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3rdSEASON
問題だらけの日々
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(1)
「片桐君こっちこっち!」
ファミレスに入ると奥の広い席で酒井君が手を振ってる。
その声は明るいというか助けを求める声に聞こえる。
酒井君の他に来ていたのは一ノ瀬さんと江口さんと石原君と……志水さん!?
ああ、まだ入っていたんだね。ちゃんと参加もするんだね。
この面子なら酒井君が助けを求めるのはわからないでもない。
全員で13人という面子を一つの席に収容できるファミレスがあるのが脅威だ。
とりあえずドリンクバーを人数分頼んで渡辺君達を待つ。
暫くして渡辺君達はスウェット姿の桐谷君をつれてやってきた。
何があったのか知らないけど桐谷君は神妙にしている。
そして、指原さんの隣に座る。
「皆注文はすませたのか?」
渡辺君が聞いてきた。
「いや、ドリンクバーを頼んだだけだけど」
僕が答える。
多分今、いつものメニューをやったら100%愛莉に叩かれる。
「渡辺達も来て全員揃ったし皆昼飯頼もうぜ!腹減っていたら冷静に話も出来ねーよ」
一番我を忘れていたカンナがそう言った、
これでいつもの注文が出来る。
あ、スープバーも忘れずに……。
愛莉の突っ込みが無い。
隣を見ると指原さんを宥める愛莉がいた。僕に構ってる暇はないんだね。なんか寂しい……。
「すいません、食後にチョコレートパフェを……」
ばしっ!
おしぼりが飛んできた。
「お前は少し自重しろ!!」
カンナに怒られた。
「瑛大もなんか食べなよ……何も食べてなかったんでしょ」
「食欲ないよ」
そんな瑛大と指原さんのやりとり。
バン!
向かいに座ってる美嘉さんがテーブルを叩いた。
「いいから食え!」
「じゃあ、チーズハンバーグを……」
美嘉さんに怯えている、桐谷君。
本当に車でなにがあったんだ。
店員は注文を聞くと確認して席を離れた。
それを見た渡辺君が一言桐谷君に言った。
「瑛大、お前ひとりの為にこれだけの人が来てくれたんだ、何か一言あっても良いんじゃないか?」
「皆さん……すいません」
「謝らなくていいから、原因を説明しろ!後謝るなら亜依に謝れ!」
「亜依、……ごめん」
指原さんは何も言わない。
渡辺君が話した。
「先ずこうなった原因からだな。俺が代わりに言うよ。5月病でも何でもない単なる甘えだ」
「はぁ?」
カンナがそう反応する。
「大学生活が始まっても友達は誰一人いない、彼女も離れている、その上ホームシックにかかったという……」
「友達がいない!?ふざけんなよ!じゃあ、ここに集まってるのは何なんだよ!?」
「神奈、落ち着いて話を聞いてやれ」
いきり立つカンナを宥める誠。
「音無さんが言うのは正論だよ瑛大、ここにいる皆は友達じゃないのか?」
落ち着いて話す渡辺君。
「すいませんでした……僕の甘えです……でも、皆と違って僕はそばにいる人がいない」
ああ、そんな事言ったら。
「そんな事言わないでよ!亜依が可哀そうだよ!!」
愛莉が亜依をあやしながら指原さんの気持ちを代弁した。
「亜依は話してた『二人共一人暮らしするなら同棲した方が楽なんじゃないか』そんなことまで言ってた。亜依だって気持ちはいっしょなんだよ?不安なんだから」
「それは聞いてる……」
「なら、今の発言といい、さっきの発言といいとても言える事じゃないと思うけど!」
愛莉本気で怒ってる。
「ちょっとまって、さっきの発言てなんのことかしら?」
江口さんが聞いてきた。
「別れるって……グループも抜けるって……」
桐谷君が言うと、江口さんの眉間にしわが寄ってきた。
「……どうやら桐谷君も調教が必要みたいね」
江口さんの言葉に身ぶるいする桐谷君。
「で、これからどうするんだよ?」
カンナが聞いた。
「亜依とは別れたくないです。グループも抜けたくないです」
「と、瑛大は言ってるんだが、皆はどう思う?」
渡辺君がそう言うと美嘉さんが発言した。
「戻るって言ってもまだぬけてねーし……でも、ケジメはつけないとな」
「そうだな、まずは亜依に謝罪だ。亜依が許さない限り私は許せない」
カンナがそう言う。
「亜依……ごめん、もう言わないから」
「あの、さ……」
僕が一つ気になっていたことを言った。
「どうした冬夜?」
「前の『毎日愛してるって言う』のはどうなったの?」
「皆で泊った日からやってないよ!」
ここにきて指原さんが叫ぶ。
「てことはそこまでは普通だったんだ?」
「まあ、そうなるな」
渡辺君がそう言う。
「ふーん、じゃあさ泊りから帰った後何があったの?」
僕は桐谷君に質問した。
「家に帰ったら空しくなったんだ、また一人だ、また詰まんない大学生活の始まりだって……そしたら急にもうなんでもどうでもよくなってきて」
「なるほどね」
「さっきから何を聞いてるんだ?何が言いたいんだトーヤ」
カンナが僕に聞いてきた。
「普通に原因が知りたかっただけ。あと気になっていただけ。今は考えてる。どうしたらこの二人は上手く行くんだろうって」
「それは亜依が許してからの話だろ?」
「指原さんは、寄りを戻したいんだよね?」
ていうかまだ別れてもないか?
