優等生と劣等生

和希

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3rdSEASON

余寒

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(1)

「冬夜君おはよう」

2月。
春隣。冬来たりなば春遠からじ。とはよく言うものの、冬はこれからさらに冷え込むようで、窓から外を見ればところどころ雪が積もっていた。
もう2週間もすれば、春休みが始まる。その前に期末試験がまちうけているわけだけど。

「今日は素直に起きたんだね」

春休みか、去年は九州一周だったな。今年は何しようかな?今年は花見もちゃんと染井吉野でできるだろうな。
吉野と言えば梅園と、鶏めしか。梅の花を見に行こうと言えば愛莉なら何とかなるかもしれない。
なんだかんだ言って色々あった一年だったけど、楽しかったり忙しかったり何も考える余裕がなかった。
でも愛莉とはまた仲良くなれたし、絆も作れたと思う。

「うぅ……また入ってるね?」

入ってないよ。わかってるから。
僕は愛莉のそっと肩を抱き寄せる。突然の事に戸惑いを隠せない愛莉。これ以上やると取り返しがつかないことになるからちょっと軽く頭をなでてやるだけでいいかな?
すると愛莉は僕の腕をすり抜けて、服を着替え始めた。あれ?怒らせちゃったかな?そんなつもりはなかったんだけど……。

「早く着替えないと遅刻しちゃうよ」

愛莉は僕の顔も見ずにそう言う。まずいな、朝から機嫌を損ねたか。どうにかしないと取り返しがつかなくなる。どうする?とりあえずベッドから出て立ち上がると着替える愛莉に抱き着く。

「きゃっ」

可愛い悲鳴をあげる愛莉。

「ごめん朝から機嫌損ねちゃった。謝るから許してよ」
「ほえ?」
「何でもするから……」
「……じゃあ、とりあえずその手を離して」

言われたとおりに手を離す。愛莉は僕の方に振り向く。恥ずかし気に上目遣いで僕を見て微笑む。

「冬夜君が朝から優しいから、少し恥ずかしくなっただけだよ。怒ってないよ。ちゃんと私の中に入って来てよ」

愛莉はそう言うと僕にバードキスをする。
怒ってなかったのか。それは良かった。また朝から拗ねてるのかと。

「早く着替えて準備しないと遅刻しちゃうよ」

時計を見る。今日は2限からのはず、まだ時間は十分あるだろ?

「うぅ……やっぱり拗ねてやる。することあるでしょ!」
「……ああ!!」

そうだった、去年末からやってる恒例の行事。
まだ続いてるんだった。2限目以降からの授業の時限定だけど。

「ごめんごめん。そうだったね」
「もう、優しいのか意地悪なのだか分かんないよ冬夜君は」

こうやってたまにミスしては愛莉を拗ねらせて、その可愛い怒り顔を楽しむ毎日を送っていた。
何もない平穏な日々。ずっと続くと思っていた。

「さっき何でもやるって言ったよね?じゃあ罰をあたえま~す」
「いいよ、言ってごらん?」

多分僕の勘が外れていなければそれは罰でも何でもない幸せの時間。

「夜になったらさっきの続きしてください」

恥ずかしげもなく満面の笑顔で言う愛莉。ほらね、愛莉の我儘はいつだって可愛いんだ。
こんな可愛い天使の笑顔はずっと続くと思っていた。

(2)

4限が終わった帰り、駐車場に着くとカンナと居合わせた。

「よう、今から帰りか?」
「そうだよ~神奈ひさしぶりだね」

女子会以来か。カンナもバイトとかで忙しいし、授業もなかなか合わないしな。元気そうで何よりだ。
誠とは週1くらいであってるらしい、大体部屋の掃除で終わるんだとか、変態癖は相変わらずらしい。それでもいくらかマシになったんだとか。マニアックさは深まったらしいが。誠のロマンがそこにあるらしいのだが……。

カンナと話をしていると、なんか物騒な連中がやってきた。その連中は僕達を取り囲むように陣形を組む。中には鉄パイプをもってる連中もいる。明らかに僕達に用があるみたいだ。愛莉は怯えて僕にしがみ付いてる。

