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2ndSEASON
何度も何度も
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「冬夜君おはよう~」
弾むような愛莉の声。
でも今日は自宅学習の日だぞ。
8時に来ることは無いんじゃないか?
「と、言うわけでまた一時間後に」
と言い残して僕は寝るのでした。とはいかず……。
「もう、いつもいつも……」
すたすたと足音が聞こえてくる。
何か仕掛けてくる。
僕は身構えた。が、何もしてこない。
あれ?
僕は目を開け愛莉を探す。
すると定位置に座って勉強を始める愛莉とカンナ。
あれ?
「なあ、愛莉。これってどういう意味だ?」
「ああ、それはね……」
二人で勉強をしている。
最近愛莉は人に教える術を覚えたようだ。
って感心してる場合じゃない。
二人で勉強か?
部屋の主である僕を差し置いて勉強か?
気になって眠れない。
黙って起き上がる僕。
「あれ?後1時間寝てるんじゃないの?」
「……飯食ってくる」
部屋を出る際に聞こえてくる二人のクスクス笑う声。
ああ、今回はそういう作戦だったんだな。
勉強していて気になることが一つある。
カンナはともかく、愛莉の荷物の量は一体なんだ?
スポーツバッグいっぱいに詰まった荷物。
何が入っているんだ?
なんか嫌な予感がする。
うん、多分あってる。
聞かないほうがいいよな。
地雷を踏みぬくような真似はしたくない。
そんな僕の視線が荷物に向いてることに気づいたのか、愛莉はにやにやしてる。
気がついた?さあ、いつ聞いてもいいよ?答えてあげる。
その手には乗らないぞ。
聞けば最後。
いや、聞かなくても既に堀は埋め尽くされているんだろうけど。
外堀から埋めるというけど、内側からすでに埋められている気がする。
むしろ城門が開かれいつでもウェルカムな状態。
最後の抵抗。
敢えて話に乗らない。
だが、そんな抵抗もむなしく。
「ねえ、冬夜君」
業を煮やした愛莉が話しかけてきた。
「あ、カンナ。2年のクラス編成志望ちゃんと出しておいたか?間違ってないよな」
「大丈夫だよ。それより愛莉が何か用があるみたいだぞ」
見捨てられた。
この家にはもう敵しかいない。
「冬夜君?」
そうだ、こういう時は音楽を聴こう。テレビは気が散るだけだけど、音楽はリラックス効果があるって聞いた。
「おーい」
何が良いかな?そういや昔観光地で買った某アニメ会社のオルゴールCDが。
あれ、なんか怖いオーラが漂って来た。
「私の歌を聴けぇ!」
と、言わんばかりのオーラが。
無駄な足掻きを続けていると思わぬところからとどめを刺された。
「冬夜?今日から3日間愛莉ちゃん泊まるらしいから少しは部屋片づけておきなさいよ」
母さんがノックして部屋の外から声がする。
勝ち誇る愛莉。
ニヤニヤしてるカンナ。
終わった。すべて終わった。
いや、別に愛莉が泊まることに抵抗があるわけじゃない。
「あんなところ見せつけておいて今更何を慌ててるんだ?」と言うカンナの台詞どうりだ。
じゃあ、何が問題なんだって?
愛莉が嫌いなわけじゃない。
サイコパスじみてるけど「お互いに愛し合ってる仲」だと自負してる。
愛莉の全てを受け止める覚悟は決めたつもりだ。
その証に愛莉にすべてを話した。
その結果、愛莉は僕を受け止めてくれた。
これ以上の事を何を望む?
そこまで分かっていて何を四の五の言ってるのか?って。
彼女と3日間過ごすというのは構わないけど。
でも、偶には一人で過ごしたい夜だってあるじゃないか。
男なら分かるだろ?
