優等生と劣等生

和希

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2ndSEASON

揶揄いと嘲笑の中で

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(1)

始まった。
黒板に書かれた巨大な落書き。

「誰だよこんな真似した奴は!?」

カンナの怒声が響き渡る中僕と愛莉は黙って落書きを消す。

「二人の初めての共同作業でーす」

誰かがそう言うと笑い声が教室に響く。
そいつの胸ぐらを掴みかかろうとするカンナを止める。
愛莉が心配だ。
ちらりと愛莉を見る。
杞憂だった?
愛莉は平然として落書きを消してる。
そうか、愛莉も慣れっ子か。
担任が来る前に消し終えると、席に着く。

HRが終わり1限目が始まるまでの時間にまた堂々と書いてる奴がいた。

よくやるよ。

ため息を吐いた時、図体のでかい男子……渡辺雅史だっけ……がそいつの肩を掴んだ。

「ちょっとこいよ」

そう言って教室の隅に呼び寄せ何か言ってる。
掴まれた男子は黙って席に戻った。

渡辺君は僕の席まで来て小声で言う。

「あんなの気にするなよ。ガキのいたずらだ」

そう言って笑って自分の席に戻った。

あ、こうなった理由はちゃんとある。
それは数日前の事だった。





高1からも生徒副会長が選出される。
その候補に、愛莉がえらばれた。
まあ、人気ありそうだよな。
そこまでは普通だった。
その時愛莉は、怒った。

「私生徒会とか興味ありません!もっと冬夜君と学校生活楽しむ時間欲しいです!そんな事に時間使ってる余裕ありません!もっと真面目に選んでください!」

と、一言平然と言ってのけた。

「そんなふざけた理由の為に拒否する人に任せられません、私が立候補します」

と静かに言ったのは伊集院晶だった。

「やりてーやつがやればいいんじゃねーか?」

と投げやりな口調の担任・水田先生。
その一件以降僕たち二人は冷やかしの対象になるのだった。



2限目が終わり浮き浮きと購買部へ向かう僕の腕を愛莉が掴む。

「どこいくのかな~?冬夜君」
「いや、昼飯買いに……」
「お弁当なら作ってきたよ」
「お弁当も食べるから!」
「子供みたいなこと言わないの!」
「一度だけでいいから焼きそばパンというのを食してみたいんだ!!」
「コンビニで売ってるでしょ!?」
「この学校の焼きそばパンは美味いって情報が」
「そういう情報だけは早いんだね!」
「ちゃんと残さず食べるから!!一度だけ!!」
「う、うん。今回だけだよ」

ありがたやー。
ルンルン気分で廊下に出ようとしたその時だった。
何かに躓いて派手に転んでしまう。

「トーヤ!」
「冬夜君!?」

いてて……。
起き上がりながら振り返ると、ちょっと体格のいい男子・竹下武史が立っていた。

「お前ら目立ちすぎなんだよ……ムカつく」

どすの利いた声でそういう竹下君。
ああ、足を引っかけられたんだな。

「てめえ、何してんだよ!」
「神奈だめ!!」

竹下君につかみかかろうとするカンナを愛莉が懸命に止めている。
竹下君は神奈に近づくと神奈の胸ぐらを掴んだ。

「お前も片桐に気があるのか?」

前にも説明したが、カンナは元々大人しい女子だ。
こういう場面になると一気に気弱になる。

「なんだ?びびってんのか?さっきの威勢はどうした」

あーあ、どうしてこうなるかな?

「カンナから手を離せ」

ぼくは小さい声でそう言った。

「なんだ?聞こえねーぞ。片桐」
「手を離せって言ったんだ!」

さよなら僕の焼きそばパン。
また明日の楽しみにするよ。
今日は買いに行けそうにない。

「ハハハ、彼女の前では格好つけたいか?いいぜ、かかって来いよ」

カンナを解放しこっちに向かって手を挙げる竹下君。
いいんだね?
んじゃ僕も遠慮なく行くよ。
僕は机を掴みそれを竹下君に目掛けて投げつけた。
竹下君はガードする。
それを見越してた僕は、竹下君との間合いを詰め鼻っ柱を殴りつける。
竹下君は予想以上に吹き飛ばされた。
女子の悲鳴が聞こえる。
男子は興味本位で見物にきてる。

