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3rdSEASON
今宵は
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(1)
「冬夜君朝だよ~」
12月23日
今日は日曜日。
部活も無い。
だから寝る。
「佐倉さんから言われてるの『冬夜君は休みの日も体力つける為にトレーニングさせてください』って」
「朝からすることないだろ?」
「朝からしないと昼からお出かけだよ?」
「どこに?」
ぽかっ
「今日はイブイブだよ!?」
「愛莉……イブイブって用語は間違ってるんだぞ」
「ほえ?」
「クリスマスイブってのは前夜って意味じゃなくて12月24日の事を指すんだから用法的におかしい」
「でもイブは渡辺班でクリスマス会だよ。25日が平日だから」
ああ、そうだったな。
「理解できた?じゃあトレーニングウェアに着替えて公園いこう?」
愛莉はそう言うと自分も着替えだした。
やれやれ。
僕も着替えを始めた。
公園にはジョギングするコースとトレーニングする器具を扱える部屋がある。
「片桐先輩は技術面は問題ないのでとにかくフィジカルを強化してください」
というのが佐倉さんの意見。
愛莉も付き合ってトレーニングしてる。
「結構きついね」
そう言いながらも僕とメニューは変えているけどトレーニングしている。
僕としてはあまり鍛えて欲しくないんだけど。
「どうして?」
「だって胸とか無くなっちゃうだろ?」
ぽかっ
「どうしてそういうところばかり見るかな~」
佐倉さんに渡されていたメニューをこなすとシャワーを浴びて着替える。
愛莉も済ませていたようで外で待っていた。
「じゃ、帰って準備しよ?」
愛莉を乗せて車は家に向かう。
家に帰ると着替えて街に向かう
泊まるホテルとディナーのお店は決めてあった。
いつもフレンチじゃつまらないのでスペイン料理の店にした。
ホテルはいつものホテル。
プレゼントは二人で選ぶと決めてあった。
お互い買う物は決めてあるみたいだけど。
車を駐車場に泊めて取りあえずランチを食べる。
それから愛莉と駅ビルに向かいプレゼントを選んだ。
お互い財布を選んでいた。
その後も街をぶらりとして、時間を潰す。
街は賑わっていた。
皆考えることは同じなんだろうか?
2人でプレゼントを選ぶ恋人たち。
そんな中に混ざって僕達もまた雰囲気を楽しんでいた。
(2)
その日は誠の家に泊っていた。
久々の3連休。
誠も予定は無いと言うので土曜日から止まっていた。
日曜の朝テレビの音で目が覚める。
某少女戦士のアニメを見ている誠。
こいつは朝から……。
「べ、別にヌードがあるからとかそんなの全然ないから」
「知ってるよ」
少女向けのアニメであるわけないだろ。
「この後のスーパー特撮物に興味があってさ」
「お前そんな趣味あったか」
「いや、瑛大が勧めてくるからさ」
渡辺班で唯一同じ大学の友達だから……か?瑛大とは仲良くやってるらしい。
この二人のやりとりはチェックしとかないとダメだけど。
「そういや瑛大は元気なのか?」
「ああ、最近は指原さんとゲームしてるらしいよ」
亜依も大変だな。
「で、今日はどこへ連れて行ってくれるんだ?」
「ああ、とりあえず街へ電車で行こうと思ってる」
「電車で?」
「どうせ飲むんだろ?明日も」
「まあ、そうだな……」
「だったら車で行くより電車の方がいい」
「わかった」
そういうと出かける仕度を始める。
街につくと商店街の外れにある宝石屋に入る。
そして指輪を買う。
ダイヤモンドじゃないけど「夫婦の至福」と意味する誕生石の指輪。
「クリスマスプレゼント」
そう言うと私に指輪を手渡した。
「ありがとう」
そう言って受け取る。
その後街ブラしてディナーを食べてバーに寄って終電で帰った。
帰りにコンビニでアルコールとつまみを買って帰って誠の家で飲んでいた。
「あんまり飲みすぎるなよ?明日もあるんだし」
「わかってるよ」
「なあ」
「どうした?」
「誠は将来の事とか考えてるのか?」
「まあね」
「やっぱりサッカーか?」
「一応地元クラブからスカウトは来てる」
「そうか」
約束された将来ってやつか。
「神奈は?」
「私は普通に就職かな」
「その必要はないよ」
「え?」
それってまさか……。
「神奈を養うくらいには稼いで見せるから」
やっぱり。
「断る」
「え?」
落胆する誠。
「しょっぱなからそんなに年棒いいわけないだろ?私も働くよ」
「そうか……て、ことはじゃあ……」
「ありがとう、誠」
「おっしゃあ!」
大声を出して喜びを表現する誠。
そんな誠を見て私も一滴の涙を流していた。
私の将来も約束されたようだ。
「明日になって忘れたとか言うなよ」
「忘れるもんか!」
そう言って誠は私を抱きしめる。
「愛してるぞ神奈!」
「私もだ……」
冬夜の事を忘れさせてくれた。大切な人。
いつも衝突してたけど、砕け散ることなくずっとゴールに向かって転がり続けていた。
そして今辿り着いた。
未だに実感わかないけど。
実感するのにはもうしばらく時間が必要だった。
(3)
「亜依!支援ちょうだい!!」
「はいよ」
亜依に指示を出しながら、対人戦を繰り広げる。
そして22時に終わった。
「お疲れ様~」
「……お疲れ」
亜依は何か不機嫌のようだ。
勝てたのに何か問題あったのか?
