。
そうして僕を寝かしつける。
「今はゆっくり休んで。また明日から頑張ろ?」
そう言ってほほ笑む彼女を見ながら僕は眠りについていた。
次に目覚めたとき。
愛莉はベッドの横に座り問題集を見ている。
「愛莉」
「あ、起きた?ちょっと待ってね」
そういって、コンビニの袋を取り出す。
スイーツとジュースが入っていた。
「ありがとう」
「いつかのお返しだよ」
食べ終わると、再び寝た。
起きた時はカンナがきていた。
「風邪、大丈夫か?」
「ああ、だいぶ楽になった。カンナ受験どうだった?」
「ばっちりだった」
「そっかぁ、良かったね」
喜ぶ愛莉。
「それはいいんだけど、愛莉大丈夫なのか?」
「本命受けれなかったわけじゃなかったから大丈夫だよ」
「そうだけど……」
「久々に冬夜君の寝顔見れたから良かったよ」
……ずっといたわけだな。
翌日。
新聞に書かれていた入試問題を解いていく。
カンナの点数はかなり高かった。
これならもんだいないだろう。
合格発表の日。
カンナは合格していた。
ささやかながらお祝いした。
「これで最悪でも誠君と同じ高校いけるね」
「まあな、ありがとな。ここまでこれたのは愛莉たちのお蔭だよ。でも、次こそが本番なんだよな……、お前らあとがねーし」
「そうだな」
「うん」
体調はしっかりしておこう。
でも勉強もきっちりしておかないと……。
意気込む僕の肩を愛莉が揉む。
「そんなに今から緊張してるとまた本番ミスるよ」と……。
バレンタインデー
愛莉とカンナから手作りチョコをもらった。
愛莉は生チョコだった。
「お返しは高校合格でいいからね!」と言って笑う愛莉。
「確かに今からホワイトデーのサプライズなんて考えて勉強できませんでしたじゃシャレになんないからな」
カンナも同様の意見のようだ。
実力テストは十分な成績だった。
後は本番のみ……。
「また緊張してる」
愛莉がそう言って頬っぺたをつつく。
泣いても笑っても次が最後だ。
もうミスはできない。
自然と力が入っていた。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。
楠ノ木雫
恋愛
蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる