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3rdSEASON
5月病
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(1)
「お、いらっしゃいませ。冬夜君」
ここのSSのスタッフは走り屋仲間の一人だ。
翌日愛莉との約束通り洗車に来たわけだけど……。
「洗車一回サービスだったね。店長!いいですか?」
「ああ、昨日助けてもらったそうだね。いいよ、特別だ」
ここの店長も昔走り屋だったらしい。
走り屋ってSSに勤務するって決まりでもあるのか?
「お客様車のキーを」
僕は店員にキーを渡すと車を洗車マシーンに通す。
「最上級のコースで入れてやるからな」
走り屋仲間の人はそう言っ仕事に戻った。
僕と愛莉は店の中に入ってジュースを買い、飲みながら雑誌を読んでいる。
車のカタログだ。
中古車の一覧とかある。
「冬夜君車買い換えるの?」
「まだローンが残ってるのにそれはないよ」
「よかった~私あの車好きだし」
それはよかった。
結構乗ってるSUV車酷評なんだよね。
口コミとか見ても悪口しか書かれてないし。
実際乗ってみるとそうでもないんだけどね。
「君ドラテク凄いそうじゃないか?うちの店員がそう言ってたよ」
店長が話しかけてきた。
「まだ運転初めて2か月くらいしか経ってないんですけどね」
「そりゃ驚いた。まさか無免で走ってたとかないよね?」
「無いです」
「じゃあ、才能の違いなんだろうな」
「店長さんおだてないで、彼また調子に乗るから」
愛莉が苦情を言う。
「ああ、君が可愛い彼女さんだね。本当に綺麗だ」
「彼女じゃないです、婚約者です」
「おっともう婚約してたのか」
愛莉の脳内ではもう僕はプロポーズしたことになってるらしい。
僕は黙ってジュースを飲む。
「否定しないってことはそうなのかな?」
「待ってて言われましたけどね」
二人の会話は弾んでる。
うーん……やっぱ走り屋っぽいのはどれも中古だな。
あの兄弟が乗ってたFCやらFDやらは300万超えるらしい。
桐谷君も乗ってたな。維持費とか考えると凄そうだな。
ピカピカになった車を見に愛莉は外にでた。
「お客さん、ワックスはもうかけてありますよ」
「ほえ?」
「コーティングもしてあるので暫くはワックス掛けなくていいですよ」
「そうなんだ」
「お客さんは車の事何も知らないんだね?彼に何も聞いてないの?」
「冬夜君もそこまで何も知らないと思うんだけど」
「だよね。どノーマルだし」
「ノーマル……、何か付けた方が良いんですか?」
「まあ、この前みたいな走りをするならね、あ。そうだ。思いだした、ちょっと彼氏さん呼んできてくれないかい?」
「はーい」
そして愛莉が中に入ってきて僕を呼ぶ、
「なんか話があるっぽいよ」
どうしたんだろう。
外に出ると走り屋の仲間さんがタイヤを見て言う。
「そろそろ限界っぽいけど交換しておくかい?」
「スリップサイン出てますか?」
「まだ出ては無いけどあの走りだといつバーストしてもおかしくないかも」
そう言われてタイヤを見る。
スリップサインはまだ出てないけど溝はもうそんなに残ってない。
だいぶ無茶してきたからなぁ。
「ノーマルタイヤであの走りをしてきた事が奇跡なんだよ」
「リアルタイムとはいえ四駆だしローテとかは無理ですよね?」
「君の場合4輪全部使って走行してるからね。ローテは厳しいなあ」
全交換か……結構するだろうな。
「どうするうちの店で交換するなら安くするけど?」
「冬夜君、車が不調なの?」
愛莉には何を話してるのか分からなかったらしい。
「車に無理をさせすぎたみたいで、タイヤが結構限界みたいなんだよね」
「じゃ、直してあげよう?可哀そうだよ」
「……結構費用かかると思うんだけど」
「維持費だから仕方ないよ」
「じゃ、お願いします」
「了解、ついでにブレーキパッドも見とくね。あとオイル交換もサービスしとくから」
「いいんですか?」
「そのくらいの価値は昨日の試合にはあったよ。ありがとうな」
「いえ、こちらこそありがとうございます」
そうしてタイヤ交換とオイル交換をしてもらうことになった。
結構走ってるしオイルもそろそろかなと思ってたんだよね。
「タイヤはコンフォートとスポーツどっちにする?」
「コンフォートで」
「いいの?走るならスポーツだと思うけど」
「遠出とかしたりするんで、快適性重視で」
「了解」
そう言って再び店の中で待機する。
「車さん大丈夫?」
愛莉が不安そうに聞いてくる。
「心配ないよ。ちょっと足回りを酷使したかなってだけだし」
「大事にしてあげてね」
「わかってるよ」
それよりこれ終わったらどうするかな。
「終わったらどうする?」
「う~ん、買い物して帰る」
親には夕食食べてこいと言われてるんだけど。
さてどうしたものやら。
なんか食べて帰ろうとか言おうものなら怒られそうだしな。
「愛莉、買いたい物あるの?」
「うーん、スーパーで今晩のお食事の材料」
そう来るよね。
何とかならないものだろうか?
