優等生と劣等生

和希

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3rdSEASON

道の先に

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(1)

「うわぁ~高いね~」

特別屋外展望台に立った愛莉はそういって感動していた。
夏の風をまともに受けながらそこに立つのは、スリルと感動を味わえるものだった。
そのあと5階の黄金の展望台、4階光の展望台と見て回り3階へと降りる。
トップフロアーから屋上へ続く階段を上ると和風モダンな「通天閣庭苑」が広がっている。
竹垣や石灯籠があり、日本庭園のような日本庭園のような雰囲気になっていた。

「なんかこういうのって落ち着くよね」

愛莉の言う通りだ。日本人だからだろうか、木と竹と緑と光と風。それらは心を落ち着かせる。
一周すると下に降りる。
カフェに寄る。通天閣パフェなるものがあった。
愛莉は迷うことなく注文する。僕は遠慮しておいた。
だって名前からして嫌な予感がしたから。
嫌な予感は当たった。通天閣をあしらったコーンがそびえたつそれは愛莉一人で食べきれるものではなかった。
残ったパフェを処理するのが僕の役目。
それから下の階へ行きショッピングを楽しむ愛莉。
地下一階まで見て回ると、僕達は通天閣を後にした。

車の中で僕は、ガイドブックとにらめっこ。
愛莉の言うドライブもいいんだけど、大温泉も悪くない。
ここからそう離れてない。
ドライブはどのみち神戸まですることになる。
だったら大温泉行ってもいいじゃないか?

「どうしたの?」

愛莉がガイドブックを覗き込む。

「あ、温泉だ。大阪にもあるんだね」

愛莉が食いついた。

「プールもあるじゃん!行こう行こう」
「ドライブの時間短くなるけどいいか?」
「うん、このコース良さそうだし」

何か愛莉のお気に召すコースがあったようだ。

(2)

先ず岩盤浴に入る。カップルで入れた。愛莉は疲労回復コースを暗記したらしい。
1時間ほどで回った。
その後プールで遊ぶ。水着は貸し出しがあった。ここも1時間ほど遊んだ。
その後お好み焼きと焼そばを食べる。
愛莉があまり食べないので一つずつ注文してシェアし手食べる。

「青のりかけちゃいやだよ」

愛莉がそう言うので店員に「青のりかけないでお願いします」と一言お願いした。
その後それぞれ温泉に入った。
愛莉は温泉はじっくり楽しむ派だ。
女性なら誰でもそうだろうけど。
その事は計算済み。
僕はささっと浴びると浴場をでて、3Fへ……ラーメンラーメン♪
しかしそんなに甘くなかった。
お店の前に笑顔の愛莉が立っていた。

「早かったね」

愛莉の方こそ早かったんじゃないのか?

「じゃ、リラクゼーション行こっか?」
「行っといで、僕はラーメンを……」

がしっ!

愛莉に腕を掴まれ引きずられる僕。

「さっきお好み焼き食べたからいいよね♪」
「ラーメンは別腹なんだよ」
「いいよね♪」

笑っているうちに引いとけか。
とほほ……さよならラーメン。

マッサージを済ませた後は、フレッシュジュースを飲む。
30種類もソフトクリームがあるんだって。
1/3くらいは食べてもいいよね

ぽかっ

「どれかひとつにしようね♪」

愛莉の語尾に♪がついてるうちに止めといた方が良さそうだ。

(3)

リフレッシュし、疲れも取れたことだし、そろそろ帰るかとナビを六甲アイランドに設定する。

「愛莉、まだ時間あるし、どこか寄りたいところないか?」
「う~ん……」

愛莉が悩んでいる。どこか、当てがあるのだろうか?

「フェリーが出るまでかなり余裕あるし神戸ならどこでもいいと思うよ」
「じゃあ、遊覧船に乗りたい~」

自分のスマホで検索しながら答える愛莉。
目的地変更をする。
そんなに遠くない。
というか、都会ならではの高速使ってどこでもすぐ行けるってやつで。
駐車場も思ったよりある。

「~♪」

愛莉が鼻歌を歌っている。
上機嫌なんだろうか?

港に到着した。発着場に急ぐ。
神戸港内外を遊覧する帆船型遊覧船。
神戸空港まで見えるらしい。
ゆったりと45分間過ごす。

「来てよかったね」

デッキで観光しながら、愛莉は言う。

「そうだな」
「ありがとうね……」

彼女はそういうと僕の頬に軽く口づけをする。

「こんなお礼しかできないけど」

恥ずかしそうに、そしてどこか寂し気に言う愛莉

「『しか』とか言うなよ。僕には最高のプレゼントだよ」
「本当?よかった~」

愛莉は嬉しそうに言う。

「次はどこに行こうか?」
「そうだね~これ以上は車さんじゃ無理かな?」
「いつか行こうな」
「どこに?」

愛莉は不思議そうに聞いてきた。

「日本一周、愛莉としてみたい」
「私も一緒でいいの?」
「他に誰がナビしてくれるんだい?」
「……そうだね♪」

愛莉は嬉しそうに笑う。
ありのままの心で、愛莉ただ一人だけを愛し続ける僕を誇らしげに思う。
何にも負けないほど大きな愛があふれ出してる。
遊覧船が港に戻る。
僕達はフェリー乗り場に向かった。