「この野郎!!」

竹下君は、起き上がると僕に殴りかかる。
僕はそれを半身で躱し左拳で竹下君の右頬をぶん殴る。
倒れる竹下君の顔を足で蹴りまくる。

「ほらさっさと立てよ!」

とかいいながら起き上がろうとする竹下君をガンガン蹴飛ばして起き上がらせない僕。

「トーヤそのくらいにしとけ!」

カンナが僕を止める。

「離せカンナ!」
「やり過ぎだトーヤ!」

愛莉は状況に頭が追い付かずただ泣いている。

「やりやがったな……」

竹下君の右ストレートが右頬に当る。
まあ、敢えて受けた。
避けたらカンナに当るから。
鼻血が出た。
お互い様だったが。
追撃をしかけようとする竹下君の腕を掴んだのは渡辺君だった。

「もうやめとけ、先生が来るぞ」

竹下君は渡辺君の腕を振りほどき、机を蹴飛ばし自分の席に戻った。

「冬夜君大丈夫?」

愛莉が半べそでハンカチを口に当て、ティッシュで鼻血を止血する。

「仲がいいねぇ~」

そんな冷やかしを受ける中。周りを片付ける僕たち3人。

そして予鈴がなった。

(2)

昼休み。
愛莉の手作り弁当を開ける。
相変わらずしっかり作りこんである。
大食いの僕に配慮してくれたのか。ご飯がたっぷり入ってある。
カンナは学食に食べに行ったようだ。
僕たちは屋上で食べていた。
ここなら、余計な邪魔も入らない。

「傷……大丈夫?」

愛莉が心配そうに聞いてくる。

「大丈夫、このくらい大したことないよ」
「ごめんね、私があんなこと言ったから」

また、愛莉の声が涙声だ。

「気にするなよ、カッとなった僕も悪いんだし。悪い癖だな」
「前もそうだけどカンナの事になるとムキになるんだね」

なんか落ち込んでる?
もう噂になってるし、今更隠すこともないよな。
愛莉の肩をだく。

「もし、愛莉がああいう目にあってたら、ブチ切れてると思う」

多分そうだろうな。
「ありがとう」と言ってくれると思った僕が馬鹿だった。

ぽかっ

彼女が僕の頭をたたく。

「だめ、そんなことしたらまた謹慎だよ。今日だって危なかったのに」
「ごめん」
「暴力はダメだよ」
「(相手が仕掛けてこなかったら)しないよ」
「うん、教室に戻ろう」


教室で待っていたのは僕の机がひっくり返され、鞄の中身がぶちまけられている惨状だった。
誰がやったのかは察しが付く。
先に教室に来ていたカンナが片付けている。
それをまた竹下君がひっくり返しているという構図。
愛莉の手前、暴力沙汰になることは控えてカンナと一緒に片づけだした。
愛莉も手伝ってくれた。
けれど何度やってもひっくり返される。
面白がって他の生徒も加わる。
見かねて渡辺君が近づいてきたが、教師が先に入ってきた。

「なんだ?片桐、早く片付けて。他の2人も自分の席に戻れ」

そう言うと二人は自分の席に戻る。
僕は一人、机を片付けていた。

(3)

その日の帰りのHRは長くなった。
理由は僕たちだった。
竹下君との喧嘩。昼休みの騒動。
誰かが密告したらしい。
余計な事を……。
僕の帰りの楽しみ……買い食いを邪魔しようというのか?

「片桐と遠坂を揶揄ってる奴がいるらしいが心当たりのある奴は立て」

誰も微動だにしない。
まあ、素直に立つ奴はいないよね?
水田先生も分っていたらしい。

「まあ、そうだよな。二人のいちゃつきが気に入らなくて陰湿で卑怯な真似しかできないチキンが立てるわけないよな」

一々煽ってくるねこの先生。

「先生。あの二人のいちゃつき具合は他の生徒に悪影響です。処分するなら二人も処分するべきです」

そう言ったのは伊集院さん……だっけか?
だが、先生は真っ向から否定する。

「私はそうは思わないけどな、普通の高校生なら誰でも恋人の一人くらいいるだろ?作れないやつが僻んでるようにしかみえないぞ。かったるいことに教師まきこむな」
「不純異性交遊ですよ!」
「不純か純粋かどうかは知らんが、少なくとも陰湿な真似しかできないやつよりかは純粋に見えるぞ?そう思わねーか、竹下」

