優等生と劣等生

和希

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2ndSEASON

恋人たちのクリスマス

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(1)

12月24日 クリスマスイブ。

駅前。
イルミネーションが飾られたこの時期はカップルがたくさんいる。
僕はプレゼントを鞄に仕舞い彼女が来るのを待つ。
ドキドキしてる。
ちゃんと来てくれるんだろうか?
その時僕を呼ぶ声が聞こえた。

「あ、イッシー!」

桐谷君と指原さんだ。
この二人も今日デートなんだ。
……まあ、普通なのかな?
僕は初めてだけど。

「これから恵美ちゃんと待ち合せ?」

指原さんが聞いてくる。
僕は頷いた。

「へへへ、お前持ってないだろ?一個分けてやろうか……」

そう言って財布から何かを取り出そうとすると。

ぺしっ!

指原さんが桐谷君の手を叩いた。

「瑛大。余計な事しない!イッシーリラックスリラックス」

そう言って僕の肩をもむ指原さん。

「何時から待ち合わせなの?」
「18時だけど……」
「あと30分くらいあるじゃん!ちょっと意気込みすぎだよ!」
「家に居ても落ち着かなくて」
「片桐君じゃないけど緊張しすぎると本番ミスするよ。どこかで時間潰してきなよ。10分前に居ればいいんだから」
「そうだね……」
「しょうがないなぁ。そこのコーヒーショップで時間潰すか。私たちも付き合うよ」

コーヒーショップに入るとそれぞれ注文をとり、席に着いた。

「イッシー、プレゼントは用意してるの?」

僕は頷いた。

「どんなの買ったの?」

僕はラッピングされた箱を見せた。
ネットで取り寄せたものだ。
プレゼントもネットで調べた。

「喜んでくれるかどうかは分からないけど」
「お揃いのもの買うなんてイッシーも考えたね。絶対恵美なら喜ぶって!」
「桐谷君は何買ったの?」
「僕はネックレスだよ。イッシーと同じ、ネットで調べて買った」
「これだから男どもは……ちっとは自分で調べろっての!必死に考えた末の物なら絶対に喜ぶから」

そんなものなのかな?必死にネットで調べたんだけどな……。

そうこう話してるとあっという間に時間が経った。

「あ、イッシーそろそろ時間」
「あ、本当だ」
「イッシーファイト!」

二人に見送られて僕は待ち合わせ場所に向かった。

(2)

駅前に戻り少しスマホを弄っていると、江口さんがやってきた。
赤いニットの服にベロア素材のスカート……寒くないのかな?
その様子をコーヒーショップから見てたらしい、指原さんからメッセージが。

「衣装を褒めろ!!」

「服似合ってるよ」
「ありがとう。で、誰に言われたの?」
「え?」

僕は思わずコーヒーショップの方を見る。
二人はこっち見るな!ってジェスチャーしてる。
でも、もう遅かったらしく。
江口さんは二人に向かって笑顔で手を振っていた。

「大丈夫よ?あなたがすぐに服を褒めてくれるような人じゃない事くらいわかってるから。この後どうするの?」
「い、いっしょにイルミ見てから……」

僕はドキッとした。
江口さんは僕の腕と自分の腕を組んでいた。

「じゃ、早速見て回りましょ?」

それから、写真を撮りながらイルミネーションを見て回った。

「綺麗ね……」
(江口さんも綺麗だよ)

そんなことは口に出来ずにいた。
一言いえば良いのに、その勇気すらでない。
してる事と言えば時折時間を気にしていること。

「そんなに私と一緒にいる時間がいや?」

そんなわけないじゃないですか!
って言葉に出来たらいいのに……。

「そ、そろそろ食事の時間かなって?」
「あら?お腹空いたの?」
「いえ、お店を予約してあって……」
「そうなんだ。なるほどね。それで時間を気にしていたのね」
「うん。」
「じゃあ、案内してもらおうかしら?」


そこはちょっと洒落たイタリアンの店だった。
受付に言うと席を案内してもらえた。

「お飲み物はどうしますか?」
「ジュースを……。江口さんは?」
「同じもので……」

前菜が来るまでの間にプレゼントを渡してしまおう。

「江口さんこれ……」

僕はバッグからプレゼントを取り出すと江口さんに渡した。

「開けてもいいかしら?」
「どうぞ」

ていうか今買えてくれないと意味がないから。

江口さんが箱を開けるとそこには革製のブレスレットが二組。

「で、できればお揃いでつけたいなって……」

「お揃いとは盲点だったわ……ごめんなさい。つけてもいい?」
「はい!」

江口さんがブレスレットを付けると、もう一つを……!?