「カタギリトウヤってのはお前か?」

ガムを噛みながらサングラスをかけてキャップを被り耳と鼻にピアスをかけた男はスマホを見ながら僕の名前を言った。

「僕だけど、何か用?」
「ちょっと来いよ」

そう言って車に乗るように指図する。
ここにいたら愛莉達巻き込む。そう考えた僕は男たちに従うと車に乗った。

「冬夜君……」

愛莉が泣きそうな顔している。

心配しなくていいから。

そういう意味を込めて笑顔で笑うと僕は男たちに連れ去られていった。


連れていかれた先は大学の構内にあるコンビニの裏だった。
コンビニの裏とはいえ構内だぞ?何を考えてるんだ?
そんな僕の予想通りに明らかに人だかりが出来てる。

「で、何の用があるの?」
「強がるなよ、びびってんだろ?どうせビビってんだろ?」

男のにやけ面は下卑た表情だった。

「な~に用ってのはお前をボコってくれって依頼があってな」

依頼?
僕は首を傾げる。僕がボコボコにされて得をする人物。
スマホで検索するまでもない。心当たりがある人物はただ一人だった。
相手は10数人か……。ちょっと一人だと多いかな?

「言っとくけどここは大学の構内だ。お前が俺らに手を出すと色々とやばいんじゃねーの?」

ああ、そういう事でここを選んだのね?
痛いのは嫌だけど我慢するしかないか?

「て、ことはそれを助けるのは正当な理由があるからいいよな?」

男たちが振り返ると渡辺君と石原君、それに江口さんが立っていた。

「石原君、大丈夫か?」と渡辺君が尋ねると、石原君は「対多数の訓練は受けてます」と答えた。

「おいおい、そのチビまでやる気かよ!」と男たちは笑い声をあげる。

「渡辺君達まで巻き込むわけにはいかない!」と僕が叫ぶと「仲間を助けるのが当たり前だろ?」とにやりと笑う。

「片桐君の言う通りだ!男共の相手は二人じゃない!」

そういうと新たな人物が一人現れた。

ショートパンツにベロア素材のパーカーを着た女性が二人の前に立つ。

「君たちは自衛だけしてればいい!連中の相手は私がやる!部外者の私なら問題ないだろ!」
「新條!徹底的に痛めつけてやりなさい!!」

江口さんが命じると、新條さんによる男集団の公開処刑がはじまった。
有無も言わさず飛び膝蹴りが男の鳩尾に入ると、周りの男たちが一斉に新條さんに襲いかかる。
しかし新條さんはそれらをひらりひらりと舞うように躱し逆に男たちを痛めつけていく。
4,5人も叩きのめせば男たちは怯む。

「あの女を狙え!!」

リーダー格の男・さっきのキャップを被っていた男がそう言うと2,3人の男が江口さんに襲い掛かるが、江口さんは動じない。
男たちと江口さんの間に割り込む小さな影。
それはすばしっこく動き回り男たちの急所を的確に撃ちぬいていく。

「手加減の仕方は訓練されてないので、ごめんなさい」
「片桐君!」

一台の高級車が滑り込んできた。

「事情は車の中で説明するわ!急いで!」

後部座席の窓が開くと志水さんがそう言う。

「冬夜!急げ!!」

渡辺君がそう言うと志水さんの車に乗り込む。僕を乗せると車は疾走した。


車は僕が駐車していた駐車場に向かって走っている。
その間に僕がいなくなった後の事情を説明された。

一人の細長い男……おそらく勝也だろうが現れた。
カンナをナイフで脅し愛莉を連れ去っていった。
カンナが慌ててメッセージを皆に送る。
コンビニで騒ぎがあると情報が入り、渡辺君たちが駆け付けた。

勝也め……。
頭に血が上っていた。
車が駐車場に着くと僕は立ちすくみスマホを見つめるカンナに近づく。
カンナは僕に近づき、震え声で伝える。

「ごめん、突然ナイフを出されて……何もできなかった」

カンナの肩を掴み顔をみつめて、出来るだけ優しく言った。

「仕方ないよ、カンナは無事?愛莉たちの行き先に心当たりはない?」
「それなら……スマホのGPSで……」

カンナがそう言うとスマホを操作して、愛莉のスマホの場所を表示させる。それを見て僕も同じアプリを起動させ愛莉の位置を確認する。あの山か……これから暗くなる……なるほどな。
僕は愛莉の車に乗ろうとすると、カンナが呼び止める。

「あの山今時期だと凍結してるかもしれないだろ?私の車なら4WCだし、スタッドレス履いてるから私の車使えよ」
「いいのか?誠にも運転させてないんだろ?」
「緊急事態だ。お前の運転なら安心だし。ただMTだけど大丈夫か?」
「免許はMTとってるから……」
「普通のミッションじゃない、クラッチが若干違うし……!?」

