優等生と劣等生

和希

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3rdSEASON

悠久の風

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(1)

青嵐に吹かれながらも立っている少女がいた。
少女は中学の制服を着ている。
ちょっと長めの黒髪の女の子。
少女の瞳は透き通るような瞳をしている。
どんな真実も見逃さない目。
少女は僕を見ていた。
少女を僕は知っている。
僕は彼女に謝った。

全部僕のせいだ、ごめん。

少女の顔は人形のように口角をあげたまま僕を見ている。

嘘つき 本当は自分のせいじゃないと思っているのでしょ?

違う!ずっと謝りたいと思っていたんだ!

口ではなんとでもいえるわ……。あの頃と何も変わらないわね。この風のように。

本当だ!嘘なんてついてない

この事彼女が知ったらどう思うかしら? フフフ

彼女はもう知ってるよ。

本当のあなたを彼女に教えてあげる フフフ


「やめてくれ!!」
「ほえ?」

……夢か。
呆気に取られてる愛莉を抱きしめる。
事情が呑み込めてない愛莉は背中をさする。

「朝ごはんの時間だよ~」

そう言って僕を現実に引き寄せてくれる。

「あ、ああ着替えないとな」
「待って」

愛莉が後ろから僕の服を引っ張る。

「どうした?」
「いけなかった?」
「何が?」
「だってキスしようとしたら突然『やめてくれ!!』って……」

ああ、そういうことか。
僕は愛莉にキスをする。

「夢を見ていただけだよ。気にしないでいいよ」
「うん」

僕は着替えを終えると「先に降りるね」と言ってダイニングに向かう。
そんな僕を見つめる愛莉の言葉を聞いてはいなかった。

「”また”見たんだね……」


朝食を食べると支度をしていつもの如く自分の部屋に戻る。
ゆっくりテレビを見てれば愛莉がいつも通りマグカップをもって部屋にくる。
コーヒーを啜りながら愛莉とテレビを眺める。
テレビを眺めているだけで頭は別の事を考えていた。

どうして今頃になってあんな夢を見たのだろう?

それも一度じゃない、ここ最近頻繁に見るようになった。
もう過ぎたことじゃないか、忘れていた事じゃないか。
どうして忘れかけた頃になると見てしまうのだろう?
夢は潜在意識だと誰かが言ってた。
潜在意識が忘れるなと言っているのだろうか?

絶対に忘れさせない

あの子がそう言っているのか?
もういい加減許してくれてもいいじゃないか?
なぜ僕はここにいる?
なぜあの子はそこにいる?
なぜあの子とあんな事になってしまった?
あの子に出会ったこともそれは運命なのだろうか?

運命は戦わぬものに微笑むことなど決してないのだから。

どう向き合えば良い?
どう戦えば良い?
あの子がそばにいるというのか?

「冬夜君!」

愛莉の声に思わず体をびくつかせる。

「私の話聞いてた?」
「ご、ごめん。ちょっと考え事してた」
「そんなんだろうと思った。完全に冬夜君の世界に入り込んでたもん」
「ごめん……」
「また見たんでしょ?”あの人”の夢」
「なんでそれを……?」
「冬夜君寝てる時に苦しんでた。何かに怯えてるような顔してた。そんな顔してる時って大体そうだから」

愛莉にも見破られていたか。
その時愛莉に抱き寄せられる。
愛莉の成熟した胸に埋められて心地よい……。

「私そんなに頼りない?」
「え?」
「肝心な時に本音を話してくれない」
「あ……」

ぽかっ

「たとえあの人が『許さない』って言っても私は冬夜君を許します。それじゃ駄目なの?」

……本音で話そうか。

「頭では分かっているんだ。今の僕には愛莉がいる。でもあの時だって愛莉がいた。どうしようもない事実だって。でも忘れようとすると思いだせと言わんばかりに夢を見るんだ」

忘れさせないと言わんばかりに。

「潜在意識ってさ、胡散臭くない?」
「?」
「調べてもさ、幸福になる方法とか潜在意識を覚醒させる方法とか悪徳商法みたいなものばかり出てきちゃう。冬夜君のゾーンとかの方がまだ真実味があるよ」
「似たような物じゃないか?」
「全然違うよ、渡辺君言ってた。ゾーンは集中力の賜物だって」