……うん、その手で言ってみようか。
「お願い聞いてもらえないかな?」
「な~に?」
「車も大事だけどさ、愛莉ももっと大事なんだよね」
「え?」
反応は良さげだ。いけるかも。
「だからさ、週1で愛莉をメンテしてあげたいんだよね?」
「いつもしてもらってるよ~」
「うん、だからいつも通り今日も愛莉はお休みの日」
「?」
「何か食べて帰ろう?」
「うぅ……この前のお寿司みたいなのはだめだよ」
ってことは他の物なら良いんだな?
「愛莉の食べたいものでいいよ」
「じゃあ、近いしショッピングモールのオムライスで♪」
「わかった。でも結構時間あるし、ちょっとドライブしてからにしよっか?」
「無茶な走り知たら駄目だよ。今日は車さんも労わってあげて」
「わかってるよ」
「うん」
愛莉の説得に成功した時愛莉と僕のスマホにメッセージが入っていた。
「明日12:00ファミレスに集合」
愛莉がレスを返す。
「何かあったの?」
「ごめん、うちの瑛大の事でちょっと……」
指原さんからだ。
「すまん冬夜。少し男手がいるかもしれんから、一緒に来てくれないか?場所は私立大近くの……」
渡辺君からだ。
桐谷君も一人暮らししてたんだ。
それにしても男手がいるって一体……?
(2)
ピンポーン。
呼び鈴がなった。
今日は穂乃果が僕の服選びに付き合ってくれるということだ。
一人ならジャージでもよかったんだけどね。
さすがに彼女連れともなるとそうもいかない。
新條さんにもダメだしされたし、今度までにまともな服を買っておけとのこと。
安い服でもいいから買っておこうよと穂乃果にも言われたし買っておくか。
ってことで今日迎えに来ることになっていた。
午後からは渡辺班って言うグループの会合がある。
なんでもメンバーの一人が問題抱えてるらしい。
あまりそういうの好きじゃないんだけどね。
まあ、いいや。
ドアを開ける。
開けたと同時に僕は凍り付いた。
目の前にいるのは穂乃果じゃない。
志水さんだった。
「迎えに来たわよ」
黙ってドアを閉めようとした。
足を入れて閉めさせてくれない。
「迎えに来たって言うのにどういう了見なのかしら」
「悪いけど来客があるからまたにしてくれない?」
「来客?」
「志水さん?」
悪いタイミングで穂乃果が現れた。
「来客って一ノ瀬さんの事?」
「そうだよ、これから約束があってね!」
「そう、それはアポを取らなかった私に非があるわね」
分かってくれたようだ。
「で、何の約束?12:00には渡辺班の招集があったはずだけど?」
「それまでに善幸さんの服を買いに行こうと思って」
「ああ、そう言う約束?」
人はそれをデートと言う。
だから帰って。
「なら私も選んであげる。問題ないわね?一ノ瀬さん」
「ま、まあ問題ないですけど」
穂乃果でも一ノ瀬さんの覇気には抗えないようだ。
「そんな高いもの選んじゃ駄目だと思います」
「もちろん彼に買えとは言わないわ、私がプレゼントするの。風見、これを買ってきなさい」
ていうかなんで、外出着を買うのにフォーマルコーナーに来てるんですかね?
「うーん、善幸。スタイルは良いからこういう系統があってるよ」
「随分安っぽい服ね」
それでも、結構な額ですよ。
何日食っていけると思ってるんですか?
シャツは1000円均一のをいくつか買った。
後は靴だ。
靴も微妙に高い。日給以上の額はする。
まあ、彼女がこれが良いって言ったら買うしかないよね。
買い物はすぐに済んだ。
時計を見る。
ここからだとそんなに時間は残されていない。
「そろそろ行こうか」
穂乃果に言うと穂乃果はこくりとうなずいて駐車場に向かった。
なぜか、志水さんも乗ってる。
なぜって?