カンナが言うより早く車のカギをカンナから受け取ると運転席に座りエンジンをかける。
軽くエンジンを吹かすと……うん、把握した。
窓を開けてカンナに愛莉の車のカギを渡すと「ごめん、車借りてる間愛莉の車つかってて」と言う。
うなずくカンナを視認すると、ハンドルを握り、シフトレバーに手をかける。

「お前に生命を吹き込んでやる!!」
「え!?」

カンナが言うより早く車を走らせた。



その山は夏場は宿泊施設等を利用する客が多い。あと隠れた夜景スポットとしても密かに人気がある。
深紅の車はアスファルトでタイヤを切りつけながら暗闇を走り抜ける。
路面はカンナが危惧した通り路面が凍結していた。
だいぶ山を駆け上がった頃に黒いFRのターボ車が。
すれ違いざまに確認した。運転席にいる勝也と助手席に乗せられてる愛莉の姿を。
ブレーキを踏みハンドルを切りスピンターンすると黒い車を追いかける。
黒い車はどことなく挙動が怪しい。
FRだからだろうか、単に勝也の運転が上手じゃないのかわからないけど、あまりぴたりとくっつくわけにはいかないな。
安全車間距離を取りながら勝也を追いかける。
暫く走った頃、勝也の車が道路を反れて崖に激突する。

お前に魂があるのなら…応えろ!!

ブレーキを踏みハンドルを切りスピンしながら勝也の車を避ける。
車を止めると降りて黒い車に近づく。
すると助手席から人影が。

「愛莉!!」

咄嗟に叫ぶといつもの声が返ってくる。

「冬夜君!!」

愛莉が抱きついてくるのを受け止める。

「無事か!?」
「うん!」

その声を聞くと安心し、黒い車の運転席に向かおうとすると。愛莉が止める。

「もういいから早く行こう!」
「で、でも……」
「冬夜君また無茶しようとしてるでしょ!ダメっていったでしょ!?」

ヘッドライトに照らされた愛莉の目元は赤くはれている。ならばこの場にいるべきではないか……。

そう思った時パトカーのサイレンの音が。誰かが通報したのだろう。パトカーは止まり警官が降りてくる。愛莉が事情を説明すると勝也はその場で取り押さえられた。

(3)

怖かった。
どこへ連れていかれるのか分からなかった。
ただ、いつもの道を駆け抜け山を登っている。
冬夜君どこに連れていかれたのかな?無事かな?
他人の事なんて心配してる場合じゃないけど、別の意味で不安だった。冬夜君また無茶しなければいいけど。

「今冬夜の事考えてたろ?」

どこまでも下衆な声はいやらしく聞こえる。

「こんな事して良いと思ってるの?誓約書ちゃんと読んだの?」
「お前らのせいで人生めちゃくちゃになったからな。最後に良い思いさせてもらおうと思ってな。冬夜も今頃いい思いしてるだろうよ」

最低……。

車は山の途中の駐車場で止まった。
さっきから私のスマホはバイブが響いている。
それは私のスマホのGPSがきっちり作動している証拠。
シートベルトを外して準備はできた。
勝也さんが「さあ、始めようか」と私の両肩を掴んでくる。

「離して!!」

私は振りほどくとドアを開け、外に飛び出す。
少しでも時間稼がなくちゃ。ここがどこかも分らない宵闇の雪道を走る。当然無理があった。雪に足を取られ転倒する私。そんな私乗りかかる彼。

「いや!!離して!!」
「静かにしろ!!」

その声に怯えて思わず泣きわめく私。悔しい、こんなみっともない姿を勝也さんに見られることが悔しい。

ブブブ……。

スマホのバイブが作動する。当然その事に勝也さんも気づく。私からスマホを取りあげる。
スマホを見ると私に返してくれた。

「ちっ、場所を変えるぞ……、ついてこい」

そう言うと腕を引っ張る勝也さん。

「痛い引っ張らないでよ!」
「抵抗したらわかってるよな……」

彼はポケットにしまってあるナイフをちらつかせる。
足が震えて泊らない。
一向に動こうとしない私にいら立ちを感じた勝也さんは、私の腕を引っ張りまわす。

「痛いからやめてってば」
「すぐに気持ちよくしてやるよ」

半ば強制的に車に乗せられると、車は山を下りていく。

「確か川沿いにラブホあったよな」

そんなことを彼が言うから私は顔は青ざめ、体は強張る。震えが止まらない。
そんな時一台の赤い彗星のような車がすれ違う。
それって神奈の車?運転手は……冬夜君!

