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3rdSEASON
境界線
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(1)
2戦目。
僕はベンチに座って選手が練習しているのを眺めている。
練習に参加することも禁じられていた。
報道陣からざわめきが聞こえる。
練習を終え戻ってくる選手に監督が一言。
「日本代表は片桐一人だけじゃないと見せつけてこい」
選手が配置につく。僕がいるべき位置には和人がいた。
ジャンプボールが放られる。
ボールは両者の手が触れ放物線を描きルーズボールになる。
ルーズボールを取ったのは和人。
和人は相手がゾーンを組む前にフリースローレーンから飛びダンクを決める。
ディフェンスは敢えてオールコートプレス。
相手コートから積極的にプレスをかけて、パスを出させない。
相手にドリブルする隙を与えない
案の定相手はピポットする足で味方を蹴飛ばそうとするが届かない。
足を広げ過ぎて姿勢を崩した相手のボールを弾き飛ばす。
ルーズボールを味方が取りシュートを決める。
相手にバスケのプレイをさせないプレス。
しかし相手のディフェンスも硬い。
トライアングルツーで和人と聖人にマンツーを置く。
その際ラフプレーが目立ったが審判の笛はならない。
外に中にとパスを送る聖人。
狙われたのは彩(ひかる)だった。
彩は積極的にインを攻めるが高身長3人のディフェンスは固く、そしてボックスアウトでリバウンドが取れない。
無理にレイアップなどを決めに行こうとすれば、相手は自ら倒れそしてチャージングを取られる始末。
今日も日本代表のブースターのブーイングが響くが。それ以上に韓国代表のブースターの歓声が鳴りやまない。
ファールを取られるのは彩だけじゃない。五郎丸もポストプレイをすればすぐに審判の笛が鳴る。
結果ミドルレンジからのシュートしか決められなくなり外してもリバウンドが取れない事態となった。
反対に相手の攻撃は腕を大げさに広げながら肩からディフェンスに突っ込む。
接触すればプッシングを取られる不条理な試合展開。
対抗手段はドリブルをさせない、パスを出させないプレスで正解だったかもしれない。
さすがにバイオレーションは審判も取らざるを得ない。
理不尽な、バスケを強いられながらも拮抗していた。
第2Qを割ると15分の休憩時間に入る。
度重なる接触プレイで味方の体力は摩耗していた。
監督もその事を分かっているだろう。
頭を抱えていた。
無理もない、こんな理不尽な試合僕は生まれて初めてだ。
これをアウェーの洗礼と受け入れるしかないのか?
第3Qがはじまった。
シュートはミドルレンジから。
リバウンドを取ったら周りを確認して最小の動作で行動しろ。
そんな指示が出ていた。
そして監督が決断したかのように動く。
彩が3つ目のファールを取った時にメンバー交代の指示が出た。彩の代わりに涼真がはいる。
彩は監督に抗議するが「つべこべ言ってないで早く出ろ」と監督は言う。
彩は僕の隣の席に座る。
その隣には雄一郎が座っていた。
「くそっ」と彩が怒りをあらわにする。
あんなプレイをされたらそれはイライラするだろう。
しかし雄一郎は言う。
「ちゃんと味方のプレイを見ていろ」と。
相手は五郎丸一人を止める為に3人を費やしている。
もちろんもう一人のインサイドプレイヤー雄介のチェックもしているが。
マークについているのは聖人と和人だけ。
必然的に涼真はノーマークになる。
楽に涼真へのパスが通る。
涼真にボールが渡ってからカバーに入ったのでは遅すぎる。
涼真は軽々と3Pを決めていく。
雄一郎の言ってる意味が分かった。
「……ボロボロになりながらも味方のリバウンドは雄介と五郎丸が取ってくれる。なのにお前は焦って中に飛び込み過ぎだ。ミドルレンジ以上のシュートはノーマークと言っていい。外しても味方が取ってくれる。信用してお前はシュートを打つだけでいいんだ」
雄一郎の言葉を無言で聞いている彩。
「和人のマークもタイトになってきてる。必然的にポイントゲッターは彩だよ。強引に中に入るだけがプレイじゃない。もっとディフェンスをかき回してやれ。みんなお前をエースとして信頼してるよ」
「冬夜に言われても説得力ねーな」
涼真の3Pを警戒してか、インサイドの恐怖がなくなったからか。相手のディフェンスがマンツーに変わった。
「……彩、準備は出来てるか?」
「はい、いつでも大丈夫です」
監督の呼びかけに応じる彩。
そしてメンバーチェンジする。
ベンチから立ち上がると僕と雄一郎にタッチする。
そして、涼真と入れ替わってコートに入っていった。
「冬夜よく見ておけ、李相佰盃ではお前の出番がくるんだ。ただ試合を観るんじゃない。今のうちに相手の癖つかんでおけ」
「わかりました」
そう言って和人のマークマンを注視する。
多分僕の相手はそいつだろうから。
(2)
「どうしよう~彩も怪我したのかな?」
不安の色を隠せないゆかりさん。
「大丈夫、多分そう言うのじゃないと思うよ」
私はゆかりさんを落ち着かせる。
「愛莉、わかるの?」
ゆかりさんが聞いてきた。
「ゆかり、彩君ファール3つ目だから5つ取ったら退場させられるから一度下げただけだと思う」
由衣さんがそう言う。
それもちょっと違うかな?