(4)

フェリーに乗ると船室に向かう。
来た時と同じ上が僕下が愛莉。
ご飯を食べ風呂に入り、一足先に船室に戻る。
テレビを見ながらくつろいでいると愛莉が戻ってきた。

「帰ったらまた元の暮らしだね」
「愛莉、休みの間くらいゆっくりしろよ」
「う~ん、良く言うじゃん。『主婦に休みはない』って」
「まだ主婦じゃないだろ?学生だぞ?そのうちぶっ倒れたら僕が悲しい」

それに、遠坂家にどうしたらいいか分からなくなる。

「じゃあ、毎週土日にお休みするからどこか連れてって♪」
「……近場でいいなら」
「冬夜君と一緒ならどこでもいいよ」
「わかった」
「また洗車しないとだね」
「愛莉の車もな」

毎日酷使し続けてるのはむしろ愛莉の車だろ。

「一緒にしようね」
「うん」
「とりあえず帰ったら冬夜君のメンテだね」
「大丈夫だよ、今日大温泉で十分メンテしてもらった」
「私がメンテするの~」
「例えば?」
「マッサージしてあげたり……」
「あげたり?」

ちょっと意地が悪かったかな?

ぽかっ

「最後まで言わせないの。バカ」
「いいよ、それが愛莉のメンテにもつながるなら」
「うぅ……、そう来ますか」

愛莉が困っている。
そんな愛莉を愛でる。
愛莉はうっとりしていた。
そんな時だった。
僕と愛莉のスマホがメッセージを着信する。

二人でそれぞれのスマホを確認する。

「渡辺班、来週木曜集合」

木曜日?
何かあるんだろうか?
愛莉と顔を見合わせる。

「どうしたんだろう?」

考えてもわからない。
とりあえず了解のスタンプを送信する。

「そろそろ寝ようか?」
「そうだね」

僕は上のベッドに上る。
そして眠りにつく。

(5)

夢を見た。
曲がりくねった道の先に待っている夜景。
遠くても見えなくても一歩ずつただそれだけを信じて歩く。
神戸で見た夜景のように輝いている。
握りしめた掌じゃ何も掴めやしないと開いた指の隙間から、いつしか手に入れていた憧れの種が私にだけ気付いてほしそうに芽を出している。

目が覚めた。
まだ深夜だ。
時刻を観る。
ちょうど来島大橋の通過時刻だ。
冬夜君のベッドを覗いてみる。
気持ちよさそうに眠っている。
私はそっと船室を出た。
展望デッキにでるとほとんど人がいない。
橋が見える。
すごくきれい。
写真をとっていると、男3人組くらいから声をかけられる。

「君一人?」
「いっしょに楽しいことしない?」
「やめろ、お前が言うとなんかエロいぞ」

ああ、冬夜君連れてくれば良かったかな。
この人達お酒臭い。
私が困っていると、誰かの声が聞こえた。

「困ってるだろ?やめておけ」

女性の声だ?

「お前も混ざりたいのか?」

酔った男の一人が女性に手をかけると女性は出された手を掴み捻る。

「うわっいてぇ!」
「てめぇ!!」

残った二人が女性に襲い掛かるとその間に割って入る別の男3人。
女性の仲間だろうか?
数的不利を見た酔っ払いは立ち去って行った。

「君、大丈夫?」

女性は黒髪のロングヘアーだった。
背は私と同じくらい。
でもスタイルがいい、悔しいけど。

「ありがとうございます。平気です」

「女の子一人でこんな時間にうろついていたら危ないよ。君一人旅?」
「いえ、彼氏が部屋で寝てます」
「そうか……、九州に旅行かな?」
「いえ、地元に帰るところです」
「なるほどね」
「あなた達は?」
「ここじゃ冷えるし中に入ろうぜ!」

女性の仲間のうちの一人がそう言った。

「ああ、わかった。おいで」

そう言うと私は彼女たちと船内に入った。


彼女たちは東京からやってきたらしい。
ツーリングで屋久島を目指してるのだとか。
でも東京からフェリー出てるのでは?

「貴女達と一緒よ。旅を楽しみたいだけ」

また旅人に出会ったんだね。
これからまた旅人に会うのだろうか?

「貴女達も今のうちにいろんな経験しておきなさい。今しかできない事ってあるから」

彼女の言葉には重みがある。どうしてだろう?その答えはすぐにでた。

「彼女来月結婚するんだ」
「おめでとうございます」
「独身生活最後の自由ってわけ」

カッコいいなぁ~。
でも真似しようとは思わない。
私には私の道がある。

「さて、今日も朝早いし私たちは寝るわ。貴女も早く寝た方がいいんじゃない?」
「そうですね。おやすみなさい」

そう言って彼女たちと別れて部屋へ戻った。


朝になる。
スマホのアラームで目が覚める。
着替えると冬夜君を起こす。

「朝食の時間だよ~」

そう言うと冬夜君はすぐに起きる。
冬夜君もすぐに着替え、そしてレストランに向かう。
レストランでお腹を満たした後下船の準備に入る。
車に乗り込み。準備は出来た。

ただいま……。
お土産一杯買ってきたよ。
土産話も一杯あるよ。
私たちは歩みを止めない。
今日も明日も歩んでいく。
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