例えば誠からもらったDVDを見たくなる時とか。
PCの検索履歴に残せないような動画を見たくなる時とか。
彼女で我慢しろ?って。
えらい人が言ってた。
彼女とソレは違うものだって。
まあ、今更何を言っても遅い。
開門されるどころか腹心に裏切られた気分だ。
ちょっと色々思ってる時間が長過ぎたらしい。
愛莉の表情が険しくなる。
「私と寝るのイヤ?」
そんなわけないだろ。
思春期真っ盛りの男子が彼女と寝るというシチュエーションを互いの両親が承諾してるという、これ以上ない環境でそんなことを言える賢者がいるなら会ってみたい。
あって小一時間話してみたい。
さっきから一言も喋ってない僕を不安に思ったのか不快にさせたのか。
悲しそうな顔をする愛莉。
今なら落とせると、殺到する男子がさぞ多い事だろう。
何も言わないことにイライラしていたのはカンナも同じだったらしい。
何とか言えよと脅しに近い目線が僕に突き刺さる。
このまま行けば最悪の状況になるかもしれない。
一言いえば良いんだ「むしろ歓迎だよ」って。
どうして言えない?
苦悩する僕。
その時すっと立ち上がる愛莉。
「私帰る」とでも言いだすのだろうか?
まずい。
「愛莉、あのさ!イヤとかそんなんじゃなくて……!?」
愛莉は右手の人差し指を僕の唇に当て、微笑む。
どうしたのか?
僕もカンナも愛莉の行動に注目する、
「分かってるんだから」
はい?
「ごめんね、冬夜君困らせてみたかっただけ」
え?
これドッキリってやつ?
何が分かってるのか僕には分からない。
「冬夜君こういう状況に弱いもんね。二人っきりの時は平気なのに」
いやいや。二人っきりの時もこういう真似されたら困ってますよ僕。
ていうか愛莉キャラ変わってないか?
今どういう状況なの?
ちょっと整理してみよう。
愛莉が3日間の自宅学習の間うちに泊まる。
で、僕は必死に抵抗を試みる。
でも本気で拒んでるわけじゃない。
愛莉は怒りだしたかと思ったら謎発言。
……誰か教えてくれ、僕は一体どうすればいい?
笑えば良いと思うよ。
なんかの台詞であったな。
「は、はは……」
精一杯作り笑いをする。
獲物をしとめたかのように満足気に微笑む愛莉。
女子という生き物に恐怖を覚えた。
「……ふーん」
カンナは何を思ったのだろう。
勉強に戻る。
「さ、勉強しよっ?」
愛莉がそう言うと僕は黙って頷いた。
(2)
「冬夜君」
「なに?」
いつものピロートークだ。
「またどうせ考えてないんでしょう?3月14日」
え?……あっ!
「ごめん……」
「そんなことだろうと思った。神奈の分は考えてるの?」
「あ、いつも通りで良いかな?って……」
流石にカンナにサプライズは要らないだろ。
問題は愛莉だ。
この時点でサプライズもへったくれもない。
頭を悩ませる。
「じゃあ、私から提案してもいい?」
状況的には好都合だ。
愛莉は何が欲しいのかな?って悩む必要がなくなるんだから。
後は無茶な要求さえされなければ。
「冬夜君下さい!……ってもうもらってるよね」
一瞬ドキッとした。
愛莉は笑ってる。
なんだろう?
愛は人を変えるというけど、人格そのものを変えるものなのか?
「冬夜君にとって都合のいいものだよ?」
本当にそうだとありがたいけど。
嫌な予感しかしない。
ああ、香水でもブレスレットでもネックレスでも、なんなら右手の薬指にペアリングでも買っておけばよかった。
「あのね、神奈のプレゼント選び私も付き合う~」
口調はいつもの愛莉にもどってるが、発言が何か雲行きが怪しい。
お願いいつもの愛莉にもどって。
「そんなたいそうなものを選ぶつもりはないから……だめ~?」
その表情はずるいぞ愛莉。
どんな男でも一発で落とされると思う可愛らしい表情。
「だめじゃないよ。女子に選んでもらうのも悪くないかもしれない。で、それが愛莉のプレゼントになるの」
こつん。
頭を小突かれた。
「そんなわけないでしょ?その後に何か美味しい物食べさせてよ」
え?愛莉の口から「食べさせて」って言った?
