優等生と劣等生

和希

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3rdSEASON

初めての恋

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(1)

「冬夜君朝だよ~」

愛莉の声が聞こえる。
愛莉の着替えは済んでいた。
僕も着替える。
時計は9時
十分朝食の時間はあるな。

「早くレストラン行こ?」

愛莉に急かされてレストランに行く。


朝食を食べた後愛莉の準備を待つ。
日曜の朝のテレビはどこも同じようなものらしい。
まあ、内容までばっちり見てるわけじゃない、ただぼんやり眺めてるだけ。
愛莉の準備が終わると荷物を持ってチェックアウトをする。

「このあとどうするの?」

フロントから戻ってきた愛莉が聞いてくる。

「とりあえず駐車場移さないとな」
「うん」

そう言って車を隣のパーキングに移す。
それから路面電車に乗って移動。
カステラの老舗の本店に移動する。

「愛莉ここのが美味しいらしいよ」
「は~い」

愛莉はカステラを買うと「この次は~?」と聞いてきた。

「中華街に戻ろう?まだお店回ってないだろ?」
「そうだね」

中華街に戻るとまずは昼食。

「さっき食べたばかりなのによく入るね」

愛莉は呆れていた。

「愛莉食べきれないなら食べてあげるよ」
「うん」

愛莉は残った分を僕に差し出す。


昼食の後はお土産屋さんを見て回った。
見てるだけでも楽しい、
怪しげなグッズを見つけては二人で笑ってた。


中華街を見て回ると車に戻る。
なんだかんだで色々買っていた。
使うかどうか怪しいけど。
15時ごろ長崎を後にする。
高速に乗ってひたすら直進。
AMラジオを付けるとアニソンの特番をやっていた。
愛莉と「この曲知ってる~」とかはしゃぎながら聞いてた。
鳥栖JCTを抜けた次のSAで車は一度休憩に入る。
愛莉がお手洗いに行っている間外の空気を吸う。
愛莉が時間ギリギリまで寝させてくれたお蔭で疲れはとれてる。
愛莉が戻ってくると車を出発させる。
ラジオを聞きながら、おしゃべりしながら楽しいドライブは続いていた。

(2)

疲れがたまっていたんだろう。昼前まで眠っていた。
コンビニで弁当とジュースを買って昼食にする。
それから給油をして、ひたすら10号線を下っていく。
独りで運転していると暇な時間もやってくる。
AMラジオをつけるとアニソンの特集をやっている。
知っている歌を聞いたら大声で歌っていた。
夕方ごろには地元に入っていた。
途中コンビニで休憩しながら市内を目指す。
日出辺りでやはり混んでいた。
まだアニソン特集はやっている。
独り口ずさみながら少しずつ車は進む。

夜にはつくから皆青い鳥に集まらない?

そんなメッセージを送っていた。
大体人が分かったと言ってくれた。
皆の前で言う事は決めていた。
薄紅色の君も来てくれると言ってくれた。
君に逢いたい。
例えダメだと分かっていても伝えたい。
渋滞の道のようにゆっくりでも成長した自分を見せたい。
そして次の恋へとつながればいい。
別府に入ると渋滞はますますひどくなる。
あと少しだ。あと少しで君に会える。
そんな気持ちが僕を駆り立てる。
市内に入った。
解き放たれたかのように渋滞は止む。
まっすぐ青い鳥に向かう。
ルームミラーで自分の姿に気づいた僕はコンビニで髭剃りを買う。
車の中で髭を剃り、青い鳥に向かう。
駐車場はごった返してきた。
青い鳥に向かうと皆がおかえりと言ってくれる。
そして僕の前に立つ一人の少女。

「おかえりなさい、竹本君」と可愛い声で言ってくれた。

「君が好きだよ。好きでした」と伝える。

君は目を丸くしてそして顔を赤らめて新名さんの後ろに隠れる。
それが答えなんだね。
僕の初めての恋はこれで終わりを告げた。
でも後悔はしていない。
また新しいドアを開けよう。
新しい恋がみつかるかもしれない。
そうやって人生のアスファルトに自分が生きた証を切りつけていくんだから。

(3)

夜にはつくから皆青い鳥に集まらない?

