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2ndSEASON
冬夜の時間
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「冬夜君おっはよ~!」
「おはよう……愛莉。なんかいつもより早くない?」
時計を見るといつもより1時間も早い。
「だって今日から朝練参加するんでしょ?」
あ、そう言えばサッカー部に体験入部したんだっけ?
でもおかしくないか?
何で愛莉まで早く来るんだ?
「愛莉。なんで愛莉まで早く来るわけ?」
「私が起こさなくて誰が冬夜君を起こすの?」
いや、親とか普通にいるから。
そのドヤ顔はどうかと思うぞ愛莉。
「いや、普通に親とかいるし一人でも起きれるから」
「寝てたじゃない」
うっ!
「それに冬夜君の練習風景みたいし」
あれか、グラウンドで練習してる中一人外で見てるやつか。
よほどのマニアックなファンじゃないとしないと思うぞ。
愛莉そんなキャラじゃないだろ?
「退屈なだけだと思うぞ……。そんな大した動き出来ると思わないし」
「サッカーも興味はちょこっとあるけど、それより冬夜君が動いてるところ見たいから」
完全に僕マニアですね。
写真とか撮るんですか?
ジャージの匂い嗅いだりするんですか?
愛莉最近キャラ分かんなくなってきてるぞ。
まあ、断っても多分ついてくるだろう。
カンナは来てないようだ。
まあ、バイト遅いし勉強もしてるし、流石に朝5時はきついだろう。
「んじゃ、いこっか……」
「うん!」
(2)
朝グラウンドに着くとすでに練習は始まっていた。
「遅いぞ、片桐」
「すいません」
「とりあえずグラウンド10周!」
まあ、基礎体力って必要だよね。
多分今一番欠けてるものだと思うし。
現に10周は知っただけで息上がってるし。
「次そこにコーン並んでるだろう?ドリブルスラローム!」
この練習意味ないってネットでみたことある。
まあ、ボールタッチ覚えるって意味では意味あるんだろうな。
でも、あんまりこの練習好きじゃない。
僕はボールを見ながらジグザグにコーンの間を掻い潜る。
ほら、聞こえる。
ボールしか見ないでドリブルしてる様がいかに無様に映っているんだろう?
「片桐、前見てドリブルしろ」
前見たらボールが分からないだろ?
コーンを見なくていいのか?
コーンが動くわけでもないのに見る必要あるの?
練習が終わった後梅木君に言われた言葉
「お前がドリブルしないわけ分かった。ドリブル出来ないんだな」
ちょっと違うけどまあ、いいや。そう思ってもらえたら。
放課後の練習は団体練習に混ざった。
と、いっても相も変わらずフィールドの上をウロウロしてるだけだけど。
偶に飛んできたボールを味方のボランチに返してやるだけ。
簡単な作業ですよ。
僕が担当してるのは右サイドバック。
自陣のフィールドの半分から右を守ってればいい。
自分のゾーンだけ守ってればいい?
そりゃ、味方の動きに合わせてプレスするくらいの事はしますよ。
どうでもいいけどこっち攻められすぎでない?
そう思うと明らかに合いてるスペースがあった。
どうするべきか?
下手に動くとまた目立つな。
放っておくか。
そこに佐倉さんからの的確な指示が。
「片桐先輩!!前空いてます!!」
何で余計な事いうかなあ。
動かなくちゃいけなくなったじゃないか?
当然相手も動く。
此方の動きに合わせてゆったりめのパスを出す味方。
そんなぱすじゃカットされちゃうよ。
自分からボールを取りに行く。
敵に囲まれた。
どうする?
味方にパスを返す。
と見せかけて後ろにステップする。
ボールにはバックスピンをかけてあった。
自分に帰ってくるボールをフリーの状態で受け取る。
そのボールをグラウンダーなパスで前に送り込む。
相手の足の間を縫って味方が押し込む……はずだったのだが。
どうやら味方の視界からもボールを消し去ったみたいだ。
慌てて足を出すが間に合わない。
大丈夫だよ。そんなに謝らなくても。
ボールはポストの内側に当り跳ね返ったボールはゴールラインを割る。
呆気にとられるチームメイト。
「やっぱ片桐スゲーよ本当に1プレイで流れ変えやがった」
そう言って梅木君が背中をバシバシ叩く。
割と痛いんですけど。
このプレイがどう監督に映ったのか知らないけど、あまりよくは思われなかったようだ。
この日を境にひたすらフィジカル強化の練習メニューに移行する。
ある日の帰り。
愛莉は練習中ずっと見てたようだ。
ていうか、毎日続けるのか?