「つけてあげる」

江口さんは腕を出すように促し、僕は手首を差し出すと江口さんがつけてくれた。
右手と左手。手をつなぐときに一緒になるように。

「素敵なプレゼントありがとう。これは私から」

江口さんからラッピングされた小袋と一枚のメッセージカードを受け取った。

「メッセージカードは帰ってから読んでね。恥ずかしいから」

江口さんでも恥ずかしいと思うことあるんだなぁ。
袋の方にはマフラーがはいってあった。

「これからの時期には必須かなって。知ってる?マフラーのプレゼントには『あなたに首ったけ』という意味があるそうよ」

ジュース吹きこぼしそうになった。

「大丈夫?」
「う、うん」


料理を堪能して締めのエスプレッソを飲んだあとに江口さんが言う。

「このあとどうするつもり?」
「え?もう時間も遅いし帰るかな?って思ったんだけど」
「そう……」

少し寂し気な顔をしていたのは気のせい?


店を出ると、駅前に戻る。
今日は十分楽しめた。

「ありがとう楽しかったよ」
「本当にこのまま帰るつもりだったのね」
「え……」
「分かったわ……ちょっとの間目を閉じていて」

よくわからないけど、言われたとおりに目を閉じる。

「!?」

唇に感じるのは生暖かく柔らかい感触。
ちょっとぬめっとしていたのはリップ?

僕が目を開けると江口さんは僕を抱きしめていた。

「『人を好きになるのに理由がいるかい?』って誰かが言ってたわ。今ならその意味が分かる。これほどに人を好きになることは今までなかったから」

僕はこれほどに女子の体が熱を帯びているとは知らなかったよ。

「これからは二人で一緒に思い出作りませんか?他のカップルに負けないくらい密度の濃い時間を。瞬間を大切にして……」

今この瞬間も僕の脳にはしっかりと焼き付いてますよ。

「あなたからは抱きしめてくれないの?」

言われて初めて気がつく。
僕は江口さんを抱きしめる。
思ったより細い。
それに……震えてる?

「大丈夫?風邪でも引いたんじゃない?」
「熱を感じた?熱いのは熱いわ……この渇いた体を潤して欲しい。ずっと抱きしめていて」

江口さんの本性を垣間見た気がする。
いや、前から薄々気付いていたけど。
彼女はサイコだ!
僕は修学旅行のあの日、実はすごい選択をしてしまったんじゃないのか?

「……なんて言ったらあなた困るわよね」

実際困ってます。
江口さんは軽く唇を重ねると僕から離れた。

「じゃあ、また明日ね。今夜は楽しかったわ。ありがとう」

そう言って江口さんは改札口へと向かっていった。
このまま帰していいのだろうか。
何かしなきゃいけないんじゃないだろうか?
ラーメンは伸びる前に食え!
片桐君の言葉を思い出した。

「江口さん!」

僕は大声で江口さんを呼んでいた。
江口さんは立ち止まりこっちを見る。

「僕も江口さんと一緒にいる瞬間を大事にするよ!これらも一緒に想い出を作っていこう!」

田舎とは言えこの辺じゃ都市の方だ。
大勢の人達が僕たちを見てる。

「ありがとう!今でも好きよ!!」

江口さんが大声で答える。

「僕もです!!大好きです!」

そう言って僕は自転車に向かった。
その間も江口さんは僕の姿が消えるまで見ていたらしい。


家で、メッセージカードを開く。

MERRY CHRISTMAS。
こんな素敵な日を、あなたと過ごすことができて嬉しいです。
いつも傍にいてくれてありがとう。
あなたのことを想って選んだプレゼント、気に入ってもらえますように。

僕はメッセージを送った。

メッセージカード読みました。
僕の方こそありがとう。
これからも一緒に想い出作っていきましょう。

彼女の知らない一面を見た。
きっと僕だけだと思う。
そこは誇ろう。
僕だけに見せてくれたのだと。

彼女からメッセージが届いた。

ありがとう。
また明日ね。

また明日?明日は予定入れてないぞ?