「あの、代わりに入った11番の人よく見て」
私が11番の人を指差すと二人は11番の人を見る。
4番の人からパスを受け取ると躊躇わずにシュートを打つ、それも素早く。相手のブロックが入る前に、後ろに跳びながら。
日本代表は面白いように点を重ねていく。
「彩さんが入ってた時は彩さんがゴール下でのシュートに固執していたから。がちがちにゴール下を固められてた。でも、その分外側からのシュートはノーマークで打てるようになった」
相手は3人でゴール下を固めて残った二人がそれぞれ4番と14番についてるから必然的に一人ノーマークになる。
そう説明するとなるほどと二人は納得する。
それで相手も若干ゾーンが外に開いた、
ゴール下でのプレイが可能になった。
その事を確認して彩さんをまた中に戻す。
彩さんのプレイが変わった。
中距離からのシュートが中心になった。
そして相手がブロックに跳ぶとドリブルで躱してレイアップを決める。
強引なプレイをしなくなった。
またマークに入るとその穴をつくように4番のパスがゴール下の二人に通る。
接触プレイを受けながらも懸命に保持し外の3人にパスを送る。
中に入れてまた外に出しての繰り返し。
それだけで日本は得点を重ねていく。
第4Q。相手はディフェンスを変えていく。
マンツーに切り替えた。
多分ゾーンでは外を守り切れないと判断したんだろう。
相手がマンツーになると4番と14番の連携が思うように決まりだす。
14番の選手も冬夜君に似ているようで、ちょっと違うのはドライブが若干14番の選手のが得意かなってくらい。
もともとのポジションがスモールフォワードだったので当然と言えば当然なのかもしれない。
相手がファールに持って行こうにも早すぎて触れることすらできない。
早いペースの試合展開になってきた。
日本代表の思う試合展開だ。
徐々に突き放していく日本代表チーム。
そして最後は……。
彩さんの豪快なダンクが試合を決定づける。
倒れる相手選手に何かを言っている。
踵を返して味方のタッチを受けながらディフェンスを始める。
今回の遠征は2勝0敗。
3戦目を待たずして日本代表の勝ちが決まった。
(3)
俺達は朝のニュースに愕然としていた。
片桐選手負傷のため欠場。
そんなニュースが流れていた。
渡辺班の皆は江口さんの別荘に泊まり視聴覚室で試合を見ている。
冬夜は試合に出てこなかった。
が、試合は圧勝していた。
相手のラフプレーに苦しめられていたが冷静に対応していた。
「韓国って何やらせても本当に卑怯だよね」
憤慨する亜依さん。
「よく我慢できたね、日本代表チーム」
「そりゃまあね、皆慣れてるんだろうよ」
俺はそう返す。
「片桐君大丈夫かしら、試合に出れないほど重い怪我なのかしら」
恵美さんが言う。
「それは冬夜が帰ってきてから出ないと分からないけど多分違うと思う」
俺はそう断言する。
「正志は何か根拠があって言ってるのか?」
美嘉が聞いてくる。
「昨日の試合を見てた感じそんなに大した怪我のように思えなかったし、足首を痛めた程度だろう。今日の欠場は万全に備えてだと俺は思う」
「まあ、帰ってきてから片桐君に聞けばいいわ」
恵美さんがそう言うと「そうだな」と返した。
「しかしいよいよとーやも世界のプレイヤーか……」
「公式戦に出てないから厳密には違うかもな」
俺は美嘉にそう返す。
「帰ってきたら祝勝会ですね」
石原君が言う。
「そうだな」と、俺は返す。
「皆で出迎えに行ってやろうぜ!」
瑛大がそう言うと「やめとけ、報道陣に囲まれているのがおちだから。愛莉もいるし」と、指原さんが言った。
「そうか……」
「帰ってきたら盛大に祝ってやろう」
俺が言うと。みんなが「おお!」と声をあげる。
木元先輩の卒業祝いもまだだしちょうどいいな。
その日は前祝という事で皆騒いでいた。
(4)
報道席で待機しているとメンバーが入場してきた。
「遠征の結果はどう分析しますか?」
記者の一人がそう聞いた。
「満足いく結果だったと思います。ディフェンスには苦しめられましたが」
監督が言う。
「片桐選手を2戦目で使わなかった理由は?」
「片桐にはこれからの日本代表に欠かせない人物です。強化試合で取り返しのつかない怪我をさせるわけには行きませんでした」
「他の選手は故障してもいいと?」
「……片桐は足を故障していました。悪化させないように万全を期しただけです」
片桐君が故障していた。
その事に記者団は動揺する。
「怪我は重いのですか?」
「軽い物です。ですが悪化させないように哀田に変えただけです」
「しかし2戦目の方が皆の動きがよかった。片桐選手は必要ないのでは?」
「片桐は類まれなる才能の持ち主です。必然的に片桐にボールが回りそしてその結果執拗なマークを受けてしまった。それだけの話です」
「しかし、哀田選手と澤選手のラインは相手は崩せなかった」
「2人がマークマンを引き付けたおかげで中距離からシュートが打ちやすくなった。その結果皆が動いてるように見えたのでしょう。接触プレイの許されない事態で片桐の個人プレイは許されなかった。現に試合途中藍井のプレイが封じられたでしょう」
「では公式戦では片桐選手を使うと?」
私が質問してみた。
「そのつもりです。チームが勝ちあがっていくには必要不可欠な人材です」
「片桐選手に質問しても?」
「どうぞ」
スタッフの人が言った。
「片桐選手は初めて世界を相手にしたわけですが感想は?」
「世界を相手にしたというよりは国を背負った戦いの意味を痛感しました」
「監督は公式戦に使うと言っていますが、それに対してどう思っていますか?」
「当然出たいです。万全の体調ででるつもりです」
「足の故障は大丈夫なんですか?」
「ドクターの診察は受けました。何の問題も無いようです」
他の記者の質問時間に入った。
「澤選手。哀田選手と片桐選手。どちらの方が連携取れますか?」
さっきから片桐選手を遠回しに批判してる記者だ。
澤選手は答える。
「二人共使いどころが違います。哀田は速攻時にはドライブしてインから確実にとってくれる選手です。対して片桐はどんな状況でも点を積極的にとっていくタイプだけどやはりマークを集めやすい」
「それなら哀田選手の方が戦術的には広がるのでは?」
「片桐は一人でディフェンスを何人も集める。3人ついてもパスを出す事が出来る。戦術的にはツーガードと言う方が広がると思っています。それに片桐はディフェンスも得意だ。一人でスティールして速攻に持って行く。相手にペースを作らせない自分たちの試合展開に持っていける」
「哀田選手は必要ないと?」
「バスケは5人で戦い続けることは出来ないシックスマン的には哀田は有効だと思います」
記者は哀田選手に質問する。
「初めて新チームで戦った感想は?」