竹本君からのメッセージ。
家で退屈を持て余していた私は承諾した。
夜までまだ早いけど、私は青い鳥に向かっていた。
大体のメンバーが集まっていた。
私の側に寄ってくるのは西松君。

「これからの作戦についてなんですが」
「酒井先輩、いつものおねがいしま~す」

そう言ってテーブル席に座る。
西松君も向かいに座る。

「これからの作戦についてなんですが……」

しつこいな。あんな真似しておいてよく言えるね。私も人の事言えないか……。

「悪いけどこれからはあんた一人でやって。私あんたの味方になるつもり無くなったから」
「どういうことです?」
「自分のしたこと考えてごらん?同じ女性として許せない行為なんだけど」
「あなたも似たようなことしたじゃないですか?」
「確かにあなたと同じかもしれない。でも今は違う。とても許す気になれない」
「……何があなたをそう変えたんです?」

そんなの決まってる。でもあなたに言ってもわからないでしょうね。私自身未だに戸惑っているのだから……。
でも言わないと前に進まない。それを宣言することで変化に向き合える気がする。

「恋よ、私好きな人が出来たの」
「あなたからそんな陳腐な言葉が出るとは思わなかった」

西松君を除く渡辺班の人からは歓声が上がる。

「ちなみに誰ですか?貴方にそんな感情を抱かせたのは」
「今言えない。でもあなたでないことは確かよ」

西松君はしばらく考えてから言った。

「花山さんもゲームに参加しませんか?」
「お断りするわ、分かり切ってるゲームなんてする価値ないもの」

彼の言うゲームの内容も渡辺班のログを辿っていれば分かる。

「分かり切ってると言い切れるなら参加しても問題ないでしょう」
「挑発してるつもりなんだろうけど無駄よ」
「つまり自信が無いと?」
「……」

言葉に詰まった。自信がなかったから。これから行われるであろう彼の発言によって私の運命は決まるのだから。
自信が無いけど立ち向かうしかない。
運命は戦わぬものに微笑むことなど消してないのだから。

「悪あがきはよせ西松。今の彼女に何を言っても無駄だ」

そう言うのは渡辺君だった。

「大体やることが汚いんだよ、お前は!!」

瑛大君がそう叫ぶと次々と西松君に対して野次が飛ぶ。
そんな時。

カランカラン。

ドアベルが鳴る。

入ってきたのは冬夜君と遠坂さんだった。

「遠坂さん待っていましたよ」

西松君が遠坂さんに近づこうとするとそれを阻む冬夜君。

「愛莉に近づくな」

分かりやすい一言だけど、とても威圧的な一言。

「俺に近づかれて困ることでもあるんですか?」
「何度も言わせるな、愛莉に近づくんじゃない」
「近づいたらどうなると言うんですか?」

尚も近づこうとする西松君の肩を掴む渡辺君。

「こうなるのさ」

渡辺君はそういうと西松君を遠坂さんから引き離す。

「俺に手を出してタダで済むと思ってるのか?」
「タダで済まないのはあなたの方では無くて?」

それまで黙っていた江口さんが口を挟んだ。すると志水さんも西松君に言う。

「先日の件、訴えようと思ったら訴えることが出来るのよ?刑事事件にしなかっただけでも感謝してほしいわね」

示談は出来るかもしれないけどあなたに勝ち目はないわよ?と威圧する。

「ていうか~、本当にもう~なりふり構ってませんね~。……それで私を墜とそうなんて馬鹿にするにも程がありませんか?」

咲良さんがそう言うと、西松君の表情から笑みが消えていた。

「花山さん、あなたがやろうとしていることは愚行にすぎない。そんな事くらい分かっているはずだ」

分かっていないのはあなたよ。西松君。

「私がやろうとしていることが愚行なのかはもうじき証明される」

彼がみんなを集めたという事はきっとそういう事。

カランカラン。

皆の視線がドアの方に注目する。
そこには久しぶりに見た竹本君の姿が。
彼の姿を見た瞬間やはり胸がキュンと締め付けられる思いがした。やっぱり私は恋してる。
皆が「おかえり」と声をかける中私は言葉が喉に痞えて出なかった。