リムジンなんて止める駐車場ないでしょ。
一々送迎を頼むのも煩わしかったので一緒に乗ったら?と穂乃果が言った。
「片桐君より狭い車ね」
志水さんはそう言った。
「志水さんも免許取ったら?一々送迎呼ぶのも面倒でしょ?」
「そうでもないわよ、そこら辺の男を捕まえてお願いするだけだから」
どこまでも自信過剰なんだな。
まあ、志水さんなら楽勝でヒッチハイクで日本一周できるんだろうな。
「自分で行きたいところに行けるって結構便利ですよ」
その時やっと感じ取った。
これは宣戦布告なんだ。穂乃果なりの。
水面下で静かに火花が飛び散る冷戦状態。
お互いに、挑発を繰り返している。
ていうか、穂乃果そんなキャラだったっけ?
両国との平和的解決を望む僕。
そんな都合の良いことできないよね
みじめな蝙蝠に成り下がるだけ。
いや、僕は貝になりたい。
もっと奥底でただ沈んでるだけの深海魚になりたい。
しかし両国は僕を取り込もうとする。
「善幸さんもそう思いますよね!?」
志水さんの前だとさん付けなんだな?
「そ、そうだね。車あると便利だよね」
「車を自分で出さなきゃいけないところに住んでるのがそもそもおかしいのよ。電車はともかくバスすら通ってないの?」
「バスが通ってないところに行くのに便利なんですよ」
「ならタクシー使えばいいじゃない」
「そんなに毎回タクシー使うほど裕福じゃないので」
「あら?そうなの?大変ね、バイトしたリ」
勝ち誇ったような笑みを見せる志水さん。
さすがに可哀そうになった。
「ぼ、僕もおなじですね。車の維持費をどうこう出来る程余裕もないし。まず免許取る費用すらない」
「ご、ごめんなさい」
違うんだよ穂乃果。君に謝ってほしくて言ったわけじゃないんだよ。
「酒井君なら問題ないわ。私が養ってあげるから」
「や、養う?」
ああ、僕はヒモになれるんだね。ってそういう問題じゃない。ていうか、僕の彼女は穂乃果だって志水さんではないよ。
「そ、それはおかしいでしょ。彼氏でもない人を養うなんて……」
「あら?私は彼氏と認識していたけど?」
なに言ってるんですかあなた。僕は先日彼女に告白したばかりですよ。いきなりぶち壊すような発言やめてください。
とはいえ、ここで何も言わなかったら本当に終わってしまいそうだ。
「善幸さん……どういうこと?」
穂乃果の声音が代わってきた。
「志水さん、そもそも僕は君と付き合うとは一言も言ってないんだけど、それに僕は1週間前に穂乃果に告白したばかりなんだけど」
これで、分かってくれただろう。穂乃果は分かってくれたみたいだ。その証拠にさっきまで鬼の形相だったのが、元に戻ってる。安心したんだろう。深呼吸をしている。
一方志水さんはというと……。
「告白……ですって?」
志水さんには、事実を受け止め難いようだ。しかし、彼女は強い、その強さを別の方向に活かして欲しいものだ。
「でも先に告白したのは私よ……一ノ瀬さん」
僕はそれを受けてないよね。返事もしてないよね、ていうかあれが告白だったの?
「いや、告白という認識の発言なんて受けた覚えは一度も……」
「私の告白を裏切るとは随分と良い度胸ね……」
うわあ、凄いどす黒いオーラを放ってるよ。
稲光すら見えるね。
「そういうのって迷惑って考えたことありませんか?つきまとわれたら迷惑って思ったことありませんか?志水さんなら分かると思うんだけど。いつも男に付きまとわれてるし」
穂乃果、キャラ変わってるよ。そんな煽り入れるようなキャラじゃなかったでしょ。
「迷惑と思ったことは無いわね。あなたには分からないでしょうけど」
「わかりたくないですね。善幸さんもはっきり言ったらどうですか?迷惑だって」
うわあ、ここで振ってくるのね。迷惑じゃないなんて言ったらバッドエンド確定だし。迷惑って言い切るのも度胸いるけど、生憎と僕にそんな度胸はないよ。
「まあ、穂乃果のいう事も一理あると思いますよ。大体の人は迷惑って思うんじゃないかな」
可能な限り柔らかく言ってみた。
「あなたもその一人なわけね……」
何も言わなかった。
「分かったわ……これからは手を変えてみることにするわ」
全然わかってない気がするのは気のせいですかね?