「これが新チームの戦力だとは思っていません。もっと上を目指せる。そう実感しました」
「それは片桐選手がいるから?」
「そうですね、悔しいけど俺より能力は上だ」
記者が驚きを隠せない。
「しかし片桐選手の出てない二日目の方が成績は良かった」
「片桐がフルタイムで出場出来ていたらまた違っていたでしょう」
「藍井選手はどうお考えですか?」
話を藍井選手に振る。
「片桐には選手生命を潰しかねないディフェンスを仕掛けて来て哀田にはしてこなかった。それが事実でしょう」
「次を最後の質問にしてください」
スタッフが言う。
私が挙手した。
「片桐選手、今後の課題は?」
「……いかにフリーでパスを受け取るですかね?。一枚でもディフェンスがついたらファールに持ってかれてしまう」
「そんな試合公式戦ではないと思いますよ」
「だといいですね」
「それでは時間です、ありがとうございました」
皆が解散する中私は片桐君に接触してみた。
「ちょっと時間あるかしら?」
「取材ならもう終わりましたよ?」
「地元サイトに載せる記事よ。もっと突っ込んだ質問をしたいわ」
「……そういことなら」
私達はホテルのカフェで話をした。
「で、話って?」
「正直な話世界の舞台にたってどう?本音を聞かせて」
「本音ですか……そうだなあ……」
片桐君は悩んでるようだった。
「……やっぱり日の丸の重みを実感したってところですかね」
「無礼講でお願い」
「フルで試合に出れなくて悔しいってのはありますね。怪我さえなければ」
「それが本音?」
「コートの向こう側とこっち側。その境界線が果てしなく遠く感じました」
「それは、ベンチにいたから?」
「はい」
「次は五輪代表の強化合宿と聞いたけど?」
「コートに立てるように頑張ります」
「あなたなら立てるわよ」
「あ、冬夜君~」
片桐君の彼女さんがやってきた。
「監督さんが探してるよ。皆集合だって」
「わかった。じゃあ、佐古下さんまた」
「ええ、強化合宿楽しみにしてるわ」
「はい」
そう言って二人は去っていった。
サッカーでは見せなかったやる気を垣間見た。
今度はとことん追いかけるわよ。
(5)
「遅いぞ冬夜!何してた!?」
監督に怒られる。
「すいません、取材受けてました」
「片桐君勝手な取材は拒否していいんだよ?」
スタッフの人が言う。
「じゃあ、皆集まったから言う。今回の遠征皆しんどかったと思うがよくやってくれた!今度は本番の李相佰盃だが、その前にアジア選手権の強化合宿に呼ばれた者もいるだろう。体にはくれぐれも注意してくれ」
「はい!」
「それじゃ、お疲れ。今日はゆっくり休め」
そう言うとみんな解散した。
すると聖人が声をかけてきた。
「冬夜、一緒に焼肉食いにいかないか。美味い焼き肉屋知ってるんだ。彼女さんもいっしょに」
「いいんですか?」
「夕食は自由行動だ、構わないよ」
「じゃ、愛莉行こうか?」
「うん」
「彩と和人も来るだろ?
「ああ」
「OK」
2人はうなずいた。
そして焼き肉屋に行く。
とにかく愛莉が焼いた肉を食べる僕。
カルビ、サムギョプサル、ユッケ……。
聖人が上手いというだけあってうまい。
「冬夜って本当食うよな……」
「困ってるんです……」
呆れる聖人と愛莉。
「足……大丈夫なのか?」
彩が聞いてきた。
「ああ、もう全然平気」
「日本に帰ったら念のため病院でみてもらうといいよ。足の故障はくせになるから」
和人が言う。
「分かった」
「くどいようだけどお前はあれほど削られるほどの重要選手なんだ、怪我だけは気をつけろよ」
聖人が念を押す。
「心配しないでください。私が責任もって管理しますから」
愛莉が言うとゆかりさん達がうなずいた。
「彩も気をつけてよ、あんなラフプレー聞いてはいたけど心配で……」
「俺は頑丈だから大丈夫だよ」
「露骨だったね。冬夜君が鼻血出した時愛莉顔青ざめてたよ」
由衣さんがそう言う。
「どうしても止めたかったんだろうね。冬夜の攻撃は一番敵には回したくない相手になってるから」
和人が言う。
「僕の事もだけど彩もムキになるの止めた方が良いよ?ファール明らかに誘われてた」
「それは確かに言える。ムキになってゴール下に飛び込む癖は止めた方が良い」
僕と聖人がいうと彩はマッコリを飲みながら言った。
「わかってるよ、雄一郎にもさんざん言われたしな」
「大事なインサイドプレイヤーなんだ。5ファールで退場なんてことはよしてくれよ」
「インサイドなら和人も冬夜も入れるだろう」
冬夜はリバウンドにも飛べるしなとつぎ足す。
「インサイドがしっかりしてるから3Pも思い切って打てるんだよ」と和人が言うと
「関係なしにガンガン打ってくる奴もいるけどな」と彩が返す。
あ、僕の事?
「外から打つからディフェンスが広がって、すると今度は内側から打つからディフェンスが縮こまってバランスのとれてるチームだよね」
僕が言うと聖人が頷く。
「おかげでPGとしても選択肢がひろがってやりやすいよ。前みたいに和人一択じゃなくなったしな」
「……うーん」
僕は悩んでいた。
「どうした冬夜?」
「いや……」
「何か問題あるのか?」
皆の注目を集めてしまったようだ。
言いづらい。
ぽかっ
「キムチ鍋と海鮮味噌鍋どっちにしようか迷ってただけでしょ!」
愛莉の突っ込みは本当に鋭い。
「まあ石焼ビビンバは決めてたんだけどね」
「冬夜はどんだけ食べれば気が済むんだ……体調管理もしっかりしろと言ったばかりだぞ」
聖人が怒る。
彩と和人は笑っていた。
(6)
とある料亭。
日本庭園があり、鹿威しが鳴る。
俺はスーツ姿でその女性とお見合いしていた。
白鳥春奈、今年ARPUに入学するらしい。
理由が俺がいるから。
両親は前から白鳥さんとの面会を考えていたらしい。
白鳥家は父さんの銀行の取引先の一つ。
地元の有力な企業の一人娘だ。
小柄で細身の体でショートボブの一部耳にかけている。
料亭にあわせたのか、和服で着た彼女と二人っきりになっていた。
「あとは若いもの同士で」というやつだ。
彼女は何も言わない。恥ずかしがっているのだろうか?
目も合わせようとしない。
どう切り出したらいいのか分からない。
親がいたときもほとんど喋らない彼女。
何を考えているのか分からない。
退屈を持て余しているということだけは多分俺と同じ心境だろう。
こういうのは早く切り出した方がいい。
思い切っていう事にした。
「悪いが俺には付き合ってる女性がいるんだ」
白鳥さんは何も言わない。
「だから君との縁談は無かったことにして欲しい」
親が知ったら激怒するだろうな。
白鳥さんも泣くか取り乱すくらいはするだろうと思っていた。
だがどちらでもなかった。
「わかった。いいわよ」
耳を疑った。俺が白鳥さんの意図を読み切れてないだけか?