不満があるなら聞いておいた方がいい。
僕は亜依に聞いてみた。
「何かあった?」
「……別に?」
素っ気ない亜依。
「瑛大クリスマスプレゼント亜依ちゃんに買ったのか?」
音声チャットで誰かが言った。
あ、そういうことか!?
明日でいいやと思ってたけど、明日は渡辺班の集合する日だったんだ。
ディナーと言えば今夜は出前で頼んだピザとビール。
何をあげたらいい?
「亜依、明日昼からでかけよう!亜依のプレゼント買わなくちゃ!」
「今頃か……」
亜依の機嫌が悪い事は分かった。でもどうしたらいいか分からない。
取りあえずゲームで露店だして放置すると、亜依に近寄る。
「亜依ごめん」
「毎年の事だろ」
まじやばい、亜依また怒りだすんじゃないか?
今度怒らせたら絶対別れるって言いだす。
「明日絶対埋め合わせするから今日は許して!」
本気で土下座する。
「今更だ、気にするな。もう慣れたよ」
呆れてるようだ。どうして僕はこう駄目なんだろう。
「……慣れたけどね、一緒にいられただけでも良しとするよ。それでも瑛大が好きなんだ。仕方ないよね」
亜依はそう言って抱きしめる。
「一緒にいられるだけでいい。それだけで十分プレゼントだよ」
亜依は泣いている?
「明日指輪をプレゼントするよ。ゲームのじゃない!本物の!」
ちゃんとしたダイヤの指輪を……。
「そんな高いの要らないよ」
「僕が今できる精一杯の事だから受け取ってよ」
「じゃあ、明日街で選ぼうか」
亜依の機嫌は直ったようだ。
その後シャワーを浴びると亜依と二人でベッドで寝た。
亜依は僕を理解してくれてる。
今度は僕が亜依を理解する番だ。
(4)
ファミレスで夕食を食べて、フライドチキンと飲み物を買って帰ると。二人交互に風呂に入る。
咲が風呂に入ってる間飲み物を飲みながら、テレビを見ていた。
咲は戻ってくると僕の隣に座ってテレビを見ている。
フライドチキンを食べ終わると咲がキッチンに持って行く。
そして冷蔵庫から白い箱を持ってくるとテーブルの上に置いた。
「じゃーん!」
箱の中身はクリスマスケーキだった。
「手作りじゃないけどね……来年には作れるようにがんばるよ」
「こんなに食べきれるのかい?」
「今日一日で食べなくてもいいでしょ、一回やってみたかったんだよね」
そう言うと箱を手に取りケーキにかぶりつく。
「うん、美味しい」
満足そうだ。
僕はそんな咲を見て笑う。
「咲、鼻に生クリームついてるよ」
「う、うっさい!あんたもやってみなさいよ」
そう言て僕にケーキを差し出す。
僕はケーキにかぶりついた。
「美味しいね」
「でしょ!有名な店で予約してあったんだよね」
そして咲とプレゼント交換。
二人共「ありがとう」と言った。
「ねえ?」
「なに?」
「悠馬は幸せ?」
「幸せだよ」
どうしたんだ突然?
「良かった。私も幸せなんだ。入学した時は想像もつかなかった。こんな人並みの幸せで満足できるなんて。でも渡辺班に入って分かった。こんな人並みの幸せを手に入れることがこんなに大変なんだって。渡辺班に入ってよかった」
やけに饒舌な咲。咲も変わったな、入った当初と。
「悠馬は私の事どう思ってるかわからないけど、私は悠馬に出会えてよかった」
咲はそう言って僕に抱きつく。
「僕も先に出会えてよかったよ」
そう言って咲を優しく抱く。
「ありがとう」
「こちらこそ」
そう言って長い夜を楽しんだ。
(5)
12月23日、日曜日。
私は店でお手伝いをしていた。
私の家は酒屋をしている。
日本酒はもちろんの事最近は洋酒も取り扱っている。
馴染みの客が殆どで若い客はだいたいディスカウントストアに行ってしまうのだけど、それでも少しでも客層を広げようと努力している。
この日はワインやシャンパンが良く売れる。
この日の為に取り寄せていた、年代物のワインとかが良く売れていた。
近頃の酒屋にしては珍しいほど客が来た。
兄が各種ソムリエの資格を取っており。これは良いですよあれが良いですよとお勧めの酒を勧める。
若いカップルから老人まで様々な客が訪れる。
今日は休日の関係上若いカップルが夜を共にする日。
私にはそんな相手がいない。
真鍋君からも何のお誘いもない。
お誘いどころか連絡すらない。
連休前で忙しいのだろう。
私も忙しい。
忙しいのは好きだ。
余計な事を考えなくて済むから。
22時過ぎになると店を閉める。
終業業務を終えてシャワーを浴びて部屋に戻る。
一人静かにテレビを見ている。
寂しくなると椎名さんに電話する。
「もしもし?新名さん?ちょっとまって、また後で連絡する」
取り込み中なのだろうか?
仕事まだ忙しいのかな?
いつでも電話しておいでと言っていたのに。
何してるのかな?