勉強する時間減るぞ……?
「それを言ったら冬夜君もだよ?大丈夫?」
「うん、大丈夫じゃないかも。だから愛莉だけでも」
「運命共同体だよ!冬夜君がダメなら私も浪人なんだから私だけ勉強しても仕方ないでしょ!」
ああ、そんな約束してたんだった。
簡単に請け負ってしまった自分を呪う。
「ごめんな……」
「いいよ、相変わらずめんどくさそうにやってたから心配だったけど、そっちは大丈夫なの?」
「今のところは大丈夫だよ。全体練習から外されたし、初日以降目立つことはなくなったからね」
ていうか来なくていいんじゃないか?とさえ思える。
「無理して続けなくてもいいんだよ。私が美樹本先生に直訴してあげる」
「大丈夫、もうすぐインハイ県予選だろ?そこまでの約束だし」
「そっかあ。それなら良いんだけど」
「うん、それより早く帰って勉強しないとな。いつもより時間少ないんだし」
「そうだね!」
愛莉は微笑む。
その微笑み一つでどれだけ救われる事か。
(3)
インハイ県予選。
監督の采配が良いのか?メンバーの能力が向上しているのか?
僕たちの学校は決勝まで進んだ。
決勝の相手は誠たちの学校。
手を抜いてやれよ?
心配するな。一度もフィールドに立ってない。
やっぱり僕要らないんじゃないのか?
しかし誠たちも高校サッカー3回戦まで勝ち上がった強豪。
防戦一方だった。
前半が終わって控室に戻る。
「片桐!後半お前に賭けるぞ」
はい、45分走れと?
そんな体力ないと何度言わせれば。
この監督考えてることがわからない。
そんな監督が控室を出る際に言った一言。
「片桐、俺をドキドキさせてくれ」
後半が始まる。
相変わらずの防戦一方だった。
が、やることは変わらなかった。
来たボールを梅木君に返してやる。
あとは梅木君が攻めの起点になってくれるだろう。
誠が切り込んでくる。
「お前サッカーやるなって言っただろ!」
「成り行き上でね!ごめん!」
「謝るなら一点譲ってくれよ」
「それで譲ってもらって嬉しいかい」
「まあ、お前と一回勝負してみたかったってのもあるな!」
走力は誠の方が何枚も上手。
だけど誠にも弱点がある。
いや、弱点なのか普通なのかわからないけど。
誠はボールを受け取る際、一度トラップする。
走力の差はそこで補える。
そしてボールが離れたところに飛び込みボールと誠の間に割って入る。
倒してはいない。
そしてボールを踵で蹴ってボールを梅木くんに渡す。
いつ梅木君を見てるのかって?
プレイに参加してない時に決まってるだろ?
膠着状態が続いて残り5分になったとき監督が動いた。
FWを一枚抜いてDFを投入する。
え?意味が分かんないんですけど。
延長確定ですか?
入ってきたDFが僕のところに駆け寄る。
「交代だ。お前はFWに回れ」
もっとしんどいことになるのか?
僕は所謂セカンドトップというポジションに移された。
誠をフリーにしていいのか?
交代してすぐ僕のところにパスが来た。
周りは敵だらけ。何とかボールをとられないように立ち回る。
前を向かせてもらえない。
まあ、どうせ足下しか見てないんだけど。
その時時間が止まったかのように思えた。
僕の後ろには3人のDF
僕のいる位置はやや左より。
右には味方のFWが……やや下がり気味にいる。
やるかやらないか?
身体はすぐに頭で判断する前に反応していた。
ボールを右ゴール前に蹴り上げる。
キーパーが飛びつこうとするが止めた。
右FWへのパスだと判断したのか?どうせゴール外へ行くと判断したのかは分からない。
だけど誠は叫んでいた。
「そのボール止めないとダメだ!」
ボールは弧を描きゴール右上隅に食い込むように曲がる。
慌ててキーパーが飛びつこうとするがもう遅い。
ボールはバーに跳ね返りゴールラインを割る。
ホイッスルが鳴る。
味方に抱き着かれる僕。
思わず倒れる。
男に押し倒されるという不本意な状態。
やめろ、キスはよせ!