「私との縁談は反故にするのね。意図は分かってる。私があなたとの縁談を反故にしたと伝えておくわ。あなたの悪いようにはしない」
あっさりとこちらの要求を受け入れる白鳥さん。
「白鳥さんにも付き合ってる人いるのか?」
彼女は首を振った。
「いないわよ。誰一人としていない」
振っといて言うのもなんだが、彼女は美人だ。言い寄ってくる男くらいいるだろう。
しかしこちらの心を読んでいるかの如く彼女は答える。
「言い寄ってきた男なんていないわよ。女友達もいない。私のスマホみる?」
そういってスマホを取り出してテーブルの上に差し出した。
俺はためらったが彼女がスマホを取り操作すると俺に見せる。
自分の両親と世話役の人間しか入ってなかった。
「白鳥さんなら友達くらいいてもおかしくないだろ?」
どういう理由か気になった。
「いたら何か変わるの?」
それが彼女の回答だった。
「それじゃ、これ以上は時間の無駄だわ。そろそろ出ましょう」
そう言ってすっと立ち上がる白鳥さんを呼び止めていた。
「友達がいると何か変わる?ってどういう意味だ?」
白鳥さんは振り返ると一言言った。
「そのままの意味よ。煩わしい時間が増えるくらいしか予測がつかない」
そうやって一人で過ごして来たのか?
「じゃあ、行くね。さようなら」
「待て!」
再び彼女を呼び止める。
「なに?まだ用があるの?」
彼女の表情は無表情で生気を失った瞳が僕を見つめている。
これ以上は時間の無駄だ。そう言いたげにしている。
このまま放っておいたら一人で一生過ごすのだろう?
それでいいのか?
俺には関係ない事だったがなぜか放っておけなかった。
「白鳥さんは友達といる時間は無意味だといったね?」
「ええ……」
「それを検証してみないか?」
「どういう意味?」
彼女の表情がやっと現れる。怪訝と言う名の表情が。
「俺と友達になろう」
自分で言ってることの意味を把握してるつもりだった。
咲良の気持ちを裏切ることになるかもしれない。
しかし白鳥さんを放っておけなかった。
このまま一人で一生をすごすほうがどれだけ無意味な人生になるのかを教えてやりたかった。
「自分の言っている意味わかってるの?それって『友達から始めましょう』ってやつじゃないの?」
「……こうしてあったのも何かの縁だ。大学も一緒だしちょうどいいだろう?」
「……何を企んでいるの?」
こっちの考えはお見通しと言わんばかりの彼女の表情。
「俺が所属しているグループがある。そこに君を招待したい」
「それに何の意味があるの?」
「君の価値観を変えるきっかけを作ってくれるかもしれない」
「無意味ね。今更価値観を変えるつもりは無いわ」
「本当に無意味なのか試してみたくないか?」
「……変わる気がしないけど。……退屈しのぎくらいにはなるのかしら?」
「そのくらいにはなると思う」
「……わかったわ。どうすればいいの?」
彼女にメッセージのアプリをインストールさせそして連絡先を交換する。
俺は渡辺君に事情を説明すると渡辺君は承諾してくれた。
咲良をはじめ多くの女性陣は反対したが渡辺君が説得してくれた。
そして白鳥さんを渡辺班に招待する。
「これでいいのね?」
「ああ、何かあった時は俺が迎えに行くよ。どうせ近くに住んでいるのだろう?」
「迎えなら必要ないわ。送迎がいるから」
「心配するな。俺にも彼女がいる。取って食うような真似はしない」
「……本当に理解に苦しむわ。その彼女さんに悪いと思わないの?」
彼女の言う事は的を得ている。
だけど俺の目的は一つ。
彼女に友達を作ってやること。
彼女の寂しい価値観を楽しい物に変えてやること。
その事を咲良に説得すればきっとわかってもらえる。
「そろそろ話は済んだかしら」
親がもどってきた。
「ちょうど終わったところよ」
「そう、じゃあ今日はお暇しましょうか?」
「ええ、母さんその前にお願いがあるんだけど」
「なに?」
「私大学に入ったら一人暮らしするわ」
「え?」
突然の彼女の提案に俺も驚いた。
「春奈が一人暮らしなんて無理よ。絶対に許さない」
「一人暮らしなんて無意味だと思う。しかしこの人は無意味なことに意味があると言った。それを立証してくれると」
「……その必要があるのかい?」
「あるかどうかはこれから検証することよ」
「……わかったわ。家の手配はすぐにするから」
「お願いします」
彼女の顔はまた無表情にもどっていた。
「それではまた」
また会うつもりはあるらしい。
これからどうすればいいのか?
俺にも渡辺班にもわからなかった。
(7)
東京に着くと解散になった。
僕と愛莉はそのまま地元に帰る。
帰るとお土産を両親と愛莉の家にわたして一休みする。
やっぱり家が落ち着く。
ベッドに横になるとそのまま眠っていた。
「冬夜君朝だよ」
どうやらそのまま朝まで眠っていたらしい。
起きるとシャワーを浴びて朝食を食べて時間を潰す。
しばらくしたところで愛莉の運転で病院に行く。
やっぱり治ってるらしい。
そのことを渡辺班に伝えるとみんな安心していた。
青い鳥に行くとみんな集まっている。
皆から褒められたり注意されたり心配されたり、色々だった。
「あんまり愛莉ちゃんを心配させたら駄目よ」
恵美さんがそう言う。
その足で大学の体育館に向かう。
体育館でもバスケ部の皆から歓迎を受ける。
「片桐先輩足大丈夫なんですか?」
佐倉さんが聞いてくる。
「さっき病院に行ってきたよ。大丈夫だって」
「そうですか。じゃあ、明日から軽めの練習しましょうか」
「ああ」
そう言って再び青い鳥に行く。
すると見慣れない子が一人いた。
「あ、冬夜。紹介する。今度渡辺班に入った白鳥春奈さん。白鳥さん。こいつがさっき話した片桐冬夜」
するとその子はすっと立ち上がり礼をする。
「はじめまして、バスケットの選手でしたね。白鳥です。よろしくお願いします」
「よ、よろしく」
動揺したのはこんな子初めて見たから。
心の中が空虚で何もない。
全く読めない。
心が無いんじゃないかってくらいに何もない。
「冬夜君どうしたの?」
愛莉が聞いてくる。
「なんでもないよ。大丈夫」
「そう?」
「うん、酒井君、いつものお願い」
「かしこまりました」
青い鳥は異様な空気に包まれていた。
何も感じ取れない白鳥さん。
そんな白鳥さんを睨みつける咲良さん。
そしてどう行動していいのか分からない渡辺班のメンバー。
家に帰ってから白鳥さんを入れた理由を知る。
男子会でのチャットでだ。
僕も彼女と会って感じたことを伝える。
「冬夜でも読めない相手か……」
渡辺君がそう言う。
「咲良大丈夫かな?」
愛莉が心配そうに言う。
「わからない……」
「大丈夫だよ」そう言ってやればよかったのかもしれない。
しかし今回ばかりは僕も自信が無かった。
どうなるのか、どう転ぶのか?