「冬夜君はどう考えたの?」
愛莉が聞いてきた。
「一番いいのは二人で暮らす事だと思うけど……それは無理なんでしょ?だから悩んでる」
僕はそう言って誠を見た。
「誠に頼るしかないよな」
「でも俺サッカーあるしな……」
「と、なると……」
僕は考えた。
「『と、なると……』って何か秘策があるのか?」
誠が聞いてきた。
「秘策って程でもないけど……」
皆の視線が僕に集まる。
「もったいぶらずに言えよ」
美嘉さんがそう言うので答えた。
「もっとこのグループの活動を活発にする事かな?って……」
「ほう、面白いな。詳しく聞かせろよ……冬夜」
渡辺君が食いついてきた。
「要は桐谷君と指原さんを一人だけにしなけりゃいいんでしょ?でも二人だとどうにもならない。ならなんか【口実】を作ってやればいいんじゃないかって」
「でも、片桐君。グループの活動って何をするんだい?」
酒井君が聞いてきた。
「最近さ、僕とカンナと誠で深夜に山に遊びに行ってたんだよね」
「うぅ……そんなに頻繁に言ってたの?」
愛莉の視線が痛い……とりあえず宥めるのは後にしよう。
愛莉の頭を撫でてやりながら話を続ける。
「そんな感じでさ、毎週末夜にでもどこかに遊びに行くとかしたらいいんじゃないかなって……深夜なら予定開いてるでしょ」
「山に遊びに行くってピクニックでもするつもり?深夜に」
そんなわけないじゃないですか、江口さん。
「私週末仕事あるから無理だぞ」と美嘉さん。
「まあ、皆の予定が合う時に行けばいいじゃないかな?バイトしてる人の都合優先して。何して遊ぶかはその時決めたらいい」
「冬夜の意見は面白そうだから俺は煮詰めていきたいと思うんだがどうかな?皆」
「まあ、反対する理由はないですね」
酒井君がそう言うと皆が賛成した。
「じゃあ、取りあえずはそれで行くか?基本金曜の夜か平日の時間空いてる時にでも……そうだな、皆インターネットの環境はあるよな?」
皆頷く。
「ネット上で表を作っておく。そのアドレス送るからそこに希望日書き込んでいく形でいこう。それでいいか?指原さん?」
「私は深夜帯と早朝にシフト入れなければ済むだけの話だけど皆いいの?」
「亜依、私も似たようなもんだ、気にするな」とカンナ。
「僕も深夜と早朝にやるようなバイトじゃないですから」と酒井君
「私もバイト先酒井君と同じなので」と一ノ瀬さん。
「ちょっとまって肝心な事が片付いてないわよ」と江口さん
「結局桐谷君はどうするの?」
「瑛大は強制参加だな。サボったら今日みたいに家に踏み込む」
「亜依ちゃんはそれでいいの?許せるの?」
「……まあ、私も悪いところあるしね。今回は……」
「本当にそうかしら?」
そう言ったのは志水さんだった。
(2)
「本当にそうかしら?」
志水さんはそう言った。
「どういう意味?」
江口さんが食ってかかる。
「軟弱な男にくっ付いていく程度の女性じゃないでしょあなた。いくらでも探せば……」
「志水さん、前にも言ったけど人それぞれ価値観があってそれを頭ごなしに否定するのは……」と酒井君。
「軟弱な男に振られてもついて来る程度の女性に言われたくないわね」
そ、それはいいすぎですよ、江口さん。
「放っておいてって言われたんでしょ?放っておけばいいじゃない?どうして今日みんな集まる理由があったの?理解に苦しむわ」
「ちゃんと好きな人が出来たことのないあんたに言われたくないよ」
完全に挑発に乗ってますね、指原さん。
「好きな人ならちゃんと作ったわ。ちょっと攻略するのにてこずってるだけだわ」
それは好きな人が出来たって言えるんですかね?