気づいたら椎名さんの事ばかり考えている。
私どうかしてる。
もう寝ようかと思ったその時。
呼び鈴が鳴った。
こんな時間に誰だろう?
「未来!お客さんだぞ」
私に?
私が玄関に行くと椎名さんがいた。
酷く疲れてるようだ。
「夜遅くにごめんね」
椎名さんはそう言うと笑った。
「いえ……出張は……?」
「今日終わってね、何とか帰ってこれた」
「まあ、椎名さん。立ち話もなんだ。未来の部屋でゆっくりしていきない!」
椎名さんはお父さんを懐柔するのに成功したようだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて。新名さん、いいかな?」
「ちょ、ちょっと待ってください」
私は部屋に帰って、急いで部屋を片付けると玄関に戻る。
「お待たせしました。こっちです」
そう言って椎名さんを部屋に案内する。
「ちょっと散らかってますけど……」
彼は部屋に入ると「座ってもいいかな?」と聞く。
「どうぞ」というと彼はクッションの上に座った。
私はベッドに腰掛ける。
「突然の訪問ごめんね」
「いえ、びっくりはしましたけど」
心のどこかで安心してた。
「でもどうしてこんな時間に?」
彼は黙っていた。何か重要な要件があるのだろうか?
「どうしてって……君に会いたかったからだよ」
どくん。
心臓の鼓動が大きく響く。
彼にも届いたのじゃないだろうか?
「な、なんか飲み物取ってきますね?」
そう言って立ち上がると椎名さんの手が私の腕を掴んだ。
「大丈夫、少し休ませて」
そう言うと彼は倒れた。
疲れていたらしい。
「椎名さん、今夜は遅い。家に泊っていくと良いってありゃ?寝てるじゃねーか!」
父さん部屋に入るときはノックして。
「ま、いいや。未来こんな状態だし未来の部屋に泊めてやってくれ」
何言ってるの父さん、椎名さん男だよ!?
「椎名さんなら間違いはないだろう!じゃあ、よろしく」
椎名さんに毛布を掛けてわたしもベッドで眠りについた。
椎名さんと手を繋いでいる。
それだけでなんか安心出来た。
(6)
春樹と付き合いだして暫く経つ。
今日も普通にデートしてくれる。
そう、いつも普通のデート。
何もない。
たまには私から仕掛けてみたけど、手ごたえが感じられない。
キスをしたり抱き合ったり当たり前の愛し方も出来てはいたけど。
彼は本当に私の事が好きなのだろうか?
今日も普通にクリスマスデート。
クリスマスデートと言うくらいだからそれなりのお店に入ってプレゼント交換して。
イルミネーションを楽しんで。駅で別れる。
……あまり普通と変わらない。
「……それじゃ、また~」
そう言っていつもの時間の電車に乗る。
すると彼の手が私の腕を掴む。
「待てよ咲良」
私はドキッとして彼を見た。
その間に電車のドアは閉まって電車は行ってしまった。
「あの~今の終電……」
彼は私の腕を掴んだままエスカレーターを降りて別の乗り場に行く。
そっちは上り線、逆方向だ。
彼は躊躇いもなく私の手を取り電車に乗る。
「どういうつもりですか~?」
「……今日は特別だ」
何が特別なのかさっぱりわからない。
電車は別府で降りる。
そこからタクシーを捕まえ「扇山まで」と言った。
タクシーはアパートの前に止まる。
「こっちだ」
2階の部屋扉を開くとキッチンがありその奥に一室があった。
「散らかってるけど適当に座れよ」
春樹が言うほど散らかっては無くむしろ綺麗に掃除されていた。
カーテンは閉められテレビと小さな水槽には熱帯魚が買われている。
ガラスのテーブルが中央にあり壁際にはパイプベッドが置かれてあった。
反対側の壁にはラックや本棚が置いてあり建付けのクローゼットの中には衣服がきちんと整理されてある。
私は見回しながら、クッションの上に腰掛ける。
春樹はテレビをつけると「ちょっとシャワー浴びてくるから寛いでろ」と言ってシャワーを浴びに言った。
ひょっとして……お泊りですか?
今まで私の家に泊るのを散々拒絶しておいて自分の領域に簡単に招く彼。
寧ろ自分の領域だから好きにできると思ったのだろうか?
シャワー浴びてくるで思い出した。私着替え用意してない。
そのつもりなら最初から言ってくれればいいのに。
やがて、春樹がシャワーから出てくると「お前もゆっくり入って来いよ」という。
私は身体を丁寧に洗い。シャワーから出る。
寝間着は彼のを貸してくれた。かなりぶかぶかだったけど。
彼はブランデーを飲みながらテレビを見ている。
私が出てきたのに気づくと、冷蔵庫から飲み物を取り出し渡した。
私も全く準備していないわけじゃない。いつかはこういう日もあろうかと最低限の準備はしてあった。
「……そろそろ寝るか」
春樹がそう言った時、私はドキッとした。
ベッドに入るように言われる私。
誘われるままにベッドに入る。
そして……。
「ねえ春樹~?」
「なんだ?」
「なんで今日なんですか~?」
「明日は皆で騒ぐんだろ?明後日は平日だし」
「今日までずっと待ってたんですか~?」
「……初めての夜は特別な日にって普通思うんじゃないのか?」
そう言うと彼は眠ってしまった。
私はドキドキして眠れなかった。
ついに春樹としてしまった。
それは予想外の出来事だったけど。
春樹は春樹なりに私との事を考えていてくれたんだ。
嬉しくて眠れなかった。
朝になったら、ご飯作ってあげよう。
そんな事を考えていた。
(7)
その晩はかずさんとディナー。
かずさんの家に泊るつもりだったのでその準備をしていた。
今日はクリスマスコースで夕食を楽しむ。
かずさんと過ごす二度目のクリスマス。
とても楽しい物だった。
でもどうしてだろう?