木下さんが一歩前に出て「おかえりなさい」という。
そんな木下さんに向かって言った一言。

「君が好きだよ。好きでした」

その言葉を聞いた瞬間心を抉られる思いをした。
木下さんは目を丸くして頬を赤らめて……そしてまるで怯えるかの如く新名さんの後ろに隠れた。
落胆の声をあげる皆。

「それ見たことか、分不相応な真似をするからこうなるのですよ」

私はこれほどまでにない怒りを覚えた。この男に竹本君の行動を批判する権利はない!
するとゆらりと冬夜君が西松君に近づく。

「冬夜君だめ!」

遠坂さんが言うのと冬夜君が拳を振りかざすのと同時だった。
冬夜君の拳を掴む太い腕。冬夜君の腰を掴む多田君の腕。

「やると思ったよお前なら」
「冬夜相変わらずだな!お前のそのくせ」
「離せこいつは許せない!」
「やったら西松の思うつぼだぞ」
「誠君の言う通りだ落ち着け」

そんな冬夜君を見て高らかに笑う西松君。

「片桐先輩も身の程を弁えて行動することですね」
「西松君も分かってるんじゃない」
「愛莉?」

冬夜君が遠坂さんの方を振り返る。冬夜君を抑えている二人も振り返る。

「身の程を分かってるなら私達に声かけてこないで。あなたに靡くような女性ここにはいない」
「まだ勝負は決まっていませんよ、遠坂さん」
「本当に頭でっかちの人って理解力に欠けてるよね。どうしてあなたがちやほやされるのかさっぱりわからない」
「一度デートすればわかりますよ」
「志水さんの一件を見てよくわかったわ」

遠坂さんが自分は応じるつもりは一切ないと告げると、西松君は遠坂さんを憎々しげに見て店を出て行った。

「あんな態度されて誰が応じるかってのな!」

久世さんがそう言うと一同は笑う。
私はあんな奴の事より、竹本君の事が気になる。

「じゃあ、まだ家に帰ってないので帰りますね」

また来ますと言って竹本君は店を出る。
気がついたら竹本君を追いかけてた。



「竹本君!」

車に乗り込もうとする竹本君を呼び止める。

「花山さん……」
「……よく頑張ったね」

他に上手く言える自信が無かった。

「お陰様でやっとちゃんと言えました。これで一回り成長できたんでしょうか?」
「ずっとずっと素敵に見えるよ……」
「良かった……そう言ってもらえて。良かった……彼女を好きになって」

竹本君の目が潤んでる。
私は竹本君を抱きしめる。

「今日は特別だ、私の胸を貸してやる……思う存分泣きなさい」
「ありがとうございます」

竹本君はそう言って泣き続けた。
よく頑張ったね。次は私が頑張る番だね。待っていていなさい!

(4)

ぽかっ

「冬夜君の馬鹿!あれほど無茶しないでって言ったのに!」

青い鳥を出て愛莉はご機嫌斜めだ。

「分かってるって。しょうがないだろ、気がついたらああなってたんだから」
「それを自制しなきゃだめでしょ!」

でも竹本君を小馬鹿にしている西松君が許せなかった。旅までしてやって掴んだ価値観を全面否定するほど彼が何かをやったのか?

「私が泣いてお願いしたのに守ってくれないの?」
「悪かったって」
「いつも同じ事言ってるじゃない」
「……友達馬鹿にされてへらへらしてるほどお人好しじゃない」

ぽかぽかっ!

「自分の事は馬鹿にされても何とも思わないのに……」
「そういうもんじゃないのか?」
「だめ!こう言っちゃなんだけど多分一番狙われやすいの冬夜君だよ?」
「え?」
「冬夜君を煽って誘導して私を孤立させるなんて簡単じゃない?」
「あ!」
「やっと気づいてくれた?」
「ごめん」
「ごめんじゃないでしょ。私を守ってくれる騎士様ならもう少し自覚して行動してください」
「わかったよ」

車は家に着いた。
荷物を持って家に帰る。
その後愛莉と二人で愛莉の家に寄る。
愛莉は愛莉ママにお土産を渡す。

「まあ、カステラ!ありがとうね愛莉ちゃん」
「まあ、二人共お茶でも飲んでいきなさいな」
「うん!」

そう言って愛莉は家に上がる。
玄関にいる僕を見て愛莉は不思議に思ったらしい。

「どうしたの冬夜君?」
「おばさん、すいません。ちょっとおじさんとお話がしたいんですけど……」
「大事なお話なら上がってからしなさいな。私達も気になるし」
「冬夜君急にどうしたの?改まって」