(3)
午前9時半
私立大付近のアパートに僕たちはいた。
僕と愛莉とカンナと誠と渡辺君と美嘉さんと指原さん。
「何でこんなに大所帯なの?」
「ちょっと瑛大に問題あってね」
「問題……?」
「まあ、来れば分るから……」
彼の部屋は2階にある。
部屋の前に立つと指原さんが呼び鈴を鳴らす。
反応が無い。
何度も鳴らす。
やがてどんどんと扉を叩く。
「瑛大あ!開けろぉ!!」
怒鳴りながらドアを叩きまくる。
「ちょっとうるさいんですけど……」
両隣の住人から苦情が出る。
愛莉とカンナが頭を下げる。
「やっぱりこうなるのか」
一体何が起こってるんだ。
指原さんはバッグから鍵をとるとガチャリと開ける
桐谷君の両親から鍵をあずかっていたらしい。
ドアを開けようとするとチェーンロックが掛かっている。
「ちょっとどいて」
渡辺君がワイヤーカッターをとりだしチェーンロックを切る。うわあ、これ修理代かかるだろうなあ。
渡辺君と誠と指原さんが部屋に突入する。
僕達も後から入る。
桐谷君は散らかった部屋にぽつんと座り、ヘッドホンをしてFPSのゲームにのめりこんでいた。
指原さんはヘッドホンを奪い取り瑛大!!と怒鳴りつける。
「うるせーんだよ!ほっといてくれよ。どうせ俺なんか!」
「俺なんかなに!?悩んでることあるなら相談しろっていったでしょ!」
「誰にもわかってもらえねーよ!」
「そんなのわかんないじゃん!私に出来る事ならなんでもするから!?」
「そうかよ!じゃあ別れよ!もう放っておいてくれ」
指原さんの顔が青ざめてる。
「桐谷君落ち着こうよ、今凄い大変な事言ってるよ」
「冬夜も放っておいてくれ!もうグループも抜けるから!」
そんな事言ってると……。ほらカンナがね、すごい形相で君に近づいてるよ。
カンナは桐谷君の胸ぐらを掴むと力づくで立ち上がらせビンタをした。
「瑛大!お前何言ってるのかわかってのか!?お前がグループ抜けたところで大事な友達泣かせたんだ!黙ってられるか!納得のいく話ができるまで絶対に一人になんかしねーからな!!」
「神奈落ち着け」
「落ち着いてられるか!」
「とりあえずここだと近所迷惑だ。ファミレスに行こう。皆待たせてる」
「僕はいかないよ」
すると、渡辺君のどすの利いた声が聞こえた。こんな声聞いたことない。
「瑛大。お前グループ抜けるって言ったよな。その時点でお前は仲間を傷つけた敵だ。敵の言う事なんかきいてられんよ」
渡辺君は僕に言う。
「冬夜。お前運転上手いんだってな。指原さんの車を置いていくからお前指原さんを連れて行ってくれないか?今の指原さんに運転は任せられない」
確かに渡辺君の言う通りだ。今も泣きじゃくっている指原さんに運転は任せられない。
「瑛大は俺が連れて行く」
そう言って桐谷君の腕を掴む渡辺君。
「俺はどこにも行かな……」
「来るんだよ!!」
渡辺君の恫喝に皆がびくっとした。渡辺君ってこんな怖いキャラだったんだね。
「すまんな、みんな先に行っててくれ。後は俺と美嘉でなんとかするから。指原さん部屋の鍵を」
指原さんは渡辺君に鍵を渡すと僕たちの車に乗った。
ここからファミレスまでは10分もかからないところにある。
その間に指原さんに事情を聞いた。
(4)
GWが明けてすぐ、瑛大の異変に気がついた。
メッセージが返ってこない。
電話をかけても出ない。
多田君に聞いてみると、多田君が様子を聞いても何も答えない。ただ「何もかも面倒になった」と……。
心配になって瑛大の済んでるアパートに行っても中にいるのはいるけど返事が無い。
何日かは反応があった。
「もうほっといてくれ!」
「俺はもう終わりなんだ、お前たちとは違う」
「俺なんかどうせ……」
放っておけない。
そう思って渡辺君に相談したら「5月病だな」という……。
検索した。ますます放っておけなくなった。
水曜日くらいからぱたりと連絡が途絶えた。
そしてみんなに相談した。
「なるほどね……」
片桐君が運転しながら話を聞いていた。
「自分が情けなく思ったよ。別れるの一言がこんなに突き刺さるものだなんて思いもしなかった」
「しょうがないよ、亜依だって女性だもん」
愛莉がそう慰めてくれた。
「結局原因はわからずなのかい?」
片桐君が聞いてきた。
「わからない。休み明けから突然だから」
「宿泊した後はどこか行ったりしたの?」
「いや?」
「会ってもない?」
「私も課題で忙しかったし……それがいけなかったのかな?」
「それは無いと思うよ」
じゃあなんで?
「それはファミレスで聞けばいいんじゃないかな?」
教えてくれるかな?
本当に別れるなんてことになったらどうしよう?