「明日って何の話?」
「あれ?渡辺君から聞いてないの?『渡辺班は明日地元駅に10時集合』って……亜依ちゃんからメッセージ届いてたけど」

メッセージの記録を確認する。
未読のメッセージがあった。渡辺君からだ。

「明日10時駅前集合!」

江口さんにメッセージを送る。

「……あった」
「笑じゃあまた明日ね」

明日何があるんだろう?
皆でクリスマスパーティかな?
初めての経験だ。
楽しみかもしれない。
また、江口さんに会えるし。

(3)

「わあ、ありがとう」

美嘉はお土産に買ってきたマスコットキャラのネックレスを見て喜んでいた。

「喜んでもらえてよかったよ」

俺がそう言うと美嘉は抱き着いてくる。
ここは美嘉の家。
高級マンションの高層に住んでいる。
ここから桜丘高校までは自転車で10分といったところだ。
両親は今いない。
今夜はクリスマスイブ。
お互いのパートナーと一緒に過ごしているんだろうな。

「今夜は泊ってくんだろ?」

美嘉が聞いてくると俺は頷いた。

「よしっ!今夜は寝かさないからな」
「ハハハ、そう言ってくれるのは嬉しいんだけどな。明日は朝早いんだ。夜更かしできねーよ」
「何だよ詰まんねーな」
「そんな顔するなよ。お前も一緒なんだから」
「え?」

美嘉が怪訝そうな顔をする。

「前に話したろ?うちのクラスの連中。そいつらと遊ぶ約束しててな」
「折角のクリスマスなのにか?」
「だから今夜こうして一緒にいるんじゃないか?」

そう言って美嘉を抱き寄せる。

「そいつらと会うメリットってなんだよ?」
「俺が寂しい思いをせずに済む」
「私にメリット無くない?どうせみんな頭が良い連中なんだろ?馬鹿にされるのが関の山だ」
「そんなやつらじゃねーよ。特に音無さんとは会わせてみたいと思った」
「そいつそんなにいいやつなのか。正志まさか……」
「おっとそいつも彼氏を連れてくる予定だ」
「なるほどな、カップルだらけで凄いな、お前のクラス」
「美嘉のクラスにはカップルいないのか?」
「他の学校の連中には手を出せても自分の学校の女子には手を出せない腰抜けばかりだよ」
「不思議な学校だな」
「怖いのさ、噂になるのが……」

まあ、ある意味有難い事ではあるが。
美嘉は以前音無さんが褒めてたように唯一の長所が可愛い。
美嘉の学校で誰も誘ってこないのが奇跡なくらいだ。
まあ、美嘉が靡くことも無いと思うが。

「まあ、そういうわけだから今日は早めに寝よう」
「せめて日を跨ぐくらいまでは起きてようぜ」
「分かってるよ」

そう言いながら二人ベッドに並んでテレビを見てる。
クリスマスの特番ばかりだった。

「よかったのか?クリスマスイブくらいでかけなくて」
「寒いしいいよ、正志とこうしてる方が暖かいし良い……」
「ところで聞かせてくれよ……、正志の修学旅行話」
「聞いても面白いかどうかわからないぞ?」
「電話で聞いてて楽しそうだったからさ」

美嘉がそう言うと俺は修学旅行中にあったことを話していた。
大体が、冬夜と遠坂さん、音無さんの話だったが。

「そのとーやってのと遠坂さんての興味あるな」
「そうだろ?あの二人には何か俺たちの理解を超えた絆があるんだろうな」
「私たちもそうなれるかな?」

美嘉がそう言うと俺は笑っていった。

「そうなりたいと思って努力はしてるさ。美嘉もそうだろ……」
「私はどうだろうな?両親の事もあるしな。男女の関係にそこまで信頼出来てるのか不安だ」
「俺の事も不安か?」