かずさんの表情がやや硬い?
緊張してるの?
何があったんだろうか?
食事が終わると食後のコーヒーを飲む。
そうだ!
私はバッグからプレゼントを渡す。
「これ私から……」
「あ、ありがとう」
「?」
喜んではいてくれてるみたいだけどやはり緊張しているようだ。
何かタイミングを計っているようにも見える。
タイミングを掴めないでいるようだ。
私からきっかけを作ってあげよう。
「何かあったんですか?」
「あ、いや……」
「さっきから様子が変ですよ?」
「そ、そうかな。おかしいな」
作り笑いをするかずさん。
一体どうしたんですか?
コーヒーを飲み終えてから10分ほどたっている。
「そろそろ行きましょうか?」
私がそう言って席を立とうとすると「待ってくれ」という。
私が再び席に座るとかずさんは深呼吸をする。
フレンチのレストランだけどドレスコードはないのになぜかスーツで着てる。
そんなにかしこまってどうしたの?
私なりに考えてみた。今日はクリスマスイブの前日。
でもクリスマスディナー……ちょっと笑える。
彼はドレスコードもないのにかしこまった服装で着てる。
そして少し挙動不審な点もある。
何か言いたい事があるみたいだ。
……かしこまって別れようはないだろう。
と、すると逆の事?
彼は来年から社会人だ。
そんな事があってもおかしくないかもしれない。
いけない、私の方まで緊張してきた。
沈黙の時間が流れる。
沈黙の時間を破ったのは私だった。
「かずさん……」
「はい!」
面白いくらい緊張してる。
そんなに肩に力入れないで。
「いつも通りでいいんですよ。そんなに力まないで」
私が感づいていることに気づいてもらえたのだろうか。かずさんはテーブルの上に小箱を置いた。
「まだ付き合ってから1年半くらいしか経ってないけど。花菜の事は見てきたつもりです」
「はい……」
「そのうえで言います。僕と結婚してください」
「……はい」
私は目頭をハンカチで抑える。
彼は嬉しさのあまり叫びたいのを我慢してる。
小箱から指輪を取り出すと彼に渡した。
「はめてもらえませんか?」
私がそう言って左手を差し出すと薬指にはめてもらえた。
「クリスマスでもクリスマスイブでもないけど今日は記念日ですね」
いけない、涙がとまらない。
「絶対幸せにしてみせるから」
「ダメです」
「え?」
「一緒に幸せになりましょう」
私がそう答えると彼はうなずいた。
彼の一大行事が終わると私たちはいつものバーによって時間を過ごし彼の家に帰って一夜を明かした。
(8)
街ブラして、カラオケに行って時間を過ごす。
その後予約してあったスペイン料理の店に行って料理を楽しむ。
サングリアが美味しいからってそんなに飲むと酔っちゃうよ?冬夜君。
そのあと私が見つけたバーに行ってお酒を飲む。
ホテルのチェックインは済ませてあったので2軒3軒はしごする。
繁華街からホテルまでは近かったので酔い覚ましに歩いて帰る。
ホテルに帰ると何やら小さな小箱が。
開けてみるとクリスマスケーキのサプライズ。
買ってきたお酒といっしょに食べる。
冬夜君は飲むと少しエッチになるみたい。
「一緒にお風呂入らない?」
私にだけだからね。そのセリフを言うのは。
冬夜君とお風呂に入った後。テレビを見ている。
今夜は期待していいのかな?
そう思った矢先に……。
冬夜君は寝ていた。
……いっぱい飲んでいたもんね。
冬夜君に布団をかけてあげる。
前言撤回。多分お風呂に入りたいって言ったのは彼の本音なんだろう。
嬉しい反面寂しくもある。
期待させておいてそれはないんじゃない?
ぽかっ
冬夜君の頭を軽く小突く。
その時冬夜君の口から洩れた言葉。
「愛莉……愛してるよ」
そういうことは素面の時に言ってください。
嬉しいけど、明日には忘れているんだろうな。
それからテレビを見ようとしていたけど、冬夜君が突然起きたかと思ったら私に抱き着く。
「ずっと一緒だよ」
はいはい。ここにいるから心配しなくていいよ。
明日皆と飲むのに心配だな~。
冬夜君をあやしながらテレビを見ているとスマホが鳴った。
「かずさんにプロポーズされました」
そういうメッセージと左手にはめられたダイヤの指輪の画像。
「おめでとう」と返す。
そして冬夜君を見る。
冬夜君は社会人になってからと言っている。
それってもうプロポーズ同然じゃないですか?