そんな不安でいっぱいだった。
「お、いらっしゃいませ。冬夜君」
ここのSSのスタッフは走り屋仲間の一人だ。
翌日愛莉との約束通り洗車に来たわけだけど……。
「洗車一回サービスだったね。店長!いいですか?」
「ああ、昨日助けてもらったそうだね。いいよ、特別だ」
ここの店長も昔走り屋だったらしい。
走り屋ってSSに勤務するって決まりでもあるのか?
「お客様車のキーを」
僕は店員にキーを渡すと車を洗車マシーンに通す。
「最上級のコースで入れてやるからな」
走り屋仲間の人はそう言っ仕事に戻った。
僕と愛莉は店の中に入ってジュースを買い、飲みながら雑誌を読んでいる。
車のカタログだ。
中古車の一覧とかある。
「冬夜君車買い換えるの?」
「まだローンが残ってるのにそれはないよ」
「よかった~私あの車好きだし」
それはよかった。
結構乗ってるSUV車酷評なんだよね。
口コミとか見ても悪口しか書かれてないし。
実際乗ってみるとそうでもないんだけどね。
「君ドラテク凄いそうじゃないか?うちの店員がそう言ってたよ」
店長が話しかけてきた。
「まだ運転初めて2か月くらいしか経ってないんですけどね」
「そりゃ驚いた。まさか無免で走ってたとかないよね?」
「無いです」
「じゃあ、才能の違いなんだろうな」
「店長さんおだてないで、彼また調子に乗るから」
愛莉が苦情を言う。
「ああ、君が可愛い彼女さんだね。本当に綺麗だ」
「彼女じゃないです、婚約者です」
「おっともう婚約してたのか」
愛莉の脳内ではもう僕はプロポーズしたことになってるらしい。
僕は黙ってジュースを飲む。
「否定しないってことはそうなのかな?」
「待ってて言われましたけどね」
二人の会話は弾んでる。
うーん……やっぱ走り屋っぽいのはどれも中古だな。
あの兄弟が乗ってたFCやらFDやらは300万超えるらしい。
桐谷君も乗ってたな。維持費とか考えると凄そうだな。
ピカピカになった車を見に愛莉は外にでた。
「お客さん、ワックスはもうかけてありますよ」
「ほえ?」
「コーティングもしてあるので暫くはワックス掛けなくていいですよ」
「そうなんだ」
「お客さんは車の事何も知らないんだね?彼に何も聞いてないの?」
「冬夜君もそこまで何も知らないと思うんだけど」
「だよね。どノーマルだし」
「ノーマル……、何か付けた方が良いんですか?」
「まあ、この前みたいな走りをするならね、あ。そうだ。思いだした、ちょっと彼氏さん呼んできてくれないかい?」
「はーい」
そして愛莉が中に入ってきて僕を呼ぶ、
「なんか話があるっぽいよ」
どうしたんだろう。
外に出ると走り屋の仲間さんがタイヤを見て言う。
「そろそろ限界っぽいけど交換しておくかい?」
「スリップサイン出てますか?」
「まだ出ては無いけどあの走りだといつバーストしてもおかしくないかも」
そう言われてタイヤを見る。
スリップサインはまだ出てないけど溝はもうそんなに残ってない。
だいぶ無茶してきたからなぁ。
「ノーマルタイヤであの走りをしてきた事が奇跡なんだよ」
「リアルタイムとはいえ四駆だしローテとかは無理ですよね?」
「君の場合4輪全部使って走行してるからね。ローテは厳しいなあ」
全交換か……結構するだろうな。
「どうするうちの店で交換するなら安くするけど?」
「冬夜君、車が不調なの?」
愛莉には何を話してるのか分からなかったらしい。
「車に無理をさせすぎたみたいで、タイヤが結構限界みたいなんだよね」
「じゃ、直してあげよう?可哀そうだよ」
「……結構費用かかると思うんだけど」
「維持費だから仕方ないよ」
「じゃ、お願いします」
「了解、ついでにブレーキパッドも見とくね。あとオイル交換もサービスしとくから」
「いいんですか?」
「そのくらいの価値は昨日の試合にはあったよ。ありがとうな」
「いえ、こちらこそありがとうございます」
そうしてタイヤ交換とオイル交換をしてもらうことになった。
結構走ってるしオイルもそろそろかなと思ってたんだよね。
「タイヤはコンフォートとスポーツどっちにする?」
「コンフォートで」
「いいの?走るならスポーツだと思うけど」
「遠出とかしたりするんで、快適性重視で」
「了解」
そう言って再び店の中で待機する。
「車さん大丈夫?」
愛莉が不安そうに聞いてくる。
「心配ないよ。ちょっと足回りを酷使したかなってだけだし」
「大事にしてあげてね」
「わかってるよ」
それよりこれ終わったらどうするかな。
「終わったらどうする?」
「う~ん、買い物して帰る」
親には夕食食べてこいと言われてるんだけど。
さてどうしたものやら。
なんか食べて帰ろうとか言おうものなら怒られそうだしな。
「愛莉、買いたい物あるの?」
「うーん、スーパーで今晩のお食事の材料」
そう来るよね。
何とかならないものだろうか?