それに……。
「まだゲームは終わっていない!!」
素早くゲームを再開しよいうとする誠達。
そこは、味方のDFがセンターサークルに残りゲームを再開させない。
ああ、ダッシュするのは嫌だなぁ。
再開すると素早く攻勢にでる誠達。
僕もゴール前まで戻りボールを奪う。
その時またもや時間が止まったかのように感じる。
なんといえば良いだろう。
足下しか見てなくても周りの状況がすーっと入ってくる瞬間。
相手のプレーヤーが全員ハーフラインを超えていることもなんとなく感じた。
何も考えてなかったが大きくボールを前に蹴る僕。
皆の時間も止まっていたのだろうか。
誰も動こうとしない。
相手キーパーだけがペナルティエリア外まで出てボールを受けようとする。
誠は気づいたらしい。
「キーパー戻れ!!」
しかし相手キーパーにはその意味がわからないらしい。
その意味がわかったのは……自分の頭上をボールが通過した時。
慌てて戻るキーパー。
しかし間に合わない。
無情にもボールは無人のゴールに吸い込まれていった。
シーンと静まり返る。
「マジかよ!!」
「すげー!!」
そんな声が徐々に聞こえてき始めた。
すでにアディショナルタイムに入っていた。
「片桐!!お前やっぱ天才だよ!!」
だから男子の抱擁はいらないって。
そんなこっちの都合なんてお構いなしに抱き着くチームメイト。
そして試合は終わった。
2-0でうちの高校の優勝で幕を閉じた。
「くそぉ、こんな事なら強引にでも伊田高に引き込むんだったぜ」
悔しそうに握手を求める誠。
「心配するな全国高校サッカーは出ないから」
「約束だからな!」
少なからず応援に来てくれてた人に礼をする。
その中には愛莉たちの姿もあった。
そして自分たちのベンチに戻る。
「片桐、考え直さないか?インハイ本戦にも……」
「最初約束しましたよね?」
「お前ならサッカーで大学入れるだろ?むしろサッカーで飯食うことも」
「遠坂さんたちと同じ大学に行くって決めてるんで」
「片桐先輩!止めないでください」
だから約束したよね?佐倉さん。
インハイ予選までだって。
「片桐なんだ、もうやめるのかよ」
「辞めるなよ」
「そうだそうだ」
チームメイトにまで伝染したようだ。
「友達との約束もあるんだ。『高校ではサッカーをやるな!』って……」
「その友達鬼畜かよ!こんな才能持ってる奴にサッカーやるなとか」
「最初はサッカーで高校進学を勧めてくれたんだ。でも断ったから」
「でもよぉ……」
「よくやってくれた、片桐」
監督が割って入ってきた。
「約束を守ってくれたね、『ドキドキさせてくれ』と、あとは君の好きにしたらいい。俺は監督やっていてこれほど興奮したことは無いよ」
「監督……すいません」
「謝るくらいなら続けて欲しいがね……皆が言うように君のそれは天賦の才と呼ぶにふさわしい」
いや、おだててもなにもでませんよ。
実を言うと立っているのもきついくらいくたくたなんですがね。
明日筋肉痛だろうなぁ。
それとね、途中でFWにスイッチとか普通あり得ませんよ。
MFからならともかくDFですよ。
「約束のお礼だ。皆本戦では一勝でもあげるぞ。じゃないと片桐のお蔭でインハイに出れたと言われかねないぞ」
監督が激を飛ばす。
「は、はい!」
チームメイトがそろって挨拶する。
こうして僕の高校サッカーは幕を閉じた。
(4)
「やったな!愛莉」
神奈が飛んで跳ねて喜ぶ。
でも、誠君には悪いことしちゃったんじゃないかな?