しかも両家の親にも認められて、あとは冬夜君の意思待ちだよ。
冬夜君は言っていた。
「僕たちは事実婚だ」って……。
冬夜君の手を固く握る。
テレビを消して照明を落とし、冬夜君を抱きしめ私も目を閉じる。
いつかそうなるだろう、冬夜君と私のウェディングを夢見ながら。
「冬夜君朝だよ~」
12月23日
今日は日曜日。
部活も無い。
だから寝る。
「佐倉さんから言われてるの『冬夜君は休みの日も体力つける為にトレーニングさせてください』って」
「朝からすることないだろ?」
「朝からしないと昼からお出かけだよ?」
「どこに?」
ぽかっ
「今日はイブイブだよ!?」
「愛莉……イブイブって用語は間違ってるんだぞ」
「ほえ?」
「クリスマスイブってのは前夜って意味じゃなくて12月24日の事を指すんだから用法的におかしい」
「でもイブは渡辺班でクリスマス会だよ。25日が平日だから」
ああ、そうだったな。
「理解できた?じゃあトレーニングウェアに着替えて公園いこう?」
愛莉はそう言うと自分も着替えだした。
やれやれ。
僕も着替えを始めた。
公園にはジョギングするコースとトレーニングする器具を扱える部屋がある。
「片桐先輩は技術面は問題ないのでとにかくフィジカルを強化してください」
というのが佐倉さんの意見。
愛莉も付き合ってトレーニングしてる。
「結構きついね」
そう言いながらも僕とメニューは変えているけどトレーニングしている。
僕としてはあまり鍛えて欲しくないんだけど。
「どうして?」
「だって胸とか無くなっちゃうだろ?」
ぽかっ
「どうしてそういうところばかり見るかな~」
佐倉さんに渡されていたメニューをこなすとシャワーを浴びて着替える。
愛莉も済ませていたようで外で待っていた。
「じゃ、帰って準備しよ?」
愛莉を乗せて車は家に向かう。
家に帰ると着替えて街に向かう
泊まるホテルとディナーのお店は決めてあった。
いつもフレンチじゃつまらないのでスペイン料理の店にした。
ホテルはいつものホテル。
プレゼントは二人で選ぶと決めてあった。
お互い買う物は決めてあるみたいだけど。
車を駐車場に泊めて取りあえずランチを食べる。
それから愛莉と駅ビルに向かいプレゼントを選んだ。
お互い財布を選んでいた。
その後も街をぶらりとして、時間を潰す。
街は賑わっていた。
皆考えることは同じなんだろうか?
2人でプレゼントを選ぶ恋人たち。
そんな中に混ざって僕達もまた雰囲気を楽しんでいた。
(2)
その日は誠の家に泊っていた。
久々の3連休。
誠も予定は無いと言うので土曜日から止まっていた。
日曜の朝テレビの音で目が覚める。
某少女戦士のアニメを見ている誠。
こいつは朝から……。
「べ、別にヌードがあるからとかそんなの全然ないから」
「知ってるよ」
少女向けのアニメであるわけないだろ。
「この後のスーパー特撮物に興味があってさ」
「お前そんな趣味あったか」
「いや、瑛大が勧めてくるからさ」
渡辺班で唯一同じ大学の友達だから……か?瑛大とは仲良くやってるらしい。
この二人のやりとりはチェックしとかないとダメだけど。
「そういや瑛大は元気なのか?」
「ああ、最近は指原さんとゲームしてるらしいよ」
亜依も大変だな。
「で、今日はどこへ連れて行ってくれるんだ?」
「ああ、とりあえず街へ電車で行こうと思ってる」
「電車で?」
「どうせ飲むんだろ?明日も」
「まあ、そうだな……」
「だったら車で行くより電車の方がいい」
「わかった」
そういうと出かける仕度を始める。
街につくと商店街の外れにある宝石屋に入る。
そして指輪を買う。
ダイヤモンドじゃないけど「夫婦の至福」と意味する誕生石の指輪。
「クリスマスプレゼント」
そう言うと私に指輪を手渡した。
「ありがとう」
そう言って受け取る。
その後街ブラしてディナーを食べてバーに寄って終電で帰った。
帰りにコンビニでアルコールとつまみを買って帰って誠の家で飲んでいた。
「あんまり飲みすぎるなよ?明日もあるんだし」
「わかってるよ」
「なあ」
「どうした?」
「誠は将来の事とか考えてるのか?」
「まあね」
「やっぱりサッカーか?」
「一応地元クラブからスカウトは来てる」
「そうか」
約束された将来ってやつか。
「神奈は?」
「私は普通に就職かな」
「その必要はないよ」
「え?」
それってまさか……。
「神奈を養うくらいには稼いで見せるから」
やっぱり。
「断る」
「え?」
落胆する誠。
「しょっぱなからそんなに年棒いいわけないだろ?私も働くよ」
「そうか……て、ことはじゃあ……」
「ありがとう、誠」
「おっしゃあ!」
大声を出して喜びを表現する誠。
そんな誠を見て私も一滴の涙を流していた。
私の将来も約束されたようだ。
「明日になって忘れたとか言うなよ」
「忘れるもんか!」
そう言って誠は私を抱きしめる。
「愛してるぞ神奈!」
「私もだ……」
冬夜の事を忘れさせてくれた。大切な人。
いつも衝突してたけど、砕け散ることなくずっとゴールに向かって転がり続けていた。
そして今辿り着いた。
未だに実感わかないけど。
実感するのにはもうしばらく時間が必要だった。
(3)
「亜依!支援ちょうだい!!」
「はいよ」
亜依に指示を出しながら、対人戦を繰り広げる。
そして22時に終わった。
「お疲れ様~」
「……お疲れ」
亜依は何か不機嫌のようだ。
勝てたのに何か問題あったのか?