そんな不安の幕開けとなった。
2戦目。
僕はベンチに座って選手が練習しているのを眺めている。
練習に参加することも禁じられていた。
報道陣からざわめきが聞こえる。
練習を終え戻ってくる選手に監督が一言。
「日本代表は片桐一人だけじゃないと見せつけてこい」
選手が配置につく。僕がいるべき位置には和人がいた。
ジャンプボールが放られる。
ボールは両者の手が触れ放物線を描きルーズボールになる。
ルーズボールを取ったのは和人。
和人は相手がゾーンを組む前にフリースローレーンから飛びダンクを決める。
ディフェンスは敢えてオールコートプレス。
相手コートから積極的にプレスをかけて、パスを出させない。
相手にドリブルする隙を与えない
案の定相手はピポットする足で味方を蹴飛ばそうとするが届かない。
足を広げ過ぎて姿勢を崩した相手のボールを弾き飛ばす。
ルーズボールを味方が取りシュートを決める。
相手にバスケのプレイをさせないプレス。
しかし相手のディフェンスも硬い。
トライアングルツーで和人と聖人にマンツーを置く。
その際ラフプレーが目立ったが審判の笛はならない。
外に中にとパスを送る聖人。
狙われたのは彩(ひかる)だった。
彩は積極的にインを攻めるが高身長3人のディフェンスは固く、そしてボックスアウトでリバウンドが取れない。
無理にレイアップなどを決めに行こうとすれば、相手は自ら倒れそしてチャージングを取られる始末。
今日も日本代表のブースターのブーイングが響くが。それ以上に韓国代表のブースターの歓声が鳴りやまない。
ファールを取られるのは彩だけじゃない。五郎丸もポストプレイをすればすぐに審判の笛が鳴る。
結果ミドルレンジからのシュートしか決められなくなり外してもリバウンドが取れない事態となった。
反対に相手の攻撃は腕を大げさに広げながら肩からディフェンスに突っ込む。
接触すればプッシングを取られる不条理な試合展開。
対抗手段はドリブルをさせない、パスを出させないプレスで正解だったかもしれない。
さすがにバイオレーションは審判も取らざるを得ない。
理不尽な、バスケを強いられながらも拮抗していた。
第2Qを割ると15分の休憩時間に入る。
度重なる接触プレイで味方の体力は摩耗していた。
監督もその事を分かっているだろう。
頭を抱えていた。
無理もない、こんな理不尽な試合僕は生まれて初めてだ。
これをアウェーの洗礼と受け入れるしかないのか?
第3Qがはじまった。
シュートはミドルレンジから。
リバウンドを取ったら周りを確認して最小の動作で行動しろ。
そんな指示が出ていた。
そして監督が決断したかのように動く。
彩が3つ目のファールを取った時にメンバー交代の指示が出た。彩の代わりに涼真がはいる。
彩は監督に抗議するが「つべこべ言ってないで早く出ろ」と監督は言う。
彩は僕の隣の席に座る。
その隣には雄一郎が座っていた。
「くそっ」と彩が怒りをあらわにする。
あんなプレイをされたらそれはイライラするだろう。
しかし雄一郎は言う。
「ちゃんと味方のプレイを見ていろ」と。
相手は五郎丸一人を止める為に3人を費やしている。
もちろんもう一人のインサイドプレイヤー雄介のチェックもしているが。
マークについているのは聖人と和人だけ。
必然的に涼真はノーマークになる。
楽に涼真へのパスが通る。
涼真にボールが渡ってからカバーに入ったのでは遅すぎる。
涼真は軽々と3Pを決めていく。
雄一郎の言ってる意味が分かった。
「……ボロボロになりながらも味方のリバウンドは雄介と五郎丸が取ってくれる。なのにお前は焦って中に飛び込み過ぎだ。ミドルレンジ以上のシュートはノーマークと言っていい。外しても味方が取ってくれる。信用してお前はシュートを打つだけでいいんだ」
雄一郎の言葉を無言で聞いている彩。
「和人のマークもタイトになってきてる。必然的にポイントゲッターは彩だよ。強引に中に入るだけがプレイじゃない。もっとディフェンスをかき回してやれ。みんなお前をエースとして信頼してるよ」
「冬夜に言われても説得力ねーな」
涼真の3Pを警戒してか、インサイドの恐怖がなくなったからか。相手のディフェンスがマンツーに変わった。
「……彩、準備は出来てるか?」
「はい、いつでも大丈夫です」
監督の呼びかけに応じる彩。
そしてメンバーチェンジする。
ベンチから立ち上がると僕と雄一郎にタッチする。
そして、涼真と入れ替わってコートに入っていった。
「冬夜よく見ておけ、李相佰盃ではお前の出番がくるんだ。ただ試合を観るんじゃない。今のうちに相手の癖つかんでおけ」
「わかりました」
そう言って和人のマークマンを注視する。
多分僕の相手はそいつだろうから。
(2)
「どうしよう~彩も怪我したのかな?」
不安の色を隠せないゆかりさん。
「大丈夫、多分そう言うのじゃないと思うよ」
私はゆかりさんを落ち着かせる。
「愛莉、わかるの?」
ゆかりさんが聞いてきた。
「ゆかり、彩君ファール3つ目だから5つ取ったら退場させられるから一度下げただけだと思う」
由衣さんがそう言う。
それもちょっと違うかな?