「あなたと酒井君じゃ価値観が違い過ぎるわ。諦めるのね」と江口さん。
「さっきも言ったけど、しつこいと嫌われますよ」と一ノ瀬さん。そんなキャラだったんだね。
「軟弱な男って言ったけど要は寂しいからって一人で拗ねてただけでしょ。捕らえようによったら可愛いじゃん」
指原さん完全に忘れてるね。さっきまで泣いてたこと。
「ま、まあここは皆さん押えて一つの大盛りフライドポテトでも頼んでつつきませんか?」
ぽかっ
「冬夜君が食べたいだけでしょ!調子に乗らない!」
そうか、指原さんが復活したら愛莉の監視が復活するよね?
「そう言わずにほらパフェあるよ。あーん……」
「ちょ、ちょっと皆見てるよ……」
ぱくっ
食べちゃうんだね。
「美味しいね。でもポテトはなしだからね。それで我慢しようね♪」
「え、だからみんなで仲良く」
「我慢しようね♪」
「……はい」
「遠坂さん、こんな軟弱な男のどこに価値を見出したの?」
「ほえ?」
志水さんと江口さんの矛先は桐谷君から愛莉に変わったようだ。
「ただ食べてるだけで何もしない男のどこがいいの?」
「冬夜君の良いところを上げればいいの?時間かかるけどいい?」
「そんなにあるなら、ぜひ聞いてみたいわね」
「愛莉ちゃん、この女に言ったところで時間の無駄よ」
「分かってもらえるかは確かに分からないね……」
愛莉が悩んでいる。
「何、また『私だけの特別な人』で片づけるわけ……はん」
「そんなことないもん!いいわよ、じゃあじっくりと聞かせてあげる、まずは……」
愛莉ののろけ話は約1時間に渡って繰り広げられた。
サッカーがファンタジスタと称される程上手い、バスケもすごい、この身長でダンクが出来る、野球も出来る。何より身体能力が半端ない。ゾーンに入れる、フロー状態にも入れる。二人の世界が作れる。私の事だけを考えてくれる。……等々数えたらキリがないくらい褒めちぎられてた。
「あなた、妄想も甚だしいわね。そんな超人いたら見てみたいわね」
「目の前にいるよ」
「この冴えない男がファンタジスタって言うの!?ダンクが出来るって言うの。なら見せてもらいたいわね!」
「うぅ……」
「サッカーとバスケなら見せられるわよ?」
江口さんが驚きの一言を放った。
「どうやって見せるの?」と、志水さん。
江口さんは新條さんに電話する。
「ちょっと待ってなさいな」
そう言ってしばらく待っていると、新條さんがやってきた。
「お嬢様、お持ちしました」
「ご苦労新條」
「はっ!」
そう言って新條さんは店を出る。
持ってきたのはDVDとポータブルDVDプレーヤーだった。
「高校にテレビの取材が来たでしょ?だから記念に録画しておいたの」
あれか。
DVDにはダンクする僕と9枚のパネルを撃ちぬく僕の姿が。
「これでもまだ疑うの?」
どうだと言わんばかりの笑みを浮かべる江口さん。
「た、確かにあなたの彼氏は凄いようね。悔しいけど」
「でしょ!」
愛莉も得意気な顔をする。
「なんなら、ドラテクも見てくか?今夜でも見れるぜ」とカンナ。
「神奈それはだめ、今日はお車さんはくつろいでもらうの」と愛莉。
「勘違いしないで、分かったのは遠坂さんは勝ち組なのね、という事よ」
「何もわかってないね、志水さんは」と、愛莉は言う。
「どういう意味?」
「こんなにすごい冬夜君でも『やる気が無い』って一言だけで冴えない男に見えちゃうって事。その人のいいところは結局好きになった人にしか分からないって事だよ」
「でも確かに片桐君はすごいじゃない?」
「でもやりたがらないの。冬夜君ねサッカー日本代表候補にまで上がったんだよ。でもサッカーやるより私とキャンパスライフを楽しみたいって理由で断った。それだけ私の事を好きでいてくれてるって事。そこが一番素敵なところなんだよ」
「そういうのならイッシーもあるわ。こう見えて格闘技は鍛えてあるのよ。後不器用に優しいわね。気弱だけど」
「瑛大もゲームの腕ならそこそこあるわ。ヲタだけど」
「正志も頼りになるぞ」
「誠はサッカー得意だな。変態だけど」
「善幸さんも優しいし意外と勇気あるよ。頼りないけど。志水さんは善幸さんのどこが好きになったの?」
女性陣が自分の彼氏の自慢を始めると志水さんは黙ってしまった。
「……なるほど、まず自分の彼の良いところを見つけるところから始めるのね」
志水さんはそう言って酒井君の目を見る。
酒井君は戸惑っている。
「順番が違うかな、良いところを見つけ好きになってそれから恋愛ははじまるの。それはどんな理由でもかまわない。頭で考えるんじゃない心が判断するの」
「ややこしいわね。この人って決めたらそれでいいじゃない?」
いや、だからその「この人」ってのを決める手段がですね……。
「決めつけるんじゃなくて自然体で受け止めるの。これが恋なんだって……」
「そういう意味でなら決めてるわよ」
「え?」
愛莉が驚いた。愛莉、多分その人は問題大ありだと思うぞ。
「誰よそれ?」
いや、カンナそれは聞いてやるな。多分本人は困ると思うぞ。
「酒井君よ」
ほら、酒井君困った顔してるだろ?