僕に散々「食べすぎ」って怒ってた愛莉から。
「だめ?」
一々可愛い愛莉の落とし文句にあっさり陥落する僕。
「分かったよ」
「ちゃんと探しておいてよね。ラーメン屋さんとか言ったら怒るからね」
……チャンポンだったらいいのかな?
まあ、買い物はショッピングモールだしそこのお店を探せばいいか。
「分かった」
「わ~い」
元の人格にもどったみたいだ。
「でもそんなのでいいのか?なんか思い出に残るものを」
「冬夜君と居ることが思い出だよ~」
そうかそれでいいのか?
ってそんなわけないよな。
ちょっと小遣い前借しようかな?
「無理して高い物じゃなくてもいいんだよ~」
先手を打たれた。
これは違う意味で困った。
それで、「はい、そうですか?」と素直に従っていいものかどうか。
「私本気だからね。本気で今の現状に満足してる。あの晩冬夜君が打ち明けてくれたこと。私ちゃんと受け止めてるよ」
「それは分かってる」
「冬夜君は私の悪い癖分かってるよね?その、我儘だとかすぐ拗ねるとか……」
「最近はそんなことないだろ?」
それは年明けから感じてたこと。
「口うるさいって思ってない?」
「いや」
「それならいいんだけど……」
自分で分かってたのか?
それで不安になってるのか?
「愛莉、愛莉のそれは全て可愛いと思える。それって多分愛莉を受け入れているんだと思う。悪い所も含めて。それはこれからも変わらない」
「本当に?」
「ああ、愛莉言ってくれたよね『僕が変わった』って。そういうことだよ」
「よかった~」
4年間回り道をしてすれ違う愛情。
でも少しずつ回り道でもいつかは届くのだろう。不変の愛ってやつに。
高校一年で変わらぬ愛に辿り着くとは思わなかったけど。
「冬夜君本当に変わったね。今凄い素敵な事考えてる」
な、なんでわかるの?
「冬夜君の顔見てたら分かるよ、私を見る目がものすごく優しいの」
「この状況で優しい表情を出せないやつがいるのか?」
「クラスの人が言ってた。エッチした後すぐにタバコ吸ってシャワーに行く人いるんだって」
どこでそんな情報を仕入れてくるんだ。
「だから冬夜君は優しい人。そして今素敵な事考えてる」
「愛莉も変わったよ」
時折見せる豹変ぷりに辟易するけど。
「それっていい意味で?」
「もちろん」
「よかった~」
愛莉は喜んでいる。
「あ、愛莉。服は着ておいた方が良い」
「はい?」
「朝またカンナが来るかもしれないだろ?」
「その前に起きるから平気だよ~」
この前寝過ごしてとんでもない所を見られたのを忘れているのか?
「あの時は冬夜君のカミングアウトに驚いて朝まで眠れなかったから」
ばつが悪そうに愛莉が言う。
「今度はちゃんと起きるから、このままでいさせて」
「風邪ひかないようにな……」
そういうと愛莉に布団をかけしっかりと愛莉に密着する。
暖房もつけておく。
つけっぱなしも悪いみたいだけど、タイマー入れてるから大丈夫だろ。
電気を消す。
真っ暗の中そっと囁く。
「おやすみなさい」
「うん、おやすみなさい」
(3)
日も暮れる頃。僕たちはショッピングモールに来ていた。
愛莉は随分とめかしこんでいた。
結構いるんだな、カップルで買いに来てる人達。
好きなの買ってやるから選べよって感じなんだろうか?