「あの、代わりに入った11番の人よく見て」
私が11番の人を指差すと二人は11番の人を見る。
4番の人からパスを受け取ると躊躇わずにシュートを打つ、それも素早く。相手のブロックが入る前に、後ろに跳びながら。
日本代表は面白いように点を重ねていく。
「彩さんが入ってた時は彩さんがゴール下でのシュートに固執していたから。がちがちにゴール下を固められてた。でも、その分外側からのシュートはノーマークで打てるようになった」
相手は3人でゴール下を固めて残った二人がそれぞれ4番と14番についてるから必然的に一人ノーマークになる。
そう説明するとなるほどと二人は納得する。
それで相手も若干ゾーンが外に開いた、
ゴール下でのプレイが可能になった。
その事を確認して彩さんをまた中に戻す。
彩さんのプレイが変わった。
中距離からのシュートが中心になった。
そして相手がブロックに跳ぶとドリブルで躱してレイアップを決める。
強引なプレイをしなくなった。
またマークに入るとその穴をつくように4番のパスがゴール下の二人に通る。
接触プレイを受けながらも懸命に保持し外の3人にパスを送る。
中に入れてまた外に出しての繰り返し。
それだけで日本は得点を重ねていく。
第4Q。相手はディフェンスを変えていく。
マンツーに切り替えた。
多分ゾーンでは外を守り切れないと判断したんだろう。
相手がマンツーになると4番と14番の連携が思うように決まりだす。
14番の選手も冬夜君に似ているようで、ちょっと違うのはドライブが若干14番の選手のが得意かなってくらい。
もともとのポジションがスモールフォワードだったので当然と言えば当然なのかもしれない。
相手がファールに持って行こうにも早すぎて触れることすらできない。
早いペースの試合展開になってきた。
日本代表の思う試合展開だ。
徐々に突き放していく日本代表チーム。
そして最後は……。
彩さんの豪快なダンクが試合を決定づける。
倒れる相手選手に何かを言っている。
踵を返して味方のタッチを受けながらディフェンスを始める。
今回の遠征は2勝0敗。
3戦目を待たずして日本代表の勝ちが決まった。
(3)
俺達は朝のニュースに愕然としていた。
片桐選手負傷のため欠場。
そんなニュースが流れていた。
渡辺班の皆は江口さんの別荘に泊まり視聴覚室で試合を見ている。
冬夜は試合に出てこなかった。
が、試合は圧勝していた。
相手のラフプレーに苦しめられていたが冷静に対応していた。
「韓国って何やらせても本当に卑怯だよね」
憤慨する亜依さん。
「よく我慢できたね、日本代表チーム」
「そりゃまあね、皆慣れてるんだろうよ」
俺はそう返す。
「片桐君大丈夫かしら、試合に出れないほど重い怪我なのかしら」
恵美さんが言う。
「それは冬夜が帰ってきてから出ないと分からないけど多分違うと思う」
俺はそう断言する。
「正志は何か根拠があって言ってるのか?」
美嘉が聞いてくる。
「昨日の試合を見てた感じそんなに大した怪我のように思えなかったし、足首を痛めた程度だろう。今日の欠場は万全に備えてだと俺は思う」
「まあ、帰ってきてから片桐君に聞けばいいわ」
恵美さんがそう言うと「そうだな」と返した。
「しかしいよいよとーやも世界のプレイヤーか……」
「公式戦に出てないから厳密には違うかもな」
俺は美嘉にそう返す。
「帰ってきたら祝勝会ですね」
石原君が言う。
「そうだな」と、俺は返す。
「皆で出迎えに行ってやろうぜ!」
瑛大がそう言うと「やめとけ、報道陣に囲まれているのがおちだから。愛莉もいるし」と、指原さんが言った。
「そうか……」
「帰ってきたら盛大に祝ってやろう」
俺が言うと。みんなが「おお!」と声をあげる。
木元先輩の卒業祝いもまだだしちょうどいいな。
その日は前祝という事で皆騒いでいた。
(4)
報道席で待機しているとメンバーが入場してきた。
「遠征の結果はどう分析しますか?」
記者の一人がそう聞いた。
「満足いく結果だったと思います。ディフェンスには苦しめられましたが」
監督が言う。
「片桐選手を2戦目で使わなかった理由は?」
「片桐にはこれからの日本代表に欠かせない人物です。強化試合で取り返しのつかない怪我をさせるわけには行きませんでした」
「他の選手は故障してもいいと?」
「……片桐は足を故障していました。悪化させないように万全を期しただけです」
片桐君が故障していた。
その事に記者団は動揺する。
「怪我は重いのですか?」
「軽い物です。ですが悪化させないように哀田に変えただけです」
「しかし2戦目の方が皆の動きがよかった。片桐選手は必要ないのでは?」
「片桐は類まれなる才能の持ち主です。必然的に片桐にボールが回りそしてその結果執拗なマークを受けてしまった。それだけの話です」
「しかし、哀田選手と澤選手のラインは相手は崩せなかった」
「2人がマークマンを引き付けたおかげで中距離からシュートが打ちやすくなった。その結果皆が動いてるように見えたのでしょう。接触プレイの許されない事態で片桐の個人プレイは許されなかった。現に試合途中藍井のプレイが封じられたでしょう」
「では公式戦では片桐選手を使うと?」
私が質問してみた。
「そのつもりです。チームが勝ちあがっていくには必要不可欠な人材です」
「片桐選手に質問しても?」
「どうぞ」
スタッフの人が言った。
「片桐選手は初めて世界を相手にしたわけですが感想は?」
「世界を相手にしたというよりは国を背負った戦いの意味を痛感しました」
「監督は公式戦に使うと言っていますが、それに対してどう思っていますか?」
「当然出たいです。万全の体調ででるつもりです」
「足の故障は大丈夫なんですか?」
「ドクターの診察は受けました。何の問題も無いようです」
他の記者の質問時間に入った。
「澤選手。哀田選手と片桐選手。どちらの方が連携取れますか?」
さっきから片桐選手を遠回しに批判してる記者だ。
澤選手は答える。
「二人共使いどころが違います。哀田は速攻時にはドライブしてインから確実にとってくれる選手です。対して片桐はどんな状況でも点を積極的にとっていくタイプだけどやはりマークを集めやすい」
「それなら哀田選手の方が戦術的には広がるのでは?」
「片桐は一人でディフェンスを何人も集める。3人ついてもパスを出す事が出来る。戦術的にはツーガードと言う方が広がると思っています。それに片桐はディフェンスも得意だ。一人でスティールして速攻に持って行く。相手にペースを作らせない自分たちの試合展開に持っていける」
「哀田選手は必要ないと?」
「バスケは5人で戦い続けることは出来ないシックスマン的には哀田は有効だと思います」
記者は哀田選手に質問する。
「初めて新チームで戦った感想は?」
「これが新チームの戦力だとは思っていません。もっと上を目指せる。そう実感しました」
「それは片桐選手がいるから?」
「そうですね、悔しいけど俺より能力は上だ」
記者が驚きを隠せない。
「しかし片桐選手の出てない二日目の方が成績は良かった」
「片桐がフルタイムで出場出来ていたらまた違っていたでしょう」
「藍井選手はどうお考えですか?」
話を藍井選手に振る。
「片桐には選手生命を潰しかねないディフェンスを仕掛けて来て哀田にはしてこなかった。それが事実でしょう」
「次を最後の質問にしてください」
スタッフが言う。
私が挙手した。
「片桐選手、今後の課題は?」
「……いかにフリーでパスを受け取るですかね?。一枚でもディフェンスがついたらファールに持ってかれてしまう」
「そんな試合公式戦ではないと思いますよ」
「だといいですね」
「それでは時間です、ありがとうございました」
皆が解散する中私は片桐君に接触してみた。
「ちょっと時間あるかしら?」
「取材ならもう終わりましたよ?」
「地元サイトに載せる記事よ。もっと突っ込んだ質問をしたいわ」
「……そういことなら」
私達はホテルのカフェで話をした。
「で、話って?」
「正直な話世界の舞台にたってどう?本音を聞かせて」
「本音ですか……そうだなあ……」
片桐君は悩んでるようだった。
「……やっぱり日の丸の重みを実感したってところですかね」
「無礼講でお願い」
「フルで試合に出れなくて悔しいってのはありますね。怪我さえなければ」
「それが本音?」
「コートの向こう側とこっち側。その境界線が果てしなく遠く感じました」
「それは、ベンチにいたから?」
「はい」
「次は五輪代表の強化合宿と聞いたけど?」
「コートに立てるように頑張ります」
「あなたなら立てるわよ」
「あ、冬夜君~」
片桐君の彼女さんがやってきた。
「監督さんが探してるよ。皆集合だって」
「わかった。じゃあ、佐古下さんまた」
「ええ、強化合宿楽しみにしてるわ」
「はい」
そう言って二人は去っていった。
サッカーでは見せなかったやる気を垣間見た。
今度はとことん追いかけるわよ。
(5)
「遅いぞ冬夜!何してた!?」
監督に怒られる。
「すいません、取材受けてました」
「片桐君勝手な取材は拒否していいんだよ?」
スタッフの人が言う。
「じゃあ、皆集まったから言う。今回の遠征皆しんどかったと思うがよくやってくれた!今度は本番の李相佰盃だが、その前にアジア選手権の強化合宿に呼ばれた者もいるだろう。体にはくれぐれも注意してくれ」
「はい!」
「それじゃ、お疲れ。今日はゆっくり休め」
そう言うとみんな解散した。
すると聖人が声をかけてきた。
「冬夜、一緒に焼肉食いにいかないか。美味い焼き肉屋知ってるんだ。彼女さんもいっしょに」
「いいんですか?」
「夕食は自由行動だ、構わないよ」
「じゃ、愛莉行こうか?」
「うん」
「彩と和人も来るだろ?