露骨にイヤそうな顔してるだろ?
寧ろ迷惑に思ってると思う。
「無理よ、やめときなさい。彼にはもう一ノ瀬さんっていう素敵な彼女がいるんだから」
「略奪愛って言葉があるらしいわね」
「ちょっとあなた……」
「今日はこのくらいにしておくわ。迎えも来たし。また明日ね」
そう言ってお金を支払い店を出た。
「あの女かなり性格歪んでるわね……」
江口さんは憎々し気に言う。
「次の問題は志水さんをどうするかだな」と、渡辺君が言う。
「放っておけば?」と指原さん。
「ああいう女をぎゃふんと言わせるのも楽しそうだけどな」と美嘉さん。
「でも方向は大分間違えてるけど理解はしてる気がするよ」と僕が言う。
他人事だけどね。
「ま、次の集合する日を決めようか?」
渡辺君が言うと次の日の打ち合わせを始めた。
(3)
そのままファミレスで夕食も食べて解散した。
僕は穂乃果の運転で家に帰っている。
穂乃果は黙って運転している。
さっきの話、まだ引きずってるんだろうか?
だとしたら、触れないほうが正解?
遠坂さんが言ってたっけ?
「どんなことがあっても揺らいじゃだめ。強いきずなが元に戻してくれるから」と。
「あのさ穂乃果……」
「さっきの話なら気にしてないですよ?」
へ?
「困った人ですね。志水さんって……」
「そうだね……」
「私信じてますから。善幸の事」
「ありがとうございます」
「私と志水さんを秤にかけて私を選んでくれたんですよね?」
秤に乗せた覚えすらないけどね。
「善幸と一緒にいる時間は私の方が長いんだから、私の方が有利ですよね!」
「張り合うだけ無駄だと思うよ」
「え?」
不安そうな顔をする穂乃果。
「僕は最初から穂乃果を選んでるのだから、レースにもならない。志水さんが一人で待ちぼうけしてるだけの状態だと思うけど」
「……そうですね!」
穂乃果がやっと笑ってくれた。
願わくばこの笑顔が絶えないことを。
僕になにができるだろう?
ようやくできた小さな幸せ。
予想だにしなかった愛しい人。
ここが終着点じゃない。
もっと先へ。
次の扉を開こう。
光の射す未来の扉を……。
(4)
私は悩んでいた。
どうしてあんな無価値に等しい男を追い求めるのだろう?
初めて私に意見してきた男。
その目は面倒くさそうだった。
あんな目で私を見る男は初めてだ。
その目に惹かれていた?
今になって気づく。
これが恋?
遠坂さんの言ってる意味が正しいのなら、あの男の目に惹かれた?
これでいいのね?
じゃあ、次はどうする?
彼には彼女がいる。
だからって引き下がるほど弱い女じゃない。
彼に振り向いてもらうために努力しよう。
力づくでも振り向かせてみせる。
初めてだった。
男を振り向かせるのに努力するだなんて。
私と彼をつなぐ道具はスマホのメッセージのみ。
彼の家はすでに調査済み。
彼のバイト先も調査済み。
そして彼女のバイト先と同じということも……。
取りあえずすることは宣戦布告ね。
グループメッセージにメッセージを送る。
「私本気で好きになったから」
反応が無い。
こんなグループも初めてだ。
「ここから本気で行かせてもらうから覚悟してね」
「屈辱を知るのもいい経験だわ。精々足掻きなさい」
江口さんからレスが返ってきた。
「私手に入れられなかったものなんてないから」
「そう、残念ね、今回が初めてになるのね」
一々突っかかってくる嫌な女。
放っておこう
次に彼のIDにメッセージを送る。
「と、いうわけで今日からよろしく」
暫く時間がたってレスが返ってきた。
「お手柔らかに」
「そんな生ぬるい手は使わないわよ?」
「他人の恋路を邪魔するなんて野暮な真似よしたほうがいいですよ」
「私は本気であなたを好きになった」
「僕には彼女がいるんで」
「私待つから。こう見えてしぶとい女なの」
「どうして僕なんですか?」
「あなたが初めてだったから」
「?」
「初めて私を本気にさせた男だから」
十分な理由でしょ?