まあ、実際周りの人から見たらそうなんだろうな?自覚はしてないけど。

「それと僕の夢との話に何の関係性が?」
「だから~潜在意識って実際の話ただの無意識なんでしょ?」
「そうだね」
「冬夜君心のどこかでまだ後悔の念があるんだよ。記憶のどこかに潜んでるんだよ」

ハードディスクをフォーマットしたところで削除しましたって情報が上書きされてるだけで実際にはデータは残ってるってやつか。

「だから私が絶対に忘れさせてあげる。冬夜君の頭の中を私で埋め尽くしてあげる。冬夜君の心の中を私色にそめてあげるから、夢を見たときは私に教えて」
「分かった。ありがとう愛莉」
「お嫁さんとしては他の女の事が忘れられないなんて屈辱だからね」

そう言って愛莉は笑っている。
心の浮気か……。最初愛莉に打ち明けたときは”浮気”とみなされてもしょうがないと思ってた。でも愛莉は許してくれた「冬夜君は悪くない」と言ってくれた。
そんな愛莉はまた僕を許すと言ってくれる。そんな愛莉に何をしてやれるだろう。
夢のように愛莉に出会えた奇跡。
愛し合って喧嘩も偶にしたけれど色んな壁を二人で乗り越えてきた。

「……生まれ変わってもきっとずっと一緒だよ。こんなに愛し合ってるんだから」
「そうだな」
「あ、そろそろ時間だよ」
「待って愛莉」
「な~に?」
「さっき何を話そうとしてたの?」
「ああ、冬夜君が言ってたアレ今週末でもどうかなと思って」
「アレ?」
「ほら~唐津で冬夜君が言ってたアレ!!」
「ああ、なるほどね。分かった」
「うん、お弁当たくさん用意するね!」
「近くのファストフード店でもいいんだぞ?」
「うぅ……冬夜君はお嫁さんが作る弁当よりファストフードがいいわけ?」
「そ、そんなわけないだろ?」
「じゃあ、決まり♪」

そう言って愛莉は支度をする。
いまさら考えるだけ時間の無駄か……。
今は愛莉がいる。あの子も今は他の想い人と上手くやっているはずだ。
”今”という現実の宝物がここにある。
だから僕は精一杯生きよう。今やれる事をやろう。

「冬夜君、準備出来たよ」
「じゃあ、そろそろ行こうか?」
「うん」

本棚の一番上にあるアルバム。その中に”彼女”は存在しメッセージを残していた。
僕の最大の失態。誰にも言いたくなかった真実。
それを語る時が来ることは永遠に来ないと信じていた。
しかし悠久の風が吹く様に。決して目を背けることの真実がそこには隠されていた。

(2)

「深雪着いたよ」

啓介が小さな喫茶店に車を止める。
私は車を降りるとガムを吐き捨てる。

「で、今日いるって確証あるわけ?」
「毎日来てるよ、この時間なら確実だ」
「そう、無駄足にならないことを祈るわ」

そう言うと啓介に連れられ、入り口のドアを開ける。
カランカランとドアベルが鳴り。中にいた学生らしい人達が私を見ている。
啓介に対しては徹底的無視をしたいんだろうけど私の存在が、彼に質問せざるを得ないのだろう。

「西松、その女性は?」
「ああ、彼女は高階深雪。俺の幼馴染。彼女も友達少ないからさ。渡辺班に入れてやってくれないか?」
「あんたの幼馴染?絶対なんか企んでるでしょ?」

テーブル席に座っていた女性が啓介に食って掛かった。

「ああ、高階さん、彼の言っていることに間違いはないですか?」
「ええ、そうよ。彼とは仲良くさせてもらってるわ。でも他に友達いなくて……」
「ちょっと渡辺君、この子入れるつもり?絶対何か企んでるって……」
「大丈夫だよ指原さん。この子に男性陣が靡くなんてことはないよ」

男なんてちょっと弱みを見せると簡単に信用する。それとも単に侮られてる?