「ああ」
「OK」
2人はうなずいた。
そして焼き肉屋に行く。
とにかく愛莉が焼いた肉を食べる僕。
カルビ、サムギョプサル、ユッケ……。
聖人が上手いというだけあってうまい。
「冬夜って本当食うよな……」
「困ってるんです……」
呆れる聖人と愛莉。
「足……大丈夫なのか?」
彩が聞いてきた。
「ああ、もう全然平気」
「日本に帰ったら念のため病院でみてもらうといいよ。足の故障はくせになるから」
和人が言う。
「分かった」
「くどいようだけどお前はあれほど削られるほどの重要選手なんだ、怪我だけは気をつけろよ」
聖人が念を押す。
「心配しないでください。私が責任もって管理しますから」
愛莉が言うとゆかりさん達がうなずいた。
「彩も気をつけてよ、あんなラフプレー聞いてはいたけど心配で……」
「俺は頑丈だから大丈夫だよ」
「露骨だったね。冬夜君が鼻血出した時愛莉顔青ざめてたよ」
由衣さんがそう言う。
「どうしても止めたかったんだろうね。冬夜の攻撃は一番敵には回したくない相手になってるから」
和人が言う。
「僕の事もだけど彩もムキになるの止めた方が良いよ?ファール明らかに誘われてた」
「それは確かに言える。ムキになってゴール下に飛び込む癖は止めた方が良い」
僕と聖人がいうと彩はマッコリを飲みながら言った。
「わかってるよ、雄一郎にもさんざん言われたしな」
「大事なインサイドプレイヤーなんだ。5ファールで退場なんてことはよしてくれよ」
「インサイドなら和人も冬夜も入れるだろう」
冬夜はリバウンドにも飛べるしなとつぎ足す。
「インサイドがしっかりしてるから3Pも思い切って打てるんだよ」と和人が言うと
「関係なしにガンガン打ってくる奴もいるけどな」と彩が返す。
あ、僕の事?
「外から打つからディフェンスが広がって、すると今度は内側から打つからディフェンスが縮こまってバランスのとれてるチームだよね」
僕が言うと聖人が頷く。
「おかげでPGとしても選択肢がひろがってやりやすいよ。前みたいに和人一択じゃなくなったしな」
「……うーん」
僕は悩んでいた。
「どうした冬夜?」
「いや……」
「何か問題あるのか?」
皆の注目を集めてしまったようだ。
言いづらい。
ぽかっ
「キムチ鍋と海鮮味噌鍋どっちにしようか迷ってただけでしょ!」
愛莉の突っ込みは本当に鋭い。
「まあ石焼ビビンバは決めてたんだけどね」
「冬夜はどんだけ食べれば気が済むんだ……体調管理もしっかりしろと言ったばかりだぞ」
聖人が怒る。
彩と和人は笑っていた。
(6)
とある料亭。
日本庭園があり、鹿威しが鳴る。
俺はスーツ姿でその女性とお見合いしていた。
白鳥春奈、今年ARPUに入学するらしい。
理由が俺がいるから。
両親は前から白鳥さんとの面会を考えていたらしい。
白鳥家は父さんの銀行の取引先の一つ。
地元の有力な企業の一人娘だ。
小柄で細身の体でショートボブの一部耳にかけている。
料亭にあわせたのか、和服で着た彼女と二人っきりになっていた。
「あとは若いもの同士で」というやつだ。
彼女は何も言わない。恥ずかしがっているのだろうか?
目も合わせようとしない。
どう切り出したらいいのか分からない。
親がいたときもほとんど喋らない彼女。
何を考えているのか分からない。
退屈を持て余しているということだけは多分俺と同じ心境だろう。
こういうのは早く切り出した方がいい。
思い切っていう事にした。
「悪いが俺には付き合ってる女性がいるんだ」
白鳥さんは何も言わない。
「だから君との縁談は無かったことにして欲しい」
親が知ったら激怒するだろうな。
白鳥さんも泣くか取り乱すくらいはするだろうと思っていた。
だがどちらでもなかった。
「わかった。いいわよ」
耳を疑った。俺が白鳥さんの意図を読み切れてないだけか?