明日から楽しみね。
「片桐君こっちこっち!」
ファミレスに入ると奥の広い席で酒井君が手を振ってる。
その声は明るいというか助けを求める声に聞こえる。
酒井君の他に来ていたのは一ノ瀬さんと江口さんと石原君と……志水さん!?
ああ、まだ入っていたんだね。ちゃんと参加もするんだね。
この面子なら酒井君が助けを求めるのはわからないでもない。
全員で13人という面子を一つの席に収容できるファミレスがあるのが脅威だ。
とりあえずドリンクバーを人数分頼んで渡辺君達を待つ。
暫くして渡辺君達はスウェット姿の桐谷君をつれてやってきた。
何があったのか知らないけど桐谷君は神妙にしている。
そして、指原さんの隣に座る。
「皆注文はすませたのか?」
渡辺君が聞いてきた。
「いや、ドリンクバーを頼んだだけだけど」
僕が答える。
多分今、いつものメニューをやったら100%愛莉に叩かれる。
「渡辺達も来て全員揃ったし皆昼飯頼もうぜ!腹減っていたら冷静に話も出来ねーよ」
一番我を忘れていたカンナがそう言った、
これでいつもの注文が出来る。
あ、スープバーも忘れずに……。
愛莉の突っ込みが無い。
隣を見ると指原さんを宥める愛莉がいた。僕に構ってる暇はないんだね。なんか寂しい……。
「すいません、食後にチョコレートパフェを……」
ばしっ!
おしぼりが飛んできた。
「お前は少し自重しろ!!」
カンナに怒られた。
「瑛大もなんか食べなよ……何も食べてなかったんでしょ」
「食欲ないよ」
そんな瑛大と指原さんのやりとり。
バン!
向かいに座ってる美嘉さんがテーブルを叩いた。
「いいから食え!」
「じゃあ、チーズハンバーグを……」
美嘉さんに怯えている、桐谷君。
本当に車でなにがあったんだ。
店員は注文を聞くと確認して席を離れた。
それを見た渡辺君が一言桐谷君に言った。
「瑛大、お前ひとりの為にこれだけの人が来てくれたんだ、何か一言あっても良いんじゃないか?」
「皆さん……すいません」
「謝らなくていいから、原因を説明しろ!後謝るなら亜依に謝れ!」
「亜依、……ごめん」
指原さんは何も言わない。
渡辺君が話した。
「先ずこうなった原因からだな。俺が代わりに言うよ。5月病でも何でもない単なる甘えだ」
「はぁ?」
カンナがそう反応する。
「大学生活が始まっても友達は誰一人いない、彼女も離れている、その上ホームシックにかかったという……」
「友達がいない!?ふざけんなよ!じゃあ、ここに集まってるのは何なんだよ!?」
「神奈、落ち着いて話を聞いてやれ」
いきり立つカンナを宥める誠。
「音無さんが言うのは正論だよ瑛大、ここにいる皆は友達じゃないのか?」
落ち着いて話す渡辺君。
「すいませんでした……僕の甘えです……でも、皆と違って僕はそばにいる人がいない」
ああ、そんな事言ったら。
「そんな事言わないでよ!亜依が可哀そうだよ!!」
愛莉が亜依をあやしながら指原さんの気持ちを代弁した。
「亜依は話してた『二人共一人暮らしするなら同棲した方が楽なんじゃないか』そんなことまで言ってた。亜依だって気持ちはいっしょなんだよ?不安なんだから」
「それは聞いてる……」
「なら、今の発言といい、さっきの発言といいとても言える事じゃないと思うけど!」
愛莉本気で怒ってる。
「ちょっとまって、さっきの発言てなんのことかしら?」
江口さんが聞いてきた。
「別れるって……グループも抜けるって……」
桐谷君が言うと、江口さんの眉間にしわが寄ってきた。
「……どうやら桐谷君も調教が必要みたいね」
江口さんの言葉に身ぶるいする桐谷君。
「で、これからどうするんだよ?」
カンナが聞いた。
「亜依とは別れたくないです。グループも抜けたくないです」
「と、瑛大は言ってるんだが、皆はどう思う?」
渡辺君がそう言うと美嘉さんが発言した。
「戻るって言ってもまだぬけてねーし……でも、ケジメはつけないとな」
「そうだな、まずは亜依に謝罪だ。亜依が許さない限り私は許せない」
カンナがそう言う。
「亜依……ごめん、もう言わないから」
「あの、さ……」
僕が一つ気になっていたことを言った。
「どうした冬夜?」
「前の『毎日愛してるって言う』のはどうなったの?」
「皆で泊った日からやってないよ!」
ここにきて指原さんが叫ぶ。
「てことはそこまでは普通だったんだ?」
「まあ、そうなるな」
渡辺君がそう言う。
「ふーん、じゃあさ泊りから帰った後何があったの?」
僕は桐谷君に質問した。
「家に帰ったら空しくなったんだ、また一人だ、また詰まんない大学生活の始まりだって……そしたら急にもうなんでもどうでもよくなってきて」
「なるほどね」
「さっきから何を聞いてるんだ?何が言いたいんだトーヤ」
カンナが僕に聞いてきた。
「普通に原因が知りたかっただけ。あと気になっていただけ。今は考えてる。どうしたらこの二人は上手く行くんだろうって」
「それは亜依が許してからの話だろ?」
「指原さんは、寄りを戻したいんだよね?」
ていうかまだ別れてもないか?