……うん、その手で言ってみようか。
「お願い聞いてもらえないかな?」
「な~に?」
「車も大事だけどさ、愛莉ももっと大事なんだよね」
「え?」
反応は良さげだ。いけるかも。
「だからさ、週1で愛莉をメンテしてあげたいんだよね?」
「いつもしてもらってるよ~」
「うん、だからいつも通り今日も愛莉はお休みの日」
「?」
「何か食べて帰ろう?」
「うぅ……この前のお寿司みたいなのはだめだよ」
ってことは他の物なら良いんだな?
「愛莉の食べたいものでいいよ」
「じゃあ、近いしショッピングモールのオムライスで♪」
「わかった。でも結構時間あるし、ちょっとドライブしてからにしよっか?」
「無茶な走り知たら駄目だよ。今日は車さんも労わってあげて」
「わかってるよ」
「うん」
愛莉の説得に成功した時愛莉と僕のスマホにメッセージが入っていた。
「明日12:00ファミレスに集合」
愛莉がレスを返す。
「何かあったの?」
「ごめん、うちの瑛大の事でちょっと……」
指原さんからだ。
「すまん冬夜。少し男手がいるかもしれんから、一緒に来てくれないか?場所は私立大近くの……」
渡辺君からだ。
桐谷君も一人暮らししてたんだ。
それにしても男手がいるって一体……?
(2)
ピンポーン。
呼び鈴がなった。
今日は穂乃果が僕の服選びに付き合ってくれるということだ。
一人ならジャージでもよかったんだけどね。
さすがに彼女連れともなるとそうもいかない。
新條さんにもダメだしされたし、今度までにまともな服を買っておけとのこと。
安い服でもいいから買っておこうよと穂乃果にも言われたし買っておくか。
ってことで今日迎えに来ることになっていた。
午後からは渡辺班って言うグループの会合がある。
なんでもメンバーの一人が問題抱えてるらしい。
あまりそういうの好きじゃないんだけどね。
まあ、いいや。
ドアを開ける。
開けたと同時に僕は凍り付いた。
目の前にいるのは穂乃果じゃない。
志水さんだった。
「迎えに来たわよ」
黙ってドアを閉めようとした。
足を入れて閉めさせてくれない。
「迎えに来たって言うのにどういう了見なのかしら」
「悪いけど来客があるからまたにしてくれない?」
「来客?」
「志水さん?」
悪いタイミングで穂乃果が現れた。
「来客って一ノ瀬さんの事?」
「そうだよ、これから約束があってね!」
「そう、それはアポを取らなかった私に非があるわね」
分かってくれたようだ。
「で、何の約束?12:00には渡辺班の招集があったはずだけど?」
「それまでに善幸さんの服を買いに行こうと思って」
「ああ、そう言う約束?」
人はそれをデートと言う。
だから帰って。
「なら私も選んであげる。問題ないわね?一ノ瀬さん」
「ま、まあ問題ないですけど」
穂乃果でも一ノ瀬さんの覇気には抗えないようだ。
「そんな高いもの選んじゃ駄目だと思います」
「もちろん彼に買えとは言わないわ、私がプレゼントするの。風見、これを買ってきなさい」
ていうかなんで、外出着を買うのにフォーマルコーナーに来てるんですかね?
「うーん、善幸。スタイルは良いからこういう系統があってるよ」
「随分安っぽい服ね」
それでも、結構な額ですよ。
何日食っていけると思ってるんですか?
シャツは1000円均一のをいくつか買った。
後は靴だ。
靴も微妙に高い。日給以上の額はする。
まあ、彼女がこれが良いって言ったら買うしかないよね。
買い物はすぐに済んだ。
時計を見る。
ここからだとそんなに時間は残されていない。
「そろそろ行こうか」
穂乃果に言うと穂乃果はこくりとうなずいて駐車場に向かった。
なぜか、志水さんも乗ってる。
なぜって?