「でもこれで終わりかぁ、トーヤのプレイ見るのも……」
神奈がしみじみと語る。
「冬夜君の選択だもん。尊重してあげようよ」
私はそう神奈に言うと、神奈は暗い表情で言った。
「愛莉、愛莉の場合と逆パターンでさ、私らがトーヤの足を引っ張ってるって考えたことはないか?」
「どういうこと?」
「私たちと同じ学校に行きたくてサッカーを封印してるとかさ」
「それはないよ。だって私冬夜君に言ったもん。『冬夜君の後を追うだけだから』それにこれ以上続けるとまた冬夜君にプレッシャーをかける人がいないとは限らない」
「そうか」
そう言って神奈は笑った。
「誰だあのFW!?」
「初めて見たぞ!?1年か!?」
「片桐冬夜!2年生らしい!」
「どうしてだ?去年はいなかったぞあんな選手」
関係者が騒いでる中をニヤニヤしながら歩く私。
すると、冬夜君がジャージ姿で女子に囲まれてるのを見つけた。
まあ、あんだけ目だったらそうなるよね。
大丈夫ですよ。私はこのくらいで怒ったりはしませんよ。
冬夜君を助けてあげようと人ごみをかき分け冬夜君に近づく。
すると何か大人の女性と話しているのを見つけた。
腕章を見るにマスコミ関係の人らしい。
「冬夜君おつかれさま~」
私が手を振ると冬夜君は気づいてくれたみたいだ。
「あ、愛莉!応援来てたんだな」
すると女性が冬夜君に尋ねていた。
「片桐君、この子たちがさっきの話の?」
「ええ、恋人の愛莉と友達の彼女の神奈です」
恋人……冬夜君からそんな言葉が聞けるとは思ってなかったぞ。
「そう……。初めまして。私オーエスの記者をやってる佐古下といいます」
「初めまして、遠坂です」
「どうも、音無です」
挨拶を済ませると佐古下さんは率直に尋ねてきた。
「遠坂さん。女性としてうかがうわ。片桐君今のままでいいと思ってる?」
「……言ってる意味がわかりません」
「彼は今高校サッカーのトッププレイヤーたち坂下君や沖君たちと同じレベルにいる。そんな才能を捨てて普通の大学進学なんてどう思ってるのかしら?」
「……冬夜君が決める事ですから。私たちがとやかく言うことじゃないと思います」
「あなたは片桐君が自分の手の届かないところに行ってしまうのを恐れている……違う?」
「どこまでも追いかけるつもりなので考えたことがありません」
私と佐古下さんの会話に緊張感を感じたのか冬夜君と神奈は何も言わない。
「どこまでも追いかけると言ったわね?」
「……それがなにか?」
「それなら私も負けないわ。彼をどこまでも追いかけるわよ。サッカーは高校サッカーだけじゃない。大学、社会人いつでもどこでもできる。彼の才能は……」
「冬夜君を才能の一言で片づけるのは止めてください!佐古下さんに冬夜君の何が分かるって言うんですか!」
「怒らせてしまったみたいね。今日は退散するわ。でもさっきの言葉よく覚えておいてね。片桐君」
冬夜君は「はい」と短く答えた。
「それではまた……嫌でも会うことになるでしょうね」
佐古下さんはそう言って去って行った。
「僕もチームメイトと一緒に帰るから。また家で」
「うん、またね」
そう言うと冬夜君は女子の大群を引き連れながら控室に戻って行った。
「大変だな、愛莉も」
「誠君も同じでしょ?」
それに冬夜君のファンは冬夜君のサッカーしか興味ない事は前に分かっていた。
大半の人は冬夜君の私生活を見ていたらそのギャップに冷めていくだろう。
私が慌てる事じゃない。
ありのままの冬夜君を受け入れることが出来るのは私以外にいない事を知っているのだから。
「じゃ、私たちも帰るか?」
「そうだね……」
その日片桐家では盛大なパーティが行われた。
カンナもこの日はバイトを休んだらしい。
「……いや、……片桐さんは立派な息子さんをお持ちで……」
「いえ、普段はただのグーたら息子ですから」
「そうですよ、遠坂さんの娘さんに比べれたらうちの息子なんて」
「そんなことないですよ~、それより二人の子供がどんな風になるのか楽しみですね~」
なんてことを言い出すのりえちゃんは!?