「冬夜君はどう考えたの?」
愛莉が聞いてきた。
「一番いいのは二人で暮らす事だと思うけど……それは無理なんでしょ?だから悩んでる」
僕はそう言って誠を見た。
「誠に頼るしかないよな」
「でも俺サッカーあるしな……」
「と、なると……」
僕は考えた。
「『と、なると……』って何か秘策があるのか?」
誠が聞いてきた。
「秘策って程でもないけど……」
皆の視線が僕に集まる。
「もったいぶらずに言えよ」
美嘉さんがそう言うので答えた。
「もっとこのグループの活動を活発にする事かな?って……」
「ほう、面白いな。詳しく聞かせろよ……冬夜」
渡辺君が食いついてきた。
「要は桐谷君と指原さんを一人だけにしなけりゃいいんでしょ?でも二人だとどうにもならない。ならなんか【口実】を作ってやればいいんじゃないかって」
「でも、片桐君。グループの活動って何をするんだい?」
酒井君が聞いてきた。
「最近さ、僕とカンナと誠で深夜に山に遊びに行ってたんだよね」
「うぅ……そんなに頻繁に言ってたの?」
愛莉の視線が痛い……とりあえず宥めるのは後にしよう。
愛莉の頭を撫でてやりながら話を続ける。
「そんな感じでさ、毎週末夜にでもどこかに遊びに行くとかしたらいいんじゃないかなって……深夜なら予定開いてるでしょ」
「山に遊びに行くってピクニックでもするつもり?深夜に」
そんなわけないじゃないですか、江口さん。
「私週末仕事あるから無理だぞ」と美嘉さん。
「まあ、皆の予定が合う時に行けばいいじゃないかな?バイトしてる人の都合優先して。何して遊ぶかはその時決めたらいい」
「冬夜の意見は面白そうだから俺は煮詰めていきたいと思うんだがどうかな?皆」
「まあ、反対する理由はないですね」
酒井君がそう言うと皆が賛成した。
「じゃあ、取りあえずはそれで行くか?基本金曜の夜か平日の時間空いてる時にでも……そうだな、皆インターネットの環境はあるよな?」
皆頷く。
「ネット上で表を作っておく。そのアドレス送るからそこに希望日書き込んでいく形でいこう。それでいいか?指原さん?」
「私は深夜帯と早朝にシフト入れなければ済むだけの話だけど皆いいの?」
「亜依、私も似たようなもんだ、気にするな」とカンナ。
「僕も深夜と早朝にやるようなバイトじゃないですから」と酒井君
「私もバイト先酒井君と同じなので」と一ノ瀬さん。
「ちょっとまって肝心な事が片付いてないわよ」と江口さん
「結局桐谷君はどうするの?」
「瑛大は強制参加だな。サボったら今日みたいに家に踏み込む」
「亜依ちゃんはそれでいいの?許せるの?」
「……まあ、私も悪いところあるしね。今回は……」
「本当にそうかしら?」
そう言ったのは志水さんだった。
(2)
「本当にそうかしら?」
志水さんはそう言った。
「どういう意味?」
江口さんが食ってかかる。
「軟弱な男にくっ付いていく程度の女性じゃないでしょあなた。いくらでも探せば……」
「志水さん、前にも言ったけど人それぞれ価値観があってそれを頭ごなしに否定するのは……」と酒井君。
「軟弱な男に振られてもついて来る程度の女性に言われたくないわね」
そ、それはいいすぎですよ、江口さん。
「放っておいてって言われたんでしょ?放っておけばいいじゃない?どうして今日みんな集まる理由があったの?理解に苦しむわ」
「ちゃんと好きな人が出来たことのないあんたに言われたくないよ」
完全に挑発に乗ってますね、指原さん。
「好きな人ならちゃんと作ったわ。ちょっと攻略するのにてこずってるだけだわ」
それは好きな人が出来たって言えるんですかね?