「ちなみに失礼ですがおいくつですか?俺達より年上に見えるけど」
「23よ、医学部に通ってる。今年卒業するわ」
「すごーい!」

……この女ではなさそうだ。まあ愛想を振りまいておいた方がいいかもしれない。
啓介が耳打ちする「彼女が指原亜依。女子部のリーダー的存在だ」
尚の事懐柔しておくか。

「至らぬところばかりですが宜しくお願いします」

そう言って頭を深く下げる。

「ま、まあ私は特に問題ないけど皆は?」

ちょろい女だ。

「江口です。時に聞くけど、渡辺班に入る理由は?」
「よろしく、江口さん。理由は啓介が話した通り。友達が欲しくて……」
「……そう。よろしくね。高階先輩」

そうやって一人一人に挨拶していくと一人冷たい視線を送っている人物に気づいた。
彼は私をぼーっと眺めているけど、その目は私の内心を見透かしてるように見える。
感づかれたか?

「えーと、あなたは?」
「……片桐冬夜です」
「ああ、あなたが……」

今回の標的は彼なわけね。
彼に近づこうとすると、一人の女性が間に割って入る。
彼女は片桐君に腕にしがみつき、私を睨みつける。

彼に近づくものは全て敵

そんな覚悟で私に接してくる。

「遠坂愛莉、籍は入れてないけど冬夜君の妻です」

内縁の妻ってやつ?
そんな関係に良く好き好んでなったわね。

「よろしくね、遠坂さん」

そう言って彼女に手を差し出す。
彼女の手は片桐君の腕にしがみ付いたまま。

「愛莉、握手くらいしてあげなよ」

片桐君がそう言うとおずおずと手を差し出し握手した。

「席ここでいいかな?」

私がそう言うと片桐君は「どうぞ」と答えた。
彼の目から警戒は解かれない。
今日の目的は皆の警戒を解く事だと認識した。

「啓介は何を飲むの?」
「俺はブレンドコーヒー」
「じゃあ、私はコーヒーフロート」

店員である酒井君は「かしこまりました」と言って厨房に伝票を持って行く。
今日来ている面々。片桐君と遠坂さん、指原さんと桐谷君、渡辺君と美嘉さん、木元君と大島さん、中島君と一ノ瀬さん、江口さんと石原君、志水さんと酒井君、竹本君と真鍋君、それぞれに挨拶をした。
片桐君と遠坂さんを覗いては皆警戒を解く事が出来た。

「で、彼女を渡辺班に入れてもいいかな?」
「……俺は構わんが。皆は」
「私も別にいいけど」

渡辺君と指原さんはそう言う。皆承諾してくれた。ただ一人遠坂さんを除いて。

「みんな本当にいいの?西松君の紹介だよ。もっと慎重にいこうよ」

啓介は遠坂さんにどんなへまをやったの?
私は啓介を見る。表情が硬い。

「心配しないで、啓介から縁結びのグループがあると聞いて紹介してもらっただけ」

嘘はついてない。

「……冬夜君はどうなの?」
「……心配すること無いと思うよ。どうこう出来るとも思わない」

彼も案外ちょろいのね。
でもきっとそう見せかけてるだけ、彼は他人の心がわかると啓介から聞いている。
私の心を読んだうえでの発言なの?

「じゃあ、私もいいよ……」

渋々承諾したといった感じか。片桐君の言ったことは全部信じるみたいね。彼女を落とすにはまず片桐君から。
そう言った啓介の策は案外当たってるかもね。なら私はまず彼女をどうにかしないといけないみたいね。

「ありがとう、遠坂さん。よろしくね」
「……よろしく」

そう言って渡辺君とID交換してグループに招待してもらう。

「俺たちの活動は……」
「メッセージのやり取りが主で後はここで集まったり偶に飲み会とかするんでしょ?啓介から聞いてます」
「あのさ、さっきから『啓介』って聞くけど西松とはどういう仲なの?」

指原さんが質問してきた。

「ただの幼馴染よ。彼ほど信頼してるものはいない」

ちょっと嘘を吐いた。

「よくこの男を信用する気になったわね」

江口さんが聞いてくる。

「彼が小さい頃から知ってるから。私に言わせたらただの悪戯好きの子供ね」
「だったらその『悪戯』止めさせることはできないかしら?」
「無理ですね、悪癖だからまあ、すぐに飽きるんだけど」
「あのさ……、さっきから視線をそらして話してるんだけどどうして?」

