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2ndSEASON
亜子の恋
しおりを挟む(1)
今日は私の事で親戚が集まっていた。
理由は大体察しがつく。
私の事なんだから放っておいてくれていいのに。
いつもそうだったでしょ?
なぜ今回だけこんなに事を大げさにするの?
「亜子ちゃん、相手は知ってるの?」
と、冬夜君の両親が聞いてきた。
「知らない」
と、だけ答えた。
知ってたら大事にするんでしょ?
あの人に迷惑はかけられない。
「まあ、学業が疎かにならないなら、構わんが……」
父さんがいう。
そうよね、父さんならそう言うと思ってた。
昔から兄さんにしか興味ない人だったから。
「いいわけないでしょ!亜子はまだ14歳ですよ!」
ヒステリックに母さんが叫ぶ。
なんでも自分の思い通りにならないと気が済まない人。
私の事なのに私の外で話し合いは行われてる。
もういいかな?
しかし……
「亜子を家に連れて帰るか」
そんな一言を聞いた時、ついカッとなってしまった。
「父さんたちには関係ないでしょ!今までみたいに兄さんだけ気にかけてたらいいじゃない!!」
そう怒鳴りつけて、自分の部屋に閉じこもった。
ドンドンとドアを叩く父さんたち。
「出てきなさい、ちゃんと話し合おう」
話なんてない。
今日はそれっきり部屋から出なかった。
鍵はかけてある。
ベッドによこになり枕で耳を塞いで私は寝ていた。
明日になれば憂鬱な連休から解放される。
そしてあの人に逢える……。
(2)
一周忌の為に実家に戻ることになった。
愛莉が見送りに来てた。
実家には亜子がいる。
それで心配なんだろう。
「すぐ帰ってくるから」
そう言い聞かせ、実家に向かった。
「ところで、親族会議って何があったの?」
父さんに聞いてみた。
前から気になっていたことだ。
「ちょっと亜子ちゃんがな……」
また亜子か。
「冬夜は何も聞いてないの?」
母さんが逆に質問してきた。
「いや特に何も?」
「そう……」
「亜子がなにかやったの?」
「冬夜には関係ない事だ」
聞いておいてそれかよ……。
それで話は終わった。
実家に着くとお祖母さんが出迎えてくれた。
亜子は部屋に閉じこもったまま。
話をソコソコにすると制服に着替えて法要を済ませる。
法要が済むと、また着替えて晩御飯になる。
そして始まる勝也の自慢話。
聞くのも面倒なのでファーストフード店に足を運んだ。
愛莉が居たら怒られるな。
叔父さんがついてきた、亜子もついてくる。
なんか元気ないな亜子。
「どうした亜子、なんかあったのか?」
「関係ない!!」って怒鳴られることを想定していたが予想外だった。
「冬夜君は良いわね。好きになった人が同い年で」
はい?
「亜子誰かを好きになったのか?」
ハンバーガー一つ目をを頬張りながら聞いた。
「嬉しいでしょ?もう冬夜君に付きまとうことは無いから」
「そういう意味で言ったんじゃなくて」
「……先生を好きになった」
白ブドウジュース吹きそうになった。
「本気で言ってるのか!?」
「親と一緒の事言うのね」
「だって、年上にもほどがあるだろ!」
「先生を好きになっちゃいけないの?」
「……その事先生は知ってるのか?」
亜子は首を横に振った。
「知らせたら、避けられるでしょ」
意外に冷静なんだな。
「……辛くないのか?」
「……冬夜君は愛莉さんを好きになって辛かったことは無いの?」
「あるけど」
「じゃ、聞かなくてもわかるでしょ?」
まあ、想像はつく。
好きになっても想いは伝えられない。
伝えたら相手には確実に避けられてしまう。
周りからは猛反対されるだろうし。
つらいだろうな。
じゃあ、なぜそんな人を好きになったの?
「人を好きになるのに理由がいるかい?……か」
誰かが言っていたな。
「理由ならあるわ。同級生より大人で優しくてなんでも受け止めてくれるから」
なるほど、甘えられる人が欲しかったわけだ。
跡取りの妹。
親からは見向きもされない。
少しでも振り向いてもらおうと努力して、その結果優等生になった。
が、振り向いてもらえない。
同級生からは距離をおかれる。
そんな中頼りになるのは先生だけだった。
そんなところか?
いつかは離れなければいけない相手でもすがりたかったんだな?
「大変だな……亜子」
「こういうときだけ優しいのね、冬夜君は。そうやって愛莉さんを落としたの?」
「愛莉が僕を好きになった理由は知らない。僕にとってあこがれの存在だったけど」
「そう……」
三つ目のハンバーガーを食べ終えたところで、叔父さんが「そろそろ帰ろうか?」と言いだした。
まだオニオンリング食べ終わってないんですけど。
オニオンリングを食べながら帰る。
「私やっぱり冬夜君好きになればよかったかな」
むせた。
「大丈夫か?」
と、背中をさすってくれる叔父さん。
「冗談よ、私今本気で恋してるから」
「がんばれよ」
そう言うしかないよな?