「私との縁談は反故にするのね。意図は分かってる。私があなたとの縁談を反故にしたと伝えておくわ。あなたの悪いようにはしない」
あっさりとこちらの要求を受け入れる白鳥さん。
「白鳥さんにも付き合ってる人いるのか?」
彼女は首を振った。
「いないわよ。誰一人としていない」
振っといて言うのもなんだが、彼女は美人だ。言い寄ってくる男くらいいるだろう。
しかしこちらの心を読んでいるかの如く彼女は答える。
「言い寄ってきた男なんていないわよ。女友達もいない。私のスマホみる?」
そういってスマホを取り出してテーブルの上に差し出した。
俺はためらったが彼女がスマホを取り操作すると俺に見せる。
自分の両親と世話役の人間しか入ってなかった。
「白鳥さんなら友達くらいいてもおかしくないだろ?」
どういう理由か気になった。
「いたら何か変わるの?」
それが彼女の回答だった。
「それじゃ、これ以上は時間の無駄だわ。そろそろ出ましょう」
そう言ってすっと立ち上がる白鳥さんを呼び止めていた。
「友達がいると何か変わる?ってどういう意味だ?」
白鳥さんは振り返ると一言言った。
「そのままの意味よ。煩わしい時間が増えるくらいしか予測がつかない」
そうやって一人で過ごして来たのか?
「じゃあ、行くね。さようなら」
「待て!」
再び彼女を呼び止める。
「なに?まだ用があるの?」
彼女の表情は無表情で生気を失った瞳が僕を見つめている。
これ以上は時間の無駄だ。そう言いたげにしている。
このまま放っておいたら一人で一生過ごすのだろう?
それでいいのか?
俺には関係ない事だったがなぜか放っておけなかった。
「白鳥さんは友達といる時間は無意味だといったね?」
「ええ……」
「それを検証してみないか?」
「どういう意味?」
彼女の表情がやっと現れる。怪訝と言う名の表情が。
「俺と友達になろう」
自分で言ってることの意味を把握してるつもりだった。
咲良の気持ちを裏切ることになるかもしれない。
しかし白鳥さんを放っておけなかった。
このまま一人で一生をすごすほうがどれだけ無意味な人生になるのかを教えてやりたかった。
「自分の言っている意味わかってるの?それって『友達から始めましょう』ってやつじゃないの?」
「……こうしてあったのも何かの縁だ。大学も一緒だしちょうどいいだろう?」
「……何を企んでいるの?」
こっちの考えはお見通しと言わんばかりの彼女の表情。
「俺が所属しているグループがある。そこに君を招待したい」
「それに何の意味があるの?」
「君の価値観を変えるきっかけを作ってくれるかもしれない」
「無意味ね。今更価値観を変えるつもりは無いわ」
「本当に無意味なのか試してみたくないか?」
「……変わる気がしないけど。……退屈しのぎくらいにはなるのかしら?」
「そのくらいにはなると思う」
「……わかったわ。どうすればいいの?」
彼女にメッセージのアプリをインストールさせそして連絡先を交換する。
俺は渡辺君に事情を説明すると渡辺君は承諾してくれた。
咲良をはじめ多くの女性陣は反対したが渡辺君が説得してくれた。
そして白鳥さんを渡辺班に招待する。
「これでいいのね?」
「ああ、何かあった時は俺が迎えに行くよ。どうせ近くに住んでいるのだろう?」
「迎えなら必要ないわ。送迎がいるから」
「心配するな。俺にも彼女がいる。取って食うような真似はしない」
「……本当に理解に苦しむわ。その彼女さんに悪いと思わないの?」
彼女の言う事は的を得ている。
だけど俺の目的は一つ。
彼女に友達を作ってやること。
彼女の寂しい価値観を楽しい物に変えてやること。
その事を咲良に説得すればきっとわかってもらえる。
「そろそろ話は済んだかしら」
親がもどってきた。
「ちょうど終わったところよ」
「そう、じゃあ今日はお暇しましょうか?」
「ええ、母さんその前にお願いがあるんだけど」
「なに?」
「私大学に入ったら一人暮らしするわ」
「え?」
突然の彼女の提案に俺も驚いた。
「春奈が一人暮らしなんて無理よ。絶対に許さない」
「一人暮らしなんて無意味だと思う。しかしこの人は無意味なことに意味があると言った。それを立証してくれると」
「……その必要があるのかい?」
「あるかどうかはこれから検証することよ」
「……わかったわ。家の手配はすぐにするから」
「お願いします」
彼女の顔はまた無表情にもどっていた。
「それではまた」
また会うつもりはあるらしい。
これからどうすればいいのか?
俺にも渡辺班にもわからなかった。
(7)
東京に着くと解散になった。
僕と愛莉はそのまま地元に帰る。
帰るとお土産を両親と愛莉の家にわたして一休みする。
やっぱり家が落ち着く。
ベッドに横になるとそのまま眠っていた。
「冬夜君朝だよ」
どうやらそのまま朝まで眠っていたらしい。
起きるとシャワーを浴びて朝食を食べて時間を潰す。
しばらくしたところで愛莉の運転で病院に行く。
やっぱり治ってるらしい。
そのことを渡辺班に伝えるとみんな安心していた。
青い鳥に行くとみんな集まっている。
皆から褒められたり注意されたり心配されたり、色々だった。
「あんまり愛莉ちゃんを心配させたら駄目よ」
恵美さんがそう言う。
その足で大学の体育館に向かう。
体育館でもバスケ部の皆から歓迎を受ける。
「片桐先輩足大丈夫なんですか?」
佐倉さんが聞いてくる。
「さっき病院に行ってきたよ。大丈夫だって」
「そうですか。じゃあ、明日から軽めの練習しましょうか」
「ああ」
そう言って再び青い鳥に行く。
すると見慣れない子が一人いた。
「あ、冬夜。紹介する。今度渡辺班に入った白鳥春奈さん。白鳥さん。こいつがさっき話した片桐冬夜」
するとその子はすっと立ち上がり礼をする。
「はじめまして、バスケットの選手でしたね。白鳥です。よろしくお願いします」
「よ、よろしく」
動揺したのはこんな子初めて見たから。
心の中が空虚で何もない。
全く読めない。
心が無いんじゃないかってくらいに何もない。
「冬夜君どうしたの?」
愛莉が聞いてくる。
「なんでもないよ。大丈夫」
「そう?」
「うん、酒井君、いつものお願い」
「かしこまりました」
青い鳥は異様な空気に包まれていた。
何も感じ取れない白鳥さん。
そんな白鳥さんを睨みつける咲良さん。
そしてどう行動していいのか分からない渡辺班のメンバー。
家に帰ってから白鳥さんを入れた理由を知る。
男子会でのチャットでだ。
僕も彼女と会って感じたことを伝える。
「冬夜でも読めない相手か……」
渡辺君がそう言う。
「咲良大丈夫かな?」
愛莉が心配そうに言う。
「わからない……」
「大丈夫だよ」そう言ってやればよかったのかもしれない。
しかし今回ばかりは僕も自信が無かった。
どうなるのか、どう転ぶのか?
そんな不安の幕開けとなった。
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