片桐君が突然聞いてきた。
やはり彼は鋭いようだ。

「深雪は昔っからあがり症で人の顔をまともに見て話せないんですよ」

啓介はそう言って私を援護する。

「……ふーん」

そう言って片桐君はナポリタンを食べ終える。

「愛莉、今日5限目入ってなかったっけ?」
「あ、そうだった!」
「そろそろ行こうか?」
「うん」
「じゃあ、酒井君ご馳走様」
「ありがとうございました」

そう言って片桐君と遠坂さんは店を出て行った。と、なると私達もここにいる理由はない。

「啓介、私も授業あるから……」
「そうか、じゃあそろそろ行くか」

私達は席を立つ。

「じゃあ、今後ともよろしくお願いします」
「ではまた」

そう言って私達は店を出た。
車に乗り込むと深呼吸をする。

「どうだった?深雪」
「片桐君……ちょっと時間かかるかも……」

まずは遠坂さんと仲良くなることから始めないといけない。

「自信はあるのか……」
「最低限の役目は果たすわ」
「当てにしているよ」
「ご期待に添えるようにがんばるわ」

遠坂さんから片桐君を引き離す。それが私に課せられた務め。
力づくでというわけにはいかない、強引な手段もとれない。まずはどれくらい二人の絆とやらが強いのか確かめないと手の打ちようがない。
久々に退屈しのぎができそうだ。口の中にガムを放り込む。
ガムを噛んでいると思考が冴える。やはり最初は遠坂さんと仲良くなるしかない。啓介とは離れて単独で
二人と親密度を高めて、緩んだすきを突くのが最善手か。そう言うケースはやったこと無いけどやったこと無いからこそやりがいがある。
私はガムを噛みながら遠坂さんにメッセージを送っていた。
風薫る日の出来事だった。

(3)

浅葱色のツーピースを着た彼女が現れたとき皆が驚いていた。
バランスの取れた体形、整った顔立ち。少し茶髪の肩まで下りた少しパーマのかかった女性。
男性陣は皆息をのんだ。一人を除いて。そのひとりはカツサンドを食べながらちらりと見てまたカツサンドに目線を戻した。
彼女は西松の幼馴染だという。年上の医学部の女性。名前は高階深雪。
西松の事を「啓介」と呼ぶほどの仲らしい。幼馴染なら当然か?
彼女は片桐君に接近を試みたが、愛莉がそれを阻んだ。
私も警戒をしていたが、皆がいいと言うので西松の幼馴染だという理由では拒否する理由にならないと思いグループに入るのを承諾した
愛莉は反対していたが、片桐君が「いいんじゃない?」と言うので愛莉も渋々承諾した。
二人は片桐君たちが店を出ると後を追うように店を出る。

「綺麗な、彼女でしたね。どうして、西松君とくっつかないのでしょう?お似合いのカップルでしょうに」

酒井君は率直な感想を述べる。

「どう考えても、西松とグルでしょうね……」
「だよなっ!?私もそう思った」

恵美と美嘉さんがそう話してる。

「まあ、皆の思ってる通りだろうな」

渡辺君も否定しない。

「じゃあなんで、皆拒否しなかったの?」

瑛大が当たり前のことを聞いていた。

「性懲りもなくまだ遠坂さんと冬夜を狙っているのが面白くてな……思わずな」

渡辺君があっけらかんと答える。

「迷惑なのは愛莉ちゃん達よね。私も同意してしまったけど」

恵美がそう言う。愛莉は拒否していたけど、片桐君は承諾した。彼女の目的を見抜いているようだったけど。

「冬夜は多分大丈夫だ。それよりほかの男性陣に注意喚起は必要かもな」

一つグループを作るかと、渡辺君がスマホを操作する。するとグループ招待がきた。「西松対策室」と名のついたグループが。
片桐君たちも直ぐに入ってきた。愛莉を宥めるので忙しいらしい。
ここにいない人たちに事情を説明する。
すると片桐君が忠告をした。

「彼女には気をつけた方がいいよ。心がからっぽなんだ」と……。

何を考えているか分からないという事だろうか?