「ありがとう、そう言ってくれるのは冬夜君だけよ」
初めて亜子が笑っているのを見た気がする。
月明かりに照らされたそれはドキッとするほど綺麗なものだった。
(3)
「ふ~ん、なるほどね~」
愛莉はシャーペンをくるくる回しながら聞いてた。
今日はカンナはバイトで来ていない。
「先生を好きになるか~、私にはなかったな~」
「そうなの?」
「私の場合は先生からも腫れものに触るような扱いだったし、虐められてる時も何もしてくれなかったし」
「幼稚園の時とかは?」
「全くなかったなぁ~」
「そうか……」
愛莉は何かを物欲しそうな顔をしている。
この場合何かを聞いてほしそうな顔と言った方が正しいのか?
聞かなきゃ話が進まないし、また不貞腐れられても困る。
答えがなんとなくわかる質問を愛莉に投げかけた。
「……愛莉の初恋ってだ……」
「冬夜君♪」
言うと思ったよ。
でもさ、初恋って実らないって言うよね?
「愛莉、初恋ってだいたい実らないんだぜ?」
ちょっと意地悪すぎたかな?
愛莉は頬を膨らませて怒ってる。
「そんなことないも~ん。何?冬夜君は実らないほうが良いわけ?」
「そんなわけないだろ!」
「じゃあ、そう言うこと言わないの!」
「ごめん」
「で、冬夜君の初恋は誰?」
……愛莉って答えた方が良いのかな?
「愛莉だよ」
「嘘!神奈からちゃんと話聞いてるんだから」
「……あれって恋っていうのかな?」
「え?」
「ただ、助けてあげなきゃって思っただけで、助けられなかったから泣いてたんだと思ってたけど」
言われてみるとあれが初恋な気がしてきた。
「……どうして助けてあげたいと思ったの?」
愛莉の質問に待ってましたとばかりに答えた
「誰かを助けるのに理由がいるかい?」
多分一番言ってみたかったセリフかもしれない。
シーンと静まり返る
「……それが理由?」
愛莉はきょとんとしてる。
「いや、だから……」
やっちまった感が半端ない。
「冬夜君、どうせ映画か漫画のセリフなんだろうけどそういうの引用するのやめようよ」
やっぱりやっちまったか……。
「どうせ、イケメンじゃない僕が言っても説得力ないよ」
「そうじゃなくてね。真面目に人が話してる時にふざけないでって言いたいの」
「ふざけてないよ!結構真面目にこたえたつもりなんだけど」
「本当に理由がいらないと思う?」
「うん、無意識にそう思ってた」
「それは相手が神奈だったからじゃないの?」
「それはない」
「どうして?」
「愛莉の時だって助けたろ?」
「私以外でも助けた?」
「困ってる人がいたら助けるもんだろ?」
「じゃあ、私以外の人を好きになったかもしれないってこと?」
「あの時は愛莉の事憧れてたから……愛莉ばっかり見てた……あっ!」
「やっと気づいたのね……」
そういうことだったのか。
じゃ、カンナの時も?
それで泣いた?
「確かにカンナの時わけもなく泣いてた。助けられなかったからとかじゃなくて何となく寂しい気分になった。ああ、これが失恋なんだなって」
「ほらね」
「ごめん」
愛莉が「えいっ!」という掛け声と共に僕の頭にチョップする。
「前にも言ったよ。『悪い事してないのに謝るのや止めて』って」
「そうだったね、ごめ……」
「また口塞がれたい?」
愛莉がにこにこしながら言う。
寧ろ塞ぎたいのか?
「イチャイチャするのは勉強終わってからって言ってたよな?」
「もう~、そう言う都合の良いことだけはしっかり覚えてるんだから~」
そう言ってむくれる愛莉。
「早く勉強片付けようぜ」
なるべく優しく言ってやる
「うん!」
弾むような元気な声で愛莉は返事をした。
(4)
後日譚
結局私は家に帰ることになった。
1学期を最後にこの学校を去る。
皆とのお別れも済ませた。
最後に職員室に行く。
「……先生ちょっといいですか?」
「どうした?井上」
「今までお世話になりました」
「ああ、向こうでも元気でな」
「こっちで元気でいられたのは先生のお蔭です」
「……井上?」
私は一通の手紙を先生に渡した。
「私の気持ちです。私が子供過ぎるのは分かってます。でも後悔するのは嫌だから。気持ちだけ纏めました。受け取ってください」
そう言って私は職員室を後にした。
これでいい。
これで良かったんだ。
夏休みに入る頃。
私は引っ越しの準備をしていた。
友達には伝えてあったので会いに来てくれた。
最後のお別れだ。
「じゃあ、さようなら」
「待って、亜子ちゃん」
友達の一人が手紙をよこしてくれた。
「これ……先生から」
「ありがとう」
そうして車に乗り込む。
「またねー」
またなんてないのに……。
手紙を見る。
先日の手紙の返事だった。
予想通りの事が書いてあった。
これで私の初恋は終わった。
「亜子?」
母さんが私に声をかける。
私は泣いていた。
泣かないって決めていたのに。
「また良か人にあえるしゃ」
父さんが言う。
引き裂いた本人が他人事のように言う。
顔には出さなかった。
父さんが悪いんじゃないのも分っていた。
叶わぬ恋だとも分かっていた。
これでよかったんだ。
次はもっといい人に逢えると信じて。
明日を見つめていこう。
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