「愛莉ちゃん。立派な子供を産むのよ~」
「愛莉、やっぱお前の家の親ぶっ飛んでるわ……」
「……ごめん」
冬夜君は止める元気も気力もないらしい。
いつもなら止めるのに。
疲れちゃったのかな?
「冬夜?疲れたのなら上で休んでなさい」
「愛莉ちゃんにでもマッサージしてもらいなさいな~。愛莉ちゃんには私が直々に教えてるから~」
りえちゃんは黙ってて!!
顔を赤くする私を見てか、冬夜君は私と神奈に「上にいこ?」と伝えると階段を昇って行った。
私たちもついていく。
「ふぅ~」
そう言ってベッドに大の字に寝そべる冬夜君。
「冬夜君違うでしょ?」
「え?」
うつ伏せになってもらわないとマッサージできないよ?
「向きが逆……」
「あ、本当にやるんだ……悪いな」
そう言うと冬夜君はうつ伏せに姿勢をかけた。
私はその上に跨りマッサージを始める。
「なあ、トーヤ。あの記者さんになんて言われたんだ?」
神奈が直球で尋ねた。
「何が?」
「だから~『でもさっきの言葉よく覚えておいてね。片桐君』って言われてたろ?何吹き込まれたんだ?」
「別に大したことじゃないよ」
「……私いたら邪魔か?」
「え?」
「だから~!お前たち二人で話しあうことか!?って聞いてんだよ」
相変わらずサッカー以外の事には鈍い事鈍い事。
「ああ、そういう風に捕らえたんだな。いや、本当に大したことじゃないんだ」
「なら話せよ。極力二人きりの時に話せそうなことじゃない気がしてな」
「大丈夫だよ。愛莉とも冷静に話せるようになったから。まあ、いいや『あなたは地元の草サッカーで収まるような、いや日本に収まるようなスケールのサッカーじゃない。いずれ世界に目を向けることになる』ってさ。45分走ってこの様の僕に向かってよく言えるなと思ったよ」
そう言って冬夜君は笑っていた。
その時神奈の言葉を思い出した。
私たちが逆に足かせになってないか?
冬夜君のサッカーは凄い。
本格的に始めたらきっと凄い選手になる。
誠君が言ってた『ファンタジスタ』だったっけ?そんな凄い選手になると思う。
冬夜君の為にはサッカーを始めさせた方がいいのかな?
でも、冬夜君は私だけのものじゃなくちゃヤダ……。
「どうした愛莉?」
私は泣いていた。
いずれどっかに遠くに行っちゃうんじゃないかって。
そうなったら私は神奈のように我慢できるだろうか?
「言ったろ?心はいつでも一緒だって」
冬夜君?
「愛莉の考えてるなんとなく分かったから言うけどさ。ないからソレ。サッカーする気無いって言ったろ?」
「でも……」
「ついでだから言うけどさ、『あなたほどサッカーの神様に愛されてる人間はいないわよ。あなたは背を向けてもサッカーがそれを許さない』って……。だから言ってやった『サッカーの神様に愛されてなくても愛莉に愛されてるからそれで十分だ』って」
「冬夜君……」
「僕は愛莉やカンナが思ってるほどサッカー好きじゃないよ?少なくとも愛莉とどっちを選ぶと言われたら迷わず愛莉を選ぶ」
「言うようになったな。トーヤも」
そう言って神奈は立ち上がる。
「んじゃ帰るわ。誠慰めてやらないとな。『冬夜恨むぞ』って誠からメール着てたし。後は二人でよろしくやってくれ」
そう言って神奈は部屋を出て行った。
「と、いうわけだ愛莉。何も心配する必要はないんだよ」
「うん……ねえ、冬夜君」
「どうした?」
「私たちが足かせになってるってことないよね?」
「あるわけないだろ!」
よかった。
「さてっと……そろそろ十分癒されたし次は愛莉の番だな」
頭の上に?が浮かぶ。
「愛莉ちょっとどいてくれないか?」
言われたままに立ち上がると冬夜君は再び仰向けになり。私に抱き着く。
「ほら、たーんとお泣き?」
顔が赤くなっていくのが分かった。
そういっていちゃつきたいのは冬夜君でしょ!
「お互い素直じゃないね」
「かもな」
そう言って二人で笑っていた。
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