「冬夜君!」
「何?冬夜が!?」

振り返って確認する。赤い車はターンをしてこっちに向かってくる。それをルームミラーで見ていたであろう勝也さんはスピードを上げる。
冬夜君が本気で飛ばしてる時とは雲泥の差のスピードだったけど怖い。運転手が違うだけでこんなに運転って怖く感じるものなの?
冬夜君は一定の車間距離を保ちつつ追いかけてくる。焦る勝也さん。

「何でこんなに遅いんだよ!」
「ドライバーの差じゃないの?」

ちょっと強気になっていた。冬夜君が付いて来てくれるなら怖いものなんてない。

「言わせておけばこのアマ。朝まで寝させないからな?」
「そんなこと言ってる余裕あるの?」

すると異変が起こった。ブレーキを踏んでハンドルを切っても車が曲がらない。
正面に崖が迫る。

「やばい!!」
「きゃあ!!」

車は崖に突き刺さる。
後ろから冬夜君の車が迫ってる。まずい!!

「ひぃっ!」

彼はみっともない格好をしてみせた。って笑ってる場合じゃない。
でも冬夜君の車はスピンしながら勝也さんの車を避け止まった。
運転席から離れようとしない勝也さん。
私はドアを開けると冬夜君の元の駆け寄った。

「愛莉無事か!?」
「私は大丈夫、冬夜君こそ無事?」
「ああ、大丈夫だ」

私がそう言うと冬夜君は勝也さんの車に向かった。何をしようとするのかは容易に想像できる。私は慌てて止めた。

「もういいから早く行こう!」
「でも……」
「冬夜君また無茶しようとしてるでしょ!ダメっていったでしょ!?」

目元を腫らしながら、訴える私。冬夜君は意味を察してくれたのか。「分かった」と言ってくれた。

するとパトカーのサイレンが大きくなってくる。数台のパトカーが止まり私の元に警官が駆け寄った。
冬夜君が拘束されようとすると「その人は違うんです。車の中にいる人が犯人です」
そう言うと警官は車から勝也さんを引きずり降ろしその場で逮捕となった。

「後日君たちにも調書とらせてもらうけどいいね?」

警官がそう言うと私たちは頷いた。
その場は返してもらえた。

「冬夜君平気だった?何もされなかった?」

私がそう聞くと冬夜君は笑って、あったことを聞かせてくれた。

「助けに来てくれてありがとう。来てくれなかったら私今頃……」

いけない、また震えが止まらない。こんなんじゃ冬夜君に心配をかけちゃう。
冬夜君は近くのスーパーの駐車場に車を止めると私を落ち着かせてくれた。

「ごめんな、愛莉の為をと思ってした行動が裏目に出たな」
「悪いのは冬夜君じゃないよ。私変な事されてないからね?」
「へ?」
「何もなかったから。まだ冬夜君だけのものだから……だから嫌いにならないで」

私は泣きながら冬夜君に訴えていた。冬夜君はそんな私を笑って受け止めてくれた。

「何もなくてよかった。それだけで安心したよ。とりあえずカンナに車返しに行かないとな」
「そうだね……」

冬夜君は神奈の家に向かって走る。

「それにしても車さんて不思議だね。冬夜君の運転は高速でも安心できるのに。勝也さんのは怖かったから……」
「駆動形式の違いだよ。勝也のはFRだったから雪道とかに弱いんだ」
「ふーん、それだけ?」
「まあ、後ろから見てて分かったけど勝也は運転になれてない傾向があったかな。だから車間取ってたんだけど」

確かにこの車なんか冬夜君の車より安定してる。シートがごつごつするけど。

「事情聴取どうする?」
「受けなきゃ、テストの後にでもしてもらうよ」
「そうだな」
「冬夜君。ごめんね」
「気にすることないよ、うちの身内の不始末だから」
「そうじゃなくて……今晩の約束守れそうにない」
「そっか、仕方ないな」
「ってのは嘘で、今夜だからこそ甘えたい。疲れてるだろうけど」
「……、わかったよ」

やった~。今夜は思いっきり甘えるんだ。

(4)