そう言うと美嘉は怒りだした。

「不安に決まってるだろ。正志は誰にでも優しいから。誰かに持ってかれちまうんじゃないかって……」
「俺に出来る事はお前の側にいることで隣で笑ってられることかな?」
「それだけじゃ不安だよ。ずっとそばにいて欲しい」
「……すまん」
「謝るなよ、頭の悪かった私が悪かったんだ」
「誰にでも得手不得手はあるさ」
「私は不得手ばっかりだ」

大分飲んでるな。
こいつは酔うと自虐的になる。
それがこいつの本性なのかもしれないが。
凄い小心者で、いつも不安でたまらないのだろう。
俺に出来るのはたまにあって、精一杯受け止めてやれるだけ。

「明日会えばわかるよ。お前も変われるかもしれない」
「そんなにいいやつらならそいつらと付き合えばいいだろ!」

ヤキモチ妬きときたもんだ。
そういう時の対処法も心得てある。

「今思ってる事、感じてることが恋なんだよ。お前のその苦しみも一緒に背負ってやりたいと思ってる」
「いつも聞かされてるなそのセリフ……でも嫌いじゃないよ、そういうところ」
「それはよかった。」
「信じあえる喜びも傷つけあう悲しみもいつかありのままで受け入れることが出来るように……か」
「そうだな、その境地に至ったのがさっき話した冬夜と遠坂さんなんだろうな」
「……会ってみるだけ会ってみるか」
「それがいい」
「んと、明日着ていく服は……」

見事な曲線美を惜しげもなく見せつける美嘉はクローゼットから服を漁る。

「正志はどっちがいいと思う。

アメカジコーデとファーアウターを合わせたコーディネート。
俺は後者を選んだ。
理由はそっちの方が暖かそうだから。
そう言うと美嘉は納得したようだ。

「じゃあ、こっちで行こう……。シャワーも浴びとくか……」

そう言って風呂場へと向かう美嘉。
美嘉がシャワーを浴びてる間一服しながらテレビを見ていた。
やがて美嘉がもどってくる。

「そろそろ時間だ、乾杯しようぜ」
「おいおいそれって……」
「じじいの部屋からくすねてきた。ちょっとくらい飲んでもばれないだろ」
「お前が飲みだすとちょっとじゃすまないだろ?」
「正志が止めてくれるんだろ?」
「しょうがないな、じゃ乾杯」
「乾杯」

グラスがカチンと音を鳴らすと中の液体が波打つ。
それを少しだけ飲んだ。
美嘉は一気に飲み干した。
2杯目を注ぐところで、俺は美嘉を止めた。

「もう止めるのかよ!」
「ちゃんと代わりの物を用意してある」

そう言って取り出したのはシャンメリーだった。

「明日二日酔いで起きれませんでしたじゃシャレにならんからな」
「済ませられるだろ。サボればいいんだし」
「主催がサボったらまずいだろ!」
「ま、しょうがないか、未だケーキ残ってたっけ……」

タオル一枚巻いただけの美嘉が部屋をウロウロしてる。

「ここにあるぞ」
「お、あったか」

そう言うとケーキを切り分け食べる。

「んじゃそろそろ寝るか?」
「まだ日が変わったくらいだぞ!良いのか?」
「これからお楽しみタイムが待ってるんだろ?」

俺は無言で美嘉をベッドの中に誘う。
誘われるがままにベッドの中に入る美嘉。

メリークリスマス。

(4)

クリスマスイブは仕事が忙しい。
2年目ともなると大分手慣れた手つきできびきび動く。
時間になると。

「音無さん上がっていいよ。この前の人外で待ってる」

チーフがそう言ってくれたので更衣室で着替えて、裏手から出ると、誠が待っていた。

「お疲れ様」
「ありがとう、今晩は泊っていくんだろ?」
「そのつもりで準備してきた。ケーキとシャンメリーも用意してある」

そう言って荷物を手に取ると誠はにやりと笑った。


家に帰ると、私は夕飯の準備に取り掛かった。
あ、渡辺に言われたんだった。

「明日一日空いてるよな?」
「ああ、空いてるけど……何かあるのか?」
「実はクラスメートに遊びに行かないかって言われてるんだけど……」
「そうか、じゃあ俺は帰ったほうがいいな?」