不満があるなら聞いておいた方がいい。
僕は亜依に聞いてみた。
「何かあった?」
「……別に?」
素っ気ない亜依。
「瑛大クリスマスプレゼント亜依ちゃんに買ったのか?」
音声チャットで誰かが言った。
あ、そういうことか!?
明日でいいやと思ってたけど、明日は渡辺班の集合する日だったんだ。
ディナーと言えば今夜は出前で頼んだピザとビール。
何をあげたらいい?
「亜依、明日昼からでかけよう!亜依のプレゼント買わなくちゃ!」
「今頃か……」
亜依の機嫌が悪い事は分かった。でもどうしたらいいか分からない。
取りあえずゲームで露店だして放置すると、亜依に近寄る。
「亜依ごめん」
「毎年の事だろ」
まじやばい、亜依また怒りだすんじゃないか?
今度怒らせたら絶対別れるって言いだす。
「明日絶対埋め合わせするから今日は許して!」
本気で土下座する。
「今更だ、気にするな。もう慣れたよ」
呆れてるようだ。どうして僕はこう駄目なんだろう。
「……慣れたけどね、一緒にいられただけでも良しとするよ。それでも瑛大が好きなんだ。仕方ないよね」
亜依はそう言って抱きしめる。
「一緒にいられるだけでいい。それだけで十分プレゼントだよ」
亜依は泣いている?
「明日指輪をプレゼントするよ。ゲームのじゃない!本物の!」
ちゃんとしたダイヤの指輪を……。
「そんな高いの要らないよ」
「僕が今できる精一杯の事だから受け取ってよ」
「じゃあ、明日街で選ぼうか」
亜依の機嫌は直ったようだ。
その後シャワーを浴びると亜依と二人でベッドで寝た。
亜依は僕を理解してくれてる。
今度は僕が亜依を理解する番だ。
(4)
ファミレスで夕食を食べて、フライドチキンと飲み物を買って帰ると。二人交互に風呂に入る。
咲が風呂に入ってる間飲み物を飲みながら、テレビを見ていた。
咲は戻ってくると僕の隣に座ってテレビを見ている。
フライドチキンを食べ終わると咲がキッチンに持って行く。
そして冷蔵庫から白い箱を持ってくるとテーブルの上に置いた。
「じゃーん!」
箱の中身はクリスマスケーキだった。
「手作りじゃないけどね……来年には作れるようにがんばるよ」
「こんなに食べきれるのかい?」
「今日一日で食べなくてもいいでしょ、一回やってみたかったんだよね」
そう言うと箱を手に取りケーキにかぶりつく。
「うん、美味しい」
満足そうだ。
僕はそんな咲を見て笑う。
「咲、鼻に生クリームついてるよ」
「う、うっさい!あんたもやってみなさいよ」
そう言て僕にケーキを差し出す。
僕はケーキにかぶりついた。
「美味しいね」
「でしょ!有名な店で予約してあったんだよね」
そして咲とプレゼント交換。
二人共「ありがとう」と言った。
「ねえ?」
「なに?」
「悠馬は幸せ?」
「幸せだよ」
どうしたんだ突然?
「良かった。私も幸せなんだ。入学した時は想像もつかなかった。こんな人並みの幸せで満足できるなんて。でも渡辺班に入って分かった。こんな人並みの幸せを手に入れることがこんなに大変なんだって。渡辺班に入ってよかった」
やけに饒舌な咲。咲も変わったな、入った当初と。
「悠馬は私の事どう思ってるかわからないけど、私は悠馬に出会えてよかった」
咲はそう言って僕に抱きつく。
「僕も先に出会えてよかったよ」
そう言って咲を優しく抱く。
「ありがとう」
「こちらこそ」
そう言って長い夜を楽しんだ。
(5)
12月23日、日曜日。
私は店でお手伝いをしていた。
私の家は酒屋をしている。
日本酒はもちろんの事最近は洋酒も取り扱っている。
馴染みの客が殆どで若い客はだいたいディスカウントストアに行ってしまうのだけど、それでも少しでも客層を広げようと努力している。
この日はワインやシャンパンが良く売れる。
この日の為に取り寄せていた、年代物のワインとかが良く売れていた。
近頃の酒屋にしては珍しいほど客が来た。
兄が各種ソムリエの資格を取っており。これは良いですよあれが良いですよとお勧めの酒を勧める。
若いカップルから老人まで様々な客が訪れる。
今日は休日の関係上若いカップルが夜を共にする日。
私にはそんな相手がいない。
真鍋君からも何のお誘いもない。
お誘いどころか連絡すらない。
連休前で忙しいのだろう。
私も忙しい。
忙しいのは好きだ。
余計な事を考えなくて済むから。
22時過ぎになると店を閉める。
終業業務を終えてシャワーを浴びて部屋に戻る。
一人静かにテレビを見ている。
寂しくなると椎名さんに電話する。
「もしもし?新名さん?ちょっとまって、また後で連絡する」
取り込み中なのだろうか?
仕事まだ忙しいのかな?
いつでも電話しておいでと言っていたのに。
何してるのかな?
気づいたら椎名さんの事ばかり考えている。
私どうかしてる。
もう寝ようかと思ったその時。
呼び鈴が鳴った。
こんな時間に誰だろう?