「まあみんな気をつけるに越したことはないな。冬夜はもちろんだけど特に瑛大が狙われるだろうな」

渡辺君の言う通りだと思う。

「瑛大君の事信じてあげて~、私が迫っても『亜依がいるから』って拒否されたんだし」と、咲良が言えば「それ私も言われた」と咲がいう。

アイツそんな嬉しい事言ってくれたのか。

「タイミングからして最後の切り札だろう?皆気を引き締めて行こう」と渡辺君が言うと皆がうなずいた。

これで最後……?
私は疑問が残ったが、うんと言うしかない。

「亜依ちゃんから何か言うことないの?」

恵美が聞いてくる。そうだな……。

「絶対あの女と二人きりにならない。男性陣はその事を注意して」

そうメッセージを送った。
彼女は何をするか分からない。二人きりなんて言語道断。
男性陣は了解とスタンプを送信する。

「彼女の正体がつかめるまでは信用しちゃだめだね」

私がそう言うと晶が提案をしてきた。

「伝手で探偵がいるのよ。探らせようか?」
「お願いしていいかな?」
「わかった」と晶は言う。

私達の心の中には青嵐が吹き荒れていた。

(4)

「うーん、気持ちいい」

愛莉は主っきり背を伸ばしている。
別府湾を眺めながらお弁当を広げる愛莉。

「たくさん食べね♪」

愛莉はそう言ってコップにお茶を注ぐ。
愛莉の言う通りお弁当は豊富だった。
サンドイッチにおにぎり、から揚げに玉子焼き……。
お弁当を食べながら海を眺める。
今日もいい天気だ。
日当たりも良く海風が心地よく、お弁当も美味しい。そして隣にはお嫁さん(仮)がいる。
どれだけ幸せな事か。
この幸せが永久に続けばいい。
そう思っていた。

「ねえ……?本当に大丈夫だよね?」

愛莉が不安そうに尋ねてきた。
多分愛莉が心配してるのは高階さんの事だろう?
あの後愛莉に「個人的に追加してもいいかな?」と聞いてきて愛莉が承諾すれば毎日のようにメッセージを送ってくる。
その内容もフレンドリーな物で何の他意も感じられないものだった。
それがかえって愛莉を不安にさせていた。
あの西松君の幼馴染……その一言が愛莉を不安にさせているんだろう。
何か企んでいるのは間違いない。
最初一目見たときにそう思った。

彼女は何かを隠している。

その内容までは分からなかったけど。
何せ彼女の心の仲は空白で何を考え何を想っているのか分からない、
一つだけ言えることは、彼女の目的は愛莉から僕を引き離す事。
それは僕に惚れさせるとかそういう事ではなく単純に引き離す事。
愛莉一人の時に西松が近づけばどうにかなるとでも思っているのだろうか?
そんなことさせないけど。
でもなんだろう……?。
高階さんと西松君は幼馴染とかではないもっと強い物でつながっている気がする。
それは絆とかそんな優しい物じゃない、束縛に近い何か。
それは西松君も高階さんも隠している。もっとも重要な物な気がする。

「冬夜君?」
「あ、ごめん。また入り込んでた?」
「みたいだね。あの二人の事?」
「うん、それなんだけど……」

その時眩しい光が辺りを包んだ。幻覚?
ふと海を見る。
少女が海の上に立っている。
ついに幻覚まで見るようになってしまったか。

忘れさせないから

忘れてみせるさ。

無理ね、あなたは私に許しを請いている。

どうしたら許してもらえるの?

……こっちにいらっしゃい。

僕は立ち上がり彼女の方へと足を進める。

そう、それでいいの。

「冬夜君だめ!!」

愛莉の両腕が僕の腰を掴む。
幻は消えた。

「愛莉?」
「冬夜君白昼夢でも見たの?急にふらふら~って……」
「ああ、ごめん。……彼女の幻を見てた」
「冬夜君を一人にさせられない理由できたね」

愛莉はそう言って笑う。

今僕の心には雨が降っている。
しかしその雨はいつか止んで、虹がかかる。青嵐に生まれる光。
揺るぎない大切なもの、とっくに気づいてる愛するという気持ち。
まだ歩ける、ゴールは見えてるんだ。想いは時を超え永遠に響く。
愛莉の喜び痛み全てを。
愛の花よ咲き誇れもっとずっと。
悠久の風はまだ吹き続ける。
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