愛莉の肩を叩いて耳元で囁く。

「さっきの罰ゲーム」
「え?」

首を傾げる愛莉を後目にリビングに向かう。

「……話とは何だね?」

険しい表情の愛莉パパ。怖い……。

「先日うちに婚姻届を持ってきてくれた時に家の両親はこう言いました『二人はもう結婚したものとみなしてる』と……」
「うむ……」
「僕は約束しました。卒業したら愛莉に求婚するって。もし求婚して愛莉が承諾してくれたら……愛莉を僕にいただけますか?」
「それは、意味ないって言ってじゃない。私は冬夜君と結婚したいの」
「愛莉ちゃん。ちゃんとお話しきいていましょうね~」
「うぅ……りえちゃんわかった」
「……質問の意図がよめないのだが……?」

何をいまさら言ってるんだい?

そう言いたげな愛莉パパ。
心臓がバクバクしてる。やっぱりそうなるよな。

「僕は自分のうかつな行動から愛莉を危険な目にあわせてばかりです。これからもまた同じ過ちをおかすかもしれません。それでもよかったら……」
「……よかったら?」
「時が来れば愛莉にプロポーズします。その時は愛莉を僕に下さい。必ず愛莉を守ります。この身を賭しても幸せにしてみせますから」
「……気に入らない点が2点ほどあるのだけどいいかい?」
「はい……」

だめだったんだろうか?

「まず、愛莉を危険な目にあわせた。これは冬夜君のミスじゃない。事故的なものだ。冬夜君が気にする事じゃない。その度に冬夜君は愛莉を支えて守ってる。」
「はい……」
「二つ目はこの身を賭してもと言った点だ。娘はそれを望んではいない。君が犠牲になった時点で愛莉は悲しむ。幸せになんてできない。君に無茶をして欲しくない。愛莉の為にも」
「……」
「愛莉はすでに君に任せていると思っている。私が今更どうこういうべきことじゃない……やっとその気になってくれたんだね?」
「……愛莉を泣かせるようなことはしないと決意はしました」
「……うむ。じゃあ、愛莉は君に任せるよ。……幸せにね」
「ありがとうございます」

僕は頭を下げる。
愛莉は横で泣いている。
さっそく泣かせてるじゃないか?

「これは嬉し涙だろう。気にすることはないよ」

その後お茶を飲んで愛莉の家を出た。
こんな時間に帰っても夕食は用意されておらず外に食べに行くことにした。

「愛莉何か食べたいものあるかい?」
「冬夜君うどんは縁起物だって言ってたね?」
「ああ、太く長くって意味合いでね」
「じゃあ、うどんにする……」
「わかった」
「うぅ……」
「どうしたの愛莉」

何かへまやったかな?

「冬夜君罰ゲームでパパさんに挨拶したの?」
「自分の戒めにね、愛莉を悲しませるような真似はしないって自制させるために挨拶に行った」
「私との結婚の約束を罰ゲームだなんてゆるせませ~ん」

ああ、そういう風に捕らえたのね。

「だからそういう意味じゃなくてね」
「意味は違ったとしても事実はかわらないも~ん。ブーッで~す」
「……罰ゲームなわけね」
「うん!」
「何すればいい?」

僕が聞くと愛莉はう~んと考え込んでいる。
そしてしばらくしてから、うどん屋さんについてから愛莉は答えた。

「約束ちゃんと守って。破ったら即結婚ってどう?」

また難しい問題を言うなあ。

「愛莉との結婚が罰ゲームなのか?」
「うぅ……言われてみると確かに」

悩む愛莉にそっと囁く。すると愛莉は顔を紅潮させる。

「前から思ってたけどそれ罰ゲームになってない気がしてきたんだよね」
「でも愛莉も悪い気はしないだろ」
「馬鹿!!」

ぽかっ

「じゃあ、早く帰らないとだね」
「そうだな」

夏立つ日の連休は終わりを告げ、また平穏な日々が始まる。
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