リムジンなんて止める駐車場ないでしょ。
一々送迎を頼むのも煩わしかったので一緒に乗ったら?と穂乃果が言った。
「片桐君より狭い車ね」
志水さんはそう言った。
「志水さんも免許取ったら?一々送迎呼ぶのも面倒でしょ?」
「そうでもないわよ、そこら辺の男を捕まえてお願いするだけだから」
どこまでも自信過剰なんだな。
まあ、志水さんなら楽勝でヒッチハイクで日本一周できるんだろうな。
「自分で行きたいところに行けるって結構便利ですよ」
その時やっと感じ取った。
これは宣戦布告なんだ。穂乃果なりの。
水面下で静かに火花が飛び散る冷戦状態。
お互いに、挑発を繰り返している。
ていうか、穂乃果そんなキャラだったっけ?
両国との平和的解決を望む僕。
そんな都合の良いことできないよね
みじめな蝙蝠に成り下がるだけ。
いや、僕は貝になりたい。
もっと奥底でただ沈んでるだけの深海魚になりたい。
しかし両国は僕を取り込もうとする。
「善幸さんもそう思いますよね!?」
志水さんの前だとさん付けなんだな?
「そ、そうだね。車あると便利だよね」
「車を自分で出さなきゃいけないところに住んでるのがそもそもおかしいのよ。電車はともかくバスすら通ってないの?」
「バスが通ってないところに行くのに便利なんですよ」
「ならタクシー使えばいいじゃない」
「そんなに毎回タクシー使うほど裕福じゃないので」
「あら?そうなの?大変ね、バイトしたリ」
勝ち誇ったような笑みを見せる志水さん。
さすがに可哀そうになった。
「ぼ、僕もおなじですね。車の維持費をどうこう出来る程余裕もないし。まず免許取る費用すらない」
「ご、ごめんなさい」
違うんだよ穂乃果。君に謝ってほしくて言ったわけじゃないんだよ。
「酒井君なら問題ないわ。私が養ってあげるから」
「や、養う?」
ああ、僕はヒモになれるんだね。ってそういう問題じゃない。ていうか、僕の彼女は穂乃果だって志水さんではないよ。
「そ、それはおかしいでしょ。彼氏でもない人を養うなんて……」
「あら?私は彼氏と認識していたけど?」
なに言ってるんですかあなた。僕は先日彼女に告白したばかりですよ。いきなりぶち壊すような発言やめてください。
とはいえ、ここで何も言わなかったら本当に終わってしまいそうだ。
「善幸さん……どういうこと?」
穂乃果の声音が代わってきた。
「志水さん、そもそも僕は君と付き合うとは一言も言ってないんだけど、それに僕は1週間前に穂乃果に告白したばかりなんだけど」
これで、分かってくれただろう。穂乃果は分かってくれたみたいだ。その証拠にさっきまで鬼の形相だったのが、元に戻ってる。安心したんだろう。深呼吸をしている。
一方志水さんはというと……。
「告白……ですって?」
志水さんには、事実を受け止め難いようだ。しかし、彼女は強い、その強さを別の方向に活かして欲しいものだ。
「でも先に告白したのは私よ……一ノ瀬さん」
僕はそれを受けてないよね。返事もしてないよね、ていうかあれが告白だったの?
「いや、告白という認識の発言なんて受けた覚えは一度も……」
「私の告白を裏切るとは随分と良い度胸ね……」
うわあ、凄いどす黒いオーラを放ってるよ。
稲光すら見えるね。
「そういうのって迷惑って考えたことありませんか?つきまとわれたら迷惑って思ったことありませんか?志水さんなら分かると思うんだけど。いつも男に付きまとわれてるし」
穂乃果、キャラ変わってるよ。そんな煽り入れるようなキャラじゃなかったでしょ。
「迷惑と思ったことは無いわね。あなたには分からないでしょうけど」
「わかりたくないですね。善幸さんもはっきり言ったらどうですか?迷惑だって」
うわあ、ここで振ってくるのね。迷惑じゃないなんて言ったらバッドエンド確定だし。迷惑って言い切るのも度胸いるけど、生憎と僕にそんな度胸はないよ。
「まあ、穂乃果のいう事も一理あると思いますよ。大体の人は迷惑って思うんじゃないかな」
可能な限り柔らかく言ってみた。
「あなたもその一人なわけね……」
何も言わなかった。
「分かったわ……これからは手を変えてみることにするわ」
全然わかってない気がするのは気のせいですかね?