「未来!お客さんだぞ」
私に?
私が玄関に行くと椎名さんがいた。
酷く疲れてるようだ。
「夜遅くにごめんね」
椎名さんはそう言うと笑った。
「いえ……出張は……?」
「今日終わってね、何とか帰ってこれた」
「まあ、椎名さん。立ち話もなんだ。未来の部屋でゆっくりしていきない!」
椎名さんはお父さんを懐柔するのに成功したようだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて。新名さん、いいかな?」
「ちょ、ちょっと待ってください」
私は部屋に帰って、急いで部屋を片付けると玄関に戻る。
「お待たせしました。こっちです」
そう言って椎名さんを部屋に案内する。
「ちょっと散らかってますけど……」
彼は部屋に入ると「座ってもいいかな?」と聞く。
「どうぞ」というと彼はクッションの上に座った。
私はベッドに腰掛ける。
「突然の訪問ごめんね」
「いえ、びっくりはしましたけど」
心のどこかで安心してた。
「でもどうしてこんな時間に?」
彼は黙っていた。何か重要な要件があるのだろうか?
「どうしてって……君に会いたかったからだよ」
どくん。
心臓の鼓動が大きく響く。
彼にも届いたのじゃないだろうか?
「な、なんか飲み物取ってきますね?」
そう言って立ち上がると椎名さんの手が私の腕を掴んだ。
「大丈夫、少し休ませて」
そう言うと彼は倒れた。
疲れていたらしい。
「椎名さん、今夜は遅い。家に泊っていくと良いってありゃ?寝てるじゃねーか!」
父さん部屋に入るときはノックして。
「ま、いいや。未来こんな状態だし未来の部屋に泊めてやってくれ」
何言ってるの父さん、椎名さん男だよ!?
「椎名さんなら間違いはないだろう!じゃあ、よろしく」
椎名さんに毛布を掛けてわたしもベッドで眠りについた。
椎名さんと手を繋いでいる。
それだけでなんか安心出来た。
(6)
春樹と付き合いだして暫く経つ。
今日も普通にデートしてくれる。
そう、いつも普通のデート。
何もない。
たまには私から仕掛けてみたけど、手ごたえが感じられない。
キスをしたり抱き合ったり当たり前の愛し方も出来てはいたけど。
彼は本当に私の事が好きなのだろうか?
今日も普通にクリスマスデート。
クリスマスデートと言うくらいだからそれなりのお店に入ってプレゼント交換して。
イルミネーションを楽しんで。駅で別れる。
……あまり普通と変わらない。
「……それじゃ、また~」
そう言っていつもの時間の電車に乗る。
すると彼の手が私の腕を掴む。
「待てよ咲良」
私はドキッとして彼を見た。
その間に電車のドアは閉まって電車は行ってしまった。
「あの~今の終電……」
彼は私の腕を掴んだままエスカレーターを降りて別の乗り場に行く。
そっちは上り線、逆方向だ。
彼は躊躇いもなく私の手を取り電車に乗る。
「どういうつもりですか~?」
「……今日は特別だ」
何が特別なのかさっぱりわからない。
電車は別府で降りる。
そこからタクシーを捕まえ「扇山まで」と言った。
タクシーはアパートの前に止まる。
「こっちだ」
2階の部屋扉を開くとキッチンがありその奥に一室があった。
「散らかってるけど適当に座れよ」
春樹が言うほど散らかっては無くむしろ綺麗に掃除されていた。
カーテンは閉められテレビと小さな水槽には熱帯魚が買われている。
ガラスのテーブルが中央にあり壁際にはパイプベッドが置かれてあった。
反対側の壁にはラックや本棚が置いてあり建付けのクローゼットの中には衣服がきちんと整理されてある。
私は見回しながら、クッションの上に腰掛ける。
春樹はテレビをつけると「ちょっとシャワー浴びてくるから寛いでろ」と言ってシャワーを浴びに言った。
ひょっとして……お泊りですか?
今まで私の家に泊るのを散々拒絶しておいて自分の領域に簡単に招く彼。
寧ろ自分の領域だから好きにできると思ったのだろうか?
シャワー浴びてくるで思い出した。私着替え用意してない。
そのつもりなら最初から言ってくれればいいのに。
やがて、春樹がシャワーから出てくると「お前もゆっくり入って来いよ」という。
私は身体を丁寧に洗い。シャワーから出る。
寝間着は彼のを貸してくれた。かなりぶかぶかだったけど。
彼はブランデーを飲みながらテレビを見ている。
私が出てきたのに気づくと、冷蔵庫から飲み物を取り出し渡した。
私も全く準備していないわけじゃない。いつかはこういう日もあろうかと最低限の準備はしてあった。
「……そろそろ寝るか」
春樹がそう言った時、私はドキッとした。
ベッドに入るように言われる私。
誘われるままにベッドに入る。
そして……。
「ねえ春樹~?」
「なんだ?」
「なんで今日なんですか~?」
「明日は皆で騒ぐんだろ?明後日は平日だし」
「今日までずっと待ってたんですか~?」
「……初めての夜は特別な日にって普通思うんじゃないのか?」
そう言うと彼は眠ってしまった。
私はドキドキして眠れなかった。
ついに春樹としてしまった。
それは予想外の出来事だったけど。
春樹は春樹なりに私との事を考えていてくれたんだ。
嬉しくて眠れなかった。
朝になったら、ご飯作ってあげよう。
そんな事を考えていた。
(7)
その晩はかずさんとディナー。
かずさんの家に泊るつもりだったのでその準備をしていた。
今日はクリスマスコースで夕食を楽しむ。
かずさんと過ごす二度目のクリスマス。
とても楽しい物だった。
でもどうしてだろう?