テレビを見ながら誠は答えた。

「いや、逆だ。お前にも来て欲しいんだ」
「え?」

怪訝そうに言う誠。

「実は皆恋人持ちでさ、私と渡辺ってやつだけ恋人が他の学校だろ?だから今度集まるときは皆恋人連れて来ようって話になってな」
「なるほどな……羨ましい友達だな」
「誠が嫌なら私は断るけど」
「いや、一度会ってみたかった。神奈がどんな人たちと過ごしてるんだろうって」
「そう言ってもらえると助かる。それ、飯出来たぞ」
「おう、いつも悪いね」

母さんの分は取り分けてある。
十分な量を作ったつもりだが、誠は平らげてみせた。
食器を洗うのは誠も手伝ってくれた。

「調理中と違って邪魔にはならないだろ?」と。
「抱きついたりしたら即退場だからな」
「これでも我慢してるつもりなんだぜ、今でも抱きしめたくて仕方ないんだ」
「風呂浴びたら幾らでも抱かせてやるよ」

寧ろ抱きしめて欲しいのを我慢してるのは私の方だ。

「一緒に風呂に入らね?……あ、殴るのは無しな」

さっと身構える誠。

「……いいよ」
「え?」

予想外の回答に戸惑いを見せる。

「嫌なのか?」
「嬉しいけど……いいのか?」
「ああ、どうせ今日は夜遅いだろうしな」

そうして片付けが終わると私と誠は着替えとタオルを準備して脱衣所に向かう。
……そういえばトーヤが言ってたな。少しは肉付きが良い方が男としては嬉しいとか。

「なあ、誠」
「私どう思う?」
「へ?」

誠にトーヤに言われたことを話した。

「それはトーヤの言う通りだと思うぜ。柔肌に触りたいってのは男として当然の欲求だと思うしな」
「お前もそうなのか?」
「俺は好きな人ならどんな体形でも受け入れるぜ。それも男として当然の欲求だと思うけど。」
「なるほどな……」
「それに神奈だって意外と柔らかいぜ、胸はもうちょっと欲しいけど……いてっ!」
「人が気にしていることをズバズバ言うのはトーヤと変わらねーな!」
「大丈夫だ、俺は全部を受け入れている。神奈の堆い胸でも十分、いてっ!」
「それ以上言ったらぶっ飛ばすぞ!」
「とにかく、神奈の全てが好きなんだから気にするな」

その割にはさんざん言ってくれたけどな。


テレビを見ながらピロートークを楽しむ。

「いつもすまないな。折角のイブを……」
「十分楽しませてもらってるよ。神奈とこうしてる時間も楽しいし」
「そうか、ならいいんだが」
「それより聞かせてくれよ、修学旅行の話」

私は修学旅行であったことを話した。

「なるほどね、冬夜の奴相変わらずなんだな。それにしても愛莉さんも包容力あるよな。そんな冬夜を受け入れるって」
「もうあの二人の世界は次元が違うよ」
「俺たちはどうなんだ?」
「え?」
「俺たちは……その次元まで来てると思うか?」
「お前の変態癖は受け入れてるつもりだけどな」
「それじゃ、俺ただの変態みたいじゃないか?」

ただの変態だよ。
少なくとも私の前では……。

「俺が変態なら世の中の男皆変態だよ!断言していい!」
「愛莉からそういう苦情は聞いてないけどな」
「てか遠坂さんに話したのか!?」
「女子に伝わると一気に伝播するぞ」
「まじかー!俺明日どの面下げていけばいいんだよ!」
「いつも通りでいいだろ?お前私の前以外では普通にイケメンだから」

私の前でだけなら本性だしていいんだよ。
ありのままに愛せるように……。
キスをしたり抱き合ったり当たり前の愛し方をずっと続けていきたい。
今のように。
安らぎとかいつも求めていたけど、簡単には伝えられない。
その度に思いだす。
こんなに愛してるんだって。
本当の優しさの意味が分かるときまで時間がかかるけど、過ぎた日に背を向けずにゆっくりといつも笑って会えるように。
気づいた時には誠の胸の上で、誠に抱かれながら眠っていた。
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