「トーヤ!!」

カンナの家に着くとカンナが外で待っていた。
車を止めると愛莉が外に飛び出し、カンナと抱き合う。

「ごめんな、私がちゃんとしてれば……」
「神奈も女性なんだから仕方ないんだよ。冬夜君に車貸してあげてありがとうね」

愛莉が何が起こったのかを、愛莉の語彙力を使って説明する

「やっぱり私の車で行って正解だったな」

愛莉はそう言って笑う。
まあ、そうだろうな。
後は勝手に不運と踊って勝手に自爆しただけ。愛莉に怪我無くてよかった。

「でもいくら私の車とは言え、そこまで使いこなすとは大したもんんだ。今度助手席に乗せて欲しいもんだ」
「神奈、それはダメ。冬夜君の助手席は私って決まってるんだから」

いくらか余裕が生じてきたんだろう、愛莉がそんな事を言っていた。

「カンナ、車の鍵……」

そう言ってカンナに車のカギを返すと、カンナも愛莉の車のカギを僕に返してきてくれた。

「ありがとな、車。助かったよ」
「気にするな、愛莉が攫われるのをみすみすと見ていただけどの私の罪滅ぼしだ。役に立ててよかった」
「愛莉が無事だったんだ。カンナもあまり気にせずに今夜はゆっくり寝ろよ」
「ありがとう、トーヤ達もゆっくり休めよ」

愛莉の車を、駐車場から出すとカンナが自分の車を駐車する。

「それじゃ、また明日」
「ああ、また明日」

そう言って僕達は家に帰った。家に帰ると愛莉の両親と僕の両親が外で待っていた。

「愛莉ちゃん、さっき警察かラ電話があって~、心配したんだよ~」
「……冬夜君。無茶はするなとあれほど……」
「冬夜、何があったんだい?」
「流石は俺の息子だ。良くやった。話をゆっくり聞かせてもらおうか」

6人は僕の家のリビングに行くと僕が事情を説明した。
警察から粗方説明は受けていたらしく、後半は説明をするまでもなかった。
愛莉は興奮冷めやらぬと言った感じではしゃいでいたが。

父さんと愛莉パパの顔色が変わるのが見てわかった。

「……冬夜君。迷惑をかけてしまったな」
「遠坂さん、元はと言えばうちの身内の不始末で。……勝也の奴。それでこれからなんですが……」

片桐家としては勝也を起訴してもらって構わないと言ったが愛莉がもう関わりたくないと言う。しかし遠坂家としてはこれ以上勝也の横行を見過ごすわけにはいかず。事件化することになった。
しかしまたも弁護士を通じて示談の交渉に入る、遠坂家も弁護士を通じて交渉に入る。多額の示談金と二度と近づかないことを条件に示談になった。
その金はまたもお祖母さんが肩代わりすることになった。
その交渉は後日になるのだが……。後は大人に任せよう。
今後一切勝也は地元に近づくことは無くなった。勝也のスマホにGPSガセットされ、その位置を把握することが出来る。
今後地元に立ち入った時点で即逮捕となるらしい。

とりあえず部屋に帰ると約束通り、愛莉の我儘を受け入れてやる。
僕も愛莉も多少なりとも興奮していたのだろう。いつもより激しかった。


「冬夜君ありがとうね」
「何が?」
「……あんなことがあったからさ。冬夜君に甘えたかったの。冬夜君許してくれるかな、他の人に抱かれようとした私を許してくれるかな?受け入れてくれるかな?って」
「何もなかったんだろ?」
「でも冬夜君が来てくれなかったら私今頃……」

恐怖がよみがえったのだろうか?愛莉が震えてる。そんな愛莉を強く抱きしめてやる。「大丈夫だよ」と耳元で囁いてやる。
記念日が来たらなにかしてやろう。もう二度と同じ目に会わせない。例えこの身がどうなろうと、愛莉だけは守って見せる。
そう心に決めた夜だった。

その時スマホがなる。
確認すると、渡辺班からのメッセージだった。
みんな心配してくれてたんだな。
愛莉が一生懸命返事を返してる。
渡辺君たちも怪我はなかったようだ。
新條さんが駆け付けた警察に事情を説明すると、その場で全員身柄を拘束されたらしい。

「みんなに迷惑をかけたみたいでごめんなさい」

愛莉がそう打つと「遠坂さんが悪いわけじゃない、気にすることは無いよ」と渡辺君が返事を打てば皆が「そうだよ」と返してくれる。
愛莉をそっと抱きしめてやる「皆がそう言っているんだ、愛莉が気に病む必要はないよ」といえば「じゃあ、忘れさせて」と甘えてくる。
今夜だけは甘えさせてやろう。ベッドに入る。
愛莉をしっかり守るように抱きゆっくりと休むことにした。

冬来たりなば春遠からじ

冬が明け春が訪れようとしていた。
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