竹下君は何も言わない。

「他の奴らもそうだ。下らんことに時間費やすならもっと有意義な学校生活を送るんだな」

先生の話はそこで終わった。


HRが終わると部活の準備をする生徒と帰り支度を始める生徒がいる。
今日は色々あった。
こんな日はハンバーガーでも食べて気分転換するに限る。

「……今日は特別だよ」

愛莉の許しも得た。
何も阻むものはない。



ファーストフード店でハンバーガーを3つとポテトとジュースと……。

「冬夜君食べ過ぎ!!」

……この辺にしておいてやるか。
気持ちよくハンバーガーを口にする僕。

「ほら、ケチャップ口についてる」

そういって紙で僕の口の周りを拭く愛莉。
どうせすぐつくのに。

「本当どこでもいちゃつくよなあ、トーヤ達は」

カンナが呆れたように言う。

「あ、ごめん」

どうしてか愛莉が謝る。

「いや別にいいんだ。まあ、羨ましくはあるけどな」

そう言って笑うカンナ。
あ、そうか。
カンナは誠といちゃつけないからか。

「ごめん気がつかなかった」

僕も謝る。

「だから謝らなくてもいいって、ただあんなことがあったのに何事もなかったかのように振る舞いができる2人が羨ましくてさ」

あんなこと?
ああ、学校でのことか。

「だってそれは……ねえ?冬夜君」

僕に振るか。

「まあ、小中と慣れてきてるからな」

僕がそう言うと愛莉もうなずく。

「私は慣れなかったよ。竹下の奴に胸ぐら掴まれたとき怖くて何もできなかった」
「それは女の子なんだし、仕方ないんじゃない?」
「そうだよむしろ女子に手を出す竹下君に問題が」
「そうかなあ、その後急に東京で虐められていたことを思い出してさ……」

こんな弱気なカンナ久しぶりに見た。
こんなときに慰めてやるべきの誠は今はいない。

「カンナ、気にしてもしょうがないよ。一月もすれば無くなるから」
「一月も耐えられるのかよ。二人は」
「僕は、愛莉とカンナがいるから。せっかくだし楽しく学校生活送りたいよ」
「そうそう、水田先生も言ってたでしょ?有意義にすごせって」

愛莉が賛同する。

「トーヤ達は強いんだな。でもそこは『愛莉と一緒だから』って言っとけ」

そう言ってカンナは笑う。

「神奈も一緒だよ~」

と愛莉はカンナに抱き着く。


夜九時
僕と愛莉はカンナを家に送る。
するとカンナは何かを思い出したかのように言った。

「あ、そうだ。今日の事誠には内緒だからな」
「え?でも……」
「頼むよ愛莉。今はサッカーに集中させてやりたい」
「分かったよ。言わないよ」

僕が代わって答えた。

「え、ちょっと冬夜君!」
「サンキューな冬夜。じゃあまた明日」

そう言ってカンナは家に入った。


帰り道。

「どうしてあんなこと言ったの?」
「知られたくないことだってあるんだろ?僕だって愛莉に心配かけたくない」
「そりゃ私だってかけたくないけど、でも内緒にされててショックな事ってない?」

そう言われるとそうだな。

「でも今誠が知ったところで誠に出来る事は何もないだろ。精々不安にさせるくらいだ。だったら知らないほうが良いよ」
「ふ~ん」

とは、言いつつ心配だった。
僕が誠だったらどうだろう?
後で分かったらどう思うだろう?

「冬夜君もきをつけてね」
「え?」

何を?

「冬夜君他人のことになるとすぐカッとなるから。自分の事は平気だけど」

ああ、喧嘩の事か。

「気をつけるよ」
「うん!」
「今日は家に寄っていくか?」
「週末まで我慢する……いや、連休までかな」

いつの間にか愛莉の家についていた。

「じゃあ、また明日」
「うん、また明日ね」

そう言って愛莉が家の中に入っていくのを見届けると僕も家に帰った。
その時、誠から電話が。
部屋に入ってかけなおす。

「もしもし冬夜か?」
「うん、何かあった?」
「神奈に電話したらなんか様子が変で。冬夜何か心当たりないか?」
「特にないけど……。どう変だった」
「急に逢いたいって一点張りで……。お前らならなんか知ってるのかな?って」
「いや、分からない。多分、寂しいんじゃないかな?二週間くらいあってないんだろ?」
「だと、いいんだけど。いや、良くないか……」
「まあ、励ましてやれよ。あと、休みあったら、会いにいってやれ」
「うん、GWには休みとれると思うんだけど」
「前半は無理だぞ、宿泊研修あるから」
「そうか。わかった。後半休みとるわ」
「ああ、無理はするなよ」
「わかってる。冬夜に任せっきりで悪いが神奈のこと少しだけ気にかけてやってくれ」
「わかった。」
「じゃあな」

電話はそこで終わった。

やっぱりカンナ不安だったんだな。
でもカンナが直接虐められてるわけじゃない。
もう少しすればいずれ収まる。
楽観視しすぎかな?
でも今は耐えるしかない。
カンナの事も少し構ってやろう。
時間が解決するしかないんだ……。
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