「あなたと酒井君じゃ価値観が違い過ぎるわ。諦めるのね」と江口さん。
「さっきも言ったけど、しつこいと嫌われますよ」と一ノ瀬さん。そんなキャラだったんだね。
「軟弱な男って言ったけど要は寂しいからって一人で拗ねてただけでしょ。捕らえようによったら可愛いじゃん」
指原さん完全に忘れてるね。さっきまで泣いてたこと。
「ま、まあここは皆さん押えて一つの大盛りフライドポテトでも頼んでつつきませんか?」
ぽかっ
「冬夜君が食べたいだけでしょ!調子に乗らない!」
そうか、指原さんが復活したら愛莉の監視が復活するよね?
「そう言わずにほらパフェあるよ。あーん……」
「ちょ、ちょっと皆見てるよ……」
ぱくっ
食べちゃうんだね。
「美味しいね。でもポテトはなしだからね。それで我慢しようね♪」
「え、だからみんなで仲良く」
「我慢しようね♪」
「……はい」
「遠坂さん、こんな軟弱な男のどこに価値を見出したの?」
「ほえ?」
志水さんと江口さんの矛先は桐谷君から愛莉に変わったようだ。
「ただ食べてるだけで何もしない男のどこがいいの?」
「冬夜君の良いところを上げればいいの?時間かかるけどいい?」
「そんなにあるなら、ぜひ聞いてみたいわね」
「愛莉ちゃん、この女に言ったところで時間の無駄よ」
「分かってもらえるかは確かに分からないね……」
愛莉が悩んでいる。
「何、また『私だけの特別な人』で片づけるわけ……はん」
「そんなことないもん!いいわよ、じゃあじっくりと聞かせてあげる、まずは……」
愛莉ののろけ話は約1時間に渡って繰り広げられた。
サッカーがファンタジスタと称される程上手い、バスケもすごい、この身長でダンクが出来る、野球も出来る。何より身体能力が半端ない。ゾーンに入れる、フロー状態にも入れる。二人の世界が作れる。私の事だけを考えてくれる。……等々数えたらキリがないくらい褒めちぎられてた。
「あなた、妄想も甚だしいわね。そんな超人いたら見てみたいわね」
「目の前にいるよ」
「この冴えない男がファンタジスタって言うの!?ダンクが出来るって言うの。なら見せてもらいたいわね!」
「うぅ……」
「サッカーとバスケなら見せられるわよ?」
江口さんが驚きの一言を放った。
「どうやって見せるの?」と、志水さん。
江口さんは新條さんに電話する。
「ちょっと待ってなさいな」
そう言ってしばらく待っていると、新條さんがやってきた。
「お嬢様、お持ちしました」
「ご苦労新條」
「はっ!」
そう言って新條さんは店を出る。
持ってきたのはDVDとポータブルDVDプレーヤーだった。
「高校にテレビの取材が来たでしょ?だから記念に録画しておいたの」
あれか。
DVDにはダンクする僕と9枚のパネルを撃ちぬく僕の姿が。
「これでもまだ疑うの?」
どうだと言わんばかりの笑みを浮かべる江口さん。
「た、確かにあなたの彼氏は凄いようね。悔しいけど」
「でしょ!」
愛莉も得意気な顔をする。
「なんなら、ドラテクも見てくか?今夜でも見れるぜ」とカンナ。
「神奈それはだめ、今日はお車さんはくつろいでもらうの」と愛莉。
「勘違いしないで、分かったのは遠坂さんは勝ち組なのね、という事よ」
「何もわかってないね、志水さんは」と、愛莉は言う。
「どういう意味?」
「こんなにすごい冬夜君でも『やる気が無い』って一言だけで冴えない男に見えちゃうって事。その人のいいところは結局好きになった人にしか分からないって事だよ」
「でも確かに片桐君はすごいじゃない?」
「でもやりたがらないの。冬夜君ねサッカー日本代表候補にまで上がったんだよ。でもサッカーやるより私とキャンパスライフを楽しみたいって理由で断った。それだけ私の事を好きでいてくれてるって事。そこが一番素敵なところなんだよ」
「そういうのならイッシーもあるわ。こう見えて格闘技は鍛えてあるのよ。後不器用に優しいわね。気弱だけど」
「瑛大もゲームの腕ならそこそこあるわ。ヲタだけど」
「正志も頼りになるぞ」
「誠はサッカー得意だな。変態だけど」
「善幸さんも優しいし意外と勇気あるよ。頼りないけど。志水さんは善幸さんのどこが好きになったの?」
女性陣が自分の彼氏の自慢を始めると志水さんは黙ってしまった。
「……なるほど、まず自分の彼の良いところを見つけるところから始めるのね」
志水さんはそう言って酒井君の目を見る。
酒井君は戸惑っている。
「順番が違うかな、良いところを見つけ好きになってそれから恋愛ははじまるの。それはどんな理由でもかまわない。頭で考えるんじゃない心が判断するの」
「ややこしいわね。この人って決めたらそれでいいじゃない?」
いや、だからその「この人」ってのを決める手段がですね……。
「決めつけるんじゃなくて自然体で受け止めるの。これが恋なんだって……」
「そういう意味でなら決めてるわよ」
「え?」
愛莉が驚いた。愛莉、多分その人は問題大ありだと思うぞ。
「誰よそれ?」
いや、カンナそれは聞いてやるな。多分本人は困ると思うぞ。
「酒井君よ」
ほら、酒井君困った顔してるだろ?