(3)
午前9時半
私立大付近のアパートに僕たちはいた。
僕と愛莉とカンナと誠と渡辺君と美嘉さんと指原さん。
「何でこんなに大所帯なの?」
「ちょっと瑛大に問題あってね」
「問題……?」
「まあ、来れば分るから……」
彼の部屋は2階にある。
部屋の前に立つと指原さんが呼び鈴を鳴らす。
反応が無い。
何度も鳴らす。
やがてどんどんと扉を叩く。
「瑛大あ!開けろぉ!!」
怒鳴りながらドアを叩きまくる。
「ちょっとうるさいんですけど……」
両隣の住人から苦情が出る。
愛莉とカンナが頭を下げる。
「やっぱりこうなるのか」
一体何が起こってるんだ。
指原さんはバッグから鍵をとるとガチャリと開ける
桐谷君の両親から鍵をあずかっていたらしい。
ドアを開けようとするとチェーンロックが掛かっている。
「ちょっとどいて」
渡辺君がワイヤーカッターをとりだしチェーンロックを切る。うわあ、これ修理代かかるだろうなあ。
渡辺君と誠と指原さんが部屋に突入する。
僕達も後から入る。
桐谷君は散らかった部屋にぽつんと座り、ヘッドホンをしてFPSのゲームにのめりこんでいた。
指原さんはヘッドホンを奪い取り瑛大!!と怒鳴りつける。
「うるせーんだよ!ほっといてくれよ。どうせ俺なんか!」
「俺なんかなに!?悩んでることあるなら相談しろっていったでしょ!」
「誰にもわかってもらえねーよ!」
「そんなのわかんないじゃん!私に出来る事ならなんでもするから!?」
「そうかよ!じゃあ別れよ!もう放っておいてくれ」
指原さんの顔が青ざめてる。
「桐谷君落ち着こうよ、今凄い大変な事言ってるよ」
「冬夜も放っておいてくれ!もうグループも抜けるから!」
そんな事言ってると……。ほらカンナがね、すごい形相で君に近づいてるよ。
カンナは桐谷君の胸ぐらを掴むと力づくで立ち上がらせビンタをした。
「瑛大!お前何言ってるのかわかってのか!?お前がグループ抜けたところで大事な友達泣かせたんだ!黙ってられるか!納得のいく話ができるまで絶対に一人になんかしねーからな!!」
「神奈落ち着け」
「落ち着いてられるか!」
「とりあえずここだと近所迷惑だ。ファミレスに行こう。皆待たせてる」
「僕はいかないよ」
すると、渡辺君のどすの利いた声が聞こえた。こんな声聞いたことない。
「瑛大。お前グループ抜けるって言ったよな。その時点でお前は仲間を傷つけた敵だ。敵の言う事なんかきいてられんよ」
渡辺君は僕に言う。
「冬夜。お前運転上手いんだってな。指原さんの車を置いていくからお前指原さんを連れて行ってくれないか?今の指原さんに運転は任せられない」
確かに渡辺君の言う通りだ。今も泣きじゃくっている指原さんに運転は任せられない。
「瑛大は俺が連れて行く」
そう言って桐谷君の腕を掴む渡辺君。
「俺はどこにも行かな……」
「来るんだよ!!」
渡辺君の恫喝に皆がびくっとした。渡辺君ってこんな怖いキャラだったんだね。
「すまんな、みんな先に行っててくれ。後は俺と美嘉でなんとかするから。指原さん部屋の鍵を」
指原さんは渡辺君に鍵を渡すと僕たちの車に乗った。
ここからファミレスまでは10分もかからないところにある。
その間に指原さんに事情を聞いた。
(4)
GWが明けてすぐ、瑛大の異変に気がついた。
メッセージが返ってこない。
電話をかけても出ない。
多田君に聞いてみると、多田君が様子を聞いても何も答えない。ただ「何もかも面倒になった」と……。
心配になって瑛大の済んでるアパートに行っても中にいるのはいるけど返事が無い。
何日かは反応があった。
「もうほっといてくれ!」
「俺はもう終わりなんだ、お前たちとは違う」
「俺なんかどうせ……」
放っておけない。
そう思って渡辺君に相談したら「5月病だな」という……。
検索した。ますます放っておけなくなった。
水曜日くらいからぱたりと連絡が途絶えた。
そしてみんなに相談した。
「なるほどね……」
片桐君が運転しながら話を聞いていた。
「自分が情けなく思ったよ。別れるの一言がこんなに突き刺さるものだなんて思いもしなかった」
「しょうがないよ、亜依だって女性だもん」
愛莉がそう慰めてくれた。
「結局原因はわからずなのかい?」
片桐君が聞いてきた。
「わからない。休み明けから突然だから」
「宿泊した後はどこか行ったりしたの?」
「いや?」
「会ってもない?」
「私も課題で忙しかったし……それがいけなかったのかな?」
「それは無いと思うよ」
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「それはファミレスで聞けばいいんじゃないかな?」
教えてくれるかな?
本当に別れるなんてことになったらどうしよう?
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