女性が主導権を握って買い物をしているカップルが多い気がする。
ひょっとしたら僕たちみたいに友達のお返しを選んでくれてるのかもしれない。
僕は迷わずお菓子のコーナーに向かったのだが、愛莉がそれを止めた。
「ちょっとは考えなさい!」と愛莉。
え、でもネットで調べたぞ?
やっぱりお菓子が無難だって。
愛莉は何も言わず小物のコーナーに行くと物色を始める。
義理なんだしそこまで真剣に選ばなくてもいいんじゃ……。
「うん、これがいい!」
と、愛莉が選んだのは、一枚のハンカチだった。
「うん、これがいいよ。冬夜君これ買いなよ」とハンカチをやけに推す愛莉。
愛莉が欲しい物なのか?
そうだな……。
「愛莉も欲しいならなんか買ってあげるよ?」
愛莉は首を横に振った。
「いいの、私はご馳走してもらえるし、何より冬夜君とこうやってショッピング出来るってなかなかないから」
「そうか、それならいいんだけど」
「早く買ってきなよ」
僕はレジに並ぶ。
ラッピングしてもらい。ハンカチを買った。
「絶対神奈喜ぶよ」
そういうものなのか?
まあ、性格は多少違うけど同じ年頃の女子がいうんだから間違いないだろ。
やっぱり愛莉の分も買った方が良いのかな?
そう思い、バスセットを手に取ると。
「他に誰かにもらったの?」と首をかしげる愛莉。
「いや、愛莉にも買ってやろうかと思って」
「私はご飯食べさせてもらえたらそれでいいって言ったでしょ。本当にそれだけでいいから」
そう言って手にしたバスセットを元に戻す愛莉。
「行こっ、お腹すいちゃった」
僕が、選んだお店はオムライスをメインとした洋食屋さんだった。
愛莉はオムライスを、僕はオムライスとパスタとピザと……。
「冬夜君食べ過ぎ!」
「ピザは二人で食べようと思って」
「う~ん、どっちがご馳走してるかわからないよ」
呆れた様子の愛莉だった。
折角来たんだから美味しい物は食べないと。
その後頼んだものが出てきてそれを食べる愛莉と僕。
お店の雰囲気に満足したのか楽し気な愛莉。
談笑しながら、食事を楽しむ僕と愛莉。
お腹が満たされ、ジュースを飲み終えると会計を済ませて店を後にする。
「美味しかったね」と、愛莉にはご満足いただけたようだ。
「楽しんでもらえて良かったよ」と僕は胸を撫でおろす。
「この前のクリスマスもそうだったんだけど、偶にはこういう食事ならありかな~って。思ってたんだよね」
なるほどね、雰囲気を楽しみたかったのか。
それならもっとオシャレな店探すべきだったかな?
「そう言ってくれればもっと違う店選んだのに」
「ここで十分だったよ。これ以上は大人になってお酒が楽しめるようになってからだね」
機嫌は良いようだ。
良かった、回転ずしとかラーメン屋選んでたら烈火の如く怒っていただろう。
でも本当にこれだけで良かったの?
もっと形に残るものの方が良かったんじゃないのか?
上機嫌の愛莉に尋ねてみる?
「もっと形に残るものの方が良かったんでないか?」
愛莉はにこりと笑って言った。
「わかってないなぁ。冬夜君、思い出も形に残るんだよ。その想い出が誇れるようなものならそれでいい。これから先もずっと作っていこうね。想い出を誇れるように。変わらない愛を」
なるほどね。
想い出か。
そういえば、写真いっぱい撮ってたな。
まあ、愛莉が喜んでるならそれでいいか。
元々愛莉に喜んでもらう事が目的だったし。
目的は達成できたから良かったとしよう。
良い想い出も悲しい想い出も何度も何度も繰り返し。
それでもなおありのままを愛せるように。
そんな風になっていきたい。
いつか変わらぬ愛に辿り着けるように。
「んじゃ、神奈の家にいこっか?プレゼント渡さないと」
僕たちの高校生活はまだ始まったばかりだ。
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