かずさんの表情がやや硬い?
緊張してるの?
何があったんだろうか?
食事が終わると食後のコーヒーを飲む。
そうだ!
私はバッグからプレゼントを渡す。
「これ私から……」
「あ、ありがとう」
「?」
喜んではいてくれてるみたいだけどやはり緊張しているようだ。
何かタイミングを計っているようにも見える。
タイミングを掴めないでいるようだ。
私からきっかけを作ってあげよう。
「何かあったんですか?」
「あ、いや……」
「さっきから様子が変ですよ?」
「そ、そうかな。おかしいな」
作り笑いをするかずさん。
一体どうしたんですか?
コーヒーを飲み終えてから10分ほどたっている。
「そろそろ行きましょうか?」
私がそう言って席を立とうとすると「待ってくれ」という。
私が再び席に座るとかずさんは深呼吸をする。
フレンチのレストランだけどドレスコードはないのになぜかスーツで着てる。
そんなにかしこまってどうしたの?
私なりに考えてみた。今日はクリスマスイブの前日。
でもクリスマスディナー……ちょっと笑える。
彼はドレスコードもないのにかしこまった服装で着てる。
そして少し挙動不審な点もある。
何か言いたい事があるみたいだ。
……かしこまって別れようはないだろう。
と、すると逆の事?
彼は来年から社会人だ。
そんな事があってもおかしくないかもしれない。
いけない、私の方まで緊張してきた。
沈黙の時間が流れる。
沈黙の時間を破ったのは私だった。
「かずさん……」
「はい!」
面白いくらい緊張してる。
そんなに肩に力入れないで。
「いつも通りでいいんですよ。そんなに力まないで」
私が感づいていることに気づいてもらえたのだろうか。かずさんはテーブルの上に小箱を置いた。
「まだ付き合ってから1年半くらいしか経ってないけど。花菜の事は見てきたつもりです」
「はい……」
「そのうえで言います。僕と結婚してください」
「……はい」
私は目頭をハンカチで抑える。
彼は嬉しさのあまり叫びたいのを我慢してる。
小箱から指輪を取り出すと彼に渡した。
「はめてもらえませんか?」
私がそう言って左手を差し出すと薬指にはめてもらえた。
「クリスマスでもクリスマスイブでもないけど今日は記念日ですね」
いけない、涙がとまらない。
「絶対幸せにしてみせるから」
「ダメです」
「え?」
「一緒に幸せになりましょう」
私がそう答えると彼はうなずいた。
彼の一大行事が終わると私たちはいつものバーによって時間を過ごし彼の家に帰って一夜を明かした。
(8)
街ブラして、カラオケに行って時間を過ごす。
その後予約してあったスペイン料理の店に行って料理を楽しむ。
サングリアが美味しいからってそんなに飲むと酔っちゃうよ?冬夜君。
そのあと私が見つけたバーに行ってお酒を飲む。
ホテルのチェックインは済ませてあったので2軒3軒はしごする。
繁華街からホテルまでは近かったので酔い覚ましに歩いて帰る。
ホテルに帰ると何やら小さな小箱が。
開けてみるとクリスマスケーキのサプライズ。
買ってきたお酒といっしょに食べる。
冬夜君は飲むと少しエッチになるみたい。
「一緒にお風呂入らない?」
私にだけだからね。そのセリフを言うのは。
冬夜君とお風呂に入った後。テレビを見ている。
今夜は期待していいのかな?
そう思った矢先に……。
冬夜君は寝ていた。
……いっぱい飲んでいたもんね。
冬夜君に布団をかけてあげる。
前言撤回。多分お風呂に入りたいって言ったのは彼の本音なんだろう。
嬉しい反面寂しくもある。
期待させておいてそれはないんじゃない?
ぽかっ
冬夜君の頭を軽く小突く。
その時冬夜君の口から洩れた言葉。
「愛莉……愛してるよ」
そういうことは素面の時に言ってください。
嬉しいけど、明日には忘れているんだろうな。
それからテレビを見ようとしていたけど、冬夜君が突然起きたかと思ったら私に抱き着く。
「ずっと一緒だよ」
はいはい。ここにいるから心配しなくていいよ。
明日皆と飲むのに心配だな~。
冬夜君をあやしながらテレビを見ているとスマホが鳴った。
「かずさんにプロポーズされました」
そういうメッセージと左手にはめられたダイヤの指輪の画像。
「おめでとう」と返す。
そして冬夜君を見る。
冬夜君は社会人になってからと言っている。
それってもうプロポーズ同然じゃないですか?
しかも両家の親にも認められて、あとは冬夜君の意思待ちだよ。
冬夜君は言っていた。
「僕たちは事実婚だ」って……。
冬夜君の手を固く握る。
テレビを消して照明を落とし、冬夜君を抱きしめ私も目を閉じる。
いつかそうなるだろう、冬夜君と私のウェディングを夢見ながら。
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