露骨にイヤそうな顔してるだろ?
寧ろ迷惑に思ってると思う。
「無理よ、やめときなさい。彼にはもう一ノ瀬さんっていう素敵な彼女がいるんだから」
「略奪愛って言葉があるらしいわね」
「ちょっとあなた……」
「今日はこのくらいにしておくわ。迎えも来たし。また明日ね」
そう言ってお金を支払い店を出た。
「あの女かなり性格歪んでるわね……」
江口さんは憎々し気に言う。
「次の問題は志水さんをどうするかだな」と、渡辺君が言う。
「放っておけば?」と指原さん。
「ああいう女をぎゃふんと言わせるのも楽しそうだけどな」と美嘉さん。
「でも方向は大分間違えてるけど理解はしてる気がするよ」と僕が言う。
他人事だけどね。
「ま、次の集合する日を決めようか?」
渡辺君が言うと次の日の打ち合わせを始めた。
(3)
そのままファミレスで夕食も食べて解散した。
僕は穂乃果の運転で家に帰っている。
穂乃果は黙って運転している。
さっきの話、まだ引きずってるんだろうか?
だとしたら、触れないほうが正解?
遠坂さんが言ってたっけ?
「どんなことがあっても揺らいじゃだめ。強いきずなが元に戻してくれるから」と。
「あのさ穂乃果……」
「さっきの話なら気にしてないですよ?」
へ?
「困った人ですね。志水さんって……」
「そうだね……」
「私信じてますから。善幸の事」
「ありがとうございます」
「私と志水さんを秤にかけて私を選んでくれたんですよね?」
秤に乗せた覚えすらないけどね。
「善幸と一緒にいる時間は私の方が長いんだから、私の方が有利ですよね!」
「張り合うだけ無駄だと思うよ」
「え?」
不安そうな顔をする穂乃果。
「僕は最初から穂乃果を選んでるのだから、レースにもならない。志水さんが一人で待ちぼうけしてるだけの状態だと思うけど」
「……そうですね!」
穂乃果がやっと笑ってくれた。
願わくばこの笑顔が絶えないことを。
僕になにができるだろう?
ようやくできた小さな幸せ。
予想だにしなかった愛しい人。
ここが終着点じゃない。
もっと先へ。
次の扉を開こう。
光の射す未来の扉を……。
(4)
私は悩んでいた。
どうしてあんな無価値に等しい男を追い求めるのだろう?
初めて私に意見してきた男。
その目は面倒くさそうだった。
あんな目で私を見る男は初めてだ。
その目に惹かれていた?
今になって気づく。
これが恋?
遠坂さんの言ってる意味が正しいのなら、あの男の目に惹かれた?
これでいいのね?
じゃあ、次はどうする?
彼には彼女がいる。
だからって引き下がるほど弱い女じゃない。
彼に振り向いてもらうために努力しよう。
力づくでも振り向かせてみせる。
初めてだった。
男を振り向かせるのに努力するだなんて。
私と彼をつなぐ道具はスマホのメッセージのみ。
彼の家はすでに調査済み。
彼のバイト先も調査済み。
そして彼女のバイト先と同じということも……。
取りあえずすることは宣戦布告ね。
グループメッセージにメッセージを送る。
「私本気で好きになったから」
反応が無い。
こんなグループも初めてだ。
「ここから本気で行かせてもらうから覚悟してね」
「屈辱を知るのもいい経験だわ。精々足掻きなさい」
江口さんからレスが返ってきた。
「私手に入れられなかったものなんてないから」
「そう、残念ね、今回が初めてになるのね」
一々突っかかってくる嫌な女。
放っておこう
次に彼のIDにメッセージを送る。
「と、いうわけで今日からよろしく」
暫く時間がたってレスが返ってきた。
「お手柔らかに」
「そんな生ぬるい手は使わないわよ?」
「他人の恋路を邪魔するなんて野暮な真似よしたほうがいいですよ」
「私は本気であなたを好きになった」
「僕には彼女がいるんで」
「私待つから。こう見えてしぶとい女なの」
「どうして僕なんですか?」
「あなたが初めてだったから」
「?」
「初めて私を本気にさせた男だから」
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明日から楽しみね。
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